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2018年2月4日日曜日

主張:ICBMミサイル防衛は期待通りに機能していない。どうするか

US ballistic missile defense just doesn't work — but we keep spending billions and billions on it

米弾道ミサイル防衛は機能しない。でも巨額の予算をつぎ込んでいる
  • A man and a child watch as the Ground-based Midcourse Defense (GMD) element of the U.S. ballistic missile defense system launches during a flight test from Vandenberg Air Force Base, California, U.S., May 30, 2017. REUTERS/Lucy Nicholson   米弾道ミサイル防衛の地上配備中間段階防衛(GMD)が発射される様子を見つめる親子 Thomson Reuters
  • 水曜日のミサイル迎撃実験は失敗したが、直後に65億ドルを迎撃ミサイルに追加支出する発表があった
  • 米国は15年間でミサイル防衛に400億ドルをつぎ込んだが、信頼度の高い性能は実現していない
  • 弾道ミサイル防衛が核抑止力体制で複雑な要素で、防衛能力を認める意見もあるが実証は不可能


今週水曜日に米海軍のSM-3ミサイル迎撃実験が失敗したと発表があった。同ミサイルはレイセオンが開発した。
同日にペンタゴンは65億ドルで地上配備中間段階防衛システム(GMD)の迎撃ミサイル20発を調達すると発表した。これは米本土を北兆円やロシアのミサイル攻撃から守るのが目的だ。
だがGMDの実績は芳しくない。最近の成功で北朝鮮との核対決の恐怖が下がる効果が生まれたがテスト実績を見ると非現実的な内容が盛り込まれているという。
弾道ミサイル問題に詳しい憂慮する科学者連盟所属のローラ・グレゴとデイヴィッド・ライトの二名による論文ではGMDでICBMを撃破できたというが実際より遅い速度で想定軌道上でのことで実際の北朝鮮ミサイルがここまで望ましい条件で飛翔することはないと指摘。結論として現時点で信頼できる弾道ミサイルへの本土防衛体制はないとしている。
これは米国がこれまで15年にわたり400億ドル超を投入しての成果だ。
この期間にボーイング、レイセオン、ロッキード・マーティンの各社がBMDに関係し巨額の利益を享受したが、今もペンタゴンから契約を得ている。
まず、米国は短期ミサイルなら防衛能力がある。イージス搭載弾道ミサイル防衛駆逐艦は海上で追尾実績があり、防衛能力があるが、ICBMが対象では話が別だ。ペイトリオットミサイルが単距離ミサイルを迎撃して人命を救った実績があるが、話は誇張されて伝わりがちであり、虚偽の話も混じっている。

BMDは理論上の話だが400億ドルの価値があるのか。

hwasong 15 launcher
北朝鮮の弾道ミサイルの方が米ミサイル迎撃手段よりはるかに安価だ。 KCNA
ミサイル防衛は核抑止力の理論の中で複雑な役割を演じている。北朝鮮のような敵が相手なら、米国は10パーセント未満の確率で迎撃できるはずで、相手側に攻撃を断念させおうとしている。
だがもっと可能性が高いのは北朝鮮が米国を攻撃すれば10倍もの反撃を受けるため、北朝鮮が攻撃に踏み切っていないことである。
ただしBMDでこれまで抑止効果が生まれたのかでは全く不明で断言できる専門家もいない。確かなのは国防企業が潤ったことだ。
数十億ドルを負担してきた米国納税者はこの間に世界最大級の国防企業に富を与えてきたわけだが、今こそ問いかけをすべきだろう。いつになったら性能が実現するのか。またどうして今機能していないのか。■

This is an opinion column. The thoughts expressed are those of the author.

2017年6月1日木曜日

米GMDがミサイル迎撃に成功した意味、MDAの中長期ミサイル防衛構想


技術はどんどん進んでいきます。北朝鮮が飛翔制御変更なミサイルを開発したと自称していますが、米側と同等のセンサー網を運用していないため、制御の有効性は疑問です。しかし米側も今後真剣な対応を迫られるのは間違いありませんが、技術が必ず解決策を出してくるはずです。今は北朝鮮ですが中国やロシアのミサイルへの対応もそのうち道が開けるでしょう。

Army photo

アラスカのミサイルサイロに搬入される地上配備迎撃ミサイル。

 

GMD Missile Defense Hits ICBM Target, Finally

GMDミサイル防衛が迎撃実験についに成功

 By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 30, 2017 at 5:45 PM

WASHINGTON: 北朝鮮の最新のミサイル発射から二日目に米国が本土ミサイル防衛の効果を初めて確認することに成功した。コードネームFTG-15とされた本日のテストではこれも初めて「ICBM級」の標的が投入されたとミサイル防衛庁(MDA)が発表した。地上配備中間段階防衛構想(GMD)には会計検査院(GAO)調べで2002年以来1,230億ドルの巨費が投じられており、今回で1999年以来の迎撃テストは18回中9回成功とちょうど50パーセントとなった。
  1. 「本日の成功で命中=撃破方式の本土ミサイル迎撃に懐疑的な向きも反論が難しくなりました」と戦略国際研究所のミサイル防衛部門長トーマス・カレイコが指摘する「本土ミサイル防衛体制に重要な日となり金正恩には悪い日になりました」
  2. どこまで悪い意味があったのだろうか。命中率50パーセントを現実の作戦で考えると、批判派の憂慮する科学者連盟がテストが非現実的で簡単なものだったと指摘するが、現在36基運用中の地上配備迎撃ミサイル(GBI)のうち18発が敵ICBMを迎撃することになる。少なくとも近未来で北朝鮮やイランには十分だと言える。ただし米政府はこの「限定的」ミサイル防衛体制ではミサイル多数を発射してくる中国やロシア相手には不十分だと認めている。
  3. MDAは今年末までにGBIを44基に増設するが、「二発発射して一発命中」では割りが悪い。このためMDAは複数目標撃破迎撃体Multi-Object Kill Vehicle (MOKV)の開発を急いでおり、迎撃ミサイルをいわば精密発射弾に変え、一発のGBIから複数弾頭を発射し目標多数に対応させる。供用開始を2030年目標だったが、MOKVは2025年に運用開始できそうだ。予算要求は2018年度に259百万ドルで、MDA総予算79億ドルの一部となっている。
MDA Photo
空中発射レーザー母機は2012年にモスボール保存となった。
  1. 長期展望ではMDAはレーザーに注目しており、2018年度予算要求で54百万ドルでR&Dを進める。半導体レーザーは電気だけを使い電源があれば何回も発射できる。軍の一部ではレーザーを実地試験しているが射程は短距離で想定は無人機やロケット弾の撃破だ。MDAはもっと難しい標的をはるかに遠距離から狙う構想で、開発中止となった空中発射レーザー構想を復活させようとしている。前回は改装747機に毒性の強い化学レーザーを満載していたが、今回は半導体レーザーを無人機に搭載する。敵発射地点近くに無人機を周回飛行させミサイルが発射されれば即座に撃破する。このいわゆる「発射直後迎撃」構想では敵ミサイルを一番脆弱な段階で攻撃し、弾頭を発射直後の上昇段階のミサイルものとも迎撃する。
  2. これに対して本日テストされたGMDは大気圏外攻撃弾Exoatmospheric Kill Vehicle (EKV) を飛んでくる弾頭部に宇宙で衝突させる方式だ。精密に衝突させ爆発物は使用しない。衝突すれば相手は粉砕される。だが目標に命中させるため地球規模の高性能センサー群の海上配備Xバンドレーダー(SBX)などからデータを指揮統制戦闘管理通信Command, Control, Battle Management and Communication (C2BMC)システムに投入し迎撃体へ指示を出す。
  3. この「命中=破壊」方式の迎撃は技術上は大きな課題でアイゼンハワー大統領が「弾丸を弾丸で撃ち落とす」と評したのは有名だが、現在では低高度はペイトリオットで、中高度はTHAADがあり、さらに高高度にGBIと当たり前に装備されている。本日のテストは満点ではなかったが、この技術の有効性を支持する向きには有利な結果を生んだ。■