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2025年2月5日水曜日

米海軍の艦載レーザー「HELIOS」が最新テストで無人機を撃墜に成功(The War Zone)―ただし、真の実用化にはまだ道は遠いようです。とはいえ艦艇の電気系統はこれまでより大幅に強化する必要がありますね

 HELIOS laser fired from the USS Preble.  

(DOD)


その他システムが遅延や中止に見舞われる中、海軍は艦載レーザー兵器の実用化を強く望んできた


海軍は、アーレイ・バーク級駆逐艦プレブルが、2024年度に空中標的無人機を破壊する高エナジーレーザー統合光学眩惑および監視(HELIOS)システムの試験発射に成功したことを明らかにした。これは、米軍の他のレーザー開発が近年、現実的な検証に直面している中、水上艦隊への艦載用レーザーの開発での最新の大きな成果である。

 プレブルの無人標的機へのレーザー照射は、HELIOSの機能性、性能、能力を「検証し、実証する」ことを目的としたもので、艦載レーザーを完全に実用可能な状態に近づける最新ステップは、金曜の夜に発表された国防総省の年次運用試験・評価局(DOTE)長官報告書で明らかにされた。

 プレブルがいつ、どこでレーザーを発射したかについて、DOTEレポートではほとんど明らかにされていない。同艦は、2024会計年度の終了を数日後に控えた9月に、母港をサンディエゴから日本に移した。  本誌は、このテストの詳細とHELIOSの現在の状況について海軍に問い合わせており、情報が入り次第、このレポートを更新する。


A rendering of the HELIOS system in action aboard a Navy destroyer. (Lockheed Martin)

海軍駆逐艦上のHELIOSシステムの作動中のレンダリング。(ロッキード・マーティン)


 いずれにしても、海軍上層部が特にここ1年、強く要望してきた能力だ。なぜなら、イランが支援するフーシ派反政府勢力が紅海とアデン湾上空に連日、毎時のように発射する無人機やミサイルを、海軍の軍艦が撃墜しているからだ。これらの戦闘やその他の世界的な紛争地域では、中国という新たな脅威が迫る中、限られたミサイル在庫を消耗してしまうとの懸念が絶えない。本誌は、フーシ派の無人機、対艦巡航ミサイル、対艦弾道ミサイルなど、フーシ派の兵器庫に対する400回以上の交戦で消費された兵器の集計を含む、海軍のフーシ派との戦闘のいくつかの側面について報告している。 

 「10年前に私がバーレーンにいたとき、水上作戦司令艦USSポンセにレーザーが搭載されていた」と、2024年初頭、水上艦隊協会の会議に先立って、海軍水上部隊司令官のブレンダン・マクレーン中将は記者団に語った。「10年が経ったが、我々は未だに実戦配備可能なものを持っていないのか?」

 確かに、60キロワットのHELIOSやその他の長らく約束されていた指向性エナジー兵器は、水上艦隊にとって待ちに待った装備だ。本誌が以前報告したように、2022年にプレブル級駆逐艦に初めて搭載されたのが最初である。そのデビューはフーシとの戦闘に先立つものだが、少なくとも同様の作戦におけるミサイル支出をある程度軽減するのに役立つと思われるタイプのシステムである。


A look at the new High-Energy Laser with Integrated Optical Dazzler and Surveillance (HELIOS) laser directed energy weapon installed on the Arleigh Burke class destroyer USS Preble, with an inset showing a rendering of the system. (U.S. Navy/Lockheed Martin)

駆逐艦プレブルに搭載された高エナジーレーザー統合光学眩惑および監視(HELIOS)レーザー指向性エナジー兵器。システムの外観を示す挿入図。(米海軍/ロッキード・マーティン)


 これまで本誌がHELIOSについて報じた内容から、無人機攻撃を阻止し、悪意を持って操縦される小型ボートや小型船舶を無力化または破壊するのに非常に役立つ理由が明らかになっている。

 また、ミサイルや無人機に搭載された光学追尾装置を眩惑し、視覚を奪ったり混乱させたりすることも可能だ。眩惑装置は、相手のセンサーが艦船を監視する能力を奪うことで、相手の一般的な状況認識を制限することができる。 HELIOSには独自の光学センサーも搭載されており、二次的な情報、監視、偵察(ISR)の役割を果たすことができる。

 プレブル級駆逐艦では、HELIOSは、アーレイ・バーク級駆逐艦の初期の派生型に搭載されていたMk 15ファランクス近接武器システム(CIWS)を収容していた艦の前方に設置されている。現在建造中のフライトIIA仕様の駆逐艦には、格納庫上にCIWSが1つだけ搭載されています。SeaRAMとファランクスを装備した「ロタ構成」に変更された少数の艦を除き、初期型にはCIWSが前方と後方に2つずつ搭載されている

 ロッキード・マーチンは2018年に海軍からHELIOSに関する最初の契約を受注したが、このシステムは同社における指向性エナジーの研究開発の長い歴史の上に構築されたものだ。

 同システムは、イージス戦闘システムと組み合わせると特に強力となる。ロッキード・マーチン水上艦ミッション・システム部門の責任者リッチ・カラブレスは、2021年の本誌とのインタビューの中で、HELIOSとイージスについて次のように説明している。

 「当社はイージス兵器システムのマルチソース統合注入能力を継続的にアップグレードしており、新しい兵器やセンサーを導入し、協調的なハードキルおよびソフトキルの実現を目指しています。指向性エナジー兵器…私たちは、ニュージャージー州にあるこのラボで、すでにHELIOSレーザー兵器システムをイージス兵器システムCSL(共通ソースライブラリ)と統合しています。実際、当社でレーザープログラムを管理している人物が... 先日、イージス兵器システム・コンピュータープログラムの制御下で、このレーザーを発射しています。ですから、私たちは、兵器の調整を行い、HELIOS兵器システムと連携して自動化された方法でハードキル、ソフトキルの調整を行う能力を構築しています」。


240212-N-VJ326-1044 SAN DIEGO (Feb. 12, 2024) – Guided missile destroyer USS Preble (DDG 88), left, pulls into port alongside amphibious assault carrier USS Tripoli (LHA 7), Feb. 12. Tripoli is an America-class amphibious assault ship homeported in San Diego. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Malcolm Kelley)

HELIOSレーザーシステムは、USSプレブルのブリッジ前方の台座に設置されている。(米海軍)


 ロッキード・マーチンは、アーレイ・バーク級駆逐艦に少なくともあと1基のHELIOSシステムを納入する契約を結んでいる。同社関係者は、システムの最大出力を150キロワットへ増強するなど、将来的な機能拡張も視野に入れて設計してあると述べています。

 ここまでの出力レベルであれば、HELIOSはより遠距離から小型無人機をより迅速に撃墜し、対艦巡航ミサイルや、比較的近距離ではあるが敵の航空機など、大型で複雑な脅威にも対処することが可能になる。

 海軍とロッキード・マーチンは、2022年にニューメキシコ州の米陸軍ホワイトサンズミサイル射場で行われたテストで、レーザー層防衛(LLD)システムと呼ばれる兵器を使用し、亜音速巡航ミサイルに見立てた標的無人機を固体レーザー指向性エナジー兵器で撃墜することに成功した。


 HELIOSは、海軍が指向性エナジー技術に抱く野望の一端を構成するもので、指向性エナジー技術には、最終的には高出力マイクロ波ベースのシステムも含まれる予定である。同型艦のUSS DeweyやUSS Stockdaleには低出力の光学迷彩装置(ODIN)を装備している。  HELIOSとは異なり、ODINのレーザーは眩惑装置としてしか使用できないが、二次的な監視能力も備えている。

 2021年後半、HELIOSがプレブルに配備される前年のこと、サンアントニオ級揚陸艦ドック艦USSポートランドは、アデン湾でレーザー指向エナジー兵器を用いて静止した水上標的を攻撃した。レーザー兵器システム・デモンストレーターMk 2 Mod 0として知られるそのシステムは、2019年後半にポートランドに搭載され、本誌が最初に報道した。その後、2020年に太平洋でのデモンストレーションで小型無人機を撃墜した。

 国防総省は、艦船、航空機、地上車両用のこのような兵器の開発に毎年平均10億ドルを費やしていると、ネイビー・タイムズは昨年報じた。

しかし、2023年の米国会計検査院(GAO)の報告書によると、このような技術で開発、調達、実用化の方法を見出すのは困難だと判明している。


The Navy amphibious transport dock USS Portland uses a laser to strike a static surface target in 2021. (U.S. Navy)

2021年、揚陸艦USSポートランドは、静止した水上標的にレーザーで攻撃した。(米海軍)


GAOによると、国防総省は「これらの技術を研究室から現場へ」移行させるのに苦労しており、その理由として軍が任務中にそれらをどのように使用するか決定するのが難しいことなど、数多くある。

 「早期の移行計画と移行合意の起草なしでは、海軍は運用ニーズと一致しない技術開発のリスクを負うことになる」と、報告書は警告している。

 また、実際に先進的なレーザー兵器を現場に配備し、維持していくことの現実性や、現時点での有効性も明確になってきた。こうした事実が明らかになったことで、国防総省は長年宣伝してきたレーザー兵器の主要なプログラムから撤退した。

 レーザー兵器システムは、特に主流メディアで過剰に宣伝され過ぎている。レーザー兵器は一度に1つの標的のみを攻撃でき、実戦配備中の低出力クラス装備は長時間にわたり標的に安定して照射し続けなないと効果を上げることができない。また、出力と熱の制限があるため、連続発射にも影響が出る。

 射程距離は限られており、大気条件の影響を受け、その部品は繊細で、軍事利用に向けた硬化は現在も進行中だ。そのため、海軍の観点から見ても、非常に魅力的な能力ではあるものの、当面は限られた標的セットに対する少数のポイント防衛用途に限られる。

 こうした現実にもかかわらず、海軍上層部は艦載レーザーの必要性を強く主張し続けている。米海軍艦隊司令部のダリル・コードル司令官は、先月開催されたSurface Navy Associationの年次シンポジウムで、レーザー開発の遅々としたペースを嘆いたと、Breaking Defenseのジャスティン・カッツ記者が報じた。

 「艦船搭載レーザーの開発については、これまでに多くの論文や学位論文が書かれてきましたが、ミサイルシステムを実際に破壊するのに許容できる方法として移行するには至っていません」と、カッツ記者はコーデル提督の言葉を引用して伝えている。

 「再生可能エナジーを基盤としており、システムを再充電することができます。指向性エナジーではペイロードや容量を心配する必要がありません。海軍にとって、これらはすべて魅力的な要素です。しかし、私たちはまだ、実用化できる段階には至っていません」。

 海軍がHELIOSのような艦載レーザープログラムを進めているとはいえ、広範かつ強力な能力となる時期は依然として不明だ。それでも、最近の出来事は、艦載レーザー兵器を米海軍で現実の装備にする圧力を高める可能性が高い。■



Navy HELIOS Laser Aboard USS Preble Zaps Drone In Latest Test

Service brass have clamored to get shipboard laser weapons operational, as other similar systems have suffered delays and cancellations

Geoff Ziezulewicz, Tyler Rogoway



https://www.twz.com/news-features/navy-helios-laser-aboard-uss-preble-zaps-drone-in-latest-test


2017年12月20日水曜日

★米海軍レイルガン開発はここまで来ている


  • これも何度も出てくる話題ですが、レイルガンの開発は本当に順調なのでしょうか。レイルガンの基本は電力であり、むしろ運動エネルギーを使う超高速弾に関心が移りそうな気もします。しかし既存装備で運用した場合の運動エネルギーを考えるとそんなにすごい威力はないのではと思えますが、真相はいかに。

 

U.S. Navy Rail Gun to Test Rapid Fire and Move Closer to Combat

米海軍レイルガンは迅速連続発射テスト中で実戦化に近づいている


December 17, 2017


ッハ7.5まで電動加速される米海軍の超高速発射弾はレイルガンから発射
され敵の水上艦船、地上車両、ミサイルを狙い射程は最大100カイリ(約185
キロ)だ。
  • 未来の話に聞こえるがSF映画の世界ではなく、あと一歩で実戦投入できる。実現すれば遠距離攻撃しながら敵は攻撃できなくなるはずだ。投入エネルギーは時速160マイル(約200キロ)で走行する小型乗用車とほぼ等しいと開発陣は説明。
  • 海軍研究本部(ONR)は電磁レイルガンを実験室から海軍水上船センターのあるダールグレンでレップレイトテスト試射場に設置し発射テストを行う。
  • 「初期レップレイト発射(連続発射)は低出力ながら成功しています。次のテストはエネルギーを増加させながら安全を確保し、発射回数も増やし一斉射撃も試します」とONRは説明。
  • レイルガンのレップレイト発射テストでは今夏に20メガジュールでの発射に成功し、来年は32メガジュールに増加させる。ちなみに1メガジュールとは1トンの物体を時速160マイルで動かすのと等しいとONRは説明。
  • 「レイルガンやその他指向性エネルギー兵器は将来の海洋優位性達成の手段」とONRで海軍航空戦兵器開発部をまとめるトーマス・ビュートナー博士Dr. Thomas Beutnerは述べている。「米海軍がこの画期的技術を最初に実用化して敵勢力への優位性を維持する必要がある」
  • 作動には電力でパルスを生成させる。パルス生成系統にコンデンサーが瞬時に大電流を放出する。電流は3百万から5百万アンペアで10万分の一秒に1,200ボルトを放出するという。これで重量45ポンドの物体を百分の一秒でゼロから五千マイルに加速する。
  • 時速5,600マイルに達すると超高速発射弾となり運動エネルギーが武器となる。爆発物は使わない。超高速発射弾は秒速2キロと通常の兵器の三倍の速力を実現する。発射回数は毎分10発だという。
  • 巡航ミサイル迎撃の能力もあり、発射弾は艦内に大量搭載できる。大型ミサイルとちがい超高速発射弾の単価は25千ドルにすぎない。
  • レイルガンの出力は艦内電力系統または超大型バッテリーで確保する。装備は大きく発射機、エネルギー貯蔵、パルス生成ネットワーク、超高速発射弾、砲台と五つにわかれる。
  • 現在はGPS誘導で固定目標、静止目標の攻撃を想定しているが、将来はレイルガンで移動目標も攻撃対象になると海軍は説明してきた。
  • 海軍はDoDや陸軍とともにレイルガンの超高速発射弾を海軍の5インチ砲や陸軍榴弾砲といった既存装備で運用する実験を行っている。
  • また電磁レイルガンをハイテク艦のDDG-1000駆逐艦に2020年代中ごろまでに搭載できないかと検討中だ。
  • DDG-1000には統合給配電系統があり、艦内で十分な電力供給が可能だ。海軍上層部もDDG-1000がレイルガン搭載に最適と認めながら追加検討でリスク対応も必要だとする。
  • DDG-1000は統合給配電系統の70メガワット発電容量が将来のレイルガン運用の鍵を握ると見られる。
  • またDDG-1000級の排水量は15,482トンとイージス搭載駆逐艦の9,500トンより大きい。
  • DDG-51アーレイ・バーク級駆逐艦でのレイルガン運用も将来の可能性がある。技術面の要求からその程度の艦体が必要だ。そのため海軍の小型沿海部戦闘艦で電磁砲の運用は無理となりそうだ。■



2017年3月12日日曜日

★★★中国は宇宙配備レーザーで衛星攻撃を狙っている



北朝鮮と比べると中国の科学技術水準は遥かに先を行っていますので対応も全く違ってくるわけですが、本来宇宙空間に武器は持ち込まないとの多国間約束事など関係なく、自分のやりたいことを進めるゴリ押し、無神経さ、世界の秩序の維持には全く責任を感じないところは北朝鮮並みですな。北朝鮮問題が解決したら次は中国が標的でしょうね。


The National InterestHow China's Mad Scientists Plan to Shock America's Military: Super Lasers, Railguns and Microwave Weapons



March 10, 2017


中国軍が強力なレーザー、電磁レイルガン、高出力マイクロウェーブ兵器を将来の「軽度戦」に備え開発中で宇宙空間に配備する。
  1. 中国が指向性エネルギー兵器開発に注力するのは米国の戦略優位性をなくし、精密攻撃を可能にしている米軍の情報通信航法衛星群を使用不能にするためだ。
  2. まず宇宙配備レーザー砲構想は2013年12月の中国学会誌にレーザー兵器技術研究の中心長春光学精密机械与物理研究所の研究者3名の連名論文で明らかになった。
  3. 「将来戦ではASAT(対衛星)兵器の開発が重要となる」とあり、「その他レーザー攻撃装備が生まれれば高速速射、非干渉性能、高度破壊効果があり特に宇宙配備ASATとして期待できる。宇宙配備レーザーこそASATの開発の中心的存在だ」
  4. 筆者3名の提言は重量5トンの化学レーザーを低地球周回軌道に乗せ、戦闘装備とするもの。宇宙開発を担当する軍の予算が付けば、対衛星レーザーは2023年までに稼働できる。
  5. 同論文によれば宇宙空間の対衛星攻撃には地上レーダーで目標衛星を捕捉し特殊カメラで照準を合わせ進展可能な膜望遠鏡で目標衛星にレーザービームの焦点を合わせる。
  6. 同論文では2005年に中国が地上からレーザーで軌道上の衛星を「目潰し」したとも紹介している。
  7. 「2005年に50-100キロワット級のレーザー砲を新疆地方から発射し衛星機能停止に成功した。「標的は低軌道上中の衛星で傾斜距離600キロだった。レーザービームの直径は0.6メートルで捕捉、追尾、照準の誤差は5(マイクロラディアン)以下だった」
  8. リチャード・フィッシャーは国際評価戦略センターの中国専門家で先月米議会で中国のレーザー兵器開発状況を証言した。上記論文の公表は中国に宇宙の軍事化を急いでいる様子を意図的に世界に知らせようとするものと注意喚起している。
  9. 中国の宇宙開発は軍民同時並行で、神舟Shenzhou 天宮Tiangongの各有人宇宙機は軍事用途にも使われる。宇宙ステーション、さらに月面基地の計画は軍用用途も想定している。中国が軌道上にレーザー兵器を科学モジュールと称し打ち上げるのは十分可能性がある。
  10. 「宇宙ステーションの真の目的を世界から隠すため宇宙飛行士の生命など犠牲にしても中国政府はなんとも思わないでしょう」(フィッシャー)「奇襲効果もあり、戦闘宇宙ステーションが米衛星の中核部分を攻撃しはじめます。これで米側は目を潰され、さらに多くの衛星を攻撃する中国衛星の打ち上げがわからなくなります」
  11. 戦闘用宇宙装備の開発は中国が目指す天空戦略の世界規模確立の一環でもある。フィッシャーは中国宇宙兵器の脅威は現実のものであり、米側も宇宙空間での戦闘能力整備で対抗すべきだと信じる。
  12. 中国は1960年代からレーザー兵器を開発し、2015年に人民解放軍が「軽度戦争」の表題の本を出版し、レーザーで将来の戦争を勝ち取ると述べていた。
  13. 同書では将来、勝敗を決するのはビッグデータ解析(中国軍サイバー部隊と人工知能)と指向性エネルギー兵器の組み合わせとある。同書はロボットレーザー兵器を宇宙空間に配備すべきとし、指向性エネルギー兵器は今後30年間で中心となるとある。
  14. 「おそらくPLAはすでにそのような新しい時代に適合すべく、新設の戦略支援軍の中核任務とし情報空間や外宇宙の軍事化を進めさせようというのだろう」(フィッシャー)
  15. この中国の動きでこれまでの米国の指向性エネルギー兵器開発が無駄になるかもしれない。レーザー、電磁レイルガン、高出力マイクロウェーブ兵器だ。ペンタゴンはこれまでも航空機搭載レーザーでミサイル防衛を狙い、レイルガンが2020年代初頭に実用化になる見込みだ。高出力小型レーザー砲の実用化は2030年代になる見込みだ。
  16. 軍の情報統制に阻まれ中国のハイテクエネルギー兵器開発の全貌は不明のままだが、上記証言や刊行物から中国が相当の支出をしていることは明らかだ。
  17. Space Law & Policy Solutionsのマイケル・J・リスナーは中国が指向性エネルギー装備で着実に進展中と見ており、「一部に諜報活動で集めた海外情報を活用しているのはまちがいない」という。
  18. 「完成すればASAT以外に弾道ミサイル防衛、艦艇局地防衛や戦場と、軍事応用は限りなく広がる」
  19. 中国が宇宙軍事化を公開すると米軍や同盟軍の作戦立案で大きな懸念材料となる。中国が新技術で世界の安定平和を捻じ曲げる可能性が生まれるからだ。
  20. 対抗策として米国も長年保持してきた宇宙空間に軍備を持ち込まない政策を変更せざるを得なくなる。
  21. 「中国が宇宙計画を軍用に使う意図をおおっぴらに示す以上、米国も潜在脅威を排除する、少なくとも脅威度を下げる選択肢は最低限もっていかねばなりません」(フィッシャー)■


2016年11月6日日曜日

★★航空機搭載レーザー兵器の開発はここまで進んでいる



航空機搭載レーザー装備の開発はかなり進んでいるようです。技術に遅れを取る中ロはこれに警戒してくるはずですね。技術漏えいが発生しないよう高度の保安体制が必要です。実現すれば戦闘の様相は大きく変わります。

The National Interest


Northrop Grumman Is Building Laser Weapons to Save America's Future Fighter Aircraft from Missile Attacks

November 4, 2016


ノースロップ・グラマンが開発中のレーザー兵器は次世代戦闘機を敵ミサイルから防御するのが目的で米空軍研究所AFRLが契約交付している。

  1. 同社はビーム制御部分を開発製造し、AFRLが自機防御高エネルギーレーザー実証事業Self-Protect High Energy Laser Demonstrator (SHiELD)の高度技術実証(ATD)として今年8月に契約交付うけた。SHiELDはポッド搭載のレーザー兵器実証装置で指向性エネルギーを防御につかう。
  2. 「ノースロップ・グラマンが中心のチームで革新的なビーム照準を実証済みのビーム制御技術に組み込んで空軍が求めるレーザー兵器の性能を現行並びに次世代の機材に織り込みたい」とノースロップ・グラマン・エアロスペースシステムズが声明を発表している。
  3. SHiELDでのノースロップの役割は重要なビーム制御にある。ビーム制御装置により飛行中の大気状況を把握したうえでレーザーのゆがみを補正する。また飛来する目標を捕捉追尾し、レーザー照準をする機能で、その後にレーザービームを「成形」し焦点を目標に合わせる。具体的にはミサイルや敵機本体を想定する。
  4. ノースロップの担当部分はSHiELDタレット研究の空中効果部分(略称STRAFE)でAFRLは最終的にSTRAFEビーム制御装置をレーザー発生装置、電源、冷却装置と一体にすることだ。AFRLはその他要素部分を別契約で開発中だ。
  5. AFRLはSHiELDをポッドに収めて高度防空体制でも機体の残存性を大幅に上げようと考えている。そこでSHiELDを戦術航空機に搭載し超音速飛行中にコンセプトの有効性を確認したいとする。フライトテストはすべて順調なら2019年にはじまる。
  6. SHiELD実証が成功すれば、空軍は実戦用装置を既存の第四世代戦闘機各型向けに開発し、残存性を高める。SHiELD技術は米海軍の機材にも有効に活用されるはずだ。
  7. また次世代の侵攻制空機材としてロッキード・マーティンF-22ラプターの後継機になる機体にもSHiELDを搭載し、ここでは最初から機体内部にとりつける。ポッド型のSHiELDは第五世代機F-22やF-35にはステルス性能を損なうため望ましくない。同様にノースロップ・グラマンのB-2スピリット、B-21レイダー爆撃機にも搭載するのは困難だろう。
  8. それでも指向性エネルギー兵器とは大きな可能性があることがわかっているものの、レーガン政権の時代から実現に困難が実感されている技術である。それが10年後には実用化されようとしているわけである。
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.
Image: Northrop Grumman.

第五世代機に装着できず、第四世代機の防御性を引き上げるのであれば、ステルス性能が無駄になりますね。「常識」で考えればレーザー発生に必要な電源その他の大きさから言って現在の戦闘機サイズでは搭載は困難と思っていましたが、なんらかのブレイクスルーがあった、あるいはこれからあることを期待しているのでしょうか。それとも大型戦闘航空機の構想でこそ実現するものなのでしょうか。



2016年6月27日月曜日

米空軍>指向性エネルギー兵器の技術進展と実戦化の現状




Air Force has directed energy weapons; now comes the hard part

Phillip Swarts, Air Force Times12:16 p.m. EDT June 25, 2016

635736797419217976-photo-directed-energy-weapon(Photo: Air Force)
20年間にわたり、米軍は産業界とレーザーなど指向性エネルギー兵器の実用化をめざしてきた。装置は危険な化学レーザーから信頼性の高い半導体レーザーに変わり、出力は数ワットから数キロワットへ拡大している。
  1. これからが困難な部分だ。空軍はワシントンDCで第二回指向性エネルギーサミットを開催し大きな課題が改めて認識された。
  2. 主催は国防コンサルティング企業ブーズ・アレン・ハミルトンとシンクタンクの戦略予算評価センターで指向性エネルギー分野で業界最高の人材が集結した。
  3. 軍上層部は早く実戦化したいとじりじりしている。指向性エネルギー兵器は敵車両を止めたり通信を遮断し、飛んでくるミサイルを破壊したりと多様な用途の想定がある。
  4. だがレーザー兵器の実戦化は困難な課題だ。空軍が指向性エネルギー兵器をはじめて開発したのは2000年代初期で、装置は巨大なボーイング747の全長を必要とした。海軍の試験版は揚陸艦ポンセに搭載され重量は通常の航空機の搭載量を上回る。
  5. さらに新技術は通常通り試験、分析、予算手当、調達、運用構想の作成、立案、承認、訓練を経てやっと実戦化される。
  6. 「予算をたくさん確保するには書類がたくさん必要だ」とブラドリー・ハイトフォード中将(空軍特殊作戦軍団司令官)は軽口をたたく。「今はたくさんの書類に字を埋めているところ」
  7. 同中将によれば敵を警戒させず静かかつ迅速に敵のシステムを妨害する装備が空軍に必要だとし、音を立てず目に見えないレーザーは最適だという。
  8. 「指向性エネルギーを高密度レーザーの形でAC-130ガンシップに搭載できるようになった」とハイトホールド中将は述べる。「指向性エネルギー兵器こそ次代の兵器だ」
  9. ただし指向性エネルギーの実戦化には課題が残る。ハイトホールド中将によれば最大の課題はレーザー装置の寸法と重量だ。
  10. 「重量5千ポンドでパレットのサイズに合えばおさまる」と中将はC-130搭載を想定して語った。
  11. ウィリアム・エター中将もレーザー兵器実用化を望むが、想定ミッションはハイトホールドと異なる。第一空軍司令官として中将の任務は米本土上空の安全であり、ミサイル撃墜にレーザーを使いたいとする。
  12. レーザーでのミサイル迎撃には巻き添え被害の予防が必要だ。
  13. 「一般市民が被害を受けないようにせねば。本土上空には民間航空機も飛び、小型機もあり、衛星もあります。標的は精密に狙わないといけません」
  14. エター中将もレーザーは極力小型化し機体に搭載できればとよいと見る。F-22やF-35に指向性エネルギー兵器を搭載すれば米本土がミサイルに狙われていてもどの地点からも迅速に対応できる。
  15. 指向性エネルギーでミサイル防衛の穴を埋めるのは可能とエター中将は指摘し、高速飛翔する標的への対応を言及した。
  16. 「現時点で極超音速飛翔体への対応は不可能です」とし、マッハ5以上で飛行するミサイルに言及している。
  17. だがハイトホールドの言う一杯の書類作業のように指向性エネルギーには多数の関連規則や規制面での支援が必要だ。
  18. 「脅威に方針が対応しきれていない」とエター中将は指摘し、「技術対応より方針が難しい。交戦規則が欲しい。撃ち落としたいのは小型無人機なのかそれとも航空機なのか」
  19. 検討事項が他にもある。空軍隊員をレーザー装備に慣れるよう訓練するのは最も些少なことだ。
  20. 「信頼醸成が必要だ」とヘンリー・「トレイ」・オーバリング中将(退役)がAir Force Timesに語った。「机上演習、訓練、演習が必要です」
The amphibious transport dock Ponce conducts an operational揚陸ドック型艦ポンセに実証型の海軍レーザー兵器システムが搭載され、アラビア湾に投入されている。空軍もポンセでの運用実績に期待し航空機搭載レーザーとしてAC-130への応用を考えている。さらにF-22やF-35への搭載を想定している。 (Photo: John F. Williams/Navy)
  1. オーバリングは現在はブーズアレンハミルトンで指向性エネルギー事業に従事しており、空軍内部並びに軍組織全体で時間をかけた価値観の変化が必要だという。
  2. 「隊員がこの兵器の能力を十分理解し、教育訓練を受ければ実用化が可能となり、戦術や手順も実戦に対応できるようになります」という。
  3. 目に見えず音もほとんどしない兵器の照射を当たり前に思う隊員を作るのは簡単なのか。
  4. 「空対空ミサイル発射音に慣れたパイロットや爆弾投下の衝撃を経験したパイロットを新兵器に適応させる必要がありますね」(オーバリング)
  5. 「ミサイル防衛庁長官時代に空中発射レーザー実証機を運用していましたが、乗員がとまどっていたのはレーザー発射の瞬間がわかるのは機体後部で発電機の出す振動が聞こえるときだけでした」という。
  6. 解決策として指向性エネルギー兵器の訓練で「効果と有用性をパイロットの男女に理解させること」があるとオーバリングは指摘する。
  7. 国防企業数社が指向性エネルギーレーザー各種や高周波兵器開発に従事しており、軍へ
  8. の採用を円滑に進めるべく、オーバリングは「モジュラー化し標準化した構造」でシステム作動を保障する必要があるという。そうすれば空軍は契約企業が違うことがあっても装備のつぎはぎ状態を避けれるという。
  9. 一方でハイトホールド中将はAC-130は緑色照準レーザーが搭載されており、その消費電力量はレーザーポインター以下だとする。
  10. 「緑色光線で敵は怯えます」と中将は会場で語った。「光線が出ると標的地点で動きが止まります。緑光線の次に何が来るかわかっているからです。もう少し出力を上げて目に見えなくなるといいですね、相手に聞こえなくしたいですね」■

2015年12月17日木曜日

★★★ノースロップの考える第六世代戦闘機はここが違う



お伝えしたようにF-35は日本国内生産も始まり、これから各国向けに普及が始まる段階ですが、一方で技術陣はその次の「第六世代」機の検討を始めています。ビーム兵器やおそらく電子戦装備でこれまでとはちがう性能を発揮することが期待されているのでしょう。また中露の数で勝る装備に対してこれらハイテクで技術的に優位に立つ第三相殺戦略の重要な一部となるはずです。今回はそのうちノースロップ・グラマンの最新動向をお伝えしましょう。

Northrop Grumman Studies Technologies for F-22, F/A-18 Replacement

Dec 12, 2015 Guy Norris and Jen DiMascio | Aerospace Daily & Defense Report

http://aviationweek.com/defense/northrop-grumman-studies-technologies-f-22-fa-18-replacement


Northrop Grumman

PALMDALE -- 米空軍、米海軍が第六世代戦闘航空機材へ関心を高める中、ノースロップ・グラマンは指向性エネルギー兵器と熱管理を将来の中核技術として研究を加速中。

  1. 同社はかつてYF-23で制空戦闘機参入しようとしたが、ロッキード・マーティンのF-22の前に敗れた。今回、同社は高性能戦術戦闘機案として任意有人操縦可能な無尾翼機の構想図を発表し、ラプターやボーイングF/A-18E/Fの後継機を目指す。次世代制空戦闘機next generation air dominance (NGAD)では不明な点が多々あると同社も認めつつ、熱負荷対策技術がカギになるという。
  2. 熱負荷は搭載兵装の高性能化とくに機内搭載レーザーや強力な電子装置、センサー類、推進系から発生する。この問題はF-35の初期テスト段階でも認識されており、今後登場するNGAD案ではもっと深刻な課題になると見られている。ノースロップはNGADとして空軍向けF-X(今やF-22に加え、F-15Cの後継機との位置づけ)、海軍向けF/A-XXの双方を開発する意向。
  3. これまでの制空戦闘機と根本的にちがうのは指向性エネルギー兵器の搭載だ。「NGADでは機体と兵装を一体化し、これまでにない形になる」とトム・ヴァイス(ノースロップ・グラマン航空宇宙システムズ社長)は言う。レーザー技術で小型化が進み、大掛かりな化学反応装置が半導体電子レーザーに代わりつつあるが、ヴァイスは熱管理が依然としてカギであるという。
  4. 「現在最高性能のレーザーでも効率は33%にすぎない。もし100kW級のレーザーで200kW級に匹敵する性能を発揮させたらとてつもない熱が発生する。これが2メガワットならどうなるか。機体が発光するのを防げるだろうか」とし、この課題を解決できるものがNGADで勝ち残れるという。「熱力学が勝敗を決定するでしょう」
  5. 熱管理の課題への答えの一つが米空軍の統合機体エネルギー技術Integrated Vehicle Energy Technology (Invent) でボーイングが開発中の適応型スマート機内発電システムだ。ノースロップの研究技術高度設計部門の上級副社長クリス・ヘルナンデスは「ある会社の研究内容は業界で共有できる。その機会を待っている」と語る。
  6. だがノースロップも自社で独自の熱制御技術を開発中だ。「待っている余裕がありません」とヘルナンデスは言う。「当社にはレーザー関係の研究に必要な設備がすべて使える実験室があります」
  7. ヴァイスもこう述べる。「他社に依存していられないので、自社で新しい発明をめざし、厖大な発熱への対応策を考えている」 ヴァイスは詳細を語らないが、Inventで構想する蓄電装置とは違うという。
  8. 「蓄熱してもある段階で放出する必要があります。だが『発射』も必要となります」とし、レーザーの発射回数について述べている。「当社の考え方はレーザーを搭載する場合、無制限の発射回数を確保するため、連射間隔、有効射程で制約があってはならないでしょう。そこで熱力学の問題に戻ると『こっちの蓄熱装置はいっぱいだから熱を放出しなくちゃ』と次の発射が可能となるまで敵にこちらに来ないでとは言えないでしょう。蓄熱装置だと思考が制約されてしまう。、わが社は自由に創造思考したい」
  9. 兵装類や電子装置が放出する熱は熱交換器を適応型エンジンの「第三の風流」内に設置して排出できる。このエンジンも空軍研究所が取り組んでいる。「エンジン技術はVaate(多用途低価格高性能タービンエンジン)事業により性能が向上するが、まだエンジンの姿は見えてこない」とヘルナンデスも言う。「Vaateで進歩するエンジン技術はこれから必要となる技術の核として応用可能だろう」
  10. ヘルナンデスによればNGAD設計では相当の空間を確保している。「今の段階で判明している技術とこれから出てくる技術があり、航続距離、速度、兵装類、残存性、操縦性の要求水準はまだ不明ですからね」
  11. その答えの代わりにノースロップの高度技術設計部門はScaled Composites社の元トップ、ケヴィン・ミッキーが率いており、「モデリングとシミュレーションを強化し、同じ問題に異なる解決方法を試している」という。
  12. ただし、一機で需要すべてをこなそうとしたF-35の経験は各軍や業界でまだ鮮明で、今の中心は価格にも置かれている。「なんでもうまくやろうとすると高くなる。そこで重点を技術、設計、性能で解を求めるが、すべからく費用と相談することとしている」とヘルナンデスは言う。
  13. 航続距離も設計で重要な要素だが、今回はいささか理由が違っている。「将来は海外基地が減るだろう」とヘルナンデスは見る。「飛行距離が重要なら搭載兵装量は少なくなる。また敵側は防空体制を強化していることが分かっている。そのため残存性が極めて重要になる。そのため機体の形状はB-2を小型化したように見えるでしょう。ノースロップの強みなんですよ」という。■


2015年7月30日木曜日

★★レーザー革命がやってくる DE兵器の実用度が急速に向上か



指向性エネルギー兵器特にレーザーで何らかの進展が生まれつつあるのか複数のサイトで取り上げられています。今のところ将来を見通した観測記事の域を脱していませんが、技術の成熟化が着々と進んでいることが伺われます。この話題は今後も追っていきます。

The Laser Revolution: This Time It May Be Real

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 28, 2015 at 5:54 PM

US Navy photo
米海軍のLsWS(レーザーウェポンシステム)はUSSポンセに搭載されペルシア湾に展開中
TYSON’S CORNER: 新しいレーザー技術なら中国式の大量攻撃への対応手段として有望だ。ただし、レーザーではこの数十年、期待ばかり先行してきた。レーガン時代のスターウォーズ計画から航空機搭載レーザー(2011年計画中止)まであった中で推進派は懐疑的に感じる向き、特に議会筋を納得させる必要がある。ただし、今回は事情がちがうようだ。
  1. 議会指向性エネルギー議員会 Congressional Directed Energy Caucus の副会長ジム・ランジェヴィン下院議員 Rep. Jim Langevin は「議会内で指向性エネルギーへの態度はまだら模様だが、技術が成熟化しつつあり支持が強まっている」
  2. 「これまで指向性エネルギーは過剰宣伝され実態が追いついてなかった。多分これが一番の阻害要因だろう」
  3. 米国が指向性エネルギー兵器に費やした予算は1960年から累計で60億ドルを超す。「ただし最近まで成果があまりに貧弱だった」とダグ・ランボーン下院議員 Rep. Doug Lamborn もランジェヴィン議員の同僚として発言している。ただし現在は「興奮を呼ぶほどの移行期にあり、COCOM(戦闘部隊司令官)の要求水準にもうすこしで到達する所まで来た」
  4. 「指向性エネルギー兵器への関心を喚起するのは大変だが、議会内では超党派的な支持がある一方、反対意見もある。予算をめぐる競争は大変だ」とランボーン議員は述べている。
  5. 国防総省の指向性エネルギー関連の支出実績は年間3億ドルほどだが、すべて研究開発向けである。「拡大すると約束できないが、縮小はないだろう」とフランク・ケンドール副長官(調達、技術開発、兵站担当)は語っている。
  6. ケンドールの履歴を見ればどこまで開発が進んでいるのか、いないのかがわかる。ケンドールは指向性エネルギーにかれこれ40年間携わっており、最初は陸軍の防空部隊で若い大尉の時で、有望なこの新分野で論文を書いている。レーガン時代の戦略防衛構想、空中発射レーザー事業に関与してきたが、今回いよいよレーザーが現実の手段になろうとしている。
  7. ただし簡単ではない。「DE(指向性エネルギー)は1976年にもうすぐ実用化と言われた。1986年でも同じだったので、今や用心深くなっている。ただし、注目すべきブレイクスルーが本当に発生している」とトレイ・オバリング中将(退役)retired Lt. Gen. Trey Obering が発言している。
  8. オベリングは現在はブーズ・アレン・ハミルトンにいるが、以前はミサイル防衛庁長官で空中発射レーザー事業(ABL)の末期を見ている。ABLが失敗したのは戦術面を犠牲にしてまで技術の完成を目指したためだという。「実施可能かという点が支配し、何ができるのか、作戦上稼働するかは二の次だった」という
  9. それに対して今の技術は実験室レベルを脱し作戦レベルになってきたとオベリングは指摘する。とくに海軍の30キロワット級レーザーがUSSポンセに搭載された事例に言及している。「技術が完成するまで待つのではなく、今利用可能な手段を軍に取り入れ、フィードバックから第一線部隊がこの新兵器を話題にしています」 この方法で技術成熟化が進む中で「第一線部隊は受領して違和感なく感じている」という。
  10. このような現実的かつ経験を増やす形のテスト使用が議会内に着実に支持派を生んでいる。「米海軍がUSSポンセで行っている内容についてはよく言及しています。R&Dというだけでなく一部作戦レベルにあると見ています」(ランジェヴィン議員)
  11. 海軍の30キロワット級レーザーは現時点で米軍で唯一の作戦用レーザーだ。(目標照射用の非致死性レーザーは普及している) だがそれ以外の兵器も準備が進んでいる
  12. 空軍特殊作戦軍団は高出力レーザーをAC-130ガンシップの次期モデルに搭載しようとしている。「ブロック60にレーザーを搭載するのは10年後になるでしょうが、ブロック60自体はあと数年登場します」とAFSOC司令官ブラッド・ハイトホールド中将 Lt. Gen. Brad Heithold は語っている
  13. 空軍研究所は中規模出力レーザーの実用化を企画中だ。中規模といってもミサイルを破壊したりセンサーを利用不可能にできるが、航空機撃墜は不可能だ。これを戦闘機に搭載可能なポッドに収めようとしている。この実証を2020年までに実施するとAFRL司令官トム・マシエロ少将 Maj. Gen. Tom Masiello が発言している。ただし実戦化の日程は公表していない。
  14. 海軍は100から150キロワット級レーザーの海上公試を2018年までに実施する予定で、ポンセに搭載したレーザーより一気に3倍の強度を狙う。さらに2018年度予算に盛り込む。レイ・メイバス海軍長官の肝いりでできた海軍指向性エネルギー運営グループから提案書が出ている他、作業も開始されている。
  15. このように海軍は試作品を迅速に実戦部隊の要求に合わせようとしている。
  16. 第一線部隊司令官がレーザーに求める内容は今日では大きく異る様相を示している。
  17. 「ミサイル防衛庁に初めて足を踏み入れた2001年当時、実戦部隊はミサイル防衛を真剣に捉えていなかった」とオベリングは回想する。「これから登場するミサイル防衛手段としてイージスなどのモデルをつくろうとしたが、COCOMの側に関心が全く見られなかった。つまりまるっきり信じていなかったのだ。これが今は180度変わりましたね」
  18. 違いを生んでいるのは脅威対象だ。1991年に米軍は精密兵器体系でどんな仕事ができるかを世界に示した。それを一番注目していたのは中国だ。「それ以来、相手方も精密兵器を装備した場合の想定を恐れてきた」とケンドールは言う。
  19. 中国は高精度のミサイルに多大な投資をしているとケンドールは言うがロシア、イラン、北朝鮮もそれぞれ整備している。また非国家勢力が精密誘導ロケットや迫撃砲弾と既成品のカメラを無人機に積んで強力な効果を生む手段を作るかもしれない。
  20. 「現実に直面している問題は指向性エネルギーシステムズがずっと前に想定していたそのもので、特に精密誘導ミサイル、巡航ミサイル、弾道ミサイルです」とケンドールは言う。「今こそこの技術が重要な意味を帯びているわけです」
  21. だが作業を妥当な長さの時間の間に完成させられるだろうか。
  22. 「指向性エネルギーの開発ロードマップでは各種技術を応用して効果実証をあと5年で実施できることになっています」とケンドールは報道陣に語っている。「順調なペースではないでしょうか」
  23. 「現時点で達成できた成果をお知らせすることもできるのですが、まだリスクが多いのが現実です。複数の技術アプローチを取る理由はリスクですが、一歩踏み出さねば、結局どこにも到達できませんからね」■