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2021年12月13日月曜日

DARPAのグレムリン無人機が空中回収に成功し、実戦化されれば、航空戦の姿を革命的に変える可能性を示した。中国、ロシアへのペンタゴンの切り札になるか注目。

 

2021年10月、ユタ州ダグウェイ試験地区でグレムリン航空装備のテストが行われた DARPA

 

  • DARPAのグレムリン無人機が10月に大きな成果を上げた

  • C-130でグレムリンの飛行中回収に初めて成功した

  • グレムリンが期待通りの性能を発揮できれば、米軍機は敵防空網の有効射程外に留まれる

軍のトップ研究機関たる国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)が開発を進めるグレムリン無人機事業で大きな進展があった。


最新のテストでC-130がグレムリンの飛行中回収に成功した。


グレムリンが米軍の想定する性能通りなら、航空戦闘を革命化し、中国やロシアといった高度軍事力を有する相手にも優位性を発揮できる。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


グレムリンは想像上の生物で、2015年に開発が始まり、再使用可能かつ消耗覚悟の無人機装備の実現を目指している。


ペンタゴンは同機多数を投入し、各種武装も想定する。DARPAは同機の「大群状態」でを有人機と同時運用し、敵打破をめざす。


10月のテストではX-61グレムリン二機を編隊飛行させた。グレムリンはゆっくりとC-130に下方から接近し、母機が垂らすケーブルの先のフックに接続させた。


その後C-130機がケーブルを模き戻し、飛行中の収納に初めて成功した。テスト部隊は同機を24時間後に別のテストに供した。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


DARPAはテスト飛行四回を実施し、グレムリンの飛行特性データを収集し、母機との運用、飛行中回収を試した。


同機事業は完成の域に達しておらず、グレムリンの別の一機を事故で喪失もしている。


同無人機に情報収集監視偵察(ISR)センサーを搭載すれば航空状況あるいは地上の状況の認識能力が実現し、電子戦ジャマー装備により有人攻撃機の侵入路を「開ける」機能が実現するだろう。


グレムリンで搭載可能なペイロードは150ポンドほどなのでAGM-114ヘルファイヤミサイルなど小型装備に限られるはずだ。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


グレムリンとは機体探知能力、対空能力、対無人機攻撃能力を有する大国へのペンタゴンの回答だ。


ここ20年にわたる米軍は高度といいがたい敵相手に航空優勢を維持できた。だが今やロシアや中国のような手ごわい相手との競合を想定せざるを得ず、航空優勢の確保がままならなくなる事態が想定される。DARPAはグレムリンで安価な解決方法をめざし、20回使用でき、かつ運用維持は有人機や従来型の無人機より低価格とする。そもそも既存機種は数十年もの長期間供用を前提としている。


グレムリンは空中回収可能・再利用可能とすることでコスト削減をめざしている。空中回収発進によりグレムリンの作戦半径を伸ばしながら母機は遠距離地点で無人機を発進させ、敵の対空攻撃外に留まり生存性を高める。


グレムリンはミッション完了後に母機に回収される。24時間の保守整備を受け、次のミッションにと入可能となる。


A Gremlins Air Vehicle during a test at Dugway Proving Ground, October 2021. DARPA


今回の空中回収が失敗におわっていれば、ペンタゴンとDARPAは同事業の見直しをせざるを得なくなるところだった。


次に考えられる同機の運行形態としてグレムリン多数を母機部隊から運行することがある。この大量運用を実現するべく、DARPAは30分以内にグレムリン4機の発進回収テストを行う。このテストに成功できないとグレムリン事業は大きく見直しが必要となる。


グレムリン事業の母機として、B-52ストラトフォートレス爆撃機、AC-130スプーキーガンシップ、MC-130コマンドーII輸送機、F-35ライトニングII以外にほかの無人機もDARPAは想定している。


1958年にソ連がスプートニク人工衛星打上げで米国の先を行くことが判明し、創設されたDARPAはグレムリン以外でも多大な成果を上げている。


同庁はペンタゴンの先端技術案件の研究開発で主となる組織で米軍の技術優位性維持に貢献している。米国の実力に伍する国の登場で優位性は揺らいでいるが、DARPAの革新技術は対潜戦、ドッグファイト、自律運用装備、さらに将来の地下での戦闘を対象に応用が期待されている。■


DARPA Gremlins Test Shows How US Planes Can Be Drone Mothership

DARPA's latest 'Gremlins' test shows how the US military's biggest planes could be motherships in future wars

Stavros Atlamazoglou Dec 10, 2021, 12:14 AM


Stavros Atlamazoglou is a defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate.


2018年5月14日月曜日

F-22、F-35が発進回収可能な無人機運用の母機となり空中空母となる日が来る

現時点のUASは遠隔操縦機であり、自律操縦機ではないため、言葉の使い分けが要注意です。空軍ではパイロットが最上位の文化のため戦闘機については無人化は当面実現しないのでは。B-36を空中空母にして護衛戦闘機を運用する構想は1950年代にありましたが、回収技術がどうしても確立できずスクラップになっています。今回の技術が本当に実現すれば60年以上たって空中空母が生まれそうですね。



F-22s & F-35s Will Launch Recoverable Gremlins Attack Drones F-22とF-35からグレムリン攻撃無人機の発進回収が可能となる

DARPAのグレムリン事業ではC-130からグレムリン4機を発進回収する
By Kris Osborn - Warrior Maven
空軍のF-22とF-35で回収可能の攻撃型無人機をコックピットから操作操縦することが可能となり、敵防空網突破や長距離ISRの他、兵装運用も可能となる。
急速に進歩する技術によりDARPAのグレムリン事業で自律航法が現実のものになりそうで、とりあえず来年に飛行中のC-130から無人機を四機発進させ、回収も行う。
あと数年で回収可能無人機が実用化されるとミッションの選択肢が広がり、長距離運用、改良型センサーペイロード、高性能兵装を搭載したうえ空中指揮統制が可能となる。
「第五世代機のF-35やF-22での脅威対処を目指し、高リスク空域でグレムリンを運用する道を模索する」とDARPAは声明を発表。
ここ数年にわたり消耗品扱いの無人機では空中発進させる技術、地上操縦指示が不要な無人機が実用化されている。これに対してグレムリンでは母機が発進回収できる点が違う。
事業はフェイズ3に進んでおり、DARPA資料ではDynetics社と新規実証開発で合意ができており、同社がC-130から空中発進・回収を行う。
「DARPAは無人航空機複数の空中発進・回収の実証に向けて進んでおり、2019年が一つの目標だ。第三フェイズは最終段階で目標は低コストで再使用可能UASつまり『グレムリン』の空中回収の実証」とDARPAは発表している。
技術のカギは高度の自律航法でこれにより広範囲のミッションに可能性が出る。そのひとつに長距離攻撃能力があり、空中発射式無人機は目標地点にそれだけ近く移動距離を短縮できる。空中発射式の回収可能無人機に高性能センサーペイロードを搭載しISRや攻撃ミッションにあたらせればもっと意味が出てくる。
ユマ実証実験場でのフライトテストでは母機からの分離と回収を安全に出来ることが確認されている。
「これまでのフライトテストでグレムリン4機を30分間で回収する目標は十分達成可能と判明している」とDARPA戦術技術室の主幹スコット・ウィアズバノウスキが文書で回答してきた。
グレムリン一機には150ポンドまで各種センサーを搭載できるとDARPA文書に説明がある。
この技術が成熟化すれば技術陣は次の課題も増えるとDynetics技術陣がWarrior Mavenに語っている。飛行中のC-130に無人機を安全に回収するのは前例がない高度技術的課題だ。
「この問題のカギはソフトウェアの冗長性で機材をC-130のそばまで持ってきてから操縦を安定化させることなんです」とDyneticsでグレムリンの技術副主任のティム・キーターが取材で語っている。安定してから無人機はC-130貨物庫に安全に格納されるのだという。
「このため精密航法が不可欠で機体も十分な強度が必要です」(キーター)
今後実施される無人機の空中回収実証の準備としてDyneticsは模擬母機から安全に空中分離を行っている。
無人機の自律運用技術で進歩がもうひとつある。人員1名で無人機複数を制御し指揮統制する機能の実現だ。空軍参謀本部の主任科学者をつとめたグレゴリー・ザカリアスが取材に答えてくれた。
現時点では人員複数で無人機一機を制御しているが、アルゴリズムの改良で無人機運用に必要な人員数は大幅に減る。ザカリアスによれば将来は一人で無人機10機ないし100機を制御できるようになるという。
改良アルゴリズムによりプレデターやリーパーが戦闘機のあとを追い、地上要員による飛行経路制御なしで自律飛行できるようになる。
地上の自動装備のアルゴリズムでは予期できない動きやその他移動物体への対応が必要だが、空中からの飛行制御ならはるかに簡単で実現の可能性も高い。
地上と比べれば空中の障害物ははるかに少ないので無人機のプログラミングは単純で「ウェイポイント」と呼ぶ事前設定地点へ移動させれてばよい。
米陸軍は無人有人両用技術をヘリコプター用に進歩させており、アパッチ、カイオワ双方で乗員がコックピットからUASの飛行経路を制御できる。陸軍によれば同技術はアフガニスタンですでに成果を上げている。
空軍上層部は次世代爆撃機となるB-21レイダーは有人無人ともに運用可能となると発言している。
2013年9月に空軍はボーイングと無人F-16を初の超音速飛行に成功し、基地に帰還させている。
無人機技術の進展は確かに早いが、科学技術陣や兵装開発関係者の多くの見方はパイロットは依然として必要とし、想定外の事態が発生した際のヒトの頭脳の対応速度がその理由だ。
UASでは地上制御要員の指示に反応するまで通常ずれが二秒あり、戦闘機では有人機パイロットが必要と言うのが空軍関係者の主張だ。

したがって輸送機や爆撃機のように高度の機体操縦性が必要ない機材が自律飛行実現で先行し、戦闘機は依然として有人操縦の効果が大きいというのが空軍の説明だ。■
ご参考 Dynetics社によるコンセプトビデオ

2016年7月27日水曜日

UASの空中空母構想でハイテク飛行船を利用する構想が浮上



航続距離の不足をカバーするため、空中母機構想は過去に各種ありましたが実用化に至ったものは皆無でした。今回は温故知新ではないですが、技術進歩で空中空母を実現しようと言うたくましい企業のお話です。しかし飛行船でなくても太陽電池で分散推進手段を運用する無人長時間滞空機も母艦になりませんか。技術の進歩で今まで不可能と思われた構想が実現性を帯びてきます。それだけに発想力、企画力がもっと必要になりますね。

Aviation Week & Space Technology

Airship Carriers Could Extend Smaller UAS Capabilities

Jul 22, 2016 Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
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  1. 無人航空システム(UAS)の性能は向上し続けており、ペイロードは小型しつつ威力は増加している。だが欠点がある。航続距離だ。「太平洋地区でどうやって小型UASを運用したらよいでしょうか」とDARPA副長官スティーブ・ウォーカーがワシントンの会合で問いかけている。
  2. DARPAの回答はグレムリン構想で、既存大型機の輸送機や爆撃機から小型UASを多数発進回収し、各UASに航空優勢が確立できない空域に侵入させ協調運用する。
  3. 別の構想がサイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルコーポレーション(SAIC)とArcXeonから出たエアステーションAirStation構想で、飛行船をUASの空中空母に利用する。両社は軍事用途以外に物流配送作業にも転用できると説明。
  4. 空飛ぶ空母構想は以前にもあり、米海軍は飛行船USSエイクロン、USSメイコンを1930年代初頭に運用した。全長785フィートのメイコンは三日間飛行を続け、カーティスF9Cスパロウホーク偵察機を3機内部格納庫に搭載した。
  5. 複葉機は飛行船から空中ブランコを展開して発進回収し、飛行船の巡航速度は60ノットで偵察機の失速速度55ノットを僅かに上回る程度だった。二機の偵察機を使いメイコンは165,000平方マイル(約427千平方キロ)に及ぶ海域を探査できたとSAICのロン・ホチステラーは言う。 
  6. エイクロン、メイコンは飛行船と航空機の組み合わせで偵察能力を向上する狙いがあったが、グッドイヤーは1930年代末にもっと大型の空母飛行船構想を発表していた。だが陸上運用偵察機の性能が向上し、費用対効果で対抗できなかったとホチステラーは述べる。
  7. 飛行船を長時間監視手段にする提案がでは米陸軍と空軍がイラク・アフガニスタン戦真っ盛りの時期に企画したが結局キャンセルされている。同じ機能は小型あるいは中型UASの分散型、多機種で各種センサーを使った運用で実現した。
  8. だがUASには支援設備が必要で、「発進する地上拠点や艦船は容易に移動できないし、政治的な理由で運用が不可能な場所や洋上地点がある」とホチステラーは言う。
  9. 「最大限にUASの性能を活用するには移動と地理的制約から自由が必要であり、そのためUAS運用に特化した飛行支援記機材が必要です」
  10. DARPAのグレムリン構想では既存機種を母機とし、おそらくロッキード・マーティンC-130輸送機を使うだろうが、飛行船に比べれば滞空時間は短く、母機自体にも地上支援が必要だ。小型UASと大型ターボプロップ機の速度差も問題だとホチステラーは指摘する。

無人航空機隊を運用するUAS空母飛行船の概念図 Credit: SAIC/ArcXeon


  1. 「専用機材が必要です。小型中型UASの性能をフルに発揮させる機材が必要です。専用のUAS母機はほぼ全空域で活用でき、同時に維持費用は負担可能な範囲です」
  2. 空母飛行船は自動運転でUASを発進、回収、燃料補給し、再発進させる。ロボットアームとコンピュータ画像処理を応用する。飛行船は水平線超え通信中継機になり、UASと地上操作員が連絡しあうことが可能となる。
  3. 飛行船への空中給油も可能だと両社は主張しており、洋上で燃料を詰めた袋を拾い上げる案(1950年代に実証されており1990年代にも実施している)や飛行船にドッキングできる改装航空機による給油案が浮かび上がっている。
  4. 「UAS空母飛行船の傑出した価値は長時間飛行性能でUASを必要な期間に渡り該当空域に展開させることにあります」とホチステラーは説明する。「UAS空母を安全なスタンドオフ位置に待機させることも可能ですが統制、燃料補給、置換できるようUASの活動空域に接近させることも可能でしょう」
小型非硬式飛行船がInstituのスキャンイーグルUAS二機を搭載する運用構想があるCredit: SAIC/ArcXeon

  1. SAICは傘下のレイドスとともにスカイバス30K、80K無人飛行船を開発した経験があり、後者は米陸軍向けに制作しペイロード実証テストで飛行している。
  2. 大型商用飛行船を開発中の企業は数社あり、ロッキード・マーティンや英国のハイブリッド・エアヴィークルスがあるが、エアステーション構想をまとめた両社によれば各社の設計案を利用すればペイロード40トンのUAS空母が実現できるという。
  3. 「大型商用飛行船にUAS発進回収システムズを搭載したUAS空母は開発可能で、運用試験できると思います。その場合、各種UASの軍事用途に加え、民間商用運行も視野に入ってくるでしょう」(ホチステラー)■