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2021年11月16日火曜日

米空中給油能力の抜本的なてこ入れが必要とハドソン研究所が指摘。インド太平洋での作戦支援には機材のみならず日本などの民間空港の活用も視野に入れるべきと主張。

  


F-16ファイティングファルコンがKC-135ストラトタンカーからの空中給油をアフガニスタン上空で受けようとしている。ハドソン研究所が公開したレポートは空軍の空中給油能力の現況に警鐘を鳴らしている。(Staff Sgt. Sean Martin/U.S. Air Force)

 

軍の空中給油能力が「弾力性を欠き、もろく」なっており、老朽化が進み、大国相手の戦闘継続を支えられなくなっているとハドソン研究所がレポートで警鐘を鳴らしている。

 

レポートの題名は「空中給油の弾力性、米軍のグローバル展開を守る」“Resilient Aerial Refueling: Safeguarding the U.S. Military’s Global Reach,” で、給油機部隊の現況を解説しつつ世界各地で米軍の兵力投射能力が減退していると指摘している。

 

「2021年に米空中給油能力は失速した」とあり、2021年11月15日に公表された。まとめたのは同研究所で国防構想と技術を扱うティモシー・ウォルトンTimothy Walton とブライアン・クラークBryan Clarkだ。

 

冷戦終結はすでに30年前だが、給油機はその後も世界各地で平和維持並びに戦闘任務の支援に動員されている。「遠征展開」で部隊派遣が増えているが、空軍の給油機は往時の701機規模が473機に減っており、部隊運用にストレスを感じさせている。給油機を高ピッチ運用するのが通常になると給油機部隊に余裕がなくなるというのが同レポートの指摘事項だ。

 

「このままだと航空部隊は複雑かつ分散型の作戦展開ができなくなる」とあり、「紛争時に弾力性を失った空中給油と米国の作戦構想の弱点を敵勢力が広範についてくるだろう。空中給油体制が弱点となり、米軍は侵攻の抑止・撃退に無力ぶりをさらけだしかねない」

 

もう一つ懸念されるのが給油機の機齢が平均52年と高くなっていることで、稼働率も低下している。新型ボーイングKC-46ペガサス導入の遅れも状況悪化につながっている。旧型KC-10エクステンダー、KC-135ストラトタンカー両型では退役が近づいている。

 

ハドソン研究所では空軍含む各軍で空中給油能力の拡充は避けて通れず、機数を増やす以上の策が必要だと指摘している。今回のレポートでは最優先事項はインド太平洋での航空施設を多数整備、燃料貯蔵の確保、防御態勢の強化だとしている。このため今後の10年で毎年633百万ドルを、その後は毎年400百万ドルの支出が必要と試算した。これによりインド太平洋での給油能力は63%増え、2041年にほぼ倍増することになる。ただ給油機の調達数は少なくなると見ている。

 

空軍が空中給油能力の拡充にむかわず、燃料確保にも向かわないと、有事の際に中国による挑戦に対抗できなくなるとレポートは推論している。空中給油機部隊には施設の整った航空施設が多数必要となるし、政策上の考慮も求められるとハドソン研究所は主張。

 

各機にリスクが増えれば稼働可能な給油機が制限され深刻な結果を生むともレポートは主張している。

 

国防総省は「給油機部隊の運用弾力性を引き上げるため、現行のもろい体制を分散型に変化させ、軍用民用双方の航空施設を米領也日に各国領内に確保することで、米空軍がめざすアジャイルコンバット展開構想を実現すべきだ」とレポートは指摘している。

 

給油業務の分散化をさらに進めれば燃料貯蔵庫の防御が容易となり、海上輸送も活用すれば軍は必要な燃料確保が実現するというのがレポートの主張だ。

 

レポートでは日本や南朝鮮の民間空港を米軍が使用すれば中国は標的捕捉が困難となると指摘している。民間施設に給油機が「立ち寄り」、給油後に迅速に離陸すれば作戦実行が拡大できるとする。

 

米空軍には給油機材の進化が必要だとハドソン研究所は主張している。KC-46と次世代給油機KC-Zのギャップをつなぐ機材が必要だ。このつなぎ給油機はKC-Yとして知られ、候補にKC-46あるいはロッキード・マーティンのLMXT次世代給油機があがっている。後者はエアバスA330マルチロール給油輸送機(MRTT)を改修するものだ。

 

つなぎ給油機は燃料を大量搭載しての長距離ミッションの実施能力が求められるとハドソン研究所は主張。小型機では空軍の要求に合わない。だが同時につなぎ給油機が既存機材の改修予算を吸い取ってはいけないと注意喚起している。また次世代KC-Z高性能給油機開発の予算も別個確保すべきとする。

 

空軍はKC-Z開発を加速化すべきだとレポートは主張し年間18-24機のペースで生産が必要とある。これはKC-135が予想より早く退役となり、機材全体の機齢を引き下げることで空軍は調達予算支出を増やせる効果が生まれるからだ。

 

レポートでは指揮統制通信機能の近代化も空中給油業務で実施すれば実施効率効果がさらに引き上げられるとも指摘している。■


'Brittle' air refueling capability endangers US during major war

By Stephen Losey


2021年6月8日火曜日

MQ-25スティングレイが初の空中給油に成功。艦載無人給油機の実用化に大きな一歩となった。IOC獲得を2025年目標とし、タンカー任務以外にも期待が広がる。

 MQ-25 refueling

Boeing 

 

ーイングMQ-25スティングレイのテスト機T1が初の無人給油機として有人機への空中給油に成功した。MQ-25を空母航空団(CVW)に加えようとする米海軍に大きな一歩となった。

 

海軍航空システムズ本部(NAVAIR)とボーイングが本日発表した内容ではT1テスト機はF/A-18Fスーパーホーネットへの空中給油に2021年6月4日に成功したとある。MQ-25はイリノイ州マスクータのミッドアメリカ空港を離陸し、主翼下の空中給油タンクAerial Refueling Store (ARS) からスーパーホーネットへの給油に成功した。

 

BOEING

6月4日、MQ-25のT1がF/A-18Fへ空中給油に成功した。

 

戦闘機が給油前に無人機に20フィートまで接近した。給油機は曳航するバスケット状のドローグをスーパーホーネットの標準型給油受け口に接続した。両機は実際の給油時の速度、高度を維持したとボーイングは発表。

 

「今回のフライトは空母運用につながる基礎となり、有人機無人機チーム構想の能力を拡げる」と無人航空攻撃兵器の事業評価室長ブライアン・コーリ海軍少将が述べている。「MQ-25により将来の空母航空戦力の飛行距離、飛行時間が大幅に伸びる。空母の搭載機材を増やす野と同じ効果が生まれる」

 

「今回の歴史的な達成はボーイング=海軍チームがめざすMQ-25による空中給油能力の実用化に大きな意味がある」とボーイング・ディフェンス・スペース&セキュリティ社長兼CEOリーアン・キャレットもコメントを発表した。「近い将来に無人装備を防衛作戦に安全かつ確実に統合する際にチームの作業が推進役となっている」

 

「無人給油機により攻撃機材が給油機任務から解放され、空母航空団は飛行距離を伸ばし、柔軟かつ高い機能を発揮できるようになる」と海軍無人空母航空機材事業室の主査チャド・リード大佐も述べている。「MQ-25がF/A-18への空中給油に成功したことでMQ-25が空母搭載への道を着実に歩んでいることが証明された」

 

初の有人機向け空中給油作業で各種データが収集できた。両機間でどんな空気力学が発生するのか、また誘導制御システムの信頼性についてだ。こうしたデータが集まり、テストチームは無人機側の飛行制御ソフトウェアに必要な改良を検討する。

 

6月4日の実証は史上初の無人給油機による有人機向け空中給油となったが、空中給油に無人機を使う発想は以前からあるものだ。

 

2015年にノースロップグラマンは海軍とともに完全自律式の空中給油に成功した。この際はX-47B無人戦闘航空システム実証機 (UCAS-D)がボーイング707改装タンカーから給油を受け、初の無人機への空中給油となった。

 

U.S. NAVY

X-47Bは初の自律空中給油の実証に2015年4月22日成功した。チェサピーク湾上空だった。 

 

これに先立ち、2012年にはDARPAの高高度空中給油開発事業で完全自律空中給油を無人機間で実証している。この際は改装したRQ-4グローバルホーク2機を接近飛行させ、プローブ-ドローグ方式で接続させた。

 

今回のMQ-25による初の空中給油の前に同機のデジタルモデルによる空中給油シミュレーションが相当回数にわたり実施されていた。

 

NAVAIRは「T1のテストは今後数カ月にわたり続け、飛行性能の限界を徐々に伸ばし、エンジンもテストし、空母艦上での取り回し実証も今年後半に行う」としている。初めて搭同機を載する空母もUSSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)と決まった。

 

MQ-25はARSポッドを搭載したままで飛行を昨年12月から始め、T1はこれまでミッドアメリカセントルイス空港を本拠地として飛行を続けてきた。同機の初飛行も同空港で2019年9月に行われた。ARSの製造はコバム社が行い、同社はF/A-18スーパーホーネット用の給油用ポッドを流用している。

 

米海軍の最新予算要求文書では「MQ-25スティングレイによりCVWミッションの有効飛行距離が伸び、現在痛感されている空母打撃群(CSG)のISR能力不足を部分的にせよ解消し、将来のCVW給油機不足を補うことが可能となり、攻撃戦闘機不足を緩和しつつ、F/A-18E/Fの機体寿命を維持する効果が期待できる」とある。

 

MQ-25では給油ミッション以外に情報集監視偵察(ISR)任務も行わせるとしている。また、これ以外の可能性もある。

 

とはいえ、MQ-25で期待される性能内容は以前あった無人空母運用航空偵察攻撃機(UCLASS)構想より現実的な範囲におさまっている。UCLASSはステルス無人機として高度な防空体制を突破し、攻撃任務と合わせISRミッションも行う想定だった。この点で、MQ-25実証機はUCLASSの焼き直しであり、ステルス機能を保持しているが、機体上部に設けられた空気取り入れ口機構など高度な内容も実現している。

 

他方でMQ-25のT1は専用テスト機として今後のスティングレイの完成形ではない。まず技術生産開発(EMD)用に4機が2018年契約に基づき完成する。昨年はさらに3機の改修契約を海軍はボーイングに交付している。タンカー/ISR任務に加え、各機で海軍は初の空母搭載無人機を使い「海上運用のC4I無人機技術の実証を試み、多任務UAS実現に道を開き今後の脅威に対応させたい」としている。

 

数か年かけてボーイングはEDM機材を納入し、セントルイスでテスト作業を続ける。機材はその後パタクセントリヴァー海軍航空基地(メリーランド)に移り、残りの飛行テストに供される。テストはレイクハースト(ニュージャージー)やエグリン空軍基地(フロリダ)でも展開される。

 

ただし、MQ-25事業に遅延が発生している。海軍は設計と機体強度の適正化のため設計作業が中断したこと、製造工程で見つかった品質問題(詳細不明)に加えCOVID-19大流行の影響が製造、引き渡しに発生したと述べている。このためEDM一号機の引き渡し時期がはっきりしない。とはいえ、同機の飛行テストは2022年度に始まる予定だ。

 

海軍はMQ-25を72機導入する計画としており、2025年度に初期作戦能力獲得を目指し、まずE-2部隊でスティングレイと共同運用訓練を行う。

 

ともあれ、今回MQ-25実証機で初の空中給油に成功したことは重要な一歩となり、海軍は初の艦載無人機の実現に近づいた。■


追補

 

米海軍の報道機関向け発表で6月4日の歴史的フライトの詳細が以下明らかになった。T1ととんだF/A-18Fは海軍テスト評価飛行隊23(VX-23)の機体だった。

 

フライトは4.5時間におよび、F/A-18Eが無人機に接近し、標準的な目視観察位置につき、ホース、ドローグの様子を点検した。スーパーホーネットが接続前位置につくと地上のMQ-25操作員がF/A-18に無線交信し、バスケットが稼働した。戦闘機側が無人機に接近し、後流の影響を調査した。テストパイロットによれば無人機から戦闘機への影響は無視できる範囲であり、安定度はかなり高かったという。

 

F/A-18はいったん後退し、T1がホース、ドローグを展開すると、スーパーホーネットがその様子をチェックした。無人機主翼下から展開するドローグの見易さもその一つで、これまでは戦闘機中心線下にポッドがあるためだ。一回目のコンタクトは燃料を通過させず、その後実際に燃料を投入したコンタクトを高度10千フィートで実施した。

 

T1の主翼タンクとARSには燃料配管がないため、今回の給油ポッドには500ポンドしか搭載されていなかった。合計325ポンドの燃料を移送し、次に高度15千フィートで別の給油を試み、今回は燃料を流さず接続だけした。

 

海軍の説明では今後六カ月にわたりT1で空母運用実証を行い、給油対象機材にE-2を加えるという。T1を停泊中の空母に搭載し、艦上での取り回しを実証する。同機にはカタパルト発艦、拘束回収の装備は搭載していない。本来、MQ-25は空母運用想定にもかかわらずT1にこの装備がない点に関心を覚える。

 

EMD機材一号機は2022年秋の引き渡しになる。外観上はT1と大きく異なる機体にはならない。エンジンもロールスロイスAE3007Nターボファンで共通だ。

 

EMD-1の製造はセントルイスで進行中で、EMD機材は7機と静止試験用2機が発注されている。初期作戦能力獲得は2025年早々に予定されている。■

 


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The Navy's Tanker Drone Makes History By Refueling A Manned Aircraft For The First Time (Updated)

BY THOMAS NEWDICK JUNE 7, 2021

2017年2月17日金曜日

F-35Bの岩国へ移動中に空中給油一機あたり10回という事実 


海軍海兵隊の給油方式が違うため、今回サポートにあたったのはKC-10でしょうか。はやくKC-46を供用開始しないといけませんね。中国が狙うのがまさに給油機等の支援機で主力機の運用を狭めることが目的なのには要注意です。
Aerospace Daily & Defense Report

How Often Does The F-35 Need To Refuel?

Feb 14, 2017 Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

Sgt. Lillian Stephens, USMC

米海兵隊のロッキード・マーティンF-35飛行隊がアリゾナから日本まで長距離移動をしたが同機の大洋横断飛行に空中給油の回数でペンタゴン内部で静かな論争が続いている。
  1. ユマから岩国までの飛行にF-35Bの10機編隊は7日をかけた。民間旅客機なら24時間未満の距離だ。これだけの時間がかかったのは多くの要素が絡んだためだ。軍用戦闘機をA地点からB地点に移動させる際には途中の地形やパイロット疲労度など考慮すべき点が多い。ただし空軍が採用する安全重視の空中給油モデルを適用し、海兵隊機は総合計250回の空中給油が必要となった。これについて海兵隊パイロット部門のトップが海上横断飛行で本来効率がよいはずなのに多すぎると不満だ。
  2. 「同機は追加タンクを搭載したF-18より足は長いのに、どうしてここまで空中給油が必要なのか。こんなにいらない」とジョン・ディヴィス中将(海兵隊航空総監)は述べる。「必要以上だった。多分二倍だろう。もっと効率良くできたはずだ」
  3. ディヴィス中将によればJSF向け空中給油の想定が「必要以上に慎重だった」が、空軍が決めることで海兵隊航空隊として変更を求めるつもりはない。
  4. 航空運用で見落とされれがちだが、給空中給油が地球規模の作戦展開の前提条件だ。戦闘機は燃料を大量に消費し、F-35も例外でないと空軍報道官クリス・カーンズ大佐は言う。1月18日から25日にかけての岩国への渡洋移動飛行は給油機を9機動員し、計766千ポンドを合計250回の給油した。一機あたり25回とカーンズ大佐は説明した。
  5. 海兵隊にも給油機があるがKC-130のため、今回の空中給油は空軍機しか利用できなかった。
  6. 空軍のスコット・プレウス准将に言わせれば海兵隊機に何回も空中給油をしたのは当然だったことになる。空軍は洋上移動飛行では最悪の場合を想定し、空中給油が失敗した場合でも安全に着陸できるようにしているとプレウス准将は説明。たとえば今回のF-35Bは給油用プローブを伸ばしたまま飛行して抗力が大きく増えたが、これはプローブを格納できなくなった場合をシミュレートしたのだという。
  7. 「そこまで想定して立案し、最悪の風の影響、機体の最悪の状況も配慮して最悪の場合どうなるかをいつも考えています」と自らもF-16パイロットだったプレウス准将は述べている。「生死がかかるので慎重にならざるを得ません」
  8. これまでの空軍の大洋横断飛行では「ほぼ連続」方式で30分から40分おきに空中給油しているとプレウス准将は説明。F-35Bの搭載燃料は空軍仕様のA型より5千ポンド少ないため、空中給油の回数は多くなると言う。
  9. プレウス准将はデイヴィス中将の主張を退け、空中給油の時間間隔を伸ばせばパイロットのリスクが高まるだけと主張。
  10. ただし有事シナリオでは空軍は全く違う計算で動く。6時間ミッションなら空中給油は二回か三回と空軍関係者は述べる。ミッション前に燃料を満タンにしておくことが重要なのは給油機が戦闘区域で脆弱な存在だからだ。
  11. 戦闘機ばかり脚光を浴びることが多いが、空中給油機も国防上で同様に重要な存在で、給油機がなければF-35は地球規模の活躍は無理だとカーンズ大佐は強調する。
  12. 「F-35や計画中の次世代戦闘機や爆撃機の要求性能から給油機も次世代機に更新しないと迅速に世界各地への移動ができなくなります。事態は分秒きざみで流動しますからね。戦闘機部隊を拡充すれば、世界規模で給油機需要も増え、敵も給油機を狙ってくるはずです」■

2014年4月3日木曜日

UCLASSに給油機ミッションまで期待する米海軍の事情とは



UCLASS Could Be Used as Tanker for Carrier Air Wing

USNI News  By: Dave Majumdar

Published: April 1, 2014 An X-47B Unmanned Combat Air System (UCAS) demonstrator conducts a touch and go landing on the flight deck of the aircraft carrier USS George H.W. Bush (CVN-77). US Navy Photo
An X-47B Unmanned Combat Air System (UCAS) demonstrator conducts a touch and go landing on the flight deck of the aircraft carrier USS George H.W. Bush (CVN-77). US Navy Photo

米海軍は企画中のUCLASS無人空母運用偵察攻撃機を空中給油機として運用することでボーイング F/A-18E/F スーパーホーネットを給油任務から解放し、攻撃ミッションを増やせないか検討をしている事が複数筋からUSNI Newsがつかんだ。

  1. 一日の間に5機のホーネットが空中給油機に充てられており、業界筋によれば空母航空隊のスーパーホーネット発進回数のうち2割が給油機ミッションになっているという。.
  2. 更にこの10年間でスーパーホーネット各機の稼働回数はイラク・アフガニスタン戦争により予想よりも高く推移していると海軍は集計している。そのため機体寿命を短くする要因にもなっている。
  3. 海軍航空システムコマンド (NAVAIR) によれば給油機ミッションがスーパーホーネット部隊にストレスを与えているのは事実だが、同機にもともと想定されていたミッションであり、機体設計に盛り込み済みだという。
  4. NAVAIRは期待にストレスが発生するのは空母発進時であり、機体の疲労度と飛行時間を各機ごとに把握しているという。
  5. 各機への影響を最小限とするために給油機ミッションは順番に交替している。
  6. 米海軍はスーパーホーネットの供用期間を2030年ないし2035年まで想定しており、機体の設計寿命は6,000時間という。そこで9,000時間への機体寿命延長が検討されている。これをさらに延長するためには追加作業が必要となる。
  7. 業界筋はそれを額面通りには受け止めていない。2020年代末までにUCLASSが十分な機数だけ配備されている可能性は低く、給油機の任務はこなせない一方、スーパーホーネットの損耗が目立ち始めるはず、というのだ。
  8. 各空母にUCLASSを6機しか配備しないとすれば、その通りだ。UCLASSに情報収集・監視・偵察ミッションに加えて空中給油ミッションを期待することになるためだ。
  9. そうなると海軍は代替策を考えなくてはいけない。業界筋から出た意見はデイビス・マウンテン空軍基地(アリゾナ州)に保管してある退役ずみロッキードS-3ヴァイキングの一部を再稼働させてはどうかというもの。■




貴重なスーパーホーネットの一部が常時タンカーとなっており、それだけ機材が制約されるだけでなく、機体寿命を短くしているというのはお寒い話ですね。UCLASSにタンカー任務まで期待すればコストが上昇するのは必至です。本当にS-3が復帰してくればこれはこれですごい事態ですが。海軍航空兵力の基礎がそれだけゆらいでいるということでしょうか。