ラベル AUKUS、RAN の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル AUKUS、RAN の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023年3月11日土曜日

AUKUS  オーストラリアの原子力潜水艦取得の道筋(の輪郭)が明らかになった。最初は米国より中古艦を導入か。

 

Image: BAE Systems


AUKUSで原子力潜水艦がオーストラリアにやってくる



今週、オーストラリアがAUKUSで、どのような潜水艦を獲得するつもりなのか、詳細がようやく明らかになった。オーストラリア、英国、米国の多くの人々が、オーストラリアの潜水艦部隊、ひいてはオーストラリア海軍(RAN)の戦力態勢を完全に刷新する計画に満足しているようだ。

 オーストラリアは、2030年代に外国製の原子力潜水艦の導入を開始し、最終的には世界最高水準の攻撃型潜水艦を国内建造する目論見だ。


AUKUS


2021年夏に発表されたAUKUS協定(オーストラリア、英国、米国)は、前例のない規模の技術移転を約束した。数十年かけて、オーストラリアは原子力攻撃型潜水艦本体だけでなく、国内建造する能力も受け取ることになる。

 超長期的には、シドニー、ワシントン、ロンドンを結び、西太平洋での競争力を確保する軍事的・技術的同盟を結ぶことを意図している。

 短期的には、オーストラリアは世界最大級の最新鋭原子力潜水艦を手に入れようと期待している。

 AUKUSでオーストラリアとフランス間の主要な製造協定が中止となり、パリは深刻な外交的困惑に陥った。この出来事は、米仏関係に大きな混乱をもたらす恐れがあったが、ロシアのウクライナ侵攻で生まれた連帯感は、永久的な損害に対する懸念を静めたようだ。


Virginia-class Submarine

US Navy Virginia-class Submarine Under Construction.


原子力潜水艦(SSN)は、太平洋が広大なため、オーストラリアにとって特に有用だ。SSNは遠隔地で長時間活動できるため、台湾付近、韓国付近、インド洋での作戦に貢献する。そのため、オーストラリア海軍の行動範囲は格段に広がり、同盟国の基地から独立して活動する自由も得られる。

 オーストラリア国民には、ヴァージニア級を購入することより、英国の潜水艦を建造または取得することの方が気になるようだ。また、この契約はオーストラリアを米国と密接に結びつけすぎると懸念する人もいる。しかし、オーストラリア軍事力が急速に向上すれば、他の安全保障上の懸念を明らか払拭する。


ヴァージニア級か


ヴァージニア級は非常に高性能な攻撃型潜水艦である。オーストラリアが受領するのは、アメリカの中古艦艇らしいが、現時点では詳細が不明だ。

 ブロックVを受領した場合、水中重量は約1万トン、速力は25ノットを超え、魚雷や巡航ミサイルなど約65の兵器を搭載する。古い艦は性能が落ちる。

 オーストラリアが、米国の造船能力の向上にも投資するだろう。実際、造船所の能力は、中国の造船がより急速に進むことを見越して自国の艦隊を拡大しようとする米国にとって、課題である。

 しかし、クレイグ・フーパーは、オーストラリアに艦を輸出することで、弱体化している米国の潜水艦整備インフラへの圧力を軽減できると主張している。


Astute-class

Astute-class Submarine. Image Credit: BAE Systems.


いずれにせよ、これらの艦艇は、オーストラリアの既存の潜水艦艦隊、すなわちRANが運用と維持に苦労して能力的に困難なコリンズ級を大幅にアップグレードすることになる。コリンズ級はヴァージニア級の3分の1の大きさで、耐久性は2カ月以上、武器搭載数は12個程度に制限されている。

 また、この計画には野心的な人的資源開発戦略も含まれる。原子力潜水艦の整備は通常潜水艦と異なり、オーストラリアはコリンズ艇の乗組員にも苦労してきた。

 どうやら、オーストラリアの最初の艦は、オーストラリア人指揮官のもと二重国籍のオーストラリア=アメリカ両国民の乗組員で運用する可能性がある。このような配置は珍しいが、両大戦におけるオーストラリアには歴史的な前例がある。


次世代型アスチュート級になるのか

 オーストラリア初の国産艦がどのようなものになるかは、それほど明確ではない。

 イギリスはオーストラリアと建設と設計面で提携するが、艦にはアメリカ製部品も含まれるようである。

 豪州の造船能力の向上は、すべてがうまくいったと仮定すれば、AUKUS契約の最も重要な成果の1つとなる。

 英国海軍の攻撃型潜水艦プロジェクト(SSNR)は、垂直発射システムを搭載することで、米国の同系列艦に似た世代の潜水艦を想定している。もし、第2世代のオーストラリア艦が、ヴァージニアで運用中の部品を欠くとしたら、かなり奇妙なことであり、したがって、オーストラリア潜水艦がSSNRに酷似することは十分に推測される。

 2つの異なるクラスの原子力潜水艦を運用することは、豪州にとって挑戦だが、克服できないことはない。これまで原子力潜水艦を建造したほとんどの海軍が、複数の艦種を同時運用した経験がある。オーストラリアは原子力艦を運用する最小の国となるが、決して貧乏な国ではない。2種類の攻撃型潜水艦を運用することは、フランスやイギリスがSSNとSSBNの両方を運用する現状に比べれば、オーストラリアにとって過大な挑戦ではない。


Virginia-Class

Image of Virginia-class Submarine features. Image Credit: Creative Commons.


AUKUSの今後を占う


 すべてうまくいけば、オーストラリアはAUKUSで世界クラスの原子力攻撃型潜水艦部隊を持つことになる。オーストラリア海軍の総合的な能力は、中国、フランス、英国に匹敵するものになる。

 もちろん、オーストラリア海軍が長期的にこれらの艦船を運用・維持しながら、その他の広範な責務を果たすことができるかどうかなど、多くの疑問が残る。

 AUKUS契約は、未定部分が多く、うまくいかない可能性がある。しかし、うまくいけば、オーストラリアは一流の軍事力と素晴らしい産業基盤を獲得し、米国は強力な同盟国の育成に貢献することになる。


AUKUS: How Australia Is Getting Nuclear-Powered Attack Submarines

By

Robert Farley

https://www.19fortyfive.com/2023/03/aukus-how-australia-is-getting-nuclear-powered-attack-submarines/


Author Biography and Expertise 

Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph. D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020), and most recently Waging War with Gold: National Security and the Finance Domain Across the Ages (Lynne Rienner, 2023). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.




2021年11月30日火曜日

オーストラリアSSN選定はここまで困難な作業となる。ヴァージニア級対アステュート級の比較。米設計案の採用が有望に見えるが、2060年代の安全保障を左右しかねない重大な決断。

 

英海軍のアステュート級。. Image: Creative Commons.

 

 

立オーストラリア海軍(RAN)向けの原子力潜水艦の選定は非常に複雑かつ困難な選択となる。現在、二型式が候補にあがっている。米海軍(USN)のヴァージニア級ブロックV、英海軍(RN)のアステュート級だ。

 

ともに優秀な艦で性能は互角といえる。原子炉は燃料交換が不要な点で共通しており、高性能ポンプジェット方式の採用も同じだ。またトマホーク巡航ミサイルを運用できる点も共通する。

 

オーストラリア政府が検討すべき点として何隻を整備するのか、供用期間、国内産業界への裨益などがある。

 

今回は両級の違いに着目し、リスク、サイズ、乗員規模、ペイロード、供用開始時期、また輸出規制について論じたい。

 

 

 

【設計上のリスク】ヴァージニア級ではオーストラリアが運用を望むAN/BYG-1 戦闘システムとMk-48魚雷の運用が最初から可能だが、アステュート級は想定してない。アステュート級を改装すれば、ち密に設定されている艦内配置、重量、浮力、バランス、動力、冷却機能の変更が必要となり、想定外の問題になりそうだ。既存設計の変更は数億ドル相当の作業となり数年かかる。代替策として最初から英装備を受け入れ、英国製戦闘システムとスピアフィッシュ魚雷を採用することがある。

 

【サイズ】両級とも通常型の既存艦コリンズ級を上回るサイズで、オーストラリアのインフラ整備が必要だ。これは低規模予算では実施できない。アステュート級は全長97メートル、排水量7,800トン、ブロックV仕様のヴァージニア級は140.5メートル、10,364トンだ。コリンズ級は77.8メートル、3,407トンにすぎない。

 

【乗員数】RANではコリンズ級の60名の乗員確保にも苦労しているので乗員数は少ないに越したことはない。アステュート級は90名、ヴァージニア級は130名程度が必要だ。

 

【ペイロード】ヴァージニア級がアステュート級より大きく、トマホークミサイルに加え将来の新型装備にも対応する。英艦は魚雷発射管を使うのみで、スピアフィッシュとトマホーク合計38発の発射が可能だ。ブロックVヴァージニア級は65発を搭載する。魚雷発射管から25発、ペイロード発射管からトマホーク12発のほか、セイル後方の大直径ペイロード発射管からトマホーク28発も運用するほか、AIM-9X対空ミサイルや極超音速滑空ミサイルも発射できる。

 

【調達見込み】米国が同意すれば既存のヴァージニア級ブロックV数隻をRANに比較的短期間で提供できる。RANの求める原子力安全運用基準と乗員訓練、運用方針の策定に供される。同時に8隻はオーストラリア南部で建造する。2018年のASPIレポートではSSN10隻を整備すればオーストラリアの要求水準を満たすのが可能で、乗員確保が必要とある。

 

原子炉運転では少なくとも当初数年間はUSNによる指導が必要とされ、米向け建造数隻をRANに回す想定だが、これはあくまでも米国が優先順位の変更を認めた場合のことだ。米海軍はヴァージニア級を66隻まで整備する計画だ。アステュート級では英海軍が想定する7隻での建造中止を改める必要が生まれるが、そのため新鋭ドレッドノート級原子力潜水艦の建造が遅れることになる。

 

ヴァージニア級の維持運用は米海軍実績を見ると容易なのではないか。新鋭技術の研究開発も運用隻数が少ないと長期化したり予算超過となることが多い。オーストラリアが最終的にSSNを10隻整備する場合、アステュート級なら17隻、ヴァージニア級なら76隻がそろうことになる。米海軍では静粛性を高めたヴァージニア級ブロックVの企画をすでにはじめている。

 

【補給体制】有事の補給体制も考慮すべき分野で、ヴァージニア級を採用の場合はオーストラリア海軍艦は米海軍艦とともにオーストラリア、日本、グアム、ハワイ、サンディエゴで補給を受けられる。だが英艦採用の場合は英国はAUKUS加盟国であり、スピアフィッシュ魚雷を一部のRAN/USN施設に確保しておく必要が生まれる。

 

【乗員の確保】アステュート級を選択する場合はオーストラリア国内の艦長副長人材の確保が短縮化できる。英海軍の艦長副長は原子力推進コースを修了しており、専門の原子炉技術士官も補助にまわる。これに対し米海軍の艦長副長クラスは全員が原子炉技術をマスターしており、原子炉運転をまじかに見てキャリアをつでいる。オーストラリアで原子力技術をマスターした士官が潜水艦艦長になるには15年かかるため、英米の扱いの違いが大きく作用する。

 

【技術移転の制約】輸出規制がヴァージニア級を選定した際に大きくのしかかる。米国務省の国際武器取引規制(ITAR)制度では米軍事技術の移転を厳しく制限している。ITARのためオーストラリア国民で二重国籍とみなされるものは米政府承認を取るのが困難となる。そもそも二重国籍市民は最初から対象から外されそうだ。

 

ITARの違反罰則が厳しい。米政府指定のリストに違反すると一回につき100万米ドルまたは10年の懲役が科される。ITARの想定する二重国籍者排除の原則はオーストラリアで問題になる。移民が多いためだ。これに対し、英政府の輸出規制には柔軟性がある。

 

【まとめ】見る角度により、最適な原子力潜水艦の選択はオーストラリアにとって極めて技術面で複雑かつ困難になりかねない。最も楽観的に見ても引き渡しまで数か年がかかり、オーストラリアの乗員が艦運用に自立するまで15年かかってもおかしくない。正しい選択によりオーストラリアにおける2060年代以降のSSNの運用維持が左右されかねない

 

長期にわたり影響を与えかねない政府の決断はそうたくさんあるものではなく、間違いを許容できる余地はほぼない。今回がまさしくその例である。■

 

Astute vs. Virginia: Which Nuclear Submarine Is Best for Australia?

BySam GoldsmithPublished2 days ago

 

Sam Goldsmith is the director of Red Team Research, has a Ph.D. on Australian defense industry innovation, and has published through the US Naval War College. This first appeared in ASPIs the Strategist. 

In this article:Astute-Class, AUKUS, Australia, China, Virginia-class