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2018年2月7日水曜日

★この装備はなぜ実現しなかったのか、配備されていたらどうなっていたか

The Navy Had a Plan to Build a Mini 'B-2 Bomber' To Fly from An Aircraft Carrier




February 1, 2018


兵器体系が消えるのにはいろいろな理由がある。登場時期が悪いこともあり、予算が厳しい状況とか取り扱い人員に難がある場合もある。あるいはペンタゴンの官僚主義の犠牲になったり、各軍の対立にまきこまれることもある。また発想そのものに難があり日の目を見ないこともある。同様に実は低性能の防衛装備が追及を受けずにそのまま居座ることもあれば、隙間の存在になり生き残ることもある。
この記事では正式採用されなかった装備五種類に脚光を当てるが、生き残っていれば相当に変身していたかもしれない装備もある。変身ぶりで戦争そのものの様相は変わらなかっただろうが(勝敗は技術だけで決まらない)、波及効果が国防産業全般に広がっていた可能性は考えられるし、米軍の戦闘の仕方や調達方法でも変化を生んでいたかもしれない。ただし以下のすべての装備が優れていたわけではなく、取り消しにはそれなりの理由が見つかる。


AH-56シャイアン:
1960年代はじめ、米陸軍はヘリコプター部隊の真価に気づき始めた。第二次大戦末期にヘリコプターは投入されていたが、朝鮮戦争で偵察や傷病兵搬送に広く使われはじめられた。機体技術が次第に発展すると高性能ヘリコプターで広範なミッションをめざした。
その花形になるはずだったのがAH-56シャイアンで画期的な設計で高速飛行と攻撃力の両立をめざした。シャイアンで輸送ヘリコプターの援護にあて、地上攻撃支援や単独攻撃を想定した。とくに推進機構がすぐれ時速275マイルをめざした。
だがそのシャイアンは自らの目標に倒れてしまった。技術が未成熟で初期試作型は問題の山に直面、墜落もした。空軍はシャイアン構想が気に入らず、陸軍が近接航空支援任務を奪うと疑った。空軍は固定翼攻撃機を提案しこれがA-10になったが、シャイアンをつぶすためだった。ヴィエトナム戦争で国防予算が厳しくなり、予算は戦闘継続に流用された。
シャイアンは制式化されなかったが、数年後に陸軍はAH-64アパッチを求めてきた。このためシャイアン取り消しは高性能攻撃ヘリコプター出現を遅らせる効果になっただけだが、アパッチは通常型機構の採用でシャイアンよりはるかに安全度が高い装備となったが、逆に陸軍航空戦力の発展性にブレーキをかける効果になった。


B-70 ヴァルキリー:
B-70ヴァルキリーにはオペラのような展開が似合う。当初B-52ストラトフォートレス、B-58ハスラーの後継機として想定されたB-70は高高度マッハ3でソ連防空網を突破する機体として企画された。先の大戦中の爆撃機攻勢を経験した「爆撃機マフィア」のお気に入りのB-70こそ空軍の将来像の象徴だった。
B-70は美しい機体で、むしろ宇宙船のような姿だ。試作機がデイトンの米空軍博物館に残る。


だがヴァルキリーはとても高価な機体でその値段が命取りとなった。まずアイゼンハワー大統領が、その後マクナマラ国防長官がICBMでソ連本国に核兵器を届ける性能が向上する中でこれだけの出費で重爆撃機を作っていいのかと疑問を呈した。ソ連の迎撃装備の性能向上さらに地対空ミサイルの登場でB-70の任務遂行は当初より危険になっていった。


わずか二機しか製造されず、しかも一機をPR撮影中に喪失し、空軍は生産を終了した。15年後にB-1Bが就役したが同機の特徴を残している。


B-70が空軍にどんな影響を与えていただろうか。極めて悪い影響しか思いつかない。戦略爆撃機を一種類増やして予算を使えば戦術航空機材やミサイル部隊にしわ寄せが行っていただろう。B-70をラインバッカーI、II作戦で北ヴィエトナム空爆させていたかもしれないが、B-52以上の戦果はあげられなかったはずだ。B-52とB-1Bがともに驚くべき柔軟性をミッション実施や改修で示したのは乗員がそれぞれ4名、5名と多いのも理由だが、ヴァルキリーは2名運用前提だった。実施していれば三十年間の深い穴を生んでいたはずの調達を取り消すことでマクナマラは空軍を救ったと言える。


A-12アヴェンジャー:
空母運用のステルス攻撃爆撃機があればどうなっていたか。1980年代中ごろに米海軍は愛されながらも脆弱性が目立ってきたA-6イントルーダー後継機種を模索していた。ステルス技術をもとにマクダネル・ダグラスはA-12アヴェンジャーを作った。亜音速「全翼機」爆撃機はまさにB-2スピリットの縮小版の趣だった。ステルスと空母運用に必要な柔軟性を組み合わせたA-12は他に例のない長距離攻撃能力を実現するはずだった。空軍もA-12に関心を示し、F-111アードヴァークの後継機に検討したほどだった。


ただし問題があった。初期ステルス効果への期待は楽観的すぎた。また改修で機体重量が増えた。出費もどんどん増えたが機体は一向に飛ばなかった。だが最大の問題はアヴェンジャーの設計製造サイクルが冷戦終結時になったことだ。国防予算緊縮で国防長官ディック・チェイニーはA-12を中止し低リスク事業を優先させた。


中止の影響は今も残る。高性能ステルス攻撃機のかわりに海軍はスーパーホーネットで手を打ち、改修を加えつつ供用中だ。ステルス機の必要からF-35Cが生まれたが、F-35事業は「大災難」と「歴史的大災難」の中間を漂っている。かりにF-35Cが使い物になっても、スーパーホーネット採用で長距離攻撃能力を断念してしまったことに変わりない。空軍はA-12と類似点の多い次世代爆撃機を開発中だ。A-12を葬って米海軍空母航空隊の能力は変質し、その影響はこれからも続く


将来型戦闘システムズ:
21世紀初頭に軍事革命(RMA)理論から陸軍n「将来型戦闘システムズ」が生まれた。ひとことでいえばRMA理論を近代戦に応用して精密誘導砲弾、高速情報処理、リアルタイム交信、全般的センサー性能を組み合わせて陸軍の戦闘方法そのものを変貌させようとした。将来型戦闘システムズは兵器、車両、センサーを組み合わせてあらゆる戦闘場面で殺傷力を決定的に高めようとした。陸軍はこのシステムでセンサーと砲を組み合わせたり、攻撃力を増進しながら被探知性を減らそうとした。陸軍は軽量ながら足腰の強い旅団が生まれるとFCSに期待した。
だがブッシュ政権が米陸軍をイラク戦に投入した。イラクではFCS開発に深刻な影響が生まれた。知的資源は戦闘にどう勝利するかよりFCSコンセプトを極限まで考えることに費やされた。戦闘から各種システムが生まれたがどれもFCSコンセプトに合う存在にならなかった。おそらく一番重要だったのは戦闘の進展でRMA理論に疑問が生まれたことで、非正規戦闘員が最先端技術を駆使する米軍に多大な損失を与えたことだ。


FCSはゆっくりと死に向かった。システムにシステムで対応する考え方は戦場で必要な装備を一つずつ整備するニーズに勝てなかった。陸軍はイラク、アフガニスタン戦で新旧装備取り混ぜて戦い、そこには将来の展望の入る余地はなかった。FCS構想の個別構成部品はまだ残っているが、構想は予算と軍の現実の前に屈服した格好だ。


制海艦:

超巨大空母数隻の代わりに海軍が小型空母の大量の建造に乗り出していたらどうなっていたか。第二次大戦中に英海軍、米海軍は護衛空母を大量投入し、対潜戦や上陸作戦の支援にあてていた。


1970年代初頭にエルモ・ズムワルト海軍大将が制海艦(SCS)構想を提唱し、小型空母で海上交通路をソ連の長距離攻撃機や潜水艦から守うろとした。超大型空母の建造費高騰と長年活躍してきたエセックス級空母の退役を受けてズムワルトは低コスト解決策として大型空母群の航空運用能力を一部割愛した形を想定した。護衛空母は大西洋の戦いで有益な働きを示し、制海艦も同様にNATO対ワルシャワ同盟の戦いで効果を上げると期待したのだ。


米海軍は構想をヘリコプター空母USSグアムで実証しようとしハリヤー戦闘機まで加えた。最終的に海軍は新型艦建造費と超大型空母建造へのリスクが出ることを勘案して構想を退けた。


ただしタラワ級ワスプ級の大型揚陸艦が制海任務に代わる存在になる。名称こそ強襲揚陸艦だが米海軍は制海艦を取得しており、もっと広い範囲の任務を与えているのだ。また他国に小型空母を建造させてSCSが想定した任務を任せればよい。英国、スペイン、イタリア、日本が本質的にSCS任務を果たすことになる。


制海艦を追い求めると海軍戦力構造の変更につながり、海軍航空兵力でも変化が生まれる。最大の違いは用兵思想で、制海艦で海軍航空部隊が国際安全保障に与える役割が変わっていただろう。小型空母で多様な任務に効果を生む能力でマハン流の大海軍から自由になれるかもしれない。また最新CVNの建造費が膨大になっていることから、SCS構想で海軍兵力投射の在り方も違ってくるかもしれない。


結論:
技術は疑いなく重要だが、個別の技術結果が戦術効果で決定的に有利になることはまれだ。むしろ、技術革新や技術要素の選択で軍事組織や広義の軍産複合体は戦争への対応が決定される。それぞれのシステムで画期的な組織上の役割や優先順の見直しがあってしかるべきだ。また各装備の取り消しで性能に大きな穴が開き、その穴を埋めるべく画期的な手段が必要となることが続いている。


選外:
USSユナイテッドステーツ級空母、USSモンタナ級戦艦、USSレキシントン級巡洋戦艦、B-49、F-23「ブラックウィドウ」、F-20タイガーシャーク。

Robert Farley is a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat. Follow him on Twitter:@drfarls.

2015年7月3日金曜日

★★ F-35A>F-16との模擬空中戦に負ける 防空任務を任せられるのか



F-35がF-16との空中戦に勝てなければ、その他国の新鋭戦闘機に接近空中戦で勝つ見込みは少ないということになりませんか。ドッグファイト向きでないので、とロッキードは弁明しているようですが、電子戦用途を想定する米海軍除き、すべての導入予定国はF-16等の更新機材として想定知るのではないでしょうか。つくづくこの機体に西側防空体制が振り回され、致命的な穴があかないことを祈らざるを得ません。

Controversy Flares Over F-35 Air Combat Report

Jul 2, 2015 Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
ロッキード・マーティンF-35A供用打撃戦闘機(JSF)はF-16に基本戦闘機操縦性能で勝てなかった。演習で証明された。実機を操縦したパイロットのロッキード・マーティン向け報告書がリークされている。
  1. エネルギー機動性energy maneuverability (EM)、ピッチレート、飛行性のいずれも「直感的でなく好ましく思えなかった」ことが模擬空戦の大部分であてはまったためF-16に戦術的優位性が与えられ、F-16パイロットはミサイル、機関銃の双方でF-35を狙う位置につけた。またヘルメットが大型のためF-35のキャノピー内で後方視野が制限されたのも欠点だ。
  2. ロッキード・マーティンとJSF推進室が報告書の存在を認め、最初に War is Boringのホームページに掲載され、偽造ではないことがわかった。ただし、「今回のシナリオの解釈は誤解につながりかねない」と米空軍でF-35実戦化をすすめるジェフリー・ハリジアン少将 Maj. Gen. Jeffrey Harrigianは言い、結論を出すのは「時期尚早」だという。
  3. JSFの開発は1996年から続いており、これまで800億ドル超が投入されている。

  1. 報告書が言及しているテストミッションは1月14日に行われたエドワーズ空軍基地を離陸したロッキード・マーティン社主任テストパイロット、デイヴィッド・「ドク」・ネルソンが操縦したフライトのことだろう。これはすでにAW&STが4月に報じている。記事では模擬交戦で有利に立ったのはどちらの機種か論じていなかった。なおAviation Weekは作成者氏名が削除されてた報告書の写しを入手した。
  2. 基本性能から言ってJSFはF-16やF/A-18C/Dに対し格闘戦で優位になれないが、gや加速を瞬時に得られ、持続できる点で有利になっている。しかし、ロッキード・マーティンの幹部やパイロットからはセンサー融合機能、ステルス性、その他を勘案すればF-35は空戦で優位性を確立できると言明しており、「第四世代戦闘機」(この用語はロッキード・マーティンの造語)に対しその差は 400-600%に及ぶとしてきた。
  3. 1月のテストでF-35に対して優位に立ったF-16はブロック40のD型で、F-16の中では比較的性能が低い方で1987年から1994年にかけて納入されている。ブロック40は武装を強化して、ハブ・グラスレーダー断面積削減措置が施されている他、空虚重量が増えたが、ブロック50から導入された高性能エンジンは搭載していない。テスト機のF-16は370ガロンの外部燃料タンクを搭載していたため機体操縦は7gに制限されていた。
  4. ロッキード・マーティンからはテストに投入したAF-2は初期開発機体であり、ステルス塗装がないと説明があった。しかし 有視界交戦within-visual-range (WVR)にステルスは無関係であり、むしろ塗装膜のなき機体は軽量だったはずだ。またロッキード・マーティンはAF-2には「ヘルメットで旋回、照準し、敵機攻撃を機体の方向を変えずに可能にするソフトウェアが搭載されていなかった」と説明するが、好天の昼間ではこの機能はテストのF-16にもなかった。またテストではF-35はステルス性を発揮できていないが、機内に搭載する空対空ミサイルで高機動型はまだ使用できるものがないのが現状だ。
  5. 報告書ではF-35の飛行制御ソフトウェアに欠陥が見つかったと指摘している。ただし、ソフトウェアをいじっても高機動性の不足は解消できない。なぜなら機体がどの速度で飛んでいても、抗力と重量が加速、上昇、方向転換を決めるからだ。
  6. F-35の迎え角 angle-of-attack (AoA) の制限はF-16より大きい。これは通常なら有利になるが、ピッチレートの成約やEMが低いことが加わると実用性が低くなる。高いAoAを実現するまでに時間が相当かかり、エネルギー機動性が低いということはF-35は高速飛行での再加速が俊敏でないことを意味する。
  7. 飛行テストでは模擬空戦を17回行い、高度は18,000 から22,000 ft. の間、下限は10,000-ft. で速度は380 から440 kt表示速度だったと報告書は記載している。テストは「高AoAを実用上想定される反応操作に与え、AoAを上げるとともに操縦入力を過激に与える」ものだった。操縦パイロットはテストは「飛行条件を制限した通常テストでは得られないデータを得られた点で極めて効果的だった」と評している。
  8. 報告書ではまず「F-35Aの飛行特性でもっとも目立つのはエネルギー機動性の欠如だ」とあり、操縦パイロットはF-35Aの主翼はF-15Eより小さいことを指摘している。両機は機体重量はほぼ同じだが、推力は15,000 lb.もF-15が小さい。
  9. 「ピッチレートが充分でないためEM不足が悪化した」と操縦パイロットは報告している。エネルギーが連続して低下したため、パイロットは機首をあげようとした。F-35にはピッチレートの制約がなければ武器発射のチャンスはもっとあったはずだ。ピッチレートは空力特性よりも飛行原理による制約を受ける。攻撃、防御ともに期間銃の反応は鈍く、簡単に相手に見つかり対策を取られていると報告書にあり、飛行中のg 最高値は6.5gだった。F-35の機体は9gに耐える設計だ。
  10. 高AoAのフライトでF-16へ「攻勢に回る機会はわずか」だったという。F-16もロールとヨーでAoA制約はある。たとえば、フルラダーの入力を長く与えるとF-35は鋭いヨーを起こし、F-16は機首を横切り、ミサイル発射の好機が生まれると報告書は指摘。だがこの操縦で「エネルギーを失う覚悟」が必要で、機体は設定高度の下限に向かい、「敵が間違いを犯さない限り、撃墜されることを意味する」という。
  11. F-35は繊細な飛行制御システム (FCS) を搭載し、操縦桿やラダーの入力に対する反応を変更するのは機体が性能上限に向かい、AoAが低いあるいは高い状態で、角度が20から26度にある際だ。この範囲での空戦能力が最高だったと操縦パイロットは報告している。ただし、操縦は容易ではなく、飛行性が「直感的でなく、また楽でもなかった」ことと「横方向と飛行方向での反応で予想がつかないことがあった」ためだ。
  12. 操縦パイロットの所見ではFCSがAoAに応じて入力反応を調整してしまうことが問題だという。飛行テスト時にはAoAを設定し、特定の反応をパイロットは想定できるが、動的なフライトでは「AoAがどうのこうのというより敵機の動きに注意を集中し、機体反応は戸惑わせるものがあった」という。
  13. ある例では操縦パイロットがフルラダーを試みたがまったく効果が生まれず、そのため操縦桿に入力し、ラダーを踏むこむのと同じ効果を試みた。操縦パイロットは更に強くラダーを試み、「大変大きなヨー」を期待したが、FCSのスピン防止機能で即座に打ち消されてしまった。
  14. スピンできない飛行制御とピッチレートが低いことからF-35はF-16の銃撃から逃れることはできなかった。「銃撃への防御で有効策はなかった」と報告書は指摘している。例えば標準的な回避行動はピッチレートが低いことで有効に使えなかったため、パイロットは「圏外脱出行動を執らざるを得ず、簡単に追尾されていしまった」という。
  15. ヘルメット装着ディスプレイの大きさも問題になった。「敵機が目視出来る場合の位置確認にヘルメットが邪魔だった」と報告書にある。バイザー部分も視野の邪魔になることが数回あった。
  16. そこで報告書では対策を数点指摘している。例としてAoA制限の緩和とピッチレートがある。ともに迅速な移動や高AoAの実施を妨げている。これが実現すればF-35はF-16に対する操縦性魚の優位性を確保できる。また操縦パイロットからは「混合」飛行制御の枠を拡げ、戦闘時に飛行制御が変化しないようにするとともに、スピン制御よりももっとヨーをおこなえるようにすべきだとする。
  17. エネルギー機動性が足りないことの解決はもっと困難だ。最新世代戦闘機でのAoA制約が低いことを考えると、「F-35がスホイやタイフーンを相手にすると、簡単に餌食になる」と経験豊かな軍のパイロットが評している。「向こうのほうが旋回率で優れており(推力に余裕があるため)エネルギーの有効利用でも優れている」
  18. 報告書を見た別のパイロットがAviation Weekに語ってくれた。その全員が戦闘機メーカーと関係があるわけではない。全員が一様にエネルギー機動性の不足に驚いている。ブロック40のF-16に制約があり、機外タンク装着も「F-35に有利に働いたはずだ」とそのひとりは指摘し、有視界戦闘であればF-35のエンジンが強力で新型であり有利になっていたはずだという。
  19. 「F-35の実態に目を向けるべきでしょう」と別の海軍パイロットは指摘する。「同機は格闘戦向け軽量戦闘機ではない。F/A-18E/Fの初期生産でも同じことがあり、コードを数百万行書き換え、何度も改修を行っています。ただ今回はコードの書き換えはずっと容易になっているはずですが」
  20. 「誰が見ても俊敏な戦闘機ではない」と三番目のパイロットが語る。フライトテストで条件を変えたことが問題になっていると指摘し、パイロットの操縦時間が削られ、飛行訓練を別の低価格機やシミュレーターで代用すれば問題になるという。
  21. 今回の報告書漏洩でロッキード・マーティンは空戦時の操縦特性は重要ではないと主張している。「F-35が搭載する技術は交戦し、射撃し、敵を長距離から排除することが目的です。目視による『ドッグファイト』は必らずしも必要ではありません」 ただし、Aviation Week’の情報入手先の一つが指摘している。視界外での交戦は開戦初期には困難だろうという。あるいは交戦規則が長距離攻撃を制約するかもしれない。「F-35に対する有効な対策は思い切り接近すること」だという。■
なお、報告書の原文は下を参照してください。