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2022年7月1日金曜日

スネーク島撤収の背景、ウクライナにとっての意義、西側供与の新型長距離砲が効果を発揮したようだ

Russia Withdraws From Snake Island

Uncredited

ウクライナからの激しい砲撃を受け、ロシア軍は黒海の戦略的前哨基地から「戦術的撤退」した。

レムリンは、黒海の北西に位置する激戦地スネーク島から自軍が撤退したことを認めた。ウクライナ側は、長距離砲が侵略者を追い出すのに重要な役割を果たしたと述べている。いずれにせよ、2月下旬の侵攻開始直後からロシアの手中にあった極めて重要な戦略拠点を、ウクライナが奪還する可能性が出てきたといえる。

 

6月30日、スネーク島北端の近景。炎上中の桟橋と建物が見える。Maxar

ロシア国防省は、ウクライナの黒海から穀物輸出を可能にするための「戦術的撤退」だと説明し、最後のロシア軍は昨夜スネーク島(別名ズミニーイ島)を離れたようだ。モスクワは世界的な穀物不足を欧米の制裁のせいにしているが、これは非常に疑問のある議論だ。また、クレムリンが撤退を親善のジェスチャーに仕立てようとしていることも注目に値する。ロシア軍がキーウ進撃を断念した後にも同様の主張をしていた。

ロシア国防省の発表では、「国連の参加を得て成立した共同協定の実施の一環として、人道的な穀物回廊を組織するため、ロシア連邦はツミニイ島駐留地を撤収することを決定した」とある。モスクワはまた、黒海の港に向かう船舶の危険を取り除くため、沿海の機雷除去をウクライナに要求している。機雷除去は、ウクライナとロシア間の論争点だ。また、ロシア国防省は、現在16カ国70隻の外国船がウクライナ6港で封鎖されたままであり、砲撃や機雷の脅威にさらされていると主張し続けている。

ウクライナ国防省が出した勝利のツイートには、次のようにある。

「南方作戦司令部が確認した。ロシア占領軍はスネーク島を去った。ロシア軍は天候に耐えられなかった。足元は焼け付くようで、海は沸騰し、空気は熱すぎる。追伸:ロシア軍艦は、自分たち自身でくたばれ!」。

これは、ウクライナの国境警備隊が侵攻の際、ロシア軍艦に「くたばれ」と言ったことを引用している。この発言は、ウクライナ軍と支持者の間で叫び声となった。

一方、ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニValeriy Zaluzhnyi司令官は、ロシア軍はウクライナ軍の砲撃を受け離脱したと述べ、この作戦におけるウクライナ製2S22ボフダナ Bohdana 155ミリ口径榴弾砲の有効性を指摘した。一方、スネーク島は155mm砲弾の射程ぎりぎりの位置にあり、どの弾薬が使われたのかが疑問視されている。ウクライナがエクスカリバーの射程延長誘導弾を持っている、あるいは持とうとしているとの報道があったが、これがボフダナで使えるということはないだろう。

ボフダナ砲の数が限られている(1システムしかない可能性もある)ことを考えると、今回の砲撃では他の砲が使われたのは間違いないだろう。その中には、新型M142高機動砲ロケットシステム(HIMARS)や、米国が供給した精密誘導式227mmM30/M31ロケット砲が含まれる可能性がある。M142がスネーク島で使用されているかはわからないが、スネーク島を攻撃するのに十分な射程距離がある。

ウクライナ当局によると、最後のロシア軍は高速艇2隻で逃亡した。これは、最近スネーク島のドックで目撃された2隻の作業船BL-820の可能性がある。5隻のボートが使用されたとの情報もある。

ウクライナ南部司令部の声明によると、今朝の時点でまだ爆発音が聞こえ、島は煙に覆われている。撤退したロシア軍は、ウクライナの手に落ちるのを防ぐため、自軍の陣地や貴重な建造物、設備を破壊したとみられる。

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6月30日のスネーク島に立ち上る煙が見える. Maxar

6月30日、スネーク島南端のクローズアップでは施設の大半が破壊されているのがわかる。 Maxar

 

2月にロシア軍に占領されて以来、スネーク島は、南部戦域と黒海地域への影響力を中心に、紛争で極めて重要な役割を果たすようになった。

ロシア侵攻に対するウクライナの抵抗拠点としての重要性は、早くから確立していた。当時黒海艦隊の旗艦であった巡洋艦モスクワからの降伏勧告に対し、島にいたウクライナ国境警備隊の一人が「ロシア軍艦、くたばれ!」と言ったのは伝説的な事件だ。

2022年4月、ウクライナとアメリカの当局者がウクライナのネプチューン対艦ミサイルによる攻撃とした行動でモスクワが沈没すると、黒海のロシア防空網は枯渇したままとなった。そのため、ロシアはスネーク島の地上防空システムを強化しようとしたが、これもウクライナの度重なる攻撃にさらされたようだ。ウクライナのSu-27フランカー戦闘機とバイラクターTB2無人機が同島を攻撃し、小型軍艦数隻が沈没または破損した。

 

占領下のスネーク島にウクライナのSu-27が低空侵入し直撃弾を与えた。Ukrainian drone FLIR video screencap

5月2日のスネーク島沖のウクライナ軍大規模作戦では、無人機による攻撃でロシア海軍のラプター級哨戒艇2隻が破壊された。TBが海軍艦艇の撃沈に使用されたのは、これが初めてだった。

5月17日には、ロシア海軍の救助艦「ヴァシリー・ベク」が、人員、武器、弾薬を島に輸送中に、ウクライナは対艦ミサイル「ハープーン」を2発命中させたと発表があり、同兵器のウクライナにおける初の戦闘使用成功例となった。しかし、ロシアはまだ同艦の喪失を公式確認していない。

スネーク島と同じ地域にあるロシアの重要なインフラも、ウクライナ軍から攻撃を受けている。6月20日、ウクライナは黒海北西部でロシアが占有しているガス掘削装置を標的にした。これに対し、ロシアはオデーサにミサイル攻撃を開始した。

それ以来、スネーク島のロシア軍陣地へのウクライナ砲撃が強化されたようだ。今週初め、ウクライナ南部軍司令部は、同島を解放する「進行中の作戦」があると述べた。ロシア側は、同島でウクライナの揚陸攻撃を撃退したと何度も主張しているが、これまでのところ確たる証拠はない。また、最近、ロシアはスネーク島での軍事行動を支援するため、民間人を説得するのに苦労したとの未確認の報告がある。この小さな島の争奪戦が激化し、兵站問題も撤退の一因となった可能性が高い。

6月21日の衛星写真には、スネーク島のロシア軍拠点への攻撃が成功した証拠と思われるものが写っていた。画像では、島の中心部と既知の防空拠点周辺に新たな焦げ跡のようなものが見えた。23日撮影された別の画像では、島の東側に大規模な焦げ跡と傷跡があり、砲撃がより広範囲に及んでいることが指摘された。

 

6月21日撮影のスネーク島では焼け焦げた跡が見られ、直近の攻撃を物語っている。 PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

その後、ウクライナ当局が公開したビデオは、6月27日にロシアのパンツィール防空システムを破壊したことを含め、同島への空爆を示している。ウクライナが同島でロシアの防空システムを破壊したと主張したのは1週間足らずの間に2回目である。

ウクライナ軍による執拗な圧力がロシア軍撤退の決定的な要因になったようだ。ロシア国防省はテレグラム・チャンネルで、ウクライナの絶え間ない攻撃により、ロシアが島を保持しようとする努力が法外なコストになったと主張しているようである。

また、ここ数カ月は、スネーク島がロシアによるウクライナ西部侵攻に利用されるのではないかとの憶測が広がっていた。ウクライナ軍情報当局は、モスクワによるこの種の侵攻は、さらに西にあるモルドバの離脱地域トランスニストリアに駐留中のロシア軍との連携や支援に使われる可能性があると指摘している。作戦初期には、ロシアの重要な同盟国であるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領も、少なくとも当初はこの計画の一部を示すような地図を示しているのが目撃されている。

侵攻が進み、島がますます危険な場所になり、こうした懸念はほとんどなくなっていった。しかし、島を守り、安全を確保すれば、ロシアはウクライナ西部の航空機を狙う長距離防空網を導入することができる。陸上攻撃用ミサイルも同様だ。また、近隣のNATO諸国を脅かし、NATO領域や黒海西部の奥深くまでロシアの「接近禁止の傘」を広げることになる。ロシアの敵を監視・偵察するために使用するだけでも、大きな価値が生まれていたはずだ。

スネーク島は、ウクライナ西部の制空権とアクセス権に関わるだけでなく、モスクワがウクライナの黒海港を封鎖しようとしていることとも関係がある。ウクライナは侵略前、世界の食糧の主要供給国であったため、この封鎖によって重要な穀物の輸出が妨げられ、その結果、価格が上昇し、世界のいくつかの国で深刻な食糧不足の原因になっている。

スネーク島からの撤退、そしてクレムリンの人道的配慮の主張にもかかわらず、ロシアはクリミア基地から機雷原、潜水艦、水上艦、航空機、長距離ミサイルなどを使ってウクライナの港湾封鎖を継続できることにも注目すべきであろう。いずれにせよ、スネーク島がこれらの取り組みにどれだけ貢献したかは定かではないが、占領部隊への圧力は確実に強まっている。

軍事的な意味合いはともかく、ロシアがスネーク島を手放したことは、ウクライナにとって大きな宣伝効果となる。海軍を持たないウクライナに、ロシア軍が追い出されたのだから。

ウクライナ軍がスネーク島を奪還し、独自のプレゼンスを確立できるか、そして、実行すれば、ロシアがどう対応するかはまだ分からない。ロシアの航空機やミサイルがスネーク島を攻撃できるようになれば、今度はウクライナにとってスネーク島防衛が法外なコストとなる可能性がある。これはある種の罠であるとも言える。さらに、ロシアの巡航ミサイル攻撃が激化する中、島を防衛する地上型防空システムは他の戦場で使用した方が良いと考えるかもしれない。同時に、黒海の奥深くのロシア艦船への対艦ミサイル攻撃を行い、ロシア海軍の封鎖費用を増大させるために、同島を利用することも可能である。

しかし、この岩だらけの前哨基地の戦略的重要性が低下する恐れがないのは明らかだ。同時に、戦闘機数十機しかなく、自前の海軍をほとんど持たない敵を前に、ロシア自慢の黒海艦隊がこの島を保持できなかったとは驚くべきことだ。■

 

Russian Forces Have Been Driven From Snake Island | The Drive


BYTHOMAS NEWDICKJUN 30, 2022 1:24 PM

THE WAR ZONE


2022年5月12日木曜日

ウクライナ戦。巡洋艦モスクワを喪失し、黒海のロシア海軍が劣勢に。スネーク島を巡る戦いが焦点。

 Russian Navy amphibious warfare ships in Black Sea base

 

ロシア海軍揚陸艦の多数が、ノボロシスクに集結している。同港はセパストポリから遠く、スネーク島付近で見られることが少なくなっている。また、ベルジャンスクでロシアが拿捕したウクライナ海軍の艦船も確認されている。

 

ロシア海軍が劣勢になりつつある。ロシアはウクライナ侵攻で、最初にスネーク島を奪取した。その2カ月後、ロシアはスネーク島の維持に必死になっている。黒海北方でロシア支配が弱まっている証だ。


 

巡洋艦モスクワ喪失後の最大の影響は、黒海北部がウクライナ機に安全な場所になったことだ。特にウクライナ海軍のTB2ドローンにとって。戦略的な意味合いが生まれたといってよい。

 焦点は、ウクライナ南西端にある小さな岩礁、スネーク島だ。開戦時にロシアに占領された。巡洋艦モスクワも奪取に役割を果たした。

 クリミアから西に侵攻できない今、スネーク島は孤立した前哨基地となっている。同島はクリミア以西の唯一のロシア拠点だ。そして、無防備になりつつある。

 

小さな岩の大きな代償

巡洋艦モスクワの役割は主に防空で、S300ミサイルを搭載していた。モスクワが消えた後、ウクライナ軍無人機は標的に効果的に対応できるようになった。劇的な効果を生んでいる。

 ウクライナの最初の大きな動きは、無人機による攻撃による島内の防空網の破壊だったようだ。少なくとも理論上は、強力なSA-15 Torミサイルシステムが防空を担っていた。そのシステムを排除したことで、ウクライナ海軍のTB2ドローンが付近を飛行できるようになった。ロシア海軍の最初の犠牲は、5月2日の2隻のラプター攻撃艇だった。

 プロジェクト03160ラプター級は、スウェーデンのCB-90をモデルにしている。特殊部隊の投入や撤収など、多くの用途がある。しかし、防空能力は限られ、激しい動きを見せてもTB2の格好の標的になってしまった。

 5月7日、ロシアはSA-15ミサイルシステムを同島に搬入しようとした。その際、TB2のドローンがプロジェクト11770セルナ級揚陸艦を捉え、荷揚げするところを直撃した。攻撃は壊滅的で、同艦は揚陸地点を塞いでしまった。

 防空能力が低下したロシア軍守備隊は、無人機と戦闘機による空爆を次々と受けることになった。やがて建物のほとんどが瓦礫と化した。ロシアはまだラプターを運用していたが、5月8日にTB2がさらに二隻を排除した。ヘリコプターが部隊を島に上陸させた。

 しかし、ロシアは、戦略的価値のある同島を保持すると決意しているようだ。5月9日、スネーク島の隣で、少し大きめのプロジェクト21820ジュゴンDyugon級上陸用舟艇が1隻観測され、SA-15 Tor防空システムを搬送するためと思われる。

 

大型揚陸艦の動きがない

Naval Newsは、独立系防衛アナリストのBenjamin Pittetと、黒海のロシア海軍水陸両用軍を観察してきた。作戦パターンに変化が見られる。

 ここ数週間、スネーク島周辺で大型揚陸艦の活動を見かけなくなった。開戦して数カ月は、ロプチャ級揚陸艦1隻か2隻が島の近くで頻繁に観測されていた。 

 ロシアは侵攻までに、黒海に追加の揚陸艦を送り込んでいた。北方艦隊とバルト海艦隊から、ロプチャ級揚陸艦と新型のイワン・グレン級揚陸艦が派遣されていた。また、カスピ海からは小型上陸用舟艇が移動し、太平洋からも追加派遣の気配もあったが、状況は一転した。

 

上陸用舟艇が2倍以上に

黒海の揚陸戦力は、揚陸艦の移動で2倍以上となった。当初、大部分はクリミアの西側、オデーサに面した場所に集中しオデーサ付近で「示威行動」任務が行われた。だが期待された上陸作戦の機会は来ず、おそらく頓挫したのだろう。

 4月下旬、モスクワ沈没の後、パターンに変化があった。スネーク島付近でロプチャ級を見かけなくなったのだ。オープンソース情報では、完全に停止したとは断言できないが、あらゆる兆候は停止していると思われる。代わりにラプター級や小型のダイゴン、セルナ級揚陸艦が使われている。

 巡洋艦モスクワがなくなり、危険な場所になったというのが素直な解釈だろう。ロプチャは対空砲を持つが、ウクライナのミサイルやドローンの格好の標的になっている。そのため、揚陸艦は港内に集中している。黒海艦隊の上陸用舟艇は海に出ているが、より限定された運用のままだ。黒海艦隊はセヴァストポリとノヴォロシスクに残ったままだ。

 

呪われた島は次にどうなるか?

ロシアは、高い兵力と装備品を投入してでも、この島を維持する決意のようだ。位置は戦略的である。監視が可能で、ウクライナがを防ぐことができる。また、和平合意や最終的な領土奪取の際にも重要な意味を持ちかねない。また、マリウポルのウクライナ拠点と同様に、同島の防衛は象徴的になる可能性がある。

 ウクライナが同島を奪還しようとするかはまだ不明だ。感情的には強い動機があるかもしれない。政治的、戦略的にも意味があるかもしれない。

 しかし、実行すれば、状況は逆転となり、ロシアがウクライナ守備隊を自由に攻撃できる可能性が生まれる。同島は、効果的な局地防空がなければ無防備だ。今のところ、双方とも達成できるようには見えない。■

 

How The Russian Navy Is Losing Dominance: The Curse Of Snake Island - Naval News

H I Sutton  11 May 2022