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2025年9月14日日曜日

空母の代替手段はどうあるべきか?(National Security Journal) ― 超大型艦への過度の集中から分散型艦隊構成に移る前に組織文化が立ちふさがりそうです

 


NRL is currently working with Naval Sea Systems Command, Naval Systems Engineering Directorate, Ship Integrity & Performance Engineering (SEA 05P) to transition the new pigment combination into a military specification. The most recent vessel to receive it was USS George Washington (CVN 73).

空母USSジョージ・ワシントン(CVN 73)。

要点と概要 – 空母が長距離ミサイル、極超音速兵器、群集攻撃に対して脆弱になりすぎた場合、「大型甲板」艦を分散型システム・オブ・システムズで代替する。

- 到達距離・持続性・消耗耐性を備えた無人戦闘機(UCAV)中心の航空団を配備。軽空母・強襲揚陸艦・駆逐艦・無人水上/水中ノードに戦闘力を分散する。レーザー・高出力パルス(HPM)・AI迎撃機・耐障害性センサーで生存性を強化する。

-モジュール設計、迅速な開発スケジュール、産業能力の段階的拡大により費用対効果を高める。通信障害下での作戦、自律行動、網目状の戦力設計に対応した教義と訓練を更新する。

-コーベットが主張したように、制海権は相対的な概念だ:精密打撃時代においては、単艦ではなくネットワークで達成される。

空母の代替手段の可能性:実現は可能か?

長きにわたり、空母は米国海軍力の要であり、米軍の到達範囲を示す最も顕著な象徴、そして海洋支配の明確な表現であった。第二次世界大戦の太平洋から20世紀末のペルシャ湾に至るまで、空母は兵力投射、海上支配、同盟国への安心感提供の手段となってきた。今日、その卓越性が逆に標的となっている。

技術革新が脅威をもたらす

長距離攻撃、極超音速兵器、自律型群集兵器の進展は、これらの浮遊飛行場が紛争環境下で安全に運用できるかについて深刻な疑問を投げかけている。重要な問い建造継続の是非ではなく、代替手段の確立と、これまで担ってきた重要機能を他の能力で確実に遂行する対策である。

戦力投射

これらの疑問に答える第一歩は、空母が何を提供していたかを特定することだ。能力面では、数百マイル内陸を攻撃可能な航空団を運搬することで戦力を投射し、監視・阻止行動の移動基地として海上支配を維持し、その存在自体が能力と政治的意思を示すことで敵を牽制した。代替手段は、より生存性が高く、費用対効果に優れ、柔軟な方法でこれらの機能を再現しなければならない。ここから単一の支配的プラットフォームという概念から離れ、分散型システム・オブ・システムズの論理へと移行することを要求する。

無人戦闘航空機(UCAV)はこの転換に不可欠だ。海軍航空戦力の未来は有人攻撃戦闘機ではなく、広範囲の戦闘空間上空を長時間滞空し、人間のパイロットが到達できない領域に持続的に留まり、人間乗員には耐え難いリスクを引き受ける無人プラットフォームにある。

空母(あるいはその後継艦)に無人機主体の航空戦力を搭載すれば、空母の伝統的優位性を維持しつつ、脆弱性を軽減できる。自律性や人工知能(AI)の進歩により、ドローンの群れを統制し、防御網を飽和させ、広大な海域を監視することが可能となる。同様に重要なのは、無人機はより低コストで大量生産できるため、艦隊が損失を吸収しても機能停止に陥らない点だ。

代替戦略の第二の柱は分散化だ。海軍は戦闘力を少数の超大型空母に集中させる代わりに、より小型で多数のプラットフォームに能力を分散させるべきだ。軽空母、強襲揚陸艦、ミサイル装備の駆逐艦はいずれも役割を果たす。無人水上艦・水中艦と組み合わせることで、これらの艦艇はより大規模なネットワークの結節点として機能し得る。このような分散配置は、敵の標的選定を困難にし壊滅的損失のリスクを低減するだけでなく、消耗戦に直面しても艦隊の回復力を維持しつつ、必要に応じて戦力を集中させる選択肢を指揮官に提供する。

生存性は、あらゆる空母代替戦略における第三の優先事項とすべきだ。艦艇が小型化・分散化されても、ますます高度化するミサイル脅威や無人機による飽和攻撃に直面することは変わらない。この課題に対処するため、新興の防御技術が艦隊設計の中核要素となる必要がある。

指向性エナジー兵器(レーザー及び高出力マイクロ波)は既に開発が進んでいる。AI搭載迎撃機と強靭なセンサーネットワークと組み合わせれば、攻防のバランス回復に寄与しうる。こうしたシステムは艦艇を無敵にするわけではないが、分散配置されたプラットフォームを許容可能なコストで生存可能にし、抑止力に必要な要件を満たす。

同様に産業基盤が重要となる。小型モジュール式プラットフォームと無人システム群を基盤とする艦隊は、それらが大量生産できる場合にのみ成功する。少数の精巧な艦艇を中核とし、膨大な整備を要する現行モデルでは、この任務には不向きだ。

実現可能性を高めるには、海軍は開発期間の短縮、脅威や戦術の変化に応じ異なるペイロードを交換可能なモジュラー性の採用、そして競争力のあるペースとコストで実際にこうしたプラットフォームを構築できる産業の俊敏性への投資が必要となる。これらの改革なしでは、分散型・無人システムの可能性は紙上のものに留まり、敵対勢力は安価ながら効果的な対艦兵器の兵装を配備し続けるだろう。

最後に変革が必要な領域は戦術教義と訓練である。部分的に無人化・分散化された艦隊を大規模に運用するには、指揮・統制・兵站に関する新たな思考法が求められる。演習やウォーゲームでは、通信が遮断され、兵站が攻撃を受け、部隊が半自律的に行動せざるを得ない争奪環境を想定すべきだ。指揮官は艦隊を単一資産を護衛する護衛艦の集合体ではなく、独立行動と集団行動の両方が可能な相互補完的なノードのネットワークとして捉える思考に慣れねばならない。空母を代替することは、技術面と同様に作戦文化の問題でもある。

この道筋には必然的に抵抗が生じるだろう。空母はアメリカ海軍力のアイデンティティの一部だ。単なる艦艇ではなく、海軍文化、政治的レトリック、国民の想像力に深く根ざした象徴なのだ。

しかし戦略をノスタルジアに基かせてはならない。海軍力の中心として空母に固執することは、資産から負債へと変貌させるリスクを伴う。敵対勢力は既に、アクセス拒否・領域拒否(A2/AD)能力を軸に近代化計画を構築しており、その多くは空母を無力化するよう設計されている。米国がこうした脅威への適応を躊躇すればするほど、敵の思うつぼとなる。



空母:海軍の伝説をどう置き換えるか

空母の代替策とは、海を支配する新たな巨獣ではない。空母が担ってきた機能——戦力投射、海上支配、抑止力——を、小型で分散型かつ技術的に高度なシステムの集合体によって再現することである。

無人航空機、モジュラー艦艇、指向性エナジー防御、そして新たな教義と訓練へのアプローチ——これら全てが役割を担う。これらの能力が一体となって、単一のプラットフォーム(いかに強力であろうとも)がもはや保証し得ない柔軟性と回復力を提供し得るのだ。

そしてここで、偉大な英国海軍史家であり海洋戦略理論家であるジュリアン・コーベット卿の思想が最も重要となる。コーベットは、制海権は常に相対的なものであり絶対的なものではないと記した。そして海戦戦略とは、必要な場所と時に支配を行使し、必要でない場所と時には支配を拒否することだと述べた。空母はかつて、一隻の艦船に集中した戦力を詰め込むことでこれを実現しているように見えた。

しかし精密攻撃と分散型殺傷能力の時代において、集中は脆弱性へと変貌した。制海権は分散された能力ネットワークを通じて行使されねばならない。

各能力は、それぞれの作戦領域で支配力を発揮し、総合することで、攻撃を受けた場合でも全体的な回復力を提供する。つまり、空母の代替手段を見つけることは、コーベットの考えを真剣に受け止め、海上の力とは、1隻の大型プラットフォームではなく、時間と空間を超え、持続的な指揮能力と、耐え、適応できる柔軟性を発揮する戦力であるということを認識することなのだ。■

How Do You Replace the Aircraft Carrier? 

By

Andrew Latham

https://nationalsecurityjournal.org/how-do-you-replace-the-aircraft-carrier/

著者について:アンドルー・レイサム博士

アンドルー・レイサムは、平和外交研究所のシニア・ワシントン・フェロー、ディフェンス・プライオリティの非居住フェロー、ミネソタ州セントポールにあるマカレスター大学の国際関係学および政治理論の教授を務めています。X: @aakatham で彼の投稿をフォローすることができます。彼は、ナショナル・セキュリティ・ジャーナルに毎日コラムを寄稿しています。


2018年4月26日木曜日

米海軍は超大型空母以外に「小型」空母を建造すべきなのか

日本他で出現しているF-35搭載「空母」はどこまで超大型空母を補完できるのでしょう。すくなくとも低甚度紛争に超大型空母を派遣しなくてもあれば戦力を有効に使えますが、F-35B数機程度では大きな攻撃力にならないのでは。と思いますが、これまでの戦力とF-35がケタ違いに違うのであれば話は別です。ここは超大型空母とは違う世界を想定しないと話が先に進みません。

 

The Real Story of Why the Navy Hates 'Small' Aircraft Carriers 米海軍が「小型」空母構想を嫌う理由はどこにあるのか



April 24, 2018


米海軍で供用中の原子力超大型空母10隻は最大規模の艦船だ。5千名を超える乗組員海兵隊員が住みかとするニミッツ級空母は原子力推進で艦載機90機近くを搭載できる。だがこの形以外も可能なはずだ。海軍が数十年前に今と違う選択をしていれば超巨大空母へ費用対効果に優れた中型空母が補完効果をあげていたはずだ。

第二次大戦中の米海軍には空母型式二つがあった。大型艦隊空母と護衛空母だ。大型艦が攻撃力の中心で戦闘機、急降下爆撃機、雷撃機を取り混ぜて搭載した。護衛空母は「ジープ」空母とも呼ばれ小型艦で艦載機を小規模搭載し輸送船団の防空護衛や必要な場合に大型空母の穴埋めに活躍した。
戦後の米海軍は各種空母を運用した。大型空母として原子力艦USSエンタープライズ以下があり、小型攻撃型空母、対潜空母として戦時中のエセックス級を使った。その中で小型空母の老朽化が進み、その後継艦は超大型空母だった。小型空母は建造されず1980年代中にはUSSミッドウェイ、USSコーラルシーを除くと全部超大型空母だった。

超大型空母への道のりに政治と実用面の二つが混ざって作用した。国防予算が比較的自由に使えた冷戦時には大型空母一隻を発注するほうが小型艦二隻を毎年発注するより安全な選択だった。突然の緊急事態で二隻目の空母の発注取り消しを迫られない保証はなかったからだ。

大型空母は投入費用で得られる効果も大だ。単一艦に6千名もの乗員が乗る方が二隻で合計9千名必要となる場合よりも安上がりだ。大型艦一隻なら随行水上艦の巡洋艦、駆逐艦、フリゲートも一組で十分だし艦載機も大型化でき、多数搭載できる。

ただし大型艦の建造単価は極めて高くなり、運用経費も莫大な規模になっている。そのため海軍内部外部で代替策の検討が進んだ。1970年代には当時の作戦部長エルモ・ズムワルト大将がヴィエトナム戦終結後の予算縮小傾向の中で大戦時の艦船がまだ残る海軍艦艇構成に手を付けていた。何も手を付けないと戦力となる艦艇数が大きく減る危険があった。

ズムワルト提案は艦隊規模の維持のため艦船のハイローミックスがあり、高性能ハイエンド戦闘艦と戦力は劣るローエンド艦を組み合わせる構想だった。この考えを空母に応用しズムワルトは「中型空母」で超大型空母を補完する構想を提唱した。中型空母とは61千トン程度の通常動力艦で飛行甲板は908フィート長、最大60機を搭載し総人員は3,400名程度だった。

中型空母は蒸気カタパルト二基と、超大型空母の4本より少なく搭載し、艦載機発艦のペースは超大型空母の半分程度だった。エレベーターも大型空母の三基にに対し二基としながらも艦載機に艦隊防空任務機と対戦任務機を含めず攻撃力に集中することで超大型空母とほぼ同等の効果を狙った。

小型艦の多数建造には有利な点があった。戦後初めて空母合計が20隻を割り込み、通常型戦闘ですべての要求に答えるべく空母を十分そろえることが不可能となった。航空戦力を多数の艦に分散させれば空母喪失の場合にも抵抗力が高まる。現実にはペルシア湾などの新しい作戦水域の追加で既存戦力は薄く展開を迫られている。

中型空母構想の弱点は艦体の小ささでこれが原因で人気が出なかった。大型艦体があれば大型艦が実現するため海軍は引き続き大型空母建造を続けた。海軍は超大型空母で編成する空母戦力の実現を目指し、今日の空母部隊は全隻原子力推進超大型空母になっている。

だがこれで物語が終わったわけではない。新型フォード級空母の建造コストを憂慮したシーパワー推進派のジョン・マケイン上院議員も代替策模索に乗り出した。2017年1月のこと、同上院議員から白書が発表され、題名には「アメリカ軍事力の回復」とあり、「ハイ・ロー・ミックス」の空母整備を求めていた。アメリカ級揚陸強襲艦にF-35の短距離離陸垂直着陸型を搭載する構想なのだろう。今後も米海軍が空母調達を続ければハイ・ローミックス議論は続くはずだ。■

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009, he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.