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2022年1月31日月曜日

中国の対艦弾道ミサイルで脆弱化した空母に代わり、米国の対中攻撃の切り札はB-21レイダーに。

 



米海軍が太平洋方面で中国対応に取り組んでいるが、大きな効果を上げるのは空軍のB-21レイダーだ。


軍はここ数年にわたり航行の自由作戦(FONOPS)の実行頻度を南シナ海で増やしている。太平洋での活動強化は交通量の多い海域で不法な主権主張を止めない中国を念頭に置いたものだ。


南シナ海での権益をめぐる競合状態


ヴィエトナムとフィリピンの間に広がる南シナ海には各国の領有主張が重複しているが、国際法や慣習が背後にある。つまり、経済的排他水域の200マイルという従来の常識を超えて数千マイルを自国海域と主張する中国はまったく別個の存在であり、人工島構築まで行い実効支配を続けている。



中国は主張の根拠に歴史の史実があるというが、国際法廷はこうした主張は法の裏付けがないと一蹴している。これに対し、中国は海軍力を拡大し、沿岸警備隊のみならず海上民兵にも艦船を整備している。域内に中国は数百隻を展開し、他国の侵入を物理的に阻止しようとしている。このためヴィエトナムの海上油田は同国領内にあるにもかかわらず封鎖を受け、漁民は同国の経済排他水域から追い出され、太平洋の関係国のみならず遠くヨーロッパ各国も緊張の度合いを高めた。


ここに航行の自由作戦が加わった。南視界でのFONOPsは中国が自国領海とみる海域で軍艦を航行させることで、中国以外は国際海域と理解している海域だ。米国等がこの作戦を実行しており、国際規範の強化をめざし、中国の不法な主張に物理的な否定を加えようとするものだ。ただし、中国と世界有力国の間に緊張が高まる中で、極超音速技術で中国に有利な状況が生まれそうになってきた。


中国の極超音速対艦ミサイルが深刻な脅威となる


中国には膨大な数の弾道ミサイル巡航ミサイルがあるが、極超音速ミサイルが加わった。極超音速をめぐる軍備レースが始まっており、中国、ロシア、米国に加え日本がマッハ5超の極超音速ミサイルの配備を急いでいる。


中国のDF-17やCM-401ミサイルの驚異的な速力では迎撃がほぼ不可能で、膨大な運動エナジーによる破壊効果が生まれる。言い換えれば、こうしたミサイルがあれば、水上艦艇は運動エナジーの効果だけで撃破されうる。ここに弾頭がつけばさらに破壊力が増す。


CM-401は短距離対応とみられるが、DF-17は極超音速で中国沿岸からの有効射程は数千マイルといわれる。これだけの距離だと信頼度の高い標的捕捉が難関となるが、中国は超音速無人機で敵艦の標的データを入手し、飛翔中のDF-17に送るはずだ。


極超音速ミサイルで米空母部隊は無力化するのか


米海軍なかんずく米国自体はニミッツ級フォード級超大型空母による兵力投射効果に依存する。各空母は航空機多数と乗組員数千名により空母打撃群として一国の戦力を上回る攻撃力を展開する。しかし、中国にとって空母は極超音速対艦ミサイルの格好の標的となる。


F/A-18スーパーホーネットおよびF-35C共用打撃戦闘機の戦闘行動半径は500マイルにすぎず、米空母が中国沿岸に接近すれば極超音速ミサイル攻撃のリスクを冒すことになる。現在、空母攻撃力の有効範囲を拡大する改善策があるが、つなぎ策として実戦で有効かもしれないが、中国の極超音速ミサイルへ真正面から対抗する手段にはなりえない。


B-21の深部侵攻を中国は探知できない


そこで空軍の出番だ。最新鋭ノースロップ・グラマンB-21爆撃機は2020年代中ごろに運用開始となると見られ、史上最高のステルス爆撃機となる。ノースロップ・グラマンはB-21関連の極秘内容をうまく守っているが、以下想像するのは無理がないはずだ。新型爆撃機は探知を逃れ、グローバル規模での爆撃作戦を展開でき、中国相手のハイエンド戦を主導する。


F-35Cも中国沿岸に展開するミサイル陣地に接近して探知を回避できそうだが、航続距離が不足し、標的に到達できず、破壊したとしても帰投できない。だがB-21ならすべて可能だ。


軍事力を助ける外交努力


新型機の登場で国際紛争への対応で新たな意味が二つあらわれる。B-21で実現する戦闘能力の価値がまずある。つぎに外交力への影響だ。「ビッグ・スティック外交」とのテディ・ローズベルトの「穏やかに話しつつ、太い棒を持ち歩く」原則による国際関係への対処で基礎となる。


極超音速ミサイル出現までUSSセオドア・ローズベルトのような超大型空母が米国の「ビッグスティック」だった (US Navy Photo)



太い棒がないまま、やさしい口調で外交相手に話すのでは大きな成果は得られない。だが、B-21のような太い棒があれば敵も耳を傾けざるを得なくなる。B-21レイダーで極超音速対艦ミサイルが無力化されるとあれば、中国に残る選択肢は二つしかない。米国のブラフだと一蹴して開戦する。あるいは米新型爆撃機の優位性を認め、交渉の席でおとなしくすることだ。


William Allen Rogers’s 1904 cartoon courtesy of WikiMedia Commons


世界経済では米国、中国両国の市場に依存度が高く、開戦に踏み切れば両国ともに利益を得ることにならないが、戦争の構えを維持することで効果が生まれる。中国は対艦兵器で対外交渉で有利となり、外国の主張を無視できる。他方でB-21レイダーはこれまでの力の分布を均等化させ、高レベルの協力を強いる効果を生む。


ただ克服すべきハードルは残る。まず中国の高性能対艦装備の所在を把握する必要がある。米国は中国国内の情報網で再編が必要だ。2010年から中国はCIAの通信内容にアクセスし、国内のCIA協力者をつきとめ処刑している。中国国内での米情報収集能力が低下した。極超音速兵器を突き止めるためには偵察能力とあわせ人的情報集でCIAの努力が必須だ。


B-21 レイダーが米中戦争で先陣を切る


対中関係が悪化して開戦となれば、米国にとって中国本土への地上部隊侵攻は検討外となり、中国に有利な状況が生まれる。かわりに米国は海上戦闘を続け、中国のグローバル経済へのアクセスを止め、B-21は真っ先に投入され対艦ミサイルの破壊をまず行い、その後は中国の防空体制を叩き、友軍機で軍事経済基盤を狙い、中国を屈服させる。


米海軍が新型艦載戦闘機で戦闘行動半径を画期的に伸ばすまでは中国は対艦ミサイルで有利な立場を維持できる。だが、B-21の実戦化で、現在の中国の優位性は短期に終わるだろう。■

 


How the B-21 Raider could shift power in the Pacific - Sandboxx


Alex Hollings | April 8, 2021


 

Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


2021年7月16日金曜日

パシフィックアイアン2021演習で米空軍はラプターを25機投入する。ACEの実効性を試し、A2ADを取る中国ロシアへの対抗だ。

Pacific Iron 2021

 

西太平洋での演習に米空軍F-22ラプター部隊が加わり、厳しい空域で実力を発揮できるかを試す。

 

パシフィックアイアン2021

 

演習はパシフィックアイアン2021の名称で、空軍は7月中の実施で空軍の人員装備多数が参加する。米インド太平洋軍(INDOPACOM)は太平洋空軍、航空戦闘軍団から800名35機超が加わると発表。機材はF-15Eストライクイーグル10機がアイダホのマウンテンホーム空軍基地366戦闘航空団から、F-22ラプター25機が525戦闘飛行隊、アラスカのエルメンドーフ-リチャードソン共用基地の第3航空団およびハワイ州軍パールハーバー-ヒッカム共用基地の154航空団199戦闘飛行隊から、C-130J2機が横田航空基地の374空輸団から加わる。

 

F-22の機数に意味がある

 

太平洋空軍司令を務めたダン・「フィグ」・リーフ空軍中将(退役)によればパシフィックアイアン2021にラプター25機が参加すると一回の演習に加わる機数として最大になる。ラプターの運行経費の高さを考えると機数に大きな意味があるという。

 

機体単価とともに高額な機体を制空任務にしか投入できないことに懸念が生まれ、F-22調達は2009年に終了した。中国やロシアとの対抗が激しさを増している今日でも生産再開の可能性は低い。ということで現在保有中のラプターの増勢はなく、今後老朽化しても代替機材がない。そのためF-22を都度投入すると重要な決断となっている。

 

そこでF-22をパシフィックアイアン2021にこれだけの機数投入することに大きな意味があり、空軍が太平洋地区にへの関与の姿勢の大きさを示しているとリーフ中将は解説している。

 

ACEとは

 

パシフィックアイアン2021はグアム、テニアンから展開し、アジャイル戦闘展開(ACE)を行う。

 

ACEとはロシア、中国が接近阻止領域拒否 (A2/AD)戦略を展開する中で米国が直面する課題にこたえるものだ。中露両国の戦略はヨーロッパ、東アジアで米軍部隊の安全な運用を妨害することにある。

 

中国はA2/AD戦略に関しミサイル開発を進めている。地対空ミサイル(SAM)、巡航ミサイルのほか長距離弾道ミサイルもこの一環だ。ここに対艦弾道ミサイル(ASBM)や極超音速滑空体(HGV)も加わり、米国との対戦となれば米空母や域内の米軍基地を標的に収める。このため米海軍、米空軍の航空戦力展開に大きな障害が生まれかねない。

 

この解決策として長距離航続力を有する航空機の開発もあるが部分的解決に過ぎない。そこで空軍はACE構想を作り、既存の航空基地が攻撃を受けても作戦運用が十分できるようにする。ACEでは機材人員は整備済み航空基地以外に臨時基地空も運用し、事前配備装備や空輸能力を応用し、厳しい環境下の作戦に各種拠点を活用する。

 

パシフィックアイアン2021の前にF-22はハワイからロシア機の接近にスクランブル出撃を行っていた。太平洋で展開した海軍演習にロシア機が姿を現したためだった。■

 

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A Fleet of 25 F-22 Raptor Stealth Fighters Will Soon Train for War in the Pacific

ByEli Fuhrman


 

2018年2月4日日曜日

★空母キラーへ対抗し中国の想定を崩すF-35B、中国が日本の同機運用に反撥する理由がよくわかります。



The F-35 can make China's carrier killer missiles 'irrelevant’

このF-35で中国の空母キラーは「無意味」になる




米海兵隊F-35BライトニングII(海兵隊戦闘攻撃飛行隊VMFA-121所属)が垂直着陸を岩国海兵隊航空基地で行っている。 Nov. 15 2017. (U.S. Marine Corps photo by Cpl. Carlos Jimenez)
Alex Lockie Business InsiderFeb. 02, 05:30 PM


国が南シナ海で軍事拠点化を進め、米国排除の影響圏を広げる中、米海兵隊はバブル突破の切り札としてF-35Bの戦力化を進めている。
人民解放軍ロケット軍がいわゆる空母キラーミサイル多数を保有していると判明しており、最大800マイル遠方の艦船を狙えると評価されている。
米海軍で最長の有効距離を有する装備が空母だが約550マイルが有効半径であり中国は理論的には米国を南シナ海から締め出すことができるわけだ。
ただし理論や紙の上の前提で米海軍を実戦で破ることは不可能だ。
接近阻止領域拒否A2AD戦略を進める中国は米軍機は空母あるいは陸上基地から発進する前提だが、F-35Bにこの前提がきかない。
「F-35Bは文字通りあらゆる場所から飛ばせる」と海兵隊中佐(退役)デイヴィッド・バークは述べる。「中国のミサイル攻撃で作戦基地が使えなくなれば、F-35Bの出番だろう」
離陸に数百フィートあれば十分で着陸に場所を選ばないF-35Bで海兵隊は大規模で狙われやすい基地から自由になる。

中国が空母を狙うのなら、米国は空母を使わなければいい

海兵隊はこの作戦構想を太平洋で訓練中で、2018年1月にF-35Bをスロープ状の場所に着陸させ、どこにでも着陸できる能力を実証した。
昨年を通じF-35B乗員は「ホットローディング」「ホット燃料補給」を訓練し、F-35の再装備をあたかもNASCARのピットストップのように迅速に行えるよう努めている
地上要員がまだポンプで燃料を補給中のF-35Bに駆け付け兵装を装填した。最小限のサポート環境でも即席の拠点でも可能と実証し、中国のミサイルの標的になりそうもない場所で運用可能と実証した。F-35Bは離陸していった。
「平らな場所で600フィートあれば着陸できる」とバークはF-35BをA-10と比較して述べた。
空母搭載のF/A-18部隊を中国が食い止めても海兵隊が小型空母のUSSワスプのような艦や大型ヘリコプターでF-35B運用を実施できることになる。V-22オスプレイやCH-53の運搬力を活用して海兵隊は中国のA2ADバブル内に臨時基地を構築してしまうだろう。
そうした前線基地からステルスF-35Bは脅威を除去し、バブルに穴をあける。その間大型空母は遠方に残る。
「戦闘を平面で見ている限り理解は困難」と元F-35戦闘機隊司令バークは述べ、A2ADに詳しい。「ボクシングでは腕が長いだけでは勝てない」

F-35Bの太平洋展開は最優先で進める

米国がF-35B性能に信頼を置くことで太平洋の力のバランスが影響を受けているのは明らかで装備の配備状況を見ればわかる。日本が最初の配備先になった。
北朝鮮と緊張高まる中でF-35B運用可能な空母が日本を母港とする意義は大きい。
「第五世代戦闘機が初めて艦上運用され緊張高まる地区に展開するのは地政学的リスク、緊張を伴う」とバークは述べる。
「第五世代機が太平洋に展開する意義は言葉でいいつくせないほど大きい。誰も想定しなかった能力を提供してくれるはずだ」■


やはりアメリカの軍事力は攻撃を旨としていますね。南シナ海で米軍が拠点を占拠する作戦もありうるということですか。中国が日本のF-35B運用構想を早くも警戒するのはよく理解できますね。それだけ抑止効果が高いということにもなります。

2017年2月7日火曜日

★★★米海軍でF-14(の機能)が改めて必要とされる理由



そもそも一機種ですべてをこなすことに無理があるのであってこれまで機種の絞込をしてきた米海軍ですが今後再び高性能の専用機材複数を揃える方向にむかわないともかぎりません。21世紀の米軍部隊は海外基地も縮小するので空母打撃群に期待するところがふえるはずです。ソ連の米空母攻撃構想と中国のA2ADは違う気がするのですがどうでしょう。

The National Interest


Forget the F-35: Why America's Military Misses the F-14 Tomcat

February 6, 2017


空母搭載機に長距離攻撃能力が必要だとワシントンでよく議論に上るが、制空能力の向上が米海軍に必要なことは軽視されがちだ。
  1. 米海軍はグラマンF-14トムキャットが2006年に全機退役後に空対空専用機材は保有しない状態が続いている。だがトムキャットでさえ最後の数年間は地上攻撃任務に転用されていた。ソ連の脅威が消えたためだった。だが今や空母に新しい脅威が現れており、敵側も新型戦闘機を配備してきたことでボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットおよびロッキード・マーティンF-35C共用打撃戦闘機も安閑としていられなくなっており、軽視されてきた海軍の防空任務が特に西太平洋で再び注目を集めつつある。
  2. 「航空優勢確保用の戦闘機の新型が必要だ」とハドソン研究所は「槍先を鋭くする:空母、統合部隊、ハイエンド紛争」との表題の報告書を刊行した。著者はセス・クロプシー、ブライアン・マグラス、ティモシー・A・ワトソンといったNational Interestにおなじみの研究員だ。「統合運用部隊には空母搭載戦闘機の支援が必要であることを鑑みれば、この機能の有無は死活的だ」
  3. 報告書ではスーパーホーネット、F-35Cともに敵の新型第五世代機からの挑戦に対抗できないとし、ロシアのスホイT-50 PAK-FA、成都J-20を例示している。現行のSu-30SM、Su-35Sや中国のJ-11DやJ-15でもスーパーホーネットには相当の脅威となるのは米海軍、米空軍、米海兵隊の航空関係者が共有する認識だ。「F/A-18E/FおよびF-35Cではスーパークルーズで長距離高高度飛行可能な敵の大量のミサイル運用能力があるT-50やJ-20さらにその後継機に立ち向かうのに難がある」と報告書は指摘。「これら機材は米空母運用機材に対して有利に対抗でき、当方の貴重なAEW機、ASW機、給油機を狙い撃ちできる。F/A-18E/Fではすでに中国J-11に対する速度不足が明白でJ-11が発射するミサイルは米AIM-120ミサイルより射程が長く、運動性でも優勢だ」
  4. F-35Cでは加速性能が大変劣ることに加えJSF他機種よりステルス性も劣るため解決にならない。「F-35Cは攻撃機として最適化されており、中高度の飛行性能を重視しつつ、現状ではAIM-120ミサイル二発を機内に搭載するだけの制限を(ブロック3登場まで)受けたまま電子戦環境でも成約がある」とし、「中継ぎとして海軍と空軍はF-35Cのブロック5実用化を急ぎ、AIM-120ミサイル6発の機内搭載を実現すべきだ」
  5. F-35Cはもともと航空優勢確保用の設計ではない。1990年代中頃の海軍はJSFを攻撃特化の機体として6.5G負荷に耐えるるが空対空性能は限定付きとなるのは甘受したと退役海軍関係者が認めている。当時の海軍ではF-14を早期退役させてグラマンA-6イントルーダーを残す案を検討していた。空対空戦は過去の遺物と考えるのが冷戦後の常識といわれていた。当時は将来の戦争はソ連崩壊を受けて空対地が主になると見ていた。このため予算不足も相まって海軍は海軍用高性能戦術戦闘機(NATF)ならびにその後継A/F-X構想を進めなかったのだろう。
  6. 海軍の進めるF/A-XXが登場すれば航空優勢確保のギャップを埋められるかもしれない。同構想はF-14の退役後、NATFおよびA/F-X構想が死んでからそのままになっている。問題は海軍がF/A-XXを多用途のスーパーホーネットの後継機ととらえているものの、航空優勢確保は重視していないことだ。「このまま開発をすすめると戦闘機・攻撃機の兼用で戦闘機の機能が低くなる危険がある」と報告書は指摘。「そうなると統合部隊に空母運用型の第六世代航空優勢戦闘機の支援が得られなくなる」
  7. 現在海軍航空部門を率いるマイク・マナジール少将はかつてこう述べていた。「長距離パッシブ、アクティブセンサーアレイを搭載し、高巡航速度を維持し(加速は別)、機内に大型兵装庫を有し、各種ミサイルを発射しつつ、将来の技術開発の成果を取り入れる余裕を残し、HPM(高出力マイクロウェーブ)やレーザーの運用を想定する。こんな航空優勢確保用の機材なら外縁部航空戦に投入して敵の防空体制を打破しつつ遠距離で敵目標を補足できるはずだ」
  8. 外縁部航空戦とは海軍が1980年代から使っている概念でソ連のツボレフTu-22Mバックファイヤー爆撃機、オスカー級原子力誘導ミサイル潜水艦、キーロフ級原子力巡洋戦艦が率いる水上艦部隊の一斉攻撃に対抗する構想だ。国防副長官ボブ・ワークが記者に内容を2013年に説明してくれた。ソ連は対艦巡航ミサイルを多数の地点から発射する想定だった。
  9. ワーク副長官が述べたように米海軍はミサイル発射前にオスカー級潜水艦や水上艦の撃沈に自信があった。だが発射地点に達する前にTu-22Mを迎撃できるか自信がなかった。外縁部航空戦でのトムキャットは「射手を殺す」ことで、つまりバックファイヤーをミサイル発射前に処分することで脅威を除去するはずだった。だがワークが指摘したように実戦に想定通りとなる保証はなかったし、試すことは今後もないだろう。だがこの脅威が中国の接近阻止領域拒否となって復活してきた。
  10. F/A-XX及び空軍のF-Xははじまったばかりだが、両機種は技術を共有しながら異なる形状になりそうだ。海軍はF-14を思わせる防御重視の思想なのに対し空軍は攻撃力を重視した航空優勢戦闘機としてロッキード・マーティンF-22ラプターの後継機を狙う。「今後わかると思うが、主任務の違いおよび想定する脅威内容の違いからF/A-XXとF-Xの間に相違点が生まれ、現行のF-22やF-35とも違う形に進化するだろう」と国防関係の高官が記者に語ってくれた。
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.
This first appeared in October 2015 and is being reposted due to reader interest.



2016年8月4日木曜日

★★RANDが予測する米中戦の壊滅的結果

ここにきて米中開戦想定の記事が米側に増えています。中国国内ではなぜかKFCが襲撃を受けたりと民衆はアメリカへの反発を短絡的に示す一方、解放軍は動きを示していません。中国軍は共産党の機関であり、一部が言うような軍の暴走は考えにくいです。党の指示で機能する組織です。その共産党は今後100年の統治を想定しているはずで、今回の法廷決定を無視するのも大計に立った計画をしているからでしょう。西側が短絡的な動きを示せば北京の思う壺では。


New Report Details Why a War between China and America Would be Catastrophic



August 1, 2016


  1. 米中両国が開戦すれば両国に相当の被害が発生するが、今開戦となれば中国の損失の方が大きい。ただし中国が進める接近阻止領域拒否(A2/AD)整備で、中国有利が2025年に生まれる。それでも中国は米側より相当大きな被害を被るとRANDコーポレーションの最新研究成果が述べている。勝者は誰なのかあいまいになるのは軍事衝突は終わりなき人命損失へ悪化していくからだ。
  2. 「米側の軍事優位性が減少する中で作戦案が実現するか米国にも自信がなくなる」とこのたび出た報告書(David C. Gompert, Astrid Cevallos and Cristina L. Garafola)にある。「中国の交戦能力、特にA2ADが強化されると米国は主導権を握れず、中国防衛網の突破が困難になり、決定的な勝利は得られなくなる」
  3. 中国と開戦となれば戦場は海空が舞台となりそうだが、サイバーおよび宇宙装備が大きな意味を有すると報告書は述べる。RANDは通常戦のままと予測している。「両国とも部隊を広範囲に配備し相互に捕捉追跡し攻撃する能力が高いので西太平洋全体が戦闘地帯になり重大な経済的影響が発生する。」「核兵器使用は考えにくい。損害が極度に多い通常戦でも両陣営ともに核兵器の先制使用による放射能のリスクを恐れるはずだ」
  4. RANDは米国が中国本土を重点的に攻撃する前提としたが、研究員は中国の米本土攻撃手段はサイバーだけを想定した。「中国がサイバー除き米本土を攻撃できるとは考えにくい。中国の通常兵器能力に制約がある」とし「対照的に米国は中国国内の軍事施設を広範囲に攻撃するだろう」
  5. 米中戦は短期集中戦から長期にわたる消耗戦まで多様な形で勃発する可能性がある。双方が先制攻撃の誘惑にかられるはずだ。「センサー技術、兵器誘導技術、デジタルネットワーク他の情報技術で敵軍を捕捉できるので米中が相互に深刻な被害を与えられる」と報告書にある。「このため先制攻撃の手段と動機が生まれる。半面、開戦で双方とも深刻な損害を受ける恐れがあり、軍事的損失や経済費用が発生しても両国とも継戦能力が相当ありともに一方的な主導権は握れないだろう」
  6. 今日の時点なら短期戦も米側は相当の損害を受けるが、中国の損害は壊滅的規模になる。「米中いずれかの指導部が軍に猛攻撃を命じれば、きわめて大規模な戦闘となる」とし、「2015年なら米側の水上艦艇と航空機の損害は空母大破、空軍基地各地の能力喪失と甚大だが、中国の損失は本土でのA2AD体制の破壊含みはるかに大規模になる。数日内に開戦当初の低い米側損失も戦闘継続で拡大するのがわかるはずだ」
  7. 2025年までに中国軍事力はさらに拡大し、多大な損失は甘受できなくなる。「2025年までに米側損失規模が拡大するのは中国のA2ADの拡充によるところが大きい。中国側の損失は一定規模に収まるが、それでも米側損害を上回る。戦闘が長引けばどちらが勝利したか微妙になる」
  8. 長期戦なら損害ははるかに拡大し、両国の残存部隊は悲惨な形になるだろう。「2015年時点でも長期かつ深刻な戦闘が続けば、中国有利と予想される。2025年になると初期戦闘の不明瞭な成果から両陣営ともに大損害が発生することを知りながら戦闘を継続するだろう。そうなると米軍が勝利を収める可能性は現在より低くなるとはいえ、そのまま中国が勝利を収めることには結びつかない」
  9. 上記の場合では人命損失と経済被害が相当発生し、両陣営とも軍備を消耗するかもしれず、ともにその他国の脅威に無防備となる。「米中両軍が目標捕捉と攻撃を行う能力は前例がない規模なので、数か月で装備を使い果たす」とし、「当然両陣営とも補充しながら部隊立て直しを国力を賭けて競うだろうが、要素が多すぎ結果予測は困難だ。とはいえ費用だけ確実に上昇する」
  10. RANDは開戦リスクを下げるため以下提言をしている。


  • 米中の政治指導層トップは即時攻撃による相手陣営破壊以外の軍事選択肢を確保すべきだ
  • 米指導層は中国側と意思疎通手段を確保し、紛争激化の前に事態を鎮静させるべきだ。
  • 米国は中国のA2ADへの攻撃が自動的な実施にならないよう戦闘激化の予防策を作っておくべきだ。「フェイルセーフ」の仕組みを整備すれば軍事行動の前に政治面の承認が必須となる
  • 中国のA2AD効果を減らすため、米国は残存性の高い装備(例 潜水艦)やA2AD対抗装備(例 ミサイル)の開発に注力すべき
  • 米国は主要同盟国と緊急対策案を練るべきだ。特に日本が念頭
  • 戦闘に勝利しても破滅的な結果になると中国に認識させる必要が米国にある
  • 大規模戦を想定し継戦能力増強の必要が米国にある。
  • 開戦後に中国が重要資源や技術を入手不可能にする方策が米国指導層に必要
  • 中国から重要製品の輸入が途絶しても影響緩和する方策が米国に必要
  • A2ADに対抗し米陸軍は陸上配備装備を拡充すべきで、東アジアの米側各国(特に日本)へ防衛力増強、相互作戦能力向上を求め、米中軍事組織間の相互理解、協力へも支援を求め誤解や誤算による危険事態発生を防止する


  1. 戦争が米中双方の利益にならないのは自明の理とは言え、一方の防衛力整備が他方を不安にさせる「トゥキデテスの罠」が発生する。高名なハーヴァードの政治学者の権威グラハム・アリソンが著している。トゥキデテスの罠ではごく普通に行うことが大規模交戦のきっかけになる。台頭する側が既存支配に挑戦すれば、通常なら制御できる危機が雪崩のような反応を呼び、双方が望みもしなかった結果が発生する。アリソンは「戦争は不可避」とアトランティック誌で言い切っている。■
Dave Majumdar is the defense editor of The National Interest. You can follow him on Twitter @DaveMajumdar.

2016年6月6日月曜日

★米中もし戦わば 中国空母をどう攻撃すべきか




Visit Warrior

How The US Navy Would Attack Chinese Carriers

JAMES HOLMES
12:24 AM


海軍大学校教授が中国空母を撃破する必要が生れたら攻撃潜水艦、空母搭載戦闘爆撃機、ミサイル他をどう投入するべきかを説明している。

  1. 中国は「空母キラー」誘導ミサイル各種で米海軍の原子力空母を猛攻撃すると喧伝をやめる兆候はないが、なかでもDF-21DとDF-26対艦弾道ミサイル(ASBM)は人民解放軍(PLA)が接近阻止領域拒否 (A2/AD) の要と期待する装備だ。
  2. 中国は自国の装備の威力を各方面に信じ込ませることに成功し、ペンタゴン取材の報道関係者も例外ではない。ペンタゴンはDF-21Dで「空母含む艦船攻撃」がPLAに可能で中国沿岸から900マイル離れても可能とあたかも事実のごとく記載した中国軍事力分析報告書を刊行している。
  3. 恐ろしく聞こえる。だが米海軍にも空母キラーがある。正確に言えば艦船キラーか。空母を機能不全にし沈没させのが可能なら小型艦にも同じ効果が生まれる。対艦兵器は数の威力で効果が増大し、有効射程距離、破壊力でも同様で米海軍は冷戦後の休日状態から目覚めている。どちらの陣営の空母キラーが勝利するかは海戦の発生場所で変わる。
  4. 空母キラーのイメージに西側はもう慣れっこになっており、中国のロケットが米海軍の誇りを海底に沈め、同時にアジア域内の同盟国への米支援も葬るというものだ。もっと悪いのはPLA指導部はわざわざ艦船や航空機をはるか沖合に送らずに世界の歴史に残る戦績をあげることが可能なことだ。ASBMの発射キーを回せばいいのだ。
  5. その可能性はある。有効射程など技術面になぜ執着するのか。DF-21Dは900マイルの射程があることになっているが空母艦載機の到達範囲をはるかに超えている。そうなれば空母打撃群はアジアの戦闘区域に到達したら大打撃を受けてしまう。さらに射程距離が食い違うのが恐ろしい。昨年9月の北京軍事パレードではDF-26の最大射程は1,800から2,500マイルだと伝えていた。
  6. 技術開発がうまくいけば、PLAの弾道ミサイルはアジアの第二列島線付近を航行する米海軍、同盟国軍側の艦船にとって脅威となる。DF-26の射程上限はASBMが列島線を超えた地点にも到達することになるからだ。
  7. これを大西洋に例えるとグアム東にいる艦船を中国沿岸から攻撃して沈没させるのはワシントンDCからグリーンランド東にいる艦船を狙うのと同じだ。グアムまで届くミサイルがあればハワイや米本土からかけつける部隊には危険状況を意味するが、グアム、日本、その他西太平洋各地での船舶運航はたえずミサイル攻撃の恐怖がつきまとうことになる
  8. ただしPLAがDF-21Dを供用開始して5年以上たつが洋上に向けたテストを一回も実施していない事実に注目すべきだろう。さらにDF-26では実戦想定テストをほとんど実施していない。平時の未完成技術は有事には失望させる結果しか生まない。

  1. それでもASBM技術を中国が成熟化させれば有効装備になる。米軍は相当する装備を有しておらず、今後も整備に走らないだろう。米国は中距離弾道弾開発を条約で禁じられており、かりに米政府が条約を反故にしても十年とまでいかなくても数年かけないと兵器体系としての開発、試験、配備は実現しないだろう。
  2. だからと言って米海軍に選択肢がないわけではない。米海軍は敵空母にどう対応するだろうか。答えはニューポートの海軍大学校で用いる標準的な内容にある。つまり、時と場合次第だ。
  3. まず交戦場所がある。空母同士の海戦となればはるか遠隔地の海上が舞台となりPLAの不沈空母たる中国本土から離れることになると、沿岸基地のASBM、巡航ミサイル、航空機が到達できない。
  4. これは艦体対艦隊の想定だ。事態はいつも投入する火力により決まるし、将兵の資質、戦術判断力、生への執着も作用する。PLA指揮官は陸上配備の兵器を大量投入してくるだろう。同時に米海軍も日本、韓国、オーストラリアの同盟軍とともに沿海部での戦闘を試みるだろう。そうなると中国同様に同盟各国の陸上配備装備が艦隊の戦闘力を補強することになる
  5. 戦術戦の舞台二つは大きく異なる。後者はより混乱を極め戦争の霧に包まれる可能性が高い。さらに敵が大胆な動きをすれば予測は一層困難だ。
  6. 米海洋戦略と沿海部近くの海戦で共通するのは潜水艦戦の重要性だ。原子力推進攻撃潜水艦(SSNs)には米ヴァージニア級、ロサンジェルス級があるが水上通商路の遮断が可能だ。あるいはA2/AD防衛網を突破して敵船舶を強襲し、敵の領海内で空母でさえも攻撃できる。
  1. つまりSSNsが米海軍の主力戦力だ。だからこそ議会がSSN部隊の規模縮小で現在の53隻を2029年に41隻体制にしたら大きな誤りとなる。これは23パーセントの戦力ダウンになり、一方で中国は2020年に潜水艦78隻を稼働させようとしている。ロシアも静粛化が進んだ潜水艦の復活に入っている。
  2. そうなるとアメリカの空母キラーは潜水艦になる。そこで近未来の対中国空母の戦闘を語るのは未来予測の様相を示してくる。現時点のPLA海軍は空母一隻しかない。ソ連時代に起工したものを完成させた遼寧で同艦は練習艦のままの公算が大きく、遼寧を改良した実戦用の空母数隻が建造中と伝えられる。

  1. 中国が二隻目の空母を完成させたと仮定しよう。初の国産空母となる。ニューポートニューズ造船所がほぼ同寸の初のスーパー空母かつ通常動力のUSSフォレスタルを起工から就役まで三年で完成させている。
  2. さらにPLA海軍が空母任務部隊を洋上で運用する技術を確立したと仮定しよう。そうなると中国は新型空母を切れ目なく就役させ迅速に艦隊に投入することになる。想定する遠洋公海上の衝突は2020年ごろとしている。.
  3. 2020年でも米海軍水上部隊の空母キラーの主役は空母航空隊で今と変わらない。原子力空母は戦術航空機をおよそ85機搭載する。将来登場する中国空母の航空隊規模の予測はばらついているが、固定翼機・ヘリコプター50機とすの上限を採用するとしよう。これだと米海軍の空母搭載機数はPLA海軍空母より70パーセント多くなる。
  4. また米艦載機が中国機より優れていることはほぼ確実だ。次に登場するPLAN空母は遼寧と同様にスキージャンプ式構造のようだ。このため機体重量に制約が生まれ、搭載燃料や兵装量でも中国機には不利に働く。
  5. 米海軍のCVNは蒸気式あるいは電磁式カタパルトで大重量の戦闘攻撃機を発進させる。兵装量が多いということはそれだけ打撃力も多くなり、燃料搭載量が増えればそれだけ長く飛べることになる。
  6. F-18E/Fスーパーホーネット戦闘攻撃機はおよそ400カイリ先の敵を攻撃できるが、武装を投下した後はより長く飛行できる。中国がJ-15が同等の航続距離があると喧伝すしているが、ここでも米軍機が数の上で有利で、一機あたりの攻撃力も上だ。そこで米海軍が優勢と判定できる。

  1. さらに2020年には対艦兵器が性能を向上させているはずで搭載も始まっているだろう。現在の水上部隊の主力対艦兵器はハープーンミサイルで1970年代の産物で射程は60マイルを超える程度だが、PLA海軍の最新装備YJ-18は290カイリといい、影が薄くなる。
  2. そこで米兵装開発部門は射程距離の不足を大急ぎで解消しようとしている。ハープーンのメーカー、ボーイングは射程距離を二倍にしようとしている。ペンタゴンの戦略能力整備室はSM-6対空ミサイルを対艦攻撃用に転用し、水上部隊の攻撃範囲は一気に三倍になる。その他にトマホーク巡航ミサイルを対艦型に改装したものを昨年にテストしており、冷戦時代並みの超長距離攻撃能力が復活する。別に新型長距離対艦ミサイルが開発段階にある。
  3. 海軍にとって新型兵器の投入配備には重要な意味がある。「分散攻撃力」構想の下で海軍は各艦に火力を確保しつつ目標に集中させようとする。つまりこれまでより多くの艦船に対艦ミサイルを搭載し、補強策として電磁レイルガンや艦載レーザー兵器を投入して目的を実現する構想だ。
  4. だが米海軍には空母キラー専用の兵装は多数ある。潜水艦、艦載機、新装備の投入で米海軍は2020年でも大洋海軍力を十分確保しているだろう。問題は公海での交戦は対中戦で最も可能性の低いシナリオなことだ。たとえば太平洋中央部分で中国が沿岸火力支援が届かない状態で戦闘を挑んでくるとは考えにくい。
  5. 可能性が高いのはPLAの接近阻止兵器の有効範囲内での交戦だ。中国は自国領土に近い列島線付近の海域を一番心配する。同海域はアジア同盟各国の安全を守り航行の自由を保障し、海上パワーを確保する米国にも重要だ。そのため米中の対立が熱くなればこの海域や上空で交戦が始まる可能性が高くなる。
  6. 交戦が始まれば究極の面倒事になるかもしれいない。米軍がアジア本土に近づけばA2/AD防衛網に高い代償を払うことになる。空母キラーのASBMが西太平洋各地で発射されれば交戦一日目で西太平洋へ向かう艦船にミサイルの雨が浴びせられる。ミサイル搭載の小艦艇やディーゼル潜水艦が歩哨の役割となり、対艦巡航ミサイルを発射してくるだろう。
  7. 沖合警戒ラインでは不十分とばかりに沿岸から対艦兵器が発射される。ASBMだけでなく巡航ミサイルやミサイル搭載航空機が投入されるはずだ。原子力空母は浮かぶ飛行場だが各地の陸上航空基地や各種ミサイルと対決になる。総じてA2/ADは米側の艦艇指揮官にとって面倒な戦術作戦上の問題になるだろう。
  8. PLA海軍艦艇は西太平洋を航行する限りは太平洋の真ん中やインド洋他遠隔地より威力を発揮するはずだ。要するにPLA海軍とは砦防御を固める兵力なのだ。危険になれば容易に陸上防御網の有効範囲内に逃げ戻ることができ、自艦火力に陸上防御網を追加して強力な敵に対抗する
  9. 要塞艦隊には暗い運命が洋上はるか沖合で待っている。防御の傘は使えないからだ。母国近くでは沿岸火砲支援の元でうまく機能する。中国はここに期待している。

  1. 歴史の教訓を見てみよう。要塞艦隊構想は前からあり、海上権力の主導者アルフレッド・セイヤー・マハンがこの用語を生み出したと思うが、帝政ロシア海軍の例がある。ロシア艦隊は要塞砲の有効射程範囲内に残る傾向があり、火力で勝る敵に対抗していた。こうして艦隊は要塞の前方防御網となったが、艦隊は要塞砲を防御網に使っていたことになる。
  2. 要塞艦隊の背景としてマハンには旅順口の火砲が念頭にあったのだろう。渤海への入り口であり首都への侵攻経路にあたる旅順は日露戦争1904-1905年では東郷平八郎が指揮する日本帝国海軍連合艦隊が一貫して砲撃を加えていた。
  3. 旅順港のロシア分遣隊は要塞砲の射程内にいる限りは安全だったが、成果はほとんどあげていない。東郷長官以下の日本部隊はロシアと1904年に公海上で短い交戦をしている。1905年5月にも再び対決の場面が生まれ連合艦隊は対馬海峡でロシアバルチック艦隊と海戦をした。
  4. ロシア艦隊は簡単に日本海軍に圧倒された。だがもし旅順港の要塞砲が日本艦隊に正確な砲撃を加えていたらどうなっていただろうか。マハンの要塞艦隊構の有効範囲が拡大されていることがわかる。長距離かつ有効な火力支援があればロシアは逆に勝利をおさめていたかもしれない。劣勢な側が勝ちを収める場合もある。
  5. この例が現在でも通用するかは疑問だ。要塞としての中国は飛行基地や移動対艦兵器多数で数百マイル沖合の敵艦隊を標的にする。確かに大洋の真ん中では米海軍はPLA海軍に対してはるかに強力だ。艦隊対艦隊の対決で陸地か支援がなければアメリカの優位に動くだろう。だが仮説上ではアジア本土に近い場面での交戦では一方的な米優位は難しい。
  6. 米海軍が想定する大青原での交戦は発生の可能性が低いにもかかわらず装備作戦面がこれに特化しているようだ。一番脅威度が高く、発生可能性も高いシナリオはどちらなのか疑問は残る。空母攻撃兵器により要塞艦隊がマハンの死後何十年もたって懸念対象として復活している。中国にとっては優位な状況だ。

----本稿はNational Interestが最初に掲載した。
著者ジェイムズ・ホームズは海軍大学校で戦略論を教え、Red Star over the Pacificを共同執筆している。見解は本人のものである。

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