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2025年10月18日土曜日

UH-60ブラックホーク貨物ドローンにクラムシェル型ノーズがつき初公開(TWZ)―新造機でなく既存有人型を改装する点がポイントでしょう。ブラックホークは姿を変えつつ今後も活躍しそうですね

 

UH-60ブラックホーク貨物ドローンにクラムシェル型ノーズがつき初公開(TWZ)

新型U-Hawkは、標準型ブラックホークでは収容不可能な数千ポンドの貨物を内部に搭載し、ドローンや兵装を投下できる

シコースキー/ロッキード・マーティン

コースキーは、コックピットをクラムシェルドアに交換し、フロントエンドを完全に改造した、ブラックホークヘリコプターの新しい完全無人バージョンを発表した。U-Hawk と名付けられたこのヘリコプターは、貨物数千ポンドを内部および下部で運搬し、無人地上車両を展開し、監視および偵察ドローンや徘徊型兵器など、数十個を発射できる。

元米陸軍UH-60Lを改造したU-Hawkのデモ機が、本日開幕したワシントンD.C.での米国陸軍協会(AUSA)の年次総会で展示され、本誌も同総会に参加した。現在ロッキード・マーティンの子会社であるシコースキーは、この設計を S-70 無人航空機システム (UAS) とも呼んでおり、S-70 は H-60 バリエーションの社内モデル番号です。

U-Hawkは、長年にわたって飛行を続けているブラックホークの パイロットオプション機 (OPV) バージョン、および MATRIX 自律飛行制御ソフトウェアに関する同社のこれまでの成果を活用している。MATRIX の開発は 10 年以上前に開始され、航空乗務員労働コックピット自動化システム(ALIAS)プログラムを通じて、米国国防高等研究計画局 (DARPA) の支援を早い段階から受けた。

「多くの顧客から『戦域へ物資を大量輸送する必要がある』との要望がありました。既存のドローンでは100ポンド(約45kg)や500ポンド(約227kg)の積載能力しかないのが大部分です」と、シコースキー副社長兼ゼネラルマネージャーのリッチ・ベントンは今月初めの記者会見で本誌などに語った。「社内で検討しました。実は既に自律飛行可能なブラックホーク、つまりOPV(オプションパイロット機)がある。では、そのコックピットを取り外しUAS(無人航空システム)化できないだろうか?」

OPVブラックホーク。シコースキー

「このU-Hawk構想は、信じられないかもしれませんが、前回のAUSA(米国陸軍協会年次展示会)で陸軍や他軍種の関係者と話している際に生まれました」と、シコースキー・イノベーションズ部長のイゴール・チェレピンスキーも、本日の会議開幕に先立つ電話会議で本誌などに語った。「(基盤となるUH-60L)機体は今年初めに調達しました」。

シコースキーのプレスリリースによれば、「構想から実現まで」約10ヶ月を要した。初飛行は来年を予定している。U-Hawkは現時点で社内資金による開発プロジェクトである。

ブラックホークを基にしたU-ホークは、単にパイロットを排除しただけでなく、特定の任務において有人型を大幅に上回る能力を提供する。設計面では、従来のOPVブラックホークと比較して、自律システム「MATRIX」用のハードウェア基盤と改良されたフライ・バイ・ワイヤ制御システムを採用している点も特徴で、これについては後述する。

それでも、この新しい無人バージョンの最も目を引く特徴は、その新しい前部と改良された内部構造だ。

「コックピット、パイロット、そして航空機のクルーチーフステーションを完全に撤去しました」と、シコースキーの先進プログラム事業開発ディレクター、ラムジー・ベントレーはチェレピンスキーとともに説明した。「これにより、キャビンとコックピットエリア全体を、ロジスティクス業務やミッション支援業務に充てることができるようになりました」。

U-Hawk は S-70UAS としても知られている。シコースキー/Lockheed Martin

シコースキーによると、U-Hawk は 1,600 海里まで「自律的に展開」可能であり、燃料補給なしで 連続飛行14 時間が可能である。本日のプレスリリースでは、無人ブラックホークは「航続距離の延長や滞空時間の延長のため内部燃料タンクを搭載できる」とも述べられているが、これは公表されている航続距離と連続飛行時間の数値を達成するために必要なものかどうかは不明である。その可能性は高いと思われる。有用なペイロードを搭載しながら航続距離を延長することで、特に広大な太平洋全域での作戦だけでなく、その他の地域でも、新たな大きな可能性が開ける。

ペイロードに関しては、無人ブラックホークが最大7,000ポンド(約3,175kg)の内部搭載、または9,000ポンド(約4,082kg)の外部吊り下げ、あるいは両者を組み合わせた最大10,000ポンド(約4,536kg)の搭載が可能とシコースキーは見込んでいる。同社によれば、これは重量ベースで標準的な有人UH-60Lのペイロード能力とほぼ同等である。ヘリコプター全般において、特定の任務における最大許容ペイロードは高度や気温などの環境要因にも大きく依存する。

訓練中にハンヴィーの吊り上げ準備を行う標準UH-60L。米陸軍

U-Hawkの構成では既存のUH-60派生型と比較して貨物やその他のペイロード用の内部物理的スペースが約25%増加した。これは重要である。ペイロードには重量制限に加え、寸法制限が課される場合が多いためだ。従来は機体下部に吊り下げられていた貨物の一部を内部搭載可能にすることで、輸送可能距離を大幅に延伸できる。

「ペイロード性能こそが、競合機との真の差別化要因です。…U-Hawkが遂行し得る任務の幅が広がることを想像できるでしょう」 と、シコースキーの戦略・事業開発担当副社長のベス・パーセラは、ベントン副社長兼ゼネラルマネージャーとの共同会見で述べた。「ドローンの群れを投下する任務から、発射効果装置『クィバー』の運用、制圧された後方支援環境での貨物輸送、無人地上車両への乗降、対UAS(無人航空機システム)作戦、物資のローリングオン・オフまで、あらゆる任務が想定されます」「つまり、この航空機は非常に柔軟性が高いのです」と彼女は付け加えた。

「発射効果(launched effects、LE)」とは、米軍が現在、他の航空プラットフォーム、地上、または海上から発射できる無人航空システムを指すために使用している包括的な用語。シコースキーと親会社である ロッキード・マーティンは現在、陸軍の要件、すなわち短距離中距離、長距離の 3 段階の「発射効果」を、発射用「矢筒」とその装填物の開発の基礎として活用している。3つのカテゴリーすべての LEは、監視、偵察、電子戦任務を実行するように構成できるほか、徘徊型兵器として、あるいはおとりとして活用することもできる。

米陸軍が過去に公開した、複数の空中発射効果(ALE)が、広範な作戦構想にどのように適合するかを非常に大まかに示した図。米陸軍

「この発射装置は、発射される効果のサイズに応じ、航空機の後部に 24 から 50 種類の発射効果を収容することができます」と、ベントレーは述べている。「このクィバーは実際には陸軍の短・中距離用LE向けに設計されています。長距離用は恐らく(スタブ)ウィングに搭載されるでしょう。他の実証実験でご覧になったことがあるかもしれません」。

ベントレーはこの発射装置が他社開発品を含む別のLEを混載可能だと指摘した。

パルセラはU-Hawkの「対UAS機能」について詳述しなかったが、発射効果能力と関連付けられる可能性を示唆した。U-Hawkは、敵対ドローンやその他標的に対し使用可能な、電子戦システムを含む他の種類の兵器を搭載できる可能性がある。

米国陸軍協会2025年次シンポジウムで展示されたU-Hawk実証機内部の「クィバー」モックアップの様子。ジェイミー・ハンター

前述の通り、無人ブラックホークの主要任務として一般貨物輸送も想定されている。シコースキーによれば、U-Hawkは米軍規格の共同モジュラー複合輸送コンテナ(JMIC)を最大4基搭載可能で、主客室と下部吊り下げ部に分散配置される。現行ブラックホークの搭載能力(2基)を上回る。本日のプレスリリースによれば、さらにM270多連装ロケットシステム(MLRS)およびM142高機動砲兵ロケットシステム(HIMARS)で使用される標準弾薬ポッドを1基、ならびに発射用キャニスターに収納された海軍攻撃ミサイル(NSM)を2基搭載可能となる。陸軍はM270とM142の両システムを運用している。海兵隊もHIMARSを保有し、NSMを地上発射型構成で配備中である。

2024年ヨルダンでの演習中、有人米陸軍ブラックホークがMLRS/HIMARS弾薬ポッドを吊り下げ運搬する様子。米陸軍

U-Hawkのクラムシェル式ドアは、ローター回転中でも貨物の積み下ろしを可能にする。作業を容易にする折りたたみ式ランプも装備されており、無人地上車両(UGV)の展開も可能だ。

米陸軍協会2025年年次シンポジウムで展示されたU-Hawk実証機のランプ上に、HDTグローバル社製6×6ハンターウルフUGVが確認できる。ジェイミー・ハンター

「機動指揮官への直接支援を目的として設計されました。 つまり、陸軍が空挺作戦を行う場合、U-Hawk が兵士たちの前方を飛行する姿を想像してください」とベントレーは説明します。「U-Hawk が着陸地帯に到達すると、まず、機体の側面にある発射装置から発射効果を放出します。そして着陸し、UGV を降ろして機体は離脱します。これは、兵士たちが地上に足を踏み入れる前に完了する作業です」。

空挺作戦任務を遂行するU-Hawkのレンダリング。シコースキー/Lockheed Martin

「おそらく、AFC(陸軍未来司令部)の司令官である [ジェームズ] レイニー将軍が、金属と金属の最初の接触について話していることをご存じでしょう」とベントレーは述べています。「これは、シコースキーが、司令官のニーズ、兵士のニーズ、すなわち、兵士を危険にさらすことなく、これらの発射効果、UGV、UAS を戦闘空間に投入することに焦点を当てたものです」。

「米陸軍と海兵隊も、脅威の高い地域における部隊の補給など、兵站任務に垂直離着陸無人航空機を使用することに特に興味を持っています。」海兵隊は既に空中兵站接続機(ALC)プラットフォームの多層ファミリーを追求しており、最低要件である戦術補給無人航空機システム(TRUAS)を満たすドローンの配備を開始している。

ベントレーはまた、U-Hawkが山火事消火や災害救援活動支援など非軍事任務にも活用される構想を明らかにした。民間事業者では既に有人H-60派生型機がこれらの任務に投入されている。

任務構成に関わらず、シコースキーはU-Hawkを最小限の訓練・維持要件で全能力を発揮できるよう設計している。同社によれば、航空専門知識がない者でも、タブレット端末のようなタッチスクリーン装置を通じて無人ブラックホークの操作を容易に習得可能だ。MATRIXシステムはの能力は実証済みで、OPVブラックホークのようなプラットフォームを設定ウェイポイント間を高度に自律的に移動させられる。

「要するに、最小限の訓練を受けたオペレーターとタブレットさえあれば、この航空機を運用できるということです」「当然ながら、民間・軍事空域を問わず、広範な空域状況に統合し、航空機をより厳密に制御する手段も提供している」とチェレピンスキーは説明した。「例えば空港AからBへ移動するよう指示した場合、民間空域内と認識すれば適切なルートを選択し、民間手順に従います。軍事空域と認識すれば、軍事空域に適した行動を取ります」。

「場合によっては、お客様の意図と完全に一致しない可能性もあります。そこで我々は調整可能な自律性を提供しています。例えば地上オペレーターがクレーンとして航空機を操作し、現場で物資を移動させたり、航空機に積み込んだりするといった運用が可能です」と彼は付け加えた。「より中央のUAS司令部に引き継ぐことも可能です。そこでは速度や高度など、より細かい制御が行えます。これらの機体をどう運用するかは、本当に本当に顧客次第です」。

シコースキーはU-Hawkを、過去に実証したOPVブラックホークと比較しても非常にコスト効率の高い選択肢として提示している。

「当社のS-70 OPV機は数年にわたり飛行実績があります」とチェレピンスキーは述べた。「オプションで有人操縦が可能で人間が搭乗可能なフライ・バイ・ワイヤシステムであり、自律システムを備えています。一定の価格帯で提供されます」。

同氏は、OPV実証機の多くのシステムが、当該機専用に設計された部品ではなく、既存サプライヤーから調達可能な部品を活用している点を指摘した。これにはMATRIXシステムを稼働させるハードウェアも含まれ、同氏はこれを「シコースキーが当該用途に必ずしも必要とした以上のもの」と説明した。同氏が言及したように、これらのシステムでは人間を搭乗させる航空機の基準を満たす必要があったが、これは現時点でU-Hawkが考慮する必要のない点である。

「U-Hawkでは、はるかに多くの垂直統合を実施しました」とチェレピンスキーは述べた。「自社開発の車両管理コンピュータや作動機構を採用し、航空機本体だけでなくシステム全体の価格帯を大幅に引き下げました。例えば当社の車両管理コンピュータは数万ドルですが、有人機搭載品は数百ドルです」。

U-Hawkの現行コスト優位性には、既存のUH-60L機体フレームの再利用による節約効果も含まれる。米陸軍は新型で高性能なM型を導入するにつれ、これらの機種を着実に退役させ売却してきた。陸軍は760機のL型を改良型UH-60Vへ改修する計画を進めていたが、昨年の航空戦力優先順位の再編に伴い、追加改修計画を中止した。このため、今後数年間でさらに数百機のUH-60Lが市場に出回ると予想される。世界各国の運用組織が機体更新を進めるにつれ、無人化可能なその他の旧式H-60も供給源となり得る。

「新型U-Hawkを全機新規製造することは可能です。全ては経済性と価格次第です」(チェレピンスキー)。

特筆すべきは、米陸軍が将来の空挺作戦構想を策定中であり、特に太平洋地域における中国とのハイエンド戦闘を想定している点だ。その作戦距離はU-Hawkの到達範囲を超える。ウクライナ紛争も継続中であり、脅威の生態系の拡大が有人ヘリコプターの運用に重大な制約を課す実例を特に顕著に示している。米軍全体、特に陸軍における発射効果の追求は、敵対勢力の対空能力がますます高度化し長距離化していることを反映している。陸軍は昨年、脅威への懸念と無人プラットフォームへの注力方針を理由に、将来攻撃偵察機(FARA)の取得計画を中止した。FARAは有人ヘリコプター形態となる予定だった。

「率直に申し上げますが、生存性に対処するために我々が実施している具体的な取り組みについては、お答えできません。生存性は、航空、特に垂直航空にとって、長年にわたり課題となっています」と、ベントンは前回の記者会見で、無人および有人ブラックホークが今後増大する脅威に対処するためにどのような取り組みが行われているのかという筆者の直接の質問に対して答えた。「私たちは、ロッキード・マーティンの全力を活用しています…ロッキード・マーティンが保有し、これらの航空機の生存性を確保するために活用できる技術とは何でしょうか。これらは、私たちが引き続き検討している事項です」。

同時に、有人ヘリコプターがなくなるわけではなく、トレードオフも必要となる。多くの任務において、U-Hawk は、戦闘損失という観点で最大のリスク要因である乗員を不要にすると同時に、一部能力を大幅に強化する。無人ブラックホークは、確立された兵站・維持管理体制を最大限活用しつつ、これら全てを低コストで実現する道筋を示す。これは少なくとも2070年までH-60の運用継続を見込む米陸軍にとって特に重要だ。

U-Hawkは脅威の低い環境において有人プラットフォームから特定の任務を引き継ぐことも可能であり、さらなる作戦上の柔軟性とコストメリットをもたらす潜在性がある。完全な資格を持つ航空要員を必要とせず、数百マイル離れた遠隔地間で予備部品など重要物資を数百ポンド単位で自律輸送できる能力は、脅威の低い地域において大きな利点となり得る。さらに大きな売りは、スリング積載による航続距離のペナルティなしに、内部に大型の積載物を運搬できる点だ。これら全てを、縮小傾向にある陸軍のヘリコプター部隊に新型機種を追加することなく実現可能であり、H-60/S-70のグローバルなサプライチェーンを活用できる点も非常に魅力的な要素である。これらの特性は、無人ブラックホークの民間事業者向け販売可能性を裏付けるものでもある。

「非常に興奮しています。率直に言って、5年前にこの発想に至らなかったことを後悔している者もいます」とパーセラは今月初めの記者会見で述べた。■


UH-60 Black Hawk Cargo Drone With Clamshell Nose Breaks Cover

The new U-Hawk can lug thousands of pounds of cargo internally that would never fit in a standard Black Hawk, and launch scores of its own drones and munitions.


Joseph Trevithick

Published Oct 13, 2025 10:00 AM EDT

https://www.twz.com/air/uh-60-black-hawk-cargo-drone-with-clamshell-nose-breaks-cover

ジョセフ・トレヴィシック

副編集長

ジョセフは2017年初頭より『The War Zone』チームの一員。それ以前は『War Is Boring』のアソシエイトエディターを務め、『Small Arms Review』『Small Arms Defense Journal』『ロイター』『We Are the Mighty』『Task & Purpose』など他媒体にも寄稿している。


2019年10月16日水曜日

シコースキーのレイダーXは米陸軍の求める高速偵察ヘリコプターへの新たな提案


シコースキーの "Raider X" は米陸軍向けの
将来型高速武装偵察ヘリコプター構想への同社の提案だ
米陸軍がめざす残存性を備えた高速「ナイフファイター」ヘリコプターは激甚戦場への投入を目論む中、 レイダーXはこの任務に最適のよう
BY TYLER ROGOWAYOCTOBER 14, 2019
シコースキー


週はベルから360インヴィクタス高速武装偵察ヘリコプターが発表された。米陸軍のめざす次世代偵察機材(FARA)への同社の提案で、今回はシコースキーが「レイダーX」を公表した。同機はS-97レイダー実証機が原型で、同じく同社のX2複合ヘリコプター技術も活用し高速飛行と操縦性を実現している。同社には大型のSB>1デファイアントもあり、こちらは共用多用途(JMR)競作への提案で、さらに将来型垂直離着陸中型機への採用をめざし、これも他に例のない構造となっている。シコースキーX2技術は自社開発で今まで10年以上にわたり開発されてきた。 S-97についてWar Zoneが同社X2チームと独占インタビューしているので参照されたい

シコースキー

S-97 レイダー実証機がレイダーXの原型だが、一部が大きく変化している。

FARAOH-58カイオワウォリアーとAH-64アパッチの後継機も同時にねらう。FARAでは、ベル、シコースキー以外にも受注を狙う企業がある。シコースキーも現在はロッキード・マーティンの子会社であり、ボーイングAVXL3連合の他ケイレムノースロップ・グラマンレイセオンといった競争相手も存在する。ただボーイング含む残りの企業からFARA事業への提案内容は発表されていない。
シコースキーによればレイダーXは「迅速開発、迅速配備で様相を一変させる技術と性能を実現し、最も過酷な状況においても真価を発揮する機体。 レイダーXは将来の戦場で勝利をおさめるため必要な航続距離、防御能力、威力を備えた機体」とする。同社はさらに続ける。
-抜群の性能:X2.のリジッドローターにより性能が引き上げられる。操縦入力に敏感に対応し、低速ホバリング性能が向上し、軸を外したホバリングが可能であり、同じ加速率と減速を実現する。 Xは競合相手がないほどの性能を発揮する.
-アジャイルなデジタル設計。高性能デジタル技術による設計、製造はすでにロッキード・マーティン、シコースキーの他機種で実用に供されている。例としてCH-53K,CH-148F-35の各機があり、これにより陸軍は調達経費を引き下げるにとどまらず迅速かつ安価な改修で今後も変化していく脅威に対応可能となる。
-適応性: 新しいオープンシステム・アーキテクチャア(MOSA)によるエイビオニクス、やミッションシステムが「プラグアンドプレイ」により高い演算能力、センサー、残存性を実現し、高い威力と生存性につながる
-維持保守について:機材の運用コストを引き下げるため新技術を利用し、通常の整備点検方式を自機診断および実際の状況に応じた保守管理に変える。これにより機材の稼働率が上がり、前線での運用を容易にし、整備実施も柔軟に行える。
-今後の発展性、柔軟性: 将来の変わり続ける脅威環境に着目し、X2複合同軸ヘリコプター技術から他に比類のない今後の性能向上の余地が生まれ、飛行速度、航続距離、ペイロードの発展が期待される。 この将来への発展性から作戦運用上の柔軟性が生まれ、多様な用途に投入する柔軟性につながる。各種仕様と運用形態が実現するはずだ。
シコースキー
シコースキー・レイダーの実証飛行.

レイダーに盛り込まれているX2技術のその他について同社は以下のように述べている。
X2ファミリー機材の最新版レイダーXをシコースキーが公表した。 これまでX2が達成した性能は以下の通り。
·         250ノット超の最高速度
·         最高高度9千フィート超
·         低速高速での機体制御能力を生かして60度超の機体傾斜が可能
·         ADS-33B (Aeronautical Design Standard) レベル1の機体制御能力を複数パイロットで実現
·         飛行制御を最適化し、振動も抑える

シコースキーのテストパイロット、ビル・フェルがレイダーのテスト飛行大部分を操縦しており、以下X2技術について述べている。 
X2のパワーでヘリコプターの常識が変わる。 高速ヘリコプターの性能と航空機の巡航飛行性能を両立している。 S-97レイダーからFARA試作機となるレイダーXのリスクが低減できた。
レイダーXのコンセプトはS-97に似通っているが一部に改良が見られる。 低視認性への配慮が機体設計の基本にあったようだ。構想図を見るとレーダー反射面がない機体になっており、センサー、パイロン、アンテナ、兵装がきれいに格納されている。 その例として20mm機関砲も使用していないときは機体内に格納されているようだ。ローダーヘッドシュラウドも角度がついており、V字型空気取り入れ口の形状からガスタービンエンジンは機体内部奥深くに装備されているようだ。
排気もテイルブーム内部を経由し、冷却のしかけは同社から以前発表され不採用になったRAH-66コマンチと同様なようだ。テイル下部の形状がこの機能のために設計されているのだろう。コマンチでは高温排気は低温外気と混ぜてからここから排出されていた。


シコースキー
シコースキー
さらに胴体部のエッジにもコマンチ同様の加工がされているようだ。

こうした特徴から同機はヘリコプターとしての効率を追求しつつ可能な限りの高速度を実現する設計のようで、同時に低視認性設計の特徴も備え持つようだ。編集部はシコースキーにこうした特徴について確認を求めた。
また忘れてはならないのは、同機のレーダー視認性を低くする工夫として機体のレーダー断面積や赤外線特徴を低くするべく、コマンチほどではないが高い残存性を実現していることだ 同機が高速性能とともに状況認識能力を引き上げるべくセンサーを活用し、機体防御対策も高度化しておりこれからの戦場でも高い残存性につながるだろう。
SIKORSKY/LOCKHEED MARTIN
同様な設計上の特徴がFVL軽量版でも見られる。これはFARAより先に提案が募集されていた

レイダーXは同軸複合ヘリ仕様でFARA競合機の中では運動性能が一番上のはずだが、シコースキーからはX2技術を低リスクで実現できることを強調しているが、これは非常に主観的な意見だ。
同社がこの技術に賭け、10年余を費やしたのは事実である。だが量産機には応用されておらず、ベルよりリスクが高いのは事実だ。ベルはきわめて通常型のヘリコプターを提案している。複雑な機構を考えると、レイダーXの機体単価は相当高額になるのではないか。ただし、今の時点でこの点は明確にできない。すると、低コスト、低性能版のほうがFARAミッションに適していると言えないか。
高性能統合防空装備システム(IADS)と短距離防空装備の進歩に対し通常型ヘリコプターが高度防空体制を突破し残存できるのかとの疑問が生まれている。もうひとつが飛行距離の問題だ。接近阻止領域拒否の時代にヘリコプター運用基地が目標から150マイル以内にあるのでは現実的と言えるのか。
こうした問題については今後もご紹介していくが、飛行距離、速度、とくに残存性がFARAに数十億ドルを投じるにあたり重要な検討項目になるのではないか。または回転翼機による戦闘が過去のものとなっているのに無駄な検討項目になっているのかもしれない。
シコースキー
S-97の独特な機体構成を上から見るとびっくりする。

レイダーXは速度、飛行距離、操縦性でも優れているだろうが、残存性でもステルス特徴を生かし最新の防御策、センサー、兵装を実現する。これが実現しないと、開発リスクを抱えた複雑な機構のヘリコプターとして他社より機体価格が上昇しかねない。 だが再度、安価な競合作があるとしても、残存性が劣り将来のハイエンド戦に投入できない機体になればそれだけの高額を投じる価値があるのか。
その答えはFARAの考過程にあわせでてくるはずだが、現時点ではシコースキーの提案内容が判明したにすぎず、その内容は強い印象を与えてくれる。