ラベル インド の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル インド の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年5月30日金曜日

カシミールを巡るインドとパキスタンの戦争は終わったわけではない(19fortyfive)

 Kiev-Class Aircraft Carrier

キエフ級航空母艦がインド海軍で活躍中



2025年5月16日のカシミールにおけるインドとパキスタン両国軍の停戦は、真の和平に向けた一歩でなく、一時的な休止にすぎないとみなされている。


ンドとパキスタンは決して共存するつもりはなかった: 2025年5月16日、インドとパキスタンは再び、カシミール地方の統制線沿いでの停戦に合意した。 その言葉は聞き慣れたものだった。 ホットラインを開設し、外交官を配置し、写真撮影を手配する。

 そしてまたもや、アナリストやシンクタンクのお決まりの大合唱が起こり、これは「前向きな進展」であり、「非エスカレーションへの一歩」であり、はたまた「希望の光」であると宣言した。 しかし、真実はもっと悲惨だ。この停戦は、その前の12回の停戦と同様、蜃気楼のようなものだ。平和の前触れではない。それは、疲弊、政治的必要性、国際的圧力から生まれた小休止であり、次に避けられない暴力の噴出が起こる前の戦術的な息抜きなのだ。


カシミール戦争は終わっていない

これは皮肉ではない。現実主義だ。そして正直に言えば、これは明晰さでもある。なぜなら、インドとパキスタンの対立は単に領土の問題ではないからだ 一方の国家がその建国の目的を根本から否定しない限り、両立しえない国家アイデンティティに関するものなのだ。

 問題はカシミールではない。 カシミールは症状だ。病はもっと深い。

この停戦がなぜ失敗するのかを理解するには、1947年の分割の瞬間に立ち戻る必要がある。イギリス・ラージは衰退し、疲弊し、去りがたくなり、亜大陸を2つの新興国家に放棄した。 しかし、それは単なる2つの国家ではなかった。 二つの互いに排他的な文明プロジェクトだったのだ。

 インドは、その矛盾と欠陥のすべてにおいて、世俗的で多民族・多宗教の共和国であると長い間主張してきた。これとは対照的に、パキスタンは南アジアのイスラム教徒のための祖国として明確に建国され、イスラム教徒とヒンドゥー教徒は単一の政治では共存できないという信念から生まれた国家である。インドの国民的アイデンティティは多様性の中の統一に縛られており、パキスタンのそれは分離によるイスラムのアイデンティティの保護に縛られている。 カシミールは、インドに割譲されたイスラム教徒が多数を占める唯一の侯国であり、両者の矛盾が共存する場所になった。 そしてこの矛盾は、どちらも相手の言いなりになって解決することは許されない。

 インドにとって、カシミールは世俗的な約束のリトマス試験紙であり、ヒンドゥー教徒が多数を占める国家の中でイスラム教徒が多数を占める国家が繁栄できることの証明である。カシミールを放棄することは、世俗的なプロジェクトが失敗したこと、パキスタンが最初から正しかったことを認めることになる。パキスタンにとって、カシミールは分割の未完の仕事であり、ヒンドゥー教徒が多数を占める国家がイスラム教徒が多数を占める土地を支配することによって残された傷である。 カシミールを手放すことは、二国論が戦略的誤りであったこと、国家が神話の上に築かれたものであったことを認めることになる。

 要するに、双方の国家にとってカシミールで妥協するということは、自らの存在理由を否定することになる。

 これこそが、紛争を引き起こす悲劇的な原動力だ。国境や河川、反乱の問題ではない。アイデンティティーが問題なのだ。アイデンティティーは領土とは異なり、安易な交渉は認めない。 政治的プロジェクトが相容れない国民性の神話に根ざしている場合、紛争は外交の失敗ではなく、自然の成り行きとなる。


こうして停戦が訪れる。 そして、決裂する。

今回の停戦もその例に漏れない。パキスタンを拠点とするグループが4月にインドのジャンムー地方でテロを起こし、12人の市民と4人の兵士を殺害したのだ。パキスタンを拠点とするグループは4月にインドのジャンムー地方でテロを起こし、12人の市民と4人の兵士が殺害された。砲撃戦が続いた。何十人もの市民が避難した。そしてホットライン、外交的アピール、アメリカの圧力が始まった。 停戦。

 しかし、これは平和ではなかった。お互いに合意した停戦だった。デリーはラダックにおける中国の圧力に対処するため、二正面作戦による危機を避けたい。イスラマバードは、インフレ、政情不安、テヘリク・イ・タリバン・パキスタンの反乱の再燃に動揺しており、公然の戦争は許されない。ワシントンは台湾、紅海、そしてウクライナに集中しているが、南アジアに蓋をしようと必死だ。

 しかし、自暴自棄は戦略ではない。 停戦は解決策ではない。

 実際、今回の停戦で明らかになったのは、印パの「紛争管理」の枠組み全体がいかにもろく、表面的なものになっているかということだ。 誰もがパターンを知っている。誰もが自分の役割を演じている。しかし、根本的な問題が解決するとは誰も思っていない。なぜなら、どちらか、あるいは両方の国家が、自分たちが何者であるかを根本的に再定義しない限り、解決しないからだ。そして、それはすぐに起こりそうにない。

 パキスタンは、カシミールが誕生した理由そのものを放棄することなく、カシミールに対する主張を放棄することはできない。しかし、核戦争の危険を冒すことなく、その主張を実現することはできない。インドとしては、パンジャブ州やアッサム州、そしてそれ以外の地域の遠心力を引き起こすことなく、分離独立を認めるわけにはいかない。 そこでデリーは二の足を踏む。 カシミールはもはや単なる安全保障上の問題ではなく、インドの主権主張の象徴であり、BJPのもとでは、もはやネルーの理想主義に隠れてその力を隠すことを苦にしない、新しい強靭なナショナリズムの象徴なのだ。


中間地点はない

 ワシントンの一部には、オスロ合意にヒマラヤ的なひねりを加えたようなグランド・バーゲンをいまだに夢見ている向きがある。彼らは、チャンネル外交、経済的インセンティブ、信頼醸成措置が、75年にわたる血とトラウマと神話を解消できると信じている。 しかし、これは戦略的妄想である。クラウゼヴィッツは正しかった。戦争とは、別の手段による政治の継続である。しかし南アジアでは、政治そのものが悲劇的な対立の論理に閉じ込められている。両国のイデオロギー的基盤が手つかずのままである限り、カシミールは国民的アイデンティティが実行され、守られる舞台であり続けるだろう。


インドとパキスタンに今何が起こるのか?

まず、アメリカはカシミールを「解決」できるという幻想を捨てなければならない。それはできない これはデイトンでもキャンプ・デービッドでもない。描き直すべき地図はない。ワシントンにできることは、エスカレーションを防ぎ、抑止力を安定させ、パキスタンが中国との関係を利用して核の恐喝で譲歩を引き出すのを阻止することだ。

 第二に、政策立案者はここに道徳的等価性はないことを認識しなければならない。一方のパキスタン側は、国家が支援するジハード主義者の代理人というエコシステムを構築し、維持してきた。もう一方のインドは、確かにそれなりの罪を犯しているが、機能している制度を持つ民主主義国家であり、地域の安定に戦略的な関心を持っている。これは重要なことだ。 多極化の時代において、米国は習慣的に中立を保つ余裕はない。 利益と秩序の両方を反映したパートナーシップを選択しなければならない。

 第三に、カシミールが解決可能な「問題」であるという神話は捨て去らなければならない。それは問題ではない。競合する2つの国家プロジェクトの核心にある傷なのだ。最善の結末は、従来の意味での和平ではなく、抑止力、経済成長、若い世代の消えゆく情熱に支えられた長く冷たい休戦である。 解決ではない。 封じ込めだ。

 これは楽観的なビジョンではない。しかし、現実的なものである。 そして国際問題において、現実主義とは悲観主義ではない。希望的観測を分析と見誤ることを拒否することである。

 今週、銃声は鳴りを潜めたかもしれない。しかし、また撃つだろう。 それは誰も望んでいないからではない。戦争は終わらないからだ。戦争は形を変えるだけであり、時に公然と、時に密かに、常に存在する。

 インドとパキスタンが生まれながらにしてそうであったように、そうでないものになるまでは、この地域は悲劇に宙吊りにされたままであり続けるだろう。


The India-Pakistan War In Kashmir Isn’t Over

The May 16, 2025, India-Pakistan ceasefire in Kashmir is viewed as another temporary pause, not a step towards genuine peace, because the conflict stems from fundamentally incompatible national identities forged at the 1947 partition.

By

Andrew Latham

https://www.19fortyfive.com/2025/05/the-india-pakistan-war-in-kashmir-isnt-over/?_gl=1*16t7blb*_ga*NzIwMzQxMjAuMTc0Nzc3NjM5NQ..*_up*MQ..



文/アンドリュー・レイサム

19FortyFiveの日刊コラムニストであるアンドリュー・レーサムは、国際紛争と安全保障の政治学を専門とするマカレスター大学の国際関係学教授である。 国際安全保障、中国の外交政策、中東における戦争と平和、インド太平洋地域における地域安全保障、世界大戦に関する講義を担当。


2021年12月6日月曜日

主張 日豪印の三か国に加え、米英両国も加わりインド太平洋の戦略環境を三角形構造で考えると今後どうなるか。

 

 

ーストラリア、インド、日本の三か国がここ数年にわたり連携を静かに深めてきた。米国・英国もアジア太平洋での関係強化を進めている。

 

ヘンリー・キッシンジャーは三角形で考え、米、ソ連、中国の関係を構想した。今日の戦略三角形はインド太平洋にある。頂点にキャンベラがあり、そこから北西にニューデリーがあり、もう一方は南北に走り東京とキャンベラを結ぶ。さらに重要な線が二本あり、それぞれワシントンDCとロンドンをつないでいる。

 

2007年に中国の主張の強まりを受けてこの関係がゆっくりと進化を開始した。ある意味でバラク・オバマ大統領のシリアでの「レッドライン」撤回、ドナルド・トランプ大統領の同盟関係への取引感覚導入から米政策の動きが予測不能となったのを反映したものといえる。同時に日本、オーストラリア、インドが安全保障面での役割強化をそれぞれ認識してきたことの反映でもある。

 

インド太平洋の安全保障構造の進化は冷戦時の「ハブ&スポーク」モデルがネットワーク型の総合構造へ変わったものであり、オーストラリア、インド、日本の安全保障上の関係強化をもたらした。新たな構造では戦略提携関係がインドネシア、シンガポール、ヴィエトナムにも広がっている。他方で、オーストラリア、インド、日本の各国は二国間同盟関係を米国と保持しつつ、域外の勢力とも安全保障上のつながりを強化している。そのあらわれがAUKUSの潜水艦調達事業として実現した。

 

インド太平洋の三角形

 

三角形協力に向かう動きではオーストラリア=インド艦の戦略取り決めがめだつ。オーストラリアの2017年版外交白書ではインドを中核的安全保障の相手国としてとらえており、域内秩序を支えるとしている。AUSINDEX演習が2015年に始まり、直近は2021年9月にダーウィンで開催されている。

 

2020年のリモート型式によるサミットでスコット・モリソン、ナレンドラ・モディ両首相は2009年の戦略パートナーシップを総合的戦略パートナーシップに格上げし、「開かれた自由で法の支配下のインド太平洋のビジョン」を共有し、海洋部での協力強化を謳った。両首相は相互補給支援でも合意し、両国軍事基地の相互利用を決めた。サミット後にインドはオーストラリアを印米日の共同海軍演習マラバールに招待し、クアッド各国が初めて一堂に会する演習となった。2021年9月10日から12日にかけ初の2+2大臣級会合で総合的戦略パートナーシップ協議がニューデリーで開かれ、インド、オーストラリア両国は外相、国防相を参加させた。

 

インドと日本の関係は6世紀の仏教伝来までさかのぼるが、21世紀に特別な戦略グローバルパートナーシップに深化した。モディ、安部晋三両首相が中心になり両国関係が変化した。安部は自由で開かれたインド太平洋構想の原型を2007年のインド国会演説で初めて公表した。「両大洋の合流」と海洋国家の両国に触れ、インドと日本には「シーレーンの確保で死活的国益がある」と述べた。安部は両国の外交防衛担当部門に対し将来の安全保障上の協力を「共同検討」するよう求めた。

 

日本はマラバール演習に2015年から常任演習実施国として参加している。日印間のJIMEXは2016年にベンガル湾で始まり、毎年開催されている。2020年9月、両国は安全保障の関係強化を狙い物品役務相互提供協定を締結した。2021年6月、両国は合同演習をインド洋で展開し自由で開かれたインド太平洋の実現の一助とした。2+2大臣級会談が毎年開かれ、両国間の意思疎通を図っている。

 

21世紀の日本=オーストラリア間の協力の原型となったのが2007年の安全保障協力の共同宣言で、「アジア太平洋さらに域外で共通の戦略権益を協議する」とし、防衛関係者の交流、共同演習、2+2メカニズムの創設を目指した。2013年に両国は物品役務相互提供協定を結び防衛協力をさらに進めた。キャンベラ、東京はともに二国間関係を特別な戦略パートナーシップに格上げしている。

 

オーストラリアの2017年版外交白書では日本の防衛改革努力並びに防衛力整備を歓迎しつつ日本が「一層積極的な役割を域内安全保障で演じるよう支援する」とした。日本は米豪間のタリスマンセイバー演習に2019年初めて参加し、ヘリコプター空母いせと自衛官500名を派遣した。両国間の防衛関係強化を受けて、2020年に両国政府は相互アクセス協定を結び、菅義偉首相は両国間の「意思と能力を共有し、域内の平和安定に資する」と評価し、モリソン首相も「画期的な防衛条約」として日豪の「特別の戦略パートナーシップ」を強化すると称賛した。2021年6月の2+2会合に先立ち、茂木敏充外相が両国の安全保障関係を「次のレベル」に引き上げたいと発言したとロイターが伝えた。

 

自由で開かれたインド太平洋

 

三角形はここ十年で深化し、日本、オーストラリア、インドは米国とのつながりをさらに強め、強硬な態度を強める中国という課題に対応し、力を合わせ自由で開かれたインド太平洋の維持を図っている。

 

2019年の日米安全保障協議会の共同声明文は両国の安全保障政策の方向性を一致させることに触れ、「力による国際法規範や仕組みの変更は自由で開かれたアジア太平洋で共有する価値観、同盟関係への挑戦である」とし、同盟関係国が東南アジア諸国連合、インド、日本、大韓民国と一緒に「ネットワーク構造の同盟関係、協力関係を強化することで安全、繁栄、包括的かつ法の支配が働く広域圏を維持する」ことに全力を尽くすとした。

 

2020年にトランプ大統領はインドを訪問し、包括的グローバル戦略パートナーシップで合意した。同年10月に米印2+2会合で両国政府は物品役務相互提供協定、通信互換性保安合意、軍事情報包括保護協定でそれぞれ合意を形成した。同時に自由で開かれたインド太平洋の維持を再確認した。

 

そこにインド太平洋三角形のもう一つの線が出てきた。ロンドンからである。HMSクイーン・エリザベス空母打撃群をインド太平洋に展開させ、哨戒艇二隻を同地区に常駐させる決定、さらにAUKUS枠組みでの原子力潜水艦建造がロンドンのめざす意図を物語っている。英国防相ペニー・モーダントが2019年のシャングリラ対話で使った表現では域内プレゼンスを「粘り強く」維持するとあった。

 

現時点のオーストラリア-インド-日本の三角形に米国がクアッドで加わり自由で開かれたインド太平洋の価値観を各国が共有する形が生まれた。各国は法規則に基づく秩序、紛争の平和的解決、力による既成事実の変更の拒絶で共通する。では各国間に対中国姿勢で違いは存在しないのだろうか。実はある。各国とも地理や経済の違いのため国益は一様ではない。だが、インド太平洋に関する限り、各国は相互に補強しあう。さらにこの先を見るとワシントン、東京、キャンベラ、ニューニューデリーの政治トップの次の課題は各国の相違点を縮める努力にあわせ、共通のビジョンの方向に国内政治を収束させていく仕事だ。■

 

Can the Australia-India-Japan Strategic Triangle Counter China?

by James Przystup

October 21, 2021  Topic: Quadrilateral Security Dialogue  Region: Indo-Pacific  Tags: Quadrilateral Security DialogueIndiaJapanAustraliaAUKUSAlliancesChina

 

James Przystup is a Senior Fellow at the Institute for National Strategic Studies. Previously, he has served as Deputy Director of the Presidential Commission on U.S.-Japan Relations 1993-1995, the Senior Member for Asia on the State Department’s Policy Planning Staff 1987-1991, Director of Regional Security Strategies in the Office of the Secretary of Defense 1991-1993 and Director of The Asian Studies Center at The Heritage Foundation 1993-98. The views expressed are the authors’ own and do not reflect those of the National Defense University or the Department of Defense.

Image: Reuters.


 

2021年5月5日水曜日

クアッド:オーストラリア、インド向け装備品の大型FMS売却案件がまとまる。オーストラリアには装甲車両、CH-47、インドにはP-8追加

  

 

米海軍のP-8ポセイドン。インドが追加調達の意向を示している。 (US Navy)

 

イデン政権はオーストラリア及びインド向けに有償海外軍事援助制度(FMS)を活用した装備品売却を4月末に承認し、総額436億ドルの商談が米企業に生まれる。

 

4月29日、オーストラリアは重装甲戦闘装備一式購入を16.85億ドルで承認された。またCH-47Fチヌーク輸送ヘリコプター4機購入を2.59億ドルで承認された。翌30日にはインドはP-8I海上哨戒機を24.2億ドルで6機購入できることになった。

 

FMSによる販売案件では国務省がまず承認し、国防安全保障協力庁(DSCA)が議会に送付する。議会通知で売却が自動的に決定するわけではない。議会が反対しなければ、該当国との協議に移り、その過程で金額と数量が変更となることがある。

 

案件はともに米国が重視するインド太平洋地区の二大重要同盟国向けであり、両国は「クアッド」で米国、日本と並ぶ有志連合の一部だ。

 

インド向け売却内容にはP-8Iの6機以外に通信装備、エンジン、航法装備、契約企業向け支援を含む。ボーイングが主契約企業となり、作業はシアトルで行う。提案内容は「米国の外交安全保障を支援すべく米印戦略提携を強化するのに役立ち、相手国の安全保障を改善することでインド太平洋及び南アジア地区の政治安定、平和、経済進歩で重要な作用を引き続き発揮する」とDSCAは案件の意義を説明している。

 

インドは先にP-8Iを8機2009年に一般民間取引の形で導入しており、2016年に4機追加調達した。インド海軍が同型機を2013年から運用している。

 

オーストラリア向け重装甲戦闘システムにはM1A1戦車の車体構造160基を米国内在庫から提供し、これを各種車両装備にする。M1A2 SEPv3エイブラムズ主力戦車75両、M1150強襲突破車両29両、M1074共用強襲橋梁車両18両、M88A2ハーキュリーズ戦闘回収車両6両、AGT150ガスタービンエンジン122基となる。

Subscribe

発表内容で興味を引くのは「特化装甲装備の開発」という表現だが、内容の詳細には触れていない。ジェネラルダイナミクス・ランドシステムズ、BAEシステムズ、レオナードDRS、ハネウェルエアロスペースが関与するとある。オーストラリアはFMSで民間企業の見返りを要求するのが常である。

 

「M1A2 SEPv3主力戦車はオーストラリアで供用中の M1A1 SAの改修となりオーストラリア装甲軍団の戦力構造に変化は生じない」「M88A2車両の追加配備でオーストラリア戦車部隊の車両改修機能が向上する。M1150強襲突破車両(ABVs)およびM1074共用強襲橋梁車両(JAB車両はオーストラリア工兵部隊に新装備となり、架橋及び突破能力を付与し、オーストラリア工兵部隊の機能と生存性を高め、装甲部隊の機動性を高める」とDSCAは説明している。

 

チヌーク案件は4機が対象で、「専用改装」を施すとある。T55-GA-714A 航空機用タービンエンジン8基他ミッション装備品を含む。機体は米陸軍の備蓄から提供する。

 

トランプ政権で承認済みFMS案件をバイデン政権下の国務省が執行停止し内容を点検していたが、これまで15件が承認ずみで、総額は8.9兆ドルに達している。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


India, Australia cleared to buy $4.3B in US military gear

By: Aaron Mehta 5 hours ago

 


2018年4月15日日曜日

新明和がマヒンドラと提携しインドでのUS-2運用基盤づくりへ



Shinmaywa joins with Mahindra for US-2 support 新明和工業がインド・マヒンドラと提携しUS-2運航支援体制構築をめざす

13 APRIL, 2018
SOURCE: FLIGHT DASHBOARD
BY: ELLIS TAYLOR
PERTH
新明和工業マヒンドラ・ディフェンスと正式に提携しUS-2水陸用両機のインド海軍向け販売の実現を目指す。
両社で取り交わした覚書では共同でUS-2の製造・MRO施設を構築することとしている。また将来は同機の派生型の実現も戦略的な提携内容として想定するとマヒンドラが発表した。
「航空業界に詳しい両社による今回の提携ではインド国防航空宇宙でのMROや機体整備分野で大きな意味が生まれます」とマヒンドラ・ディフェンス会長SP・シュクラが述べている。
マヒンドラは複合企業グループでオーストラリアには小型機メーカーGipps Aeroがあるが、装甲車両、魚雷、電子製品もインド軍向けに製造している。
マヒンドラと新明和の提携はインドがいよいよUS-2導入に向かう最初の一歩とみなされ、インドには同機を人員輸送、船舶用予備部品輸送、長距離捜索救難偵察任務など多様な用途に使用する構想がある。
2014年にFlightGlobalがインドに同型機18機を2016年から2018年にかけ導入する案があると報じたが、その後も確定発注には至っていない。

US-2はロールズロイスT56ターボプロップ四発を搭載し現在は海上自衛隊が唯一の運航者で5機を供用中とFlight Fleets Analyzerにある。■

2017年8月1日火曜日

インド、イスラエルとの価値観共有外交をアメリカは目指すべきだ


Indian Prime Minister Narendra Modi delivers a speech during a session of the St. Petersburg International Economic Forum (SPIEF), Russia, June 2, 2017. REUTERS/Grigory Dukor
さすがシンクタンクの主任研究員となると構想が違いますね。論点は表記三カ国に限らず理念、価値観を共有しつつ自国利益を最大限する外交を展開することです。日本も今のところは仲間に入れてもらえる資格があると思いますが、国会が政治世界の思考水準を表すとすれば不安にならざるを得ません。思考の幅、奥行きがあまりにも島国の狭小さのままです。戦略思考、地政学をもっと学びましょう。
America's Future Is with India and Israel
アメリカの未来はインド、イスラエルとともにある

July 23, 2017

  1. インド太平洋から地中海まで外交関係で変革が進行中だ。変化の風の出どころは北京ではなく、デリーだ。ドナルド・トランプ大統領に新しい勢力を束ねて米国の地球大指導力を進める好機がきている。
時代変化が進行中
  1. ホワイトハウスは今年中に国家安全保証戦略構想を発表すると見られ、ブッシュ、オバマ前政権の戦略案と別の内容になるのは間違いない。ブッシュは力づくで問題解決を目指した。オバマは逆に各地の紛争にかかわらず正面からの競争を避けた。トランプは中間を目指しているようだ。政権転覆や国土再建策には関心がないが、重要な国益を守るため米国の影響力を強く推進することに積極的だ。
  2. そのトランプ戦略の要点は大幅な不安定化を招きかねない武力衝突の可能性を国益影響度が最大の地域では減らすことにある。超大国間の衝突がアジア、ヨーロッパ、中東で発生するのは避ける。新戦略では中央アメリカに焦点を多くあてるのは国境を越えた犯罪網や不法移民で米国南部の国境地帯にストレスがかかっている状況に対応するものだ。
  3. 新戦略は米国の軍事力、外交力の強化をめざす政権の意向と対になっている。ジム・マティス国防長官が音頭を取り力を背景にした平和政策が進められているが、前政権下で劣化した軍の再建も狙う。いっぽうでレックス・ティラ-ソン国務長官はソフトパワー論に消極的で省内を驚かせている。ティラーソンは効率や効果だけを追求しているのではない。求めているのは政策の新たな方向性だ。
  4. 新政権による米前方配備の特徴が責任分担増を求める政策だ。費用負担のみならず責任共有を求めて各国の姿勢を同じ方向に統一し域内の平和と繁栄とともに生活様式の自由を守る。(トランプはこの内容をワルシャワの演説で説明している)
  5. 現政権に対しては厳しい批判もあり、トランプ自身もツィッターで盛んに発言しているが、政策重点はNATO、中東、アフガニスタンから北東アジアに広がる同盟国、友邦国に対し米国が責務を放棄することはないとの確証を与えることだ。
  6. いいかえれば埋めるべき空白が多いことを意味する。責任分担を求める政策の裏でホワイトハウスが勢いを持続できるか。オバマのアジア重視の空約束をどう埋めるか。中国の一帯一路に米国はどう対抗するのか。
  7. 南東アジアでの主要同盟国インド、日本、オーストラリアと米国は意見交換の場が必要だ。議題は共通ルールを書き換えようとする中国にどう対抗するかだ。
  8. トランプのチームは古くからの同盟各国とのつながりを深化させる方法を新たに考えだす必要に迫られており、二国間対話を集団安全保障に進化させ貿易不均衡の解決へ進める必要がある。真の意味で地球大の論点に目を向けるべき時が来たと言えよう。そこでインドの提案内容には米国に有利な形で世界の舞台を再設定する好機が潜んでいる。
東西の出会い
  1. ナレンドラ・モディ首相はインドを非同盟外交政策の伝統から解放した。インドは経済大国として台頭しつつある。この進展でインドが域内安全保障の提供国になる可能性が出てきた。特にインド洋で。
  2. さらに同首相が今月イスラエル訪問という歴史的快挙をしたことでインドの中東政策にも変化が生まれた。これまでのインドがイランに親近感をいだいていたのは石油依存度とともにチャーバハール港 Chabahar Port 開発でもイランに協力していることでも明らかだ。
  3. デリーはまだテヘランに踵を返す態度は示していない。またイラン情勢の変化で制裁措置が解除されたがデリーはあきらかに急いで関係強化に動く様子を示さなかった。モディ首相はイランを昨年訪問したが、自制し慎重なに調整した姿勢を示した。
  4. イスラエル訪問の前からもモディ首相は同地区との関係強化と再バランスを目指す兆候を示しており、湾岸協議会加盟国とも対話を強化しており、イスラエルも視野に入れていた。以前のインドはイスラエルとの交流を軽視してきた。だがモディ政権は防衛協力経済関係強化、さらに外交対話でもイスラエルを重視する姿勢を隠そうともしていない。
  5. インドの方向転換はワシントンから見て南アジア、中東双方に向けた政策とも方向が完全に一致する。トランプ政権はインドとの関係強化の姿勢をことあるごとに見せている。モディ、トランプ会談でも両国関係がすこぶる良好の上さらに向上の可能性があることをうかがわせた。.
  6. トランプは前政権よりイスラエルに友好的になりたいとの意向を明確に示している。トランプ政権がイランの影響力封じ込めと同時にアルカイダやISISといった勢力の撃滅を目指す中で米国がアラブ諸国やイスラエルへの一層の接近を目指すのは必然ともいえる。
三カ国対話の時が来た
  1. ワシントンとデリーが戦略的な観点から接近するとトランプ政権がめざす責任分担政策を一歩進める効果につながるかもしれない。多国間対話ほど戦略的な意図を変化させる機会はない。各国も関係深化を予期するもので、とくに議題が戦略的に重要地域での各国の利害でこの傾向が強い。その関連で米、インド、イスラエルの三カ国対話が友邦国・敵対国双方から関心を集めるのは間違いない。
  2. 米国がこの対話に参加すればホワイトハウスの考える米国の死活的な権益を広げながら広大なインド洋の共有利益擁護が可能となる。また地球大で活躍可能なパートナーとワシントンが目するその他有力国にも米国の考え方を再提示することができる。
  3. そこで各国の高レベル協議で次の五点が自然に議題になるはずだ。
サイバーに本腰を入れる
  1. 米印関係でサイバーが疑う余地なく重要議題となる。両国は大いに期待できるはずだ。イスラエルもサイバーで実力を有しており、両国の間でちょうどいい立ち位置だろう
一帯一路への対抗策を考える
  1. 中国の動きで生まれている挑戦と機会を真剣に考え米国のプレゼンスをインド洋全体でどう感じさせるかを模索すべきだ。中国最大の武器は資金力だがワシントンは何が提示できるのか。東西間に位置する多様な各国の観点が理解できれば米国も正しい解答を得られるだろう。
イスラム過激派勢力の脅威に対抗する
  1. テロリストによる攻撃からイスラム原理主義まで米国、イスラエル、インドは共通課題に直面している。テロ殺人集団を阻止し、危険思想を食い止めながら共通の大義名分をイスラム世界と模索し、暴力と過激主義をいかに排除するか。この議題ほど共同討議と共同行動による効果が大きいものは少ない。
海洋を理解する
  1. 海洋領域における状況把握能力は三カ国共通の優先課題だ。各国の情報共有が意味を生む議題でもある。
自由世界の防衛
  1. 米印防衛協力は未来の姿そのものだ。インドでのF-16生産という壮大な構想がある。三カ国で防衛装備のサプライチェーンを構築し、共同で未来につながるイノベーションを誘発させることが期待される。
まず始めよう
  1. 三カ国対話の議題はさらに広がる。エネルギー、人工知能といった大きな課題がある。だが以上の五点が出だしとしては妥当な内容だと言えよう。必要なのは高レベル対話を進めることで、対話から米外交も次のレベルの地球大外交に進むことが可能となる。
James Jay Carafano is a Heritage Foundation vice president and directs the think tank’s research on national security and foreign relations.
Image: Indian Prime Minister Narendra Modi delivers a speech during a session of the St. Petersburg International Economic Forum (SPIEF), Russia, June 2, 2017. REUTERS/Grigory Dukor

2017年5月31日水曜日

もし戦わば(14)26億人の戦争:インド対中国



もし戦わばシリーズも11回目になりました。インドが中国を攻撃するとは考えにくく、中国がインド国境を越えて進軍したらどうなるかという想定です。周辺国にストレスを与える中国の存在は中国に近いパキスタンという宿敵を持つインドには特に面倒な存在でしょう。

 

If 2.6 Billion People Go To War: India vs. China 26億人の戦争になったらどうなるか:インド対中国


The National InterestKyle Mizokami May 27, 2017


  1. 仮にインドと中国が交戦すればアジア最大規模の破壊絵図が繰り広げられるだろう。さらにインド太平洋地区全体が動揺をうけ両国の世界経済も影響を免れない。地理と人口構成が大きな要素となり、戦役の範囲とともに戦勝条件が制約を受ける。
  2. 中印国境で以下の地点が注目だ。インド北方のアクサイチンAksai Chinおよび北東部のアルナチャルプラデシュ州Arunachal Pradeshである。中国はともに自国領土と主張しており、それぞれ新疆省および中国が占拠するチベットの一部だとする。中国は1962年に両地点を侵攻し、両軍は一か月交戦し、中国がわずかに領土を確保する結果になった。
  3. 両国とも核兵器の「非先制使用」を是としており、核戦争への発展は極めて可能性が低い。両国ともそれぞれ13憶人ほどと膨大な人口を擁し、実質的に占領は不可能だ。近代戦の例にもれず、インド中国が戦争に入れば陸海空が舞台となるはずだ。地理条件のため陸戦の範囲は限定されるが、空での戦いが両国で最大の損害を生むはずだ。ただし海戦ではインドの位置が優位性を生み、中国経済への影響がどうなるかが予想が難しい。
  4. 次回両国が武力衝突すれば1962年と異なり、双方が大規模な航空作戦を展開するだろう。両国とも戦術航空部隊は大規模に保有し人民解放軍空軍は蘭州軍区からアクサイチンに出撃し、成都軍区からアルナチャルプラデシュを狙うはずだ。蘭州軍区にはJ-11、J-11B戦闘機部隊があり、H-6戦略爆撃機二個連隊も配備されている。新疆に前方基地がないため蘭州軍区からの北インド航空作戦支援は限定的になる。成都軍区には高性能J-11AおよびJ-10戦闘機部隊が配備されているが、インドに近いチベットに航空基地は皆無に等しい。
  5. 中国のインド攻撃には戦術航空機部隊が必ずしも必要ではない。航空攻撃力の不足を弾道ミサイルで補えばいいので、人民解放軍ロケット部隊PLARFが重要だ。PLARFは核、非核両方の弾道ミサイルを扱い短距離、中距離弾道ミサイルはDF-11、DF-15、DF-21の各種を発射できる。ミサイルでインドの地上目標を戦略的に電撃攻撃するはずだが、その間南シナ海、東シナ海の緊急事態に対応できなくなる。
  6. それに対しインドの空軍部隊は空では中国より有利だ。戦闘の舞台は中国領と言えども人工希薄な地帯だが、ニューデリーはチベット国境からわずか213マイルしか離れておらず、インドのSu-30Mk1フランカー230機、MiG-29の69機さらにミラージュ2000部隊は中国機材と互角あるいは上を行くはずだ。少なくともJ-20戦闘機が投入されるまでこれは変わらない。インドはパキスタンを仮想敵とし、二正面作戦も想定して十分な数の機材を整備している。航空基地や重要施設の防衛にはアカーシュAkash中距離対空ミサイルの配備が進んでいる。
  7. インドは空軍力による戦争抑止効果に自信を持つが、中国の弾道ミサイル攻勢は少なくとも近い将来まで食い止める手段がない。中国ミサイルが新疆やチベットから発射されればインドの北側内の目標各地が大損害を受ける。インドには弾道ミサイルの迎撃手段がなく、ミサイル発射地点を探知して攻撃する手段もない。インドの弾道ミサイルは核運用のみで、通常戦に投入できない。
  8. 一方でインド、中国の地上戦が決定的な意味があるように見えるが、実はその反対である。アクサイチン=新疆戦線とアルナチャイプラデーシュ=チベット戦線の両方とも岩だらけの過酷な場所で輸送用インフラは皆無に近く機械化部隊の派遣は困難だ。攻撃部隊は渓谷通路を移動せざるを得ず砲兵隊の格好の目標となる。両国とも膨大な規模の陸軍部隊を擁するが(インド120万名、中国220万名)地上戦は被害も少ないが得るものも少ない手詰まり状態に入るはずだ。
  9. 海上戦が両国の優劣を決するはずだ。インドはインド洋にまたがり中国の急所を押える格好だ。インド海軍の潜水艦、空母INSビクラマディチャVikramaditya、水上艦部隊は簡単に中国の通商を遮断できる。中国海軍が封鎖を破る部隊を編成し派遣するには数週間かかるはずだが、広大なインド洋で封鎖解除は容易ではない。
  10. そうなると中国発着の航路は西太平洋を大きく迂回する必要があるが、今度はオーストラリア、日本、米国の海軍作戦が障害となる。中国の原油需要の87パーセントは輸入に依存し、中東、アフリカからの輸送が重要だ。中国も戦略石油備蓄を整備中で2020年代に完成すれば77日分の需要に対応できるが、それ以上に戦闘が長引けば北京は終戦を真剣に考えざるを得なくなる。
  11. 海上戦の二次効果がインド最大の武器になる。戦闘による緊張、世界経済への影響、さらにインド側につく日米はじめ各国の経済制裁で中国の輸出が減退し、国内で数百万単位の失業者が生まれる。国内の騒乱状態に経済不況が火に油を注ぐ格好となり、中国共産党の支配に悪影響が生まれる。中国の選択肢はインドより少なく、ニューデリー等大都市に非核弾頭のミサイルを撃ち込むしかなくなる。
  12. インドー中国間の戦闘は短期に終わるが、後味の悪い相当の破壊が生まれる。また世界経済にも広範囲の影響を残す。力の均衡と地理上の制約条件のため簡単に決着がつく戦闘にならないはずだ。両国ともこの点は理解しており50年にわたり戦闘がないのはこのためだろう。このまま今後も推移するのを祈るばかりだ。■
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
Image: French Air Force Mirage 2000D at Kandahar Airfield. Wikimedia Commons/SAC Tim Laurence/MOD