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2025年2月10日月曜日

バルト海で15ヶ月で11本のケーブルが損傷され、NATOはセキュリティ強化を迫られている(Defense News)

 

バルト海の海底ケーブルやパイプラインを妨害破壊行為から保護するNATO任務として、フランス海軍のアトランテーク2のパイロットがドイツのハンブルクで離陸前点検している(ジョン・レスター/AP通信)

ルト海上空のフランス海軍機機上にて— 強力なカメラを搭載したフランス海軍の偵察機がバルト海上空を飛行中、眼下に貨物船が現れた。カメラオペレーターが船の前方デッキや煙突から立ち上る煙の様子を詳細に確認できるまで、貨物船にズームインし、さらにズームインし、さらにズームインした。

 NATOの新たな任務を帯びた長距離偵察機アトランテーク2は、ハイテクの視線を別の標的に向け、さらに別の標的にと、5時間以上にわたるパトロールの間に、同機のセンサー群はバルト海の大半をくまなく探査した。

戦略的に重要な海域の上空を飛行機が飛ぶことは、軍艦が海上をパトロールしているという事実と相まって、紛れもないメッセージを発信している。バルト海を縦横に走るエネルギーやデータケーブル、パイプラインの水中ケーブルが破壊された事件が増加していることを受け、NATOは、破壊工作の疑いに警戒を強めているのだ。

 「我々は全力を尽くして反撃し、何が起こっているのかを把握し、二度と起こらないよう次のステップを確実に実行します。そして、敵対者たちにもそれを知らしめるべきです」と、NATO事務総長のマーク・ルッテは今月、バルト海沿岸諸国の経済的繁栄に不可欠な海底インフラを保護する新たな同盟ミッション、「バルティック・セントリー」を発表した際に述べた。


バルト海の海底には何が?

電力や通信ケーブル、ガス・パイプラインが、比較的浅く、ほぼ内海であるバルト海に面する9カ国を結びつけている。 例えば、フィンランドとエストニア間の94マイルのバルティックコネクター・パイプライン、スウェーデンとドイツの送電網を結ぶ高圧バルティック・ケーブル、フィンランドとドイツ間のC-Lion1通信ケーブル(729マイル)などがある。

なぜケーブルが重要なのか?

海底パイプやケーブルは、経済を支え、家を暖かく保ち、何十億名をつないでいる。重要な通信ネットワークの追跡とマッピングを行うTeleGeographyによると、月までの往復距離を優に超える807,800マイル(1,301,800キロ)以上の光ファイバーケーブルが世界の海や海をまたいで広がっている。ケーブルの太さは通常、庭用ホースと同じくらいです。しかし、世界中の通信の97%が、毎日ケーブルを通過している。

 「この2か月間だけでも、リトアニアとスウェーデンを結ぶケーブル、ドイツとフィンランドを結ぶケーブル、そして最近ではエストニアとフィンランドを結ぶ複数のケーブルに損傷が見つかりました。これらのケースの調査はいずれも継続中です。しかし、深刻な懸念を抱く理由があります」と、ルッテ事務総長は1月14日に述べた。


何が懸念されているのか?

2023年10月以来、バルト海の海底ケーブル11本が損傷している。最も新しいのはラトビアとスウェーデンのゴットランド島を結ぶ光ファイバーケーブルで、日曜日に破損したと報告されている。海底ケーブルの損傷は日常茶飯事であるとケーブル事業者は指摘しているが、バルト海での事件の頻度と集中ぶりは、故意による損傷の疑いを強めている。

 また、ロシアが、2022年からモスクワが追求している全面侵攻からウクライナを守るために、欧州諸国の不安定化を図る、いわゆる「ハイブリッド戦争」のより広範なキャンペーンの一環として、ケーブルを標的にしているのではないかという懸念もある。

 ロシアを特に非難することなく、ルッテは次のように述べた。「ハイブリッドとは妨害工作を意味します。ハイブリッドとはサイバー攻撃を意味します。ハイブリッドとは時には暗殺攻撃やその試みをも意味し、このケースでは、我々の重要な海底インフラへの攻撃を意味します」。

フィンランド警察は、12月25日にエストリンク2の送電ケーブルとフィンランドとエストニアを結ぶ他の2本の通信ケーブルを損傷させた石油タンカー「イーグルS」が、ロシアの石油輸出に対する戦争関連制裁を回避するため使用されるモスクワの「影の艦隊」の一部ではないかと疑っている。

 フィンランド当局は、このタンカーがロシアの港を出た直後に押収し、おそらく錨を引いてケーブルを切断したと見ている。フィンランドの捜査当局は、船が海底に約62マイルにわたる錨の跡を残したと主張している。


情報機関の疑念

機密事項であるため匿名を条件に、欧米の情報当局者がAP通信に語ったところによると、最近の被害は、メンテナンス不良で乗組員も少ない船が錨を引きずったことによる事故の可能性が高いという。

 ある上級情報当局者はAP通信に対し、同船の航海日誌やアンカーの機械的故障は、ロシアによる妨害工作ではないことを示す「複数の兆候」のひとつであると語った。同当局者によると、ロシアのケーブルも切断されていたという。また、情報問題について匿名を条件に語った別の欧米当局者は、ロシアはケーブルの破損現場に情報収集船を派遣し、被害状況を調査していたと述べた。

 ワシントン・ポスト紙が最初に報じたところによると、米国と欧州の安全保障機関の間では、最近の被害は事故による可能性が高いという見方が強まっている。


ケーブル事業者は注意を呼びかけている

ケーブルの所有者や運営者を代表する欧州海底ケーブル協会は、バルト海の2つのリンクで障害が報告されたことを受け、11月に、平均すると3日に1本の割合で世界のどこかで海底ケーブルが損傷していると指摘した。同協会によると、北欧海域では商業漁業や船舶の錨が主な損傷原因となっている。

 日曜日にラトビアとスウェーデンを結ぶ光ファイバーケーブルが切断された事故で、スウェーデン当局は、南米行きの肥料を積んだマルタ船籍の船を拘束した。

 同船を所有するブルガリアのNavibulgar社は、いかなる損害も意図的なものではないとし、船員が極度の悪天候の中を航行中に、左舷の錨が海底を引きずっているように見えるのを発見したと発表した。


NATOの「バルト・セントリー」作戦

NATOは、この任務のために水上艦艇、海上哨戒機、無人偵察機を展開し、「監視と抑止力の強化」を図っている。

 フランス海軍の監視飛行に搭乗した14人の乗組員は、上空から目視した船舶を、監視対象として指示されていた船舶リストと照合していた。

 「海上で不審な行動をとる船舶を目撃した場合、例えば、著しく低速で航行していたり、この時間帯に停泊すべきではない場所に停泊していたりした場合、これは目視の対象となります」と、フライト指揮官のアルバン中尉(フランス軍は保安上の理由から完全な姓名は公表していない)は語った。

 「センサーを使って非常に詳細に状況を確認できます」。■


11 Baltic cables damaged in 15 months, pushing NATO to boost security

By John Leicester and Emma Burrows, The Associated Press

 Wednesday, Jan 29, 2025


https://www.defensenews.com/global/europe/2025/01/28/11-baltic-cables-damaged-in-15-months-pushing-nato-to-boost-security/


2021年12月25日土曜日

056型コルベット艦を沿岸警備隊に移管する中国が狙うのは尖閣諸島はじめ各地でのグレイゾーン事態だろう。

 

 

中国が海軍除籍の056型コルベット艦を沿岸警備任務用に改装中

 

 

一列島線をめぐり緊張が高まる中、中国は056型(NATO呼称江島Jiangdao)を人民解放軍海軍(PLAN)から中国海警(CCG)へ移管する作業を開始した。

 

対象艦は可変深度ソナーを搭載しない056型に限定され、(056A型はこれを搭載している)、艦齢8年と比較的新しい各艦で、CCGの火力が相当向上する反面、PLAN艦艇を太平洋方面で集中させる効果も生まれる。056型通算60隻目が2019年に進水ており、昨年も同型多数が就役している。

 

PLANの056型コルベット艦はH/PJ-26 76mm主砲一門、H/PJ-17 30mm自動砲二門、対艦ミサイル発射装置二門、HQ-10 SAM発射8セル、三重魚雷発射管装置2基を搭載し、センサーでは360型、347型レーダーを搭載している。対潜戦用ソナーは搭載せず、PLAN内で陳腐化が進んでいる。

 

 

進行中の改装は艦番号511(写真上)が対象でミサイル、魚雷発射管を除去し、LEDパネルを艦橋両側に取りつけ、警告文などの表示をめざし、退役したCCG艦艇から流用する。これだけの威力を有する艦艇が沿岸警備部隊に加わること自体がグレイゾーンになる。

 

小型艦といえども出自が軍艦の性能を第一列島線内で発揮する。主砲76mmで各国の沿岸警備艦艇を凌駕する。沿海域運用を想定した056型はCCGで今後活躍しそうだ。航続距離と長期間稼働性能を発揮し、火力は民間船舶ににらみを利かす。

 

056型は海警でどう運用されるのか


非軍事部門が運用する056型コルベットは、行動の自由度が高くなる。尖閣諸島付近含む紛争水域で威力を発揮しそうだ。海警局の活動が合法か否かにかかわらず、外国艦艇に妨害された場合は、中国メディアは自国艦を無罪とし、外国艦艇を不当な侵略者として国内外に報道しかねない。

 

中国がアメリカをまねて「銀河事件」*を再現する可能性もある。国際水域で外国船舶の動きを封じる、交通量の多い南シナ海の海上貿易網を脅かす、台湾のような弱い国の重要輸送路を混乱させ、本格的な軍艦が実行したら起こる結果を避けながら、相手国に要求を呑ませるのである。■

 

*1993年7月23日、アメリカは入手した情報を理由に中国の貨物船「銀河」がイランへ化学兵器原料を輸送中と非難し、中国に制裁を課すと脅しをかけた。「銀河号」はインド洋公海上でアメリカ海軍に航行を阻まれ、三週間拘束された。中国政府はアメリカに厳重に抗議した。中国政府はアメリカ政府の臨検の要求に応じた。9月4日に「銀河」の貨物調査が終了したが、化学兵器はなかった。中国側はアメリカ側に公式謝罪と賠償を求めた。アメリカ政府は謝罪を拒み続けた。

 

 

China Transferring Navy Type 056 Corvettes to the Coast Guard - Naval News

Naval News Staff  24 Dec 2021