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2025年3月31日月曜日

イラク戦争でのシールズが主役の映画『Warfare』は醜い戦争を美しく描く(Task & Purpose) ― ラマディ作戦の失敗をレイ・メンドーサとアレックス・ガーランドが再現した

 Troops in uniform run through a smoke-filled enclosure. The lead man carries a sniper rifle and has an impressive mustache.

『Warfare』のコスモ・ジャービス。 写真提供:A24



初の数秒で、『Warfare』が異色の戦争映画だとわかった。

レイ・メンドーサとアレックス・ガーランドがイラクでの実戦を描いた本作は、セクシーな80年代ワークアウト風のダンス曲のミュージックビデオで幕を開け、主演の軍部隊が一緒に鑑賞する(戦闘地域ではポルノは禁止されているためだろう)。 3月27日にロサンジェルスで行われたプレミア上映には、このジョークに付き合わされた退役軍人が大勢集まり、映画は私たちを戦闘に放り込む前に、第1幕から本格的な悪ふざけを披露してくれた。

 正直に言うと少し泣いた。なぜかって? というのも、アフガニスタンへの派兵を含む筆者自身の陸軍での経験から、軍隊にいることは英雄的であるよりも不条理であることの方が多いと教えられたからだ。 

 『Warfare』はこのことを証明しようとし、"ハリウッド的"な瞬間もあるものの、直感的で個人的な何かを打ち出した。

 2025年4月11日公開予定のこの映画は、脚本を担当したメンドーサが2006年にネイビーシールズとしてイラクで参加した実際の作戦に基づいている。 映画は、メンドーサが所属するシールズ小隊がラマディ市での監視任務中、地元のジハード主義勢力に制圧される様子を描いている。

 この映画では、階級や兵科、具体的な仕事についての説明で時間を浪費することはない。 ストーリーは1日、1つの場所で展開し、それ以外には踏み込まない。観客は展開される出来事を通して、自然に知るべきことをすべて知り、それ以上のことは何も知ることはない。

 代わりに観客は序盤で戦争の現実を目の当たりにすることになる。まずアメリカ軍が現地パートナーをあまりにも頻繁に虐待している厳しい事実が描かれる。あるシーンでは、部隊に所属する2人組のイラク人が、片方がIEDで真っ二つにされる前に、まず銃撃を受け建物から出ることを余儀なくされる。 登場人物は少しも悪いこととは思っていないようだが、映画もそれを正当なものとして否定しようとはしていない。スクリーンにリアルに描く選択は、それがいかに間違っているかを私たちに教えてくれる。

 また、映画の舞台となったイラク人一家との短いながらも重要な場面もある。そしてエンディング・ショットは、最終的に反乱軍が勝利したことを暗示しているが、映画はそのいずれについても明確な声明を出すには至らず、喚起的なクローズアップを避け、ワイドで静的なショットでドキュメンタリーやジャーナリスティック的な視点に徹している。

 作品のチームはこのアプローチで堅実な選択をしたと思うが、観客の中には、『Warfare』がこのような問題を提起しながらも、スクリーン内のアメリカ軍以外の人物に共感する能力を制限しているように感じる人もいるのではないだろうか。それは、例えば、先に出撃させられることで自分たちの命より下に置かれたイラク人パートナーのバラバラになった遺体を無関心に踏み越える場面で顕著となる。

 戦争は醜いものだが、『Warfare』は美しく描いている。脚本家であるメンドーサ監督の若かりし頃を演じたディファラ・ウーンアタイや、作戦を指揮するウィル・ポールターをはじめとするアンサンブル・キャストの演技は素晴らしい。部隊の軍事戦術は終始リアルで説得力がある。しかし、コスモ・ジャーヴィスは、銃撃の中で負傷し避難するスナイパーのエリオット役で見せ場を作る。スナイパースコープを長時間覗き込んだ後にストレッチをしたり、チームメイトを理由もなくぎこちなく睨みつけるなど、彼の動きや表情ひとつひとつが軍での経験を想起させ、彼がスクリーンにいるとき、この映画は完全に現実のものとなる。


 『Warfare』はまた、優れた撮影と編集の恩恵も受け、明瞭で安定したアクションを見せてくれる。 アクション映画とは思えないほど芸術的なショットも多い。また、多くの戦争映画とは異なり、『Warfare』では、クイックカットや手ぶれ映像、ごまかしの効いたアングルで人為的なスピード感を演出するのではなく、重い荷物を背負って移動する部隊の、もったりとしたペースを見事に描写している。

 臨場感あふれるサウンド・デザインは、戦争の静かな瞬間と痛々しいほどの大音量の両方を際立たせている。爆発後の難聴や戦闘中の無線の混乱など、主観的なキャラクターの体験もいくつか伝えている。ミュージカル・スコアを入れない選択は完璧で、台詞は雑音の中でも明瞭だ。

 全体的に、この演出のおかげで、まるでその場にいるかのように、じっくりと出来事を体験できた。また、笑える場面で涙したように、不安を煽るような戦闘シーンでは何度も大笑いしてしまった。

 マイケル・ガンドルフィーニが見事に演じる、常に無能な将校がエリオットにモルヒネを注射しようとして自分の手を刺してしまったり、チームのクライマックスとなる最後の脱出劇でドアに挟まれたりする場面など、絞首台のユーモアは完全に意図的なものだと感じられる。『Warfare』は、その場にいた男たちが記憶している実際の出来事に基づいているが、メンドーサとガーランドは筆者のためだけに、特別な瞬間を暗く滑稽なトーンで描くことを選んだような気がした。


映画は第3幕で、避難を支援するため到着した第2シールズ・チームが、大胆不敵に町を駆け抜け、銃撃戦を繰り広げるクールガイの戦闘描写に少し触れるものの見ていて面白い。そしてこの映画は、部隊の人間性や誤りを決して無視せず、また、救助に来た人々の切断された死体に絶えず痛々しくつまずきながら、戦争の残酷さを直視している。

 戦闘が終わり、物語が終わると、すぐにスクリーンには実際の軍人と登場人物を並べる。しかし、『Warfare』は登場人物を正当に評価しており、この余分な努力は、『Warfare』が実際の戦争と同じように残す曖昧さを整理しようとする、意図的だが失敗した試みに思えた。この種の説明は、映画のトーンそのものをやや損ない、残念なエピローグだった。とにかく顔の半分がぼかされているので、最高に混乱する。

 とはいえ、『Warfare』が壮大な作品であることに変わりはない。この種の物語を、9.11後の世界に蔓延するヒーロー崇拝の域を超えるものにするには、まだやるべきことがたくさんある。観客はイラクとアフガニスタンの深く複雑な部分を体験する準備ができており、『Warfare』は力強いスタートとなる。ハリウッドがこの方向に進み続けるかどうかは、本作の批評家評価と興行収入で決まるだろう。

 『Warfare』は米国で4月11日公開。■


Iraq War movie ‘Warfare’ is a beautiful depiction of an ugly war

Ray Mendoza and Alex Garland's recreation of a mission in Ramadi gone wrong hits with visceral and personal details.

Addison Blu


https://taskandpurpose.com/culture/warfare-review-iraq-war/


2022年11月26日土曜日

新作映画「Devotion」は朝鮮戦争の空戦をリアルに描き、米国内の人種問題にも光を当てたリアルな航空映画になった。日本公開が待たれる。

 

映画「Devotion」は、朝鮮戦争のパイロットジェシー・ブラウン少尉とトーマス・ハドナー大佐の実話を描くく (Photo: via Sony Pictures)

 

「Devotion」は、信じられない空撮シーンと確かなキャストで、悲惨な実話を語る作品

J.D.ディラード監督の新作「Devotion」は、「トップガン」より優れている。「Devotion」は航空映画の最高峰になった。1969年の大作『バトル・オブ・ブリテン』や1954年の『トコリの橋』と肩を並べる作品だ。


映画の予告編 https://youtu.be/nIvBBd8pU1s


「Devotion」の背景にある実話と、アメリカの人種対立と朝鮮戦争が深く織り込まれたテーマが、この映画に多層性と、ハリウッド脚本家が捏造できない本質的な意義を与えている。真実は小説よりも奇なりというが、この場合は優れているのだ。

The movie banner on the official website of Devotion.

 

熱心な航空ファンなら飛行機の映画に、アメリカの深い社会的不平等を現実的に描きながら一緒に楽しめるかどうかと疑問を感じるだろう。映画「Devotion」は、軍とハリウッドにおける不都合な真実を剥き出しにする。今日に至るまで、黒人の戦闘機パイロットはほとんどいないのだ。

「Devotion」(米国内はソニー・ピクチャーズ、国外はSTXインターナショナル配給)は、作家アダム・メイコスAdam Makosの2015年の著書 "Devotion" の映画化。(初版、Atlantic Books、2015年。 最新版、Ballantine Books、2017年)。実は、「Devotion」の裏にある実話は、それだけで物語にする価値がある。

メイコスは、第二次世界大戦や朝鮮戦争の退役軍人にインタビューし、徹底的な調査と優れたストーリーテリングで物語に命を吹き込む確固たる文学のシチュエーションを切り開いてきた。マコスはミッチナーやヘミングウェイではないが、精力的な研究者であり、有能な作家であり、才能ある語り手である。フォーブス誌のニコラス・レイマンによる2022年1月記事によれば、第二次世界大戦と朝鮮戦争の退役軍人という「偉大なる世代」が「1日234人」の割合で亡くなっている時代に、彼の本は読者を獲得している。

メイコスは2012年出版の『ハイヤーコール』で、第二次世界大戦さなかの1943年、B-17乗組員とドイツ軍戦闘機パイロットの思いがけない遭遇を描いて注目を集めた。続いて2015年に「Devotion」を発表し、すぐハリウッド脚本家ジェイク・クレインとジョナサン・A・H・スチュワートの目に留まった。あとは、よく言われる映画の歴史そのものだ。

パンデミック後の試写会で、「トップガン マーヴェリック」との比較が行われた。比較は必然だ。航空映画といえば、飛行機マニアや歴史ファンにしかなじみのないジャンルだが、メジャースタジオが大金を投じるのは久しぶりだ。一般向け航空映画が1年に2本も公開されるとは、最近の映画史で前代未聞だ。

「Devotion」は、朝鮮戦争中のアメリカ海軍のジェシー・ブラウン少尉とトーマス・ハドナー大佐の実話である。ハドナー大佐は、1950年12月4日、有名なチョシン貯水湖の戦いでブラウン少尉のF4U-4コルセアが撃墜され、英雄的な救出劇で名誉勲章を受章している。

実在のジェシー・ブラウン少尉とトーマス・ハドナー大佐。 (Photo: via US Navy Archives)

 

「Devotion」のキャストはすごい。VF-32の長兼分隊指揮官ディック・セボリ役のトーマス・サドスキーの演技は圧巻。彼は映画のクライマックスで重要なインスピレーションを与えるスピーチをする。また、グレン・パウエルは、「マーベリック」にも出ており、ジェイク・"ハングマン"・セレシン中尉役として、ジェシー・ブラウン少尉役のジョナサン・メジャーと同等の演技に賛辞を贈ろう。キャスト全員に弱い演技はない。

「Devotion」の出演者ジョナサン・メジャー(ジェシー・ブラウン役)とグレン・パウエル(トーマス・ハドナー役)。(Photo: via Sony Pictures)

 

「マーベリック」に対し「Devotion」は映像的に十分対抗できる。「トップガン」のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーは、「マーベリック」について次のように語っている。自分の映画を「航空へのラブレター」だと言った。しかし、「Devotion」は、視覚的にも、飛行への畏敬の念においても『マーヴェリック』を凌駕している。第二次世界大戦/朝鮮戦争時代の本物のヴィンテージ航空機が、有名なエアロL-39シネジェットからの息を呑むような空撮で撮影された。このジェットカメラ機には、「マーヴェリック」でも使用された特別開発のSHOTOVER F1 RUSHカメラとジンバルが搭載されている。しかし、映像的には「Devotion」が優れている。

「Devotion」の空撮は、「トップガン」と同じくシネジェットで行った。また、F4Uコルセアの尾翼に取り付けたカメラが使用された。 (Photo: via Sony Pictures)

 

「Devotion」と「Maverick」の飛行シーンでの視覚的な違いは、コンピューターゲームと大作映画の違いだ。「Maverick」は、フライトシミュレーター、ゲームプレイのような映像の質感がある。必殺のカット割りと閃光のようなセグメンテーションがある。F/A-18スーパーホーネットによる高速ジェット機飛行のめまいや方向感覚を伝えるため、「マーベリック」の飛行シーンは発作を起こしそうなほどだ。「マーベリック』は、荒唐無稽でありえないスーパーヒーローのフィクション映画として成功している。

一方、「Devotion」は実話である。1940年代後半から1950年代のピストンエンジン機が登場する。その結果、すべての飛行シーンで「マーヴェリック」とちがうペースと外観が生まれた。「Devotion」では、飛行シーンを楽しむ時間が長くなった。より敬虔で叙情的だ。そして、あのラジアルエンジンの音......。

「Devotion」の空撮では、少なくとも5機のヴォート/グッドイヤー社製コルセアが使用された。個人所有のヴィンテージ・ウォーバードの数機は、空母レイテ(CV-32)所属の1950年代の戦闘機隊VF-32「ファイティング・スワードマン」の本物のマーキングに再塗装された。このほか、オレゴン州マドラスのエリクソン航空機コレクションからダグラスAD-4Wスカイレイダー、カリフォーニア州チノのプレーンズ・オブ・フェイム博物館からロシア製MiG-15(民間登録N87CN)の実機が登場する。しかし、この映画は有名な曲がった翼のコルセア好きにはたまらないだろうが、「Devotion」の冒頭の飛行シーンで見せ場を作るのは、あまり評価されていないグラマンF8Fベアキャットだ。

「Devotion」のドッグファイトシーンの撮影には、MiG-15実機が使用された。 (Photo: screen capture via Sony Pictures)

 

このサイトをご覧になれば、「Devotion」を見たくなるだろう。映画館に足を踏み入れたら、技術的な映画製作、全キャストの優れた演技、そしてただただ見事な空中撮影のコンビネーションが、非常に強力であることを覚悟しておいたほうがいい。そして、「トップガン」が精巧だが架空の極超音速実験飛行や無名の悪人たちを描いたのに対し、「Devotion」が実話だったのに驚かないでほしいほしい。「トップ ガンマーベリック」は、近年の航空映画では、僅差で2位になった。■

Move Over 'Top Gun: Maverick', 'Devotion' Is Authentic Aviation Cinematography - The Aviationist

November 23, 2022 Military Aviation, Military History

TOM DEMERLY



 

About Tom Demerly

Tom Demerly is a feature writer, journalist, photographer and editorialist who has written articles that are published around the world on TheAviationist.com, TACAIRNET.com, Outside magazine, Business Insider, We Are The Mighty, The Dearborn Press & Guide, National Interest, Russia’s government media outlet Sputnik, and many other publications. Demerly studied journalism at Henry Ford College in Dearborn, Michigan. Tom Demerly served in an intelligence gathering unit as a member of the U.S. Army and Michigan National Guard. His military experience includes being Honor Graduate from the U.S. Army Infantry School at Ft. Benning, Georgia (Cycle C-6-1) and as a Scout Observer in a reconnaissance unit, Company “F”, 425th INF (RANGER/AIRBORNE), Long Range Surveillance Unit (LRSU). Demerly is an experienced parachutist, holds advanced SCUBA certifications, has climbed the highest mountains on three continents and visited all seven continents and has flown several types of light aircraft.


2022年1月6日木曜日

ご紹介する戦争映画5本は戦争の実相を描く埋もれた傑作だ。

映画 激戦地 より

 

 

を超えた疑問がある。国のため、大義のため戦う理由とは何だろうか。黄金期のハリウッドがこの疑問に真正面から答える作品を第二次大戦後に製作していた。

 

戦時中のハリウッドは戦勝を助ける作品を量産したが、戦後は戦争を真正面から取り上げる作品を制作した。

 

数百万人が大戦に従事し、各家庭で感じるところは大きい。映画館に復員軍人が集まった。映画館にはガタルカナル、バルジの戦い、大西洋でのUボート攻撃、ドイツ空爆の実体験を有する観客が自分の体験を映画で見たいと入場料を払った。戦時中の作品には満足できなかった。

 

現在は忘却されている作品5本を集めた。その背景は理解できる。白黒映画の粗い画像は『プライベートライアン』Saving Private Ryan (1998)や『1917 命をかけた伝令』1917(2019)のような近年の作品の比ではない。とはいえ、戦後製作の作品には生の体験を描く努力が垣間見られる。

 

公開当時はこうした内省的作品は「反戦」映画のレッテルを張られた。だが実は違う。参戦した兵士の観点で戦闘を描こうとしてまずい結果を生むこともあった。

 

こうした作品を男っぽさを野蛮に描いていると一蹴する傾向がポストモダン派にあり、現代の愛国作品と呼べるアメリカン・スナイパーAmerican Sniper (2015)も忌避する狂信者もいるが、的外れな評価といわざるを得ない。こうした作品が描こうとしたのは国のため危険な任務につく勇気を持った普通のアメリカ国民である。

 

批評はやめよう。以下埋もれた名作を列挙する。

 

1) 『激戦地』A Walk in the Sun (1945): 

大戦末期の製作で原作は1943年に出版された。ここにあげたのは戦時中のハリウッド調の特徴と戦後製作の振り返り作品のつなぎとなったためだ。

 

小隊長、軍曹を共に失った隊が敵地で強力な敵陣地となった農家を奪う任務を進める。本作品には英雄もメッセージもない。GIたちの優柔不断さ、先が見通せない不安、前線での退屈さ、恐怖を淡々と描いている。「1940年代の第二次大戦作品でもっとも過小評価された作品」と評した映画評論家がいる。

 

2) 『攻撃』 Attack (1956): 「もっとも偉大な世代」の中には愛国者や英雄の一方で臆病者や無能なものもいた。本作品は「戦争をシニカルで暗いものと描いている」といわれ、第二次大戦を十字軍の再来と捉えていた時代には製作されない作品だった。大戦末期に臆病でいながら経験の足りない大尉が戦闘で鍛えられた小隊長と衝突する。公開当時は戦場でのリーダーシップについて画期的な研究材料ととらえられ、同じテーマは『突撃』Paths of Glory (1957)で第一次大戦の塹壕戦で取り上げられた。

 

3) 『深く静かに潜航せよ』 Run Silent, Run Deep (1958): 

海軍戦では潜水艦以上に悲惨な場面はない。生存と死亡の中間は皆無に近いからだ。『潜航決戦隊』 Crash Dive (1943)が第二次大戦の潜水艦戦では初期の作品で、愛国的音楽もあり、いかにも戦時中の作品となっている。『深く静かに潜航せよ』は対極で戦闘のプレッシャーと合わせ深海のプレッシャーが艦長、乗組員に立ちふさがっている。

 

4) 『突撃隊 Hell is For Heroes (1962)

真冬に、孤立し人手不足の疲弊したアメリカ軍部隊が、ドイツ軍の激しい反撃にさらされながらも戦線の維持を迫られる。第二次世界大戦中の映画『ガダルカナル日記』(1943年)では、テックス、ブルックリン出身のタクシー運転手ポッツィ、ニューメキシコ出身のアルベルスなど、民族的地理的に多様な「オールアメリカン」部隊が登場する。しかし、本作品では、アンチヒーローや変わり者など、アメリカ軍で実際に従事した兵士たちを登場させ、この図式を覆した。

 

5) 『戦う翼 The War Lover (1962): 

本作は英国で撮影されており、ハリウッド作品ではないが米軍の爆撃機乗員が主役で、「良い戦争」神話を否定する戦後の戦争映画らしさを残している。航空戦の悲惨な体験を多くのアメリカ国民は『メンフィス・ベル』(1944年)のような戦時中ドキュメンタリー作品を通じ知っていた。戦後は、戦火の中を飛行する男たちの心理的葛藤を明らかにする作品が生まれた。

 

中でも印象に残るのは、高評価を受けた『頭上の敵機』(1949年)である。これに対し『戦う翼』は、一途な爆撃機パイロットの視点でヒーローとサイコパスの間を行き来しながら、戦争を取り上げている。■

You Need to Watch These 5 Top War Movies | The National Interest

 

January 3, 2022  Topic: Entertainment  Region: Global  Blog Brand: The Reboot  Tags: WarWar MoviesFilmCinemaHollywood

You Need to Watch These 5 Top War Movies

by James Jay Carafano

James Jay Carafano is Vice President for Foreign and Defense Policy at the Heritage Foundation.

This piece first appeared earlier and is being reprinted due to reader interest.

Image: Flickr


スティーブ・マックイーン作品が二本も入ってますね。ホットリンクでYouTubeで予告編や本編が見られるのでのぞいてみてはいかがでしょうか。

 

2020年10月12日月曜日

ジョン・ウェインがもちこんだ戦争映画企画を海兵隊が握りつぶした理由

 


John Wayne (1907-1979), Wikipedia

 

説の映画俳優ジョン・ウェインは西部劇全盛期に長いキャリアを維持し今も有名だ。代名詞のカウボーイハットとウィンチェスターモデル1892レバーアクションライフルは語り草になっている。だがデビュー作は第一次大戦が題材のドラマFour Sonsで、「戦争もの」十数作にも出演している。「コレヒドール戦記」、「硫黄島の砂」、「危険な道」、「史上最大の作戦」、「グリーンベレー」などだ。

 

「グリーンベレー」でウェインは監督も担当し、「ヴィエトナム戦をカウボーイ対インディアンの視点で描いた作品」(映画評論家ロジャー・エバート)との批評もあったものの、米軍の全面協力を得た唯一の作品として特筆すべき存在だ。ウェインは生涯を通じ共和党支持だったが民主党のリンドン・ジョンソン大統領や国防総省を説得し、装備品を提供させた。

 

同作は興業面で成功作になったが、批評家の不評を買い、同時にヴィエトナム戦中の軍を肯定する視点を打ち出すのにも失敗した。ジョン・ウェインは軍に好意的な関心を当てようとし、1954年に朝鮮戦争が題材の作品を製作しようとしたことがある。この年は朝鮮半島での「警察行動」が正式な休戦条約の無いまま終了した翌年であるが、米海兵隊が企画をボツにしたのだった。


1940年代から1960年代末まで国防総省はハリウッドの戦争映画製作に支援を惜しまず、軍の姿を「正確かつ正しく伝える」よう期待してきた。

 

 

海兵隊新聞はウェイン企画が実現しなかったのは「海兵隊の広報活動に決定的打撃を与える可能性」を海兵隊が恐れたためとする。

 


1954年8月の海兵隊新聞はウェインがペンタゴン広報のドナルド・バルーチに送った書簡で映画Giveaway Hillへの軍の支援を要請したと伝えた。朝鮮戦争で激戦となったが記憶されなかったVegas前哨基地の戦いのシナリオで1953年3月、休戦のわずか4か月前に国連軍が中国軍と戦った話だ。

 

現地では主要抵抗線(MLR)付近の前哨基地三か所にはネヴァダ州都市名がつき、ヴェガス、リノ、カーソンの各地点に第一海兵師団が配備された。

 

中国軍が3月26日に奇襲攻撃すると、リノ、ヴェガスを防御する海兵隊は兵力で圧倒されてしまう。海兵隊員ほぼ全員が死亡あるいは捕虜となった。国連軍の反攻はヴェガスでは成功したが、戦闘4日後でもリノは中国軍が占拠したままだった。そこで国連軍はその一帯を共産軍に「くれてやる」Giveawayことにした、というのが同作の題材だった。

 

ウェインは製作陣と出演俳優に第一海兵師団への訪問許可と装備品の提供を求めた。これまでの軍の関係から要請はすぐにも実現すると思われた。しかし、海兵隊のフランク・ワーシグ准将がシナリオを読み重大な懸念をバルーチに伝えてきた。題名からして好意的でない一般の反応を巻き起こしそうだった。

 

ラテン系海兵隊員が差別される筋書きにも海兵隊が難色を示し、ウェインが変更を受け入れたくなかったのか、あるいは単に製作意欲を失ったのか不明だが、同作は結局製作されることはなかった。


海兵隊が「硫黄島の砂」制作にあたりウェイン他に基礎訓練体験を許した。同作の撮影では製作元のリパブリック映画にキャンプペンドルトンで無条件撮影を許し、一個大隊をまるまるエキストラで出演させたのと好対照な結果になった。

 

ウェインは六年後にもうひとつの不名誉な「最後の砦」の戦闘を描く「アラモ」に製作監督も兼ね主演した。同作はウェイン自身の個人的なこだわりを反映したものだったのだろうか。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

The U.S. Marine Corps Actually Killed a John Wayne Movie

October 7, 2020  Topic: History  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: Marine CorpsMilitaryJohn WayneHistoryGuns

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.