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2012年3月26日月曜日

同時に多数の機体開発をすすめる中国のねらいはどこにあるのか






China's Air Force Modernizes On Dual Tracks

aviationweek.com Mar 16, 2012


ステルス機、新型爆撃機、無人超音速機、宇宙配備作戦機を中国は開発中であり、2020年代初めには出現しそうだ。
  1. こ の多数の機種を同時に開発している状況は2010年中にふたつのイベントで確認されている。一つは人民解放軍空軍(Plaaf)がはじめて近代兵器を海外 に公開したことだ。西安航空機のH-6爆撃機に成都航空機のJ-10多用途戦闘機、KJ-2000空中早期警戒機、H-6U空中給油機を加えた部隊がカザ フスタンの演習に参加した。もうひとつはその四ヶ月後に成都がステルス戦闘機の試作機としてJ-20と知られる機体の飛行状況を明らかにしたことだ。
  2. 装 備の近代化には国内航空宇宙産業の全体的な進展が頼りだ。「接近拒否」戦略は1990年代末に編み出されたもので台湾を巡る対立がきっかけだった。その後 2005年に「新歴史的ミッション」戦略が生まれ、人民解放軍(PLA)を世界の遠隔地に展開するべく新装備の整備が始まった。
  3. 新 型兵器の開発を加速すべくPLAは国防分野での各社競争を促進しており、この出発点が1998年の兵站活動改革であった。これには政府補助金の重複支出を あえて実施することで実現している。その結果、航空宇宙分野でも戦闘機、無人機、電子装備・兵器の開発と調達でかなりの重複が見られる。”
  4. 戦 闘機の分野では成都と瀋陽が二大メーカーで、両社ともにステルス機と通常型戦闘機を進めている。中国はスホイSu-27SK/UBK/Su-30MKK /MK2を合計176機購入しており、J-11の名称でさらに100機をライセンス生産している。2008年から瀋陽はライセンスを無視したJ-11Bに 国産エンジン、レーダー、兵装を搭載して納入を開始しており、同機が現在の中国空軍の主力国産戦闘機になっており、120機以上が配備されている。J- 10Bにはアクティブ電子スキャンアレイレーダー(AESA)が搭載されており、さらに攻撃任務特化のJ-10BSにはJ-16の呼称が与えられている。 大型ステルス戦闘機開発では成都に軍配があがっているが、瀋陽も自己資金で中型ステルス機を開発しており、J-60の名称になるとの観測がある。.
  5. 瀋 陽のJ-15はほとんどスホイSu-33艦載戦闘機と同じ内容であり、PLA海軍の航空部隊の将来を開く存在である。短距離発艦・拘束着艦改修 (Stobar)システムは陸上試験を経て中国の初野航空母艦に搭載される予定だ。J-15の艦載運用試験は今年後半に開始となり、ボーイングF/A- 18E/Fと匹敵する能力を発揮する可能性がある。空母運用部隊にはこれの他に昌河Changhe Z-8空中早期警戒統制ヘリおよびロシア製カモフKa-32対潜ヘリとKa-31AEWヘリが加わるはずだ。
  6. 米 海軍のE-2に匹敵する空中早期警戒・対潜攻撃(AEW/ASW) 機が開発中で、現在建造中の通常動力Stobar空母の後に建造される予定の原子力空母二隻に配備されるだろう。陕西 ShaanxiY-8中型輸送機のASW改造型が登場すると外洋ASW作戦能力と海上監視能力が充実する。
  7. 2003 年以降に200機以上の『ローエンド」成都J-10Aと複座J-10S戦闘機が配備されており、より高性能大型のJ-11Bとハイ・ローミックスが実現し ている。さらに生産はAESAレーダー搭載のJ-10Bに切り替わるだろう。同機は他に赤外線捜索追跡能力、レーダー断面積縮小化、改良型電子戦装備が搭 載される。J-10Bの一機には瀋陽・黎明Shenyang-Liming 製のWS-10Aターボファンエンジンが搭載されている。この機体をもとにパキスタン向けのFC-20が開発されるだろう。
  8. 創 設60周年を2009年10月に終えた中国空軍の将官が次世代戦闘機が2017年から2019年に第一線配備に入ると発言しているが、PLAがロシア製 AL-41ターボファンエンジンを同戦闘機に搭載したい希望を持つとの報道が2010年末にあったことから、この配備予定は現実的なものと評価される。成 都のステルス双発カナード翼付きJ-20がテスト中に撮影されている。同機には15トン級の推力方向制御式ターボファンが搭載される観測があり、超音速巡 航飛行および失速後の機体制御能力が高くなると見られ、AESAレーダーや赤外線警報センサーが搭載されるだろう。
  9. ま た2005年に中国関係者が「F-35級の戦闘機開発を成都が検討中」と伝えた。中国は短距離離陸垂直着陸(Stovl)式の戦闘機に長い間関心を保持し ており、成都がヤコブレフYak-141超音速Stovl試作機の技術から開発することは可能だろう。中型ステルス戦闘機を2020年までに開発すれば輸 出の可能性も高い。輸出ではこれまでは成都がFC-1/JF-17としてパキスタンとの共同開発で先導しており、新型ステルス戦闘機が採用になれば、国際 的にも大きく訴求力が出るだろう。
  10. FC- 1の海外販売に続きJ-10B、J-11B以外に、低価格練習機洪都Hongdu K-8や超音速練習機L-15にも低金利と生産技術移転をつけて輸出が促進されよう。この「食物連鎖』戦略はパキスタンには有効に働き、エジプトやラテン アメリカにおいて次に期待されている。
  11. 中 国空軍と海軍はすでに170機の西安Xian JH-7/JH-7A双発攻撃機を調達しており、西安は更に発展型を開発している可能性がある。ボーイングB-52の長期間稼働・任務内容の変遷を参考 に、西安のH-6K爆撃機は2010年に低率生産となり、一層強力なプログレスD-30KPターボファンと再設計のレーダーと光学装置を機首に搭載してい る。同機は陸上目標攻撃用の巡航ミサイル6発を搭載する。西安が次に開発する爆撃機については情報が不足しているが、2010年代末までに姿を表すだろ う。2009年に大型ステルスのデルタ翼爆撃機のモデルが「公式」として発表されているが、その出典は不明だ。2010年に入り極超音速飛行の研究機関か らマッハ3巡航飛行が可能な機体の論文が出ており、添えられた想像図と空洞モデルは有人型をオプションとする機体のようである。
  12. 今 年か来年にも西安から50トンから60トン搭載能力のあるY-20四発戦略輸送機が出現すると予想されている。ComacのC919双発ターボファン機は リージョナル旅客機としてすでに知られているが、中国関係者はボーイング767サイズのワイドボディ4発ターボファン旅客機の開発計画が西安にあることに ついては口を閉ざしている。この機体が軍用にも転用されると見られる。
  13. 中 国はロシア製サターンAL-31エンジンをSu-27/J-11、J-10A向けに1,000基近く購入しており、各機の稼働期間延長改修も行なってい る。しかし、25年近く集中的に投資を継続して新型の中国製大型高バイパス比ターボファンエンジンが姿を表しつつある。瀋陽・黎明製のWS-10AはJ- 11Bの推進力としては十分だったが、推力は12.7トンの目標に達していない。瀋陽・黎明はさらに15トン級エンジンの開発に取り組んでいる。ガスター ビン研究所からは8.5から9トン級のFC-1ターボファンエンジンがあり、さらに15トン級のエンジンをJ-20に提案している。瀋陽・黎明、西安、 Avic商用航空機エンジンの各社は13トン超ノ高バイパス比ターボファンエンジン開発を進めており、軍用・商用輸送機による採用を期待している他、新型 爆撃機も視野に入っているかもしれない。
  14. J- 10B試作機には中国発の戦闘機搭載ASEAレーダーを南京工学技術研究院 (NRIET) 空採用しており、J-11やJ-15の今後の機体にはAESA搭載が標準となるだろう。NRIETは機械式スキャンのアレイレーダーをJ-10とFC-1 に提供しているが射程100Kmで空対空ミサイル(AAM)二基の制御を同時に行うことが出来る。洛阳LuoyangのPL-12アクティブ誘導AAMは 有効射程100KmでPL-8とPL-9短距離ミサイルの代わりに導入されるだろう。
  15. 中 国はAEW機材を重複して開発しており、「ハイエンド」のKJ-2000はベリエフA-50が原型だ。その他西安Y-8ターボプロップ輸送機改造の小型 AEWもあり、『バランスビーム』式のAESAアンテナを搭載する。このY-8原型のZDK-03には「円盤型」レーダーアレイを搭載してパキスタンに輸 出実績がある。ここに成都/貴州Chengdu/Guizhou の戦略級UAVが加わる。
  16. 宇 宙空間における主導権が空軍により模索されており、宇宙戦能力を求める発言が上層部から2009年末にすでに表明されている。ただ中国の有人・無人宇宙計 画は中央軍事委員会の下の人民解放軍総装備部General Armaments Department が統括している。ただ空軍は成都の青龍Shenlong 小型宇宙機があり、2010年末に準軌道飛行実験を実施していると思われる。これがX-37Bのような機体に発展する可能性はある。飛行する機体の管轄は 空軍にあり、準軌道飛行をする極超音速機を手にする可能性がある。2006年位中国宇宙打上技術研究院が100トン超のスペースシャトルに似た宇宙機開発 を提唱しており、2020年までに効率のよい極超音速機にペイロードを搭載して利用可能になると見られる。
  17. ただ今後の国防関連軌道飛行ミサイルを巡り、総装備部と空軍の対立が発生する可能性がある。2010年1月の弾道迎撃実験は総装備部による実施であり、空軍の超長距離対空迎撃ミサイルと弾道弾迎撃ミサイルの開発は主導権を巡る対立の原因になりかねない。

2011年10月16日日曜日

日曜日はやや長文 中国軍事力整備のめざすもの

中 国の軍事力増強にどう対処するのか。アセアン各国に加え、インドもこれから神経を逆立てられることになるでしょうが、当然日本もその動向を見守る必要があ ります。現状では遠隔地での実戦能力は限定されていますが、ISR能力、空中給油能力、空母群の整備が現実のものとなると米国だけが海洋支配権を持ってい た時代が終わる可能性が出てきました。中国の軍事力は国家のツールではなく中国共産党の目的を実現する手段であることにも注意が必要です。交易の動脈を海に頼る日本、そして世界経済にとってリスクが増えることになります。新しい時代がそこまで来ているの でしょうか。まず、冷静に事実関係を見ていきましょう。

China Expands Its Military Reach

aviationweek.com Oct 14, 2011 By Bradley Perrett
Beijing

                         

  1. 中国の軍事力はどこまで有効に機能するのか。その答えは同国の意志次第だ。今年に入り中国海軍艦艇が地中海に展開されたが、派遣艦艇は一隻でリビヤの民間人退避を支援したのであり、軍事上の実効性はない。
  2. ただ中国沿岸から300キロメーターの範囲となると話は違う。短距離弾道ミサイル1,000基、2,000機の作戦用機材があり、領空は地対空ミサイルで防護されている。
  3. これに対し中国の軍事力投射能力はまだ未整備で遠距離になると急速に低下すると見るアナリストもいる。.
  4. そ の主要原因は中国の軍事能力が台湾侵攻を主目的に整備されてきたことにあり、台湾へは最大でも数百キロメーターしかない。短距離弾道ミサイルならわずか 300ないし600キロメーターの飛翔距離で、戦闘機も空中給油なしで十分到達できる。中国本土から離れるほどISR能力は低下し、かつ高価になる。
  5. た だ中国が整備中の軍事力はこれよりも遠距離として1,000キロメーター以遠での戦闘力を実現しようとしている。整備中の計画が一つ実現するくらいでは中 国は地域内の超大国にはならないが、すべて実現すると軍事力投入の距離が拡大する。地政学の観点では中国軍は南シナ海をさらに広がりつつある。
  6. そ の例にトマホークに類似した巡航ミサイルDH-10がある。西側報道ではとかく弾道ミサイルが報道されがちだが、このミサイルの有効射程距離は1,500 キロメーターを超える。現在の生産ペースはおそらく年間100基だろう。H-6爆撃機に搭載する空中発射型なら3,300キロメーターに達するので、グア ム、沖縄ならびに南シナ海全域、さらにインドネシアやインド洋もその射程範囲に入る。
  7. 冷戦時代のソ連製戦闘機に範を取った短距離機が退役する中、作戦機の航続距離は伸びつつあり、J-10およびJ-11(フランカー)は機内燃料搭載量の大きさは要注意だ。長距離機の配備で遠隔地攻撃のみならず、中国艦艇への支援も可能となる。
  8. 遠距離での敵艦艇攻撃能力が増強中でH-6D爆撃機40機は対艦攻撃に投入される。それだけの距離ではISR能力が課題だが、配備中の中国製ISR衛星群がこの機能を向上させる。また空中早期警戒、信号探知能力も開発中だ。
  9. その一環として無人偵察機の開発があり、中国は超高高度機にISR能力に加えて指揮命令機能も持たせようとしている。そこで得る情報を一番有効に活用するのは潜水艦部隊だろう。
  10. 沿 岸部の防衛にはJH-7攻撃機80機とC-803K対艦ミサイルに大型ステルス機J-20が加わる。同機の外寸から攻撃半径は1,000キロメーター超と 見られ、これにミサイル自他の有効射程が加わる。Su-30MK2にはロシア製超音速Kh-31A対艦ミサイルを搭載する。そして革命的な対艦弾道ミサイ ルDF-21Dがある。ペンタゴンの評価は同ミサイルの有効作戦半径を1.500キロとする。今後急激に中国空軍力が成長する可能性がある。中国は 1960年代にも核兵器開発で急速な軍事力増強の実績がある。当時は資金も今ほど潤沢ではなかった。
  11. 中国発の空母は公試中だがまだ就役していない。同艦は最初は訓練用となるだろう。今後多数の空母建造が予測されている。t.
  12. 長 距離空輸能力は小規模で、イリューシンIl-76が10機のみだ。おそらく国産輸送機の生産を検討しているはずで、Avicは200トン超の機体を開発中 だといい、Il-76の追加導入も可能性がある。同機の性能上の制約はロシア製エンジンにあるが、国産CJ1000Changjiang(長江)高バイパ ス比ターボファンがC919旅客機(158席)に提案されており、新型輸送機にも搭載されるかもしれない。ただC919では機体が小型過ぎて空中給油任務 は困難で、ワイドボディC929の計画があり期待されている。
  13. 空中給油任務にはH-6Uが20機配備されていると見られるが、爆撃機からの転用で給油能力も貧弱だ。Il-78給油機8機の発注が2005年にされたが、契約でつまずいている。ただ導入されるとJ-11向けの空中給油が可能となる。
  14. 現状では空中給油を受けられる機材は四分の一以下だが、増加中で、飛行範囲は伸びつつある。特に南シナ海を意識しているようだ。ただ空中給油機開発はまだ推測の域を出ないし、新型爆撃機の具体的計画は明らかになっていない。
  15. 中 国空軍の考え方は南シナ海周辺諸国を対象に距離を重視する。2010年までの目標が沿岸以遠1,000キロメーターを作戦範囲とするものだった。まだこの 目標は完全に達成されていないが、2030年には3,000キロメーターが目標となると米国専門家は見ている。この背景には領海権の主張もあるが、グアム は約3,000キロの距離があり、さらにインドネシアまでこの範囲に入ってしまう。中国国境と2,000キロメーターを共にするインドが相手ならこれだけ の距離は不要なはずだと台湾は見ている。