デプチュラ中将の論点は極めて明確ですが、明確すぎて国産F-3の夢を捨てきれない人たちにはブーイングされそうですね。空軍力が確かに国防の第一線であるのですが、中国が日本に挑戦するとすれば航空機だけではないはずです。ミサイル、サイバー、工作員、海の民兵、など多様なはずで、論考はあくまでも航空機の分野に限られていることに要注意です。サイバーや宇宙も含めると航空自衛隊と言う名称が限界にきているのかもしれません。航空宇宙自衛隊JASSDFにしてはどうでしょうか。それはともかく、厄介な隣国である中国に対して日本がどうしても譲れないのは領土はともかく思想・表現の自由など基本的人権を尊重する仕組みの堅持であり、資本主義といいながら高度に社会を大事にするシステムを守ることではないでしょうか。
The Japanese Air Force Needs an Upgrade 航空自衛隊の戦力整備が必要
Faced with China’s increasing aggression, Japan must invest in fifth-generation fighter jets to deter Beijing’s expansion.中国の脅威増加に対応して日本は第5世代戦闘機を整備し中国の野望を抑えるべきだ
F-35A戦闘機モックアップを茨城県百里航空自衛隊基地で視察する安倍晋三首相。 Oct. 26, 2014. (KAZUHIRO NOGI/AFP/GETTY IMAGES)
日本の安全保障を根本から揺るがしかねない決断にまもなく迫られる。運用中のF-2戦闘機の後継機種選定だ。日本にしのびよる脅威がある。中国だ。中国が太平洋全域で強気になる背景に軍事力増強の進展が早いこと、最新装備の配備があり、決断に誤りは許されない。
日本は充分な抑止力整備で脅威へ対抗すべきだが、同時に有事に勝利をおさめるべく戦力拡充の必要もある。
このため高性能戦闘機、レーダーに探知されないステルス技術、高性能センサー、データ処理能力、安全にリアルタイム通信出来る能力に予算を回すべきだ。こうした性能をひとまとめに「第5世代」航空優勢戦闘機と呼ぶ。F-2後継機種にこうした性能が不可欠だ。ひとつでも不十分な性能のままだと日本はたちまち不利な立場になり第5世代機による兵力投射環境に対応できなくなる。
日本が147機のF-35を予定通り導入しても2030年までに中国の第5世代機は日本の二倍の規模になると予測される。日本の裏庭で中国が軍事力を増強しており日本も空軍力整備を最大規模で進めるべきだ。
周辺国への中国の脅威は現実のものだ。このままの流れを許せば、中国はさらに国際秩序を無視し領土所有に走るだろう。中国は南シナ海で実効支配地区を拡大し、1982年の国連海洋法を無視している。このために中国は3,200エイカー超の人工島を造成し軍事施設、センサー、航空基地、長距離対艦ミサイル陣地を構築した。
日本にとって気がかりなのはこの戦術が南シナ海に限定されず、中国は実効支配地区を東シナ海でも確保しようとしており、尖閣諸島の領有権をめぐり日本と対立し、沿岸警備隊艦艇や軍用機の哨戒を展開している。中国の目標は明白だ。日本の主権をなしくずしにするべく、継続かつ目に見える形で軍事圧力をかける。南シナ海のように中国の軍事プレゼンスが黙認されれば、即座に恒久的なプレゼンスとなり周辺国も事実上認めざるをえなくになる。
米国防総省は2018年の年次報告で中国の軍事戦略を「積極的防衛」で、「作戦上は攻撃姿勢」と記した。中国が国際規範を遵守するのであればこの表現で妥当と言える。だが中国が一方的に支配圏を拡大しておきながら軍事力で堂々と防御するのは受け入れがたい。2013年11月に中国が防空識別圏ADIZを拡大し、一部は国際的に認知されている日本のADIZと東シナ海上空で重複したが、これが中国の長期的姿勢を示している。
中国の野望を支えるのが人民解放軍空軍 (PLAAF)が運用する戦闘機1,700爆撃機400、輸送機475、特殊任務用途機115という数字だ。
これに対し米空軍の規模は戦闘機1,900、爆撃機157、輸送機570、特殊任務機140を世界に展開中であり、太平洋だけではない。中国は戦闘機材の近代化に注力し、Su-27やSu-30を原型とする第4世代機、国産J-10などを整備している。
第5世代機二型式のJ-20、J-31は米日両国の第4世代機部隊の強敵になりそうだ。推定では2030年までに中国は第5世代機を200ないし500機整備する。そうなると日本がF-35を予定通り調達しても数的に圧倒される。
さらに中国は高性能地対空ミサイルを配備し戦力を上乗せする。長距離攻撃手段整備を優先しており、2016年にPLAAF司令官(当時)馬騎天Ma Xiaotianが新型ステルス長距離爆撃機を開発中と発表した。米国防総省推定では同機は早ければ2025年に登場し、航続距離5千マイルと日本全土を攻撃範囲に収め脅威水準を文字通り破滅的な段階に押し上げるだろう。
中国軍事力に対抗し日本は防衛体制整備に注力し非対称的優位性の実現をめざすべきだ。日本の防衛と抑止力の第一線は航空自衛隊でありこれ以上に重要な存在はない。最新鋭第5世代戦闘機の導入が不可欠であるのは太平洋が広大で充分なペイロードがないと戦闘に対応できないからだ。中国が南シナ海で強硬になったのはまともな抵抗がなかったためだ。各国が非難を強め外交手段に訴えても中国が失う代償はごくわずかであり中国は喜んで支払う。日本は同じ手口にひっかかってはいけない。充分な戦力整備が中国の動きを制する唯一の手段だ。
このため日本のF-2(90機)の更新機材探しは重要だ。脅威環境に対応が難しくなってきたF-2は2030年代中頃に退役する。後継機に第四世代機の新規製造F-2、F-15、F-16、F/A-18、ユーロファイター・タイフーンをあてるのは賢明な選択と言い難い。中国が第4世代機で圧倒するからだ。
こうした機材で性能改修しても、ミッションを実行し無事帰還を裏付けるステルス性能がないことにかわりない。中国が第5世代機二型式の運用に向かいステルス爆撃機までも実用化する中で日本防衛の選択肢にならない。
幸いにも防衛省はF-2後継機として国産ステルス戦闘機の開発案を三菱重工業中心に検討している。さらに欧州との共同事業として英国主導のテンペストなど国際開発する案、米国の支援のもと第5世代機として既存機種の性能を織り込む派生型を世界最高性能の戦闘機とする案もある。
最初の二案は実現性で難がある。国際のF-2後継機は高コスト高リスクが技術開発上で心配される。欧州との協力事業では開発経費の抑制が実現するがあと10年で作戦投入できるかリスクもある。
ヨーロッパに第5世代機開発の実績はない。試作機さえもなく、生産ラインも存在しない。また新型機の開発生産を後押しする政治的支援もまだ未成立だ。中国が積極的に第5世代機の配備を進める中、欧州と組んでも時間の成約の中で日本に利点は生まれにくい。
対照的に「ハイブリッド」第5世代派生型機材の提案がロッキード・マーティンからありF-22ラプター、F-35ライトニングIIの実証済み技術を盛り込むとある。ステルスやデータ融合に加え日本特有の条件に合わせ、航続距離の増加で航空自衛隊の哨戒時間を空中給油なくても伸ばす事が可能だろう。
ハイブリッド構想が費用対効果と製造リードタイムで最も有望で、中国の脅威に対抗しながら日本が発注したF-35の147機も活用できる。さらに第5世代ハイブリッド機は日本の用途に合わせた機体になり、日本中心で生産できる。南シナ海での中国の台頭は無作為から生まれた痛い結果だ。これ以上の中国の横暴な動きを太平洋で食い止め日本の領土領海領空を守るべく実行力ある抑止力を実現するには予算と研究はよく考えて行う必要がある。
第5世代機はこの投資の重要部分となる。力の裏付けがある平和は確かだ。第5世代ハイブリッド戦闘機こそ日本の平和を実現する手段となる。
中国の兵力投射は空と海が中心だ。高性能第5世代ハイブリッドなら中国の兵力投射を迅速かつ決定的に打破できる。中国の脅威に全面的に対抗する実力が航空自衛隊に備われば、中国は侵攻を断念せざるを得なくなる。仮に誤算で戦火を開いても日本パイロットは第5世代ハイブリッド戦闘機でミッションを実施し無事帰還できるはずだ。■
David A. Deptula is a retired U.S. Air Force lieutenant general who previously commanded the joint force air component war-fighting headquarters of Pacific Command, served as vice commander of Pacific Air Forces, was stationed in Japan from 1979 to 1983 as an F-15 pilot, and is currently the dean of the Mitchell Institute for Aerospace Studies. Twitter: @Deptula_David