海上自衛隊の大規模組織改編で「護衛艦隊」を廃止し、「水上艦隊」が発足
Naval News
2026年3月23日公開
文:高橋康介
3月23日、海上自衛隊(JMSDF)は、長年続いてきた「護衛艦隊」Fleet Escort Forceを正式に廃止し、新たな「水上艦隊」Fleet Surface Force”を設立し1954年以来、最も抜本的な組織改編となった。
この改編には、統合された多領域作戦への移行を反映した、「情報作戦集団」Information Warfare/Operations Commandの創設も含まれている。
60年にわたる中核の終焉
1961年に創設された護衛艦隊は、60年以上にわたり自衛艦隊の中核として機能してきた。同部隊の廃止は、掃海隊群の廃止と相まって、海上の組織体制を象徴する枠組みの終焉を意味する。
今後は「水上艦隊」が、すべての水上戦闘艦および対機雷部隊を単一の指揮下で統合する。
再編の核心は、4つの護衛群を3つの水上戦闘群に統合することにある。
新設される「水上艦隊」の構成を示す説明図。海上自衛隊は、護衛艦隊や掃海隊群などの水上艦部隊を一元的に指揮統制するため、「艦隊水上部隊」を創設する計画である。図は防衛省提供。
従来の体制では、各護衛隊はヘリコプター搭載型護衛艦(DDH)1隻、イージス護衛艦(DDG)2隻、多目的護衛艦(DD)5隻で構成されていた。新体制では、艦艇数や人員数はほぼ同数を維持しつつ、編成数を削減する。
再編により、第1水上戦闘群は横須賀を拠点とし、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」(DDH 183)を旗艦として運用される。第2水上戦闘群は呉を拠点とし、JSかが(DDH 184)を旗艦とする一方、第3水上戦闘群は舞鶴に司令部を置き、JSひゅうが(DDH 181)が指揮を執る。
海上自衛隊の齋藤 聡海上幕僚長は、これは縮小ではなく再編だと強調した。
「減少するのは群の数だけだ」と、齋藤海将は2月17日の記者会見で述べ、艦艇総数や人員規模は概ね変わらないと指摘した。
冗長性への懸念
当局の保証にもかかわらず、この改革は退役幹部や防衛アナリストの間で懸念を引き起こしている。
批判派は、任務部隊の数を4つから3つに減らすことは作戦上の冗長性を弱め、長期化または同時発生する不測の事態において持続可能性に負担をかける可能性があると主張している。
これに対し、齋藤海幕長はこの見解を退け、冗長性は指揮部隊の数だけで評価すべきではないと主張し、代わりに「戦力密度」の向上を指摘している。
もう一つの懸念は、護衛部隊と機雷戦部隊の統合に伴う指揮関係だ。
改定された枠組みの下では、艦隊水上部隊が訓練と即応態勢を担う「戦力提供者」として機能し、作戦指揮官は引き続き「戦力利用者」となる。
「基本的な枠組みは変わらない」と齋藤海幕長は述べ、作戦指揮の継続性を強調した。
佐世保に新設された水陸両用戦・機雷戦群
再編の一環として、海上自衛隊は長崎県佐世保市に司令部を置く新たな「水陸両用戦・機雷戦群」Amphibious and Mine Warfare Groupを設立した。
この群は、機雷掃海艦、輸送艦、および水陸両用戦力を統合したもので、旗艦としてひゅうが型ヘリコプター護衛艦「いせ」(DDH 182)を配備している。
同群は、同じく佐世保を拠点とする陸上自衛隊の水陸両用即応旅団と緊密に連携して活動するよう立案されている。
この動きは、中国を巻き込んだ有事において、迅速な展開、機雷掃海、および限定的な水陸両用作戦が極めて重要となり得る日本の南西諸島に対する戦略的焦点を反映している。
情報戦・作戦司令部
これと並行して、海上自衛隊は、情報、サイバー、通信、海洋観測の機能を統合した新たな「情報戦・作戦司令部」を設立した。
情報戦・作戦司令部の説明図。海上自衛隊は、認知領域を含む情報戦への対応能力を強化し、迅速な意思決定を可能にする体制を構築するため、情報関連の様々な機能や能力を持つ部隊を再編・統合し、「情報戦・作戦司令部」を設立する計画である。図は防衛省提供。
同司令部は、情報およびC4ISRの作戦中枢としての役割を果たすが、艦艇や航空機を直接指揮することはない。
齋藤海幕長は、この動きの背景にある主な要因3点として、一貫性ある持続的な作戦を確保し、組織の分断を解消する統合司令部の設立、領域横断的な統合の必要性の高まり、そして同盟国海軍(特に米海軍)の同等の地位にある上級情報指揮官の不在を挙げている。
今回の再編は、海上自衛隊が戦闘力を生成・運用する手法の転換を意味する。水上部隊の数は減少したものの、海上自衛隊は、艦隊規模を拡大することなく、この改革によって柔軟性と即応性を高めると主張している。
その有効性は、最終的には実戦、特に複数の緊急事態が同時に発生するシナリオで試されることになる。■
高橋浩祐
高橋浩祐は、日本を拠点とする防衛問題ライターである。高橋は『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』、『ジェーンズ・ネイビー・インターナショナル』、モンチ・パブリッシングに寄稿している。高橋は『ハフポスト・ジャパン』の元編集長であり、『朝日新聞』および『ブルームバーグ』の元スタッフライターでもある。高橋氏は1993年に慶應義塾大学経済学部を卒業した。朝日新聞社とダウ・ジョーンズ社での勤務を経て、コロンビア大学ジャーナリズム・スクールおよび国際公共政策大学院(SIPA)に留学し、2004年にジャーナリズム学修士号および国際関係学修士号を取得した。1993年に朝日新聞の記者として入社する前は、川崎市の姉妹都市プログラムの一環としてボルチモア経済開発公社に交換研修生として勤務し、日米間の貿易問題について調査を行った。その功績により、1988年にボルチモア市の名誉市民に選出された。
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Published on 23/03/2026
By Kosuke Takahashi