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2016年7月14日木曜日

★ハーグ法廷の結論を受け米下院フォーブス議員が論点を整理



ここしばらくは南シナ海だけでなく中国周辺の事態に目が離せないことになりそうですね。中国が世界からの孤立化を防ぐために行動を改めるか(可能性は低い) 新たなレトリックを駆使するのか(すでにその傾向あり)わかりませんが、やんちゃな子どものような態度だけは自制してもらいたいものです。なんといっても核戦力まである国ですから。しかしメンツを潰された時の中国人は逆上するはずですから安心して眠られなくなりそうですね。

The National Interest


The Hague Has Ruled against China. Time to Enforce It.

The amphibious assault ship USS Peleliu transits the South China Sea. Flickr/U.S. Pacific Fleet
The amphibious assault ship USS Peleliu transits the South China Sea. Flickr/U.S. Pacific Fleet

July 12, 2016

UNCLOS仲裁法廷でフィリピン-中国間の領有権をめぐる意見の相違で司法判断が出たことで中国には2つの選択肢が生まれた。一方でアジア太平洋地域に広い可能性が出てきた。中国が今回の法廷の決定に示す反応でアジア安全保障の方向が決まるだけでなく第二次大戦後の国際秩序でも今後の姿が変わる。

大戦後の世界で米国は世界各地の協力国と紛争の平和的解決を原則とする国際的な仕組みづくりを模索し、国際法と規範の順守にこだわり、武力による国家目的の実現を排除してきた。この秩序は二度の世界大戦の灰燼から構築され、これまでの中国やアジア太平洋各国の繁栄を支え、過去70年間に大国間で戦闘は発生していない。

中国は繰り返し「責任ある大国」になりたいと表明してきたが、最近の行動が国際秩序に対する最大の脅威となっている。中国の経済力、拡大する軍事力ならびに他国の邪悪な意図の犠牲になってきたと主張しているため国際間の仕組みは困難な事態に直面させられている。

特に中国周辺国にとって難題は待った無しで、東シナ海から南シナ海、インドとの国境線で紛糾する中で中国は組織的に動いて事実の書き換えを目指している。その背後に武力行使をちらつかせている。南シナ海で人工構築物を建造し領有権主張の裏付けにする、東シナ海で防空識別圏を設定する、インド領アルナチャルプラデシュ近くで挑発的軍事行動を繰り返す、これらで中国は一貫して「力が正義だ」と国際政治で主張している。

そこで今回の決定だが、中国政府に真っ向から反駁する内容になっており、今回の係争事案だけでなく結論の形成過程が重要だ。フィリピンがUNCLOS法廷に提訴した事自体が米国及び協力国が戦後の世界で守ってきた価値観、原則に歩調を合わせている。フィリピンのような小国、開発途上国でも国際法規範に訴え中国のような大国を相手に成功をおさめられること自体が中国外相発言への反駁である。外相は「中国は大国であり他国は小国だ。これが現実だ」と中国の好戦的態度を正当化しようとした。

中国が今回の裁定内容を無視すれば、国際社会で建設的な態度を取る一員になるとの同国の公約が一気に虚しくなる。同時に国際秩序にへの深刻な脅威にもなる。世界第二位の経済大国が世界最大の軍事力で公然と自由を尊重する国際秩序を否定し、紛争の平和解決も認めないというのだ。その結果として国際安全保障への影響は深刻で北京の動きの一挙一動をモスクワ、テヘラン、平壌が注視しているはずだ。

米国は今こそ中国が司法判断を拒絶する事態に備えて態度を硬化させるべきで、場合によっては軍事手段でマニラとの紛糾の解決を模索すべきだ。米政府が空母打撃群二個を派遣する決定をしたのは妥当な対応だ。中国が決定内容に性急な反応を示した場合は、米政府は条約上の同盟国、協力国の側に立ち侵略を食い止め、我々の価値観や利益を守る姿勢を断固として示すべきだ。

今回の法廷の結論は中国が台頭してきた歴史で大きな変換点になり、戦後世界の仕組みに対して世界問題を修正主義的立場で見る中国の価値観が最もわかりやすい形で衝突したものといえよう。今回の決定への対応策を決めるのは中国自体だが、米国の選択肢はひとつしかない。断固としてフィリピンの友人たちの側に立ち、地域全体で普遍的価値観を守り、いかなる大国といえども軍事力やGDPの規模と関係なく、法の上には立てないとの原則を守ることである。

J・ランディ・フォーブス下院議員(共、ヴァージニア)は下院軍事員会シーパワー及び兵力投射小委員会の委員長であり、下院中国問題議員連盟の共同ホッ金人でもある。


2016年7月12日火曜日

★南シナ海対立はもっと深刻な問題に拡大しないか心配される



いよいよ12日(現地時間)国際仲裁裁判所が結論を出しますが、意味がない、根拠が無い、従うつもりは毛頭ないと、ますます中国は不良ぶりを示しているようです。それだけならいいのですが、武力衝突の危険が著しく増えると見るのが普通の見方で、南シナ海がきな臭いことになれば日本経済もお先真っ暗になってしまうのですが、この国は本当にのんきですね。


The National Interest


South China Sea Showdown: Part of a Much Bigger Nightmare

July 11, 2016

  1. 明らかな予測結果をあえて口にすることが良い場合がある。南シナ海をめぐる中国対フィリピンの係争問題で国際仲裁裁判所が明日司法判断を下すがその行方は明らかだ。何が起ころうと、裁定内容にかかわらず、緊張をはらむ同海域は中華人民共和国と領有を主張する多数国がにらみ合い、更に中国と米国も対立する。どう見ても事態は悪化を重ねそうで、おそらく急速に展開するだろう。
  2. まず南シナ海をめぐる中国とフィリピンの二国間の課題を見てみよう。仲裁裁判所が中国の主張の少なくとも一部を無効と宣言するのは確実と見られる。中国はフィリピンからスカボロ礁を2012年に奪い領有宣言しているが,これは岩礁であり200マイルの経済専管水域の要件を満たさず、中国が主張する九段線で南シナ海の85%を自国領海とする論拠が崩れる。
  3. 当然中国は烈火のごとく反論をしてくるだろうし、すでにもう行っている。習近平主席は数日前に「面倒な事態は怖くない」と他の中国関係者同様の発言をしている。だが中国からは交渉も可能との暗示も出ており、フィリピンも協議に前向きな姿勢を示している。
  4. 問題は中国がスカボロ礁のみならず南シナ海の領有を主張していることだ。声明の内容及び回数を見ると、中国は交渉の余地を残していない。さらに交渉したとなれば中国国民も怒りにかられ政府は弱さを露呈したと決めつけ、中国共産党が一番恐れる事態である国内騒乱につながりかねない。
  5. アジア太平洋更に広くインド太平洋地区に不幸なことに交渉しても即座に失敗に終わるか、時間をかけて何の合意形成もできないだろう。どちらにせよ中国は力の行使に出てくるだろう。防空識別圏(ADIZ)を設定するか、スカボロ礁でも浚渫工事、軍事基地建設を始めるだろう。
  6. 中比関係以外にも影響が出る。例えばヴィエトナムが自国も国際仲裁裁判所に法的な解決を求めようとするかもしれない。日本も尖閣問題を法廷に持ち込むか南シナ海での集団訴訟に加わるかもしれない。(日本の原油輸入の6割がこの海域を通過することがポイントだ)
  7. フィリピンと中国の交渉が実現しても決裂するのが関の山だろう。中国としては強硬策しか選択がないと見るだろう。
  8. 真の試練は米中関係だ。現時点で中国は南シナ海で海軍演習を終えようとしており、米国は空母打撃群一個を派遣中でフィリピンに交代で配備中の航空部隊がある。緊張が一気に高まれば米国は必要な対応が取れる体制にあり、中国がADIZを一方的に宣言すれば、空母艦載機あるいは陸上機でこれに挑戦し新たな段階の航行の自由作戦を開始する、あるいはフィリピンとの条約を尊重し、あるいは他国との関係を尊重し一番恐ろしい事態になるかもしれない。
  9. だがもう一つ大きな問題があり、こちらはすぐ解決できそうにない。中国は大国として現状のアジア太平洋国家間の仕組みは自国の目指す権益や要求に適合していないと感じている。中国は国力がまだ弱い段階では日本が尖閣諸島を実効支配し、東シナ海の覇権を握る事を容認していたが、経済力も軍事力も強大になった現在でもそのままとは思えない。中国の定義では台湾は反乱地方の扱いで冷戦の産物としているが、遅かれ早かれ再度前面に出そうだ。
  10. 中国は南シナ海での自国経済力、軍事力の存在感は圧倒的で発言力も最大になってしかるべきと見る。台頭する国家として地域内秩序は新体制にはふさわしくないと見る。同時に米国には自分のことだけ心配しろ、この地方に構うな、中国の動きを封じ込めたり制限するな、今だけでなく未来永劫に、というのが中国の意向だ。まさしくツキディデスの罠で戦争は不可避になり、更に地域内で拡大するだろう。
  11. ということで準備を怠りなく。この数日あるいは数週間は相当荒っぽい展開になりそうだ。しかしながら南シナ海問題は実はもっと大きな問題の断面に過ぎず、大問題が綺麗な形で終結することは少ないのは歴史が示している。■
Harry J. Kazianis is a Senior Fellow for Defense Policy at the Center for the National Interest and Senior Editor at The National Interest Magazine. You can follow him on Twitter: @Grecianformula.
Image: Flickr.


2016年7月6日水曜日

南シナ海に広大な海軍演習海域を設定した中国の不穏な動き



不利な判定が出ることを織り込んで中国はなりふり構わず力で南シナ海を支配していくことを誇示するのでしょうか。中国の常識が世界の常識からどんどんはずれていけば、面子を重んじる中国が理屈に合わない行動に出る可能性が高いと思います。また米軍はじめ各国部隊も静観できず、なんらかの行動に出れば常識の通じない中国側が予想外の反応を見せて、一触即発状態になりかねません。ここまで状況がホットになっているのに日本は鈍感ですね。

China Declares a No-Sail-Zone in Disputed Waters During Wargame

The area is larger than the US state of Maine.
BY ECHO HUANG YINYIN
JULY 5, 2016
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  1. 中国が南シナ海で軍事演習を今週開始した海域は米メイン州より広い。
  2. 中国語による発表では演習は7月5日から11日までで中国の領海主張に対する国連仲裁裁定結果が言い渡される前日までだ。中国は裁定内容は無視すると公言しており、そもそも仲裁手続きに参加していない。
  3. 声明では正確な座標情報で演習地を指定しており、海南島から南へ中国が実効支配するパラセル諸島(ヴィエトナムも領有を主張)に達する海域だ。ヴィエトナム外相は演習への抗議を7月4日に発表している。.
  4. 中国は演習海域への船舶立ち入りを禁止している。該当する海域は10万平方キロに及ぶ。これは48百万人が暮らすフィリピンのルソン島の11万平方キロに匹敵する規模だ。
  5. 今回発表の演習海域は船舶で混雑する航路と近接するが、重複していない。
  6. 中国ネチズンからは演習に興奮する向きもあり、中国の実力を誇示できるとする一方で憂慮する声もSina News WeiboやFT
  7. Chinese に見られる
  8. 演習開始日は米独立記念日の翌日であり、終了日の7月11日が国際法廷の結果発表の前日という微妙なタイミングになっている。■

2016年7月4日月曜日

★★7月12日を境に中国は「不良国家」になる



尖閣、南西諸島での中国の海空軍の不穏な動き、蔡政権の台湾への露骨な圧力などすでに以下予想するオプションが現実ののものになっています。7月からの南シナ海は荒れた海になりそうです。

The National Interest

A South China Sea Explosion: Why China Might Go ‘Rogue’ on July 12, 2016


July 1, 2016

7月12日に国際仲裁裁判所が中国とフィリピンの係争案件で裁定を出す。中国に不利になるとの見方が大半の中、中国は早くも距離を置こうとしている。だが予想通りきわめて不利な結果が出た場合に中国はどう対応するだろうか。中国には選択肢は多数あり、大部分で悪影響を出しそうだが、アジアのみならず米国にも悪影響が及ぶのは必至だ。

最も可能性が低い選択:何も反応せず裁定を事実上受け入れる

  1. 北京からお決まりの声明文が出て、南シナ海は自国領海と主張したらどうなるか。
  2. 一見悪くない選択に見える、表面上は。中国は今と同様に人工島建設で小規模軍事基地を構築し、最新「空母キラー」対艦兵器を配備し、最新鋭戦闘機、爆撃機を順番で移動させ、南シナ海を究極の接近拒否領域否定(A2/AD)地帯に変えるというシナリオだ。中国は裁定内容に怒りを表明し、今まで通りの行動を続ける。自国主張を固める効果があるといえよう。
  3. この反応なら最近の中国にすれば穏やかな方だ。が実現の可能性は極めて低い。習近平一党は国内に力強く見える形で対応を迫られるだろう。昔通りではだめだ。強硬策を求める国民に外部勢力には屈しないと見せるため南シナ海は兵力投射先として中国の影響圏にしておく。
  4. ここから二つの可能性が生まれるが、どちらも超大国同士の衝突の危険を発生させるはずだ。

可能性が一番高い選択肢:防空識別圏(ADIZ)を設定する

  1. 中国政府はここ数か月にわたりこの動きを予告している。防空識別圏を宣言するかとの問いに中国政府関係者は現時点で予定はないが将来あるとしたら南シナ海の危険度が理由だろうと述べている。中国に不利な裁定内容が出れば中国の公式見解も変わるだろう。
  2. 習近平はじめ上層部が公式見解で変更を正当化するのはたやすい。裁定内容で中国の権益が侵されたと言えばよいのであり、他国の誤った行動や国際圧力でADIZ宣言に「追い込まれた」と説明すればよい。中国はすでに防空装備を配置しており、戦闘機も交代で派遣している。現状でも中国はある程度の騒動を起こす力はある。東シナ海と同様に宣言しながら強制力は行使できないのではないか。だが宣言だけで緊張は相当高まる。識別圏の大きさや範囲にもよるが、アジア各国との危機状態につながるかもしれない。ワシントンとしても今回はB-52を一機か二機通過飛行させるだけでは済まないだろう。

もう一つの選択肢:不良国家になる

  1. ではADIZ設定だけで満足せず、武力衝突一歩手前まで強硬な態度に中国がでればどうなるか。中国はアジアの危険の火種すべてに圧力をかけてくる、つまり悪党の役を演じることだ。例として、
-東シナ海で海空のパトロール回数を大幅に増やし日本の神経を逆なでする。同時に石油天然ガス採掘も大々的に始めて日本政府を大いに憂慮させる

-台湾で危機状況を引き上げる。習主席は台湾渡航を大幅に制限するかもしれない。台湾はすでに中国本土に経済的依存度を高めているが、投資貿易規模を減らすことから始めるだろう。習は台湾を困らせる方法を各種熟知している。アジアの目を台湾海峡に向けさせるのも有効な手だ。

-スカボロー礁でも埋立て工事を開始する。リスクも危険も最高でワシントンは実施の場合は対処するとの意向を示しており、A-10他で示威飛行させている。だが中国がフィリピンからわずか150マイル地点で浚渫工事を開始し南シナ海でもう一か所の軍事基地構築を始めたらアメリカはどう対応するだろうか。

南シナ海対決へ向かうのか

  1. 7月12日の裁定結果前後に世界各地のアジアウォッチャーは多忙を極めるはずだ。アジア太平洋地区には不幸なことだが、その後に発生する事態で南シナ海の緊張はさらに高まるし、中国が選択可能なオプションを考えると、同時に中国の実力とここ数年にわたり中国が国際関係の現状を大きく変えようとしてきたこともあり、今後数か月にわたり緊張が高まることは避けられようにない。

Harry J. Kazianis is a Senior Fellow for Defense Policy at the Center for the National Interest and Senior Editor for The National Interest magazine. You can follow him on Twitter: @grecianformula.