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2021年9月2日木曜日

アフガニスタンと南朝鮮は同じではない。北朝鮮は注目を集めようとミサイル、核実験を行うだろうが、メディア等は過剰反応すべきではない。地政学的視点が今だから必要だ。

  

 

 

Afghanistan North Korea

Image Credit: KCNA/DPRK State Media.

 

イデン政権はアフガニスタン撤収を正当化しているが、各地の米同盟国に懸念を生じさせた。南朝鮮も例外でない。ただし、アフガニスタンのように現地国民が支援しない戦闘に米国は今後一切関わらないと主張すれば米国は完全に孤立してしまう。

 

アフガニスタンが朝鮮半島に与える影響は少ないと言ってい良いが、カブールの悲惨なイメージからヒステリーに近い反応が出ているのは確かだ。だが朝鮮民主主義人民共和国がタリバン勝利から得る恩恵は無に等しいようだ。

 

ピョンヤンは米国の屈辱を宣伝戦に利用しようとした。その一環で北朝鮮は避難民を発生させたのは米国で、しかも劣悪な扱いをしていると非難した。世界が目のあたりにした混乱状況について北朝鮮は「社会混乱と流血の対立の産物」と評し、「『人権』『民主主義』の隠れ蓑で侵攻介入した行為」の結果とした。今回の避難民は米国が戦闘を集結させたことで発生したのであり、あらたに戦闘を展開したわけではない。ピョンヤンも米国撤収を批判できなかった。

 

さらに北朝鮮はタリバン他急進イスラム勢力を一回も支援していない。無神論に立つ北朝鮮は各集団が反米の立場でも取り扱いに苦慮するはずだ。北朝鮮はハマス、ヒズボラと接触があるが、こうした勢力はむしろイランやシリアの庇護の下にある。

 

タリバン勢力の増進で米国には困った事態になっても、北朝鮮にはモデルとなりえない。北朝鮮の公式見解は朝鮮半島全体を代表するのは同国であり、再統一を同国主体で進めるというものである。北は南内部の反政府勢力を支援しておらず、朝鮮戦争勃発前でも同様だった。タリバンを連想させる勢力が南朝鮮にあったが、金日成が最高指導者の座に上る過程でこれを排除した。

 

近い将来をにらむと米国がROKから兵力を撤退する可能性はない。米軍のプレゼンスはピョンヤンにとって常に標的であり、特に金正恩の妹金与日の発言が激しい。カブール陥落の前から同女史は「半島の平和的解決には米国が侵略部隊、装備品を南朝鮮から撤収させることが必須条件だ」と発言していた。

 

たしかに米軍撤収議論は長くあり、国力の点で南が大きく北をリードする状況となっており、米国の財務状況の悪化が背景にある。とはいえアフガニスタン情勢で急にこの話題が浮上したわけではない。ROKとアフガニスタンの違いは大きい。断続的に事件があるものの、半島情勢は平穏である。米韓両国は相互防衛条約でつながっており、南朝鮮政府を当初発足させたのは米国だが、ワシントンの政策道具の座はとっくの昔に卒業している。両国政府、国民のきずなは堅固であり、朝鮮半島の持つ戦略価値は中央アジアよりはるかに高い。

 

さらにアフガンの混乱はピョンヤンの外交地位を強めるものではない。同国との交渉は漂流し、バイデン政権はアフガニスタンの後処理に気を取られる中、その他同盟国の懸念の火消しに追われ、当面北朝鮮との交渉を行う余裕はない。「今は北朝鮮より高い優先度の課題がある」とCNAのケン・ゴースも述べている。

 

2022年は米国で選挙の年であり、事態が急進展する余地は少ない。共和党が再び多数派となれば、政権の動きは鈍る。皮肉にもアフガニスタン後遺症は時間がたてば消えそうで、より深刻な問題の前に中央アジアは影を細めるだろう。

 

これまでも北朝鮮はミサイルや核実験でワシントンへ圧力をかけようとしていた。だが金正恩はドナルド・トランプとの三年前の会見以降は自制し、その後に対米会談が決裂しても同じ姿勢だった。

 

北朝鮮はCOVID-19のためほぼ鎖国状態にあるが、中国の食料エナジー支援でかろうじて経済を維持している。その中国も対米関係が悪化しているため、半島内の緊張を高めるのは得策ではないと考え、金正恩に分別ある行動を求めているようだ。

 

アフガン情勢を受けバイデン政権は短距離ミサイル発射など小規模な出来事に目をつむることになりかねない。だが米国到達も可能な兵器の開発テストとなればメディアは異常な関心を示し、米国の信用度が落ちたと騒ぎ立てかねない。このためバイデン政権は「怒りと火炎」の姿勢に転じ、予防戦争に進みかねない。そうなれば誰にとっても得にならない。

 

それでも南朝鮮の一部は気が休まらない。与党内には防衛体制強化を求める声がある。その一人Song Young-gil 議員は「アフガニスタンの危機を利用して自主防衛体制の実力、気概を強化すべきだ。そのため戦時統制権を回復すべきだ」とし、南朝鮮軍の指揮権に触れた。「韓米同盟は重要だが、自国は自分で守るという姿勢も重要だ」と述べた。

 

この姿勢は米韓両国にとって良い進展だ。こうした議論ができる良い進展だ。こうした議論ができること自体南朝鮮はアフガニスタンと違うことを示している。米国は二十年にわたり人的犠牲とともに数兆ドル相当をつぎこんだが、アフガン政府、軍ともに士気が低く米軍が正面に立たないとどこかへ行ってしまうのだった。ROKはまったくちがう。

 

アフガニスタン崩壊のショックの中、今回の事件を地政学のツナミのようにすべて飲み込むと取り扱う評論がある。だが、アフガニスタンはアフガニスタンの問題であり、それ以上二は広がらないことは明らかになってきた。確かに人道面で悲劇は続くが、ワシントンが世界各国で展開する軍事コミットメントに変化は皆無といってよい。南朝鮮もその一部だ。■

 

 

The Afghanistan Collapse: How Does North Korea See It?

ByDoug BandowPublished7 days ago

 

Doug Bandow, now a new 1945 Contributing Editor, is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is the author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World and co-author of The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea.


2020年5月5日火曜日

南朝鮮陸軍の実力で北朝鮮侵攻を食い止められるか


たしかに韓国陸軍は同国の存続を守っていますが、現政権があまりにも親北的なため軍にも悪影響が出ていないか他人事ながら心配です。軍関係者が政権よりまともならよいのですが、当の軍が北による射撃事案を人的エラーとして軽く扱ったのを見ると心配になります。

まとめ:ROKが防御を崩さず勝利する可能性が高い。北朝鮮軍は旧式装備の上、栄養不足だ

去70年間にわたり大韓民国陸軍(ROK陸軍)は単なる警察隊から世界有数の戦力を整備し技術的にも最先端をゆく部隊に進化した。この驚愕の進化は1950年から53年の北朝鮮による侵攻がもたらした。以後北朝鮮は再侵攻を一環して狙う脅威のままだ。

ROK陸軍は朝鮮半島の南半分へ進駐した米軍が1945年に創設した。「国家保安連隊」9個が軽装備歩兵部隊として25千名態勢で生まれた。米ソ関係悪化を受け規模は50千名に増強された。

1950年6月の北朝鮮による侵攻で創設されたばかりのROK陸軍は準備不足を露呈した。対戦車砲の欠如は明らかで朝鮮人民軍の第105戦車旅団がT-34/85戦車、SU-76自走砲およそ120両を展開してきた。ROK側の第二次大戦時標準による小規模装甲部隊では対抗できず釜山までの撤退を余儀なくされた。

それから3年間に渡り米国がROK陸軍を近代的な基準に引き上げるべく懸命に訓練し、装備を提供したが防衛の任には不十分なままだった。だがその効果もあり、戦争終結後の数年で韓国駐留米陸軍部隊は2個師団に、その後1個師団に縮小できた。

1960年代、70年代を通じROK陸軍は高度の警戒態勢を解かず、北朝鮮の侵攻に備え、軍事的挑発は国境地帯で数回発生したものの、相当規模の部隊をベトナム戦に派遣し、対ゲリラ戦で勇猛果敢さの定評を得た。ベトナム戦には合計31万2千853名が参戦し、戦死者4,687名・負傷者5千名を数えた。

南朝鮮が大規模な陸上部隊を維持してきたのは160マイルにおよぶ軍事境界線防御に必要なこと、朝鮮人民軍も兵力規模を重視する構成になっていることが理由だ。このため世界各地に展開する米陸軍が47.5万名なのにROK陸軍は56万名体制という特異な状況が生まれた。

今日のROK陸軍は41師団15個旅団で11軍団を編成している。戦車2,360両、戦闘車両・装甲兵員輸送車2,400両、野砲5,180門を備える。さらに各部隊は概ね米軍式に編成されており、3個師団に独立した火砲、工兵隊、通信隊がつき軍団を構成する。ROK首都防衛司令部が別にある。

ROK陸軍は技術面で北朝鮮に優位性を保っており、装甲車両では世界トップクラスの装備を供用する。K-2ブラックパンサー戦車、K-21歩兵先頭車両、K-9サンダー自走迫撃砲が機械化部隊の中心装備だ。にもかかわらず、部隊は防御作戦を中心に訓練され、装甲師団を常備軍として保有せず、4個装甲旅団が反攻作戦の先鋒となる。ROK陸軍の中心は歩兵師団で6個師団が機械化師団、16個歩兵師団が常備軍として存在する。さらに機械化旅団2個が米第2歩兵師団の一部となる。

米陸軍と同様にROK陸軍も特殊作戦部隊を重視する。第707「白虎」特殊任務大隊は米デルタフォースと類似した存在だ。特殊部隊4個旅団と特殊強襲6個連隊が通常部隊を支援する。別の特殊部隊旅団3個は陸上、海上、空中からの侵入を専門とし北朝鮮工作員を殲滅する。常に侵攻の脅威にさらされてきた同国では常備軍と別に「郷土」防衛師団12個が分散配置され後方の守りとして北朝鮮特殊部隊や工作員に対応する。

ROK陸軍は大規模かつ強力な地上軍で国境地帯で北朝鮮侵攻部隊に対応できる。このため北朝鮮は長距離火砲を国境地帯に配備し、軽歩兵と敵地侵入部隊、さらに化学放射能部隊を整備し、南の技術優位に対抗しようとしてきた。この70年間の戦闘をROK陸軍が抑止してきたのは事実で、平時の陸軍部隊として成功の証と言える。■

この記事は以下を再構成したものです。

by Kyle MizokamiMay 2, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaKim Jong-unNuclearWarMilitaryMissileTechnology

Here's how each side's forces stack up.