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2021年1月20日水曜日

こんなはずではなかった....オーストラリアがフランス設計次期潜水艦建造の難航に直面。代替策に現行コリンズ級の改修案が浮上するとは。

 案の定というか、オーストラリアが今になって選定の誤りを思い知らされているようです。日本がいまさら口を出す問題ではないのですが、おなじQuadのメンバーでもあり、無視もできません。でも、改コリンズ級といっていますが、そもそもコリンス級が期待はずれなので次代艦に期待していたと理解しているのですが.....オーストラリア国内の産業問題もからみ、解決は簡単ではないようです。

ーストラリアのアタック級新型潜水艦12隻建造計画が難局に直面している。フランス設計の通常型潜水艦建造費用が巨額になり、当局は供用中のコリンズ級6隻を改修する案に変更すべきか検討中だ。

Australian Financial Review 誌によれば、オーストラリア政府はナヴァルグループ(フランス)との契約を破棄する案を検討中だ。旧社名DCNSとして同社はコリンズ級後継艦としてショートフィン・バラキューダブロック1A案で2016年受注に成功した。その後、アタック級の名称が付き2030年代初頭の運用開始を目指し、AN/BYG-1潜水艦ペイロード制御など米製システムを搭載する。

DCNS

オーストラリア海軍向けアタック級潜水艦の想像図。


スコット・モリソン首相はアタック級建造事業に不快感を強めていると言われ、「コスト急増と期日の不遵守」からオーストラリア国防省とナヴァルグループの緊張が高まっていると同誌は伝えている。事業は現在690億ドル規模との試算だ。2016年のナヴァルグループ選定時には400億ドル予測だった。モリソン首相とフランス大統領エマニュエル・マクロンとの公式議題にまでなった。フランス政府はナヴァルグループの主要株主でもある。

「この潜水艦が建造できる保証がない」と匿名筋がAustralian Financial Review に明かしている。「ナバルグループが設計作業を仕切り、知財権はフランスが握り、オーストラリアは当惑するのみだ」

オーストラリア産業界の関与についても懸念が解消されていない。12隻はオーストラリア南部の押すボーン海軍造船所で建造の想定だ。戦略パートナー取り決めによりコスト換算で60%の作業は現地側になるとある。ただし、国防省とナヴァルグループの協議は決着しておらず、昨年末に設定した解決も達成できなかった。

「国防省とナヴァルグループが満足の行く形で契約改定できないと、オーストラリア産業界、特に中小企業は同事業に公正かつ意味のある形で参画できなくなる」とオーストラリア産業国防ネットワークを主宰するブレント・クラークがAustralian Financial Reviewに語っている。

実は同事業の難題はこれより前からあった。原契約ならびにオーストラリア政府とナヴァルグループとの交渉から大きなトラブルが発生し、政府による直接の事実照会に至らんばかりの状況になっていた。

アタック級にかわり、オーストラリア政府は現地子会社のナヴァルグループ・オーストラリアにコリンズ級を原型とした新型潜水艦を建造させる案を検討している。コリンズ級の就役開始は1996年だった。フランス親会社の管理をある程度緩めればコストが下がり、事業の透明度が高まるとの期待がある。ただし、この代替設計でアタック級と同等の性能を実現できるかは不明で、どこまで性能や機能が妥協になるかもわからない。

AUSTRALIAN DEPARTMENT OF DEFENSE

コリンズ級のHMASコリンズ、HMASファーンコム、HMASデシェノー、HMASシーンがオーストラリア西部に揃った。


アタック級事業は詳細設計段階に入っており、ショートフィンバラキューダIA原設計をオーストラリア版にする。Australian Financial Reviewではこの段階の作業で19億ドルかかる予測が23億ドルに増加しており、事業の実現可能性に更に疑問符をつけているとある。

ではオーストラリアは今から改コリンズ級の採用に向かい、スウェーデン企業コクムスの協力を再開すべきだろうか。同社はSaabの子会社でコリンズ級の設計の知的財産権を保有している。Saab/コクムスはコリンズ級後継艦入札に参加していないが、高性能通常型潜水艦建造では豊富な知見があり、ゴットランド級という高性能艦の建造実績もある。同艦は大気非依存型推進(AIP)方式を採用し、スウェーデン海軍に納入されたが、米海軍も2000年代中頃に同艦を借りアグレッサー潜水艦として運用したことがある。

改コリンズ級構想は前からあった。2015年にコリンズ級後継艦構想を絞り込んだが、オーストラリア国防省はコリンズ級改修案は不採択とし、費用投入のリスクに似合わないためという理由だった。

だがAustralian Financial Review 記事には国防相リンダ・レイノルズはSaabとアタック級代替策をめぐる交渉開始を否定していないとある。コリンズ級の設計会社としてコクムスにはオーストラリア潜水艦建造会社との関係が今も残っており、同級の供用期間延長を実現できる立場、というのが国防相の説明だ。

たしかにコクムスはコリンズ級の供用期間延長でオーストラリア海軍に関与しており、アタック級代替手段の実現可能性は実際に存在していることになる。

改コリンズ級には別の顧客もありそうだ。Saabはオランダ向けに新型潜水艦建造を企画中で、オランダの要求水準にはオーストラリアに通じるものがある。オーストラリア、オランダ両国が改コリンズ級設計案を採用すれば、コスト面で規模の経済効果が生まれそうだ。

U.S. NAVY

オランダ海軍のウォーラスは2025年に退役予定で、ナヴァルグループ、Saab、ティッセンクルップが採用をめぐり競合している。

オーストラリア海軍には同国の戦略通商海上輸送路をインド太平洋で確立するべく高性能潜水艦が必要だ。インド太平洋では対立の火種が多く、戦略地点も数多く存在する。オーストラリアの防衛予算は質量両面で域内大公国への優位性を確保する主眼で立案されており、とりわけ潜水艦部隊は南シナ海のパトロールを期待されている。

コリンズ級後継艦建造は研究開発、戦闘システム統合、国産建造準備、支援設備の整備など含め一隻あたり価格は80億ドルになるとの試算があるが、正確なものではない。オーストラリアがそもそもまちがった選択をしたと言える。2016年にナヴァルグループが落札した時点でThe War Zoneのタイラー・ロゴウェイは以下伝えていた。

「AIP性能を備えたディーゼル電気型潜水艦の単価はドイツのティッセンクルップから直接購入すれば5億ドルから7億ドルだろう。イスラエルのドルフィンII級がやはり5億ドルだ。だがショートフィンバラキューダはドルフィンIIを上回る艦容で戦闘機能や性能が追加されている。もっと重要なのは本国以外の地で建造する新型艦となり、アメリカ製戦闘装備も搭載することだ」


確かにアタック級の艦容の大きさがコストに反映される。ただし、オーストラリア海軍は大型潜水艦の運用実績がある。現行コリンズ級は排水量が3,500トンで、アタック級は4,000トン超の予想だ。詳細な諸元は不明だが、アタック級は全長295フィートで、コリンズ級は254フィートだ。他方でドイツの216型は選定から漏れたが価格は半額でもアタック級並の大きさだ。

この時点ではアタック級の詳細は不明のままだが、長距離運用を必要に応じ高速潜航できるよう修正されるはずだ。推進方式は不明だが、フランス製燃料電池を採用するとの噂がある。新技術バッテリーの搭載も検討されており、日本が採用したリチウムイオンバッテリーだろう。

オーストラリア海軍の要求内容による潜水艦は原子力潜水艦並みの性能を通常型推進方式で実現するものだった。そこでショートフィンバラキューダIAの採択は原子力推進型バラキューダを原型として理屈にかなっていたとも言える。ただし、採択によりオーストラリアの要求内容を満たす潜水艦となるはずが、とんでもない価格の艦になってしまった。フランスは自国向けバラキューダ級6隻に102億ドルを投入しており、補助金が入っているとはいえ、オーストラリアの690億ドルという事業規模と明白に異なる。米製装備の追加でオーストラリア艦がさらに複雑になればコスト上昇の可能性が残る。

オーストラリア政府が高性能フランス設計の潜水艦部隊整備に費用負担の覚悟があるのか、それとも低価格選択肢に変更する意向なのかがこれからの注目点だ。■

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Australia Reportedly Looking At An Alternative To Its Costly New French-Designed Submarines

BY THOMAS NEWDICK JANUARY 19, 2021

 



2014年9月14日日曜日

★★★オーストラリア潜水艦商戦へ土壇場で参入図るスウェーデン

hオーストラリアの次期潜水艦調達で伏兵が出てきました。

日本からの調達で決まり、のような報道が目立ちますが、相手はオーストラリアにも深い関係を持つしたたかなサーブです。時間はないのですが、ここに来て手を挙げる同社には一定の見込みがあること以外に調達する可能性のある他国へのアピールもあるのでしょうね。




Saab Makes Late Pitch For Australian Sub Project

Sep. 13, 2014 - 04:28PM   |  
By GERARD O’DWYER   |   Comments

HELSINKI — サーブが最後の土壇場でオーストラリア政府に潜水艦取得の方向を変えさせようと必死だ。現在、ドイツと日本のいずれかが採用になりそうなのだが。
オーストラリアの次世代潜水艦はトニー・アボットの自由党政権が国外建造艦の調達を掲げてから政争の種となっている。野党からは政府が日本の川崎重工-三菱重工製そうりゅう級選定に傾いていることへの批判があり、一方ドイツのティッセンクルップThyssen­Krupp はタイプ214潜水艦を提案している。
オーストラリア政府はまだ最終的な調達規模を決めていない。アボット政権では8隻から12隻としている。
ここにきてサーブが高性能潜水艦の受注生産提案を出してきた。サーブCEOハカン・ブスへ Håkan Buskheによれば同社はまだ正式な入札をしていないが、「もし顧客側が当社の提案に耳を傾けて頂ければ」サーブから公開入札に応じるという。
なお、オーストラリア次世代潜水艦調達は180から270億米ドル規模事業となる見込み。ここに来てサーブが手を挙げる真の理由は同社が49.6百万ドルで潜水艦事業を取得したことである。今年7月にティセンクルップのスウェーデン国内の潜水艦建造所を手に入れている。サーブが入手したのはティッセンクルップマリンシステムズ(TKMS、旧名称コッカムズKockums)および艦艇設計案である。
サーブによるTKMS買収はスウェーデン政府の後押しもあり、ティッセンクルップがスウェーデン国内の潜水艦建造技術を廃止するとの恐れもあり実現したものだ。ティッセンクルップはコッカムズを2005年に買収していた。
ドイツ親会社がTKMSの輸出営業を縮小する決定をし、オーストラリア、シンガポール、ノルウェー向け輸出の自主決定権を制限したことで、政府はテッセンクルップへの信頼を失していた。
TKMSはサーブコッカムズABへ統合されて新型A26級潜水艦の設計建造にとりかかっており、スウェーデン海軍向けにゴットランド級潜水艦の後継を狙っている。
「TKMSを参加に入れたことでサーブはオーストラリア政府に対し正式に次代潜水艦の提案が可能となりました。」とブスへは発表している。またTKMS買収でオーストラリアのコリンズ級潜水艦関連の知的所有権も手にいれたことになる。
サーブとしては潜水艦本体およびサブシステムズをスウェーデンとオーストラリア双方で制作する意向だ。またブスはA26級潜水艦(3,000トン)をスウェーデン・オーストラリア間の潜水艦技術協力案件にしてもよいと示唆している。
オーストラリアが運用中のコリンズ級は浮上時に3,050トンの通常型潜水艦で設計はコッカムズが全て行い、6隻が1996年から2001年にかけ引き渡されている。
サーブ提案はスウェーデン政府も支援すると国防相カリン・エンストローム Karin Enströmが発言している。「スウェーデン国内に高性能潜水艦を設計建造し、海外へ販売する基盤を維持することは重要。サーブはコッカムズ時代もありオーストラリアへ関心を示すのは当然」とDefense Newsに語っている。
サーブはTKMSを海洋・水上部門システムズ技術の中核に据える計画で、潜水艦開発部門はマルモMalmoにあり、カールスクロナKarlskronaに水上艦・潜水艦建造部門を構えている。
サーブは潜水艦案をオランダ、カナダ、ポーランド、ノルウェーに提出する以外に海軍兵力増強を進める東南アジアではタイやマレーシアにも関心を示している。
「スウェーデンは十分競争力がある。70年代の国防予算はGDP比3%だったのが今では1.2%になっており、厳しい予算の中で勝ち残る方法を体得している」とブスへは自信満々だ。■