ラベル Su-35 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Su-35 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年6月8日日曜日

インドネシアがSu-35調達を復活、中国のJ-10も追加する動き(Alert 5)―各国を手球にとってきた同国で、F-15EXは消えるとしても韓国とのKF-21共同開発はどうなったのでしょうか 国としての徳が問われそうですね

 


情報筋によると、インドネシアは中国から中古のJ-10戦闘機42機の購入を計画中で、ロシアのSu-35調達も進める可能性がある


取引に関する公式発表は、6月11日から14日まで開催される予定のインド・ディフェンス・エキスポ&フォーラムで行われる予定だと、この件に詳しい情報筋は指摘している。

 この調達の可能性は、インドネシアが最近欧米の代替品に焦点を当てていた動きとは大きく異なるものであり、中国に対するインドネシアの広範な戦略的再編成の中で発生したものだ。この動きは、インドネシアが自らを地域のパワー・ブローカーとして位置づける一方で、米国と中国の地政学的対立の激化に対処するために、この地域のいくつかの国々が戦略的・経済的な配置を見直すことを促している。

 インドネシアの戦闘機近代化努力は、競合する大国との関係のバランスを取りながらジャカルタが直面する複雑な地政学的圧力を反映し、過去10年にわたって曲がりくねった道をたどってきた。

 その道のりは2015年9月、リャミザード・リャクドゥ国防相が老朽化したF-5タイガーの1個飛行隊をロシアのSu-35戦闘機16機で置き換える計画を発表したときに始まった。当初のスケジュールは楽観的すぎることが判明し、実際の契約は2018年2月まで実現せず、当初予定されていた16機ではなく11機が対象となった。最初の納入は、インドネシアの年次軍事パレードに参加するために2018年10月に予定されていたが、このスケジュールは実現しなかった。

 2021年12月までに、インドネシア空軍のファジャル・プラセティオ元帥は、ハリム・ペルダナクスマ空軍基地で行われたメディア向けの会合で、Su-35調達の断念を発表した。当初は予算の制約が理由とされていたが、2023年6月、国防省が予算の制約よりもむしろ米国の制裁の脅威が中止の決断を促したことを明らかにしたことで、全容が明らかになった。同省は特に、CAATSA制裁と外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control)の監視リストに含まれる可能性についての懸念を挙げている。

 Su-35取得の放棄後、インドネシアは西側諸国の代替案に軸足を移した。 2022年2月、同国はダッソー・アビエーションとラファール戦闘機の初期ロットに関する契約を締結し、2026年1月に最初の納入が予定されている。この契約は、2023年8月に18機のラファールが追加発注されたことで大幅に拡大し、インドネシアのラファール契約は24機となった。

 同国政府はまた、暫定的な解決策としてカタールからミラージュ2000-5を12機購入し、西カリマンタンのポンティアナク空軍基地に24カ月以内に納入する予定だった。しかし、この計画も後に断念された。

 ラファールと並行して、インドネシアは、米国の対外軍事販売手続きを通じて、米国のF-15EX戦闘機に対する積極的な交渉を継続し、当初は2027年の引き渡しを目標に協議していた。F-15EXプログラムは、2022年11月に当時の国防総省長官ロイド・オースティンがジャカルタを訪問し、当時のプラボォ・スビアント国防相がミズーリ州セントルイスにあるボーイングの生産施設を視察するなど、ハイレベルの外交的関与を受けて勢いを増していた。

 米国防安全保障協力局は2022年2月、インドネシアへのF-15EX機と関連装備品の売却可能額は、米議会の承認を前提に最大139億ドルと発表していた。インドネシアが調達するF-15EX機は、F-15IDNとして指定されることになる。

 だが中国製、そして潜在的にはロシア製の戦闘機への明らかなシフトは、インドネシアが中国との関係を劇的に深めていることを背景にしている。 2025年1月、インドネシアは中国が主導するBRICSグループに東南アジアの国として初めて参加し、貿易、開発、グローバル・ガバナンスの問題に焦点を当てたBRICSへのASEANの関与拡大を声高に主張する国となった。

 中国の経済的影響力は、インドネシアの調達戦略の発展にとって極めて重要な背景となる。北京はインドネシアにとって最大の貿易相手国であり、二国間貿易は2013年の524億5,000万ドルから2024年には1,351億7,000万ドルに倍増する。インドネシアの投資調整委員会によれば、中国はまた、2024年だけで81億ドルの投資を行う、インドネシアのトップ外国投資家でもある。

 この経済関係は、政治的にもかつてない高みへと昇華している。プラボウォ・スビアント大統領は2024年11月、中国の習近平国家主席と「地域的・世界的影響力を持つ中国・インドネシア運命共同体」の構築で合意したが、これは二国間協力の新たなレベルを象徴するものだ。 中国の戦略的重要性を強調するように、プラボウォは次期大統領として、また就任後に北京を最初の海外訪問先とした。

 2025年5月に中国の李強首相がジャカルタを訪問した際、プラボウォは地域的・世界的な影響力を持つ中国・インドネシア運命共同体のビジョンを再確認し、次のように述べた:「中華人民共和国、そして中国の人々とのパートナーシップを強化するという我々のコミットメントを再確認する。この関係は両国だけでなく、アジア地域全体、場合によっては世界にも利益をもたらすと信じている」と述べ、インドネシアが自国を米国や中国のジュニア・パートナーではなく、地域のパワー・ブローカーと見なしていることを示唆した。

 インドネシア空軍は、老朽化した航空機が運用限界に近づいており、差し迫った近代化の課題に直面している。退役したF-5戦闘機やホーク100/200練習機は代替が必要であり、既存機材は包括的なアップグレードやオーバーホールが必要であるため、整備期間中に使用可能な航空機が減少する。

 国防省は、フリートの移行期間中も運用態勢を維持するため、迅速な納入の必要性を強調している。中国とロシアの航空機なら、欧米の代替案と比較して、納期を短縮できる可能性がある。 中古のJ-10戦闘機は、人民解放軍空軍の在庫を利用すれば、比較的早く納入され、即座に能力を向上させることができる。 J-10はインドネシアに引き渡される前に、輸出要件を満たすように変更される可能性が高い。

 J-10は、長距離空対空ミサイルでインド空軍のラファール戦闘機を撃墜し、その戦闘機の強さを証明した。

 インドネシアがJ-10を既存のラファールと並行して調達することを決定すれば、両戦闘機を同時に運用する唯一の国となり、中国と西側の航空戦闘システムの性能比較に関するユニークな運用上の洞察が得られることになる。

 インドネシアは歴史的に多様な防衛調達アプローチを維持してきており、アメリカのF-16、ロシアのSu-27/30、イギリスのエアロスペース・ホークなど複数サプライヤーから戦闘機を調達して運用してきた。しかし、現在の状況は、ロシア、フランス、中国のメーカーが同時にアクティブなプログラムを実施するという、前例のないレベルのサプライヤーの多様性を生み出すことになる。

 既存のラファール戦闘機にJ-10とSu-35戦闘機が加わる可能性があれば、予算と運用面で大きな課題が生じる。すでに24機のラファールがコミットされており、中国とロシアの戦闘機を追加することは、インドネシアの戦闘機近代化プログラムの大規模な拡大を意味する。66機のカナード・デルタ戦闘機を擁するインドネシア空軍Tentara Nasional Indonesia Angkatan Udaraは、地域で強力な戦力として台頭するだろう。

 ロジスティクスも同様に複雑だ。ロシアのSu-35をフランスのラファールや中国のJ-10と一緒に運用するには、訓練パイプライン、整備施設、予備部品在庫、兵器システムを別々に用意する必要がある。このマルチサプライヤー・アプローチは、戦略的な自律性を提供する一方で、運用の複雑さとコストを大幅に増加させるだろう。

 J-10とSu-35の調達を進めるという決定は、インドネシアが、西側サプライヤーとの実質的なコミットメントを維持しながらも、防衛近代化目標を追求するために米国の制裁圧力に挑戦する意思を示すものである。 この動きは、中国やロシアとの関係を強化する一方で、アメリカやフランスのパートナーとの関係を複雑にする可能性がある。

 この最新の動きは、インドネシアによる数十億ドル規模のF-15EXプログラムの追求を事実上終わらせるものであり、トランプ政権下での米国の防衛輸出で重大な後退を意味する。インドネシアの決定は、ボーイングの現地製造能力の拡大とサプライチェーン統合の計画に影響を与え、ダッソー・アビアシオンとの長期的なラファールパートナーシップの軌道にも影響を与える可能性がある。

 この動きは、進化する世界の防衛市場と変化する同盟構造を背景としている。インドネシアのアプローチは、競合する大国との関係を管理しながら、戦略的な自主性を求める中堅国のより広範な傾向を反映している。同国は、最大限の戦略的柔軟性を維持するために、4つの主要サプライヤーの戦闘機を同時に運用することの複雑さとコストをあえて受け入れる意思があるようだ。

 インド・ディフェンス・エキスポでの両発表のタイミングは、国際的な防衛産業の代表やメディアが出席する、注目度の高い発表の場となる。■



Indonesia revives abandoned Su-35 deal, adds Chinese J-10s

Posted on May 27, 2025 by alert5

https://alert5.com/2025/05/27/indonesia-revives-abandoned-su-35-deal-adds-chinese-j-10s/



2025年2月4日火曜日

テヘランがロシアからのSu-35購入を確認した(Aviation Week)―イスラエルの巧みな攻撃で防空網が機能しないことを露呈したための措置でしょう。イランがイスラエルを敵視している限りこのいたちごっこは終わりません

 

Su-35




ランはロシア製のSu-35多機能戦闘機の購入に合意したと軍高官が語った。

 イラン軍ハタム・アル・アンビーヤ中央本部の副調整官L・アリ・シャドマーニ准将が1月27日、地元の軍系メディアDefaPressに語った。同副調整官は、航空機を何機取得するのかは明言しなかった。

 イランはその後、Su-35への言及を削除し、情報公開を濁そうとした。モスクワの防衛シンクタンク、戦略・技術分析センター(CAST)の研究者、ユーリ・リャミンは、問題部分の言及はグーグルのキャッシュに残っていると指摘した。

 シャドマーニの発表は、テヘランがロシア製戦闘機を購入することを初めて公式に確認したものである。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、この問題についてのコメントを避けた。

 この取引は、国連の対イラン武器禁輸措置が2020年に解除されて可能となった。イランの国連ミッションによると、この購入は2023年にテヘランによって技術的に承認されたという。 Su-35の到着に備えイランはロシア空軍が大型のスホーイ戦闘機を操縦するパイロットを訓練するために使用しているヤコブレフYak-130新型ジェット練習機を購入することに同意した。

 CASTのリャミンは、イランは新しい航空機を隠すことに長けていると言う。最初のYak-130のペアは2023年9月にイスファハンで飛行していた。2024年12月に掲載された写真によると、テヘランはすでに少なくとも6機を受領していた。

 CASTのディレクターであるルスラン・プホフは、イランへのSu-35の納入は、ロシアの航空機メーカーが注文に応じ始めることができる18~24カ月後に開始される可能性が高いと付け加えた。モスクワの防衛産業は、ウクライナとの戦争における同国のニーズに対応することに主眼を置いている。

 単座のSu-35は、フランカー・ファミリーの中で最も洗練された中期のアップグレードであり、推力ベクトルAL-41F1Sエンジン、新しいエイビオニクス、N035イルビス・パッシブ・フェーズドアレイ・レーダーを搭載している。この戦闘機の導入は、イスラム革命前のノースロップF-5やF-14戦闘機、ロシア製MiG-29の在庫に依存しているイラン空軍の戦闘能力を大幅に向上させるだろう。

 1月26日、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)も大規模な軍事演習で、ガザと名付けられた新型の超重量級ドローンを披露した。

 IRNA通信によると、この無人偵察機は翼幅22m(72フィート)、離陸重量3,100kg(6,834ポンド)。機体にはプッシャープロペラが装備され、時速350キロ(218マイル)で飛行できる。ガザの無人機は少なくとも500kgの積載能力を持ち、最大13個の爆弾を搭載できる。 IRGCによると、演習中に8つの標的を攻撃することに成功したという。■


Tehran Confirms Su-35 Purchase From Russia

Aviation Week Staff January 29, 2025


https://aviationweek.com/defense/aircraft-propulsion/tehran-confirms-su-35-purchase-russia


2022年12月3日土曜日

Su-57初の実戦部隊編成に向け準備が進むロシア航空宇宙軍。ウクライナではSu-35などが安全な空域からスタンドオフ攻撃を展開中。

 

Uncredited


ロシア極東地区の歴史的な部隊が最初にSu-57を受領する

 

度も延期され、何度も災難に見舞われてきたロシアの新世代戦闘機Su-57フェロンが、前線運用に向かう。ロシア航空宇宙軍(VKS、ロシア語の頭文字)の中で、新型戦闘機を最初に受け取るのは、ロシア極東のコムソモルスク・オン・アムール近郊ディジョムギDzyomgiの第23戦闘航空連隊(Istrebitelnyi Aviatsionnyi Polk、IAP)。しかし、最新鋭機が通常の戦闘任務を遂行できるまでかなりの時間がかかりそうだ。

連隊副司令官のイリヤ・シゾフ中佐Lt. Col. Ilya Sizovは11月、東部軍管区紙「スヴォロフスキー・ナティスク」に、同隊のパイロットは現在、リペツクLipetskの乗員転換センターでSu-57の理論訓練中、と述べた。リペツクの第4航空要員準備・軍事評価センターは、戦術戦闘機の初期ロットの軍事評価を行い、パイロットに航空機の戦闘応用を訓練し、戦術を開発するのが任務だ。

シゾフ中佐は、スヴォロフスキー・ナティスクの取材に、パイロットの理論的な訓練(実践的と異なる)を言及している。23人のIAPパイロットの第一陣が、フェロンを完全に使いこなすまで長時間がかかることを示唆している。

2022年5月、リペツクに向かうSu-57二機がノボシビルスクから出発。 NSKPlanes

ディジョムギ飛行場は、23IAPとスホーイ・コムソモルスク・オン・アムール航空工場(KnAAZ)が共同使用している。かつてSu-27戦闘機を生産していたが、現在はSu-35とSu-57を生産していギる。製造工場が併設されていることで、新機種の運用サポートに適しており、製造工場から専門家が応援に駆けつけてくれる。そのため、1985年にSu-27戦闘機を、2014年にSu-35Sを、そして2023年にはSu-57をディジョムギ連隊が最初に受領している。

ディジョムギ飛行場は、23IAPとコムソモリスク・オン・アムール航空工場が使用している。 Google Earth

Su-57は何機あるのか?

2010年から2017年にかけ生産されたSu-57(旧名T-50)の試験10機を経て、2018年8月22日、スホイはVKSから量産前機体を、2019年と2020年に2機受注した。うちの1機は、2019年12月24日の引き渡し飛行中に、飛行制御システムの不具合で墜落した。1年後の2020年12月、尾翼番号「01」の2号機は、ロシア軍に正式に引き渡された最初のSu-57となり、アクチュビンスクのロシア国防省第929国家飛行試験センターに配備された。

コムソモルスク・オン・アムールからアクチュビンスクへのデリバリーフライトのために準備されるSu-57。 Russia 1 TV

Su-57の大口受注は2019年6月27日、国防省が2021年から2027年にかけ納入予定の76機の契約を締結したことによる。スケジュールでは、2021年と2022年に各4機、その後2023年と2024年に毎年7機、そして2025年、2026年、2027年に各18機の生産の予定だった。最初の4機はリペツクの乗員転換センターに引き渡され、24機ずつの3つの作戦連隊が完成する予定であった。

Su-57プログラムの多くと同様に、計画の実施もまた遅れた。2021年生産の最初の2機(「02」と「52」)は同年2月に、残りの2機(「53」と「54」)は2022年5月に引き渡された。つまり、軍は現在5機を保有しており、「01」「02」はアクチュビンスクに、「52」「53」「54」はリペツクにある。2022年に計画され、ディジョムギの連隊のために用意される4機は、おそらく2023年の初めに用意されることになるだろう。

 

初期シリーズのSu-57「01」、2021年1月、アクチュビンスクにて。 Russian Ministry of Defense

シリーズ生産と並行し、機体改良も行われている。2022年10月21日、Su-57「511」(T-50-11)が近代化後の飛行試験を開始した(原型は2017年8月6日に初飛行した)。公式発表によると、「機能拡張、知的乗員支援、幅広い新型兵器の使用可能性を備えた搭載機器一式がテストされた。また、第2段エンジンの搭載も可能である」とある。全体として、近代化の範囲はあまり野心的なものではなさそうだ。特に、提案の完全近代化型Su-57M用の新型エンジン「イズデリー30」は、量産機搭載はおろか、試験運用を開始する準備すら整っていない。

Su-57の大口受注は2019年6月27日、国防省が2021年から2027年の間に納入を予定する76機の戦闘機を受注した。スケジュールでは、2021年と2022年にそれぞれ4機、その後2023年と2024年にそれぞれ7機、そして2025年、2026年、2027年にそれぞれ18機の生産が予定されていた。最初の4機はリペツクの乗員転換センターに引き渡され、残りの1機で24機ずつの3つの作戦連隊が完成する予定であった。

Su-57プログラムの多くと同様に、これらの計画の実施もまた遅れた。2021年生産の最初の2機(「02」と「52」)は同年2月に、残りの2機(「53」と「54」)は2022年5月に引き渡された。つまり、軍は現在5機を保有しており、「01」「02」はアクチュビンスクに、「52」「53」「54」はリペツクにある。2022年に計画され、ディジョムギの連隊向けの4機は、おそらく2023年初めに用意されることになるだろう。

2022年10月21日、アップグレード後の初飛行の準備が整った試験機T-50-11。同機は装備を近代化し、将来的に新型のイズデリイ30エンジンを搭載することが可能。ユナイテッド・エアクラフト社

ロシア国営メディアは、ウクライナ戦争でSu-57を使用すると何度か報じており、10月には、ロシア侵攻作戦の総指揮官セルゲイ・スロヴィキン大将 Gen. Sergey Surovikinが、Su-57について「幅広い兵器を持ち、出撃ごとに空と地上目標の破壊で多面的なタスクを解決する」と発言している。ただしSu-57がウクライナ上空を飛行していないのはほぼ確実だ。ロシアがそのようなリスクを冒す理由はない。もしフェロンが使われたのであれば、ロシア国内奥深くから長距離ミサイルを発射したことになる。

全体として、Su-57の生産と開発の予測は難しい。2022年2月24日のウクライナ侵攻以来、ロシアはまったく新しい政治的・経済的状況に置かれていることに気づかされている。しかし、さらなる遅れが戦闘機に影響を与えることは間違いない。一方、Su-57E輸出版が成功を収める可能性はさらに低くなった。この機体の売り込みは、2018年以来、失敗に終わったままだ。

由緒ある戦闘機部隊

ディジョムギ戦闘機連隊(名前は地元のナナイ語で「白樺の林」を意味する)は、1939年8月に60IAPとして結成された。最初はI-16、次にYak-9(1945年~)、MiG-15(1951年)、MiG-17とYak-25(1955~56年)、Su-15(1969年)、そして1985年からSu-27戦闘機が使用された。2000年には、数ヶ月前に解散したオルロフカの404IAPの人員とSu-27機が、ディジョムギの第60連隊に組み込まれ、同時に部隊名称も23IAPに改められた。

2009年7月、ディジョムギでの第一世代Su-27フランカーB。Vladimir Galkin/Wikimedia Commons

現在、第23連隊はSu-35S単座戦闘機の2個飛行隊(ロシアにおける戦闘機飛行隊は12機で構成)と少数のSu-30SM複座戦闘機の訓練用を保有している。第23連隊はディジョムギ基地に加えて、戦略的に重要な千島列島のイトゥルップ(エトロフ)島にあるヤスニ飛行場にも分遣隊(通常3機のSu-35S戦闘機)を維持している。

ウクライナ戦争における第23次IAP

23 IAPにとって、対ウクライナ作戦への関与は侵攻1カ月前に始まった。2022年1月の末日、Su-35S12機とSu-30SM数機が、ベラルーシのバラナヴィチー空軍基地に到着した。Su-35S戦闘機はツェントラルナヤ・ウグロバヤの22IAPとディジョムギの23IAPから、Su-30SM戦闘機はドムナの第120独立戦闘航空連隊から、3部隊ともロシア極東の空軍・航空防衛第11軍に属している。

戦闘機は、2月10日から20日まで行われた「連合決起2022(Soyuznaja Reshimost)」と呼ばれるロシアとベラルーシの合同軍事演習への参加を口実で、ベラルーシに到着した。ベラルーシ到着後のフランカーは、混成航空団に編成され、その司令官は23IAP司令官のアレクサンダー・ロビンツェフ大佐であった。

2022年2月、ベラルーシのバラナヴィチを離陸するSu-35Sは、可視距離を超えるR-77-1と近接戦闘用のR-73 AAMを装備している。戦闘地域で活動するすべてのフランカー派生機は、翼端にキビニー・ジャミング・ポッドを搭載している。 Russian Ministry of Defense

各機は演習後もベラルーシに留まり、初日から侵攻作戦に参加した。春、キエフ地方での作戦が失敗に終わり、ロシア軍が撤退した後、バラナヴィチのSu-35SとSu-30SM戦闘機はロシアのボロネジ、Su-34フルバック攻撃機を飛ばす第47爆撃機航空連隊の飛行場へ移動した。同地に駐留し、ウクライナ東部国境に近づいた。

Su-35S戦闘機が、ウクライナ軍の支配地域上空を飛ぶことは非常に稀である。例えば、バラナヴィーチーで作戦行動中に、ロシアの戦闘機はA-50メインステイ空中早期警戒機が示したウクライナ機にミサイルを発射したが、一貫してベラルーシ領空内にいた。

同じ状況が東部で続いている。Su-35Sは、ウクライナ戦闘機が使用するR-27(AA-10アラモ)ミサイルに対し、R-77-1(AA-12アダー)、特に124マイル射程のR-37M(AA-13アックスヘッド)空対空ミサイルの優れた能力を活用している。

Su-35Sの翼下にある射程124マイルの空対空ミサイルR-37M。 Fighterbomber Telegram channel

非常に厳しい防空環境で活動することが多いロシアのSu-25フロッグフット攻撃機やSu-34の損失が多いのに比べ、Su-35S戦闘機の損失が少ないことがこれで説明できそうだ。ウクライナ上空でのSu-35Sの損失は1機のみだ。同機はベソベツの159IAPの機体で、2022年4月3日にイジュム付近で撃墜された。

11月1日、ズベズダTVZvezda TV(ロシア国防省系チャンネル)は、パイロットが「長距離ミサイルでウクライナ軍機を撃墜した」と説明する映像を、兵器を特定せず放映した。背景には、エンジン間にR-37Mミサイルを2発タンデムに、エアインテーク下にR-77-1を2発、翼下に短距離用R-73(AA-11アーチャー)を2発、翼下にKh-31PM(AS-17クリプトン)対放射線ミサイルを1発装備したSu-35S戦闘機が映っていた。

自衛のために使用されるKh-31P/PM対射ミサイルは、ウクライナ作戦に投入中のSu-35S戦闘機で一般的な武器だ。通常、Su-35Sは標準装備の空対空ミサイルに加え、地上からの対空脅威に備えKh-31PまたはPMを1発搭載している。パイロットは危険地帯に入る前に、ミサイルのパッシブレーダーシーカーを作動させる。そして、シーカーが敵の地上防空システムの火器管制レーダーを検知すると、Kh-31P/PMミサイルが自動発射される。ロシア国防省が公開したビデオでは、Kh-31の使用方法について、パイロットが「ミサイルは敵の防空システムの放射を検知し、ターゲットを認識・捕捉した後に発射する」と語っている。パイロットは続ける。「ミサイルは素早く信号を捕らえ、距離を計算する。捕捉から発射まで数秒です」。

Su-35S戦闘機がウクライナのターゲットに対して大型の滑空弾を使用している。ボロネジ基地のビデオでは、Su-35Sの1機が3,300ポンドの大型UPAB-1500B爆弾を2発搭載し、別の1機は1,000ポンドの小さいKAB-500M爆弾を4個搭載している姿が映っている。UPAB-1500B爆弾は、飛び出す翼のおかげで、最大31マイルの射程距離を持ち、KAB-500M爆弾は最大25マイルのターゲットを攻撃する。両爆弾とも衛星補正付き慣性航法で誘導され、現在のバージョンではターミナル・ホーミングはない。KAB-500M爆弾とUPAB-1500B爆弾は2019年ごろから生産されている。

ウクライナ侵攻への参加により、23IAPは最近、ロシアで軍部隊で最高の栄誉を受けた。11月17日、ウラジーミル・プーチン大統領は同連隊に衛兵の称号を授与した。また、連隊のパイロットであるヴィクトール・ドゥディン中佐とイリヤ・シゾフ中佐は、ロシア連邦英雄というロシアで最高の個人栄誉を受けた。

23IAPがウクライナ空戦で主導的な役割を果たし続け、航空機と搭乗員は需要がある限り戦闘地域にローテーションされるという兆候はあるが、同部隊がSu-57をいつ本格運用に移すかを予測するのははるかに困難だ。

パイロット第一陣はまだ新世代戦闘機の飛行を開始していないようで、ディジョムギがロシアの最新戦闘機の運用を宣言するまでには、まだかなりの時間がかかると思われる。一方で、ウクライナ戦争の影響で、制裁によるハイテク部品の生産・輸入の制限や、ロシア航空宇宙軍でより緊急な要件にリソースを割り当てる必要性など、Su-57プログラムがこれまで直面してきた困難は、さらに深刻になる可能性がある。■

 

Su-57 Felon To Enter Service With Elite Russian Air Force Unit

BYPIOTR BUTOWSKI|PUBLISHED DEC 1, 2022 2:07 PM

THE WAR ZONE


2020年7月4日土曜日

未だに戦力を誇るSu-27フランカーファミリーの見分け方



Su-27SM、Su-30SMはともに頑丈な機体で長期間供用に耐える。両機とも製造は安価にでき、性能は新型Su-35と比べても遜色ない。

ロシア戦闘機ではSu-35が最高性能機とされるが、ロシア空軍の機材は大多数が旧式各型だ。国際戦略研究所(IISS)の「2018年度版軍事力バランス」ではロシアは旧型フランカー220機近くを運行し、Su-35Sが70機なので3倍の規模だ。「旧型」フランカーと言っても多様な機種があり、Su-27原型以外に改修型SMの他、複座型もある。だが旧型フランカーは今でも威力があるのか。一部はSu-35Sの性能に匹敵するのだろうか。

まずIISSが50機あるとする初期フランカーとは1985年に供用開始したSu-27Sのことだ。その他、複座型Su-27UBが10機ある。各機のレーダーはあまりにも旧式で現在の戦闘機と比べ見劣りがする。

Su-27Sだけがセミアクティブレーダーホーミングミサイルを発射できるが、R-27ミサイルの飛翔中は機首を標的に向けたままにする必要がある。R-27ERは射程が伸び、中間誘導機能がつくものの同機は最新の空対空戦術で用いるアクテイブレーダーホーミングミサイルは使用できない。

ただし近接距離でのドッグファイトとなれば機体の頑丈さとヘルメット搭載視野表示装置、さらにR-73ミサイルが強みを発揮する。オフボアサイト対応可能な赤外線ミサイルロッキングは登場当初こそ革命的と言われたが、その後登場の米機にはAIM-9Xと共用ヘルメット搭載照準システム(JHMCS)がつき、Su-27Sより幅広い角度で敵機をロックアップし撃破できる。

フランカーで初めて多任務機になったのはSu-27SMで47機ある。近代化改修機材として2003年登場した。近代化は大部分がエイビオニクス改修で既存装備の性能を引き上げた。

地図機能が追加され、誘導空対空兵装にはKABレーザー誘導爆弾、Kh-29型ミサイルが加わった。アクティブレーダーホーミング方式のR-77ミサイルも導入された。エンジンを新型に切り替える近代化改修が2007年から始まっている。

改修によりSu-27SMは真の多任務機となり、低費用で応急しのぎの改修を行ったと言える。さらに本格的改修を行ったのがSu-27SM3で14機が供用中だ。同機は近代化に加え、SM3標準で作り込まれた機体で、中国用に想定していた機体から製造したと解説する向きがある。Su-27SM3はそれまで輸出用フランカーだけが使っていた技術多数を採用している。

Su-27SM3には強力なイルビスEレーダーが搭載され、Su-35Sと共通する。新型エンジンは推力を上げ、航続距離が伸びた。ハードポイントは追加して合計12点になった。機体剛性を高め3トンに及ぶ追加装備の運用を可能にした。

コックピットもSu-27SM3で大幅に近代化し、多機能ディスプレイ4面とし、Su-27各型の古臭いダイアル式計器盤と好対照だ。さらに新型通信装置で安全に通信できるようになった。

Su-27単座機の流れではSu-27SM3が最高性能の機体だ。ロシアにはさらに高性能の複座型Su-30があり、それはSu-30M2とSu-30SMだ。

Su-30各型はほぼSM3に匹敵する高性能戦闘機だ。空対地兵装を搭載し、MFDをコックピットに導入し、エンジンは改良型で推力偏向効果により一定の条件では操縦性がさらに高まった。Su-30でも兵装用ハードポイントが12箇所あるが、イルビス-Eレーダーは積まず、長距離交戦能力は劣る。

Su-35Sは無論、こうした機材と一線を画す機体で、推力偏向性能を高めたエンジン双発、イルビス-Eレーダー、新鋭コックピットがあり、ロシアの空対地兵器すべてを運用できる。

各型の近代改修には利点もある。Su-27SM3はSu-35よりずっと安価ながら事実上同じ水準の長距離戦闘能力を有する。Su-30はパイロット間で負担を分担し、対地攻撃に威力を発揮するだろう。

ひとつ問題なのは新設計のSu-30M2、SM、Su-27M3はフランカーの半分を占めるにすぎず、残る半分がSu-27S、SM、UBの各型で性能は相当落ちる。ただしこれも時間がかかるが解決に向かうだろう。新型Su-57の供用がはじまっているからだ。■

この記事は以下を再構成したものです

June 28, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Reboot  



2019年8月17日土曜日

中国がロシアからSu-35完成機の輸入を続ける理由について


Why Does a Superpower Like China Need Russia's Su-35 Fighter Jet?

Simple. 
August 11, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35Su-35MilitaryTechnologyWorld

性能ステルス戦闘機を開発中と自慢する中国にロシアからの軍用機調達が必要と言うのはどういうわけか。
モスクワからSu-35戦闘機の追加販売申し出があり、中国メディアは北京がこれを了承する可能性があると報じている。
中国はSu-35を24機導入済みだ。冷戦時のSu-27フランカーを性能改修した同機の販売規模は2015年当時で25億ドル相当とTASS通信が伝えていた。「ロシア製新規兵器、軍事装備品の販売としてSu-35の追加販売を提示している」とロシアの軍事装備品輸出組織が同通信に語っていた。
その二日後に中国の軍事TVチャンネルから旧型機更新のためSu-35追加購入に向かうと伝えた。中国には軍用機3千機近くと米空軍に匹敵する機数があるが、うち1,700機が戦闘機だ。だが大半は冷戦時の老朽機材でロシアのMiG-21をコピーした機材も数百機含まれる。このため中国が第5世代機のJ-20を配備しても人民解放軍空軍には旧型機多数の運用で課題が残る。
国家統制を受ける環球時報も中国軍事筋の話としてSu-35導入には別の理由があると伝えている。それによればSu-35追加購入は旧型機の代替用ではない。代替用機材は国産機になるはずというのだ。
「Su-35を購入しても中国には同機の技術面から学ぶ側面は多くない」と同筋は述べる。購入は中露の関係強化のため政治経済的な意味があるという。つまり中国の購入でロシア航空工業が潤うというのだ。
この指摘は的を得ている。各国の空軍は第二次大戦から冷戦にかけての大量機材運用から少数ながら高性能かつ高価な軍用機の整備に方向を切り替えている。もし中国がSu-35を24機購入した際の価格が25億ドルならJ-7やJ-8数百機をそのまま買い換えれば財政的に破滅してしまうし、数の上で過剰調達となる。だが関心を呼ぶのはSu-35調達がロシア航空産業界を支えるとの論調であり、ロシアは経済は不振だが軍事研究・生産能力には依然高いものがある国だ。
それでも中国が経済力の高まりと軍事力の増強を誇示していることからまたステルス戦闘機含む高性能装備品を開発する力があることから、中国が軍用機、ジェットエンジン、対空ミサイル他を輸入する必要を感じていることに驚きを感じ得ない。中国のGDPはロシアの9倍近くになっている。
現時点では中国がロシア戦闘機を輸入することは理屈に合う。両国はかつて国境問題で戦っており、共産ブロックの覇者をめぐっても対立したものの現在は友好関係を享受している。だが中国の野心を考えると、一部には中国は自国調達に向かうはずと指摘する見方もある。■


Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook

2018年1月25日木曜日

インドネシア空軍向け戦闘機調達の最新動向

ロシア製機材が米国製機材と混じるのはインドネシア、マレーシアに共通ですが、運用上は大変でしょうね。しかし、ロシアへの購入条件提示を見ているとこういう国とは商売したくなるなるのでは。経済急成長中と言われるインドネシアですが国家財政は貧弱なのですね。


Aerospace Daily & Defense ReportIndonesia Shopping For Western Fighters

 インドネシアが西側戦闘機導入を検討中


Typhoon: Eurofighter


Jan 23, 2018 Marhalim Abas | Aerospace Daily & Defense Report


ンドネシアが西側メーカー数社と戦闘機調達を商談中で、候補はユーロファイター・タイフーンとロッキード・マーティンF-16Vが有望だと同国業界筋二名から判明した。
 Saabグリペンとダッソー・ラファールも候補で両社はジャカルタに事務所を置く。調達規模は不明だが、インドネシア空軍の戦闘機飛行隊定数の16機の倍数となるのは確実だ。
 内部筋の一人目は商談は昨年に始まり、タイフーンが有力とみている。
 空軍がF-16を推すのは同型機を運用中のためと別の内部筋が語る。両名とも軍部とのつながりが強い。
 ロッキード・マーティンはF-16Vにプラット&ホイットニーF100-PW-229エンジンを搭載し提案中だという。インドネシア空軍は同エンジンを搭載した32機を運用中だ。ロッキード案で訓練費用、補給費用が下がりそうだ。
 ロッキード・マーティンのインドネシア政府・空軍向けプレゼンでは現行の新規生産F-16C/D23機、およびF-16A/B9機をV規格にアップグレードし、レーダーやエイビオニクスを新型に換装するとある。
 ミサイル、爆弾、照準ポッドなど購入済み装備はそのまま使えるので調達コストが節約できると同社はインドネシア側に訴える。
 インドネシア空軍は2024年までに戦闘機180機体制をめざしていたが目標達成は険しい。現在は48機供用中で、スホイSu-35を11機発注中。
 西側戦闘機を発注してもSu-35発注に影響はないと見られる。ロシアとは契約書調印一歩手前にある。
 同国は米国製武器の禁輸措置を20年前に受けた経緯があり、Su-35調達は利点があり、非西側の供給を受けるほうが良いとの主張もある。
 Su-35選定は2015年のことでF-5Eタイガーの後継機としてであるが、その後も西側メーカー数社がインドネシアに戦闘機売り込みを図ってきた。
 2017年7月にインドネシアはSu-35導入を総額11.4億ドルと発表している。うち、5.7億ドルはロシア向け各種輸出で清算し、残る35%を相殺支払いするとしていたが、いまだ契約書が発効していない。

 F-16以外に空軍には旧型フランカーSu-27とSu-30がある。1月18日にF-16C/D改修型の最終号機が現地到着した。F-5Eは用途廃止済みだ。■