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2023年12月27日水曜日

2024年の展望② トランプ大統領再選となった場合、ウクライナにはどんな展開が待っているのか。

2024年の展望(2)

大統領選挙でトランプ再選となったらウクライナ支援はどうなるのでしょうか。National Interestが識者の見解を伝えています。つくづくバイデンの失策が大きなつけになっていることがわかります。現時点で占拠の予想をするのは無謀ですが、このままだとバイデン-トランプの再度の対決となり、バイデンは姑息な手段でトランプを抑え、再選される可能性がないとは言えません。

第2期トランプ政権はウクライナを見捨てるどころか、和平解決を迫るためにウクライナの軍事援助の制限を解除するだろう

ナルド・トランプは、2期目の大統領に再選されればウクライナの戦争を「24時間以内に終わらせる」と宣言した。主流派のアナリストは大統領の発言を誇張と一蹴しているが、トランプが1年後に大統領執務室に戻ってくる可能性は高い。したがって、外交政策の専門家たちは、前大統領の発言を真摯に受け止め、トランプ政権が第二次世界大戦後のヨーロッパで最大の紛争にどう対処するかを評価すべきである。

まず、バイデンのウクライナ戦略には改善の余地が多く残されていることを認識することから始めよう。そもそも彼の弱点がプーチンに侵攻を促したのだ。欧州連合軍最高司令官は、バイデンのアフガニスタン撤退の失敗がプーチンのウクライナ再攻撃の決断につながったと評価している。バイデンの「統合的抑止力」の弱々しい試みは、制裁とウクライナへの援助を脅かしたが、プーチンの侵略を抑止する本来の目的に失敗した。

プーチンはオバマとバイデンの両政権の下でウクライナに侵攻したが、トランプが大統領の間は攻撃しなかった。トランプは、ロシアとウクライナの戦争は自分の監視下では「決して起こらなかっただろう」と述べている。

プーチンの侵攻後、バイデンは過度に慎重な戦時戦略を追求した。バイデンは勝利というゴールを明確に定める代わりに、ウクライナを「必要なだけ」助けると宣言した。しかし、バイデンは、ウクライナが迅速に勝利するために必要な武器を提供すべきだったが、代わりに、潜在的なロシアの「エスカレーション」を恐れ、慎重な点滴を行った。バイデンは、戦車、航空機、長距離砲など多くの主要兵器システムの供与に反対したが、その後考えを改めた。その結果、ウクライナは戦うには十分な武器を手に入れたが、勝つには十分ではなかった。

バイデンが明らかにした戦時戦略は、何十億ドルも費やして、血なまぐさい決定的な膠着状態を生み出すだけだった。

これとは対照的に、発言にのみ基づくと、ウクライナに対するトランプのドクトリンはまったく異なる。彼は、ゼレンスキーやプーチンとの個人的な関係を利用して「1日で」紛争を解決する交渉をすると主張している。プーチンもゼレンスキーも交渉による解決に関心を示していないため、1日という時間枠は野心的すぎるかもしれない。双方とも、戦場ではまだ勝利できると信じているようだ。

しかし、トランプ大統領の提案にあるアプローチは、その計算を変える可能性がある。トランプは、「プーチンにこう言う、もし取引をしないなら、我々は彼に多くを与えるつもりだ。必要であれば、ウクライナがこれまでに得た以上のものを与える」。

トランプの過去の行動を見れば、その脅しは信用できる。大統領在任中、トランプはISISとの戦いにおける交戦規則に関するオバマ政権時代の制限を解除し、イランのカセム・ソレイマニ将軍を殺害するなど、境界線を押し広げる意思があることを示した。もしプーチンが交渉を拒否すれば、トランプはバイデン政権時代の武器移転に関する制約を撤廃し、クリミアやロシア国内を攻撃する長距離兵器を含め、勝利に必要な武器をウクライナに与えるかもしれない。高価な軍事的敗北の見通しに直面すれば、プーチンは交渉を好むかもしれない。

キーウを交渉テーブルに着かせるために、トランプは「私ならゼレンスキーに『もうたくさんだ』と言うだろう。あなたは取引をしなければならない」と。ウクライナが戦力を維持できているのは西側の大規模な支援によるものであり、援助を失う見通しは交渉への強い誘因となるだろう。

現行路線に沿った停戦とその後の交渉によって、西側に軸足を置き、自国を防衛できる主権と民主主義のウクライナは維持される。キーウは、ウクライナ全土に対する主権主張を国際的に承認された形で維持するだろう。敵対行為の停止はまた、ロシアが紛争を再開しないよう抑止するための、NATOやEU加盟の可能性を含む信頼できる安全保障の提供を促進する。 完全な軍事的勝利(ますます達成不可能になりつつあるようだが)に比べれば満足度は低いものの、結果はロシアにとって戦略的敗北であり、アメリカの国家安全保障と西側同盟の強化につながる。

共和党員の中には、ウクライナ紛争は欧州の問題であり、米国には関係ないと主張する者さえいる。トランプはこれに同意していない。公的な発言がその裏付けだ。彼はこの戦争を終結させることが外交政策の重要課題であり、初日に達成すると考えているのだ。■


About the Authors 

Lt. General (ret.) Keith Kellogg was a National Security Adviser in the Trump Administration. He is currently Co-Chair of the Center for American Security at the America First Policy Institute.

Dan Negrea served at the Department of State during the Trump Administration. He was a member of the Secretary’s Policy Planning Office and the Special Representative for Commercial and Business Affairs. He is currently the Senior Director of the Atlantic Council’s Freedom and Prosperity Center.

Image Credit: Creative Commons/U.S. Government. 

https://nationalinterest.org/feature/what-donald-trumps-ukraine-strategy-could-look-208066



 

2022年2月23日水曜日

プーチンを称賛するトランプは左翼の非難を浴びるだろうが、その一貫した現実政治の考え方には傾聴の価値がある。翻って迎合するだけの政治屋にぶれない考え方はあるだろうか。

 


Former President Donald Trump and Russian President Vladimir Putin in Helsinki, Finland on July 16, 2018. Brendan Smialowski / AFP via Getty Images

  • ウクライナ国内の分離独立を承認したプーチンを「天才だ」とトランプは発言。

  • トランプがウクライナ侵攻を開始したとの報道を受け、ウラジミール・プーチンについて「さすがだ」と評した。

  • ウクライナ派兵しないようバイデンに釘をさし、「むしろ南方国境地帯に目を向けろ」と述べた。


ナルド・トランプ前大統領がウラジミール・プーチンを称賛し、ウクライナ侵攻を正当化したプーチンを「さすがだ」「天才だ」と評した。



"Clay Travis and Buck Sexton Show" でトランプはプーチンがウクライナ国内のドネツク、ルハンスク両地方を独立承認したのは手際よい動きと述べたが、両地方の3分の2は今もウクライナが実効支配している。


「昨日みていたが、思わず『すごい』と言ってしまったよ。プーチンはウクライナの少なからぬ部分を独立国だと宣言した。すごいことだ」とトランプは感想を聞かれてこう述べた。「手際の良さがいい。平和の実現者になる」


ロシアがウクライナ侵攻を自身の任期中ではなくこの時期に選択した理由について、プーチンとの関係がバイデンよりも良好だったためとトランプは説明した。


「プーチンのことはよくわかっている。うまくやってきた。向こうもこちらが好きだった。強い人物だ。魅力に溢れ、自信たっぷりだ。愛国心も厚い。真に自国を愛している」


ウクライナ関連で何がまずかったのかを聞かれ、トランプは2020年大統領選挙の結果を盗まれたとの主張を以前同様に繰り返した。


「選挙結果が歪められ、当選資格がない人物、自分で何をしているのか把握できない人物が大統領の座についている」とし、さらにウクライナ侵攻について「自分の政権中には絶対発生しなかった。再選されていれば、想像さえつかなかくなっていただろう。発生するはずがない」と述べた。


トランプはウクライナ問題を米保守派が一貫して憂慮する移民問題に関連させ、米国はロシア同様に軍事力を行使してまで米メキシコ国境を保安すべきと主張した。


「平和維持部隊でここまでの規模の部隊は今までなかった。これだけ多くの戦車が動員されたことはなかった」「ロシアは平和を維持するだろう。その背後に利口な男がいる。その人柄をよく知っている」


また、ウクライナ紛争に米国が巻き込まれる可能性について聞かれ、トランプはここでも米メキシコ国境地帯に触れた。


「むしろ南方国境地帯に部隊を派遣するべきだ」とし、「小規模部隊を小出しに派遣するやり方は気に入らない」


トランプはロシア-ウクライナ対立に米国が十分な効果を持って対応していないと主張した。


「相手側に比べたらこちらの対応はジョークのようなものだ。3千名を派遣するといっている。わざわざトラブルに巻き込もうというのか。いや、南方国境地帯の防護を固めるべきであり、現政権のウクライナ処置はひどい」


トランプからは大統領任期中にウクライナ、プーチン問題を議論したとし、ロシア最高指導者は隣国への侵攻を「一貫して望んでいた」とした。


「ウクライナを狙っていることはわかっていた。本人にもこれを話題にした。こう伝えた。『これはできない。しちゃダメだ』。とはいえ、狙っているのはわかっていたので、この話題について何度も要望し、長い時間を割いて議論したものだ」


Trump praised Putin's justification to invade Ukraine as 'genius' and 'savvy'

https://www.businessinsider.com/donald-trump-vladimir-putin-ukraine-invasion-justification-genius-savvy-2022-2

Bryan Metzger


2018年3月23日金曜日

頂上会談が実現してもトランプが北朝鮮開戦に踏み切るとしたらこうなったとき

4月から5月にかけて朝鮮半島が再び世界の注目を集めそうです。すでに平和は確実(北朝鮮の勝利)を信じる向きが多いと思いますが安全保障の世界はそんなに簡単に考えておらずあらゆる事態を想定していはずです。したがって米国が北朝鮮を壊滅する軍事行動に出ないとの保証はどこにもありません。

5 Ways Trump Could Stumble into a War with North Korea それでもトランプが北朝鮮と開戦する想定5例

Former U.S. Ambassador to the United Nations John Bolton speaks during CPAC 2018 Feb. 22, 2018, in National Harbor, Maryland. The American Conservative Union hosted its annual Conservative Political Action Conference to discuss conservative agenda. (Credit: Alex Wong/Getty Images)
KTLA


March 17, 2018


ナルド・トランプが金正恩提案を受け入れ5月にも会談するとはいえ、朝鮮半島は依然として世界で最も危険な地だ。南北朝鮮の首脳会談は先に4月に板門店で開かれトランプ-金会談がその翌月に実現すれば短時間とはいえ緊張緩和になるのは間違いない。韓国の冬季五輪での微笑や握手をみれば南北が新しい太陽政策に向かうのがわかる。
だが現実はともすれば自ら作り出した幸せの絶頂から簡単にひきずりおとす。米国・同盟国軍が核装備した北朝鮮と武力対決する可能性は依然として残っている。北朝鮮に関する限りすべての点で単純な処理はなく、すべてが悪い方向に向かうこともありうる。
では朝鮮半島で戦火が開かれる事態として以下の五つの場合を見てみよう。
1. ジョン・ボルトンが国家安全保障担当補佐官に任命される
ワシントンポストでは3月16日付記事でトランプ大統領がH・R・マクマスター中将を安全保障担当補佐官の職から解くと決定したとある。前国務省非拡散担当大使で超タカ派のジョン・ボルトンはマクマスター後継者のリストに入っているのは明らかだ。マクマスターは北朝鮮に関しては決してハト派でなく、金正恩の知性をからかったともいわれる。だがボルトンとは違う。ボルトンなら500ポンド爆弾4発を投下させるところをせいぜい2発落とすのが相違点だ。
ボルトンが正式に就任して大統領執務室でトランプの横に立てば国家安全保障会議の毎週の会議を取り仕切り北朝鮮の核兵器開発を中止させるべく米軍に予防攻撃させそうだ。実は同じ失敗をサダム・フセインに対し今世紀初めに実行させている。大統領に攻撃を進言するのは確実だ。
ボルトンはビル・クリントン政権時代から北朝鮮問題を楽しんでおり、20年たったが考え方に変化はない。ウォールストリートジャーナルの昨年のコラムで本人は平壌を先制攻撃を主張を19世紀の砲艦外交にたとえている。もちろん砲艦には何百万人も殺傷する能力はない。
ボルトンは「完璧なまでに合理的で米国は現状の北朝鮮核兵器が生む『必要性』を先制攻撃により対応してよい」と書いていた。現時点ではTVで目立ちたい元関係者の罪のない主張だがホワイトハウス入りし同じ提言をすれば無害とはとても言えなくなる。
2. トランプが怒りに駆られ会談を蹴る
トランプ大統領は歴史に残る成果を必死に求めており、ほかの大統領がみんな失敗したところで成功したい。北朝鮮の核問題の解決だ。韓国政府特使がホワイトハウスに到着し金正恩の平和のメッセージを伝えると本人は有頂天になり、その時点以来頂上会談をさばいて北朝鮮非核化の実現にこぎつける能力に自信を持っている。報道陣から金正恩が核装備を取引対象にするつもりがあるのかを聞かれたトランプは北朝鮮の提案に「誠意」を見ると答えている。
トランプは自ら北朝鮮指導者との協議には基準を高く設定している。期待に沿えない結果となれば本来期待する外交の勝利のかわりに写真だけとって終わる意味のない会談になり、大統領は金正恩が譲歩しなかったと憤慨しワシントンに戻るだろう。トランプは金正恩が恭順の態度を示さず自説を曲げなかったと非難し、自ら設定した期待値が実現しなかった理由とするだろう。「やはりこちらが正しかった。北朝鮮指導者との話し合いは時間の無駄だった。だまされただけだった。もう誠意を見せるのはやめよう。マティス将軍、戦闘作戦案が見たい」
3. 平壌がミサイルテスト中止を破る
金正恩政権は核実験ミサイルテストを5月の頂上会議まで凍結すると約束した。これはトランプ政権も評価する譲歩と言える。たとえ凍結中に核・ミサイル開発がそのまま進められてもだ。ミサイル再突入技術やプルトニウム反応炉やウラニウム濃縮作業は続いている。
だがキム一族が甘言をちらつかせるのは今回が初めてではない。金正日が長距離ミサイル発射を凍結したのが1998年だったが2006年に六か国協議が行き詰まると再開した。金正恩も2012年に同様にミサイル発射を自粛したがわずか数週間で衛星打ち上げと称し同じミサイルを使った。北朝鮮の度重なる約束破りにトランプ大統領は寛容になれないように見受けられる。トランプが約束違反を本人への侮辱と受け止めるのは必至だろう。トランプがB-1B爆撃機隊を北朝鮮領空に侵入する命令を出すと見る向きはないが、一方でその可能性が絶対ないとも誰にも言えない。
4. 会談が決裂しキムがトランプの最後通牒をはねつける
トランプ-キム頂上会談が失敗するか北朝鮮が途中で席を蹴れば、トランプは平壌に国連安全保障理事会決議順守を求める最後のチャンスを与えるだろう。クリントン政権やジョージ・W・ブッシュ政権がサダム・フセインに無条件で国連核査察官に協力を求めることで米軍攻撃を回避したように、トランプも金正恩に最後通告を劇的に発表するかもしれない。IAEA査察官を再度受入れ実証可能な形で非核化を進めるかそれとも...というわけだ。
平壌がデッドラインを守らない場合はトランプが対応する。トランプは譲歩するかレッドラインを数週間口にしバラク・オバマとは違う面を示そうと脅威を持ち出すかのどちらかだろう。前者を選択すれば政治面で追い詰められ後者は第二次大戦以来最大の犠牲を生む武力対決につながる。
5. 交渉は成功してもキムが裏をかいたら
クリントン政権が平壌と1994年に枠組み合意に批准した際はこれで核のない朝鮮半島が生まれる、段階的に米朝関係も正常化すると大きく宣伝された。クリントンの期待は実現しなかった。秘密のうちにウラニウム濃縮をした証拠が見つかり平壌も極秘核兵器製造を認めたことで枠組み合意は死んだ。
北朝鮮は合意内容も自分の都合よく曲解することにかけて専門家だ。2002年にこれをした。2008年も同様でブッシュ政権が目指した査閲案をひきのばした。2012年に衛星を打ち上げたのは一方的にミサイル発射をしないと約束してわずか数週間のことだった。非核化交渉が失敗するとしたら、前例から北政権が裏をかくか、抜け穴を利用するためではないか。CIAがキムが実はトランプを出し抜いていたと報告すれば、大統領は力にまかせた全く無慈悲な行動にでてもおかしくない。■
Daniel R. DePetris is a world affairs columnist for Reuters, a frequent contributor to the American Conservative and the National Interest, and a foreign-policy analyst based in New York, NY.


2016年8月13日土曜日

こんな人には大統領になってもらいたくない②ドナルド.J・トランプに国際安全保障で中身のある考えは期待できない



当然このシリーズ二回目はトランプ候補です。米大統領選挙史上で最も異彩な候補者と言ってもいいでしょう。正統派の共和党には受け入れられず、多数の既成共和党政治家が不支持を公然と表明しているのは異様ですが、世論調査ではまだヒラリー候補と大きな差がついていなのも異様です。どちらが当選しても過去の延長線の大統領にはなりそうもありませんね。その結果が安全保障面でこれからどう現れるかが懸念されます。

The National Interest Donald J. Trump? Never.

Does he have any real ideas about international security other than those he reads from his teleprompter?
Image: “Donald Trump speaking with supporters at a campaign rally at Veterans Memorial Coliseum at the Arizona State Fairgrounds in Phoenix, Arizona.” Photo by Gage Skidmore, CC BY-SA 2.0.
“Donald Trump speaking with supporters at a campaign rally at Veterans Memorial Coliseum at the Arizona State Fairgrounds in Phoenix, Arizona.” Photo by Gage Skidmore, CC BY-SA 2.0.

August 8, 2016


  1. ドナルド・トランプに大統領選挙で一票を鼻をつまみながら投じても良いと一瞬思える時期が筆者にもあった。
  2. 今年4月末にNational Interest主催の機会で外交政策の所信表明をし、納得できる点があった。トランプはイスラエルとアラブ諸国の間に平和を実現するとの立場を見せ、他方でNATO同盟諸国にはGDP比2パーセントまで国防支出を増やさせ、アメリカの防衛政策のあるべき姿を従来より詳しく述べた。核兵器近代化を支持し、ミサイル防衛の実効性も高めるとした。また陸軍の増強、艦船数、空軍兵力の拡大も主張した。対ロシア姿勢では以前よりバランスが取れたものの言い方で力を背景にした交渉のみをすると言い切っていた。
  3. 筆者はずっと共和党員であり本選挙では共和党候補なら誰でも構わず投票してきた人物だが、トランプはこの筆者を完全に納得させられなかった。貿易問題では頑固なまで否定的な態度を示したことに心配させられた。
  4. とくに貿易問題と同盟関係で無頓着とも言える横柄さに懸念を覚え、これでは日本や韓国が独自に核兵器保有に向かうのではと思わされた。本人自慢の交渉術がイスラエルとパレスチナの間に本当に平和をもたらすか不明だし、逆に双方をもっと対立させるお節介ブリを示すかもしれない。
  5. 11百万人に登る不法移民を国外追放せよとの提言にも賛同できない。多くはヒスパニックでメキシコ国境に壁を作るとも主張している。不法移民をメキシコ出身の性犯罪者や犯罪者だと決めつけるが実はヒスパニックの大部分はラテンアメリカ各国出身者で通常のアメリカ市民より重大犯罪を犯す実績が低い事実を無視している。さらに同候補者のイスラム教徒への姿勢に大きな懸念を覚えざるを得ない。スンニ派諸国ではすでにアメリカの信頼度が揺らぎ始めており、1930年代に後戻りするような人種差別主義の香りもする。
  6. とはいえNational Interestでの講演を契機にトランプは一皮むけたと筆者は感じ、過激な発言を慎むよう助言する専門家に耳を傾けるようになったと思った。だが筆者は甘かった。だがその後の本人の行動を見ると他人には耳を傾けていないのは明らかだし、テレプロンプターがなければ大衆扇動家のままではないか。歓声を上げる聴衆の前で見境のない発言をしているだけだ。
  7. トランプはNATO批判で窮地に陥っている。同盟各国間には本人の評価は低くなり、TPP環太平洋経済連携への反対姿勢もそのままで、太平洋での米主導力を否定する形だ。また日本や韓国が核武装に向かうとしても反対はしないようだ。中国への敵意はそのままだが、ロシアへは手ぬるい姿勢に変化はない。ロシアのウクライナ侵攻を無視しているのか無知なのか、国際安全保障問題ではテレプロンプターが表示する文句以下外は本人の考えは皆無のようだ。
  8. 上記を理由に筆者はドナルド・トランプには絶対投票しないと決意したのではない。むしろその行動であり、ナルシズムの気難しさであり、あえて楽しんでいるかのような激烈な声明から地上最高位の職務には全く不適格と言わざるをえない。
  9. 米国生まれのヒスパニック系判事への非難は同判事がトランプ大学案件を担当したためなのか人種差別観が露骨に出ており、米国在住イスラム教徒カン一家を非難した口調には常識的な一線を超えイラク戦で息子を失った家族をなじっていた。また障害を持つ記者を真似てからかうさまはクリントン陣営の選挙CMが取り上げている。
  10. 筆者は孫多数に恵まれ、5人が十代と十代未満だ。それぞれの両親によりゆくゆくは立派な国民として軍服を身に着けた男女を尊敬し外見や信仰は違っても他者を尊敬するよう教えられている。そんな孫たちに対してドナルド・トランプが大統領になるのは耐えられず、孫達が教えこまれた価値観と反対のお手本を大統領が示すのも耐えられない。候補者はそれぞれ欠点はある。ヒラリー・クリントンも多々欠陥があるがドナルド・トランプはその比ではない。共和党の恥であり、それだけでなく米国とその価値観へも侮辱だ。■

筆者ダヴ・S・ザケイムはCenter for the National Interest副会長で、国防次官補を2001年なら2004年までつとめた以外に国防副次官を1985年から87年まで経験している。


2016年5月13日金曜日

2016年大統領選 クリントン候補に国家安全保障政策は期待できるのか不明 各論詳細に触れず


政治的野心の塊のようなヒラリーですが、ここにきて予備選でサンダース候補に勝てないのは若年層はじめ政治に不満を覚える層を拾い上げていないためでしょう。これまでの獲得した党大会代表のリードがありますので、本人は全然気にしていないようです。もともと軍隊が嫌いない人だけに、大統領になった場合には正しく判断できずに悲惨な結果を生みそうな気がします。世論調査ではトランプへの優勢がどんどん減っているのは気になる現象です。

Clinton’s Defense Spending: Vague But More Hawkish Than Obama

By MARK CANCIANon May 12, 2016 at 4:01 AM

hillary clinton campaign 2016
2016年の大統領候補の国防政策を伝えるシリーズはこれが最終回です。マーク・カンシアンは戦略国際研究所からクリントン、トランプ両候補の選挙戦から内容をくみ取り、分析を試みていますのでお読みください。編集部
ヒラリー・クリントンほど大統領職を熱望している人物はいない。21世紀になってほぼ全部の時間を本人はこのために使っている。その結果として各論点で知識が豊富で、バーニー・サンダース候補よりは右寄りだが共和党員より左という微妙な立ち位置に徹している。共和党候補に指名確実なドナルド・トランプとは正反対だ。トランプ候補はごく最近まで思いついたことはすべて口に出し、他人の批評などお構いないしにふるまってきた。
大統領候補指名に向け先頭を行く候補らしく、クリントン候補の国防案は理念は長々と述べるが各論は短い。これまでの演説内容やウェブサイトから同候補がオバマ政権の路線を主な分野で継承すると推測でき、外交では強い姿勢を取り国防重要事業には現状と同程度の予算配分をし、国防予算の国内向け流用も引き継ぐようだ。
クリントン候補の選挙文書や発言から国防では強硬で継続性を求めていることがわかる。
  • 「国土保全」
  • 「ISIS打倒」
  • 「中国に責任を取らせる」
  • 「プーチンに堂々と接する」
  • 「同盟関係強化」
  • 「志願制軍部隊の堅持」
  • イスラエル支持
同候補の姿勢は一部で共和党と一致している。「大統領に当選すれば米国軍を訓練、装備の両面で世界最高水準とし世界最強の軍事力を維持する」とある。ただしその理念の実施案の詳細はほとんど見られない。プーチンと渡り合うというが、オバマ政権が進めてきたヨーロッパ施策(ヨーロッパ再保証構想)を拡大するのか。そうだとしたら、どうやってするのか。詳細が肝心だ。
クリントン候補はオバマ政権よりも強硬な外交方針を匂わせている。たとえば「中東には強力な軍部隊を駐留させ」「情報活動を強化」するというのは軍の活用を増やすことだ。ゲイツ、パネッタ両元国防長官は自叙伝でクリントン候補がシリア、リビアでのオバマ大統領より軍事力行使に積極的だったと回想している。
クリントン候補は軍の規模について意見を表明していないが、強硬なものの言い方や現政権の方向を支持していることから最低でもオバマ政権の国防予算規模を想定していると思われる。つまり予算管理法が求める水準を上回るが、共和党が求める額には届かないレベルだ。これは国防安全保障関係者には朗報だろう。ただしその支出規模では不足かもしれない。ロシア、中国、北朝鮮、イラン、ISISに対抗するにはオバマ政権の想定を上回る部隊規模、予算が必要と見る専門家は多い。
ただし、クリントン候補は国内問題の拡充を訴えており、(例、大学学費、エネルギー、幼少児教育、健康保険、教育などなど)かつ予算赤字が今後拡大するため国防予算が制約を受けるだろう。そうなると戦略構想と実際の予算裏付けの乖離が安全保障問題で続きそうだ。
ペンタゴンに朗報は戦闘継続予算、海外緊急作戦予算の二つが増額になりそうということだ。この二つの予算項目はDoDに重宝な存在となる。オバマ政権はイラク、アフガニスタンの紛争から抜け出すことを目指したが、ここにきての事態進展で挫折感にさいなまれている。紛争が終結すれば戦闘継続予算も終わる。クリントン候補が強硬な言いぶりで軍の投入をためらわないことから戦闘継続予算は温存されるだろう。
クリントン候補の主張からは国防予算の国内問題解決への流用を継承するつもりだとわかる。例として「気候変動は道義や経済問題にとどまらず、国家安全保障上の課題である」と発言している。同様に感染症やサイバーも国家安全保障上の脅威と受け止めている。国家安全保障の課題となれば、国防総省以外の対策も予算手当が可能となる。したがってオバマ政権がバイオディーゼル産業創設で国防総省枠組みを使ったような事例は今後も続くと予想できる。
国防予算を国内問題へ流用することは以前から行われていることであり、特に国内に目配りする民主党政権が多用している。ビル・クリントン政権では巨額予算で自動車産業各社に先進自動車技術開発させ世界市場での競争力確保を手助けした。国防総省は乳がん研究予算も提供しているが、軍の84パーセントは男性だ。これは1992年にハーキン、ダマト両上院議員が乳がん研究事業の資金源を探してDODにたどり着いたもので今日も継続している。予算上限の中で既存事業が予算削減される中で新規国内向け事業がDOD資金に食指を動かすことが多くなっている。
総論が目立つクリントン候補が厳しい選択では高位諮問組織に頼るというのは驚くべきことではない。物議をかもしだそうな各論に触れる必要がなくなる。DODには戦略見直しの課題が与えられており、(旧名称四年ごとの国防見直しは国防戦略見直しの名称になっている)「国防審議会」と呼ぶ外部専門家による戦略・事業の評価も求められている。さらに検討の仕組みを加えるのは問題と言えるが、各論の政策論議を先送りする効果が生まれる。
これまでの通念ではクリントン候補は選挙戦後半で各論を明らかにするはずだったがトランプが共和党候補になる可能性濃厚な中ではそうならないかもしれない。トランプ候補はクリントン候補より各論に触れておらず予備選中の発言は常軌を逸し、とても詳細政策の基礎には使えない内容だ。
トランプ候補は国家安全保障政策でやっと政策づくりの作業に取り組み、テレプロンプターを使って準備済み原稿を読み上げる慎重さで、以前の発言よりは整合性がとれているものの、やはり総論の域を脱していない。そうなるとトランプが大幅に自らの姿勢を変えて詳細について論じない間は、クリントン候補に国防政策あるいは予算確保の方法の詳細について一部でさえも公表する圧力は作用しないだろう。■


2016年4月29日金曜日

★トランプが国防政策で考えていること≪考えていないこと



トランプの勢いはとどまるところを知らず、大統領選はトランプ対ヒラリーの様相に落ち着いてきました。毒舌は相変わらずですが、閉塞感のある中職業政治家にはうんざりしている層が熱烈に支持しているのでしょう。国防政策で具体的な内容がまだ見えてきませんが、どれだけ有力な顧問がつくのかもう少し時間が必要なようです。ヒラリーがどんな国防観を持っているのかも注目ですね。米国の有権者が外交安全保障を上位の重要事項と考えているのは健全なしるしでしょう。
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Trump promises to rebuild the military, make allies pay more

Leo Shane III, Military Times 4:32 p.m. EDT April 27, 2016

US-VOTE-REPUBLICANS-TRUMP(Photo: Brendan Smialowski/AFP via Getty Images)
共和党大統領候補でトップを走るドナルド・トランプが「アメリカ第一」の外交政策の基本方針を27日発表し、米軍を拡充する一方、同盟各国へ防衛支出増を求めている。
  1. 「冷戦終結後の米外交政策は大きく進路を誤っている」とワシントンDCで演説し、「時間の経過とともに我が国の外交政策はずれを大きくしている。論理の代わりに愚かで傲慢な態度が表に出ており、次々と失態が生まれている。外交政策は全くの失敗だ。構想力がない。目的意識がない。方向性がない。戦略がない」
  2. トランプは国際関係や安全保障で自らの考え方をちりばめた総論を述べたが財政支出や外交では各論を避けている。選挙戦で詳細を避ける傾向が批判の的となっているが、今のところ有権者に悪影響は出ていない。
  3. 例外として詳細に踏み込んだのはオバマ大統領の軍事支出戦略方針で、トランプは民主党でトップを行くヒラリー・クリントン候補に関連付けようとした。
  4. 「我が国の常備軍は1991年の二百万人が今や130万人にまで減っている。海軍は500隻が272隻へ同時期に縮小した。空軍は1991年の三分の一規模だ。B-52が戦闘任務に投入されているが、聴衆の皆さんよりも古い機体だ」
  5. 解決策は軍に「十分な予算を与える」ことだが同時に「節約すべきところは節約して予算を賢く使う」ことだとし、国防総省だけでなく「貿易、移民、経済政策すべてで米経済を再び強力にする」のだという。
  6. トランプはNATO同盟各国は自国防衛に十分支出していないと強い調子で批判し、各国に公平な負担と責任をさせると約束した。
  7. 「こちらが守ってやっている各国は相応の自国防衛の費用負担をすべきであり、従わなければ米国は各国に自分で防衛させる。選択の余地はない」
  8. またオバマ大統領とクリントン候補は外交政策への国民の信頼を損なったと批判した。イラン核合意は安全保障に悪影響を与え国の尊厳を傷つけ、中東各国で米国の信用が下がったと述べた。
  9. トランプは最高司令官になればNATOやアジアの同盟各国を集めたサミットを開催し、「財政負担の仕切り直し」を討議し、「共通する課題の数々に新しい戦略をどう活かすかを新しい視点で見る」という。
  10. 課題のひとつがイスラム国で、トランプはそのせん滅を確約している。「イスラム国へのメッセージは簡単明瞭だ。彼らに残さされた時間は少ない」とし、「その方法や攻撃対象を伝えるつもりはないが、彼らは消え去る運命だ」
  11. ここでもトランプは戦略方針の内容を伝えず、軍の動向や戦略案は教えるつもりはないとだけ述べた。
  12. 「動きを察知されないようにする。すべて伝える。軍を派遣する。そのほかも送る。報道会見は行う。だが手の内を読まれないようにする。予測不可能にすることは今から始める」
  13. CNBCの世論調査が今月初めにあり、「外交とテロ対策」は有権者の考える二番目に重要な争点と判明している。最上位は「経済と失業問題」だった。■