ラベル MiG-21 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル MiG-21 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年3月6日水曜日

★インドが旧型MiG-21でF-16に対抗させた理由とは

Why Did India Send Old MiG-21s To Take on Pakistan's F-16s?

インドはなぜ旧式MiG-21でパキスタンのF-16に対応させたのか
New Delhi claims they aren't that old after all.実は旧型機ではないとインドは説明
March 5, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: Mig-21MilitaryTechnologyWorldF-16


ンド空軍がMiG-21戦闘機をより新しいパキスタンF-16に対応させた決断を正当化している。
2019年2月26日、インド編隊はインド-パキスタンの事実上の国境線を越境し戦闘員訓練キャンプとインドが主張するバラコット付近を爆撃した。
その後数日間にわたり空中戦が続き、2月27日にはパキスタンF-16他の編隊が管理境界線を越えインド軍を攻撃してきたとインドは主張。
インドのMiG-21他戦闘機部隊がパキスタン機を迎撃しF-16の一機を撃墜し、パイロットを死亡させたとインド政府は発表。パキスタン政府によればMiG-21を2機撃墜したが、インドは撃墜は一機と説明した。
パキスタン軍はMiG-21パイロットのアビナンダン・ヴァルタムラン中佐を捕獲し二日間勾留した後でインドへ身柄を引き渡した。
インド空軍のMiG-21は性能改修を受けているものの30年以上供用されている。撃墜されたパキスタンのF-16はブロック52Dといわれ、2005年に米国に発注した機材だった。
「MiG-21を供用中なので投入するのはあたりまえ」とインド空軍司令BS・ダノア元帥が記者質問に答えた。
インドのMiG-21は1990年代に改装を受けた「バイソン」仕様で西側エイビオニクスを搭載しレーダー換装とレーダー警戒受信機を備え近代的兵装の運用を可能としている。「兵装を改善し、空対空ミッションの性能が上がっている」(ダノア元帥)
だが今回インドがMiG-21を投入した理由は同型多数がインド空軍で供用中だからだ。
「MiG-21で2月27日に撃墜された機体はインド8機編隊の一部でスホイSu-30の4機、ミラージュ2000の2機でパキスタン24機との交戦に向かったもので、パキスタンはF-16を8機、ミラージュIII4機、JF-17サンダー4機を送り込んできた」とDavid CenciottiがThe Aviationistで述べる。
インドはロシア製旧型機材の更新に長年取り組んでいる。2018年時点でインド空軍には1960年代製造の旧型MiG-21が244機、若干新しい程度のMiG-27が84機残っていた。
MiG-21は事故率が高く、計874機がインドで供用されたが490機が墜落し、パイロット200名が死亡している。
インド政府は予算180億ドルで新型戦闘機115機を製造し旧型MiGと交代させたいとする。新型機はヨーロッパ製機材のジャグア、ミラージュ2000、ラファール、MiG-29、Su-30、国産テジャスの各型と併用する予定でロッキード・マーティンはインドを「世界最大の各種戦闘機が共存する環境」と呼ぶ。
この115機には改良型F-16(ロッキードが「F-21」と呼ぶ)、ボーイングのF/A-18E/F、ラファール、ユーロファイター・タイフーン、グリペンE、MiG-35、Su-35が候補となる。インド企業がライセンス生産する。
ロシアはインドで供用中のSu-30の改良型を売り込みたく、Su-35の採用を期待している。
インド側の調達手続きが複雑なため空軍は今後長きにわたり新型機と旧型機を同時運用することになりそうだ。
多様な機材の混合部隊が実戦で真価を発揮できないわけではない。旧型MiG-21でも正しく運用すれば威力を発揮する。
新型機や高性能兵装が必ず勝利する保証はない。考慮すべき要因としてパイロット技量、支援機や地上の支援がまずあげられる。
だがなかんんずくRoE交戦規則が重要で、発砲前に視界内で敵の確認が求められれば戦闘機は接近せざるを得ずMiG-21の餌食になることはありうる。■
David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels   War Fix , War Is Boring  and Machete Squad .

Image: Creative Commons.

2019年3月1日金曜日

☆インドMiG-21がパキスタンF-16撃墜との主張から浮かび上がる興味深い事実

The Indian Air Force Claims A MiG-21 Bison Managed To Shoot Down A Pakistan Air Force F-16D Block 52

インド空軍がパキスタン空軍F-16Dブロック52一機をMiG-21バイソンで撃墜したと主張



インド空軍のMiG-21バイソン (Image credit: IAFIAF発表ではMiG-21パイロットは身柄拘束されているが、被撃墜前にPAFのF-16を撃ち落としたという。

ずおことわりしておく。カシミール上空での事態ではい違う内容の発表がここ数日食出ており、インド・パキスタンの武力衝突で一部は確認が難しく実際に何が起こっているのかわかりにくい。


ひとつだけ両陣営発表から確認できたのはインド空軍IAF所属のMiG-21バイソン一機が撃墜されパイロットがパキスタン軍に身柄を拘束されていることだ。


本日判明した事項をお伝えしたい。


IAF発表によれば2月27日に撃墜されたMiG-21は8機編隊の一部で他にスホイ30(4機)、ミラージュ2000(2機)、MiG-21バイソンがあり、パキスタン空軍PAFの24機編隊(F-16が8機、ミラージュ-3の4機、JF-17サンダー4機含む)に空戦を挑んだものだった。


F-16の型式と存在を証明すべくIAFはインド領内で回収したAIM-120C5AMRAAM空対空ミサイルの残骸を公開した。


FollowFollow @miladvisor
More
Indian Armed Forces show parts of AIM-120 Advanced Medium Range Air-to-Air Missiles (AMRAAMs) launched from Pakistan Air Force F-16 over Kashmir near the LoC yesterday.
11:19 AM - 28 Feb 2019

最も興味を引くのは撃墜されたMiG-21バイソンが墜落前にPAFのF-16Dを管理境界線上空で撃墜したとのIAF発表だ。


「パキスタン空軍所属のF-16一機をインド空軍のMiG-21バイソンが撃墜した。F-16の破片は境界線沿いにパキスタンが実効支配するジャンムとカシミールに広がった。インド空軍もMiG-21一機を喪失し、パイロットは脱出したもののパラシュートが流されパキスタン軍に身柄を拘束された」とインド空軍は発表した。


「インド空軍第51飛行隊所属のMiG-21がロシア製ヴィンペルR-73近接対空ミサイルで敵機を撃墜した」との報道がある。


F-16が撃墜された証拠は示されていない。

PAFの F-16DがネリスAFBをレッドフラッグ演習 RF 16-4 で離陸している (Image credit: Tomás Del Coro)

確認がとれればだが、MiG-21による撃墜実績の意味は大きい。空戦で新型機(この場合はF-16)が必ずしも勝つ保証はないとの実証が加わることになるからだ。以下を頭に入れておく要素がある。パイロットの技量、他機材の支援(僚機やAEW機材など)、地上レーダー等だ。なかんずく交戦規則RoEが重要で、敵機のポジティブVIDが必要とあれば戦闘機はWVR(視界内)交戦を強いられ、MiG-21が威力を発揮する。このため第5世代戦闘機でも旧型機との交戦を常時訓練している。


今回の事案は確認は取れていないが第3世代機でも第4世代機の撃墜はWVR交戦なら可能だとわかる。


MiG-21バイソンはロシア製機体の性能改修型だ。設計こそ旧式だがレーダー被探知性が低く鋭い旋回性能、加速性能にヘルメット搭載視認装置やR-73空対空ミサイルが加わり改修型MiG-21はあなどれない敵になる。2004年のコープインディア演習で米F-15を相手にインドのMiG-21等が9:1の優れた空戦記録を残した事を忘れてはならない。■


2019年2月28日木曜日

パキスタンがインドMiG-21を撃墜、心配なインド-パキスタン軍事衝突の最新状況


Indian Air Force MiG-21 Bison Shot Down By Pakistan Air Force Jet パキスタン空軍機がインド空軍MiG-21バイソンを撃墜


インド空軍のMiG-21バイソン (Image credit: Jyotirmoy Moulick)

ンド空軍IAFがMiG-21一機の喪失を認めた。カシミールの休戦ライン上空で発生した交戦でパキスタン空軍PAFに撃墜された。MiG-21パイロットは身柄拘束されている。
今回の交戦はIAFのミラージュ2000編隊が休戦ラインLOCを超えてテロリスト拠点があるバラコートにイスラエル製SPICE2000 EO/GPS誘導スタンドオフ方式の2000ポンド精密誘導爆弾を投下した翌日に発生した。
交戦の実態は不明だ。
IAFのMIG-21はPAFが同日午前に空爆したことに呼応して出撃した。パキスタンによればIAF戦闘機2機がLOCを超えて侵入しPAF戦闘機がパキスタン領空内で迎撃しすべて撃墜したという。
In response to PAF strikes this morning as released by MoFA, IAF crossed LOC. PAF shot down two Indian aircrafts inside Pakistani airspace. One of the aircraft fell inside AJ&K while other fell inside IOK. One Indian pilot arrested by troops on ground while two in the area.

インドは戦闘機一機の喪失を認めた。さらにインドによればMiG-21がパキスタン戦闘機を撃墜したという。ただし裏付ける証拠はまだない。
· 16h
Govt confirms 1 PAF fighter shot down by MiG-21 Bison. In this engagement, 1 MiG-21 lost, one pilot missing in action. Govt takes no questions.
Here’s the full statement from the @MEAIndia just now: pic.twitter.com/6Un3cwg0T5
View image on Twitter

インド空軍の輸送ヘリコプターMi-17V-5の墜落現場の写真がソーシャルメディアに出ているが、現時点で同機が撃墜されたのかは未確認だ。
View image on TwitterView image on TwitterView image on Twitter
2 pilots dead in Mi-17 crash near Srinagar airport; flight ops suspended



またこれも未確認だがバイソンを撃墜したのはF-16との説とJF-17サンダーとの主張もある。
JF-17は軽量単発の多任務戦闘機でパキスタン航空工業と成都航空機の共同開発。第四世代機とされるが、事実ならJF-17初の撃墜事例となる
パキスタン空軍のJF-17サンダー (Photo: PAC/CAC)

一方で今回のMiG-21バイソンは性能改修型だ。設計は旧式だが低レーダー探知性、旋回性能、加速性能が優れ、ヘルメット搭載視認装置で視程外対応R-73対空ミサイルを運用し、相当の戦力となっており新鋭機にとっても強敵だ。

いずれにせよ、現時点ではソーシャルメディアで激しい宣伝戦となっており、映像も加工され、未確認の発表等にあふれている。インドとパキスタン間の緊張は現地で小競り合いが発生しており統制がとれなくなりつつあり、エスカレーションの危険をはらんでいる。■

2017年6月18日日曜日

歴史に残る機体(13) MiG-21


歴史に残る機体13はMiG-21です。途上国には使い勝手がいい機材なのでしょう。今後3Dプリンターによる部品供給の流通市場が生まれれば、本当に100年飛行する機体になっていてもおかしくないでしょう。性能ではなく存在そのものが重要という需要もあるのですね。それにしてもロシアは中国に何回もコピーの苦汁を飲まされていますね。(ロシアもB-29で前科があるのですが)

 

Russia's MiG-21: The Fighter Jet That Could Fly for 100 Years? 

MiG-21は100年間飛ぶのか



June 16, 2017

  1. 軍用機の稼働期間は概して短い。技術進歩のペースが早いと短命になりやすい。第一次大戦の精鋭戦闘機は数か月で旧式になった。第二次大戦でも大差なく、ジェット黎明期の技術進展が目まぐるしく機種全体が過去の遺物になる例も出現している。
  2. だが時の流れに負けない機体も数少ないがある。B-52ストラトフォートレスの初飛行は1952年だが今日も現役だ。C-130の生産も続いているが原型の運用開始は1954年だ。
  3. だがこれは爆撃機、輸送機で戦闘機ではない。戦闘機には耐用年数の問題がある中で新型機出現すれば対応が課題となる。このため供用期間が長い戦闘機はまれだ。
  4. 例外がMiG-21[フィッシュベッド」だ。

成り立ち
  1. MiG-21の初期検討は1953年にはじまった。MiG-15やMiG-17の成功でソ連の航空技術陣は西側機材に対抗できる自信がつき、MiG-19で初の超音速機を実用化した。ただし技術が急速に進化し、朝鮮戦争時の第一線機も1950年代半ばには旧式化していた。B-29ならMiG-15で蹴散らせても、米新型爆撃機では事情が違っていた。ソ連はMiG-21で航空優勢の確保を目指した。
  2. MiG-21(NATO名フィッシュベッド)はマッハ2.0超で飛び、機内に機関砲一門、ミサイルを2発から6発まで搭載し、ミサイル搭載の皮切りとなった。MiG-21も対地攻撃任務に投入され少量の爆弾ロケット弾を運用する。ソ連方式でMiG-21は地上管制により運用されたので大型レーダーは不要とされた。
  3. ソ連は合計10,645機を1959年から1985年にかけ生産し、インドがライセンス技術移転で657機を、チェコスロヴァキアも194機をライセンス生産している。状況が異なるのは中華人民共和国で、機材と技術文献を入手後、リバースエンジニアリングで成都J-7/F-7を2,400機、1966年から2013年にかけ生産している。全部見れば世界でもっとも大量生産された超音速機である。

供用期間の長さ
  1. MiG-21では現場で基本問題の多くを解決している。最新の戦闘機でもMiG-21より高速で、機体操縦性がすぐれるものは少ない。現在の戦闘機は兵装搭載量が増え、高性能電子機器を搭載するが、多数の空軍部隊にとっては高性能機材はぜいたくそのもので、安価で高速かつ維持が簡単で自国領空を守り時には爆弾数発を投下できる機材を求めている。フィッシュベッドはこうした要求に最適だ。
  2. 西側諸国ならフィッシュベッドは有益な機材とならないのは確かだ。航続距離が短く、搭載兵装量は低く、高性能電子装備の収容スペースもない。コックピット形状はパイロットの状況認識に逆効果だ。それでもソ連式の地上管制による戦闘機任務にぴったりの存在で西欧各国の上空を飛び限定的でも迎撃任務につくことができた。
  3. 冷戦時に米国はMiG-21各種を入手している。(さらに中国からJ-7一個飛行隊分を購入している)総じて米パイロットは同機を高評価しており、アグレッサー任務では訓練効果を高く実現している。訓練を積んだ米パイロットはソ連パイロットより同機の性能を引き出していたはずだ。

戦場のフィッシュベッド
  1. MiG-21はNATO-ワルシャワ同盟間の大規模戦は見なかったが戦闘投入の例はある。
  2. ベトナムでは鉛筆のように細いMiG-21が米側交戦規定を逆手に機体の大きさと速度で米護衛戦闘機が目視して向かってくる前に爆撃機を攻撃した。フィッシュベッドは初期の空対空ミサイルをその機体寸法と速度で回避できた。攻撃をかけるとMiGは基地に戻った。
  3. このパターンを破る事例が1967年1月2日に発生した。伝説のパイロット、ロビン・オールズ指揮下のF-4ファントムII編隊が北ベトナム空軍を罠にかけ交戦に持ち込んだ。ファントムはフィッシュベッド計7機を撃墜し、うち一機はグエン・ヴァン・コックが操縦しグエンは墜落から帰還しその後合計9機を撃墜しフィッシュベッドで撃墜王になった。ただしベトナム、シリアではMiG-21でエースになったパイロットは数名生まれた。
  4. MiG-21は中東各地で戦闘投入された。六日間戦争ではエジプト、シリアのフィッシュベッドがイスラエル国防軍空爆で開戦直後に破壊された。その後フィッシュベッドはイスラエルとの対決に投入され、熟達したイスラエルパイロットの前に撃墜されることが多かった。イスラエルが相手にしたMiG-21をソ連パイロットが操縦する事例もあった。
  5. 中東以外にアンゴラでも西側機材がフィッシュベッドに勝つ例があり、ソ連戦闘機はしょせん西側機材の敵ではないとの見方が生まれた。ただしパイロット訓練が違い直接の比較が難しい。同等の訓練を受けたパイロットの手にかければMiG-21は高性能を発揮した。インドMiG-21がインドパキスタン戦争に投入され敵機撃墜を達成している。またイラン-イラク戦争でも活躍した。
改修策
  1. 1980年代末になると第一線のMiG-21は減衰しはじめ後継機種と交代している。ソ連崩壊後はロシア軍事力が大幅に縮小し、ソ連時代の運用国は機材運用が継続できなくなる危機を感じた。それでもMiG-21や中国製機体を運用している国は多い。
  2. 現時点でMiG-21を運用中の空軍は18カ国でうちルーマニアとクロアチアはNATO加盟国でもある。以前はその他40カ国がフィッシュベッドを飛ばしていた。(中には消滅した国家もある) J/F-7は13カ国が供用中で4カ国が運用終了している。既存機の整備は中国、ロシア、ウクライナで可能で性能改修も行っている。3Dプリンターの出現でフィッシュベッドの継続運用は楽になりそうだし、予備部品も入手可能となるはずだ。
  3. 現在飛行中のフィッシュベッドの外観は1959年当時の機体から別機のようだ。搭載兵装も進歩し、R-60空対空ミサイル、マジック2やパイソンIIIが見られ威力は増えている。さらに電子装備の改修でレーダーや通信の性能が上がり、精密誘導弾の運用も可能だ。

MiG-21(派生型含む)は2059年でも飛んでいるか
  1. 中国もJ-7生産を終了し、派生型含めMiG-21の生産はすべて終了した。クロアチア、ルーマニアはあと5年でフィッシュベッドを処分する。インドも退役させはじめた。中国のJ-7各機は地方の防空や訓練用に格下げされた。
  2. とはいえこれでフィッシュベッドの終焉ではない。J-7、F-7の多くは旧式機になったが今後も供用される。バングラデシュは2013年に最終生産のF-7を調達し、当面別機材に交代させる必要はない。また多数の空軍部隊ではフィッシュベッド以上に複雑かつ高性能だが高価な機体は必要としない。そうなると100年にわたり供用される機材になる可能性もある。(B-52はこの例になりそうだ) MiG-21はまもなく誕生以来60年の節目となり、70周年も無理なく迎えそうだ。超音速時代の戦闘機の象徴として残りそうだ。■

Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money, Information Dissemination and the Diplomat.
This appeared last year and is being reposted due to reader interest.
Image Credit: Creative Commons.

2016年8月17日水曜日

★F-5E対MiG-21の知られざる空戦 勝敗は?



F-5やMiG-21は当時から途上国向けの機体と言われてきましたが、実際の空戦が1970年代に発生していました。機材の性能よりも訓練含む支援体制の質が空の上で大きな結果を生むという事例ですね。日本にも参考となるのではないでしょうか。

We go to war so you don’t have to

Which is Better, the F-5E Tiger II or the MiG-21?

A forgotten African war answered the question

by TOM COOPER
ノースロップF-5EタイガーII、ミコヤン・グレビッチMiG-21のどちらが優秀かとの問かけは数多くあり、答えも多様にあったはずだ。軽量かつ安価で取り扱い容易な両機種は合計で15千機も生産され、最盛期には60カ国以上の空軍が供用し、今でも両機種が稼働している国がある。
  1. 実は両機種の対戦事例があり、しかも一回だけでなかった。忘却の彼方に過ぎ去ったる戦いの帰趨を決定したのが両機種による初の空中戦だった。
  2. 1970年代中頃のエチオピアは政治的混迷を深め軍事クーデターで米国寄りのハイレ・セラシ皇帝が排除された。1974年のことで血なまぐさい内戦が三年間続いた。
  3. エチオピア連邦のエリトリア、オガデン、ティグレイの三州では小規模内乱が全面戦争になり、エチオピアは崩壊一歩手前で軍と治安維持部隊は混乱し、主権維持もおぼつかない状態になった。
  4. そこでソマリア政府はかねてから狙っていた政治目標「不当に占領されたソマリア領土」の回復で絶好の機会ととらえた。特にソマリア系住民の多いオガデンを第一目標とした。
米空軍の訓練を受けたエチオピア空軍第五飛行隊のパイロットたちPhoto via S.N.
  1. ソマリアの戦闘構想は比較的単純でソ連軍事顧問の助けも借りた情報評価に基づきエチオピア軍は簡単に崩壊すると見ていた。
  2. そこでソマリアは全軍の準備態勢を整え、1977年7月13日に国境を超え侵攻を開始し、地上部隊支援に25機ほどのMiG-17とMiG-21が29機を投入した。パイロット全員がソ連で訓練を受けていた。
  3. 緒戦成果から情勢評価が正しいことが裏付けられた。二週間をかけずソマリア陸軍機甲部隊はエチオピア陣地を突破し、エチオピア空軍のF-5E一機がSA-7グレイル携帯ミサイルで撃墜され、ハラール飛行場を爆撃しエチオピア航空所属のダグラスDC-3が一機破壊された。またMiG-17二機編隊がエチオピア空軍のダグラスC-47輸送機を撃墜した。
  4. エチオピアはソマリアと外交関係を1977年初頭に断絶しており、混乱したアディスアババのエチオピア政府はオガデン状況を把握できずにいた。
  5. 軍は総動員令を発表したが体制整備に数週間が必要でオガデンの陸軍部隊は気が付くと敵に包囲され前線から遠く離れていた。上記C-47はこのためソマリアのMiGに撃墜されたのだ。
  6. ただしエチオピア空軍は無力化に至っていなかった。1940年代50年代を通じ英国とスウェーデンの助力で誕生した空軍は1960年代には米国から大量支援を受けた。小規模だがエリート部隊で選り抜きの人員がそろい、国内外で訓練を十分受けていた。
オガデンの戦いで始めてMiG-21撃墜を上げたべザビ・ぺトロスはF-5EタイガーIIとソ連MiG-21初の空戦で勝利をおさめたこととなった。 Photo via S.N.
  1. 中心装備は十数機のノースアメリカンF-86セイバーとノースロップF-5Aフリーダムファイター戦闘機隊だった。1974年までのエチオピアは米国と関係が良好でマクダネルダグラスF-4ファントムを要望したが米政府は代わりにノースロップF-5EタイガーIIを供与した。AIM-9サイドワインダー空対空ミサイルとウェスティングハウスAN/TPS-43Dレーダー二基を搭載していた。
  2. ところが国内混乱と人権遵守状況を理由にエチオピアへ手渡されたタイガーは1976年の8機にとどまる。しかしソマリアとソ連の戦前予想と異なり、エチオピア空軍パイロットはソマリア侵攻前の数か月を座して待っていたわけではなかった。
  3. ソマリアが国境付近で軍備増強に走っているとの情報報告を受けて、エチオピア空軍は空戦演習を強化しF-5Eは戦闘哨戒飛行を開始する。こうしてエチオピアのF-5EとソマリアのMiG-21の対戦は不可避となった。
  4. 最初の対戦は1977年7月24日でタイガー2機編隊が同じく2機のMiG-21を迎撃し、地上誘導でエチオピア編隊二番手のベザビ・ペトロスが初の確認撃墜成果を上げた。F-5EがMiG-21の初の対戦となった。
ラジェス・テフェラは確定4機撃墜でエチオピアF-5Eパイロットでトップとなったが、不幸にもソマリア防空網により1978年9月1日撃墜され、10年間をソマリア刑務所で過ごしたPhoto via S.N.
  1. 翌日にラジェス・テフェラがオガデンを巡る戦いで最大規模の空戦で大きな成果を上げた。F-5E三機編隊を率いて、MiG-21四機編隊がMiG-17四機編隊を援護するところを迎撃した。
  2. エチオピア所属のタイガー編隊が現れるとソマリアMiG-21の二機が空中衝突した。うち一機はハルゲイサ航空基地司令が操縦していた。ラジェスは機関砲で三機目を撃墜し、ウイングマンのバハ・フンデとアフェウォク・キダヌが四機目を仕留めた。ラジェスはMiG-17編隊も狙い、二機をAIM-9ミサイルで撃墜した。
  3. 7月26日にラジェス・テフェラとべザビ・ぺトロスはエチオピアの前線航空基地ヂィレダワに向かうMiG-21二機を迎撃した。今度はべザビがサイドワインダーでMiG一機を破損させ、ラジェスが20ミリ機関砲でとどめをさした。
  4. 三日後にはバハ・フンデによる初めての撃墜が確認された。この成功でエチオピア空軍隊員は敵の補給部隊を数回撃破し、ディレダワの戦いの勝利に大きく貢献した。この敗北でソマリア軍はオガデン侵攻を1977年8月に停止した。
  5. この中でアフェウォク・キダヌがMiG-21を一機撃墜したがアシェナフィ・ツァディクが撃墜された。アシェナフィとラジェスはオガデンを巡る戦いで最後となったMiG-21の2機を1977年9月1日に撃墜した。
ソマリアのMiG-21MF米軍が1992年にモガデシュ国際空港を占拠した際に放棄されているのが発見された。F-5Eと同等の性能で一部では優れていたものの訓練を十分積んだエチオピア空軍の敵にはなれなかったClaudio Toselli Collection photo
  1. これでソマリア空軍は戦力を失った。その後もオガデンで作戦を展開したが、これだけの損害は補充できなかった。エチオピアは空の優勢を確立し、空軍は系統的な攻撃をソマリア軍の補給線に加えた。
  2. それから一か月もせずにエチオピア国内に突入していたソマリア陸軍は補給を絶たれ、糧食、弾薬、燃料、さらに戦闘車両も不足し、前進できなくなる。エチオピアのF-5Eはこうして決定的な勝利をオガデンで勝ち取り、エチオピア政府指導部がキューバとソ連から支援を得る時間を稼ぎ、エチオピア軍は反攻攻勢をかけソマリア軍をオガデンから1978年4月に駆逐している。
  3. 戦闘終結後の解析は明白だった。F-5EはMiG-21に優位性を示し、速度だけでなく操縦性が低中高度で優れ、航続距離や搭載兵装も優位だった。
  4. 米顧問団によるエチオピア向け訓練も質面での優位性を後押しし、訓練内容が現実を反映していたことはソ連教官から訓練を受けたソマリア軍より明らかだった。■