2022年9月30日金曜日

ノルドストリーム・海底パイプラインの漏洩は4箇所に拡大。NATOとEUはロシアの関与を非難。パイプライン復旧は困難になるのか。

NATO Says All Signs Point To Sabotage Of Baltic Undersea Pipelines

Swedish Coast Guard

 

 

ウェーデン当局によると、ロシアとドイツ間のバルト海中を走るパイプライン「Nord Stream 1」と「2」で、4件目の断裂が確認された。破裂の正確な経緯は不明だが、NATOは欧州連合(EU)とともに、何らかの意図的な攻撃によるものの可能性が高いと結論付けた。

 

 

 今回の破裂は、ノルドストリーム 2パイプラインで2件目のものだ。ノルドストリーム 1のパイプラインでは、他に二箇所で破裂が確認されている。最初の破断は、月曜日に大きな水中爆発に続き検知された。本稿執筆時点では、EUもNATOも、加盟国も、単独で、いずれかの行為者の責任を正式に告発していないが、ロシアを指さす声はますます大きくなってきている

 

ノルドストリーム 2パイプラインの破断箇所の1つ上で天然ガスが表面に泡立つ。スウェーデン沿岸警備隊

 

スウェーデン沿岸警備隊は本日未明、2つ目のノルドストリーム 2の破断を明らかにし、最初の破断地点の近く(約1マイル)であったと述べた。また、同警備隊の哨戒機Dash 8-Q300と捜索救助船アンフィライトAmfitriteが撮影したと思われる、水面でガスが噴出している写真とビデオ映像を公開した。アンフィライトは水中無人機も装備しているが、このシステムで破損箇所の直接点検を行ったかどうかは不明。

 

 

スウェーデン沿岸警備隊の捜索救助船「アンフィライト」と、上空を飛行する同隊の航空機「ダッシュ8-Q300」。スウェーデン沿岸警備隊 Swedish Coast Guard

 

 

ノルドストリーム2パイプラインの破断箇所はともに国際水域だが、スウェーデンの排他的経済水域(EEZ)内である。ノルドストリーム 1の破断した2本のパイプラインも国際水域にあるが、デンマークのEEZが適用される区域に位置している。この2つのパイプラインは、いずれもロシアの国営ガス会社ガスプロムと欧州のエネルギー企業が部分所有している。

 スウェーデンとデンマーク両国の当局が調査を進めており、米国など欧州以外の国も協力している。デンマークはNATOに加盟しており、スウェーデンは現在、NATOへの加盟を申請中である。

 「バルト海の国際水域におけるNordstream1とNordstream 2のパイプライン損傷に深く懸念する」と、本日のNATOの声明は述べている。「現時点で入手可能な情報すべては、これが故意、無謀、かつ無責任な妨害行為の結果であると示している。漏出は、船舶への危険と大きな環境破壊を引き起こしている。我々は、被害の原因究明の調査活動を支持する」。

 「我々は、同盟国として、国家および非国家主体によるエネルギーの強制的使用やその他のハイブリッド戦術に備え、抑止し、防御すると約束している」。声明は、パイプライン事故の責任者として特定の当事者を挙げていない。「同盟国の重要インフラに対するいかなる意図的な攻撃に、団結した断固とした対応で迎え撃つ」。

 これは、昨日EUが発表した声明と一致しており、「入手可能なすべての情報は、これらの漏えいが意図的な行為の結果であることを示している」と述べ、「強固で団結した対応」を約束した。同じ感情は、スウェーデンとデンマーク両国の首相がそれぞれ表明しており、スウェーデンのマグダレナ・アンダーソン首相Magdalena Anderssonは本日、被害をもたらすには大型の爆発物が必要だったはずと述べている。スウェーデンの国家法執行機関で、スパイ対策やテロ対策も担当し、米連邦捜査局(FBI)に匹敵するスウェーデン保安庁は、「外国勢力が背後にいることはまだ否定できない」と述べている。

 公式な疑惑がないにもかかわらず、西側当局者はますますロシア政府が犯人の可能性があると見ているようだ。デンマークの匿名軍関係者がCNNに語ったところによると、「この地域でこのような作戦を実行できる能力と関心を持つ主体が他にあるとは考えにくい」という。 ロシアは現在、2月のウクライナ侵攻で厳しい西側制裁を受けており、報復として、冬が近づくにつれてヨーロッパ各国に影響を及ぼす深刻なエネルギー危機を煽ることに明確な関心を持っている。ガスプロムはすでに8月末に、表向きはメンテナンスのためノルドストリーム1を通るガスの流れを停止した。ノルドストリーム2は昨年完成したが、ロシアによるウクライナへの全面侵攻を前に、ドイツ当局がアメリカ政府の圧力でプロジェクトを凍結し、運用は始まっていない。

 さらに、CNNの記事は、昨日イギリスのタイムズが報じた、乗員なしの水中車両で爆発物を設置するロシアの攻撃は、特に「あり得るシナリオ」だとイギリス当局が見ていることを伝えていた。また、ノルドストリーム・パイプラインの損傷部分が比較的浅いところにあることから、戦闘ダイバーが爆発物を設置した可能性も指摘されている。これは、ドイツの雑誌『シュピーゲル』が、米中央情報局(CIA)が夏にベルリン当局にノルドストリーム・パイプラインへの攻撃の可能性を警告していたと報じたのを受けている。

 また、CNNは本日、パイプラインの破断地点付近のバルト海で今週初め、ロシア海軍の支援艦が観測されたと報じた。しかし、ロシア海軍の最近の活動がこれらの事件に直接関連しているとの明確な兆候はない。ロシアはバルト海沿岸に大規模海軍力を展開しており、水上艦や潜水艦など艦艇を定期的に出入りさせている。

 ロシア当局は、パイプライン事故への関与を否定し、独自の調査を約束している。また、米国や他のNATO加盟国に何らかの責任があるとの疑惑を投げかけ、その説を拡大しているが、これらの主張を裏付ける証拠は何一つ示していない。

 この地域では米海軍やNATOの海軍が定期的に活動しているため、これらの事件への西側の関与の可能性について憶測を呼んでいる。2015年にスウェーデンの治安部隊がノルドストリーム1パイプライン付近で爆発物を内蔵した機雷探知機を回収した事件が、こうした議論で再浮上している。その無人水中装備の所有者は明らかにされず、当時のスウェーデン当局は、パイプラインや地域を航行する船舶に脅威を与えるものではないとしていた。

 The War Zoneは、米海軍の欧州最高司令部であるNaval Forces Europe-Africa/U.S. Sixth Fleet (NAVFOREUR-AF/Sixth Fleet) やNATOにコメントを求めた。NAVFOREUR-AF/Sixth Fleetのスポークスマンのタマラ・ローレンスTamara Lawrence少佐は、昨日の米国防省高官と国務省主席報道官ネッド・プライスNed Priceの発言を紹介した。

 昨日、米国防省高官は、ウクライナ情勢に関する定例記者会見の中で、パイプライン事件に米国は「絶対に関与していない」と発言した。

 国務省のプライス報道官は、昨日の別の記者会見で、「米国がこれらのパイプラインの明らかな破壊行為に何らかの形で関与しているとする考えは、とんでもない」と述べた。「これはロシアの偽情報以外の何物でもなく、そのように扱われるべきです」。

 「我々は、ノルドストリームパイプラインの漏洩に関する報告を把握している」と、ローレンス少佐も昨日の声明で述べていた。「必要であれば、同盟国やパートナーとの緊密な連携のもと、支援やサポートを提供する用意がある 」。

 進行中の各種調査により、今回の事件の性質や責任者について、最終的に何らかの結論が出るまでには、時間がかかりそうだ。EU、NATOその他が、特にロシアに責任があると判断した場合に、何をするかは、まだわからない。国際海域の多国籍の海底インフラへの攻撃に対する有効かつ実用的な対応を見出す課題についての議論は、海底通信ケーブル切断の可能性でも出ていた。

 地政学的な影響だけでなく、パイプライン破断により現在流出しているガスによる環境問題も懸念されている。少なくとも月曜日までには、ノルドストリーム 1の破断箇所のガス噴出は止まると予想される。

 さらに、破損の程度がひどく、修復にコストがかかるため、事実上パイプラインが永久停止することも懸念事項だ。破損したパイプラインからガスが止まると、海水が流入し、腐食が始まる。さらに、パイプラインに氷の栓ができる危険性もあり、修理過程で氷を除去する必要が出てkる。

 また、ノルドストリーム・パイプライン事故は、敵対企業による取り組みを反映しているのではないかという懸念も高まっている。デンマーク警察は、北海のハルフダンB海底油田・ガス田上空の謎のドローン活動について調査中と確認したが、詳細は不明である。ノルウェー当局は今週初め、沖合の石油・ガス施設周辺の未確認飛行物体について警告を発し、その後、同施設周辺で軍事的プレゼンスを高めると発表している。

 今回のパイプラインの爆発といい、説明のつかないドローンの活動といい、ロシアのウクライナ紛争がヨーロッパの他地域に飛び火しているとの疑問が生じるのは確かだ。■

 

 

 

NATO Says All Signs Point To Sabotage Of Baltic Undersea Pipelines

BYJOSEPH TREVITHICK| PUBLISHED SEP 29, 2022 5:09 PM

THE WAR ZONE



 

ロシアがウクライナ東部を併合後に核兵器を投入する可能性はどこまであるのか専門家4名の見識を聞いてみた

 

 

核兵器を搭載したロシアの道路移動型ICBM

 

 

近のマスコミは、ウクライナ戦争で一つの問題に熱中している。プーチン大統領は核兵器の使用にふみきるか?ロシアの指導者の発言がハッタリかは、すぐに分かるだろう。

 明日、クレムリンは、ロシア連邦加盟を問うた偽の投票を行ったウクライナ一部を併合する。プーチンは過去に、ロシアの一部、あるいはモスクワがロシアの一部とみなす部分が攻撃を受ければ、モスクワが対応することになると述べている。これは戦術核兵器の使用まで意味する。

 19FortyFiveでは、数日前からこの問題について議論し、分析し、一流の専門家の分析と専門知識を求めてきた。今回は、専門家4名に、この問題についての見解と、プーチンの今後の対応を聞いた。

 具体的な質問は以下の通り。プーチンがウクライナで核兵器を使えばどうなるか?以下まとめてみた。

 

マーク・カンシアンCSIS上級顧問 Mark F. Cancian, Senior Adviser, CSIS: 

ロシアの核兵器使用がウクライナに限定されれば、NATOが核兵器使用を選択することはないだろう。欧州諸国は自国領土への拡大を恐れるだろうし、バイデン大統領も「第三次世界大戦を起こしたくない」と繰り返し表明している。同様に、NATOがウクライナやカリーニングラードのようなロシアの脆弱な領土に通常兵力を使用することも、エスカレーションへの懸念から疑わしい。

 代わりに、NATOは別の手段で対応することになろう。外交的には、NATOはロシアをさらに孤立させ、おそらくインドと中国にロシアから燃料を買うのをやめさせるだろう。軍事的には、NATOは、ウクライナがまだ抵抗していると仮定し、ウクライナへの装備供給を増やすだろう。NATOは、装備の戦時使用に関し制限をすべて撤廃し、ロシア本土を攻撃できるATACMSなど装備品も供給することになる。NATO、特に米国は、同盟国を安心させ防衛するために、東ヨーロッパに追加部隊と防空能力を移動させるだろう。

 

Jアンドレス・ギャノン、米外交問題評議会スタントン核安全保障フェローJ Andrés Gannon, Stanton Nuclear Security Fellow at the Council on Foreign Relations

NATOがロシアの攻勢を抑制し、ウクライナが2014年以降に失った領土の支配権を取り戻すのを支援するため強力な通常軍事対応に踏み切ることを期待してる。NATOが核兵器を使用する可能性は低い。なぜなら、同規模の戦術核兵器は西側の軍備の強みではないし、戦略的な有用性もあまりないからだ。

 通常兵器による報復は、ロシアに大きな犠牲を強いるほど紛争をエスカレートさせ、ロシアや他の国による将来の核使用を抑止しようとする一方で、ロシアが失うものは何もないと感じるほどエスカレートさせないようにできる。

 NATOがロシア領土を攻撃するかどうか(その可能性は低い)、何をもってロシア領土とみなすか(クリミアはあいまいなままだ)という未解決問題が残っている。

 

ミシガン大学ジェラルド・R・フォード公共政策大学院国際政策・実務教授 メルヴィン・レヴィツキー元大使Ambassador (ret) Melvyn Levitsky, Professor of International Policy and Practice, Gerald R. Ford School of Public Policy, University of Michigan:

ロシアが核兵器を使用する可能性は極めて低い。冷戦時代のドクトリン「相互確証破壊」は、冷戦時代ほど明文化されてはいないが、核保有国が核兵器を使用するリスクを負わないようにするため、今日も健在だ。ロシアが小型戦術核兵器でさえ使用しても、意味をなさない。放射性物質がドンバスの自国軍に影響を与え、ロシア国内にも拡散する可能性がある。

 プーチンが自己保身や体制維持のため核兵器を使おうとする「籠の虎」症候群の危険性もあるが、その場合は彼のグループの他の人々が介入してくると思う。

 とはいえ、バイデン政権がロシア側に明らかにしたとされるように、西側諸国政府が核使用に対しいかなる手段で強力に対応するとの断固たる姿勢を維持することが重要だ。

 

ノリッチ大学外交・IR大学院プログラム教授ラシャ・チャントゥリゼ博士Lasha Tchantouridzé, Ph.D. Professor, the Graduate Programs in Diplomacy and IR Norwich University: 

ロシアは現在、核兵器使用に踏み切る可能性が非常に高いが、ウクライナで使用することはないだろう。その代わり、モスクワはヨーロッパでより都合のよいターゲットを見つけるかもしれない。

 ロシア大統領には少なくとも3つのオプションがある。1つは、高高度で爆発させる方法だ。この方法では、ウクライナ含むヨーロッパのインフラの多くを機能不全に陥れることができる。2つ目は、ドイツの大森林やスウェーデンの辺境など、人口が少ない地域に巡航ミサイルを打ち込むこと。3つ目は、重要でないNATOの都市に秘密裏に核兵器を配備し、何千人もの死傷者を出し、アメリカを非難することである。NATOは、どの場合でも大したことはできない。

 しかし、米国は、犠牲者何百万人を出す報復を行うか、モスクワの説明を受け入れるかの選択を迫られることになる。2008年以来、ワシントンはロシアの言い分をほぼ受け入れてきており、アメリカ大統領は、ほとんどのアメリカ人が発音できないヨーロッパ都市への攻撃に報復の代償にアメリカの都市の交換はできないだろう。■

 

What Happens If Putin Uses Nuclear Weapons? What the Experts Told Us - 19FortyFive

ByHarry Kazianis

 

 

Expert Biography: Harry J. Kazianis (@Grecianformula) serves as President and CEO of Rogue States Project, a bipartisan national security think tank. He has held senior positions at the Center for the National Interest, the Heritage Foundation, the Potomac Foundation, and Pacific Forum. Kazianis has also worked as a defense journalist, serving as Editor-In-Chief of the Diplomat and Executive Editor of The National Interest. His ideas have been published in the New York Times, Washington Post, Wall Street Journal, Newsweek, CNN, CNBC, and many other outlets across the political spectrum. He holds a graduate degree focusing on International Relations from Harvard University and is the author of the book The Tao of A2/AD, a study of Chinese military modernization.

In this article:featured, Nuclear War, Nuclear Weapons, Putin, Russia, War in Ukraine

 


2022年9月29日木曜日

ACCは中国の最新戦闘機開発状況を警戒。一方太平洋空軍はJ-20の実力を軽視。いずれにせよNGAD開発の重要性を強調する米空軍の主張の援護弾か。

via Twitter


航空戦闘軍団では、中国の次世代航空戦闘プログラムが米空軍と並行して進行中と見ている

 

空戦闘軍団(ACC)のトップ、マーク・D・ケリー大将Gen. Mark D. Kellyによれば、中国は米空軍の次世代航空優勢プログラム(NGAD)への対抗策開発に忙しいという。ケリー大将は、中国の極秘の取り組みから、第6世代有人戦闘機を含む、米空軍と同様の「システム・オブ・システム」が登場すると予想している。

NGADプログラムは第6世代有人戦闘機だけにとどまらない。有人機と一緒に働く協働型ドローンや、新型武器、センサー、通信アーキテクチャなども計画されている。米空軍はNGADを2030年以前に実戦配備したいと考えており、中国も歩調を合わせているとケリー大将は言う。

ケリー大将は最近、空軍宇宙軍協会Air & Space Forces AssociationのAir, Space & Cyber ConferenceでThe War Zone含むメディアを前に、将来の中国の航空戦闘プログラムに関する考察を紹介した。

その中で、ケリー大将は、中国が将来の有人戦闘機を含む第6世代の航空戦力が「我々の見方と大きく異なり、シグネチャーの指数関数的な削減、処理能力とセンシングの指数関数的な加速」を実現するとと見ているのがポイントだ。もうひとつ重要な要素は、オープン・ミッション・システムが支援する「反復」改良です。

反復アプローチで中国は「意味のあるスピードでの再プログラム」が可能になるとケリーは主張している。

 

2021年のAir, Space & Cyber ConferenceでFighter Roadmapのプレゼンテーションを行う航空戦闘軍団司令官Mark D. Kelly大将。U.S. Air Force illustration by Tech. Sgt. Joshua R. M. Dewberry

さらにACCのボスは、ソ連が設計したフランカー・シリーズの改良を中心に、中国が戦闘機ファミリーの開発を繰り返してきた経緯を指摘している。

「Su-27から始まり、Su-30、J-16、Su-35へと変化してきた」。

 

2021年に行われた中露アビアダート演習で、離陸する中国のJ-16戦闘機。 Ministry of Defense of the Russian Federation

中国は1992年にSu-27最初の輸出仕向地となり、2000年にロシアからマルチロールSu-30MKKを購入するまで、Su-27をライセンス生産(J-11、J-11A)した後、マルチロール機能を以外に中国製エンジンやエイビオニクスを搭載した国産J-11Bの開発を開始した。その結果、Su-30MKKの中国版2人乗りのJ-16が誕生した。一方、空母艦載機のSu-33も同様の扱いを受け、多用途機J-15として登場した。現在、J-15とJ-16は、電子戦領域への拡張を含め、さらに進化したバージョンの開発が続いている。

興味深いことに、ケリー大将は、中国が比較的少数の24機のSu-35(ロシアの最新型フランカー)を突然購入した理由を示唆している。ケリー大将は、Su-35が第4世代であるにもかかわらず「第5世代のエイビオニクスと第5世代のスピード」を備えていることに注目し、購入によって次の戦闘機、つまり第5世代から第6世代への移行が「少し楽になる」と述べた。

北京がSu-35を購入して以来、発注理由で多くの憶測が飛び交った。中国がSu-35の推力偏向エンジンを詳しく観察し、ロシアの最先端資産の武器と電子戦システムを見聞したかったのだという説もある。Su-35は異種空戦訓練以外に、南シナ海での長距離護衛任務にも運用されている。このように、中国にとってSu-35を少量購入することは、ロシアの最新エイビオニクスや武器と自国技術を比較する意味でも、また、運動性の高い航空機や関連戦術の開発でも、非常に有意義となる。

ケリー大将によれば、フランカー・ファミリーの経験は、中国がNGADに相当する機材を開発する上で有効活用できるという。米国が先を争って開発しなければならないほど、中国が有利になる可能性がある。ケリー大将は、米空軍が「競合相手より少なくとも1カ月早く第6世代の制空権を獲得する」よう望むと述べた。この発言の意味はすぐにはわからないが、The War ZoneはACCに確認を打診している。

とはいえ、この発言は、中国の第5世代ステルス戦闘機J-20の脅威を軽視している太平洋空軍のケネス・ウィルスバック大将Gen. Kenneth Wilsbachと対照的に、中国のまだ始まったばかりの第6世代能力に対する懸念の度合いを反映しているように思われる。ウィルスバック大将は、The War Zoneなどメディアに対して、J-20は 「眠れなくなるほどの存在ではない」と語っていた。

 

F-22のコックピットに座る太平洋空軍司令官ケン・ウィルスバック大将(Australia, September 5, 2022. U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Tristan Biese

中国がJ-20の開発を止めていないことも注目される。昨年10月に公開された複座機だけでなく、推力偏向エンジンを搭載し、全体性能を向上させる新機能が期待される、さらに進化した「J-20B」の噂も絶えない。

中国は、J-10戦闘機にWS-10エンジンの推力ベクトル化バージョンを搭載してテストしている。

ケリー大将は、NGADの「システム・オブ・システムズ」と類似していることを除けば、中国の第6世代航空戦闘プログラムについて米国が知っていることの詳細をほとんど明らかにしなかった。しかし、興味深い詳細として、同大将は、今後出現するシステムファミリーは、現在のプラットフォームと比較して、ステルス性が「指数関数的に」向上すると述べている。ケリー大将は、中国は第6世代プラットフォームに要求される高度なステルス性を習得しており、これも反復的アプローチの一部であると断言した。

また、中国の第6世代戦闘機がいつ運用を開始するかというスケジュールも明らかにしなかったが、ケリー大将は「計画通りだ、絶対に」と述べている。

 

納品前のJ-20第5世代戦闘機。 @白龙_龙腾四海 & @机外停车RABBIT VIA WEIBO

ケリー大将は、中国が「第一級空軍を構築中」と判断する。第6世代機の野望は、さらに良いものになる可能性が高い。このことを念頭に置き、ACCのボスは「彼らより先にそこに到達する必要がある」と繰り返した。「そうしないと、いい結果にならない」。

中国側では、第6世代戦闘機の構想について、ごくわずかなヒントがあるだけだ。対照的に、次世代ステルス爆撃機計画は国営メディアや中国軍が宣伝しているが、詳細は厳重に守られている。

H-20爆撃機は、人民解放軍の航空戦闘能力の近代化取り組みの一部に過ぎない。その他には空母運用型ステルス第5世代戦闘機、新世代の輸送・給油タンカー、さらにすでに就航しているか試験中の各種新しい回転翼機が少なくとも1つ含まれる。米情報機関は、中国が中距離ステルス爆撃機にも取り組んでいると評価している。これは、NGADスタイルの空軍構想に関連する有人装備となる可能性がある。

また、中国がNGADスタイルのアーキテクチャに適用可能性な無人戦闘機(UCAV)を急速に開発していることは明らかで、米空軍の人工知能プログラム「スカイボーグ」と同様のコンセプトで、無人戦闘機に高度な自律機能を持たせる可能性を示唆している。

 

謎に包まれた「ダークソード」は、J-20や第6世代有人戦闘機とチームを組んで使用する高性能かつステルス性の高いUCAVと考えられている。 Chinese Internet

有人戦闘機に関しては、信憑性ある噂はあるものの、ここでも事態は明確ではない。中国軍事航空専門家のアンドレアス・ルプレヒト Andreas Rupprecht は、「2035年頃の就役を目指すプロジェクトがあることは知っている」とThe War Zoneに語った。

「興味深いことに、もし本当に2035年という就航時期を守るならば、少なくとも2026-28年までに初飛行が見られるはずです」とルプレヒトは付け加えている。2035年という目標は、成都飛機公司(CAC)の主任設計者王海峰 Wang Haifengへの2019年インタビューに端を発している。中国における主要戦闘機メーカー二社の1つCACは、単発のJ-10戦闘機だけでなくステルス機のJ-20も担当しており、第6世代戦闘機プログラムの候補であることは明白だ。

このことから、中国がすでに各種有人戦闘機の予備試験を行っていることは間違いないと思われる。開発作業には、サブスケールとフルサイズ双方の実証機も含まれるのか。昨年10月にCAC飛行場の衛星画像に現れた謎の無尾翼機は、おそらくこの取り組みに関連した実証機またはモックアップの可能性がある。米空軍はというと、2020年にNGAD計画のプロトタイプを飛ばしている。

 

 

昨年10月、CAC飛行場の衛星画像で確認された菱形の無尾翼サブスケール実証機。PHOTO © 2021 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

「2018年以降、CACと関連会社611研究所は、次世代戦闘機向け主要技術の開発に取り組んでいる」とルプレヒトは述べた。

先端技術には、新型レーダー、可変サイクルエンジンを含むエキゾチックな推進システム、指向性エナジー兵器が含まれる予想がある。2019年インタビューで王は、ドローンとチームを組む能力、人工知能の活用、ステルスの強化、高度センサーなどを強調している。

全体として、中国の戦闘機関連技術は、非常に優位に立っている。その他航空宇宙計画と並び、中国の次世代有人戦闘機と関連する空戦システムがいつ最終的にブレークするかが特に興味深いところだ。■



China Is Working On Its Own Sixth-Generation Fighter Program: Official

BYTHOMAS NEWDICK| PUBLISHED SEP 28, 2022 3:53 PM

THE WAR ZONE


 

ガスパイプラインを自ら破壊したロシアが次に狙うのは国際通信海底ケーブルの切断だ。ロシアの思考が邪悪すぎる

ノルドストリーム・パイプラインへの攻撃でプーチンがエナジーを武器化した



海底パイプラインの破壊工作はロシアの作戦だ


シアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」と「ノルドストリームII」の圧力が突然低下したのを欧州当局が月曜日に気付いた。それ以来、両パイプラインで計3回(NS1で2回、NS2で1回)の漏れが見つかった、デンマークの地震学者は、同地域でマグニチュード2.1および2.3程度の爆発を記録している。


漏洩は、デンマークの戦略的前哨基地ボーンホルム島のすぐ東のバルト海で発生している。ロシアによる妨害行為であることは間違いない。ドイツを含むいくつかのヨーロッパ諸国も、同じ結論に達した。実際、CIAはまさにその可能性をドイツに警告していたと伝えられている。


パイプラインからのガス放出(圧力を維持するために充填されていたが、現在は使用されていない)により、船舶はガス漏れ箇所から5海里、航空機は少なくとも3,280フィート上空離れるよう勧告されている。バルト海で巨大な泡のような円を描きガスが浮上している写真は、近隣諸国に気になるが、もちろん、問題の一部にすぎない。


この規模のメタンガスが大気中に放出されることで環境への影響もさることながら、ボーンホルム周辺の海底は環境的に敏感な場所だ。ボーンホルム東側の海は、第二次世界大戦後、化学兵器や軍需品の大規模な投棄場となった。バルト海には、4万トンから10万トンが投棄されたと考えられている。ソ連は戦後、マスタードガスなど約4万トンの化学兵器をボーンホルム近郊の投棄場に投棄したとされる。


このことは、パイプライン建設で大きな問題となった。プロジェクトを建設したコンソーシアムは、機密性の高い場所に参加するため、錨を下ろす船舶の特別許可を確保する必要があった。投棄場所数カ所は判明しているが、記録管理の不備、嵐、航行ミス、事故、さらに単に軍が無造作に荷物を投げ捨てただけで、バルト海底の危険物の範囲と位置が完全に判明できなくなる。


今回の最新の攻撃は、ロシアが西側諸国にダメージを与え、圧力をかけるためなら、あらゆる手段を利用し続けていることの顕著な例として、明確に読み取れる。プーチンは、ウクライナでの戦争と西側への対抗を、すぐ解決しない長期的な対立とみている。だからこそ彼は、(影響力の買収も含め)多額の資金と政治・外交資本を投入したノルドストリーム・パイプラインへの妨害行為により、ヨーロッパとの関係を文字通り断ち切るつもりなのだ。


ロシアが支配するパイプライン運営会社は、「ガス輸送インフラ復旧の時間枠を見積もることは今は不可能だ」と述べ、早急な解決に冷や水を浴びせた。ノルドストリームパイプラインシステムで同日中に3ラインで起きた破壊は、前例がない。


今、プーチンの2度目のウクライナ侵攻でロシアとのエナジー関係をますます断絶させようとする欧州の対応で、パイプラインが機能しなくなり、プーチンは創造的な利用法を見出した。


今回の破壊工作は、ロシアの水中インフラ破壊能力を誇示する意味もある。タイミングは偶然ではない。先日発表されたロシアの出動と並行して、デンマーク、ノルウェー、ポーランドの首脳が合同で、ノルウェーのガスをバルト海経由でポーランドに送る新しいパイプラインの開通式典を行ったばかりだ。


ノルドストリームの予行演習は、ヨーロッパにエナジーを供給するパイプラインに向けた将来の攻撃を予見しているのかもしれない。もしヨーロッパが、ロシア産の代わりにアルジェリアやアゼルバイジャン、ノルウェーからガスを輸入したいと思えば、プーチンはパイプライン攻撃で供給を阻止するかもしれない。ノルウェーは石油・ガス施設の警備を強化すると本日発表した。


この攻撃により、火曜日にはヨーロッパでガス料金が最大12%まで高騰した。秋口にもかかわらずエナジー価格が高騰し、家庭や産業が疲弊している欧州に値上げはさらなる痛手となる。


さらに、プーチンはエナジー・インフラへの攻撃に加え、他の重要な海底インフラ、すなわち光ファイバー・ケーブルも次の標的であると西側に示しているのかもしれない。ロシアは世界の海上に張り巡らされた重要な光ファイバーケーブルを調査していることで知られている。1月には、ノルウェー本土と北極圏のスヴァールバル諸島を結ぶ光ファイバーケーブルが切断される事故が発生し、その原因は「人的影響」の可能性が高いとみられている。


ノルドストリーム・パイプライン破壊工作の最後の側面は、ロシアが外交目的のため説明を捻じ曲げていることである。今回の漏洩事件に対するロシアの声明、「緊急調査を要する前例のない状況」「このニュースを非常に懸念している」は、その伏線だろう。まもなく、法の支配に対する冒涜として金銭的な要求を口実に、西側諸国(ロシアは明らかに関与を否定するだろう)に責任を転嫁する試みが行われてもおかしくない。


多少の混乱はあったが、欧州がロシア産のエナジーから脱却しようと努力し、来るべき冬を前にガス貯蔵量を増やすことに全体的に成功したことで、クレムリンは苛立たされたに違いない。今週のノルドストリーム・パイプラインへの妨害行為には多くの意味があり、ヨーロッパを混乱させる意図がある。西側諸国は、プーチンのこの作戦が、今後起こりうる事態の前触れであると意識しておく必要がある。■


 Russia's Attack on Nord Stream Pipelines Means Putin Has Truly Weaponized Energy - 19FortyFive


WRITTEN BYDaniel Kochis

Daniel Kochis is a senior policy analyst in European Affairs in the Margaret Thatcher Center for Freedom. He specializes in trans-Atlantic security issues regularly publishing on U.S. policy in Europe, NATO, U.S.-Russia relations, and Arctic issues. Kochis is also a regional author for the Heritage Foundation’s annual Index of U.S. Military Strength.



2022年9月28日水曜日

ロシア軍の弱体化の一方、ウクライナ軍は戦力を充実。この状況はいつまで続くか。プーチンは次にどんな手を打ってくるか

 

自走榴弾砲2S1 Gvozdikaで射撃するウクライナ軍兵士(2022年5月7日、ウクライナ・ハリコフ地方にて)。 REUTERS/Serhii Nuzhnenko

 

クライナでこれから何が起こるのか?ウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナ戦争に勝利するためにロシアの兵力の一部を追加動員すると発表したことは、開戦以来最も重要な変曲点の1つとなった。

 

 

 プーチンは、ウクライナがハリコフ地方への攻勢に成功し、さらにロシア領ケルソンへの再攻勢を開始したことを受けて宣言した。同時にロシアは、ウクライナの大部分を併合する法的根拠となりうる占領地での住民投票を加速させると明らかにした。

 これらの発表は、戦争の新たな局面を開くものであり、短期的にも長期的にも重要な意味を持つ。

 

ウクライナにおける短期的な影響 

 

短期的には、動員は時間の経過とともに戦争に影響を与えるだろう。新しく訓練されたロシアの新兵や徴兵が前線に到着し、陣形に組み込まれるまで、ある程度の時間がかかる。訓練も意欲も不十分な人材の流入は、防衛線の薄い部分を安定させることはできても、それ自体で紛争のバランスを根本的に変えるはないだろう。ロシア軍の士気は、救援が近づいていることを知れば向上するだろう。しかし、戦争の終結を地平線上に押しやれば、長期戦を予期していなかった部隊には逆効果になりかねない。例えば、新たに動員されたロシア兵は、ウクライナで戦うより降伏や亡命を考えているとの指摘もある。

 一方、今回の動員令は、ウクライナ、ロシア、そして世界の国々に対して、今後数ヶ月の行動を変える動機付けになる可能性もある。ウクライナにとって状況は明快で、今後数カ月はウクライナ軍の戦力が圧倒的に有利だが、ロシアが動員をかければ有利性は薄れる可能性がある。このため、ウクライナには、現在の有利なパワーバランスを可能な限り活用する強い動機がある。このため、ウクライナはロシアから領土を奪還するため、より積極的でリスクを許容するアプローチに傾くかもしれない。

 欧米の間接参加者にとって、ロシアの動員は、モスクワが紛争に勝っているとは思っていないが、すぐにやめるつもりもないことを示すもと写る。このことは、紛争に伴う経済的混乱の期間と程度について難しい問題を提起しながらも、ウクライナ支援を継続する多くの人々の決意を再確認させるものである。 

 

長期的な視点でのウクライナ

長期的に見れば、軍事的な動員がどのように行われるかは難しい。ロシアが戦闘力を回復し、攻撃作戦を展開できるようになるには、どの程度の時間がかかるのか。簡単に言えば、「わからない」だ。ロシアからの報告によると、ソ連崩壊後、荒廃していた訓練・動員体制が、この紛争の最初の数カ月でさらに悪化した可能性がある。ロシア軍は、前線での短期的な人員増強のために、訓練編成を共食いさせた可能性が高い。そうだとすると、最低限の訓練しか受けていない部隊が前線に到着し、多大な犠牲を出すことになる。 

 

NATOのM270 MLRS。 Image Credit: Creative Commons.

 

 また、ロシア軍は近代装備を大量に喪失しており、ロシアの産業はローテク軍需品を製造できても、戦車や航空機を損失分を補充できる十分な速度で製造する能力はないようだ。ロシアは戦力を十分に維持するため十分な装備を購入することができるだろうか。中国がこの紛争に大規模介入をしない限り、おそらく無理だろう。ロシアが購入したイラン製無人機はすでに戦争に影響を出しているが、量的にも効果的にも決定的なものになりそうもない。ロシアの固定翼機の損失は極端で、もはや前線への基本的な支援もできないほどである。

 長期的視点で戦争を考えると、経済的な方程式も変化する。これまでのところ、ロシアも西側諸国も、有効な強制力を発揮できるほどの経済的損害を相手に与えていない。より長い目で見れば、ロシアの貧弱な経済が、欧米の競争相手のはるかに大きな経済を凌駕することができると考える根拠は皆無に近い。侵略のショックが薄れ、エナジーを武器にする(エナジー価格高騰を利用する)ロシアの能力も低下してきた。

 

プーチンは次に何をするのか?

 

プーチンは、ロシア国内の戦争支持率の低下を懸念してか、ロシアの軍事力の総動員を決断しなかった。プーチンの政治的直感を信じるべきだろう。動員は、すぐに戦争に勝てると思っていた政権にとって危険な動きであり、現在、抗議行動と軍事年齢層の男性の大量退去に直面している。

 戦場では、ウクライナ軍が強くなる一方でロシア軍が弱くなっている基本的な問題を、モスクワが今回の動員で変えられるかどうかは明らかではない。■ 

 

The Russian Military Is Getting Weaker As Ukraine Grows Stronger

ByRobert Farley

https://www.19fortyfive.com/2022/09/the-russian-military-is-getting-weaker-as-ukraine-grows-stronger/

 

A 19FortyFive Contributing Editor, Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph. D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.