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2019年5月6日月曜日

戦闘機搭載ポッドの実現に近づいてきたレーザー兵器の最新テスト結果

本ブログではエネルギーの代わりにエナジーを訳語として採用しています。先回のレイセオン製に続きロッキードもレーザーで大きな存在感を示しています。



The Air Force Just Shot Down Multiple Missiles With A Laser Destined For Fighter Aircraft

米空軍がレーザーでミサイル複数撃破に成功。戦闘機へ搭載予定

The service wants this game-changing capability to be hanging off the wings of fighter jets by the early 2020s.

2020年代初頭にも戦闘機主翼下に戦闘を一変させる装備を導入する


空軍からレーザーで空中発射ミサイル数発の撃破に成功したと発表が出た。今回は地上配備型を投入したが戦闘機等に搭載し空中での脅威排除が期待されている。空軍発表では装備をポッドにおさめ2021年に飛行テストし、2020年代中に実戦配備したいとある。
空軍実験本部(AFRL) は2019年4月23日に米陸軍ホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ)で契約企業ロッキード・マーティンと今回の試射を行ったと発表。ロッキード・マーティンは指向性エナジー兵器開発契約を2017年に交付され、自機防衛高出力エナジーレーザー実証事業Self-Protect High Energy Laser Demonstrator (SHiELD)の高性能技術実証Advanced Technology Demonstration (ATD) にあたってきた。この内レーザー部分は次世代小型化レーザー発展事業Laser Advancements for Next-generation Compact Environments (LANCE)としてSHiELDの一部として進められてきた。戦闘機に搭載可能なポッドにすべておさめる装備は同じSHiELDでもSHiELDタレット研究航空効果SHiELD Turret Research in Aero Effects (STRAFE) と、レーザーポッド研究開発 Laser Pod Research & Development (LPRD) として別事業扱いされてきた。
「テスト成功は大きな一歩で指向性エナジー装備と防御策がこれで先に進みます」とAFRL所長空軍少将ウィリアム・クーリーは声明文を発表。「敵ミサイルを光速で撃破する技術で厳しい空域でも航空作戦の展開が可能となります」
ただしテスト内容に不明な点が多い。まず基本条件が不明でレーザー操作員がミサイルの飛来方向等を事前に知っていたのか、高度や飛来のタイミング、天候条件は把握していたのかわからない。空軍は投入したミサイルの種類を明らかにしておらず現実的な脅威対象を模したのだろうか。とはいえレーザーで目標捕捉、追尾、交戦、破壊の一連の作業ができたのはSHiELD開発で大きな一歩だろう。
空軍が複数目標に対応できる装備を導入するということは低出力段階は完了したことになる。2016年時点では空軍は高出力テスト第二段階で代替レーザー発射装置の運用は想定していなかった。ただし大日程が変更となった可能性はある。
空軍は 飛来する空対空ミサイルをSHiELDで撃破したいとする。同時に地対空ミサイル対応も高リスク防空体制の内部での作戦実施には必要だ。空軍は同装備を大型で低速飛行の戦闘機材や支援機材にも応用できるとし、爆撃機、給油機、輸送機のほか高性能レーダー他センサーを用いるミサイルの技術進歩にも対応出来ると見ている。

LOCKHEED MARTIN
An artist's conception of a future fight jet shooting down a threat with a laser.

今回のテストがSHiELDの全体テスト工程でどの部分に相当するかも全く不明だ。AFRLがテストを三段階にわけていたとする2016年の資料を The War Zoneは情報公開法で入手した。
入手資料には検閲部分も多いものの第一段階で低出力地上テスト、低出力飛行テストを代替レーザー装置でおこなうとあり、現在がこの段階と思われる。下に地上発射テストに関する資料を掲載した。ただし空軍は第一段階の飛行テストの詳細説明すべてを検閲で消した。

USAF VIA FOIA

地上テストは予定通りの進展だが、代替レーザー装置による飛行テストはまだ先なのかもしれない。ロッキードと空軍がテストに使う機材も不明だが、同社は改造ダッソー・ファルコン10ビジネスジェットにターレットレーザーを搭載し空中適応型空中視覚ビーム制御Aero-Adaptive, Aero-Optic Beam Control (ABC)に使っていた。
AFRLはABCを国防高等研究プロジェクト庁 (DARPA)とともに進め、この実験で高度焦点合わせ安定化技術の有効性を確認している。AFRLによればこれまでの指向性エナジー兵器開発事業はABCのようにSHiELDにも継承されており、ビーム焦点を自動安定化させる制御能力が必要とされるとしている。
SHiELDでは出力変調であらゆる条件で敵装備を無力化させる効果の実現が必要だ。レーザーの有効範囲と出力はその他指向性エナジー兵器と同様に大気状態に大きく依存し、雲や煙でビームが分断されてしまう。
それを念頭に、SHiELDの第一段階ではレーザー以外に「飛行中にポッドでのビーム制御、出力確保、冷却、システム制御」が重要とロッキード・マーティンの契約内容にあるが、LPRDポッドやSTRAFEタレットの製造メーカーは不明だ。

USAF VIA FOIA

空軍では現時点の主な課題はロッキード・マーティンが代替レーザー装置をどこまで小型化しポッドに収めることだとする。
半導体レーザー技術は大きく進展を示している。ロッキード・マーティンがSHiELD契約交付を受けた2017年当時では同社は60キロワットレーザーを米陸軍の地上配備テスト用に納入していた。同年に陸軍のAH-64アパッチ・ガンシップヘリコプターがレイセオン製の半導体レーザーポッドで目標をホワイトサンズで破壊に成功した。米海軍も独自にレーザー兵器を艦載用に開発し、各軍でのレーザー兵器テストは広く行われている。
さらに空軍はSHiELDの成功にむけ動いている。ポッド搭載レーザー防御装備が軍用機に導入されれば革命的な出来事になる。高温燃焼式のフレアやレーダー波撹乱用のチャフは搭載量が限られるが、レーザー兵器は事実上無限に使えると言って良い。.
とはいえSHiELDに限界がないわけではない。タレット式レーザーでは一度に一つの標的に対応するだけだが大気状況による効果減少リスクがある。今後登場するレーザーミサイル防御システムは機体防御装備の一環としてその他の手段と併用されるはずだ。電子戦ジャマー、曳航式おとり、直撃迎撃体が想定されている。
ではSHiELDや派生装備は視界内空戦で攻撃手段に使えないのか。あるいは対地攻撃にはどうか。防御用ポッドで発射するレーザー兵器は今後の攻撃用装備の基礎にもなりそうだ。
2018年10月、高出力エナジーレーザーや高出力高周波指向性エナジー兵器で「空中からの精密攻撃」ミッションや防御任務をSHiELDと別の提案をAFRLが公募した。また空軍特殊作戦軍団 (AFSOC) は攻撃用レーザーをAC-130ゴーストライダー・ガンシップに2022年までに導入するとしていたが、この日程は先送りになったようだ。

全て予定通りなら空軍はあと二年もすればポッド式 SHiELDシステムの試作型を戦闘機で実証する。今回のホワイトサンズでの最新テストを見ると事業は予定通り進展しており、戦場のあり方を一変しそうな技術が実用化に近づいているようだ。■

2018年9月2日日曜日

ロッキードはF-22/F-35ハイブリッド構想を米空軍にも売り込んでいた

Lockheed Pitching F-22/F-35 Hybrid to U.S. Air ForceロッキードがF-22/F-35ハイブリッド構想を米空軍にも売り込む

Two F-22 Raptors fly with two Norwegian F-35s in Norway.
  • BY MARCUS WEISGERBERGLOBAL BUSINESS EDITORREAD BIO
AUGUST 30, 2018
プターにJSFの頭脳を取り入れた新型機種の狙いは今後出現するはずのロシア、中国の脅威への対抗だ。
ロッキード・マーティンがひそやかに米空軍に新型F-22ラプターを売り込み中だ。機体にはF-35の搭載する新型ミッションエイビオニクスを盛り込み機体構造を一部変更している。

米軍や同盟国にロッキードはこれ以外のオプションも提示するねらいは軍関係者が今後登場すると見ているロシア、中国の脅威への対応だ。

「これはハイブリッド機になる」とデイヴィッド・デプチュラ空軍中将(退役)はミッチェル航空宇宙研究所所長としてコメントしている。「F-22でもF-35とも違う機体だ。両機種を合わせた存在だ。完全新型機の開発よりずっと早く実現できる」

新型機はロッキードが日本に提案中の機体と似ており、F-35の新型ミッションシステムと「その他ステルス塗装等の新技術」を盛り込むと詳しい筋が述べている。

「この提案には多大な可能性がある。すぐに飛びつくべきとは言わないが日本の視点で見れば国産機開発の代替案として国産機がF-22の性能に及ばないのであれば巨額を投じる意味がある。賢明な選択になるはずだ」(デプチュラ)

ロッキード広報は本件についてコメントを避けている。

今回の提案から思い出されるのは1990年代末にF/A-18ホーネットがスーパーホーネットへ進化した過程だ。低リスク事業としてF/A-18E/Fでは機体のほぼ全面改良が必要となった。新型主翼は当初こそトラブル続きだったが、最終的に成功作となった。

国家防衛戦略の一環で空軍が戦力編成を検討するタイミングでロッキード提案が出てきた。

今回の売り込みで長年の論争が再燃しそうだ。F-15含む第四世代戦闘機の改良型を調達するべきか、それとも高価かつ整備が大変なステルス塗装や電子装備を盛り込んだ新型機のほうがいいのか。

7月にはボーイングがF-15イーグルの新型機F-15Xを売り込み中との報道があり、ミサイル爆弾の搭載量増加と新型電子装備を採用するとある。F-22やF-35とちがうのはステルス性能がないことだが、同機支持派によれば電子戦等の装備で被撃墜性が下がるという。

非ステルス機導入に反対する向きからは国家安全保障戦略と関連するとの指摘が出ている。「統合運用では敵国の防空ミサイル防衛ネットワークの有効範囲に侵入し移動式兵力投射装備を破壊する能力が必要だ」「第四世代機でこのシナリオでの運用は無理だ。このため第5世代機の持つ作戦能力が必要だ」(ロッキード提案内容に詳しい筋)

デプチャラは改良型F-22を採用すれば米軍戦力は段階的に増強可能とし、未検証技術を採用した革新的設計の第六世代機の登場を待つ必要がなくなるという。

「空力特性、推進力、低視認性から見ればF-22を大幅に超える機体はまだ生まれていない」(デプチュラ)

米空軍は数億ドルで今後の戦闘機用各種技術を検討中だ。空軍では次世代航空優勢機あるいは侵攻制空機と呼んでいる。

その他の提案


ロッキードには米軍や同盟国向けに別提案もあり、指向性エネルギー兵器や電子攻撃手段をF-16、F-22、F-35に搭載する案やF-35の構造強化も含まれる。


「米軍が次世代航空優勢機材の実現に向かうのであれば選択肢は多々ある」とロッキードの戦略に詳しい筋が語る。

このうちロッキードがF-35改修で動いている。同上筋によれば同社はスカンクワークス本部があるパームデール(カリフォーニア州)で米海軍上層部に売り込みを図った。エンジン改修が中心で出力、燃料消費の双方で向上を図る。外観上に変更はない。

ロッキードではF-35調達規模の増加も売り込んでおり、2020年代にステルス機の増強を期待する。

「国家防衛戦略で掲げるシナリオのひとつで実際の戦闘となれば高リスク状況で第四世代機で大量損失が発生する。米国がこうしたシナリオで任務を実施できるか疑問だ」(同上筋)

F-35の年間生産数が80ないし100機となれば米軍戦闘機2,000機の8割が第5世代機になると同上筋は解説する。
.
「該当シナリオは本質的に違う。目的達成の確率が高くなり損耗を低く抑えることを目指す内容だが第四世代機は危険にさらされる」。だがコストの問題が出てくる。空軍向けF-35Aの最新発注分で単価は90百万ドル程度だ。ペンタゴンは2020年までに80百万ドルに引き下げたいとする。

デプチュラはF-35価格の削減が続けばF-15やF-16の新型調達の論拠が減るという。

「空軍の立案部門は既存の相手方脅威のみならず将来登場する脅威への対応も望むはずだ。一部には財政上こちらが優位と見る向きがあるが、この議論は長く持たないと思う」

「個別の機体単価や既存機材の新型版の生産再開を進めればF-35の機体単価の変遷カーブに近くなる。空軍立案部で高齢化進む空軍の立て直しを図るとしたらどちらの案が効果が高いのか答えをだすのがむずかしいだろう」■

2018年8月30日木曜日

★最強のF-16ブロック70は貧者のF-35になるのか---どこがすごいのか





F-22 'DNA': Why Lockheed Martin's New F-16 Block 70 Could Be Truly Deadly F-22のDNA:ロッキード・マーティンF-16ブロック70が強力な威力を誇る理由

August 27, 2018  by Dave Majumdar


ッキード・マーティンが11.2億ドルの大型契約を米政府から受注した。F-16ブロック70仕様ファイティング・ファルコン16機をバーレーン向けに製造する。
バーレーン王立空軍が史上最強版F-16で初の運用部隊となる。
これまでF-16はフォートワースで製造されてきたが今回の新型「ヴァイパー」はサウスカロライナ州グリーンヴィル生産となる。
ロッキード・マーティンではF-35共用打撃戦闘機で生産が佳境に入り、ファイティング・ファルコン生産は下火になったため、F-16生産ラインを小型工場に移転し少数生産に対応することとした。とはいえ移転はF-16が新局面に入ったことを意味し今後も売上が期待できる。
ロッキード・マーティンはサウスカロライナ工場に大規模投資し150名ないし200名の新規雇用を作れると見ている。
同社はF-16生産により米国内の同社技術陣、調達部門、営業顧客支援部門数百名分にあわせて米国内供給企業数千名分の雇用が確保できると見ている。全米42州450社でF-16のサプライチェーンを形成している。
ロッキード・マーティンがF-16販売に強気なのには理由がある。ブロック70はどの点から見ても強力な機材でF-35技術も流用しているからだ。F-16と比べればF-35のほうが高性能で威力も高いが、JSFを求める国あるいは購入を許される国はそれほど多くない。そのためこうした米側同盟国多数にはF-16ブロック70が最強の戦闘機になる可能性があるからだ。
F-16ブロック70の根本はノースロップ・グラマン製APG-83アクテイブ電子スキャンアレイレーダーだ。F-22ラプターおよびF-35から流用して20もの標的を同時探知可能の同レーダーは解像度1フィートで地上目標の合成開口レーダー地図を160カイリ先から作成してくれる。同機は新型高性能電子戦装備も搭載する。
ブロック70ではコックピットにも大幅に手を入れており、中央台座型ディスプレイCenter Pedestal Display (CPD)で6”x 8”画面に高精度戦術画像を写し、パイロットはブロック70搭載の新型センサー類の性能をフルに引き出すことができる。
コックピットでは共用ヘルメット搭載型指示システムII(JHMCS II) 対応のディスプレイもあり、パイロットはレイセオンAIM-9Xサイドワインダーミサイルの性能をフルに発揮できる。さらに新型自動地上衝突回避装置で墜落を回避できる。
.F-16Vの機体は12千飛行時間までの耐久性を確保しており、機体一体型燃料タンクを左右に備える。
ロッキード・マーティンはブロック70のエンジンは新型になったと述べているが型式を明かしていない。一番可能性が高いのがジェネラル・エレクトリックF110-GE-132で定格32,500 lbf (144 kN)のアフターバーナー付きエンジンだ。
F-16Vは各種兵装の搭載も可能だとロッキード・マーティンは宣伝している。
「当社はF-16への兵装搭載で36年の経験を有しております」とロッキードは述べている。「我が社をおいてこれだけの実績を有する機関は存在しません。米空軍および海外軍事販売制度を通じF-16を導入した各国とともにロッキード・マーティンは180種類超の兵装の搭載で認証を受けており、兵装統合面の知見によりF-16は最強の多用途戦闘機になったといえます」
F-16は今後数十年にわたり供用される。現時点で世界25カ国の空軍でF-16が3,000機活躍中。今後はブロック70改修が進むはずだ。F-16の将来は依然として明るい。■

Dave Majumdar is the defense editor of The National Interest. You can follow him on Twitter @DaveMajumdar.

2018年4月23日月曜日

★★★F-22/F-35ハイブリッド構想の実現可能性はない

先にご紹介したthe War Zone記事と反対の評価でこちらではF-22生産再開を日本に許しても米空軍が欲しい次世代戦闘機に及びもつかず、結局買い手がない、したがってロッキード案は絵に描いた餅になると見ています。さてどちらに軍配が下るのでしょうか。しかしながら爆撃機エスコート構想と言うのは何となくアナクロに聞こえるのですが。PCAまで作るよりもB-21だけでミッションが可能となればいいのでは。将来の戦闘機が今と同じ機体サイズである必要があるのでしょうか。そうなると航続距離・ペイロードで不満があってもF-22の活躍範囲は依然としてあるのでは。もちろん日本の求める制空任務にはF-22改があれば十分と思います。


Lockheed Martin Wants to Merge an F-22 and F-35 Into 1 Fighter for Japan. It Won't Happen.ロッキード・マーティンがねらうF-22/F-35を一つにまとめた日本向け戦闘機構想は実現可能性なし




April 20, 2018

ロイターが伝えたところによればロッキード・マーティンがF-22とF-35を一つにした機体を日本のめざす次世代航空優勢戦闘機として売り込もうとしている。

ロイター記事では同社はハイブリッド機を日本のF-3事業の情報提供に盛り込み、米国政府が技術移転を認めるのが条件としているという。1997年の改正によりF-22の輸出は厳しく制限されている。なお同機生産は2012年終了した。

提案内容の詳細は不明だが、ロッキードはF-35の高性能センサー、エイビオニクス技術をラプター改に搭載し圧倒的な空力性能(JSFとの比較で)を実現するのだろう。

新型機が仮に実現すれば日本製のF-35用プラット&ホイットニーF135アフターバーナー付きターボファン双発を搭載するのだろう。同エンジンはF-22用エンジンの派生型であり、F119エンジンも生産終了している。ロイター記事では構想では「F-22とF-35を組み合わせて双方より優秀な機体が生まれる」とうたっているとの匿名筋を引用している。

ただし提案にある機体はF-22・F-35の技術を応用するとはいえ、各種技術の統合、フライトテストは全く別の機体扱いとなるはずでハイブリッド機の実現には高費用かつ長期間を要するはずだ。そこに追い打ちをかけるのが米空軍が侵攻型制空戦闘機の要求水準からみて同機を採用する可能性が極めて低いことだ。

米空軍航空戦闘軍団からは次世代侵攻型制空戦闘機(PCA)の要求性能水準が示されており、それによればF-22、F-35のいずれの派生型でも達成は不可能な内容だ。中でも航続距離、ペイロード、ステルス、電子戦のいずれも大幅に現行機より伸びている。

たしかにステルス性能をとってもPCAには広帯域で全アスペクトでの低視認性が求められ、低周波レーダーにとらえられない想定がある。新型低周波レーダーでは現行のステルス機も探知可能だ。そうなると全翼機形状で垂直水平尾翼がない設計が有利だ。

空軍関係者PCAをノースロップ・グラマンB-21レイダー戦略爆撃機を援護する戦闘機だと公言し、防空体制の整備された敵地奥深くに侵攻する機体だとする。そうなると、設計では超音速飛行性能と戦闘機としての操縦性を兼ね備えた機体にしB-21の爆撃行をエスコートできる性能が必要となる。

航続距離の延長に加え空軍はPCAではペイロードの大幅増加を期待しそうで、F-22の規模を超える規模になるだろう。ラプターのパイロットから出る不満にはステルスやセンサー性能を生かせるだけのミサイル本数を搭載できないことがある。PCAが太平洋地区の広大な空域で活躍することを考えれば、機体には現行以上のペイロード搭載が必要となる。

PCAがペイロード、航続距離ともに拡大するとして将来の米空軍向け制空戦闘機にアダプティブサイクルエンジンの採用は必至だろう。空軍は米海軍とともにこの技術開発を進めており、実現すれば燃料消費は現行エンジン比で35%減となる。そうなると爆撃機よりは小さい機体のPCAには次世代エンジンがないと空軍の求める性能の実現は不可能と思われる。

F-22/F-35ハイブリッド構想が米空軍のPCAの要求水準を満足させるのは不可能だが日本の要求水準には合致することがありうる。そうなると日本は開発、テスト、製造の全般的費用を負担するのみならず、機体の買い手を米国で見つけることにもならず、費用の回収に困るはずだ。F-22/F-35ハイブリッド機の現実的なシナリオはあくまでも空想の世界だ。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

2018年3月28日水曜日

★ロッキードのCFR小型核融合炉が米特許を取得-----人類の生活を一変させる可能性と疑問

うーんあれから4年ですか。ロッキードが画期的な小型核融合技術を鳴り物入りで公表していました。今回は特許取得まで行きましたが、記事でも指摘しているとおり特許成立と技術の実現は別の話ですが、本当に実現すればロッキード株式に投資すべきでしょう。(当方は損失の責任は有しません) 日本ではそもそも原子力の原理が分かっていないまま感情で排斥する傾向が3/11以降定着しており、その根源は「穢れ」を排除する思想だと当方は見ていますが、核融合が普通に使える時代がそこまで来ているとすれば今から本気で核分裂と核融合は違うと社会に理解させていかないといけませんね。軍事利用を考えると今までの制約から自由になれればどれだけ画期的な装備が生まれるでしょうか。むしろレーザーやレイルガンのような高エネルギー消費装備の実現が容易になることでしょうか。ともあれ、五月雨式にしか出てこないロッキードのCFRですが今後も要注意ですね。



Lockheed Martin Now Has a Patent For Its Potentially World Changing Fusion Reactorロッキード・マーティンが世界を一変させる核融合炉の特許を取得

When it first announced the project, the company said it could have a working prototype of the revolutionary power source as early as 2019. 

同社は革命的な動力源をめざすプロジェクトを初めて公表した際に実用試作機をはやければ2019年に完成させると述べていた



BY JOSEPH TREVITHICKMARCH 26, 2018
LOCKHEED MARTIN


ロッキード・マーティンが世界を一変させる可能性のある小型融合炉(CFR)で特許を交付された。予定通り進展すれば同社は、ニミッツ級空母一隻あるいは一般家庭8万軒に十分な電力を供給できる海運コンテナ大の試作機を早ければ来年にも公表する。
特許は封じ込めシステム部分で日付は2018年2月15日。メリーランド州に本社を置く防衛産業最大手のロッキード・マーティンは2013年4月3日暫定申請し一年後に正式申請していた。
2014年に同社は装置作成に取り組んでいると発表し、スカンクワークス(カリフォーニア州パームデール)で小型核融合プロジェクトとして進め、目標は5年で作動型融合炉を完成させ10年で実用型を完成させることと明らかにした。
1920年代から科学者は融合炉構想に取り組んできたが完成したモデルは低性能かつ巨大に終わるのが大部分だった。しかも巨額の費用が必要だった。その例がITER(国際熱核融合実験炉)で国際協力でフランスに2021年完成を目指し費用概算は500億ドルで総重量23千トンになる。しかも装置は実験用であり実用と程遠い存在だ。
核融合は太陽内部と同様の仕組みで核融合反応の封じ込めが中核部分とされる。核分裂では原子がぶつかり合ってエネルギーが生まれるが、核融合炉ではガス状燃料を加熱し圧力で原子をイオンと電子に分割し自由イオンが重い核に融合される。
この過程で膨大なエネルギーが放出され化石燃料を燃やす通常の化学反応の百万倍超となる。だがこのためにはガスを保持しつつ高度のエネルギーを持つプラズマ状態を維持する必要がある。温度は華氏数億度になる。
これが反応炉の性能を制約する。と言うのは作動不良が恐ろしい結果になるためだ。ロッキードの2014年のAviation Week向け説明ではソ連開発のトカマクの例では安全な作動には磁気圧を低く維持する必要があるとのことだった。
LOCKHEED MARTIN
ロッキードの反応炉の概念図


ロッキードの助けを得て本稿ではCFRでこの問題はどう解決されたかを以下説明してみる。
「トカマクの問題はプラズマ保持に限界があることでこれをベータリミットと呼ぶ。プラズマ圧と磁気圧の比率でみると平均的なトカマクのベータリミットは低く、封じ込め圧の5%相当しかない。自転車タイヤに例えると空気を入れすぎるとタイヤが壊れ破裂するようなものだ。安全運転のため限界近くにはできないことになる。
CFRではこの問題を回避するためプラズマ封じ込めに画期的な方法を採用した。プラズマをチューブ状リングに封じ込める代わりに超電導コイル多数で別の磁場を作りプラズマを反応室内に広く封じ込める。超電導磁石をコイルの間に装着し反応室の外に磁場を作る。自転車用タイヤを破裂させてしまうのではなく、強い壁に向かって拡張するチューブを使っているわけだ。CFRのベータリミットは1で、つまり100%さらに上を目指している」
装置がうまく作動すれば戦闘の将来像を大きく変えるのみでなく人類の生活が一変するのは確実だ。水素アイソトープの重水素三重水素燃料が25ポンドがあればロッキードの計算では一年連続運転でき、100メガワットが常時発電できる。
.同社ウェブサイトのCFR特集では反応炉で空母一隻を航行させ、C-5ギャラクシーと同規模の機体を飛行させ、人口10万人規模の都市に電力供給が可能とある。あるいは火星への飛行のスピードがあがるだろう。いずれの場合もCFRが通常型燃料にとって代わり、核分裂反応炉とも交代し、大幅に小型化可能となる。余分なスペースや補器類が不要となり運転維持の負担も軽減されエネルギー効率は圧倒的に向上する。
USPTO
特許成立した融合炉外観の概略図
航空分野への応用では炉の大きさが問題だが無制限の飛行距離が実現し、制約は乗員の食糧、飲料水他の生命維持関係のみとなる。高高度飛行無人機なら数か月・数か年滞空し衛星等の中継装備の代わりとなり、軍用民生用双方で活用できる。
太平洋のように広大な地域の常時監視体制は現状では困難だがCFRなら無期限に監視可能となり、敵の動きを逐一監視できるほか野生動物の群れや水温観察が連続実施できるようになる。
同様に車両、艦船、宇宙機にも恩恵が生まれ、距離の制約を取り払い無制限の電力供給が可能となる。軍用用途では無人の地上車両や艦船に無制限のパトロールをさせたり、危険性のある分裂炉を使わずに資源の有効活用につながる。
USPTO
CFRを搭載した四発航空機エンジンと反応炉の配置の概念図
核分裂に対して核融合の利点として最大の点は危険な廃棄物が生まれないことだ。重水素三重水素はともに民生分野で大量入手が可能でかつ低量なら危害は加えない。燃料が少量で済むため事故があっても融合炉から汚染が広範囲に広がることは少ない。
また融合炉では加工済み核分裂物質が不要となれば核兵器拡散防止上も有益だ。加工工程が核兵器製造の出発点となるからだ。移動可能で効率が良い電源となり世界中どこにでも設置でき病院、学校、海水淡水化プラント他重要だが大量の電力を必要とする民生インフラの安定電源となる。
燃料は膨大にあり比較的簡単に入手できる。海中にほぼ無制限の重水素があり、リチウムから三重水素を得られる。廃棄物処理は分裂炉よりはるかに容易で危険な放射能も数千年単位ではなく数百年で無害となる。
システムでは高熱を作りそのエネルギーでタービンを回し発電する。既存の発電方式の石炭、石油、核分裂方式を核融合炉に交代するのは比較的容易だとロッキード・マーティンは見ている。自然災害のような緊急事態にはトラックに搭載した反応炉で都市全体の電力復旧に役立つ。
USPTO
ロッキード・マーティンのCFRの応用可能性を示す図 特許出願内容より
もちろんロッキード・マーティンの融合炉が実現するかは別の問題だ。ほぼ一世紀にわたり多数の企業研究機関が核融合の実用化を目指しているが成功したのは一例もない。
特許取得しても書面通りに技術が実現に向かっているとは限らない。2014年のメディア向け公表以降のスカンクワークスはほぼ何も発表してこなかった。米政府は国家安全保障に関する内容で必要と判断すれば特許内容を非公表とできる。つまり今回の特許内容から見ればシステムの成熟度がまだ低く物議を醸しだす内容ではないことを意味するのか。
とは言えスカンクワークスが特許出願をこの4年間続けてきたことから同社が研究を推進中だとわかり、ある程度の達成をしたのだろう。スカンクワークスは高度研究開発で目を見張る実績を誇る。四年前も外部取材に反応炉を詳細説明するほど自信にあふれ、事業の大日程や目標まで話していたころから同社の本腰の入れようがわかる。

2014年当時に反応炉試作型完成まで5か年の大日程を示していたことから、ロッキード・マーティンからの重大発表が近づいているのではないか。■

2018年2月21日水曜日

航空自衛隊向けF-35A20機程度追加調達へ

また日本のF-35で動きが出てきました。まず、F-35AですがF-15一部の代替としても期待され、F-35Bは別枠検討のようです。F-35B導入では海上自衛隊が運用するのかも検討課題でしょう。「海軍航空隊」を復活させるのか,ということで、もともと航空自衛隊の出自を考えると旧海軍の流れがJASDFに入っているので所属は航空自衛隊で海上自衛隊艦船で運用するのが筋ではないでしょうか。ロイター記事をーBusiness Insiderが紹介しています。


Japan is reportedly looking to buy an additional 20 F-35s, and possibly F-35s for its aircraft carriers日本がF-35を20機追加調達し、さらに空母用F-35導入の可能性も


 Tim Kelly and Nobuhiro Kubo,

Japan Air Self Defense Forces F 35
日本で完成したF-35一号機の初飛行状況TAugust 24, 2016.Flickr/Lockheed Martin
  • 日本がF-35Aステルス戦闘機の追加調達を今後6年間で最低でも20機検討中と判明した。.
  • 日本は一機当たり約1億ドルで合計60機以上導入したいとする。
  • これとは別にF-35Bの調達も検討し、ヘリコプター空母からの運用を実施したい考え。




TOKYO (Reuters) - 日本が今後6年間少なくとも20機のF-35A追加購入を検討し、機体は全機あるいは一部をロッキード・マーティンからの直接購入とし、国内生産にこだわらないと内部消息筋三か所が認めた。
 「予算状況と生産日程から約25機導入が妥当」と詳しい筋が語っており、米国から完成機体を購入すれば一機約1億ドルで国内生産より30百万ドル節約できるという。
 日本は42機を発注済みで大部分を三菱重工業が運用する「最終組立て点検」工場で生産する。この工場は米国外では二か所しかないうちの一つで、もう一か所イタリアではレオナルドが運用している。
中国が高性能戦闘機を続々と配備し、北朝鮮も核兵器弾道ミサイル開発を一向にやめない中でF-35の追加導入は日本の米技術依存を強めながら東アジアでの潜在敵国への優位性を高める。
 日本の防衛当局はF-35B導入も検討しており、遠隔島しょ部から東シナ海攻撃に使うとかいずも級ヘリコプター空母からの運用を想定している。
「まだ正式決定ではないが必要な戦闘機の機種は検討している」と小野寺五典防衛相は日本がF-35追加導入を決めたのかとの問いにこう答えている。
防衛省は防衛体制の検討結果として日本のめざす安全保障の目標と再来年度から五年間にわたる防衛装備調達案を今年末までに発表する。
 42機調達する航空自衛隊向けF-35Aの初号機は三沢基地に配備されており今週土曜日の正式な部隊編入式典に日本側関係者がロッキード・マーティン幹部と出席する予定だ。
 F-35はロッキード・マーティンの全収入の三分の一を占める存在で同社は1,800名をテキサス州フォートワース工場に投入して生産に当たっており、世界各地向けに3,000機の生産を見込む。ロッキード・マーティンは2023年までに年間生産を現在の三倍に引き上げ年間160機にする予定だ。
 日本組立てのF-35一号機はF-4ファントムと交代する機体でさらにその先にF-15も一部を用途廃止する予定だ。
 一方で日本は国産ステルス戦闘機の生産もめざし、F-3の呼称があるが開発費用が高額となるため海外提携先を模索して費用分担の必要が生まれると見られる。■