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2018年12月30日日曜日

2019年の予想(2)安全保障面ではどうか 中国、ロシアがやはり要注意


5 Big National Security Predictions for 2019 
2019年の国家安全保障問題で5つの予想
Trouble with Russia and China top the list.
ロシア、中国とのトラブルが上位に来る

by James Holmes
December 29, 2018  Topic: Security Blog Brand: The Buzz  Tags: Great Power CompetitionChinaRussiaCycle Of EscalationNaval Dominance


ィンストン・チャーチルがこう語っている。政治家の仕事は次に起こることを予見すること、起こらなかった理由を説明することと。ジョージ・オーウェルは一歩ふみこんで「不沈の軍事専門家」が軍事行動を大胆に予見しながら常に誤った予想をし、何回見方を誤っても「高給」を得ているとした。予測は控えめに徹するべきだろう。さもないと過去の戦役の亡霊に愚弄されるだけだ。


そんな気持ちで2019年の国家安全保障の5大トピックをお伝えする。


1. 中国の暴走は止まらない
中国の夢とは習近平が好んで言うセリフだ。正確には中国人民の支配が中国共産党の夢だ。党幹部はこの夢を追い求め、外交経済軍事面で支える。一帯一路(BRI)でインド太平洋地区に足場を維持する。現地国政府にはBRIでインフラ開発資金を供給し、合わせて海陸のシルクロードを再現する。東南アジアでは航行の自由原則をなし崩しとし、人工島を武装し、南シナ海全域に事実上のプレゼンスを確立した。さらに米海軍の航行の自由作戦に激しい反発姿勢を示している。夢の実現にむけたこうした行動を中国が自粛するとは到底考えられない。ただし国内が不安定化するとか地政学上の競争相手に手痛い仕打ちを受けた場合は別だ。

2.中国が限界に直面し始める
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一部の状況から中国の超大国化で減速の兆しが見える。経済不況を乗り切ろうと多大な債務に直面している。鄧小平時代の経済高成長はもはや期待できずめぼしい開発案件もない。また党は再教育施設や「社会信用」採点方式で党路線を少しでも外れる兆候を見せるものを罰する姿勢を明確にしている。ペロポネスの時代以降の政治家すべてが学んだように経済活力が国家戦略の土台だ。軍事力整備には資金が必要であり、戦場で軍の維持にも資金が不可欠だ。つまり中国の手持ち資金が減れば、中国政府も大胆な戦略を取れなくなる。一方で強圧的な社会統制を敷く必要があるのは党に自信がないあらわれである。一般市民が中国共産党の統制を受け入れなくなるのを恐れているのかもしれない。ただし国内の不安定な状況から中国が海外での軍事行動用の資源を国内に戻す可能性も出てくる。そうなることを期待したい。

3. 米国が真剣になる

トランプ政権による国防力整備の構図が米議会の勢力地図の変化で見えなくなってきた。それでもよい兆候が見られる。とくに兵器開発で。米空軍は新型長距離対艦ミサイルLRASMを来年にも爆撃機に導入する。これは空軍と陸軍が海洋戦に備える動きの現れだ。米海軍の艦載戦闘攻撃機もLRASMを搭載する。海軍は原子力潜水艦にハープーン対艦ミサイルの搭載を再開しており、魚雷のほぼ7倍の距離まで水上艦艇を攻撃する能力を実現した。ソフトウェア部門ではトマホーク巡航ミサイルを対艦ミサイルに転用する作業が続いており、これまでにない長距離打撃力の登場が期待される。その他もあり、オバマ政権で始まっていた事業がトランプ時代にも続き実現に近づいている。中国、ロシア、イランに対抗する装備品一式が実現するわけだ。これだけの強力な手段をワシントンにうまく使ってもらいたものだ。

4. 安全保障に本腰を入れるその他諸国
米国の同盟国や安全保障上の協力国も真剣だ。一例だがオーストラリア海軍がホバート級イージス艦の最終艦就役を準備中で同海軍は多様な戦闘への対応能力が増える。海上自衛隊では「ヘリコプター駆逐艦」でF-35ステルス戦闘機運用をしようとしており、F-35調達機数をほぼ三倍にする。インドは中国との国境地帯で攻撃に軸足をおいた抑止力の実現に向かい、中国のインフラ建設の大盤振る舞いでインドに対抗する地上攻勢が強まる危惧に対応する。その他の国でも超大国間の新たな競合地図に対応する動きがある。同盟国で自国防衛に力を入れれば米国との関係も平等に近づく。平等な同盟関係は冷戦時代の覇権上の関係よりも長持ちするはずだ。米国は同盟国の防衛に今後も信義を尽くすべきだが米国主導の同盟関係を対等の関係として捉え直すべきだろう。

5. ロシアは「青ベルト」海洋防衛を引き続き強化
ロシアでは長く陸地中心の海洋防衛体制をとってきた。また最新技術を防衛戦略に取り入れ敵艦隊や空軍力の侵入を阻んできた。その結果ソ連時代から「青ベルト防衛」と呼ぶ海上からの攻撃を阻む緩衝帯となった。青ベルトは海上装備、陸上装備の性能内で沖合へ展開できる。ケルチ海峡(ウクライナがアゾフ海へ展開するのを阻む要所)から黒海にまで「防衛体制」の整備もここに含まれる。ロシアは自国国境に隣接する地理空間の管理を常に希求してきた。海洋も例外ではない。西側諸国が優勢を維持するためにはこの青ベルト内で活動で有効な戦術や技術が必要だ。その反面、2019年はウクライナはじめとするロシアの隣国にとってアゾフ海沿岸を事実上ロシアが海上封鎖している状況から悩ましい事態が続く年になりそうだ。ユーラシアで古くからある海上、陸上での競合が新しい様相で復活する。
以上は筆者の気ままでばらばらの所見だ。軍事専門家が永遠に不沈の存在であれば良いと思う。■



James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College. His latest book, the second edition of Red Star over the Pacific , appeared this month. The views voiced here are his alone.

Image: Flickr.

2018年12月29日土曜日

2019年の展望 その1 米空軍の課題

4 big questions for the US Air Force in 20192019年の展望・米空軍の4つの課題


Valerie Insinna, Defense News 4m


フロリダ州エグリン空軍基地のフライトラインに向かう米空軍パイロット。 September 26, 2014. US Air Force photo
2019年の米空軍で組織、機材の大きな変化が訪れそうだ。
その答えは2月に公表予定の2020年度予算案に見られるはずだ。
次の予算は当初予定の7330億ドルから上方修正され7500億ドルになるといわれるが、今年の予算が増えるかで変わる

F-15X
F-15CイーグルがKC-135Rストラトタンカーからの空中給油に入る。ノルウェーへの移動途中。September 12, 2013. US Air Force Photo


ここ一年ほど噂にのぼっているのがF-15追加調達の話題だが、いよいよ空軍はボーイングからの調達に向かいそうだ。12月21日にブルームバーグがF-15X計12機を12億ドルで導入する要望を20年度予算案に計上すると報じた。
F-15Xは電子戦装備、レーダー、コックピットを更新しミサイル搭載量を増やした新型だ。ブルームバーグ記事では導入はペンタゴン上層部の決定とあり、州軍航空隊で運用中の旧型F-15の更新用とある。この表現に注意が必要で、空軍は第4世代機の導入に抵抗を示しているのだ。
9月時点でF-15X導入の検討を聞かれた空軍長官ヘザー・ウィルソンはF-35含む第5世代機の追加調達こそ必要と答えていた。
「現在は8割が第4世代機、2割が第5世代機の構成だ。想定する航空戦では第5世代機を増やして効果を上げたい。第4世代機導入は止めて5割5割にしたい。つまり第5世代機導入を増やす」
そのウィルソン長官と空軍参謀総長デイヴ・ゴールドフェイン大将がF-15新型機導入をどう正当化するか注目される。

またマティス国防長官が去ったあとで20年度の想定調達機数に変化が生まれるのか。空軍の五カ年計画はどうなるのか。こうした点から今回の動きが最終的にどんな規模になるかがわかるはずだ。


軽攻撃機
AT-6がホローマン空軍基地で離陸準備に入る。空軍は軽攻撃機実証事業(OA-X)として軽攻撃機の任務遂行能力を試している。US Air Force Photo by Ethan D. Wagner

空軍は軽攻撃機導入の最終要望を今年中に出すと見られていた。ただし最終決定は2019年に先送りされ、競合2社は放置される。
テキストロンのAT-6とエンブラエルシエラネヴァダのA-29スーパートゥカーノが競うが業界には空軍が導入の最終結論を出すのか不安視する向きがある。
また調達機数も大きな疑問点だ。
100機未満だと空軍特殊作戦軍団が低度戦闘に使用するのみとなると航空戦闘軍団計画立案本部長スコット・プレウス少将が述べている。
数百機規模の導入なら世界各地に配備されるはずだ。

宇宙軍
ボーイング製の広帯域グローバルSATCOM衛星を搭載したユナイテッド・ローンチアライアンスのデルタIV打ち上げロケットがケープ・カナベラル空軍基地から打ち上げられた。 March 18, 2017. US Air Force/United Launch Alliance

宇宙軍の指揮統制は空軍省に任せる提案がペンタゴンから出ており、空軍は宇宙空間での安全保障に権限を今後も維持しそうだ。
宇宙軍は同部隊の参謀総長と空軍次官(宇宙軍担当)の指揮に入り、空軍長官の指示に従う。このことから空軍トップは宇宙軍でも相当の権限をもちそうだ。

ただし、この案で議会が納得するのか。下院軍事委員会委員長に就任するアダム・スミス下院議員が宇宙軍として別組織にする構想に懐疑的な一方、宇宙軍は空軍と別組織にすべきと強硬主張する議員も出るだろう。

もう一つ不明なのは現行の空軍内宇宙関連組織との関連だ。空軍宇宙司令部、ミサイルシステムズセンターは宇宙軍に統合されるのか。海軍、陸軍それぞれの宇宙関連事業は維持するのか。そもそも宇宙軍担当空軍次官に誰が就任するか不明だ。

組織改編
アンドリュース共用基地でゴールドファイン空軍参謀総長(右二人目)やパイロットと話すドナルド・トランプ大統領。September 15, 2017. (US Air Force photo by Scott M. Ash)

今月始めに退任せまる国際関係担当空軍副長官ハイディ・グラントから空軍が現在グラントが統括する戦略立案機能を空軍参謀本部の立案要求内容検討部門(A5)に移管する案を検討中と述べていた。

グラントは空軍上層部が検討中の大規模組織改編の一部と述べた。
グラントによれば空軍は1月にも正式決定するという。ただし、上層部からは変更案の内容はほとんど聞こえてこない。

組織内での職掌内容を変更にとどまるのか、統合整理するのか、それとも全く新しい組織を創設するのか注目される。

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