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2025年3月31日月曜日

イラク戦争でのシールズが主役の映画『Warfare』は醜い戦争を美しく描く(Task & Purpose) ― ラマディ作戦の失敗をレイ・メンドーサとアレックス・ガーランドが再現した

 Troops in uniform run through a smoke-filled enclosure. The lead man carries a sniper rifle and has an impressive mustache.

『Warfare』のコスモ・ジャービス。 写真提供:A24



初の数秒で、『Warfare』が異色の戦争映画だとわかった。

レイ・メンドーサとアレックス・ガーランドがイラクでの実戦を描いた本作は、セクシーな80年代ワークアウト風のダンス曲のミュージックビデオで幕を開け、主演の軍部隊が一緒に鑑賞する(戦闘地域ではポルノは禁止されているためだろう)。 3月27日にロサンジェルスで行われたプレミア上映には、このジョークに付き合わされた退役軍人が大勢集まり、映画は私たちを戦闘に放り込む前に、第1幕から本格的な悪ふざけを披露してくれた。

 正直に言うと少し泣いた。なぜかって? というのも、アフガニスタンへの派兵を含む筆者自身の陸軍での経験から、軍隊にいることは英雄的であるよりも不条理であることの方が多いと教えられたからだ。 

 『Warfare』はこのことを証明しようとし、"ハリウッド的"な瞬間もあるものの、直感的で個人的な何かを打ち出した。

 2025年4月11日公開予定のこの映画は、脚本を担当したメンドーサが2006年にネイビーシールズとしてイラクで参加した実際の作戦に基づいている。 映画は、メンドーサが所属するシールズ小隊がラマディ市での監視任務中、地元のジハード主義勢力に制圧される様子を描いている。

 この映画では、階級や兵科、具体的な仕事についての説明で時間を浪費することはない。 ストーリーは1日、1つの場所で展開し、それ以外には踏み込まない。観客は展開される出来事を通して、自然に知るべきことをすべて知り、それ以上のことは何も知ることはない。

 代わりに観客は序盤で戦争の現実を目の当たりにすることになる。まずアメリカ軍が現地パートナーをあまりにも頻繁に虐待している厳しい事実が描かれる。あるシーンでは、部隊に所属する2人組のイラク人が、片方がIEDで真っ二つにされる前に、まず銃撃を受け建物から出ることを余儀なくされる。 登場人物は少しも悪いこととは思っていないようだが、映画もそれを正当なものとして否定しようとはしていない。スクリーンにリアルに描く選択は、それがいかに間違っているかを私たちに教えてくれる。

 また、映画の舞台となったイラク人一家との短いながらも重要な場面もある。そしてエンディング・ショットは、最終的に反乱軍が勝利したことを暗示しているが、映画はそのいずれについても明確な声明を出すには至らず、喚起的なクローズアップを避け、ワイドで静的なショットでドキュメンタリーやジャーナリスティック的な視点に徹している。

 作品のチームはこのアプローチで堅実な選択をしたと思うが、観客の中には、『Warfare』がこのような問題を提起しながらも、スクリーン内のアメリカ軍以外の人物に共感する能力を制限しているように感じる人もいるのではないだろうか。それは、例えば、先に出撃させられることで自分たちの命より下に置かれたイラク人パートナーのバラバラになった遺体を無関心に踏み越える場面で顕著となる。

 戦争は醜いものだが、『Warfare』は美しく描いている。脚本家であるメンドーサ監督の若かりし頃を演じたディファラ・ウーンアタイや、作戦を指揮するウィル・ポールターをはじめとするアンサンブル・キャストの演技は素晴らしい。部隊の軍事戦術は終始リアルで説得力がある。しかし、コスモ・ジャーヴィスは、銃撃の中で負傷し避難するスナイパーのエリオット役で見せ場を作る。スナイパースコープを長時間覗き込んだ後にストレッチをしたり、チームメイトを理由もなくぎこちなく睨みつけるなど、彼の動きや表情ひとつひとつが軍での経験を想起させ、彼がスクリーンにいるとき、この映画は完全に現実のものとなる。


 『Warfare』はまた、優れた撮影と編集の恩恵も受け、明瞭で安定したアクションを見せてくれる。 アクション映画とは思えないほど芸術的なショットも多い。また、多くの戦争映画とは異なり、『Warfare』では、クイックカットや手ぶれ映像、ごまかしの効いたアングルで人為的なスピード感を演出するのではなく、重い荷物を背負って移動する部隊の、もったりとしたペースを見事に描写している。

 臨場感あふれるサウンド・デザインは、戦争の静かな瞬間と痛々しいほどの大音量の両方を際立たせている。爆発後の難聴や戦闘中の無線の混乱など、主観的なキャラクターの体験もいくつか伝えている。ミュージカル・スコアを入れない選択は完璧で、台詞は雑音の中でも明瞭だ。

 全体的に、この演出のおかげで、まるでその場にいるかのように、じっくりと出来事を体験できた。また、笑える場面で涙したように、不安を煽るような戦闘シーンでは何度も大笑いしてしまった。

 マイケル・ガンドルフィーニが見事に演じる、常に無能な将校がエリオットにモルヒネを注射しようとして自分の手を刺してしまったり、チームのクライマックスとなる最後の脱出劇でドアに挟まれたりする場面など、絞首台のユーモアは完全に意図的なものだと感じられる。『Warfare』は、その場にいた男たちが記憶している実際の出来事に基づいているが、メンドーサとガーランドは筆者のためだけに、特別な瞬間を暗く滑稽なトーンで描くことを選んだような気がした。


映画は第3幕で、避難を支援するため到着した第2シールズ・チームが、大胆不敵に町を駆け抜け、銃撃戦を繰り広げるクールガイの戦闘描写に少し触れるものの見ていて面白い。そしてこの映画は、部隊の人間性や誤りを決して無視せず、また、救助に来た人々の切断された死体に絶えず痛々しくつまずきながら、戦争の残酷さを直視している。

 戦闘が終わり、物語が終わると、すぐにスクリーンには実際の軍人と登場人物を並べる。しかし、『Warfare』は登場人物を正当に評価しており、この余分な努力は、『Warfare』が実際の戦争と同じように残す曖昧さを整理しようとする、意図的だが失敗した試みに思えた。この種の説明は、映画のトーンそのものをやや損ない、残念なエピローグだった。とにかく顔の半分がぼかされているので、最高に混乱する。

 とはいえ、『Warfare』が壮大な作品であることに変わりはない。この種の物語を、9.11後の世界に蔓延するヒーロー崇拝の域を超えるものにするには、まだやるべきことがたくさんある。観客はイラクとアフガニスタンの深く複雑な部分を体験する準備ができており、『Warfare』は力強いスタートとなる。ハリウッドがこの方向に進み続けるかどうかは、本作の批評家評価と興行収入で決まるだろう。

 『Warfare』は米国で4月11日公開。■


Iraq War movie ‘Warfare’ is a beautiful depiction of an ugly war

Ray Mendoza and Alex Garland's recreation of a mission in Ramadi gone wrong hits with visceral and personal details.

Addison Blu


https://taskandpurpose.com/culture/warfare-review-iraq-war/


2021年6月29日火曜日

イラク、シリア国境地帯への米軍空爆作戦の背景。わかりにくい状況に日本は目をつぶっていてはいけない。

 A screengrab from footage US Central Command released of a strike on a facility operated by Iranian-backed militias in As Sisak, Syria.

CENTCOM

イラク国内の米軍拠点が無人機襲撃を受ける事案が増加しており、攻撃はイラン支援を受けた戦闘員集団が行っている。

ラン支援を受けた戦闘員拠点三か所への米軍による空爆の様子が公開された映像で判明した。対象はイラクーシリア国境地帯にあり、ジョー・バイデン大統領の命令で実行され、無人機運用能力を攻撃の第一目標とした。ここにきてイラク国内の米軍施設を無人機が襲撃する事例が増えていた。

米中央軍(CENTCOM) は2021年6月28日に映像三点を公開した。攻撃は前日に米軍機により実施された。ペンタゴンはイラク、シリア国境地帯の施設はカタイブ・ヘズボラ、カタイブ・サイド・アルシュハダが主に利用したと発表している。

CENTCOM

米中央軍発表の映像。シリア・アルフリのイラン支援を受けた戦闘員集団施設が空爆を受けた

 

「必要かつ適切な行動として、エスカレーションのリスクを抑えるべく慎重に行動を取った。同時に明白かつ誤解を与える余地のない抑止メッセージを送った」と国務長官アントニー・ブリンケンが公式訪問中のローマで記者団に語った。

ペンタゴン報道官ジョン・カービーは「各標的の選択に当たってはイラン支援を受けた戦闘集団が無人機(UAV)を使った襲撃を在イラクの米人員や施設を標的に行っている地点を選択した」「今回の襲撃でバイデン大統領が米人員保護に真剣であることを明白に示した。イラン支援を受けた集団による在イラク米国権益への攻撃が続いており、大統領はもう一歩踏み込んだ軍事行動により攻撃を抑止する必要があると判断した」と述べた。

今回の空爆地点はイラク、シリアを結ぶ戦略地点である。バイデンはこれまでもカタイブ・ヘズボラ、カタイブ・サイド・アルシュハダ関連の別の地点の空爆を命令しており、今回の地帯も2月に空爆の皮切りとして選定されていた。今回の空爆はイラン北部で今月発生したエルビル国際空港で働く米契約企業要員がロケット攻撃で死亡したことへの報復である。カタイブ・ヒズボラはその他の米空爆の対象にもなっていた。

公開された映像はそれぞれシリア国内と説明があるが、CENTCOMがアルフリ、シサクと説明している二点が実際にはシリア領内にある。三番目がカサバットでイラクにある。

GOOGLE MAPS

2021年6月27日の米軍による空爆地点を示す地図。 based on geolocation done by Twitter user @obretix of the facilities seen in the footage that CENTCOM released.

GOOGLE MAPS

空襲地点三か所を示した拡大図。

 

CENTCOMによればアルフリは「イラン支援を受ける戦闘員集団が補給機能及び高性能通常型兵器として無人機含む装備の受け渡しを受ける地点」で、シサクは「イラン支援を受ける戦闘員集団が高性能通常型兵器を発送、中継する調整地点」とのことだ。カサバットは「イラン支援を受ける戦闘員集団の作戦、立案、および無人機保管所」だ。

「高性能通常型兵器」とは肩乗せ地対空ミサイルの携行型防空装備(MANPADS)他のミサイルや精密誘導弾、高性能センサー、レーザーさらに「軍事重装備」として戦車や航空機を広く指す用語と米国務省は定義している。

今回のシリア空爆では米空軍はF-15Eストライクイーグルを投入し、F-16CMヴァイパーがイラク領内の標的を攻撃した。現時点でイラク国内には米戦闘機材は一機も常駐していない。F-15Eはヨルダンから飛来したもののようで、これまでも同国を基地として空爆作戦を実施している。F-16はアラブ首長国連邦のアルダフラ航空基地に配備されており、サウジアラビアのプリンスサルタン航空基地にも展開している。両基地が今回の空爆に関与した可能性もある。


USAF

兵装を満載したF-15Eストライクイーグルがヨルダンのムワファクサルティ基地から発進している。2020年。



 

イラクのシーア派戦闘員集団のフロント組織であるイラク抵抗運動調整委員会はイランから直接の支援を受けており、今回の事件に対し空爆で死傷者が発生しているとしつつ詳細には触れていない。ペンタゴンは民間人の死傷者はなかったとの事後評価はしているものの、物質面での損害評価に触れていない。

ペンタゴンは今回の空爆のきっかけとなったイラン支援を受ける戦闘員集団による無人機襲撃事件について特定していないが、この数カ月で事件が続いていたのは事実だ。5月にはアルアサド航空基地、エルビル国際空港でそれぞれ事案が発生している。このうちエルビル施設は中央情報局(CIA)が利用しているといわれる。

エルビルはCIA関連の米拠点として知られ、共用特殊作戦司令部 (JSOC)の秘密作戦もここを利用している。両地点は2020年1月にイラン弾道ミサイル攻撃を受けており、この際は米無人機がカセム・ソレイマニ将軍(クッズ部隊司令官)を暗殺した報復とされた。クッズ部隊とはイランのイスラム革命防衛隊の一部で国外活動を専門とすし、イラクの戦闘員集団とも関係が深い。

6月26日土曜日にもエルビルが無人機の襲撃を受けたとの報道があった。その際に使用された無人機の残骸が現場で回収されているが、写真を見ると小型の固定翼形状であったことがわかる。

同日に人民動員軍(PMF)(名目上はイラク政府の統制を受ける傘下団体でイラン支援を受けるカタイブ・へズボラやカタイブ・サイド・アルシュハダもその一部)がバグダッドで大規模行進した。無人機が同時に展示され、機体はイラン製またはイラン機材に著しく酷似し、大型機は小型精密誘導弾の運用も可能だ。

展示機が実機なのかモックアップなのか不明だが、イランは代理勢力も使い実際の襲撃で戦力を実用化している様子がわかり、米国が支援する勢力や米軍事顧問団がシリアで実際に襲撃を受けている。

PMF内にはイラク中央政府へ堂々と反抗し暴力も辞さない勢力もあり、米国やその他外国部隊にも激しく反発している。また、こうした勢力の軍事力が大きく伸びていることが懸念となっており、無人機による襲撃事案が増えているのはこうした勢力が脅威となり、民生無人機を改装し即席爆発物を投下するなど十分に威力のある攻撃が可能となっている。米海兵隊フランク・マッケンジー大将はCENTCOM司令官として早くからこの事態に警鐘を鳴らしており、戦闘員集団が無人機を活用する事態に警句を鳴らしていた。

「小型あるいは中型UAS(無人航空システム)が拡散普及してきたことはわが軍にとって新しく複雑な脅威となっており、同盟国、協力国にも同様だ」とマッケンジーは4月の議会公聴会で発言していた。「朝鮮戦争以来初めて、完璧な航空優勢が確立されていないままわが軍は作戦を展開している」

イラン支援を受けた戦闘員集団は米人員を狙った無人機襲撃を実行し、米側が報復攻撃を行った今回の事案からイラクでの複雑な地政学的状況が浮き彫りになっている。イラク軍からは今回の米軍空爆は「イラク主権をあからさまにないがしろにし、国際条約に基づくイラクの安全保障にも悪影響」と非難する声明が出ている。

同時に「イラクはあらためて各国の決戦場になるつもりはなく、主権を維持し、さらなる行動や攻撃の場に供することを拒否する」とも述べ、両陣営への抗議とも読み取れる。「平穏に戻り、エスカレーションはいかなる形でも拒否しつつ、イラクは必要な調査、手続き、接触を各レベルで追い求め、暴力の発生を防止する」

今年三月にイラン支援を受けた戦闘員手段が米軍を標的とした攻撃を中止するとの報道があり、その条件とし低落首相ムスタファ・アルカディミが米軍の正式かつ完全なイラク撤収を求めることを挙げていたい。4月に米戦闘部隊の撤収を米イラク両国が確認したものの、具体的な日程についても触れていなかった。

すべては米国とイランが核合意体制への米国復帰をめぐり手づまり状態になっている中での進展だ。ドナルド・トランプ大統領が核合意から米国を脱退させた2018年以来、イラン側は合意内容をことごとく違反してきた。

さらに、今月に入り強硬派ノエブラヒム・ライシ(最高指導者アリ・ハメネイに近い)が大統領選挙に勝利しているが、米国は自由かつ公平に実施された選挙ではないと見ている。ここから両国間に新たな緊張が生まれるとの懸念が出ている。ペルシア湾では米イラン艦艇の対立が目立っており、米哨戒艇が実際にイランに警告射撃をした事例も発生した。

今回のイラクシリアでの空爆についてイラン支援を受ける戦闘員集団の無人機運用能力が実際にどれだけ低下したのか不明だ。時がたてば空爆の効果があったのかがわかるはずだ。戦闘員集団は米国の権益を標的とすべく運用能力の拡大に努めているが、背後にいるイランとともに米政府のメッセージを受けることになりそうだ。

UPDATE: 4:15 PM EST —

シリア国内の地点不詳にある米軍部隊がロケット攻撃を本日受け他とISISと戦闘中の米主導連合軍を代表し米陸軍ウェイン・マロット大佐が発表した。「死傷者や損害は発生していない」とのツイートが出ている。映像ではイラン支援を受けた戦闘員集団がロケット弾を発射する様子が出ており、前日の米空爆への報復とされる。

さらにこれもイラン支援を受ける血盟報復団サラヤ・アウリヤ・アル・ダムがイラク上空を飛行中の米軍機の撃墜を試みた。同集団はエルビル国際空港への2月の襲撃事件を行ったと認めており、米契約企業関係者が死亡している。今回のイラクシリア国境地帯への米空爆の引き金となったのが同襲撃事件だった。

UPDATE: 4:45 PM EST —

米陸軍ウェイン・マロット大佐から追加発表があり、シリア国内の米軍部隊がロケット弾攻撃を受けた際に「正当防衛として」内容不詳の反撃をしたとある。

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

Biden Orders Strikes On Iranian-Backed Militias' Growing Unmanned Aircraft Arsenal (Updated)

 

BY JOSEPH TREVITHICK JUNE 28, 2021


2019年5月2日木曜日

4月30日、F-35Aが初の攻撃ミッションをイラクで実施



USAF F-35As Flew First-Ever Combat Strikes With Radar Reflectors And Sidewinders Fitted 米空軍F-35Aが初の実戦攻撃任務を実施 レーダー反射板とサイドワインダーミサイルを外部装着

The F-35As flew in a less than stealthy configuration as the aircraft's low observable capabilities weren't needed—at least not yet.

サイドワインダー等を搭載しステルス性を犠牲にしたのは必要がない状況だったため


BY TYLER ROGOWAYAPRIL 30, 2019


KC-10 supports F-35A's first air interdiction
U.S. AIR FORCES CENTRAL COMMAND—PUBLIC DOMAIN


空軍所属のF-35Aが初の兵装投下をした。UAEのアルダフラ航空基地を離陸したF-35Aの2機編隊は2019年4月30日イラク上空に到達し、GPS誘導方式の共用直接攻撃弾JDAMをISISの武器貯蔵地下トンネルがあるハムリン山地に投下した。この施設は連合軍に危険な存在でISISの再生の鍵になると見られていた。
388戦闘航空団、418戦闘航空団の所属機が今回投入されユタのヒルAFBから2019年4月15日に中東に移動していた。中東へのF-35A配備は今回が初めて。イスラエル、USMCがともに中東でF-35I, F-35Bをそれぞれ戦闘投入しているが、今回は9月以来初の戦闘投入になった。
第4戦闘飛行隊司令ヨセフ・モリス中佐がUSAF公式発表を以下伝えている
「相当の量の情報を収集、融合、共有し各機の残存性と戦力を高めている。...F-35Aは各所にセンサーを搭載しており、高性能レーダーがあり、戦闘地点の情報をリアルタイムで全て収集し融合できる。さらに集めた情報を僚機のF-35のみならず第4世代機と共有できる。...低視認技術がここに加わり統合軍部隊を補完し、AOR緊急事態の支援を常に行える」
USAF
KC-10から今回の戦闘任務で空中給油を受ける。AIM-9Xがパイロンにつき、レーダー反射板が垂直尾翼前に見える。


以上は正しいとは思うが今回の生来の決意作戦での戦闘ミッションではF-35は低視認(ステルス)性能を使用していない。今回の機体にもAIM-9X空対空ミサイルを主翼パイロンに装着しており、機体上部と下部にレーダー波反射装置をつけていた。この状態だとレーダー上で大きな姿をさらけ出すがイラクのような戦場では低視認性に大きな意味はないのでこれでいいのだ。
F-35Aを非ステルス機で運用すればAIM-9Xの外部装着も当然だろう。米軍戦術機が自機防御のためサイドワインダーを搭載するのは普通のことでアフガニスタンのように危険度が低くても搭載している。F-35はAIM-120AMRRAM二発を機内兵装庫に搭載できるが、視程内空戦ではAMRAAMはAIM-9Xの性能にかなわない。
非ステルス仕様でF-35を飛ばしたわけだがシリア上空への展開やこれまでF-22が果たしてきた「クォーターバック」任務をこなせば状況は変わるはずだ。完全低視認性の状態が必要になるのはロシアのような大国への投入時で最高性能の防空電子装備が配備されている空域への突入時で、相手方も同機の低視認性能を探ろうと躍起になるはずだ。ただし同じロシアでも東側となればここまで深刻な状態ではなくなる。
USAF
今回の中東ミッションでKC-10と並行して飛ぶF-35A編隊。AIM-9Xが主翼翼端パイロンについていることと機体下部のレーダー反射装置が視認できる

事実、対戦闘員攻撃ミッションでのF-35Aの威力はF-16より劣る。電子光学式標的捕捉装置EOTSを機首に装着しているがすでに15年前の技術であり、最新のスナイパーやライテニング照準ポッドをつけた第4世代機より見劣りがする。F-35のEOTSは実施未定のブロックIV改修で性能向上される予定で、ソフトウェアと一部部品を交換する。
USAF


ではF-35に高性能版のスナイパーポッド搭載が当面の近接航空支援任務や戦闘員掃討作戦で意味があるのではないか。今回の初の実戦任務でF-35Aは事前設定標的をJDAMで攻撃したが、これならEOTSを使うまでもない。今後も投入が続けば同機が航空支援に使えるかがわかるが、非ステルス仕様で飛ぶのなら第4世代機で威力のある照準ポッドを使うほうが理にかなっている。
つまりF-35を投入するミッションはステルス性能が不要な場合が大部分だということだ。そうなると共用打撃戦闘機の海外展開では外部兵装搭載の形で飛ぶ事が普通になりそうだ。

とはいえ、今回の任務達成はUSAFやF-35事業には大きな出来事になり、運に恵まれればF-35の中東での活躍ぶりを眼にすることも増えそうだ。ただしそのためには同機が現地の戦況に適合しつつミッションテンポが上向きになる必要がある。■

2018年1月3日水曜日

F-15無敵神話を追う 第二部


Has Anyone Ever Shot Down an F-15 in Air Combat?

F-15は航空戦闘で喪失が本当に一機もないのか

Part two

Has Anyone Ever Shot Down an F-15 in Air Combat?
 WIB AIRWIB HISTORY January 1, 2018 Tom Cooper
第二部

ボーイングおよび米空軍の公式発表ではF-15イーグルの空戦実績は104対0で一機も喪失していない。だが敵側勢力から同機を撃墜したとの主張が数例出ている。
 だがその内容には撃墜の証拠がないことが共通している。
 イラクは1991年1月4日、砂漠の嵐作戦開始後13日目にイラク軍戦闘機がイスラエルF-15編隊を迎撃し一機をH-3航空基地近くで撃墜したと主張している。
 数年たちイラク退役准将アーメド・サディクが再び主張し撃墜現場を視察したとも述べた。墜落したF-15は地上に激突したためめぼしい残がいはバイロットのブーツだけで本人の遺体の一部が入っていたという。
米F-15Cとサウジ空軍のF-5E タイガー II, 砂漠の嵐実施前の演習にて。 U.S. Air Force photo

 サディクによれば残骸の残りはイラク空軍情報部のあるバグダッドへ送った。12年後のイラク侵攻で米軍が情報部を荒らし証拠を破壊したという。
 次のイラクの主張はやや現実味が強い。1991年1月30日、イラク空軍MiG-25PDSフォックスバット二機編隊がバグダッドとイラン国境付近を飛行する米空軍イーグル二機編隊を迎撃した。イラク地上管制は敵機に両機を差し向け、一機のMiGがR-40ミサイルを発射し爆発したが命中しなかった。
 同じMiG-25編隊がハン・バニ・サード東で別のF-15C二機に襲い掛かった。激しい電子妨害を受けながらフォックスバット先頭機がR-40RD一発を12マイル地点で発射すると、イーグル二機はスパロウ二発で反撃してきた。F-15Cが降下しながらフレアを放出するのを視認したフォックスバット先頭機パイロットはR-40が近くで爆発し損害を与えたと結論づけた。
 スパロウミサイル二発は命中せずフォックスバットは左旋回で北へ退避した。残る米機がAIM-7Mを三発発射したが全発作動しなかった。イーグルのパイロットは南へ移動してフォックスバット二番機と交戦を避けた。
 MiG-25編隊がバグダッド西のタムズ基地に帰還すると別のF-15編隊に襲撃を受け、スパロウミサイルが着陸中のフォックスバットの10フィート後方の滑走路に命中したという。
F-15Eがダーラン基地(サウジアラビア東部)に並ぶ。 U.S. Air Force photo

 一方でイラクの地上レーダーは先に襲ったF-15編隊が後退する様子を捉えうち一機が減速し高度を落とすのを確認し、サウジアラビア領土内で墜落したと推定した。これによりフォックスバット先頭機パイロットに撃墜確実が認められ、その後ベドイン族密輸業者がF-15残骸がサウジアラビア北部に埋まっていると述べ撃墜が確認された。
 実際にはこの交戦でF-15Cに墜落は発生していない。砂漠の嵐作戦全体でも一機も撃墜されていないが米空軍はF-15Eを二機喪失した。1991年1月17日と19日で対空砲火によるものだ。ただし航空戦喪失ではない。
 だが奇妙な事件が発生した。F-15が敵側の手に渡る寸前になった。1990年、砂漠の嵐作戦実施前にサウジ空軍のF-15Cパイロットがアラブ同士の戦闘の可能性に悩みスーダンへ機体もろとも亡命した。

 ペンタゴンは航空部隊に敵性F-15との遭遇可能性ありと警告した。ただサウジ政府の迅速な対応のおかげで解決した。うわさではリヤドがハルツームに5千万ドル支払い機体回収したとのことである。■

2016年11月11日金曜日

縁の下の力持ち? 不気味なAC-130はアフガニスタンで酷使されている


スプーキーとは不気味な愛称ですが、暗闇の上空からいきなり105ミリ砲の攻撃を食らうのは大変恐ろしいことなのでしょう。ただこの機の運用には完全な航空優勢の確保が条件ですね。また機体整備が大変な状況が読み取れますが、火砲による振動も大きな影響なのでしょうか。19世紀の戦列艦が空を飛んでいるような存在ですね。

War Is BoringWe go to war so you don’t have to

In Less Than a Year, U.S. Air Force Gunships Flew Nearly 4,000 Hours in Combat
by JOSEPH TREVITHICK
米空軍の戦闘力というと高速で飛ぶF-15やF-16戦闘機、強力な威力を発揮するA-10対地攻撃機、B-1やB-52の大型爆撃機に注目が集まる。だが恐ろしい効果を上げているAC-130ガンシップが取り上げられることはきわめて少ない。
  1. 重武装AC-130が投入されるのは隠密作戦が多く、地上特殊部隊と連携するため空軍も同機の活動を詳述するこのは稀だ。だがこの特殊用途機が世界各地で大きく貢献しているのも事実だ。
  2. 2013年11月から翌年6月までだけでも第四特殊作戦飛行隊所属のAC-130UスプーキーII各機は合計4千時間も戦闘任務に投入されたと公式空軍記録にある。合計7機の海外展開は延べ1,175日になっている。
  3. War Is Boringはこの度、情報公開法により空軍年次報告の写しを入手したがかなりの部分が削除されている。
  4. AC-130導入はヴィエトナム戦争時点に遡る。U型が1995年までに導入された。C-130輸送機を改造し、火器、装甲、センサーを搭載。U型は25ミリガトリング砲、40ミリ銃、大型105ミリ迫撃砲を機体左側から押し出して運用する。強力な暗視装置、レーダーその他で敵を探知する。通常は13名で運用する。
  5. 第四特殊作戦飛行隊はフロリダ州ハールバートフィールド基地に駐留するが、2013年から2014年にかけて所属機がどこに展開されたのかは読み取れなかった。
  6. 「2013年11月にAC-130Uガンシップ7機が世界各地の戦闘地帯で支援にあたった」と空軍報告にある。「2014年5月から6月にかけて、残る機材が...ハールバート・フィールドに帰還した」
  7. 検閲でミッション内容が黒塗りされている。また2014年度の飛行時間を説明する表では作戦名称や通称も見えなくなっている。
上二枚、第四特殊作戦飛行隊所属のAC-130ガンシップ。U.S. Air Force photos
  1. ただし同機はアフガニスタン上空のミッションに主に投入されているようだ。米軍がイラク国内のイスラム国勢力を集中的に空爆し始めた2014年8月までに各機は帰国している。
  2. 空軍はAC-130を2001年からタリバン、アルカイダ戦闘員を追うエリート特殊部隊と連携する形でアフガニスタンに繰り返し派遣している。地上部隊支援には最適の機材で地方部では無害な住民の巻き添え死亡は起こりにくい。
  3. 指定空域に達すると機体は円形を描く周回飛行を開始する。これで機体は安定し、火砲を標的に正しく照準できる。
  4. さらに空軍は高度なまで正確な火砲集中で建物や車両を粉砕し特定個人を殺害する戦術を編み出している。2013年には旧型AC-130Hが第16特殊作戦飛行隊からアフガニスタンへ投入されていることが別の報告書で判明した。
  5. 第四特殊作戦飛行隊が2013年11月に引き継いたようだ。その翌月に第16飛行隊のガンシップ各機はニューメキシコ州キャノン空軍基地に帰還している。
  6. 過酷な日程のため同隊の戦闘力に影響が出たことが読み取れる。四ヶ月におよぶ投入で、AC-130Uのうち戦闘体制にある機材は2014年3月までに半数までに減ってしまった。
  7. 同月に第四飛行隊のガンシップの残りの機材は「戦闘能力欠如」状態になっている。同隊は6機を飛行可能状態とし、3機の予備機材をハールバートに温存している。7機目のAC-130Uは海外派遣されたが戦闘投入はわずか11日だった。搭載装備の故障で本国に送還されたようだ。
  8. 第一特殊作戦航空機保守隊が残る6機を海外で飛行可能に保つため奮闘している。同隊は「AC-130Uガンシップの投入時に必ず点検整備を行った」と2014年度報告にある。「投入機材では同隊隊員がミッション実施可能状態を80から90台に維持した」
  9. 2014年6月8日に第四飛行隊のAC-130で最後の機がハールバートに着陸した。同機は200日に及び敵戦闘員を攻撃していた。
バッドオーメンの愛称がついたAC-130Uは武装等装備を撤去して廃棄機材保管施設へ向かった。 U.S. Air Force photo
  1. ただゆっくりする暇はなかった。2015年10月に再びアフガニスタンへ飛んでいる。
  2. 2015年10月3日には一連の失態でスプーキーII一機が誤って国境なき医師団の病院をアフガニスタンのクンドゥズで攻撃している。人道援助機関の発表では少なくとも42名が死亡しており、うち13名が医療従事者だった。
  3. ペンタゴンは同事件を調査し、武力紛争法に違反したと結論を下した。空軍は該当機の乗員を譴責処分したが刑事訴追していない。
  4. この事件があっても同機が主役の座を降りることはなかった。2015年11月にはシリアでAC-130部隊がタンクローリー車列を壊滅させており、第四飛行隊の機材も動員されていたはずだ。イスラム国は戦費調達のため原油闇市場を活用していた。
  5. 2015年9月21日にはAC-130Uの一機ニックネーム、バッドオーメンが退役し、最新型のAC-130Jの導入が始まった。バッドオーメン機は2013-2014年に戦闘投入されたベテラン機材のひとつだ。
  6. これに続きスプーキー各機は新型機に更改され2018年に完了する。第四飛行隊の実績が一つの指標で、次世代のガンシップも相当の活躍をするだろう。■

2016年7月21日木曜日

イラク、シリア、アフガニスタン航空作戦の最新データから見えてくる戦略上の失敗とは


これもオバマ政権の失敗では。イスラム国をもっと早く叩くべきであったのに小出しに航空兵力を投入して貴重な時間を空費したこと。米地上軍の投入をためらい、イラク他の地元兵力武装勢力を主役に立てた分、訓練や整備に時間がかかっています。砂漠や高地で酷使された各種機材の更新が今後たくさん必要になりますがF-35やLRSB等の大型案件に予算が吸い込まれ、結果として米空軍は戦力減少に向かうでしょう。イスラム国ははやく消滅させたほうがいいのは自明の理なのでせっかく勢いのついてきた作戦を今後も継続してもらいたいですね。日本も貢献できることがあるはずですね。

 Airstrikes Up In Iraq & Syria, Afghanistan Eats ISR: CENTCOM

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 20, 2016 at 4:00 AM


月別兵器投下量(緑シリア-イラク、赤アフガニスタン)
Sydney J. Freedberg Jr. graphicUS CENTCOM data
  1. アメリカは全く違う戦争を2つ同時に実施している。国防総省発表の最新データからイスラム国向け航空作戦はほぼ四ヶ月の小康状態からふたたび激しくなっていることがわかる。一方でアフガニスタンでの空爆はイラク、シリアと比べればごく小規模であるが、アフガニスタンの荒れた広い国土に驚くべき量の偵察活動が展開されている。
  2. 米中央軍CENTCOMの最新データを分析し、双方の戦闘状況を把握した。CENTCOMが昨日公表した報告書で月ごとに爆弾が何発投下されミサイルの発射本数もわかる。6月が極めて活発で記録に並ぶ量が投下されている。
  3. 圧倒的多数の97.1%がダーイシュ(自称イスラム国のアラブ語頭文字による蔑称)向けで、6月に米軍はイラク、シリアで合計3,167発を投下しているのに対しアフガニスタンでは62発だった。

近接航空支援ソーティー数
Sydney J. Freedberg Jr. graphicUS CENTCOM data

  1. アフガニスタンでの交戦規則が厳格になったことに注意が必要だ。国境なき医師団の病院への誤爆で42名死亡した事件が引き金になったが現在は緩和されており、タリバンへの空爆は増える傾向にある。だが基本構造には変化はない。米軍はイラク-シリアを重視し、ダーイシュを叩き、イラク軍の前進を助けているが、アフガニスタンでは基本的に軍事顧問団の役割に徹している。
  2. 空爆の代わりに米軍はアフガン政府軍に情報収集監視偵察(ISR)能力を大量に提供している。データを見るとアフガニスタンでのISRフライト回数はイラク、シリアの二倍程度になっている。言い換えれば、イラク、シリアでは近接航空支援任務2回につき一回のISRフライトがある。ISRを実施理由では空爆目標に関する情報が一番多い。アフガニスタンではおそらく同国地上部隊の要望が中心なのだろう。
  3. 数字から一つわかることがある。空爆回数が減ってもISRの要請は減っていない。偵察は絶えず必要であり、無人機部隊がぎりぎりまで酷使されている。
ISRソーティー回数、月別
Sydney J. Freedberg Jr. graphicUS CENTCOM data
  1. 輸送機も酷使されている。二方面の航空作戦で今年前半だけで空輸フライトが4,500回を数え、各種補給品を米軍、連合軍向けに運んでいる。
  2. 次に空中給油がある。給油機は高経年化が目立ち後継機種の確保に空軍は躍起だ。基地が近くに確保できず米軍戦闘機は航続距離が短いため空中給油一回か2回がないと目標まで到達できない。
  3. 空中給油機にアフガニスタンが悪評なのは国土が広く拡散しているためだ。インド洋上の空母から発艦する攻撃戦闘機は一回のソーティーで何度も空中給油する必要がある。だがアフガニスタンでの空中給油機のソーティーは平均一日あたり13回とイラク、シリアの34回と比べ半分以下だ。それだけシリア、イラク上空にはお腹をすかした戦闘機が多く飛んでいるのだ。
  4. 大まか数字ではこれ以外の詳細が見えてこない。たとえばAWACS空中指揮命令機は少数だが重要な機材だ。またデータは最終的には戦略の兆候を示し、グラフの折れ線は状況を知るためのものでありそれ自体が目的ではない。そこでアメリカの空軍力権威に意見を求めてみた。
一日あたりのソーティー数
Sydney J. Freedberg Jr. graphicData courtesy David Deptula, Mitchell Institute
  1. 「CENTCOMがイスラム国を標的に作戦レベルをあげているのはよいことだ」とデイヴィッド・デプチュラ退役空軍中将、元F-15パイロットは語る。「(だが)シリアとイラクで層別すると、シリア内のイスラム国向け空爆は活発さを欠いている」という。
  2. デプチュラの数えたところダーイシュ相手の空爆は平均一日15ソーティーで72発を投下しており、うちイラクが9ソーティ、シリアはわずか6ソーティーだ。砂漠の嵐作戦の空爆でデプチュラも立案に加わったが、一日で1,241ソーティーで5,294発を投下している。2003年のイラク侵攻では633ソーティーで973発だったのはスマート爆弾が広く投入されたのが大きい。セルビアの1999年連合軍作戦でさえ298ソーティーで359発投下していた。

一日あたり投下数
Sydney J. Freedberg Jr. graphic
Data courtesy David Deptula, Mitchell Institute
  1. その一日あたり15ソーティーでデプチュラが指摘するのはイラク9に対してシリア6というバランスの悪さだ。イスラム国の中枢はシリアだ。ビル・ミッチェルやジウリオ・ドゥウエが説いた空軍力理論ではまず敵の力の源泉を叩くべきで、戦線付近を空爆で苦しめるのはその後でよい。
  2. 「最新の数字から現在の陸軍主導の(地上戦中心)戦略ではイラクの主権回復をまず達成してからシリアのイスラム国対応にとりかかろうとしているが、これではあべこべだ」とデプチュラは指摘する。デプチュラはワシントンDCでミッチェル空軍力研究所所長を務めている。「この地方での米安全保障の中核的利益はイスラム国に聖域を認めないことでテロ輸出を止めることのはず。イラク軍の代理を務めることではない」
  3. 進展がゆっくりとしかも小出しの投入によりイスラム国に時間の余裕を与えてしまい西欧への影響力拡大を許したため「オーランド、パリ、ブリュッセル、ニース、それからこれからもっと多くの場所でテロ襲撃が起こる」とデプチュラは述べた。
  4. 「二年前に米主導の連合軍は総合的な戦略で迅速かつ効果的にイスラム国の実行能力を解体する方向でまとめておくえきだった」とデプチュラはいうが、今からでも方向転換はできるはずだ。「シリアのイスラム国相手の空爆は一日六回という小規模から適度な規模に引き上げるべきで、イスラム国の構成要素をそのまま粉砕する作戦を迅速に行う戦略に焦点を合わすべきだ」■