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2021年8月12日木曜日

金正恩が死亡したらどうなるか。生きていても死んでも世界にとって迷惑な事態が生まれる。とりあえず存命していることに安堵する人たち....

 North Korea Tank

 

 

正恩の姿を見る機会が昨年すっかり減った。公式の場から姿を消すと、本人病気説さらに死亡説が同時にでてきた。本人はその後再び姿を見せ、死亡を願う筋はばつの悪い状況になった。

 

本人が公の場で姿を見せ続けて再び推測が出てきた。まず、体重の変化で、南朝鮮の推定で44ポンド減とある。意図しての減量なら本人には良い結果だ。一時は308ポンドだったとの推測で、すぐ死亡してもおかしくない水準だった。本人は飲酒好きで愛煙家でもあり、この二つもリスク要因だ。心臓病、糖尿病他の症状がある。減量は延命効果を生む。

 

しかし、減量は必ずしも本人の意思によるものではない。むしろ深刻な疾病の可能性を示すことがあり、ガンが一例だ。だが体重減少が健康状態悪化と無関係なら、やはりダイエットに成功したのか。ただし、その後頭部に包帯をつけているのが目撃されている。

 

もちろん公式発表は皆無で、こうした事象は些細なことなのかもしれない。7年前にも一時姿を消したあと、つえを使い歩行する姿を見られたことがある。踝の手術を受けたが術後は良好とされた。2008年に本人の父も卒中で姿を長く消し、その際も公式発表はなかった。最新の事例もさしたる重要さはないのかもしれない。

 

とはいえ、金正恩本人あるいは側近が権力移譲を画策している兆候がある。今年に入り早々に最高指導者は朝鮮労働党総書記に昇格している。そして第一書記は不在とした。これまでは実父のため空席とされていたが、この就任も重要ではないのかもしれないが長年の北朝鮮ウォッチャーは権力移譲と関係があると見ている。権力継承第二位が空席のままの共産国家はこれまで皆無だからだ。

 

金一族はこれまでも非公式に権力を分与してきた。金正日は事実上の首相として金日成の晩年に国内政策を取り仕切っていた。金日成が卒中から回復した2008年8月には義兄の張成沢が代理を務め、金正恩の指導役にもなったが、金正恩は本人を処刑した。権力奪取を図ったためとされる。

 

金正恩の現在の健康状態でわかっていることは憶測、噂、その他非公式情報の域を超えない。独裁体制にある同国の政治体制を考えれば本人が死去した場合の影響は重い。レーニン、スターリン、毛沢東の死亡後に権力闘争が長期にわたり発生したからだ。

 

これに対し金日成は権力移譲を数十年にわたり準備できた。ライバルを排除し、金正日を昇格させ、日常の運用を任せた。だが金正日には自身の子息に使える時間が足りず、本人が脳卒中に倒れてから権力移譲が始まった。この間三年しかなかった。移譲そのものは支障なく進んだようだが、金正恩がどこまでの権力を即座に引き継いだのか、またその後に障害を取り除きどこまで権力を入手したのかは不明だ。

 

いずれにせよ、現時点では後継者が不在だ。自らの子どもたちは小さすぎる。妻には政治的な役割が皆無だ。兄は父親から素質なしと判断され、政治面で無力だ。腹違いの兄は金正日により大使として国外追放された。一人だけ可能性を残すのが妹の金世与だ。重責にあるものの権力は兄に依存している。昇格、降格は兄の意思のようで、本人独自の権力基盤はないようだ。

 

一族の血を引き継ぐものの、本人の地位が公的に示されていないのなら意味がない。特にここにきて血筋がものをいう事態になっている。南朝鮮発の情報の連発に金正恩が怒りを高めており、北朝鮮側はここ数年になく不信感を強めている。同様に重要なのがDPRK政治体制はかたくななまで男性優位であることで、実質的権力があるのは金一族の妻、姉妹のみで、かつその力も権力移譲が始まれば消失する。

 

ではだれが次の権力者になるのか。金正恩のこれまでの側近の処遇を見るとナンバーツーは不在で、まさしくそれが本人の狙いなのだろう。今年6月に党トップ数名を「人民の安全並びに国家の安泰の維持で重大な事態を招いた」として処分している。ただし、叔父の例と異なり、単なる降格にとどまっている。

 

後継者不在のままだと、その座をめぐる戦いは血なまぐさくなりそうで、かつ結末が予測できない。保安関係機関トップが権力を握る可能性がある。ソ連では秘密警察トップを長年務めたラブレンティ・べリアがやはりトップの座を狙ったが失敗している。1953年のことだ。KGBトップのユーリ・アンドロポフが1982年に共産党最高指導者の座に就いたが直後に死去した。

 

北朝鮮の政治体制では常に単一の指導者が力を握ってきた。その点では南朝鮮も同様で選挙による大統領選出は1987年から機能しているに過ぎない。北朝鮮の政治体制とはいったん失敗すれば安全がおぼつかなくなる独裁体制でつねにライバルの上に立つ必要がある。ドナルド・トランプが言うように二番手は敗者なのである。

 

米国がこの点で何らかの影響力を行使する可能性は皆無に近い。とはいえ、バイデン政権は不安定さが脅威に進展しないよう事態を注視すべきである。ワシントンには中国との連絡を維持し、北の政治局面の難関に対応すべき大義がある。一番良いのは改革指向の新政権が発足することだが、これを期待する向きは皆無だ。

 

最悪の場合は内部抗争が進展し、暴力が跋扈し軍が動き、核兵器、化学兵器生物兵器の管理がゆるむことだ。ブルース・ベネットはDPRK崩壊の可能性を10年前から分析しており、以下警句を発している。「北朝鮮の全体主義が近い将来に終焉を迎える可能性は十分あり、暴力や混乱を伴う終わり方になる可能性が高い」とし、ROKと中国にとってはDPRK内部崩壊による朝鮮半島の平和安定への影響をあらかじめ備えておく必要がある。

 

もちろんこうした事態が今すぐ発生するわけではない。金正恩はまだ数年は存命のままとなりそうだ。そうなると次の観測が出てくる。本人が死亡した場合の影響は甚大で西側では本人の健康を祈る向きが多い。

 

金王朝が姿を消す日がいつか来る。それまでは金正恩の不在、あるいは絆創膏を付けた姿に朝鮮半島の住民のみならず世界が一喜一憂するだろう。望むらくは本人には平和理にこの世から消えてもらいたいのだが。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。

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What If Kim Jong-un Dies? It Could Mean Nuclear War.

by Doug Bandow 

August 9, 2021  Topic: Kim Jong-un Death  Blog Brand: Korea Watch  Tags: Kim Jong-unNorth KoreaMilitaryNorth Korea WarNorth Korea Civil War

 

Doug Bandow is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World and co-author of The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea.


2020年5月2日土曜日

金正恩死亡で中国はどう動くのかを予測!



「金正恩が急死すれば、中国政府にも青天の霹靂であり、先の展望が見えにくくなる点で他国と変わりがない」
 編集部注:金正恩の死亡後の予想を模索したシンポジウムから以下をまとめた。
正恩が突然死亡すれば、中国政府にとっても晴天の霹靂であり、その後の予測に困難を感じる点で他国と変わらない。
中国は北朝鮮との関係が他国より緊密とはいえ、他国の観測に反し実は親密な関係ではない。実際に平壌と北京の関係は非連続ながら退潮の一途だった。▶毛沢東と金日成は親密な同志とはいえ、関係は良好とは言えなかった。毛や鄧小平以後の中国指導部が金正日に温かい態度を示したことはなく、金正日も中国が南朝鮮と1992年に国交樹立したのをうらんでいた。▶習近平はこの路線を踏襲して金正恩に接し、難しい局面が何度もあった。金一族三代目が叔父の張成沢を処刑し異父兄の金正男を中国の親密な関係を疑い暗殺した。これで中国は対北朝鮮に冷たくなり、北朝鮮内部の動向をつかめなくなった。▶さらに金正日の時代から核とミサイル開発を加速化させ国連決議に違反した北朝鮮に中国も外交圧力を強め、前例のない規模の経済制裁を課した
トランプ大統領の対北朝鮮外交を受け習が金正恩と接触を増やし、中朝両国の緊張は緩和しているが、金は対中関係を強化するよりも米中両国を対決させる意向を秘めているようだ。
中国はこのバランスの上に金との関係は「唇と歯のように密接」と繰り返し教条的説明をしているが、実は両国の不信は強い。▶金は単独で状況打破を狙い、中国と通じる疑いのある上層部の孤立化を狙っている。▶中国も北朝鮮内部の動向をつかみきれていないのだろう。金正恩が死亡しても状況は直ぐに改善されない。▶中国指導部はあらゆる手段をつかい状況把握に努め、北朝鮮国内の中国権益の保全に走るはずだ。▶中国は後継者選びに影響力を及ぼせないだろうし、後継者との良好な実務的関係樹立にやっきとなるはずだ。▶朝鮮労働党と軍部が指名する後継者候補に妹の金与日が浮上しているが、中国指導部は北朝鮮国内の混乱に神経をすり減らされないとは思わないはずで、権力継承が混乱なく進展するためなら手段を選ばないだろう。
金正恩の後継者との関係強化で中国は米国よりも緊密な関係をめざすのはまちがいないが、だからといって米国が不利な立場になるわけではない。▶中国指導部も北朝鮮の非核化という目標を共有しており、北朝鮮の経済改革も支持する点で変わりない。このため、中国は金正恩の継承者との関係ではこの双方での進展を模索するはずだ。■
この記事は以下を再構成しました。
May 1, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: North KoreaKim Jong-unKim Jong-un DeadKim Yo-jong
Paul Heer is a Distinguished Fellow at the Center for the National Interest dealing with Chinese and East Asian issues. He served as National Intelligence Officer for East Asia from 2007 to 2015.  He has since served as Robert E. Wilhelm Research Fellow at the Massachusetts Institute of Technology’s Center for International Studies and as Adjunct Professor at George Washington University’s Elliott School of International Affairs.  He is the author of Mr. X and the Pacific:  George F. Kennan and American Policy in East Asia (Cornell University Press, 2018).