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2025年7月22日火曜日

水上艦艇に原子力推進を大幅採用する機運がやってきた(USNI Proceedings)

 


USS Gerald R. Ford

USSジェラルド・R・フォード(CVN 78)とUSSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN 77)が並走する。原子力推進は、空母以外の水上艦隊にも可能性を秘めてきた。(マックスウェル・オルロスキー)


子力推進は、一貫して水上艦隊にとって可能性を秘めてきた。新世代の原子力水上戦闘艦は、物流上の弱点を克服する。航続距離、戦術的柔軟性、武器能力を向上させる。潜在的な利益は巨大であり、米国が完全な原子力水上艦隊を検討すべきか否かの議論は定期的に再浮上してきた。しかし、コストが障害となっている——過去の提案は、原子力水上艦の建造コストが大幅に高いことから却下されてきた。


現在、状況は異なっている。コストの差は以前ほど大きくない可能性があり、新たな国家的な優先課題が海軍力の包括的な再検討を促している。造船への重点的な取り組み、海洋優位の優先、大国間競争を考慮すると、米国が原子力水上艦隊の建造へ踏み切るべきか再考することには価値がある。


艦隊の原子力推進が進まなかった理由


2007年と2014年のに掲載された『Proceedings』誌の優れた論文は、水上艦隊の原子力化に関する歴史的な議論を跡付けている。原子力水上戦闘艦の経済的根拠は数十年間決定的だった。コストは莫大で、運用・維持費の高さ、目を疑う中間燃料交換費用、新たな原子炉タイプの開発コストが含まれていた。


海軍の造船政策も、従来型動力艦の建造継続を優先してきた。アーレイ・バーク級駆逐艦プログラムは、予測可能なコストで能力を向上させた艦艇を供給してきた調達成功事例だ。このプログラムは、従来型動力から変更されることはなかった。CG(X)プログラムで原子力推進が検討されたが、このプログラムは中止された。FFG(X)(現在はコンステレーション級)のようなフリゲートは、原子炉を搭載するには小さすぎると判断されている。


さらに、原子力艦建造のインフラは、空母と潜水艦プログラムに完全に割り当てられていた。米国で原子力推進艦を建造できる造船所は、コネチカット州グロトンにあるエレクトリック・ボートと、ヴァージニア州のニューポート・ニュース・シップビルディングの2か所のみだ。原子力水上艦隊の建造を拡大するには、他の造船所で進行中のプログラムから能力を転用するか、新たなインフラに多額の投資を行う必要がある。


冷戦の終結で原子力水上艦隊の重要性がさらに低下した。ソ連の海洋挑戦がなくなったため、米国の海上輸送能力や物流ネットワークが脅かされる可能性を主張するのは困難となった。地域テロリズムの台頭により、米国の焦点は広大な海洋から地域的な緊急事態に移った。この重点シフトは、沿海域戦闘艦(LCS)のような艦艇の採用を促し、従来型推進システムで十分と判断された。


この期間中、海軍システムでのエナジー需要は、従来型推進システムが対応可能な範囲内に留まっていた。ガスタービン発電機は、イージスシステムを含む戦闘システムに必要な電力を信頼性高く供給できた。ただ従来型推進システムの能力を超えるエナジー需要がなかったため、原子力推進の必要性は弱いままで、原子力推進採用の根拠は薄弱だった。


港湾アクセスに関する考慮も原子力拡大に反対する要因だった。多くの国、同盟国を含む多くの国は、原子力推進艦の入港を厳格に規制し、一部は完全に禁止している。巡洋艦や駆逐艦のような、外交的な目的で港湾訪問を頻繁に行う艦艇にとって、こうした制限は運用上の大きな制約となった。このリストに人員不足、維持管理要件、その他の要因が追加される可能性がある。


原子力と海洋の新しい現実


原子力推進は安価ではない。しかし、技術革新の進展は、その経済的実現可能性を向上させる可能性がある。かつては莫大なコストだったものが、現在では正当な投資として戦略的な価値を持つ可能性がある。


すべては原子炉自体から始まる。第4世代原子炉技術は経済的制約を根本から変革する。イギリスが水上戦闘艦向けに開発中の先進小型モジュール型原子炉は、従来の海軍用原子炉と比較して、調達コスト、維持管理プロファイル、運用経済性において優位性がある。これらの設計は、原子力水上艦のコストを大幅に削減または排除する中間寿命時の燃料交換作業を大幅に削減または排除する。イギリス国防省の初期分析によると、原子力艦のライフサイクルコストは、従来の推進システムと比べて僅かに高い程度に抑えられる可能性がある。イギリスは既に第4世代原子炉を開発中で、あと数年で試験を実施する計画だ。


新しい原子炉の設計、試験、配備に関するコスト面でも前向きな進展がある。AUKUSパートナーシップは、アメリカが英豪両国と開発コストを分担する可能性を秘めた技術共有の機会となった。AUKUSは信頼できる同盟国間の生産協力の深化を促進し、これまで米国が独占的に負担してきた原子力認定造船所の産業基盤の負担を分散させる可能性がある。これらの造船所を拡大するか、新たな造船所を追加する必要はほぼ確実だが、AUKUSのインフラ整備による分散効果はコスト削減をもたらす可能性がある。


さらに、米国はSSN(X)プログラム向けに新たな原子炉設計をほぼ確実に追求するだろう。この原子炉は、大型水上艦艇および将来の潜水艦に適合するように設計される可能性がある。


コストは唯一の考慮事項ではない。中国の海軍の指数関数的拡大は、アメリカ国民の世界観を変え、米国の海上優位性が疑いようのないものだとする前提を揺るがしている。中国人民解放軍海軍は現在、370隻を超える戦闘艦艇を擁する世界最大の艦隊を指揮している。


より懸念すべきは、海上物流網を標的とした中国の体系的な戦略だ。中国は、米国のサプライチェーンを混乱させるための専用能力を開発している。中国の対艦弾道ミサイル、長距離爆撃機、拡大する潜水艦部隊は、米国と同等の装備と正面から対峙した場合に敗北する可能性があるが、数的な優位性を活用しタンカーや物流艦を標的とする戦略は前線での存在感を維持しつつ効果的に防御するのを米国に困難させる。


重要な考慮点は、電力の可用性が技術に与える制約だ。高度な兵器システムの電力需要は、新たな運用上および経済上の課題を提起している。海軍の指向性エナジー兵器ロードマップでは、現在の60キロワット級デモ機から2030年代までにメガワット級システムへの拡大が想定されている。電磁レールガンは1発あたり32~64メガジュールを必要とし、戦術シナリオでは1分間に数発の発射が求められる。従来のバッテリーシステムと電力貯蔵装置を備えた艦艇でこれらの兵器を運用することは不可能だろう。


例えば、駆逐艦がミサイル、ドローン群、電子戦に対抗しつつ、同時に攻撃任務を迫られるシナリオを想定してほしい。高エナジー兵器はこのような状況で決定的な優位性を発揮する。指向性エナジーシステムは弾薬数の制限なしに高速で接近するミサイルやドローンを撃墜でき、レールガンは爆発性弾薬に依存せずに地平線越えの火力支援を提供できる。このような戦闘は数日に及ぶ可能性がある。通常型動力プラントは、指揮官に機動性、防御システム、耐久性、攻撃能力の間で痛みを伴うトレードオフを強いる。一方、原子力推進艦は、戦術速度と位置を維持しつつ、すべてのシステムを同時に最大出力で稼働させることができる。海軍大学校での実戦シミュレーションが繰り返し示しているように、高強度紛争ではエナジー制約が能力制約に直結する。


最後に、港湾アクセスに関する外交上の考慮は、以前ほど問題ではない。再び、AUKUSの先例は、原子力技術がより広範な同盟枠組みに統合可能であることを示しており、強化された安全プロトコルや外交的合意を通じて伝統的な港湾制限を緩和する可能性がある。安全機能が向上した第4世代原子炉設計は、港湾制限をさらに削減または廃止する可能性がある。これらの艦艇を就役させる前に、他国との合意を事前に確立することが可能だ。


電力は戦力の基盤である


経済的、戦略的、作戦的、技術的、同盟関係の要因が交差する中で、水上戦闘艦における原子力推進の採用は、過去の議論では存在しなかった新たな説得力のあるケースを提示している。これまで原子力水上戦闘艦を現実的でないものとしていたコストの壁は大幅に低下し、戦略的・作戦上のメリットは劇的に増加している。


DDG(X)プログラムが原子力推進に最適なプラットフォームとなる可能性がある。アーレイ・バーク級駆逐艦と退役したタィコンデロガ級巡洋艦の後継として計画中のDDG(X)は、高出力兵器システムを搭載しつつ、戦闘環境下での長距離航行能力が求められる。12,000トンを超える排水量、先送りされた開発スケジュール(最初の艦の引き渡しは2030年代半ばに予定)、および米国の主力水上戦闘艦としての役割を考慮すると、DDG(X)は第4世代海軍原子炉の成熟サイクルと完全に一致する。


どこから始めるかにかかわらず、水上艦隊に原子力推進を採用する強い理由がある。他の要因によって問題は複雑になるかもしれないが、電力そのものは根本的な問題だ。石油が米国の海軍力の生命線である限り、それは敵が狙う明らかな弱点となる。最も重要な問題は、原子力推進が通常動力源に比べ水上艦艇にとって高すぎるかどうかではなく、米国が海洋の重心として石油を受け入れ続けることができるかどうかだ。■


Is It Finally Time to Expand the Nuclear Surface Fleet?

By Lieutenant Commander Jordan Spector, U.S. Navy

July 2025 Proceedings Vol. 151/7/1,469

https://www.usni.org/magazines/proceedings/2025/july/it-finally-time-expand-nuclear-surface-fleet


ジョーダン・スペクター


スペクター中佐は、SEAL 隊員であり、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際研究大学院の政治軍事フェローだ。海軍大学院で音響工学の修士号を取得しています。AFRICOM、CENTCOM、EUCOM、INDOPACOM に何度も派遣されています。  




2025年7月19日土曜日

米海軍の次世代駆逐艦はミサイルとエナジー兵器をさらに搭載市大型化する(Defense News)— 米国は艦艇建造の産業力をまず強化する必要がありますね。ただし、アーレイ・バーク級は例外的に順調に量産されていました



DDG(X)の現在の想定図—当然ながらこの通りになる保証はありません



海軍は、DDG(X)として知られている次世代駆逐艦に、指向性エナジー兵器を搭載し、ミサイルを搭載・発射する能力を高める計画だ。

 米議会調査局が今月発表した報告書によると、海軍は2030年代初頭に調達をめざすDDG(X)をの研究開発費として、2026年度予算案に1億3350万ドルを要求している。

 DDG(X)は、以前の提案より大型化され、報告書では、2024年度の海軍の造船計画で提示された設計から1,000トン増となる排水量14,500トンを要求していると指摘している。

 報告書は、大型化が小型艦を特徴とする近代化艦隊への移行という海軍の目的と整合するのか疑問視している。

 艦隊の近代化とコスト削減のため、国防総省は自律型艦艇に目を向けており、海軍は最近、バルト海での大規模演習に小型無人水上艦艇を統合した。

 DDG(X)は、タイコンデロガ級巡洋艦やアーレイ・バーク級駆逐艦を含む「イージス駆逐艦」と呼ばれる艦艇を置き換える。 イージス駆逐艦は、海軍が「高度な空と地表の脅威から防衛するために構築された初の完全統合戦闘システム」と説明するイージス戦闘システムを搭載している。

 イージス艦の最初のバージョンは1973年に運用試験され、イージス艦を搭載した最初の巡洋艦タイコンデロガは1983年に就役した。 アーレイ・バーク級は、イージスシステムを更新した小型駆逐艦として誕生し、1番艦は1991年に就役した。

 1978年度から1988年度にかけて調達されたタイコンデロガ級巡洋艦は、1983年から1994年の間に就役した艦を含め、現在も22隻が米艦隊に配備されている。

 CRS報告書によれば、「海軍は2022年度に残りの22隻の退役を開始し、2027年度末までに全隻を退役させたい」という。

 過去の駆逐艦と同様に、DDG(X)はイージス戦闘システムの設計要素を特徴とする。 DDG(X)は航続距離を伸ばし、標準的な垂直発射システムセルを96基搭載し、うち32基を12基のミサイル発射セルに置き換えることができる。

 また、指向性エナジー兵器の配備をサポートするパワーシステムも搭載される。 指向性エナジー兵器とは、電磁エナジーを使ってダメージを与える兵器で、レーザー、マイクロ波、粒子ビームなどがある。

 海軍はまた、巡洋艦が海上で発生する水中ノイズを低減し、"赤外線、音響、水中電磁シグネチャーの低減による脆弱性の低減 "を期待している。■


Next-generation destroyers to pack more missiles, energy weapons

By Zita Ballinger Fletcher (Defense News)

 Jul 18, 2025, 02:42 AM

https://www.defensenews.com/naval/2025/07/17/next-generation-destroyers-to-pack-more-missiles-energy-weapons/

ジータ・バリンジャー・フレッチャーについて

ジータ・バリンジャー・フレッチャーは、『ミリタリー・ヒストリー・クォータリー』誌および『ベトナム』誌の編集者、米国麻薬取締局の歴史学者を歴任。 戦史の修士号を優秀な成績で取得。


2025年1月22日水曜日

DDG(X)次世代駆逐艦の能力とコストが固まる(The War Zone)―ことごとく新型艦の建造でトラブルとなっている米海軍があれもこれもと要求しているのでしょうが、スムーズな建造にこぎつけそうもない気がしませんか。

  

海軍の水上戦責任者は、DDG(X)では発電容量、耐久性、先進兵器を優先するのが「クリーンシートの必須条件」だと言う

DDG(X)と呼ばれている米海軍の次世代駆逐艦がコンセプト設計の段階にあるが、同軍の水上戦担当ディレクターは火曜日、将来の艦船が多様な兵器システムを搭載し、同時にほぼ前例のないレベルの発電能力を備える必要性を改めて強調した。DDG(X)は、その前身であるアーレイ・バーク級を上回るシステムやアップグレードに対応できるようにする必要がある。

海軍は、DDG(X)の取り組みが現在どんな状況にあるのかについて口を閉ざしているが、本誌が参加したSurface Navy Associationの年次会議で、ビル・デイリー少将Rear Adm. Bill Dalyがプログラムの最新情報を発表した。

「DDG(X)は、作戦上、戦術上、造船上で必要だ。「DDG(X)の設計は、耐久性、発電容量と貯蔵、C5I(コマンド、コントロール、コミュニケーション、コンピューター、サイバー、インテリジェンス)、そして極超音速や指向性エナジーなど兵器技術を更新するクリーンシートの必須事項となる。

デイリー少将は、現在の主力駆逐艦の初号艦USSアーレイ・バーク(DDG-51)が1980年代後半に建造された当時と比較して、米国の家庭が消費する電力は40%増加しており、消費量の増加は艦船にも及んでいると指摘した。この電力需要の一環として、2025会計年度の国防授権法で、海軍は40メガワットの発電システムを調査するよう求めていると述べた。

「これは、DDG(X)で、迅速に正しく実現しなければならない必要な進化です」と彼は言い、海軍は法律で義務付けられているように、陸上で推進システムのテストを進めていると付け加えた。USNIニュースは2023年に、1億2200万ドルのフルスケールのDDG(X)統合推進システムがフィラデルフィアの海軍水上戦センターでテストされると報じていた。

TWZは過去に、DDG(X)の統合動力システム(IPS)が何を提供するかを報じた:「IPSは、指向性エナジー兵器と強力なセンサー・アレイの両方の発電需要の増加に対応するためにも不可欠である。IPSの背後にある技術は、ズムウォルト級駆逐艦に見られるものと同じで、先進的なターボ電気駆動システムが従来のガスタービン推進装置に取って代わる。ズムウォルト級は3隻しか建造されず、成功作とは言えないが、その推進システムは75メガワット以上のパワーを出す強力なものである」。

デイリー少将はDDG(X)に搭載される正確な兵器システムはまだ未定であることを示唆したが、本誌は長距離地対空ミサイルや極超音速ミサイル、指向性エナジー兵器が含まれる可能性が高いことを報告している。 現在までのところ、このような高レベルの発電が可能な唯一の海軍水上戦闘艦はズムウォルト級のみで、中距離通常即攻撃(IRCPS)極超音速ミサイルを発射するランチャーを装備している最中である。 

The Navy destroyer USS Zumwalt.

駆逐艦USSズムウォルト(DDG-1000)は先月、極超音速ミサイルの発射を可能にするアップグレードを受けて艦隊に復帰した。 (HII)

海軍海上システム本部(NAVSEA)は、将来の艦艇デザインの進化に関する本誌の問い合わせに回答していない。しかし、海軍のプログラム・エグゼクティブ・オフィス(PEO)の餞別パーティーに関するLinkedIn投稿で、ケーキの上のDDG(X)の写真が掲載されており、Mk45 5インチ主砲はもはや艦首にはなく、海軍が過去に公開した未来艦の画像と対照的である。

 ネイヴァルニュースのカーター・ジョンソン記者は、DDG(X)のケーキのレンダリングに主砲がないことを最初に報告し、Mk41垂直発射システム(VLS)ミサイルモジュールの配置換えや、正面を向いた艦橋の窓の変更なども示している。現時点では、このケーキが艦の現在のデザインを反映したものなのか、ケーキ職人の自由な発想によるものなのかは不明だ。

 いずれにせよ、DDG(X)はバーク級以上の大型艦として計画されており、12月の議会調査局(CRS)の報告書によれば、最新フライトIIIアーレイ・バークの9,700トンより40%近く大きい13,500トンになる。

 DDG(X)は、フライトIIIイージス戦闘システムと、航空ミサイル防衛レーダー(AMDR)またはエンタープライズ航空監視レーダー(EASR)としても知られる高出力AN/SPY-6レーダーを搭載するが、DDG(X)はフライトIII以上に成長する余地がある。

EASR Jack Lucas

USSジャック・H・ルーカス(DDG-125)のAN/SPY-6レーダー。 (RTX)

 海軍関係者はCRSに対し、「DDG51フライト(FLT)III(の設計)は高い能力を持つが、40年以上の生産と30年以上のアップグレードを経て、[DDG-51]の船体形状は、これらの将来の能力をホストするのに十分なスペースと重心マージンを提供していない」と述べた。

 DDG(X)はまた、赤外線、音響、水中電磁シグネチャーの低減を特徴とし、生存性を高める。さらに、燃料効率向上により航続距離が長くなり、洋上給油の必要性が減少することが期待されている。DDG(X)は、その前身と比較して武器容量も増加する予定である。

 「海軍は、ベースラインDDG(X)の設計は、フライトIII仕様のDDG-51と同様に、96個の標準垂直発射システム(VLS)セルを含み、96VLSセルのうち32個の代わりに大型ミサイル発射セル12個を組み込むことができると述べている」とCRSの報告書は述べている。「また、21セルのローリング・エアフレーム・ミサイル(RAM)発射装置を2基搭載し、駆逐艦ペイロード・モジュールと呼ばれる船体中部を追加することで、さらなるペイロード容量を提供することも可能である。


水陸両用ドック艦USSアンカレッジ(LPD-23)から発射されたRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル(RAM)。 (米海軍)

 それでも、CRSによれば、DDG(X)での海軍の野心的な計画は、中国が今後数年のうちに台湾に侵攻する可能性があると警告しているにもかかわらず、犠牲を伴うものだ。 海軍の2025年造船計画では、DDG(X)の建造開始は2032年となっていたが、海軍は後にCBOに対し、建造開始は2034年以降になると報告している。

 CBOによれば、海軍は28隻のDDG(X)を1隻あたり平均33億ドルで購入したいと考えている。しかし、DDG(X)に搭載されるサイズと新技術を考慮すると、CBO評価では、各艦は平均44億ドルかかるとしている。 CBOはまた、フライトIIIでは1隻あたり25億ドルに膨れ上がり、将来的にはさらに大幅なコスト増が見込まれるとしている。

 DDG(X)の最終的なサイズと能力に関する不確実性は、最終的なコストが海軍とCBOとで見積もりが大幅に異なる可能性があることからわかる。

 DDG(X)は、水上艦隊の現在の能力と比較して、ゲームを一変させるプラットフォームであることを示している。しかし、DDG(X)が具体的にどのような分野に活用されるのか、また海軍と産業界が予算内で期限内にDDG(X)を納入できるのかは、まだわからない。■


DDG(X) Next-Generation Destroyer’s Capabilities And Costs Are Solidifying

The Navy’s head of surface warfare says DDG(X) is a "clean-sheet imperative" that will prioritize electricity production, endurance and advanced weapons.

Geoff Ziezulewicz



https://www.twz.com/news-features/ddgx-next-generation-destroyers-capabilities-and-costs-are-solidifying


2022年7月26日火曜日

米海軍の次期主力駆逐艦DDG(X)の技術開発契約をHII、BIW両社に交付。

 

DDG(X) concept

米海軍は、次世代駆逐艦DDG(X)の詳細だが最終決定ではないコンセプトを発表した(Graphic by Breaking Defense; original concept model via US Navy)


海軍は DDG(X) 一号艦を 2030年度に発注したい意向だ


海軍はHIIとジェネラル・ダイナミクス・バス・アイアン・ワークスGeneral Dynamics Bath Iron Works両社に、DDG(X)次期大型水上戦闘艦のエンジニアリング設計契約を交付した。

 海軍の金曜日発表によると、「情報源選択の機密情報」を理由に、契約金額を公表していない。契約は、海軍の主力艦アーレイ・バーク級駆逐艦の後継艦の実現で初期かつ重要なステップであり、今後数十年にわたりプログラムの指針となる設計図の作成につながる。

 インガルス造船Ingalls Shipbuilding社長カリ・ウィルキンソンKari Wilkinsonは、契約締結後の声明で、「当社は、海軍と業界パートナーと共にこの道を進むことに興奮している」と述べた。「重要な将来型水上戦闘艦の設計に、当社の経験豊富なエンジニアリングチームのベストプラクティスとイノベーションを提供する絶好の機会だ」。

 バス・アイアン・ワークスは、現行DDG 51プログラムに投入されている同社の最先端エンジニアリングと設計の専門知識を、次世代大型水上戦闘艦にも応用したいと熱望している。同社社長チャック・クルーグChuck Krughは、金曜日にこう述べた。「HIIや当社の業界パートナーとともに、能力、スケジュール、コストに対する海軍のニーズを満たす機会を得ることで、その他海軍建設計画の成功例と相乗効果がもたらされる」。

 HIIとBath Iron Worksは、1985年以来、共にアーレイ・バーク級を建造しており、米海軍のお気に入り大型水上戦闘艦ベンダーであり、そのため、海軍は両社社員を海軍のDDG(X)チーム内に入れたと、今年初めに海軍担当者が述べている。

 設計段階を終えれば、両社のいずれか、または双方が艦船建造にあたるのはほぼ確実です。しかし、仕事の受け渡し方法がはっきりしない。海軍が大規模な建艦計画を管理する場合、業者に価格を下げさせる手段として、競合させるのが通例だ。HIIとBath Iron WorksがDDG-51で長い歴史を持つことを考えれば、第三のベンダーが新型艦の主契約者になる可能性は極めて低い。

 両社を競争させれば、海軍はより良い取引先を確認できる。その場合でも、造船業の政治的な事情や産業基盤の維持の観点から、負けた社も建造に携わる可能性はあるが、第二業者として不利な立場に立たされよう。

 もう一つの可能性は、競争の回避だ。USNI News によれば、上院軍事委員会は、次期防衛政策法案の草案において、過去の造船計画の失敗を理由に、HII とBIWの合同チーム編成を模索している。

 Breaking Defenseは、DDG(X)プログラムの取得戦略の状況について、海軍海洋システムズ本部Naval Sea Systems Commandにコメントを求めている。■


Navy awards HII, Bath engineering, design contracts for future destroyer


By   JUSTIN KATZ

on July 25, 2022 at 2:21 PM


2022年1月15日土曜日

米海軍が次期駆逐艦DDG(X)構想を公表。アーレイ・バーク級の正常進化で、将来の新装備搭載を設計時から盛り込む。艦内電源の大型化とステルス化がねらい。

 

  •  

U.S. NAVY

 

  • 米海軍が次世代DDG(X)の構想を発表した

  • 新型船体に既存装備を搭載し大改良をめざす。

 

海軍が次世代駆逐艦DDG(X)構想を公表した。それによると長距離対水上艦攻撃能力とあわせ高出力指向性エナジー兵器を搭載するとある。DDG(X)は成功作となったアーレイ・バーク級の後継艦として2020年代中の建造開始をねらう。

 

 

最新のDDG(X)構造図は水上艦海軍協会(SNA)主催イベントで公開された。DDG(X)計画主管のデイヴィッド・ハート大佐 Capt. David Hartがとりまとめた。

 

ハート大佐はDDG(X)はアーレイ・バーク級最新型のフライトIIIの後継艦の位置づけで建造を2027年開始とし、2060年代を通じ米海軍で供用をねらう。アーレイ・バーク級最終建造艦は「世界最高性能の統合防空ミサイル防衛(IAMD)システムを搭載する」と大佐は解説した。

 

ただし、アーレイ・バーク級ではこれ以上の性能向上は想定がなく、極超音速ミサイルや嗜好性エナジー兵器といった新世代装備はDDG(X)で導入する。現行艦では装備搭載のスペースが不足し、電源出力も足りない。

 

「大型水上艦艇」となるDDG(X)にはセンサー能力、長距離射程対艦対地攻撃力、指向性エナジー兵器を将来追加する余裕が生まれる。同時に生存性を強め、DDG-51フライトIIIを上回る機動性と攻撃で損傷を受けてもIAMD機能を維持できる。DDG(X) では同時に音響、赤外線、水中電磁 (UEM) の各面での被探知性を少なくとも50パーセント削減する。

 

他方で統合電源系統 Integrated Power System (IPS)により、効率を上げながらコストを下げる。IPSは今後増大する電源供給に対応するもので、指向性エナジー兵器とあわせ電源消費が増えるセンサー装備に対応する。IPSはすでにズムワルト級駆逐艦に搭載されており、ターボエレクトリック推進がこれまでのガスタービン方式に代わり採用されている。ズムワルト級はわずか三隻の建造に終わったが、推進系は75メガワット超の発電容量を誇る。

 

新型艦には分散型海洋作戦構想をさらに進める狙いもあり、将来の対中戦で広くアジア太平洋で戦闘場面を分散させる米海軍思想の実現で一助となる。ここで要求されるのが航続距離の拡大でアーレイ・バーク級を上回る水準とする。具体的には新型艦の航続距離は最低50%増とし、現場待期期間は120%増とする。このため燃料消費効率を最低でも25%改良が前提となり、補給活動の負担も軽減される。

 

アジア太平洋での分散作戦に加え、DDG(X)は北極海での運用も想定する。北極海は最近になり戦略重要性を増している。

 

米海軍はDDG(X)を進化型と位置づけ、タイコンデロガ級巡洋艦、アーレイ・バーク級駆逐艦に加え、ヴァージニア級攻撃型潜水艦や進行中のコロンビア級戦略ミサイル潜水艦で得た教訓を反映し、産業界を最初から巻き込んでいる。

 

このためDDG(X)は戦闘システムをアーレイ・バーク級から継承し、SPY-6防空レーダー、ベイスライン10仕様のイージスシステム等を流用するが、船体は新設計となる。ハート大佐が公開した図は検討中のものと思われるが、すっきりとした船体が特徴的で、ねらいは艦の探知特性を減らすことにあるのは明らかだ。全体としてズムワルト級よりもアーレイ・バーク級に近い。

 

アーレイ・バーク級同様にDDG(X)でも性能改修を建造時から想定した設計になる。極超音速ミサイルの将来搭載が想定されているが、搭載装備は未定のまま現時点で海軍は開発に心血を注いでる。

 

今回の説明を聞くと DDG(X) に今後想定される改修は次の通り。防空ミサイル防衛レーダー(AMDR)、指揮統制通信演算情報収集(C4I)の改修、高出力指向性エナジー兵器、ミサイルセルだ。

 

ベイスラインノSPY-6レーダーは開口部を拡げるアンテナをつけ、現行の全高14フィートが18フィートに伸びる予定があり、空中の標的を探知追跡する距離が増え、精度を上げることになっている。

公表図で回転式対空ミサイル(RAM)の21セル発射装置二基が当初搭載されるとあるが、将来的には600キロワット級レーザー発射装置に交代する。さらに150キロワットレーザーが追加され構想図では艦橋前に搭載されている。RAMについては現行艦では一基の搭載なので大きく性能向上となる。

 

DDG(X)の初期構想ではMK 41垂直発射管装備(VLS)32セルを艦橋前方に搭載していたが、その後MK 41の代わりに大型ミサイル発射管12本になり、おそらく新型極超音速ミサイル搭載を想定しているのだろう。

 

基本構想はVLS32セルだったがUSNI NewsはDDG(X)にDDG-51フライトIIIの96セルと「ほぼ同じ」ミサイル運用能力を与えると報じていた。小型Mk 41VLSセルを大型セルに取り替え、極超音速ミサイル運用に対応させるのであれば、ミサイル運用規模全体も変わる。今回の図はVLSセル必要数の最小規模に対応したものなのだろう。

 

その他わかることとして機体格納庫がアーレイ・バーク級より大型化しており、有人へリコプター、無人機さらに駆逐艦用ペイロードモジュールに対応するのだろう。同モジュールについては不明なままだ。トラブル続きの沿海域戦闘艦(LCS)に近い案に見える。LCSではミッションモジュールとして対潜戦用、機雷戦用を基地停泊中に短時間で切り替え可能とするとしたがその後中止となった。再び出てきたのは兵装をモジュラー化し、必要に応じ取り替える構想があるからだろう。

 

既存装備を利用しつつ、高性能装備品に後日取り替える構想はDDG(X)を安価かつ短期間で供用開始するねらいがあるようだ。各種システムの陸上試験を可能な限り利用してリスク低減も目指す。

 

陸上テストは船体設計、統合電源システムまで含め海軍水上戦センター(NSWC)がメリーランドのカーでロックとフィラデルフィアで行う。ねらいはマイルストーンB認定前に重要システムの性能を検証することにある。

 

艦艇建造企業は昨年3月からDDG(X)設計チームに加わっており、早期方針決定を支援している。現在は構想を完成させる段階にあり、今年9月末の現会計年度終了前に初期設計段階に入る。

 

海軍はこれまでDDG(X) 建造を2028年度までに開始したいとしてきた。

 

ただし、DDG(X) では大きな問題点が残ったままだ。同艦のサイズがはっきりしないし、建造コストも決まっていない。USNI Newsは建造単価を10億ドルとみており、アーレイ・バーク級とコンステレーション級開発コストを参考にしたとある。

 

SSN(X)とコロンビア級の潜水艦建造に加え、コンステレーション級フリゲート艦が加わる中で海軍は必要な装備と負担可能な予算の間でDDG(X)設計の決定を迫られそうだ。■

 

This Is What We Now Know About The Navy's Future DDG(X) Destroyer

BY THOMAS NEWDICK JANUARY 13, 2022

THE WAR ZONE

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