ラベル トマホーク の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル トマホーク の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年9月14日火曜日

北朝鮮が発射テストに成功した巡航ミサイルで判明している事項をまとめた。核兵器を搭載できるかが今後のカギになりそう。探知困難な巡航ミサイルの登場で日本の防衛体制に新たな課題が追加された。

 


 

上発射の巡航ミサイルを北朝鮮国営通信KCNAは「大きな意味のある戦略兵器」と表現し、テストは成功裏に終わったと報じた。新型巡航ミサイルは北朝鮮が開発してきた各種ミサイルの系譜にあらたな追加となり、低空を飛翔するスタンドオフ兵器として同国に新たな攻撃力を提供する存在になる。南朝鮮各地のみならず日本まで射程に収めそうだ。「戦略級」とは核兵器を指す用語だ。

 

KCNA報道では土曜日から日曜日にかけ型式不詳の巡航ミサイル数種類を試したとあり、北朝鮮のミサイル開発では去る3月に短距離弾道ミサイルのテスト以来となった。

 

 

 

北朝鮮国営通信の説明では今回の巡航ミサイルは930マイルを飛翔してから北朝鮮領海内に落下したとあり、飛翔時間は126分におよび、「楕円、八の字状の飛翔経路」を飛んだとある。新型兵器開発の所要期間は2年間以上と伝えられる。

 

KCNA配信記事では週末のテストで「わが国の安全を高い信頼度で保証する抑止手段がさらに追加されたことは戦略的に意義があり、敵対勢力の軍事活動を強く封じ込める」機能が実証されたとある。

 

北朝鮮労働党の公式労働新聞に掲載された写真二枚ではトラックに搭載した移動起立発射機(TEL)からミサイルを発射した場面と、巡航飛翔するミサイルの姿が見える。見たところロシアのKh-55系の巡航ミサイルにとくに尾部が酷似しているし、全体としては米トマホークに似ている。

 

これに対し米インド太平洋軍(UNINDOPACOM)は簡潔な声明文を発表した。

 

「DPRK(北朝鮮)が巡航ミサイルを発射したことは承知している。状況を注視しつつ、同盟国協力国と密接に協議していく。今回はDPRKが軍事力開発を進めている現況を改めて示した。また同国の動きは周辺国や国際社会へ脅威となっている。米国は大韓民国並びに日本の防衛への責任を今後も堅持する」

 

日本では加藤勝信官房長官が政府は今回報道された事態を「憂慮している」とし、米国、南朝鮮と密接に対応し状況の把握に努めると述べた。南朝鮮も米国と協力して状況を解析すると述べた。

 

これまで出ている報道内容と写真から今回の巡航ミサイルは戦略任務用で核弾頭搭載可能と思われる。そのため北朝鮮が初めて開発に取り組む装備品となり、今回公表されたのだろう。

 

ただし、北朝鮮が核兵器の小型化にどこまで成功しているのか不明だ。これまで核弾頭の小型化に取り組むとの報道がたびたび出ているが、巡航ミサイルの弾頭部分は相当小さくここまでの小型化となるのと容易ではない。昨年10月の軍事パレードでは中距離対地攻撃型巡航ミサイルの姿が見られ、1月にも再度姿を目撃されて、トレーラーでけん引されていた。ただし、今回の発射に関連して同時発表の写真では改良型TEL車両が見えるが、以前目撃されていた大口径誘導ミサイル用の車両と関連があるようだ。発射管やアクスルに違いがあり、発射管は以前は4本だったが今回は5本になっている。

 

金正恩は今年一月に「中距離巡航ミサイル」を開発したと労働党大会で発表していた。

 

今回の巡航ミサイルテストの発表のタイミングは米国、南朝鮮、日本の代表が北朝鮮の核開発阻止の行き詰まりを東京で協議しようとする前という巧妙な計算の上に実行された。核兵器開発中止の代償として制裁措置を解除する期待での米朝会談は2019年からとん挫したままだ。

 

週末のミサイルテストが米韓軍事演習への対抗として実施された可能性もある。労働党中央委員会副部長の金与日は米韓演習を「危険な戦争に向けた演習」であり、「状況をさらに不安定にする」と非難していた。

 

1月にも北朝鮮は巡航ミサイル試射を行っており、ジョー・バイデンの大統領就任直後だった。ただしこの時のミサイルに核兵器運用能力がないのはあきらかで、ロシアのKh-35対艦ミサイルが原型といわれる。

 

北朝鮮の通常弾頭巡航ミサイル開発には制約はない。これは国連安全保障理事会決議(UNSCR)でも明らかだ。核弾頭を搭載した巡航ミサイルはUNSCR決議違反になるのかで議論の余地がある。ただし、UNSCR決議はそもそも核兵器運搬手段をすべて禁止しているという解釈が一般的だ。

 

核交渉がとん挫し、北朝鮮は核兵器開発を全面的に進めており、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)が相次いで登場した。さらに国際原子力エナジー機関(IAEA)から北朝鮮が原子炉運転を再開したとの発表が先月出ている。同原子炉は核兵器用のプルトニウム生産が目的といわれる。

 

北朝鮮が本当に核搭載対地攻撃用巡航ミサイルを開発しているのなら、弾道ミサイルと並び重要な攻撃能力が新たに生まれることになる。巡航ミサイルの飛翔速度は弾道ミサイルより低いが、移動し隠すことは簡単で、かつ発射の探知は困難だ。また、誘導装置に左右されるが、巡航ミサイルは敵防空網を突破する可能性が高い。この種の兵器には防空指令所や通信施設、ダム、橋梁など重要標的の攻撃を想定することが多い。さらに大型艦船を狙うこともあり、米国や同盟国にとって防衛が頭痛の種だ。

 

武力衝突シナリオでは巡航ミサイルで敵防衛体制を飽和させる想定があり、突如として多方向からミサイルを大量に撃ち込む。しかも巡航ミサイルが通常弾頭なのか核弾頭付きなのか不明のため、混乱が拡大する。高機動性の北朝鮮巡航ミサイルが多数あれば、本来なら北朝鮮を無力化する南朝鮮空軍部隊の相当の部分を釘付けにできる。

 

核弾頭付きの巡航ミサイルを発射すれば北朝鮮に新たな優位性が生まれる。ただし、北朝鮮が弾道ミサイル攻撃の最終段階で核装置を起爆できるのか不明だ。超高速度のまま複雑な手順をぬかりなく進める必要があるからだが、巡航ミサイルではこの複雑さは不要となる。

 

さらに実用に耐える対地攻撃巡航ミサイルなら他の用途も可能となる。なかでも海軍用あるいは空中発射式への転用が考えられる。海軍では水上艦や潜水艦からの発射が想定される。

 

一方で南朝鮮で北を攻撃可能な兵器の開発が続いている。先週も南朝鮮がSLBMの水中発射実験に初めて成功したとの発表があったばかりだ。

 

南朝鮮軍に核装備はないが、北との開戦シナリオでは弾道ミサイル、巡航ミサイル、空中発射式ミサイルを運用するとある。南朝鮮の玄武-3巡航ミサイルは地上基地あるいは海上から発射が可能となっている。長射程型の玄武-3Cは930マイル有効といわれ、今回北朝鮮が発表したミサイルに匹敵する。

 

そうなると朝鮮半島では南北が巡航ミサイルを装備しての均衡が生まれ、核兵器を搭載すれば新展開となるが、相当の影響を生みそうだ。まず、行き詰まっている北との核協議への影響が注目されるし、米国が北朝鮮の戦略級兵力の整備にどう対応するかも今後の関心事だ。■

 

Everything We Know About North Korea's New “Strategic” Cruise Missile Test

A nuclear-armed cruise missile could significantly enhance the credibility of North Korea’s nuclear deterrent.

BY THOMAS NEWDICK SEPTEMBER 13, 2021

 

Contact the author: thomas@thedrive.com


2017年12月6日水曜日

★★F-15Jは有効なミサイル母機になれるか JASSM-ER、トマホーク...空中発射巡航ミサイル保有を目指す日本



F-15の最後の(?)任務はミサイル発射なのでしょうか。その任務拡大はF-3につながるのでしょう。この任務にP-1は使えないでしょうか。中国、北朝鮮、さらに韓国までがこの動きに反対するでしょうし、国内勢力にも手を回し一大反対運動になりそうです。それだけ反対するのは相手に都合が悪い証拠で、抑止効果の第一歩ともなります。


Japan May Turn Its F-15J Eagles Into Cruise Missile Carriers

日本はF-15Jをミサイル母機に変えるのか

Being able to strike deep into contested territory over long-ranges and at short notice is on Tokyo's weapons wish list.

敵地を長距離地点から最小限の探知可能性で攻撃する能力を日本が求めている

CP9ASNGF/WIKICOMMONS
BY TYLER ROGOWAYDECEMBER 5, 2017
本が戦略面で分岐点に来た。憲法第九条の厳格な順守の時代は終わろうとしている。新旧の脅威が高まっているためだ。日本政府は第二次大戦後の制約を取り払い高能力かつ長距離に展開可能な軍事力を整備し国境線をはるかに超えた地点への兵力投射を狙うようだ。北朝鮮の脅威が拡大する一方で、中国とも尖閣諸島巡り対立があり、日本は迅速に防御固い敵中心部の攻撃能力整備が必要と認識している。
当誌のトレヴィシック記者が空中発射巡航ミサイルを求める日本の動きを解説しているが、日本の報道では共用空対地スタンドオフミサイル距離拡大版JASSEM-ERの導入を期待しているとう。同報道で目新しいのはF-15Jで2千ポンド級の高性能装備を発射しようとしている点だ。
日本には200機近くのF-15と20数機の複座F-15DJがある。現在は各機は航空優勢、迎撃任務に投入されているが、巡航ミサイル運搬用にも使えるはずだ。D型がこの任務にぴったりに見える。
USAF
航空優勢任務を中心にしたF-15A/B/C/D各型を攻撃用機材に転用した事例は前にもあった。F-15A/Bが長距離攻撃任務に投入されたことがある。F-15Eストライクイーグルの登場前のことだ。先陣を切ったのがイスラエル空軍でその後10年でIAFのイーグルは多用途戦闘機、ネットワーク強化機材、偵察機、前方指揮統制機にと多様に進化していった。
一見すると奇妙な組み合わせだがJASSM-ERは日本のイーグル装備として理想的かもしれない。F-15Jは長い航続距離を持ちJASS-ERを抱えても長距離飛行できるのではないか。これで500マイル超という同ミサイルの運用半径がさらに広がる。またKC-767の空中給油でF-15の行動範囲も伸びる。すべて合わせれば日本から数千マイル離れた地点も確実に攻撃できる手段になる。
HUNINI/WKICOMMONS
KC-767Aと F-15J


これが実現すれば北朝鮮国内の攻撃に非常に有効となり、同時に中国の尖閣諸島上陸等にも抑止効果が生まれる。
日本国内報道では新型空中発射巡航ミサイルに艦船も数百マイル先から攻撃させたいとの意味不明な内容がある。日本がJASSM-ER対地攻撃をまず実用化してからロッキードと共同でJSSSM-ERに対艦攻撃能力を付加し同じくロッキードの長距離対艦ミサイル(LRASM)同様の存在に変身させることはありうる。また国産で両用対応の巡航ミサイルを開発し、先に配備するJASSM-ERを補強するのかもしれない。時間がたてば意味がわかるだろう。
自衛隊がF-35を後年に実戦配備するが、第五世代戦闘機開発を棚上げしてF-35導入規模が拡大する可能性もあり、JASSM-ERはF-15に新しい存在意義を与えるだろう。
空中発射巡航ミサイルの効力を高めるのは海上および沿岸部に配備する長距離巡航ミサイルの追加だ。そこでトマホーク巡航ミサイルの最新型(簿ロックIV TACTOM)が出てくる。トマホークは今や対地、対艦両用に使えるようになり、垂直発射管からの発射も可能で、イージス艦や今後建設されるイージスアショアからの運用も可能だ。


PHOTO BY © CORBIS/CORBIS VIA GETTY IMAGES
B-52がAGM-109空中発射式トマホークをテスト発射した。A-6にも同様の機能が期待されたが結局実現しなかった。
マホークは空中発射も可能だ。AGM-109として米海軍、米空軍が一時は運用に期待していたが、現在は同ミサイルを運用可能な機材がないし、生産中のトマホークは空中発射用に最適化されていない。F-15は大型かつ強力なためトマホーク運用の可能性を秘めるが、トマホークはJASSM-ERと異なり残存性が劣る。とはいえ、トマホークに統一する選択肢は非常に柔軟な結果を生み、レイセオンは喜んで空中発射型を提供するだろう。
本が目指す新しい戦略的な役割については今後も伝えていく。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com