ラベル ソフトウェア3F の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ソフトウェア3F の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年11月27日日曜日

★★あまりにひどいF-35の現実にトランプ大統領はどんな判断をする?



「F-35事業は15年にわたる失敗、遅延、予算超過の一大叙事詩」----す、すごい表現ですね。しかし一体どちらが正しいのか。メーカーや運用する米空軍等は楽観的な見方をする一方でペンタゴンの評価部門は極めて厳しい評価をしており、事業推進責任部門にも厳しい目を向けています。大きすぎてつぶせない、というF-35事業ですが、ビジネスマンのトランプ大統領がどんな判断を下すのかが来年の大きな話題になるでしょう。

War Is BoringWe go to war so you don’t have to
An F-35A takes off from Mountain Home Air Force Base in Idaho. U.S. Air Force photo

The U.S. Military Will Bring F-35s Into Service Without Finishing Them

Program office cuts development short

by DAN GRAZIER
戦闘対応の準備ができていない状態でしかも開発が完了しないままでパイロットがF-35共用打撃戦闘機を操縦することになりそうだ。
  1. 「このままでは実施できない」重要なミッションがあるとペンタゴンの武器試験部門トップも警鐘を鳴らしている。
  2. Project On Government OversightはこのたびDTO&E作戦試験評価部長マイケル・ギルモアの作成したメモを入手したが、共用打撃戦闘機推進室がF-35開発期間を切り上げることで日程・予算ともに予定通りと取り繕おうとしていると批判している。

開発テスト打ち切りでさらに予算超過する

  1. 契約企業各社、JPO、ペンタゴンともに同事業を予定通り進行することに失敗しており、今回は開発試験や技術修正が必要なのに予算がなくなったようだ
  2. 失敗を認める代わりに関係者は開発期間を短縮し次の作戦テスト製造段階用に確保しておいた予算に手を付けようとしている。
  3. 遅ればせながら推進室は追加予算で開発を完了しつつ議会には中途半端な開発のままの量産機の追加購入を求めているが、後年度に大幅かつ高額の改修が必要になることは承知の上だ。
  4. 現行の410機まとめ買い案では340億ドルから540億ドルの規模になるという差は、ペンタゴン公表の楽天的な数字と控えめな数字の違いだ。
  5. 不完全なままF-35が実戦配備される可能性が出てきた。戦闘投入されればギルモアを引用すればパイロットの生命が「大きな危険に」さらされる。
  6. ギルモアからは推進室の主張通りになれば、F-35が実戦テストに合格しない可能性もあると警告が出ている。その場合は高額な費用で修正を加えてからテストを全部やり直すことになる。この費用は納税者に3億ドルの追加負担となり、技術的な解決を図り、搭載でさらに高額の費用がかかるだろう。
  7. ギルモア作成のメモがブルームバーグで記事になるとジョン・マケイン上院議員(共、アリゾナ)が上院軍事員会委員長として書簡を国防長官アシュトン・カーターに送り、ペンタゴンが同委員会に対して事業の進展状況で正しくない理解に導いたとの懸念を表明している。
  8. マケイン委員長は推進室長クリストファー・ボグデン中将が先に出した開発は2017年末に完了するとの報告に疑念を示し、空軍長官デボラ・ジェイムズから必要な予算は確保ずみで開発は予定通り完了するとの発言があったことにも疑いの目を向けている。テスト部門のメモが火に油を注いだ格好だ。
  9. 「性能の不調、繰り返される遅延、コスト超過の常態化」を理由にマケイン議員は国防総省の主張する2,433機が必要との見積もりは現実的かつ実現可能との見解に反発しており、かわりにペンタゴンは現実のコストと日程から調達規模を見直すべきと主張している。
  10. 議会内とペンタゴンのF-35推進派は巨大すぎて失敗が許されない同機事業を何としても温存し生産することのほうが実戦でどんな威力を発揮するかより重要と考えているようだ。
  11. ペンタゴンが追加調達の要望を議会に送ったが、下院では超党派推進支持派70票がさらに11機の追加を求めている。
Airmen refuel an F-35 at Hill Air Force Base, Utah in November 2016. U.S. Air Force photo

ミッションソフトウェアが不完全なまま

  1. 機体構造、空力特性、エンジン、信頼性と問題が山積みのところに日程をさらに遅らせているのはミッションシステムのソフトウェア問題だ。
  2. ミッションソフトウェアはパイロットが得るインプットすべてを制御し、脅威対象、標的、武装、ミッション内容全般に関係する。空軍は繰り返し、ミッションソフトウェアでステルス性能とともにF-35の優位性が最大化すると説明してきた。
  3. ソフトウェア初期版のブロック2Bと3iが機材に搭載されており、今可能なのは基本的な飛行に加えレーダー誘導ミサイル一種類と誘導爆弾一型式の運用だけだ。
  4. ただし初期型でも開発テストに合格できない事態が発生しており、現時点で戦闘能力は極めて限られている。
  5. そこで実戦能力の実現には新型ミッションシステムのソフトウェアが必要だ。近接航空支援や深部侵攻爆撃、空対空で必要となり、各種名称で今後改訂され大幅な手直しが行われる。
  6. 各型には追加装備がつき、初期型の欠陥を修正する。開発中のブロック3F改訂版5で運用兵装が追加となり、これまで多発していたコンピュータ作動中止が減ることが期待されている。
  7. ギルモアはコンピュータがクラッシュしたためミッション中のパイロットがレーダーを一度止めて再起動を迫られていたと書いている。
  8. この第五版の開発が完了してもF-35に求められる戦闘能力の一部しか実現できず、実践的な作戦テストとしても不十分だ。重要なテストのためにはさらにブロック3FR6が必要となるが開発はまだ始まっていない。
  9. 初期型ブロック3Fのテストでは近接航空支援、敵防空体制制圧・破壊、制空任務、対地攻撃はことごとく「受け入れられない程度の効果で性能、作動に大きな欠陥がある」と判明している。
All three variants of the F-35 over Florida in May 2014. U.S. Air Force photo

その場しのぎの対策ばかり

  1. 開発テストで不十分な結果の山積み状態だが、手直しに相当の費用がかかることが予想される中で開発室は開発テスト段階を短縮化し、未完のテスト項目、再テストは今後の運用テスト段階に持ち越すと決めてしまった。
  2. そこで残る開発テスト項目、再テストは運用テスト用の予算で実施することになるが、そもそも想定していないテストに予算が食われることになる。
  3. 運用テストを中断して問題点を手直しすることは本来開発テスト期間中に完了しておくべきことなので、運用テストとして念入りに計画した内容にしわ寄せが行く。運用テスト自体は四年前にすでに各軍と当部で合意しておいたものだ。(ギルモア
  4. ギルモアはこの方法ではリスクが高すぎると警句を発している。作戦テストを現実的かつ有益に活用できるようにすべく開発段階を完了させ開発テストを合格し、諸元に合致する装備を先に準備すべきだと言う。
  5. ウェポンシステムの戦闘テストを始める時点で開発期間中の補修がまだ必要なら危険が発生する。
  6. 中途半端なままのF-35を過酷な戦闘テストに持ち出してもあらたに設計上の瑕疵が見つかるだけだ。修正作業が必要となり、再度テストすれば工程が長期化するだけだ
  7. 作戦テストを途中で繰り返し中断して基本設計が原因の問題を解消していくと緻密に組んだ上に各軍とDOT&Eで合意済みの運用テスト日程が狂う。
  8. その結果でさらに遅延し、コストを引き上げることになるが、ギルモアへの批判筋やF-35弁護派はこういう事態を回避できるという。
  9. ペンタゴンがF-35事業を立て直したのが2012年のことだったが、同時並行による作業量を減らすために生産を一時延期してまで開発・運用テストを完全に終えようとしていた。今回推進室が開発期間を短縮すると逆にF-35の同時並行作業を増やすことになる。
  10. 同時並行作業の大義名分は日程消化を加速と費用節約だったが、実際の目的は調達費用の流れを確保した上でテスト結果の不調を理由に発注取り消しになることを防ぐことにある。
  11. さらに歴史上はこのやり方ではさらに遅延が加わり費用が高騰することがわかっている。

機関砲が運用できない

  1. F-35Aが内蔵する機関砲は近接航空支援、ドッグファイトの両方で重要な装備だが、問題が解決できておらずさらに開発努力が必要だ。ステルス性を確保するため通常は機関砲扉が開閉するが、これで抗力が増え機首が一方向に振られ照準が難しくなる現象が発生している。
  2. 技術陣は飛行制御ソフトウェアの改良でこの問題は解決できると見ているが、当然テストで実証する必要がある。
  3. もっと深刻なのが銃の照準を当てるための600千ドルもするヘルメット搭載ディスプレイだ。このヘルメットでの射撃精度テストは2016年10月に行われる予定だったが、ソフトウェア問題のため2017年まで先送りされている。
  4. ヘルメットの視野が機関砲の射撃精度性能と合致しないという技術問題がある。
  5. パイロットから報告があったのはヘルメットに表示される記号が眼球の動きに対応していない問題で特にタービュランスがある場合や機体に振動が加わる過激な機体操縦時に発生するという。機関砲が戦闘投入可能なのか判明するのは現実の条件に近い運用テストを待つ必要があり、結果が出るのは最短で2020年となる。
  6. 海軍と海兵隊向けのF-35にはもっと深刻な機関砲精度の問題がある。というのはともに機関砲は外部装着ポッドを使い、機内搭載砲と比べると安定度が劣るためだ。このポッドから発射すると反発力で機首が下がり、F-35Aの場合より悪い影響が生まれる可能性がある。
  7. こうした深刻な問題を克服できたとしても機関砲は当初の目標を達成できない可能性がある。25ミリ銃弾の仕様が途中で変更されたためだ。
  8. F-35Aは新たに非爆発性破砕型弾薬を使うことになったが、精度と威力は実証されていない。F-35BとC型は従来同様に海軍開発の半貫徹型高性能銃弾を用いる。開発室は「新規採用銃弾では精度面の要求水準は実現しないとわかった」としている。
  9. DOT&Eが指摘しているように推進室はこれらの課題を契約上の運用必要性能から削除することで解決している。しかも正式な承認を各軍やOSDから得ていないままだ。契約企業はこのため契約上は空対空、あるいは空対地での発射精度や命中威力の保証義務がないのだ。
  10. F-35搭載機関砲では目標に命中させられず威力がないと判明した場合、誰も責任を問われず、修正作業が実施されるまで使用不能のままだ。
An F-35A drops a GBU-12 laser-guided bomb onto a range in Arizona in April 2016. U.S. Air Force photo

兵装運用テストの遅れ

  1. 戦闘条件を想定した運用テストで搭載兵装の実力を確かめる前に、兵装投下の精度を確かめるテストが各装備で必要だ。F-35の性能諸元によれば「敵探知、目標固定、識別、追尾、標的確定、攻撃、評価」をすべて行えるはずだ。
  2. 一連の機能を確かめてからストレスの多い戦闘条件を再現するテストで「キルチェーン」が機能するか検証することになる。この運用作戦テストは複雑かつ費用がかかるので通常のの技術テスト条件でさえ標的を外すような兵装をいきなりテストしても意味が無いのだ。
  3. F-35開発テストでは極めて高い精度を証明した場面もあったが、DOT&Eによれば全般成績は芳しくないという。実際にテスト現場で成果を上げるために「制御室からの介入」が必要となったという。
  4. その例としてメモによれば長距離用AIM-120レーダー誘導空対空ミサイルのテストで地上要員からパイロットに発射タイミングを教示していた。F-35搭載レーダーとコンピュータが敵攻撃のタイミングを表示できなかったためだ。
  5. さらに予定していた開発段階兵装の精度確認テスト13種類が未実施のままだ。推進室はテストをすべて実施しないことにするのか、開発段階中にすべて完了させるのかそれとも運用テスト段階に先送りするのか明らかにしていない。
  6. 兵装テストが完了しないままと未確認の不良を放置することとなり、修正の後に再テストする必要があるのだ。
  7. 兵装テストの日程を再度調整し必要な予算を手当し開発段階を完了しないままなら運用作戦テストに悪影響が生まれるとギルモア部長は警告する。結果として日程がさらに狂い、経費超過を招き、F-35の戦闘能力の妥当性そのものが評価できなくなるという。
  8. もともと合意ずみの大日程通りに兵装開発テストをすべて完了してから運用テストに望むのが技術上、倫理上ともに正しい選択のはずだ。
  9. 残念ながらそうすれば推進室と長官官房関係者は一層の費用と時間が必要だと認めざるを得なくなり、すべての問題は解決済み、価格は低下中という前言を覆さざるを得なくなる。
An F-35A during a preflight inspection in Idaho in February 2016. U.S. Air Force photo

テストを短縮して機体は完成と言えるのか

  1. F-35事業はこのままでは戦闘に送り出せない問題をかかえている。この見解は空軍自体が内部評価で認めている。”
  2. 空軍はF-35が戦闘投入可能と公言したが、同日に空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドファイン大将は「本日のIOC宣言はF-35Aが完全な戦闘能力を獲得する道筋の大きな一歩だ」と述べている。
  3. 同大将がこう表現したのはテスト工程がさらに遅れを加えているさなかだった。最新のDOT&Eメモによれば、2016年9月末現在で65パーセントの飛行テスト項目しか消化していない。
  4. 推進室は2017年早々に予定されていた飛行テストを実施しないと決定し、ブロック3F開発が同時に完成予定だったがなりゆきに任せるとした。
  5. 今年8月のIOC宣言までに確保しておくはずだった戦闘性能では数点が開発フライトテストをこの度初めて開始している有様だ。その他にはまだそこまで到達していない項目もあり、2017年に想定していた運用作戦テストの開始が時期尚早になったのも事実だ。

不十分な準備体制

  1. 不完全な設計だけが貴重な運用テストの効果を危うくする要素ではない。ギルモア部長は推進室がおそらく意図的に戦闘テスト用機体に十分な予算をつけなかったのではと疑っている。
  2. 量産型で戦闘投入用のF-35の機数が運用テスト開始で考慮すべき要素だ。試験評価の大日程案ではDOT&Eと推進室が同意のもと18機が必要としており、各機に試験装備を搭載してテスト開始するとしていた。
  3. だが推進室はその通りにテストを開始するつもりはないようだ。関係者はテスト機材を確保する準備をまだしていないが、もともとテスト前に7年もの時間があったのだ。
  4. 対照的に納税者には不完全でテストのおわっていないF-35に61億ドル追加が必要だと説明するのに懸命だ。
  5. 推進室は運用テストの完了に必要な事項を無視しており、極めて現実条件を考慮した人員介在ミッションのシナリオのシミュレーションや脅威環境での電子装備の機能シミュレーションを軽視している。これが評価できないままF-35の戦闘能力全部をテストするのは不可能だ。
  6. 例えば、テスト中にステルス性能と対抗措置が作動するのか不明なままではミサイルは発射できない。F-35の性能を多面的に試す唯一の方法はヴァーチャルに再現した環境を使うことだ。というのは飛行試験空域では実際の戦闘で遭遇する可能性のある状況全てを再現できないためである。
  7. このため運用テスト用の機材を確保する努力を怠る推進室へギルモア部長は厳しく批判している。
The U.S. Capitol Building in Washington, D.C. Stefan Fussan photo via Flickr

F-35の政治的な意味

  1. 大型装備整備事業では常に政治が背後にあり、ことに今年は大統領選挙の年である。F-35とて例外ではない。
  2. 当初から関係者はF-35を予算削減の対象にさせないよう懸命に動いてきた。同機の部品は全米45州で生産されている。
  3. 生産企業を分散させることでF-35支援者を議会内に多数確保するようにしたのだ。
  4. 議会にF-35支援議員があることで、ペンタゴン内関係者はF-35向け予算を増やす圧力を感じている。
  5. こうした支援派は結束してF-35の追加調達で合意を取り付けようとしている。
  6. 下院共用打撃戦闘機を支援する議員の集まり70名が署名した書簡では下院国防歳出小委員会へ上院によるF-35先行調達1億ドル追加案を支持するよう求めている。
  7. この先行調達予算は空軍にF-35新造機体の部品を購入させ、2018年に完成機体を納入させようとするものだ。
  8. 実施されれば該当機材のコストを二年間にわたり分散させ、納税者の観点からは機体を先に導入する効果があるが、運用テストの結界如何ではF-35が本当に戦闘状況で実力を発揮できるか不明のままだ。
  9. ただしこの観点は何故か書簡には盛り込まれていない。
  10. 予想通り、大統領選挙費用を分析したCenter for Responsive Politicsによると署名議員はほとんどが国防産業からの寄付を受けている。
  11. 議員団幹事をつとめるケイ・グランジャー(共、テキサス)とジョン・ラーソン(民、コネチカット)両議員は144千ドル、43千ドルをそれぞれ国防産業大手や労組から受けている。
  12. 議会にF-35推進派がある中で、ペンタゴン関係者がF-35関連予算を可能な限り増やせとの圧力を感じているのは疑う余地がない。
An F-35A takes off from Mountain Home Air Force Base in Idaho in February 2016. U.S. Air Force photo
さらに墓穴を掘るのか
  1. F-35の開発・テスト状況はこのように悲惨な状況なのだが、推進室はブロック4の「完全性能」機体をさらに高額で多数調達する契約を2018年に交付する準備に入っている。
  2. ブロック4の詳細は未定だが、ブロック3のIOT&Eが始まる前に契約だけ交付することになる。
  3. 今後新たな問題点がいくつ見つかるか不明なままで初期作戦能力は宣言したもののあたかも片足で歩くようなものだ。推進室および支援派は一貫して現行の実現不可能な日程案のままで機体購入数を増やそうと言うが、これでは既知、未知の問題点を多数抱えることになるのは必至だ。
  4. ブロック3機材のテストが完了しないままブロック4機材を多数生産することは、建設会社が基礎工事を中途半端なままで超高層ビルを建てるようなものだ。
結語
  1. F-35事業とは15年にわたる失敗、遅延、予算超過の一大叙事詩と言って良い。
  2. ロッキード・マーティンへの契約交付のは2011年9月11日のテロ事件の数週間後のことで、当時の同社は空軍、海兵隊に新型機の初飛行は完全な性能を備えた形で2008年に実施すると約束していた。その後海軍向け機材は2010年に初飛行としていた。合計2,866機を総額2,000億ドルで生産する目論見だった。
  3. だが2016年現在で、2,457機生産で3,900億ドルになり、機体単価は二倍になり、409機減っても2,000億ドルを追加支出することになった。
  4. ペンタゴンで調達技術開発ロジスティクスを担当する副長官フランク。ケンドールはF-35調達について機体完成前に「調達の悪しき事例」と言っていた。この発言は2012年のことだったが、その後本人は意見を後退させている。
  5. ギルモア部長のメッセージは明瞭だ。F-35は戦闘で実力を発揮できず、米軍兵士の生命を危険にさらす。その回避のために今こそ大胆な策をうつべきだ。
  6. 開発テストを切り上げ運用テスト用機材の予算を確保しない現行案を先にすすめようという議会とペンタゴンはF-35の実戦での有効性を試すための実戦テストを事実上妨害しているようなものだ。
  7. 予算を十分つけないと回避できる問題を見つけ修正することができなくなり、パイロットは戦闘で危険な目にあう。
  8. 新しい大統領、新しい議会、新しい国防長官は官僚主義の妨害工作を止めるべく必要な対策を講じるべきだ。手始めに、F-35購入規模の拡大傾向を止めるべきだ。
  9. それで浮いた予算は開発段階、開発テストの完了に流用し予定通りの工程を完了させるべきだ。完璧までに現実に即した作戦テスト用に予算を当初通り確保した上でペンタゴンの作戦テスト評価部長が厳しく誠実に統括して難易度の高い工程を完了させるべきだ。
  10. 機体を繰り生命を賭ける男女にこの作業がなんとしても必要なのだ。■
Dan Grazier is the Jack Shanahan Fellow at the Project On Government Oversight, where this article originally appeared.



2016年9月18日日曜日

★★★現状と米空軍の楽観的な見方があまりにも乖離しているF-35テスト状況。実戦投入は当面不可能な状態



機体が揃っても戦場にこのままでは投入できない.....とにかくIOC宣言で早く戦力化を実現したい米空軍、巨大すぎて潰せないことをいいことに管理しきれていないロッキードはペンタゴン内部から正直なコメントが出て関係者は困惑しているのでしょう。でもどちらが正しいのか。これから時間が経つとはっきりしてくるでしょう。今回の指摘事項にはこれまでお伝えした内容と重複する部分と実際の運用部門でないとわからない新事実も含まれています。米空軍、ロッキードもここまで来るとほとんどフィクションの世界を信じるしかないのでしょうか。まだ自殺者が出ていないのが不思議といえば不思議ですが。ギルモアメモが正しいとすれば関係者の精神健康はおかしくなっても不思議はありません。むしろ西側の防衛がこの機体のせいで大きな後退とならないように祈るばかりです。逆にロシア、中国等は同機の評価をする良い機会でしょうね。
We go to war so you don’t have to
The F-35A. U.S. Air Force photo

The F-35 Stealth Fighter May Never Be Ready for Combat

Testing report contradicts the U.S. Air Force’s rosy pronouncements

by DAN GRAZIER & MANDY SMITHBERGER
F-35はペンタゴン史上で最高額の調達事業となったが日程の遅れ、大幅な予算超過やぱっとしない性能評価に苦しまされている。
米空軍が8月に空軍向け機材は「戦闘準備完了」と宣言し、報道の大部分は事業が曲がり角へ到達したと大々的に書き立てたがペンタゴンの試験評価トップが出した文書は空軍によるテスト結果を元にしつつ宣言は時期尚早だったとしている。
作戦テスト評価部長マイケル・ギルモアの出したメモは痛烈だ。F-35は「成功からはずれたコースにあり、ペンタゴンが4,000億ドル支出したブロック3Fの性能をフルに引き出すこともこのままだたと失敗する」
メモは16ページに渡り、まずBloombergが報じた。内容は同事業のトラブルがどこまで深いかを示し、全納税者が期待する基本性能でさえ実現できていないと述べている。
ペンタゴン試験評価部はF-35は戦闘に出せない、「想定ミッションをこなせず、現存する脅威対象に対抗できないため」としている。
現状のままではF-35は戦闘空域から離脱し他の機体の助けを求めるしかない。なぜなら敵脅威の位置をつかみ、回避し、目標を捕捉し敵戦闘機と交戦する能力に欠陥があり、搭載兵装が限定(爆弾二発、空対空ミサイル二発)されるため他機の支援が必要だからだ」
メモでは事例を上げてF-35Aは現行機種より能力が劣るとし共用事業推進室や空軍将官が出してきた好意的評価の数々は虚偽であったと明確に指摘している。
そうなると航空戦闘軍団司令官ホーク・カーライル大将が最近の記者会見で発言した内容や共用事業推進室長クリストファー・ボグデン中将の議会内証言はメモ内容と真っ向からくいちがうことになる。
「F-35Aは全装備中で最も強力な存在になる。なぜなら現行機では不可能な場所にも進出して現代戦に必要な性能を発揮できるからだ」とカーライル大将はIOC発表時に述べていた。
だがギルモアはこれは事実ではないとし、空軍も事実を先に知っていた証拠があるという。
空軍は戦闘能力獲得の宣言の前に評価を実施している。今回の作戦テスト評価部長メモでは空軍の事前評価テスト結果と全く同じ結論が得られたとしF-35の性能不足を残酷なまでに暴露している。
議会、国民が同機の欠陥を知る事に至ったのは議会が第三者試験機関の設置を1983年から義務化しためという事実は重要だ。現部長はどこにも所属せず誠実な人物だ。
F-16 がF-35 のそばでフレアを発射。オランダにて。. Frans Berkelaar photo via Flickr

限定付き戦闘能力

空軍は議会に対し初期作戦能力(戦闘態勢完了)の根拠は現行F-35A(ブロック3i)で基本ミッション三種類が実施可能になったためとしている。近接句空支援、航空阻止並びに限定付き敵防空体制攻撃だ。
各軍は新型F-35を連続「ブロック」の形で受領する。各ブロックで先のブロックを上回る性能を実現する。空軍が今回戦力宣言した機体にはブロック3iという暫定版が搭載されブロック2Bが使っていた時代遅れのコンピュータを新型に取り替えている。一方でブロック3F開発が遅れており、この搭載で契約上の戦闘能力をすべて実現することになっている。
米空軍の現行仕様では長距離空対空ミサイルは二発しか搭載できず(ドッグファイト用の短距離熱追跡ミサイルは搭載しない)地上攻撃用の爆弾は二発のみとなる。兵装搭載がここまで成約されたのはソフトウェアの不備のせいであり、機体にはもっと多くの種類の兵装搭載の余地がある。
.ただしこれ以上の兵装は外部搭載する必要があり、航続距離とステルス性能が下がることになる。
次に控えるソフトェアのブロック3Fは開発で現在大きな問題に直面している。2001年に多様な武装を搭載する想定があったが、F-35をこのために作戦テストするのはまだ先のことであり、現行機材には大きな影響は生まれていない。
そこで当面は現行F-35を戦闘に投入するとしても(作戦テスト評価部長メモは明確に不可能とする)、搭載可能な弾薬類が限定されることでF-35のフライトは短距離限定となるだろう。
もう一つの根本的欠陥は機関銃が使えないことだ。ブロック3i 機には機関銃運用はできない。なぜならブロック3Fで初めて稼働可能となる予定でこのソフトウェア開発は完了していないためだ。この事実はすでに多方面で報道されている。さらに最新型ヘルメットが銃の照準を合わせる唯一の手段だ。
最新の作戦テスト評価部の報告書では機関砲で別の問題があると指摘している。空軍のF-35Aについてで機関砲を内部搭載するのは同型のみ。(海兵隊、海軍仕様は機体下部に外部搭載する)
F-35Aのステルス性を確保するため、内蔵機関砲は扉の下に装着し、この扉を発砲時に開閉する。空軍はF-35Aによる初の機関砲射撃の映像を誇らしく公表した。だがドア開閉で機体がわずかに方向を変えることが判明した。ドアの抗力によるものだ。これで機関砲射撃が命中しなくなる可能性が十分ある。
作戦テスト評価部長のメモではこのドアが原因の照準エラーは「正確な射撃性能を定めた仕様の許容範囲を逸脱する」としている。一方、空軍のF-35が搭載する銃弾は181発とF-16の511発、A-10の1,100発と大きく差がある。戦闘では一発の意味は大きい。

2,000ポンド JDAM爆弾を投下するF-35A in 2012. Photo via Mark Jones, Jr. / Flickr

F-35の近接航空支援能力で自軍地上部隊が苦しむ


将来の近接航空支援をめぐる議論はまだ続いているが、たしかなことがひとつある。F-35は地上部隊支援の実施がまだできず、永久にできない可能性を示す理由も多数ある。
作戦テスト評価部長メモではF-35がCAS任務に適しているとの意見を根本から揺るがしている。F-35は敵防空網の効率が高い場所での近接航空支援の実施が期待されステルス性能は必須だ。
だがCASが求められる戦闘は通常は敵防空体制の場所では展開されない。メモでも近接航空支援は低防空脅威体制で実施されるのが通例と指摘する。これは同機の近接航空支援は不可能と言っているに等しい。
近接航空支援の議論は空と陸の双方から考えるのが大切だ。
航空部隊は地上部隊と相互に支え合う。近接戦闘が始まるまでに敵の防空体制が無効担っている前提だ。また敵軍も地上戦闘に忙殺され、高性能ミサイルは戦闘地域に持ち込んでいない前提だ。なんといってもミサイルは装甲がなく、移動に時間がかかり、再補充が困難だからだ。
F-35のCAS実施能力は極めて限定されたままだ。
作戦テスト評価部長メモでははっきりと「F-35Aはブロック3i仕様では数々の制約が加わり、CAS任務の効果は現状のF-15E、F-16、F-18やA-10の水準に及ばない」としている。
前述したがF-35Aは「初期作戦能力」ありと認定されているが、爆弾は二発しか搭載できず、しかもこの爆弾の威力が大きすぎるため近接戦闘では友軍の被害を恐れ投下できない。CASでこの爆弾を投下した場合、機体は即座に基地に帰還し再装填して再び戻ってくる必要がある。
F-35Aが使用する基地は戦線から離れた地点となる公算が大きい。というのは、8,000フィート長のコンクリート滑走路に加え膨大な支援装備が必要だからで、このためCAS任務での対応が遅くなる。
友軍地上部隊支援に機関砲が使えないことが痛い。F-35に実用水準の機関砲が搭載されるのは2019年の予定だ。
機関砲はCASではロケット弾より効果が大きい。(F-35Aでは今のところロケット弾は搭載していない) とくに「危険度が高い接近」状況における交戦でこのことは確実だ。敵が友軍に極めて近いところまで進出している状況のことだ。
F-35Aで搭載可能な爆弾二種類のうち小型のGBU-12は500ポンド爆弾で高度250メートル地点から投下した場合友軍が被害を被る可能性は10パーセントと軍のリスク試算表は示している。大した数字に見えないかもしれないが、歴史をひもとけば戦闘の大部分は100メートル以内で発生している。
もしF-35AがCAS任務に投入されるのであれば、我が地上部隊に接近してくる敵には150メートル以上も余裕が生まれることになる。つまり空からの攻撃を恐れずに行動できる範囲だ。
機関砲が有効に使えればこの問題は解決する。F-35は25ミリ機関砲一丁を搭載する。同機関砲の安全リスク距離は100メートル。もちろん安全距離は機がどれだけ正確に飛行し、照準を合わせるかで変わる。
作戦テスト評価部長のメモにあるように機関砲の砲口扉を開けるだけで機体は一方向へ引っ張られ、弾丸が友軍ノ一する手前に落ちるあるいは敵陣の背後に着弾する可能性が残る。
だがこれはあくまでもF-35が戦場上空で十分な時間滞空し、必要とされるときに爆弾投下や銃撃を加えることができる前提だ。F-35は燃料消費が大量との悪評が高く空中給油機がなければ地上部隊用の滞空は不可能だ。
メモでは「F-35の燃料消費量は高く、空中給油の燃料搬入量が低いため給油時間が長く、結果として待機時間が短くなる」としている。
.残念ながら地上部隊は空中給油や再装填が終わるまで待ってくれない。燃料消費量が多いことと機体抗力が大きいことでF-35は行動半径が短く、現場滞空時間は短い。
各型F-35が共通した問題を抱えており、短距離でしか有効性を発揮できないため、対策として給油機に戻る機体があれば別の機体を戦場上空に滞空させることがある。だが、整備陣がF-35を飛行可能状態に保つことで問題があるとすでに指摘があり、同時にローテーション運用が可能となるだけの機数を確保できるようになるか疑問だ。
現状のF-35出撃率でこの問題がすでに浮上しており、今のところF-35の飛行は5日に一回程度にとどまっている。
いいかえるとF-35を12機で運用する飛行中隊がアフガニスタンやシリアに進出すると、二機一組のミッションを一日に一回実施して全国を対象にするのがやっとということになる。
F-35As. U.S. Air Force photo

データ融合のはずがパイロット負担増に

広報部門や「専門家」から広くアメリカ国民にお金がF-35で無駄になっていないとし、同機には機内センサーが集めるデータと他機のセンサーや地上配備センサーを統合する能力があると宣伝している。

これをデータ融合と呼び、各F-35の搭載するレーダー、ヴィデオカメラ、赤外線シーカー、パッシヴ電子戦受信機で敵位置を突き止め、空中地上の敵脅威を把握する。
F-35の売りの一つとして搭載コンピュータで機内外のセンサーが集めた情報を統合し、センサー情報を一つにまとめて表示するとしている。(既存機種ではセンサーごとに情報を表示している)
単一表示を即座に編隊僚機と共有することで全員が正確かつ確実な標的情報や脅威環境が周囲にあることを認識でき、無線による音声のやり取りで時間を取られることなく、迅速に行えるとしている。
これはそうありたいという姿であって、実際にはF-35では自機のデータを管理統合するのにも苦労し、ましてや僚機や偵察機とのデータ融合はできていないのが現状だ。
テストパイロットからはF-35でセンサーをすべて作動させると実際と違う結果が表示されるとの報告が上がっている。レーダー及び赤外線センサーを同時に作動させ敵機一機を探知すると、2つのセンサーがヘルメット内画像へ敵機二機として表示する。地上標的を相手にしても同じ現象が発生している。
そこでテストパイロットはセンサーは一つだけ作動させて無駄な探知結果を消去している。作戦テスト評価部長によれば「これでは戦闘に役立たずだ。多数の探知手段から結果をまとめて正確に追尾をし、状況認識度を引き上げ敵を突き止め交戦する原則にも反する」としている。
F-35各機のコンピュータが戦闘空域で何が発生しているかを把握するのに苦労するのでは話にならない。だが間違った標的情報を複数のF-35がデータを複数機材データリンク Multi-Aircraft Data Linkで共有すれば問題を複雑化するだけだ
F-35最大の利点とされてきたものが期待値に達していないだけでなく、パイロットの負担を増やしているのだ。
整備員がデバイスをF-35に接続する。U.S. Air Force photo

ロジスティックスのソフトウェア問題

もう一つの問題hが自動ロジスティックス情報システムAutonomic Logistics Information Systemと呼ばれる大規模コンピュータシステムでミッション運用保守整備診断保全日程部品発注をすべて自動化する構想だだが厄介なALISが頭痛の種になっている
アップデート版ALIS 2.0.2は米空軍の初期作戦能力獲得宣言と同時に供用開始のはずだったが、実際はIOC時点でも新バージョンはまだ完成していない。ロッキードがプラット&ホイットニーの独自エンジンコンピュータデータシステムをALISに統合できていないためだ。
ALISは機内と地上のコンピュータをつなぎ、ソフトウェアで世界規模のネットワークを形成し、F-35の毎回のフライトで飛行経路、標的、脅威データをアップロード、ダウンロードし保守整備問題を診断し、必要な補修整備を整備陣に指示し、部品発注し、部品装着状態を管理し、機体の改修履歴を見ながら整備陣に予防保全を行わせる。コンピューターコードは24百万行に及ぶ。
同時にF-35配備基地には大型ハードウェアの配置場所が必要になる。最新のALISハードウェア構成は当初よりは小型化し使いやすくなっているが、それでも移動時には立ち上げに数日かかる。このためF-35は簡単に配備展開するのが難しく、作戦運用上で間に合うのか疑問の声があがっている。
たとえば各機のデータを新型ALIS地上コンピュータへダウンロードするには24時間が必要だ。このためF-35を新地点に移動させるとデータ転送だけで丸一日が無駄になる。かつ、データアップロードは一度に一機しかできない。ということはヒル空軍基地所属の最初の「実戦」飛行隊12機を戦闘任務に投入する場合は飛行隊全体の整備活動をALISで開始するまで2週間が必要となる。

ALISのアップロード・ダウンロードでは最高機密のミッションデータを取り扱うため、ALISコンピュータは特別警護施設に格納されており、移動用コンテナー施設の一部となっている。
さらに前線配備施設は大掛かりなことに加え、海外の戦場では民間契約企業に設置運営を任せることになっている。ロッキード・マーティンから業務委託を受けた業者が機体からデータをALIS施設へ転送する。プラット&ホイットニー社関係者もエンジンデータを飛行後点検整備のため転送する必要がある。
開発期間中ならいいが、戦闘現場でこのような仕組みを動かすと配備の邪魔であり、基地選定も民間業者の安全を考慮すれば自ずから限定されてしまう。つまり前線から遠く離れた地点となり、緊急時の対応に時間がかかり、ただでさえ数が少ない空中給油機の出番が更に増えてしまう。
兵装扉を開放したF-35A U.S. Air Force photo

今後の戦闘投入への不安

事業では戦闘対応可能なF-35をブロック3Fとしてシステム開発実証段階(2018年末期限)の終了までに準備するのが狙いだ。

ギルモア部長のまとめでは一部では簡単なフライトテストなど進捗が見られるが、ペースは予定から大幅に遅れ、ブロック3Fのテストが予算内期間内に完了するのは絶望的とする。またフライトテストでこの部分が一番重要な点なのだ。
ギルモア試算では開発テストフライトは最低でもあと一年必要で「予定したテスト項目で新規性能を確認し、数百件残る不具合点を改修する」のだという。
となると2018年までの運用テスト完了は無理だ。
事態をややここしくしているのはこの重要な時期でテスト要員が現場を去っていることだ。テストセンターの離職率は20%近くになっていると運用テスト評価部長はまとめており、交代補充がないと指摘。
ギルモア部長からは整備要員含む関係者の一時解雇も始まっていると指摘があり、技術者やデータ解析者も例外ではない。一時解雇を見てまだ仕事があるスタッフもいち早く次の仕事を探している。
そうなると統合テストセンターに多くの作業が残る中で人員不足が大きな影響を出すと指摘。
管理の不手際さが露呈した形だ。JSFの開発完了まで道は遠いが、関係者は適切な予算配分を図るよりも将来の調達予算増額に熱心なようだ。
JSF関係者としてロッキード・マーティンと政府の双方から繰り返し低率初期生産から脱却の希望が表明されている。議会には465機の一括購入を求め、巨額の前金確保を米国並びに海外軍事パートナーから2018年開始を想定し要望している。
にもかかわらず人員増員や飛行時間の追加の要望は表明されていない。開発をこれ以上長引かせないためにもこれらの手当が必要なはずだが。
生産増となれば修正手直しなければ配備できない機数もそれだけ増えることになる。
米会計検査院は初期製造機を対象に開発テスト期間中に見つかった結果を修正するのに17億ドルが必要と試算している。その分の費用が今後調達されるF-35に上乗せされる。
現時点で175機が運用可能となっている。
2017年にペンタゴンは80機を調達し、2018年は100機を導入する。355機の機材がそろっても戦闘に投入できず、開発、運用両テストで見つかる問題の修正作業に回される。(さらに作業内容の効果を確認するテストも必要だ)
作戦テストと評価は2021年までに完了する気配がない。つまり355機が戦闘遂行可能となるのは採炭で2023年で、2024年あるいは2025年になる可能性は十分ある。言い換えれば355機(これに加えて2018年以降に完成する機体すべて)が戦場に投入されるのはあと7-9年後ということだ。
新問題が浮上すると日程と費用は大きく影響を受ける。現時点で完成済み機材で大規模な欠陥が見つ勝った場合の予算は準備されていない。
開発テストよりも生産準備に予算を当て増産を狙えば各軍と納税者の手元に数百機の運用不能機材が残るだけだ。国防総省には製造ずみ各機を戦闘可能に変える予算がない。各機の使い道は部品取りしかないだろう。
不活性GBU-31爆弾を F-35A に搭載する。アイダホで。. U.S. Air Force photo

今後のテスト体制が不確かだ

最も心配されるニュースは空軍関係者と共用事業推進室が増産を急ぐあまり、今後のテストは重要視していないことだ。ギルモア部長は「適度な内容の評価試験へ向けた準備企画が停滞している」と報告する。
その証拠としてギルモアは推進室の計画案では戦闘テスト用に量産機を手配していないと指摘。ギルモア部長によれば同計画では作戦テストの実施用に十分な数の最終仕様機材が手配できないと見ている。
「大幅な計画遅れと開発テスト期間中に見つかった問題により大幅な改修が作戦テスト用機材に必要となった。これらの機材は製造中に試験用の配線を施してあり、量産型と同じ仕様にする必要がある」と報告書は指摘している。
報告書ではさらに対象23機に155点もの改修箇所があると指摘し、これがないと戦闘テストの実施ができず、一部の回収作業は実施先が未定のままだという。つまり作戦テスト評価の実施ができないことになる。
推進室が適度な運用テスト案の作成に失敗したばかりでなく、テスト予算の確保にも失敗し、テストそのものに必要な施設が確保できていない。
なかでもフライトテスト用のデータ収集記録テレメートリーポッドの予算が手当できていない。これは兵器発射の模擬試験で得るデータの記録解析用には不可欠な装備だ。ポッドの作動が確認されて安全が確保されるまではテストも実施できない。

空軍はIOC宣言前に解決すべき課題を7つまとめているがそのうち解決したのは4つだけのままIOCを発表したDOT&E list
報告書では高度に複雑で戦闘状況を再現するテストシナリオに必要なシミュレーション施設がまだ完成しておらず、予定からも遅れているとも指摘している。ただしこれは推進室が過去15年間実現を約束していた内容だ。
この施設は検定用シミュレーターと呼ばれ、現実に限りなく近いコックピットのシミュレーター複数を含み、複数機による戦術シナリオを高度環境を想定して再現するものだ。
F-35の有する多様な性能を試すためには唯一の手段となるのはF-35編隊が直面するはずの脅威内容をすべて再現するには演習地では不可能なためだ。
2001年以来ロッキード・マーティンの技術陣は同施設の生産契約でとりかかっているが、ここまで来ても完成しておらず、作戦テスト評価部は運用テスト開始までに間に合うのか気にもんでいる。
そこで推進室はシミュレーター開発を海軍実験部門に任せることした。
作戦テスト評価部の報告書ではこの検定用シミュレーターが運用開始となるのは予定される作戦評価テスト開始2018年には間に合いそうもなく、完成はその二三年以上後と見ている。
Michael Gilmore, the Pentagon’s Director of Operational Test and Evaluation. C-SPAN capture

F-35を正しく評価する最後の砦は?

今回のメモでは空軍によるIOC宣言は広報材料以外の何物でもないとしている。

不幸にもギルモア部長のメモはF-35の正しい評価を議会、ホワイトハウス、国防総省またはアメリカ国民に示す最後の機会になる。作戦テスト評価部長のギルモア自身は大統領による任命なのだ。
ギルモア自身は中立性をたもち分別のとれた演技者の役割を果たしている。何度も誘惑に駆られたはずで実際に前任者はこれにたえきれなかったのだが、転職後の防衛産業を意識した見解を示すことで運用テストの失敗を水増しして事業になんの悪影響もないと見せかけることや不十分なテスト案にも眼をつぶることができたはずだ。
政権の任期が終わりに近づくこともあり今後数ヶ月で同じことが発生するかもしれない。新政権が発足すればテスト部門長は交代となる。実力があり勇気のある人物、業界から便宜を受けない人物が職につけば同機を駆って戦闘に臨む男女が危険のない機体で戦闘に勝利を収め生命を守ることができるようになる。数々の遅延がこれまで発生しており、懐疑的な見方をするものもギルモアの任期中に関係者がそう考えてくれることに救いを求めるのではないか。■