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2017年11月3日金曜日

グアム攻撃演習を繰り返す中国は北朝鮮より懸念すべきではないか



北朝鮮ばかりに目をむけるのではなく、本質的に警戒すべきちゅごくの軍事力、作戦構想、行動を意識しなければアジア太平洋の安全保障は片手落ちになるよね、という当たり前の話なのですが、統合参謀本部議長に同行する報道陣に背景説明する米関係者の力の入れようがわかります。日本の記者は同じ話を聞いても勝手に解釈した「解説」をしてしまうのでしょうか。一時ほどではありませんが、中国の取り扱い方にはまだ遠慮した内容がめだちませんか

China has practiced bombing runs targeting Guam, US says

中国はグアム空爆の予行演習をしていると米国が発表

U.S. military officials are concerned over China's increasing air power in the Asia-Pacific region. One activity by the Asian nation is proving especially worrisome.
米軍関係者は中国空軍力がアジア太平洋地区で強化されている現状に憂慮している。

By: Tara Copp    1 day ago

JOINT BASE PEARL HARBOR-HICKAM, Hawaii — 中国が米領グアムを標的に爆撃演習を行い、その他行為とともに米側に中国が北朝鮮以上に太平洋地区最大の心配の種だと改めて感じさせている。
  1. 南シナ海人工島への中国による軍事施設構築はよく知られているが、中国は同時に大規模の戦闘機部隊を整備し、東シナ海、南シナ海さらにその先で連日のように演習を行っていると米軍関係者は指摘している。中国の非軍事手段も米国の作戦実行を困難にする手段と見られている。
  2. 米関係者が中国の過熱する動向を伝えたのは統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード大将Chairman of the Joint Chiefs of Staff Gen. Joseph Dunfordの視察旅行に同行する報道陣向けブリーフィングでの席上だ。
  3. 同関係者は北朝鮮の脅威が高まっているが同国との武力衝突は「米側の勝利に終わる」と楽観視しつつ対戦には「懸念している」と違いを明白にした。
  4. ダンフォード大将は「軍事力だけを見えれば中国はまだ整備中だがこちらが太平洋各地の同盟国の要望に応える力を維持する必要がある」と述べた。
  5. 昨年の日本による中国機へのスクランブル回数は900回を超え、中国は2013年に独自に防空識別圏設定を発表して範囲は日本のADIZと重複し、尖閣諸島も含んでいた。それ以降、空中での日中緊張が高まり、日本は那覇航空基地に戦闘機飛行隊2ケを移転させたと関係者は語る。
  6. 「今や連日のように中国の武装フランカーと日本機が対峙している」と関係者は相互に接近しているとし、米中間でも迎撃事例が増えているという。「PRC軍用機が米軍機を迎撃するのもごく普通になっている」と同関係者は中国の略称を使って述べている。
  7. また中国機の米防空識別圏への接近も増えており、H-6K「バジャー」爆撃機が射程1,000マイルの空中発射巡航ミサイルを搭載しグアム島周辺で米防空体制を試している。バジャー編隊は「定期的に」米領の範囲内に飛来して「PRCはグアム攻撃を訓練している」という。
  8. フライトの大部分は「危険飛行」など問題を起こさず発生しているが、同関係者によれば米太平洋軍ガイドラインにしたがい、万一の事態に備えつつエスカレーションを回避しているという。
  9. 米中間の軍組織同士の関係は今でもオープンだが、管理下にあると同関係者は述べている。米中関係者は年二回の軍事海洋協議合意に基づく会議で顔をあわせており、安全保障全般とともに侵犯事案を取り上げている。
  10. 中国の戦闘機・爆撃機の活動拡大は中国のめざす「戦わずに勝つ」作戦の一部として、中国の望む形を徐々に日常に根付かせる動きのあらわれだ。
  11. 圧力は他にもある。例として同関係者は人民解放軍海軍が15万隻もの民間漁船を指示し中国海軍と別に動員できると紹介した。中国漁船は統制の取れた動きでベトナム漁民に攻撃してきたと同関係者は説明し、パラセル諸島付近で衝突し沈没させている。中国は同地をベトナムから1970年に強奪し軍事施設を設置した。付近はベトナムが長年漁場としている。
  12. 総合すると中国の動きは拡大境界線の防御だと米関係者は憂慮している。「九段線で自国領土だと決めている地帯の実効支配準備が出来ている」と関係者は述べ、中国が南シナ海全体を中国の支配海域と認識している点に触れた。
  13. 静観すれば中国は「法に基づく秩序」つまり国際法や規範を基にしている各国を中国との安全保障上の同盟関係に鞍替えさせようとするだろう。ダンフォード議長は米国はそのような事態を現実にさせないと発言。「米国は太平洋国家だと自覚している」「米国は太平洋にとどまれないと述べる向きがあるが、米国のメッセージはあくまでも太平洋国家として太平洋を去ることはないとする。米国経済の将来はこの地域の安全保障、政治上のつながりと表裏一体だ」
  14. 説明に出た関係者全員が今のところ中国と差し迫った危機は存在しないと強調したものの米軍は太平洋で戦争が発生した場合の想定を考え直しつつある。
  15. 「まず空爆を受ける想定」と関係者は述べる。対応策のひとつに「迅速戦闘活動」 “agile combat employment”があり、日本国内の高性能戦闘機を分散させ、10ないし15か所の航空施設に分散させる。遠隔地なので補給活動が必要になる。米空軍は燃料の分散補給訓練を行っている。航空機を分散させれば中国も攻撃の優先順位で混乱するはずと見る。
  16. ドナルド・トランプ大統領の太平洋地区歴訪が今週後半から始まり、日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンを訪問する。ダンフォード議長は中国の侵犯事例と経済圧力が増える中で経済安全保障面の課題が出ていると指摘。
  17. 「中国と同じ見方をしたいのであればそれは勝手だ。だが原則に基づく国際秩序が中心にする必要がある。国益追求で米軍の力が試される。この点で妥協はしない」■

2016年3月29日火曜日

中ロ関係の背後に見える両国の異なる思惑から正しく南シナ海情勢を理解する



Brookings Panel: Improved China – Russia Relationship is a Marriage of Convenience

March 24, 2016 12:43 PM

Chinese president Xi Jinping and Russian president Vladimir Putin greet participants of Joint Sea-2014 exercise at Wusong naval port in Shanghai, east China, May 20, 2014. Xinhua Photo
習近平とウラジミール・プーチンが共同海軍演習に参加した中露海軍関係者を出迎える。上海、2014年5月20日。Xinhua Photo

ここ数年で中国とロシアの接近が目立つが、その関係は便宜上の結婚のようなもので両国にとって最重要な外交関係国は実は米国である。

  1. ブルッキングス研究所主催のフォーラムがワシントンDCで開かれ、九州大の益尾知佐子准教授は「中露関係は強いが永続しない」と述べた。
  2. ロシアにとって「中国は信頼できるただ一つの友好国」で貿易相手国としても大きな存在だ。ロシアの軍需産業基盤を支援する形で中国はロシアから高性能ミサイルや航空機を購入しており兵力投射能力を向上させている。
  3. ただ益尾准教授は両国関係でほころびが明白になっているとも指摘。中央アジアではロシアが歴史的に安全保障で強力な役割を果たしてきたが、今や中国が経済面で上海協力機構の仕組みを使い旧ソ連共和国各地で重要度を高めているという。
  4. これに対しユーラシアグループのデイヴィッド・ゴードンが追加コメントした。「ロシアは次々に自らが二番目の役割を演じていることに気付いている」と二国関係では中国が経済力を背景に強大になっていることを言及した。「両国が協力しながらも競争する場面が増えている」
  5. 中露関係が密接になったのは2014年にロシアがクリミア半島を併合し、ウクライナ東部の分離主義勢力を軍事的に支援したため米国、EUからの厳しい経済制裁を受けたことがきっかけで中国へ天然ガス売却の合意が成立したことだ。「このヘッジはうまく機能しているとはいいがたい」(ゴードン)
  6. 「エネルギー問題は今後も両j国関係に影響を及ぼす」が、両国の二国間協力は「まだ始まったばかり」とゴードンは述べ、ロシアはまだ中国からエネルギー生産で大規模投資を受けていないが、極東部や北東部での開発や中央アジアを縦断するパイプライン建設へ期待があることを指摘した。
  7. このためロシアは「引き続きヨーロッパ市場への依存」を「受け入れざるをえなくなり」経済の浮揚を図るだろうとゴードンは見る。「ロシアは資源面で中国の付属品と見られることにあきあきしはじめている」
  8. 北海道大学の岩下明裕教授はロシアと中国は長年に及ぶ国境紛争を経て利害対立点は実は少なく、「ともにライバル視する必要がない」ことに気付いたと解説。岩下教授は両国は「『疑似同盟』を受け入れ維持すること」にしたのだという。
  9. 岩下教授は中露関係で日本の視点は米国と大きく異なると指摘。日本政府にとって両国は隣国だが、米政府はロシアはヨーロッパの延長として、中国はアジア太平洋で台頭する大国と見るというのだ。
  10. 中国の陸上国境線はインド除きすでに各国と合意ずみであり、平和が確立しているため、中国政府の懸念は海上国境線に移っており、沿海部が「多くの国に囲まれている」という被害妄想が強くなっている。このため南シナ海での埋め立て工事を強行し軍事施設を設置することで脅威に対抗しようとしているというのだ。
  11. ブルッキングス研究所のトーマス・ライトは中国が「域内での発言力を増やしたい」と望んでいると解説する。中国の視点では「金融危機を機に環境が変化した」と2008年のリーマンショックをあげ、米国の指導力に従う必要はなくなったと判断している。
  12. ウラジミール・プーチン大統領率いるロシアは欧州連合やNATOの「弱体化をねらいあえてリスクを取る決意」があるが、中国は南シナ海へ積極的な進出を図りつつ、自国影響力の強化策では「多様な選択肢」があり、特に経済面が強い。「中国の戦略は平和であってこそはじめて機能する」とライトは解説し、中国にとって都合のよい世界秩序にむけて「段階的な再構築につながる施策を採択する」と見ている。■