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2025年10月14日火曜日

極超音速兵器を搭載した駆逐艦と潜水艦がハワイへ再配置される(USNI News)―

 

真珠湾基地の改装が完成すればズムワルト級駆逐艦3隻がそろいます。同級は形こそ変われ当初の構想通り画期的な対地攻撃力を提供し、中国をにらむことになりますね。

USS Zumwalt in Pearl Harbor

2019年真珠湾の埠頭に接岸するミサイル駆逐艦USSズムウォルト(DDG 1000)。(米海軍写真:マスコミュニケーション専門士官2等ジョナサン・ジャン)

真珠湾施設の改修・近代化工事により、ホノルル海軍基地は極超音速兵器を装備したズムウォルト級駆逐艦3隻と最大3隻の極超音速兵器装備ヴァージニア級原子力攻撃潜水艦の受け入れに向け準備している。この動きは、中国との潜在的な戦争を見据えた米海軍の極超音速装備戦闘部隊の大規模な再配置だ。

2028年半ばからハワイを母港とする新型艦艇・潜水艦に対応するため、合同基地パールハーバー・ヒッカム全域で近代化作業が進行中である。

海軍施設建設司令部(NAFVAC)によるパールハーバー・ヒッカム統合基地での建設作業は、ズムウォルト級駆逐艦とヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦の配備・修理に必要な係留スペースと乾ドック能力を整備する。

M1、M2、B26、B24各埠頭の近代化により、2028年半ばに配備されるズムウォルト級水上戦闘艦全艦の収容スペースと電力需要が満たされる。共同基地における乾ドック作業と整備を支援する追加建設も、今後数ヶ月以内に開始される見込みだ。

汎用岸壁1/2は既に、ズムウォルト級に必要な4160ボルト電力供給要件に対応するため電気設備のアップグレードを実施中である。5月には海軍施設工兵・遠征戦術センター(NAVFAC EXWC)の移動式ユーティリティ支援装置(MUSE)変電所が同岸壁に設置された。各岸壁は最終的に恒久設置型の4160ボルト電力供給能力を備える予定である。

2025年4月21日、ハワイ州パールハーバー・ヒッカム統合基地での現地視察において、ハワイ海軍施設工兵司令部(NAVFAC)が、P-8014U埠頭M1/M2陸上電力配電プロジェクトの進捗状況をNAVFAC太平洋司令官ジェフ・キリアン少将に説明している。本プロジェクトの目的は、JBPHHのジェネラルバース・マイク1において、移動式ユーティリティ支援装備(MUSE)への電力供給およびDDG 1000ズムウォルト級駆逐艦などの将来プラットフォームへの陸上電源供給を実現する電気インフラを整備することである。(米海軍写真:アンナ・マリー・G・ゴンザレス)

艦艇支援のための追加工事は2026年3月に開始され、艦艇がハワイに到着する2028年6月の完成を予定している。

「戦時における艦隊即応能力を維持するため、DDG-1000級に十分な信頼性のある電力を供給するには、既存の陸上電源のアップグレードが必須である。DDG-1000級艦は2028年半ばまでに当施設に到着する。したがって、本プロジェクトはそれまでに完了し、使用可能でなければならない。」

米国海軍

NAVSEA(海軍海上システム司令部)は、真珠湾海軍造船所(PHNSY)における3隻のズムウォルト級艦艇の維持管理・近代化・乾ドック入渠を支援可能な請負業者向け情報提供要請書で建設要件を明示した。関連作業は契約締結時期である2026年末に開始予定。請負業者は、同艦級向け予備部品及び調達期間の長い資材を保管する施設の開設・改修を含む。

NAVSEAは、2028年半ばまでに3隻全ての母港変更を支援できる施設と請負業者の整備を求めている。

現在、2隻のズムウォルト級駆逐艦が米海軍の通常弾頭即時打撃(CPS)極超音速ミサイル配備に向け近代化中である。3隻目は2026年にミシシッピ州パスカグーラのハンティントン・インガルズ・インダストリーズ社で近代化作業に入る予定。

先頭艦であるUSSズムウォルト(DDG 1000)の作業は2026年5月までに完了する見込みであり、USSリンドン・B・ジョンソン(DDG 1002)の作業は今年初めにハンティントン・インガルズ・パスカグーラで乾ドック入りした際に開始された。

Hypersonic CPS

2024年1月から10月にかけてUSSズムウォルト(DDG-1000)で行われた極超音速ミサイル統合作業の詳細を示すNAVSEA写真。撮影:筆者

ズムウォルト級駆逐艦は3隻で合計36発のCPSミサイルを搭載し、沿岸陸上攻撃能力を提供する。これは現行の他の兵器システムでは実現できない能力である。対艦能力のための終末誘導装置統合に向けた開発作業は進行中である。

3隻全てに新たな信号情報収集システム、新型海軍データリンクプラットフォーム、領域防空能力のためのSM-6統合が施される。米海軍は同級駆逐艦を「現行能力と比較して、より長射程、より短飛行時間、敵防空網に対する高い生存性を備えた独立した前方展開攻撃プラットフォーム」と位置付けている。

真珠湾はまた、造船所インフラ近代化計画の一環として、2030年までにヴァージニア級攻撃型潜水艦を追加配備する。艦隊によると、パールハーバーに移管される潜水艦のうち2~3隻はヴァージニア・ペイロード・モジュール(VPM)を装備し、各艦に追加で28発のトマホーク巡航ミサイルまたは12発のCPSミサイルを搭載可能となる。

VPMを装備したブロックVヴァージニア級SSNは、合計28発のトマホーク巡航ミサイルまたは12発の通常弾頭即時発射型極超音速ミサイル(CPS)を配備可能となる。

「2030年までに、真珠湾を母港とする潜水艦の大半はヴァージニア級となる見込みだ。母港配備にはブロックVヴァージニア・ペイロード・モジュール(VPM)搭載型潜水艦2~3隻が含まれる予定である」

米海軍原子力潜水艦アリゾナ(SSN 803)は、VPM搭載型ヴァージニア級攻撃型潜水艦の1番艦として2027年の就役を予定している。続いて「バーブ」級(SSN 804)が配備される。「アリゾナ」は1941年の真珠湾攻撃で沈没した戦艦「アリゾナ」(BB-39)に因む。「バーブ」は第二次大戦で大西洋・太平洋戦域で敵艦17隻(太平洋では空母1隻を含む)を撃沈した伝説的潜水艦「バーブ」(SS-220)に因む。

前述の米海軍計画に基づけば、両艦ともハワイを母港とする可能性が高い。

追加のヴァージニア級潜水艦需要に対応するため、米海軍はドック3の近代化とドック5の建設を進めており、これによりヴァージニア級の全ブロック型および次世代攻撃型潜水艦(SSN(X))の整備が可能となる。改修が行われなければ、PHNSYはヴァージニア級攻撃型潜水艦の整備に対応できない。近代化により、真珠湾に配備されるヴァージニア級攻撃型潜水艦の全ブロック型に対し、中間整備およびデポレベル整備の要件を満たすことが可能となる。

2030 年までに、 CPS を装備した艦艇および潜水艦少なくとも 5 隻がハワイに配備されることで、米海軍の主要な時間的制約のある攻撃部隊の大半は、戦時シナリオで中国に対して行動を起こす態勢が整い、サンディエゴを母港とする艦艇や潜水艦に比べ、インド太平洋への移動時間を数日間短縮できる。■


Hypersonic-Armed Destroyers and Submarines are Relocating to Hawaii

  • Published on 11/10/2025

  • By Carter Johnston

  • https://www.navalnews.com/naval-news/2025/10/hypersonic-armed-destroyers-and-submarines-are-relocating-to-hawaii/

  • カーター・ジョンストン

  • カーター・ジョンストンは、ジョージ・ワシントン大学エリオット国際問題大学院の 2028 年卒業予定の 2 年生です。ワシントン D.C. を拠点としています。彼の関心分野は、米国の造船所インフラ、米海軍および海兵隊の継続的な近代化の取り組み、そして国内外でそれらの成功につながる政治です。

2024年12月6日金曜日

ロシアの極超音速ミサイル "ジルコン "の実態に迫る(The War Zone)

   

A recent drill by the Russian Armed Forces in the Mediterranean has provided us with a more detailed view of the shadowy Zircon hypersonic missile, a weapon that has only been glimpsed in the past and shown up in the form of fragments after being combat tested in Ukraine. The maneuvers come as Russia’s position in Syria — home to its two major Mediterranean bases — increasingly looks to be under threat, as rebels continue their rapid advance south, threatening the rule of Bashar al-Assad, a key Kremlin ally.Russian Ministry of Defense capture



ロシアの極超音速ミサイル "ジルコン "の実態に迫る(The War Zone)


ロシア海軍は、地中海での大規模な実弾演習の一環として、巡航ミサイル「ジルコン」を発射した


シア軍による地中海での最近の訓練では、ウクライナで戦闘実験が行われた後、破片の形でしか姿を見せなかった兵器、謎の超音速ミサイル「ジルコン」をより詳細に見ることができるようになった。 

 反体制派が南方へ急速な前進を続け、クレムリンの重要な同盟国であるバッシャール・アル・アサドの支配を脅かしているためだ。

 ジルコン(ツィルコンと訳されることもある)の新しいビデオを、ロシア国防省が地中海演習の記録として公開した。いくつかの異なるアングルから、ロシア海軍プロジェクト22350アドミラル・ゴルシコフ級フリゲート艦の甲板上で3S14垂直発射システム(VLS)からミサイルが発射される様子が映っている。ミサイルはベクタリングロケットで安定させられながら引き上げられ、垂直軌道を進み、そこで映像は終了する。


最新の映像からジルコンミサイルの発射を示す2つのビュー。 ロシア国防省のキャプチャロシア国防省のキャプチャ


ロシア国防省によると、実弾演習は昨日地中海東部で行われ、海上発射ミサイルと空中発射ミサイルが使用された。フリゲート艦アドミラル・ゴルシコフとアドミラル・ゴロフコはジルコン・ミサイルを発射し、ディーゼル電気潜水艦ノヴォロシースクはカリブ亜音速巡航ミサイルを発射したという。一方、シリア沿岸では、バスティオン沿岸防衛システムが超音速巡航ミサイル「オニキス」を発射した。別のビデオでは、MiG-31I戦闘機の下でキンズハル空中発射弾道ミサイルが準備されている様子が映っていたが、このミサイルも発射されたかどうかは不明だ。

間違いなく、アメリカやNATOもこの演習を注意深く監視しており、ジルコンやその他のシステムに関し質の高い情報を新たに得ているはずだ。

 この演習に関連しロシア海軍がシリアのタルトゥス港にある施設から艦船を避難させているのではないかという憶測を呼んだが、これは時期尚早だったようだ。

 以前、ジルコンの発射を至近距離から撮影したとする公式ビデオを見たことがあるが、その時はミサイルの詳細を確認するのが非常に難しかった。そのため、2020年10月に公開された映像は、ジルコンだけでなく、他の兵器が映っている映像をつなぎ合わせて編集されたものではないかという議論さえ起こった。2020年のビデオでは、ゴルシュコフから海軍の標的に対してジルコンが発射される最初のテストが行われたと主張した。


2020年10月、白海を航行中のフリゲート艦アドミラル・ゴルシュコフの前甲板で、16セル3S14垂直発射システムから発射されたミサイルを示すロシア国防省の映像の静止画。これがジルコンを示すとされる最初の公式画像である。 ロシア国防省のキャプチャ

2020年10月6日、白海でのジルコンテストを撮影したとするロシア国防省のビデオ:


2022年5月にロシア国防省が公開した別のビデオでは、ゴルシュコフがジルコンを発射する様子が映っているとされているが、ミサイルは遠目にしか映っておらず、詳細は見えない:

 新しいビデオと2020年のビデオを比較すると、同じミサイルのようだが、実際にどのように動作するかについて疑問が残ったままだ。

 興味深いことに、2020年当時、ジルコンにまつわる多くの憶測は、3S14 VLSからも発射可能な古い設計の超音速ミサイル「オニキス」との関係の可能性に焦点が当てられていた。


軍艦の艦首から見た、発射後に上昇するジルコン。ロシア国防省のキャプチャ昨日の実弾演習での発射後のジルコンの別のビュー。 ロシア国防省のキャプチャ


オニキスはウクライナやシリアでの戦闘でも陸上目標に対して使用されており、ジルコンも同様に両用兵器とされている。

 過去にロシア国防省は、ジルコンがテストで「マッハ8以上」の速度に達したと主張し、ウラジーミル・プーチン大統領は、この兵器の最高速度はマッハ9程度で、航続距離は約620マイルだと述べた。もしそれが本当なら、極超音速の範疇にしっかりと入る。

 一方、オニキスの最高速度はマッハ2.2で、液体燃料のラムジェットモーターを動力源としている 最大航続距離は180マイルと言われているが、低高度を飛行する場合は大幅に短縮される。


 ジルコンは、ロシアメディアが過去に説明のために使った「ウェーブライダー」型の極超音速ミサイルとまったく異なる外観をしている。米空軍の実験的なX-51ウェーブライダーと同様、このタイプのミサイルは超音速衝撃波を利用して飛行体の揚力と安定性を維持する。通常、必要な速度と高度に到達させるために従来のロケットモーターを使用し、その後にスクラムジェットなどの空気呼吸高速エンジンを使用する。


インターネット上に出回っているジルコンだとされるグラフィック。


2023年1月、ロシア国防省は、ゴルシコフが初めてジルコン・ミサイルで武装して配備を開始したと発表した。

 ロシア政府関係者は過去に、ロシア海軍の先進的で極めて静粛な原子力潜水艦「ヤーセン」「ヤーセンM」級を含む潜水艦ヤ艦船が、将来ジルコンを採用できるようになることを期待していると述べている。   2021年10月、ロシアはジルコンを潜水艦から初めて試験発射することに成功したと主張した。

 しかし、明らかに戦闘デビューと思われるジルコンの発射には、地上に設置された何らかの発射装置が使用されたようだ。

 今年2月、ウクライナの科学者たちは、ロシアが初めてウクライナの少なくとも1つの標的への攻撃にジルコンを使用したと主張した。 この主張と並行して、科学者たちはジルコンの残骸とされる "エンジンやステアリング機構の破片(特定のマーキングがある)"のビデオを見せた。


キーウ科学捜査研究所が示したジルコンミサイルのな断片とされるもの。


 最も興味深いのは、キーウ科学捜査研究所がジルコンミサイルの線画を提供したことである。

 この図面では、ウェーブライダー型のデザインではなく、超高速のラムジェットを動力とするミサイルが描かれている。 この2段式ミサイルは、機首の上のキャップに環状の空気取り入れ口が隠されている。 同様のアプローチは、極超音速ラムジェットを動力とする巡航ミサイルのデモンストレーターであるボーイング・ハイフライにも採用されている。

 これは、昨日地中海で行われた演習で撮影されたジルコンの映像ともほぼ一致する。


ロシアの極秘軍事研究施設TSNII VVKOにある極超音速機ボーイングHyFlyのモックアップ(推定)。 ズヴェズダTV


 ウクライナからの明白な証拠とジルコンの最新のビデオを合わせると、オニキスと同様の全体的な寸法を持つミサイルであり、環状の空気取り入れ口がある可能性が高い。オニキスと類似していれば、ジルコンを同じタイプの地上発射装置から発射することも容易である。ビデオでは、ミサイルの球根状のノーズキャップが、前方への持続的な飛行に移行する際に分離するのが見える。



最新のビデオでジルコンをクローズアップすると、特徴的なノーズキャップが見え、明らかに環状インテークが隠されている。 ロシア国防省のキャプチャ


 英国国防省は、ウクライナに対してジルコンが使用された場合、通常はオニキスミサイルを発射する陸上バスティオン沿岸防衛システムから発射された可能性が高いと評価した。

 英国国防省は、「ロシアは、新しい兵器システムを実戦環境でテストし、能力を実証している可能性が高い」と付け加えた。

 多くの点で、ジルコンは謎めいた兵器であり、その作動原理や性能の正確な詳細はまだ確認されていない。ミサイルの運用状況も不明だが、ロシアは現在、ジルコンを以前より詳細に公開する姿勢を見せているようだ。■


Our Best Look At Russia’s Shadowy Zircon Hypersonic Missile

The Russian Navy launched the Zircon cruise missile as part of a large-scale live-fire exercise in the Mediterranean.

Thomas Newdick



https://www.twz.com/sea/our-best-look-at-russias-shadowy-zircon-hypersonic-missile


2021年10月29日金曜日

中国の宇宙極超音速ミサイルに米国はどう対抗するのか。AI技術の導入で核戦争シナリオが一変したようだ。抑止効果が生まれるのは米国が同等の技術を実戦化してからになる。

An earlier model of Chinese hypersonic missile, the DF-ZF, was on display at a 2019 parade.

 

中国の極超音速ミサイルDF-17の初期型が2019年の軍事パレードに登場した。ZOYA RUSINOVA\TASS VIA GETTY IMAGES

 

 

国が今夏打ち上げた極超音速ミサイルは「地球一周した」と米関係者がDefense Oneに教えてくれた。ペンタゴンは今回の驚くべきテストの意味を解析中だ。

 

7月27日打ち上げられたとまずフィナンシャルタイムズが伝え、米国がアフガニスタン問題に忙殺されている間に実施された。

 

10月27日Bloomberg Televisionの取材に応えたマーク・ミリー統合参謀本部議長はこの打ち上げについて「スプートニク並みの衝撃はないが、かなり近い意味がある。全力を挙げて注視している」と述べた。

 

中国外務省は平和目的の宇宙機だったと公表している。

 

フィナンシャルタイムズ記事は複数筋を引用し、核弾頭搭載可能の極超音速ミサイルが地球周回軌道を取り標的に向かったと伝えていた。

 

アリゾナ州選出民主党下院議員ルーベン・ギャレゴは今回の打ち上げで米国防優先事項の見直しが必要なことが明白と述べている。

 

「パニックになってはいけないが、再考の必要が確かにある」と述べるギャレゴは海兵隊出身でイラク戦争に出征し、現在は下院軍事委員会に所属している。

 

「軍事委員会は極超音速技術、研究の投資で遅れていることに気づかされている。急いで追いつきたいが、今回の事態で情報収集の遅れが露呈し、確認に時間がかかった」(ギャレゴ)

 

今回の打ち上げでペンタゴン高官の間に米国がソフトウェアや人工知能で中国より遅れているのかとの議論が高まっているとミリー議長も認めている中で、空軍のソフトウェア部門トップが先月辞任している。

 

American Enterprise Instituteの客員研究員ジョン・フェラーリ(元陸軍少将)は今回の打ち上げで重大な問題が表に出たと述べている。

 

「AIが今回の打ち上げと飛行制御に使われていることが関心の的だ。核をめぐるゲームが一変した可能性がある」「問題は防衛がこれに対応できるか、あるいは攻撃を正しく行えるかだ」

 

この形で核攻撃を想定しあらゆる標的を防御しようとすれば米国は破産を免れないとフェラーリは言う。

 

「技術面では互角にする必要がある。AI技術で極超音速ミサイルを阻止することが可能とならないと打ち上げの阻止につながる技術は実用化できないだろう。特に宇宙から発射された場合に」

 

同等の技術が実用化されれば米国は中国への抑止力が実現する、あるいはその他国が同様にミサイルを開発しても対応でき、核戦争の相互破壊が確実になり抑止力が実現したのと同じ状況になるとフェラーリは述べる。

 

米国は各種極超音速ミサイルを開発中だ。先週はヴァージニアのワロップス島から極超音速ミサイル三本の打ち上げに成功したが、四本目はブースターの作動不良により失敗した。■

 

‘It Did Circle the Globe’: US Confirms China’s Orbital Hypersonic Test

 

Tara Copp

BY TARA COPP

SENIOR PENTAGON REPORTER, DEFENSE ONE

OCTOBER 27, 2021

 

2021年10月19日火曜日

軍事用極超音速ミサイル試験を平和目的の宇宙機実験だったと虚偽発言する中国外務省の情報操作をうのみしている日本メディアのおめでたさ。

 中国政府はテストそのものがなかったといい抜けようとしているが、記者会見で触れた宇宙機テストは7月のものでまったく別個のもので、そのまま伝えたNHKなど国内メディアは中国の情報操作に手を貸したことになりました。


An artist's conception of a notional hypersonic boost glide vehicle in flight.

LOCKHEED MARTIN

 

国政府は中国が極超音速滑空体を軌道に乗せたのちに大気圏再突入させ標的に向け飛翔させたとの報道内容を否定した。中国外務省は再利用可能宇宙機だったとし、武器ではないと述べた。しかし、公式声明で宇宙機打ち上げは7月とあり、フィナンシャルタイムズ記事では軌道上爆撃手段のテストは8月とある。

 

 

中国外務省報道官趙立堅は2021年10月18日記者会見でブルームバーグ、AFPからの質問に対し、同記事を否定した。

 

「今回は通常の宇宙機の試験で再利用の可能性を試したものである」「地球帰還に先立ち切り離した後、大気圏内で支持部門が燃え尽き、破片は大洋に落下した」同報道官はこの宇宙機がフィナンシャルタイムズ記事にある飛翔体と同じなのかと尋ねられこう答えた。

 

ブルームバーグのジェイムズ・メイがー、BBCのスティーブン・マクダネル両名がこれを受けて中国外務省から趙報道官の発言は7月の宇宙機の件だったと確認したと伝えている。軌道上爆撃手段システムのテストは8月実施だったことが判明している。

 

国営企業中国航天China Aerospace Science and Technology Corporation(CASC)は7月に再利用可能な宇宙機テストに成功したと発表しているが、その際は準軌道飛翔だったとしている。CASCは同宇宙機の飛翔方式について説明しておらず、内モンゴルの酒泉衛星打ち上げ場Jiuquan Satellite Launch Centerから発射したと述べていた。2020年にも同打ち上げ場から長征2Fロケットが打ち上げらており、「再利用可能試験宇宙機」だったとの説明があった。

 

フィナンシャルタイムズ記事では長征2Cロケットが軌道爆撃システムのテストに使われたとあり、長征ロケット第77回目打ち上げとなったが、非公表のままだ。76回目78回目は7月19日、8月24日に実施されている。

 

趙報道官が言及したCASCによる宇宙機テストはこの売り7月16日にものだろう。さらにフィナンシャルタイムズの取材源によれば今回の軍事装備は標的突入含むすべての飛翔段階を実行したと言い、標的から数マイル外れている。CASCは宇宙機は飛翔実験ののち、空港に着陸したと発表したが、報道通りにともに実行されたとすれば、米情報機関が混同した可能性もある。

 

とはいえ、専門家筋から先に発表のあった再利用可能宇宙機と今回話題に上った軌道爆撃システムがどう関係しているのか疑問点が提示されている。民生用航空宇宙事業が中国で軍用装備とつながっている例はこれまでもあり、軍民両用の開発が展開していることはよく知られている。また、中国が極超音速滑空飛翔体兵器を実際に配備していることも知られている。

 

「今回は米側がX-37Bは兵器ではないと主張していることへの中国の反応なのか」と Secure World Foundationのブライアン・ウィーデンがツイッター投稿しているが、中国のテストに対し数多くの疑問が出ている。X-37B小型宇宙シャトルが宇宙軍が運営しており、実は何らかの軌道爆撃任務を行うものではないかとの噂がこれまで長くありながら実態は不明のままとなっている。

 

「宇宙機はすべてFOBSになるのか」とウィーデンは部分軌道爆撃システムに言及した。

 

FOBSの基本概念は1960年代のソ連にさかのぼる。通常の大陸間弾道ミサイル(ICBM)との比較で、準軌道上に配備するFOBSは射程距離の制約がなく、標的の割り出しが不可能ではないが困難となる。さらにFOBSの低高度弾道は地上配備レーダーでは探知が困難で、敵には対応が課題となる。

 

極超音速飛翔体をFOBSの弾頭部分に組み合わせれば予測不可能な攻撃手段となる。飛翔体は飛行制御性を高くしたままで弾頭を標的に命中させ、敵の防空ミサイル防衛体制を突破する。南極越え攻撃の場合、米ミサイル防衛の想定の裏をかくことになる。極超音速飛翔体の迎撃が極めて難しいことは米国含む各国政府が率直に認めている。

 

そうなると、報道されているような中国版FOBSと宇宙機の関連があるのかないのか不明だが、防衛能力を突破する性能をFOBSにあり、極超音速滑空体を利用することが中国が開発に励む理由なのだろう。また北京政府がFOBS開発を1960年代1970年代から手掛けたが中止されていたのは技術問題が解決できないためだったことが知られている。だが現在の中国航空宇宙産業界は当時より高度技術の実現能力が飛躍的に伸びている。

 

空軍長官フランク・ケンドールは中国軍がFOBSに準じる兵器開発にあたっていると9月の空軍協会イベントで発言していた。「これが実用化されれば従来のICBM軌道は無用の存在になる。ミサイル警報システムや防衛体制が突破される」

 

フィナンシャルタイムズ報道が出ると米空軍のグレン・ヴァンハーク大将(NORAD北米防空司令部司令官)から中国が「非常に進んだ極超音速滑空飛翔体能力を最近実証した」との発言が8月にあり、「NORADの対応能力では早期警戒及び攻撃地点の割り出しが困難となる」としていたことが改めて注目された。

 

米海軍のジョン・ヒル大将は議会で6月に「左右に曲がる飛翔制御は飛翔距離を延ばす意図があるため」と証言しており、各国の弾道ミサイルで飛翔制御能力が向上している様子に触れた。「大気圏再突入すればすべて極超音速になる」

 

中国のFOBSは開発初期段階で実戦化には遠いものの、同国が進める戦略戦力整備の一環でその他にもICBMサイロの整備、弾道ミサイル運用原子力潜水艦部隊の建造もある。米政府は繰り返し、情報から中国が核弾頭の貯蔵を増やしていることが判明していると述べている。

 

北京政府の戦略装備では透明性が一貫して低いままだ。中国との経験が豊かな元国防総省のドリュー・トンプソンは中国がいわゆる「非先制攻撃」方針で柔軟な姿勢を強めており、非核兵器で攻撃を受けても核兵器で対応することを自制してきたのを改めるのは明白としている。

 

FOBS含む技術開発で米側のミサイル防衛体制への対応で自信がつき、各種装備品が充実している。とくに現行の米ミサイル防衛体制では中国が保有中の核兵器を全弾発射した場合に対応できなくなることが重要な点である。

 

米中関係は領土問題、貿易面での意見対立でここ数年冷え込んでいる。米政府はCOVID-19パンデミックでの中国政府の処理を批判しており、ウイグル少数派の新疆での弾圧、香港民主派の取り扱い、台湾への圧力が関係悪化をさらに加速化している。一方で中国国内では強硬派の声が大きくなっている。米中台から有事発生の可能性が高まっているとの懸念が強まっている。

 

「米ミサイル防衛では中国核戦力の技術水準向上を懸念している」が、「米国が台湾とのつながりを強化し、新疆問題で中国を指弾していることが中国の核戦力増強を生んでいる」とカーネギー精華グローバルポリシーセンターのTong Zhao主任研究員がツイッターに投稿し、中国の戦略兵力整備の理由を解説している。

 

こうしたことを念頭に米政府は中国との軍備管理交渉を新たに始めたいとしており、ロシアも含めた三者協議も視野にしている。だが中国からは早くもこの動きを否定する姿勢を示している。

 

まとめると中国のFOBS整備に戦略兵器開発での透明性欠如が加わると今後の地政学上の環境で不確実性がさらに高まりそうだ。

 

Updated 5:45 PM EST:

 

NPRのジョフ・ブルームフィールから軌道爆撃システムに関し興味深いデータが提示された。フィナンシャルタイムズ記事では中国宇宙打ち上げ技術アカデミー(CALT)から長征2Cロケットの77回目と79回目の打ち上げについて公表したものの、78回目の発表がなかったとしていた。ブルームフィールはCALTは76回目打ち上げについても公表がないと指摘。

 

ブルームフィールからはCASCが7月の宇宙機打ち上げでロケットを投入したかで発表をためらっているため情報が錯綜していると指摘。CASCとCALTの間で食い違いがあるため準軌道上の宇宙機と軌道上爆撃システムの両テストの実施時期に関し一層の疑問を生んでいる。■

 

 

China's Claim That Its Fractional Orbital Bombardment System Was A Spaceplane Test Doesn't Add Up

The system could give China the ability to strike any target on Earth unpredictably, but so far Beijing is acting like the test didn't happen.

BY JOSEPH TREVITHICK OCTOBER 18, 2021

 



2021年10月17日日曜日

中国が大気圏再突入型極超音速ミサイル実験を実施。従来型ミサイル防衛の不備がつかれる事態を恐れる。中国との戦略兵器制限交渉は可能なのか。

 

  •  

LOCKHEED MARTIN

 

国が核運用可能な極超音速滑空体を宇宙空間に打ち上げ、周回軌道に近い形で移動させて大気圏へ再突入し標的に移動させたとフィナンシャルタイムズが伝えている。この装備が実用化されれば影響は大きいと同紙にあり、関係者5名に意見を聞いたところ、米国はこの事態に虚を突かれた形だという。

試験実施は8月ごろで加速滑空体は長征2Cロケットが打ち上げた。同ロケットは77回目の発射となったが、北京は公表していないが、8月の76回78回の発射は公表している。フィナンシャルタイムズ記事では滑空体は標的から数マイル外れたとあるが、開発中の技術内容のほうが重要だ。

宇宙空間からの爆撃構想は冷戦時代からあり、部分軌道爆撃システムFOBSと呼ばれるが、当時は核兵器を再突入体から投下する構想だった。今回の中国装備では極超音速滑空体の膨大な運動エネルギーを使う。大気圏内で長時間の飛翔制御を行いつつ膨大な速度で標的に向かうのが特徴だ。

FOBSへの懸念が生まれたのは、ミサイル防衛の網をかいくぐるだけでなく早期警戒網で探知できなくなるためだ。通常の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と比べるとFOBSは予測不能の攻撃手段となる。飛翔距離の限界もなくなる。だがこれまでのFOBSは弾道ミサイルの延長で中間段階で追跡すれば飛翔経路は予測ができないわけではなかった。

今回テストされたとされるハイブリッド設計では全く予測不能となる。

CHINESE SPACE AGENCY

長征2Cロケットの打ち上げ

制御可能な極超音速滑空体が高高度から超高速降下すると通常の弾道追跡では対応できない。さらに事態を複雑にするのが、南極経由の攻撃を実施することで、米国の弾道ミサイル早期警戒網は北極越え軌道を想定しているためで、防衛手段も同様だ。この装備への対抗が極めて困難になる理由は、米国の中間段階での迎撃は通常の弾道ミサイルに特化した放物線軌道対応が中心なためだ。

滑空体とFOBSが一緒になれば、大気圏再突入時に防衛側の中間段階対応能力外の距離を方向を替えながら飛翔し標的にむかう。通常の地上配備レーダーの有効範囲では対応できない。そこに超高速が加わり、防衛側の現行装備では対応不能となる。

現時点では極超音速滑空体への対抗は極めて難しい。対抗策の開発が進んでいるものの、迎撃解が得られるかは対象の飛翔速度、飛翔制御、数量、支援にあたる探知機能の効果に左右される。運動エナジーと極超音速の組み合わせで撃破が最大に困難な攻撃手段になる。

フィナンシャルタイムズ記事では米国防総省関係者の驚くべきコメントも伝えており、「非通常型」運搬システムは米国の戦略防衛能力をかいくぐるとしている。

先月だが、米空軍長官フランク・ケンドールは中国が新兵器を開発中とほのめかした。長官によれば中国が大きな進展を示しており、「宇宙からのグローバル攻撃の可能性」があるという。詳細には触れず、中国が「部分的軌道爆撃システム」として旧ソ連が冷戦中に配備しようとして放棄した装備に近いものを開発中だという。これを投入してきたら通常型のICBM想定の防衛手段では探知対応ができないとケンドールは述べている。

北米航空宇宙防衛司令部のグレン・ヴァンハーク大将は8月の会議席上で中国が「高度な内容の極超音速滑空飛翔体運用能力の実証を最近行った」と述べた。中国が示した能力は「わがNoradの対応能力では警戒および攻撃評価が大きな課題となる」

DoDにはかねてから中国の核兵力整備に懸念の声があり、中国が米早期警戒防衛能力をかいくぐる兵器運搬システムの整備に走ることを想定していた。中国が砂漠地帯に数百ものミサイルサイロを構築しており、新型弾道ミサイルを格納し、今回のような滑空飛翔体を搭載する日が来れば、懸念が現実になる。そこでペンタゴンは新型宇宙配備早期警戒・追尾システムをは展開し、極超音速弾道ミサイルへの対応を急ぐとしており、とくに中間飛翔段階でミサイル監視をおこなう「コールドレイヤー」の実現をめざす。

このレイヤーがFOBSに効力を発揮するのは、防衛手段が実行可能かつ戦略的に意味がある場合に限られる。ならず者国家が高性能弾道ミサイル数発を運用する場合を論じているのではない。中国は数十発あるいは数百発もミサイルを同時発射してくるかもしれない。こうした想定では物理的な防衛体制の整備は非常に高額となりながら実効性がないものになりかねない。

とはいえ、今回のテストは宇宙開発用ロケットを使った初期段階のものだった。中国がこの技術を実用化するまでは時間がかかるだろう。高温対応や大気圏内の摩擦問題も解決が必要だ。とはいえ、中国は極超音速加速滑空飛翔体の実現を目指しここ数年精力的に開発努力を展開しているのが現実だ。

今回のフィナンシャルタイムズ記事が正確だとすれば一つ確実なことがある。超高額になっても有効なミサイル防衛能力を求める声が議会筋でも大きくなっている一方で、中国を交渉の座につかせ戦略兵器制限条約を実現するべきとの声も広まっている。

この問題は事態の進展とともに続報をお伝えする。今回のフィナンシャルタイムズ記事China tests new space capability with hypersonic missileはクリックすると読める。■

China Tested A Fractional Orbital Bombardment System That Uses A Hypersonic Glide Vehicle: Report

Such a capability could potentially allow China to execute a nuclear strike on any target on earth with near-impunity and very little warning.

BY TYLER ROGOWAY OCTOBER 16, 2021