海上自衛隊の新鋭哨戒艦の1番艦と2番艦「さくら」と「たちばな」が、2025年11月13日に日本マリンユナイテッド(JMU)で同時に進水した(高橋浩祐撮影)。海上自衛隊は、中国の海洋進出が続く中、日本周辺海域での監視・警戒能力を強化するため、小型巡視船を急速に調達している。
11月13日、ジャパン・マリン・ユナイテッド(JMU)は横浜市にある自社造船所で式典を行い、海上自衛隊向けに計画されている12隻の沿岸警備艦(OPV)の最初の2隻を進水させた。
最初の艦は日本の国花である桜にちなみ、さくらと命名された。「さくら」の艦名は日本の海軍史において長い系譜を持つ。最初の「さくら」は帝国海軍のさくら型駆逐艦の1番艦、2番艦は松型駆逐艦、3番艦は1953年に米海軍から貸与された楠型護衛艦であり、今回が4番目の同名艦となる。
二番艦は『たちばな』と命名された。これは古来より日本に自生する樹木「橘」に由来し、八世紀に編纂された日本最古の歌集『万葉集』にも言及されている。
海上自衛隊の駆逐艦は従来、天文気象現象や山岳、河川、地域名に命名するのが通例だった。しかし新たに導入された哨戒艦の艦では樹木名が採用された。名称は海上自衛隊内部での審議を経て防衛大臣の正式承認を得たものである。
哨戒艦は海上自衛隊で新たな艦種であり、OPV(沿岸警備艦)となる。
さくら(艦番号OPV 901)とたちばな(OPV 902)は2025年2月14日に起工した。6月にはさくらがドック内で船体ブロックを組み立てる「ブロック組立」工程を開始し、続いてたちばなも同工程に入った。海上幕僚監部によれば、艤装作業と各種性能試験を経て、さくらは2027年1月に就役予定で、たちばなは同年2月に続く。
同局によれば、さくらとたちばなの建造費は各約89億円(5770万ドル)である。しかし建造費は上昇しており、直近では8月に防衛省が2026年度防衛予算において追加2隻の建造費として287億円を要求した。
3番艦と4番艦は2026年3月に進水予定である。
防衛省は2022年12月に策定した防衛力整備計画に基づき、約10年間で12隻の哨戒艦を取得する計画だ。2023年度には最初の4隻の建造費として357億円を初めて計上した。
新型哨戒艦は全長95メートル、標準排水量1,900トン、喫水7.7メートル、喫水4.2メートル、最大速力25ノット(時速28.8マイル)である。もがみ級フリゲート(FFM)と同様に、船体はステルス性を強く重視した設計となっている。加えて、自動化技術を導入し乗組員数を削減。必要人員はわずか30名に抑えられている。これは人員削減を優先するもがみ級(約90名)のわずか3分の1である。
標準排水量は護衛駆逐艦(DE)のあぶくま型と同程度だが、武装は30mm砲に最小化されている。対空・対艦ミサイルは搭載されない。
OPVはディーゼル電気推進とディーゼル推進を組み合わせたCODLAD方式を採用し、単一のプロペラに電動機とディーゼルエンジンが作用する。
防衛装備庁は、OPVがカスタマイズ可能なモジュール式システムを基盤とし、自動化・適応性・モジュール性・持続性を通じて強力な監視能力を備えると強調している。
海上自衛隊は、新型哨戒艦は日本周辺海域における日常的な監視・監視活動に特化した新型巡視船であると説明している。
防衛省は2025年度予算において、米航空宇宙防衛技術企業Shield AI社のV-BAT艦載無人航空機(UAV)6機の調達に40億円を計上し、OPVへの搭載を予定している。このUAVは後日装備される。
中国の積極的な海洋進出とそれに伴う軍事的脅威の高まりに直面し、日本は特に沖縄を含む南西諸島周辺海域における警戒・監視能力の強化を迫られている。日本は広大な領海と排他的経済水域(EEZ)を有し、その規模は世界第6位である。
(写真:高橋浩祐)
2025年防衛白書によれば、2025年3月31日時点で日本は駆逐艦51隻、潜水艦22隻を保有する。これに対し中国は近代的な駆逐艦・フリゲート94隻、近代的な潜水艦55隻を配備し日本近海での活動を拡大できる態勢にある。
海上自衛隊は、海外展開や共同演習など運用需要の増加に直面する一方、少子化による将来の人員不足にも対処を迫られている。
こうした課題に対応するため、海上自衛隊は「小回りが利き」「少人数で効率的に任務を遂行できる」小型艦艇の導入を重視している。もがみ級フリゲートやさくら級哨戒艦がその例だ。■
高橋浩祐
高橋浩祐は日本在住の防衛問題ライターである。ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー、ジェーンズ・ネイビー・インターナショナル、モンチ出版に寄稿している。ハフポストジャパン元編集長、朝日新聞社・ブルームバーグ元記者である。高橋は1993年に慶應義塾大学経済学部を卒業。朝日新聞社とダウ・ジョーンズ社を経て、コロンビア大学ジャーナリズム大学院および国際公共政策大学院(SIPA)に留学し、2004年にジャーナリズム修士号と国際問題修士号を取得した。1993年に朝日新聞社記者となる前には、川崎市の姉妹都市プログラムの交換研修生としてボルチモア経済開発公社に勤務し、日米間の貿易問題を研究した。その功績により1988年にボルチモアの名誉市民権を授与されている。
Japan’s JMU launches first two new Offshore Patrol Vessels for JMSDF
Published on 13/11/2025
By Kosuke Takahashi