ラベル タリバン の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル タリバン の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022年8月3日水曜日

ザワヒリ殺害作戦の詳細。まだ不明の点もあるが、詳細に検討され、新兵器も投入された模様。

 How The CIA’s Hit On Terror Kingpin Zawahiri Went Down

 

ザワヒリ殺害の現場となったカブールの自宅と思われる写真と、アルカイダ指導者、空爆後に上空で目撃されたと思われるドローン via Twitter

 

アイマン・アル・ザワヒリを殺害した空爆作戦の成功で判明したことと分かっていないことをまとめた。

 

日、ジョー・バイデン大統領は、米政府が無人機による空爆を行い、カブールの隠れ家でアルカイダ指導者アイマン・アル・ザワヒリを殺害したと確認した。バイデン政権高官は、The War Zoneも出席した記者会見で、今回の攻撃とその計画についてさらに詳しく説明した。その他詳細も、他の場所で明らかにされた。

 

 

 

アルカイダ指導者アイマン・アル・ザワヒリが、同団体が2021年9月に9・11テロ事件から20周年を記念し出したビデオに映っている。サハブ/アルカイダ

 

 同高官によると、空爆は現地時間7月31日午前6時18分(東部標準時7月30日午後9時48分)に行われた。機種不明の無人航空機が、3階バルコニーにいたザワヒリにヘルファイアミサイル2発を発射した。バイデン政権幹部は、アルカイダ指導者が殺害されたとき、無人機は中央情報局(CIA)の作戦統制下にあったとの報道を肯定も否定もしなかった。

 7月31日にカブールの住宅を米国が攻撃したとタリバンが主張する写真が、昨日からネット上で出回っている。画像には、3階バルコニーに目に見える損傷がある。未確認情報だが、豪華な住宅で、パキスタンのアボタバドにあるウサマ・ビン・ラディンの屋敷に匹敵する。

 

 米政府は、ザワヒリ近親者が住む家を狙った今回の攻撃で、他の犠牲者が出たと評価していない。同高官は、タリバンのシラジュディン・ハッカニ内相の義理の息子とその妻なども空爆で死亡したとする現地報道に異議を唱えた。

 ネットに流れた写真で見られた建造物の被害が極めて限定的であること、ザワヒリ以外に犠牲者はなかったという米政府の主張から、従来型弾頭ではなく飛び出す剣のような刃を配列したR9X秘密バージョンなど、巻き添え被害の極めて少ない特殊ヘルファイアミサイルの使用を示唆している。また、ヘルファイアが発射されたという公式発表にもかかわらず、実際には空中発射ロイタリング弾など、専門的で精度の高い別の武器が使用された可能性もある。

 また、ホワイトハウスは、米国政府は、空爆で死亡した人物がザワヒリであるというDNA証拠はないが、目視による確認含む各種情報源と方法で身元を確認したと発表した。故アルカイダ指導者を称える他のテロリストによる声明が公開され始めており、死亡を示す新たな証拠となっている。

 政権高官によれば、ザワヒリは「米国の個人、利益、国家安全保障に対して活発な脅威を与え続けている」ため、攻撃を決定したという。「バイデン大統領が一貫して述べてきたように、アフガニスタンが米国人に危害を加える可能性のあるテロリストの安住の地となることは許さない。我々は土曜日の夜、その公約を果たした。

 「そして、そうすることで、アフガニスタンに米軍が駐留し、危険な目に遭わなくても、指名手配中のテロリストでさえ特定し、居場所を突き止め、排除する行動を取ることができると示した」と政府高官は付け加えた。

 同高官は、米情報機関がザワヒリを支援し、隠し続けてきたネットワークについて何年も前から知っていたと明らかにした。アメリカ当局は、昨年アフガニスタンで欧米支援を受けた政府が崩壊し、タリバンが政権奪回した後、アルカイダ指導者がアフガニスタンに戻った兆候を注意深く監視してきた。2021年8月にタリバンがカブールを占領し、米軍の最終撤退とあわせ外国人やアフガニスタン人の国外脱出を支援するための混乱した取り組みが続いていた。

 ザワヒリの妻、娘、娘の子供たちが、ハッカーニ・ネットワークに所属するタリバンメンバーが管理するカブールの隠れ家に移されているという情報が今年初め浮上した。2019年時点で、アルカイダの声明によれば、家族はパキスタンの拘束下にあったようで、いつ、どのような状況で解放されたのかは不明だ。

 ザワヒリ自身はその後、現地に到着したと評価され、家族やタリバンが彼の存在を隠す措置を取り、屋敷を出ることはなかったと伝えられている。ザワヒリは隠れ家からアルカイダ作戦を指示するビデオを撮影し、米政府関係者は彼の死後、さらなる録音が公開される可能性があると考えている。

 米政府高官は、ザワヒリを隠し通す「策略」と表現したが、米情報機関は、攻撃計画に利用するためにアルカイダ指導者の詳細な生活パターンを確立できた。

 「また、ザワヒリの家族を含む民間人へのリスクを最小限に抑えつつ、建物の構造的完全性を脅かすことなくザワヒリを殺害する作戦を自信を持って実施できるよう、隠れ家の構造と性質を調査した」と同政府高官は述べている。「我々は独立したアナリストのチームを招集し、隠れ家住人の身元をめぐるすべてのデータを検討した」。

 

 「大統領はいつものように、(7月1日のザワヒリ攻撃案に関する)ブリーフィングに深く関わり、情報に没頭していた。大統領は、われわれが知っていることと、それをどのように知ったかについて詳しく質問した」と同高官は続けた。「重要なのは、情報機関が作成し、この問題のブリーフィングのためにホワイトハウスの状況調整室に持ち込まれたザワヒリの家の模型を綿密に検討したことだ。大統領は、照明、天候、建築資材など、この作戦の成功に影響を与え、民間人犠牲のリスクを減らす要因について説明を求めた。特に、この作戦がリスク最小化のためあらゆる手段を講じているかの確認に重点を置いていた。そして、その評価に自信を持てる根拠を理解したかった」。

 作戦計画やその他の情報収集のために縮尺模型を使うことは、よく知られている。有名なのは、アボタバドでの急襲作戦の計画過程の一環として作成されたビン・ラディンの屋敷の模型である。

 後のブリーフィングで、「巻き添えや民間人の犠牲を減らすオプションについて再度質問された。彼は、建物の3階にあるドアや窓の奥にある部屋のレイアウトについてもっと理解したかった」。

 民間人の犠牲がバイデンにとって大きな懸念であったのは驚くには当たらない。2021年8月、米国の避難・撤退活動の末期に、またしても米国の無人機による爆撃がカブールで標的を完全に誤認し、米国の援助団体の現地職員1人と子供7人を含む9人の民間人が死亡する失態を演じている。2021年12月、ニューヨーク・タイムズ紙は、アフガニスタンだけでなく、イラクやシリアでの空爆による民間人犠牲を正確に評価する調査報告を発表した。このため、米軍が他の紛争地域でも引き起こしたとされる民間人犠牲の事例の調査を求める声が高まっている。

「また、6月と7月の間に、ホワイトハウスの状況調整室で主要人物と補佐官が何度も直接会い、情報状況を確認し、選択肢を十分検討し、リスクやコストをどう軽減するかを考えた」と、この政権高官は付け加えた。

 政府高官は、「省庁間の上級弁護士が非常に緊密な連携のもと情報を精査し、作戦の法的根拠を確認した」と述べた。その法的判断、入手可能な情報、ザワヒリを無力化するすべての選択肢とそれに伴うリスク評価に基づき、バイデンの国家安全保障チームが、提案された攻撃の実行を満場一致で支持した。7月25日、バイデンは可能な限り早い機会に空爆を許可し、民間人が犠牲になるリスクを可能な限り最小化するためあらゆる努力が払われた場合のみ作戦を実行するとの具体的な指示を出した。

 空爆計画には、他の間接的な要素に対する潜在的なリスクについての議論も盛り込まれた。二次的な影響へのの懸念には、2020年にタリバンが誘拐した米国人土木技師、マーク・フレリックスの継続的な安全についての懸念が含まれていた。また、過去20年間に米軍や米政府の他部門と協力し、現在はタリバンの報復のリスクにさらされているアフガニスタン人を国外に安全に移転させるため進行中の取り組みが中断される可能性や、将来の作戦遂行に必要な関連空域へのアクセスが失われる可能性も考慮された。

 空域の確保については、空爆を行ったドローンがどこから離着陸したかは不明だが、アフガニスタンに到達するためには、少なくともパキスタンなど近隣諸国の空域を飛行しなければならなかったはずだ。ビン・ラディン襲撃のように、事前に該当国当局と調整を行わなければ、地政学的な摩擦が別途発生する、あるいはさらに悪化する危険性がある。

 この点を考慮すると、政権高官が「カブールの地上には米軍関係者はゼロだった」としながらも、空爆でザワヒリ以外の人物が死亡したことの確認には「別の独立したチーム」が関与しているとした点が興味深い。AP通信は、CIAの地上チーム(現地人だけで構成されている可能性もある)と航空情報、監視、偵察部隊が空爆後の評価に関与していると報じている。

 また、アルカイダ指導者が殺害されたと思われる家の写真とともに、無人航空機の奇妙な写真がネット上で共有されている。画像解像度が非常に低く、今回の空爆と関係があるのかは全く不明だが、機体の形状は、中国製の無人機「ウィング・ルーンII」の特徴的な主翼構成にほぼ似ている。パキスタンはWing Loong IIのオペレーターとして知られている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は2021年6月、CIAがアフガニスタン上空での将来の作戦を支援するため、パキスタン関係者と無人機基地を再整備する可能性を協議中と報じた。パキスタンのドーン紙はその後、同国当局が米国提案をはねつけ、代わりに「テロリストの標的に対する攻撃を実行する無人機の引き渡しを米国に要請した」と報じた。

 昨日のブリーフィングでバイデン政権高官は、パキスタンやその他国がこの作戦に何らかの形で関与しているかどうか、またパキスタンの軍事情報局(ISI)がザワヒリ潜伏を助けたかについても言及を避けた。ISIは、タリバンやハッカーニ・ネットワークなどアフガニスタンの過激派やテロリスト集団とつながってきた歴史がある。

 さらに、タリバンが、組織レベルで、ザワヒリのカブールでの存在について知っていたか、知らなかったかについて、大きな疑問が残る。バイデン政権高官は、ハッカーニ系のタリバンのメンバーは、空爆後、アルカイダ指導者の死と、彼の家族が建物にいることを隠そうとする措置を取ったと述べている。これは、昨日タリバン報道官が、当時未確認だった米国の無人機による攻撃が、ISISホラサン州またはISIS-Kとも呼ばれるアフガニスタンのISISの地元フランチャイズのメンバーを標的にしていたと示唆した声明とある意味で一致している。

 しかし、政権高官はブリーフィングで、ハッカーニ系のタリバンのメンバーがザワヒリ匿護に積極的に関与していると述べただけだった。さらに、未確認情報だが、今は亡きアフガン軍で実質的に最後の指揮官で、現在はメリーランド州に住むハイバトゥラ・アリザイがThe War Zoneに語ったところによれば、アルカイダ指導者について米政府に密告したのは、実はタリバンの中の一派だとアフガン情報筋が伝えてきたという。タリバンが政権復帰して以来、ハッカーニ派を含む小集団間の内紛が報告されており、暴力的に発展している可能性がある。

 国防情報局(DIA)のトップであるスコット・ベリエ陸軍中将 U.S. Army Lt. Gen. Scott Berrieは、6月にアフガニスタン復興特別監察官(SIGAR)に、「アルカイダは指導者の再結成に問題を抱えており、ある程度はタリバンがアルカイダの若返りを許さないという約束を守っていると思う」と語ったと、議会監査団が本日発表した報告書にある。ベリエがザワヒリのカブール滞在に関する情報を知らなかったということはありえないようだ。

 元米国アフガニスタン特別代表ザルマイ・ハリルザドも「私が取引したタリバンは、彼がどこにいるか知らないと言った」と、2021年10月にCBSニュースに語っていた。さらに、その時点で彼とそのグループのメンバーとの間に信頼関係の欠如のようなものがあったと付け加えている。

 アルカイダメンバーや同グループとつながりのある重要人物は、タリバンが支配権を取り戻して以来、アフガニスタンで自由に行動できるようになったことは確かだ。同時に米政府関係者は、「タリバンは、他のグループの過激派の動きを封じ込めるため、治安組織である情報総局(GDI)が主に実施している渡航・居住制限を利用している」「こうした努力は、TTP(Tehrik-i-Taliban Pakistan、別名パキスタンタリバン)やアルカイダなど一部グループに対して機能しているようだ」と見ており、新しいSIGAR報告書に書かれている。

 タリバンはまた、2020年にカタールのドーハで米当局と結んだ協定に違反するとして、今回の攻撃を非難している。米政府は、ザワヒリがカブールにいることは、同協定でのタリバンの義務に違反すると言って反論している。バイデン高官は、マーク・フレリヒス解放を確保する努力の継続を含む様々な問題に関して、米国政府は同グループとの継続的な対話を終了するつもりはないと述べた。

 バイデン政権は、ザワヒリの死で、米国への攻撃を含む世界的なアルカイダの作戦計画・実行能力を大幅に低下させると考えていると、同高官は昨夜のブリーフィングで述べた。現在、誰がグループのトップになるかは明らかではない。

 今回の空爆が、米国のタリバンへのさらなる関与、タリバン内部の問題、そして新指導者を探すアルカイダの将来にどのような影響を及ぼすかは、まだわからない。■

 

How The CIA's Hit On Terror Kingpin Zawahiri Went Down | The Drive


BYJOSEPH TREVITHICKAUG 2, 2022 12:52 PM

THE WAR ZONE


2021年8月26日木曜日

タリバンは世界最強のイスラム原理主義戦闘員集団になった。アフガン向けに米国が提供した装備品を易々入手。ハンビーに乗り、AK-47をM16に切り替える戦闘員。多額の援助を提供した米国には苦々しい風景だ。

 


Taliban M16 Rifles

120118-N-XX151-646 CAMP FUJI, Japan (Jan. 18, 2012) 第七艦隊隷下の揚陸指揮統制艦USSブルーリッジ(LCC 19)配属の三等下士官ラルフ・ジャヴィアがM16ライフルを銃取り扱い資格更新のためキャンプフジで発射している。 (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Aaron M. Pineda/Released)


 

冷戦後半に長く続いた議論があった。ソ連製AK-47と米製M16のどちらが優れているのか。世界各地の戦闘員がAK-47をこぞって愛用したのは、手入れが少なくても過酷条件でも作動するからだった。M16は命中精度と射程が優れる。

 

タリバンが長年愛用してきたカラシニコフAK-47の代わりに捕獲したM16ライフルやM4カービン銃を使い始めている。いずれもアフガン陸軍が放棄した装備品だ。AKが1989年まで続いたアフガンソ連戦争にさかのぼる旧式装備なのも切り替えの理由だ。

 

捕獲された銃火器に一回も発射されたことがないものが多数あることからアフガン軍がいかに急速崩壊したことがうかがえる。

 

弾薬供給には心配がない

 

タリバンに米製小火器が普及してきたとの報道が出てきたが、バイデン政権がロシア製小火器弾薬の輸入を禁止したことが関係する。ロシア企業はAK-47弾薬以外にM16やM4用の弾薬まで製造している。

 

「ロシアはAR5.56NATO弾を毎年数百万発生産しており、米国市場にも流入している。ツーラ、ウルフ、レッドアーミーのブランドネームだ」と米海兵隊退役将校が匿名でロイターに解説している。「タリバンの味方はどんなパーツも提供できる」

 

ロシアが米国向け輸出を禁じられ、アフガニスタンへの供給が浮上し、タリバンから発注を受けるのではないか。

 

銃火器だけではない

 

M16やM4以外の装備品もタリバンは手に入れた。米製装備品の大量入手でタリバンは戦闘員集団から近代軍隊へ変身し、ヘルメット、暗視装置、ボディアーマー、カモフラージュ服、各種車両が使える。

 

タリバンが捕獲した装甲車両は2千両に及ぶとされ、航空機材は40機で、UH-60ブラックホークや偵察攻撃用ヘリコプターがあり、スキャンイーグル無人機もある。

 

「タリバン戦闘員が捕獲した米製装備で武装している様子が写っている。米国や同盟国に大きな脅威だ」と下院外交委員会の共和党重鎮議員マイケル・マッコールがロイターに電子メールを送ってきた。

 

米国は2002年から2017年にかけアフガン軍に総額280億ドルの兵器類を供与した。大部分がタリバンの手中に落ちた。

 

「高性能米国軍事装備品をアフガン陸軍から入手したタリバンは世界最強のイスラム原理主義戦闘集団になった」と政治評論家アダム・シュワーツがソーシャルメディア上で述べている。そこには新装備を手にしたタリバンが映っており、「ハンビー、M1117装甲保安車両、インターナショナルマックスプロなど米国納税者の負担で導入した装備品だ」

 

タリバンは高性能兵器を入手したが、入手そのものが戦闘員募集の良い広告となる。タリバン戦闘員がカブール市内を先週行進したが、特徴的な白旗を堂々とハンビー車上に掲げていた。この時の画像が世界をかけめぐり、強力なメッセージを送った。タリバンが世界有数の軍事大国を駆逐したのだ。■

 

The Taliban Are Ditching AK-47s for Captured U.S. M16 Rifles


ByPeter SuciuPublished1 day ago


Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He regularly writes about military small arms, and is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.

 


2017年5月1日月曜日

アフガニスタンをどうするのか、国内情勢は最悪に向かっている


しばらく朝鮮に関心が集まり、忘れ去られそうなアフガニスタンですが状況は相当悲惨なようですね。このままではタリバン駆逐はおろか何十年かけても国土復興のめどがつきません。トランプ大統領には地政学も勉強いただいて出口戦略を考えてもらいところですが、お得意の取引の材料がありません。そうなると米国のコミットメントを終了し、アフガニスタンという国が消滅する可能性もあります。

アフガニスタンで戦死者が急増、同国は崩壊一歩手前

War Casualties in Afghanistan Hit All-Time High as Country Stands on Brink of Collapse

1,170億ドルを投入してきた米国で成果はわずか、それでも派兵規模増強を求める声

U.S. war effort tops $117 billion, but little progress seen amid calls for more U.S. troops

US army soldiers walk as a NATO helicopter flies overhead at coalition force Forward Operating Base (FOB) Connelly in the Khogyani district in the eastern province of Nangarhar
米陸軍兵士の背後にNATOヘリコプターが飛行する。連合軍前方配備基地FOBコネリー(アフガニスタン東部ナンガラールのホヤニ)にて / Getty Images
     
April 30, 2017 11:59 pm

  1. アメリカが1,170億ドルを投入してきたアフガニスタン戦は16年目に入り、米史上最長の戦闘となるが、紛争による死亡者が記録更新で増えており、米戦略そのものに疑問が提示られている。テロ集団タリバンが国土の三分の一を実効支配する一方、国内では深刻な汚職が蔓延している。
  2. ドナルド・トランプ大統領はアフガニスタンの今後で厳しい選択を迫られそうだ。国内再建プロジェクトは失敗続きの上、同国国民と米業者間の汚職で進展が遅れている。米軍首脳部から派遣部隊の増強を求める声が出ており、トランプに投票した国民層の怒りが高まっている。
  3. 米国納税者は昨年だけでも48百万ドルをアフガン治安部隊向け弾薬類調達で負担し、32.3百万ドルで国内統治経済機能の強化を支援している。米国はこれまで110億ドル以上でアフガン軍用に兵装類、通信装置、航空機、車両等を調達してきた。米納税者の負担が今後も減りそうもないのはタリバンが国内主要地区を相変わらず支配しているためだ。
  4. 治安情勢による国内死傷者は2016年は11,418名と、統計をとりはじめた2009年以来最高になったとアフガニスタン再建特別監査長官SIGARがまとめた最新の四半期報告が指摘している。米国は公表直前に同国に最大規模の爆弾を投下している。
  5. アフガン国民軍は訓練・給与支払いの大部分を米国頼みでタリバン戦闘で相変わらず大量の死傷者を出している。戦死率が高いため軍は弱体化し国土の奪還を実現する作戦能力はないとSIGARは評価。
  6. 2016年年間と2017年早々の治安事件は国連が統計を発表開始して最高水準になったとSIGARは指摘する。
  7. 「危険で屈強な反乱勢力が支配あるいは影響力を行使する地域にアフガン国民のおよそ三分の一が暮らしている」とSIGARは述べる。「死傷率が高く能力不足のためアフガン軍と警察部隊の戦力は低下中だ。アヘン生産は記録的水準に近づいている」
  8. 「反乱勢力と戦いアフガン治安部隊の指導支援を2002年から実施してきた米軍隊員にも死亡2,400名、負傷者20千名が発生している」とSIGARは述べている。「数千名規模の連合軍・契約業者も紛争で命を落としている。だがなんといってもアフガニスタン国民の犠牲が突出している。米軍の2001年以来の戦死者合計の二倍程度の戦死者が2016年だけで発生している」
  9. トランプ政権がアフガニスタン政策を見直す中でSIGARは新政権に援助提供方法の見直しを求めており、とくに蔓延する汚職を意識している。
  10. SIGARは米契約企業および軍関係者を数か月にわたり調査し刑事訴追三件、二件の懲役刑、刑宣告一件、民事損害賠償請求40百万ドルにつながったと報告書にあり、汚職調査は今後拡大するという。
  11. 去る二月には米陸軍ジョン・W・ニコルソンJr.大将が情勢は「行き詰まり状態」とし、米訓練を受けた要員の中に多数の死傷者が今後生まれると注意喚起している。
  12. 「保安関係の事件や軍事衝突が増えた」のはここ数か月のことで「民間人被害は高水準に達した」とSIGAR報告にある。アフガン軍は「引き続き高い損耗を受け、反乱勢力が一部農村部を再掌握している」
  13. 「国連調べでは治安事件は2016年11月18日以来2017年2月14日までに5,160件と前年同時期から10%増、2014年-15年比較でも3%増えている」と報告書にある。「うち2017年1月の実績は1,877件とこれまでの国連記録で最多だ」
  14. 米軍指導部は苦境に立つアフガン軍補強のため米軍の増派、装備品供与の増加を求めている。
  15. ニコルソン大将は米製UH-60ブラックホーク調達予算の認可を求め老朽化が目立つロシア製Mi-17ヘリコプターと交代させたいとする。
  16. アフガニスタンは大量のアヘン生産を続けており、高収益作物としてタリバンの戦費調達を助けている。
  17. 麻薬取引でテロリストが武器、資金を得て活動を継続している。アフガニスタンは2016年だけでも4,800トンのアヘン生産をしたとSIGARは指摘している。■

2016年7月21日木曜日

イラク、シリア、アフガニスタン航空作戦の最新データから見えてくる戦略上の失敗とは


これもオバマ政権の失敗では。イスラム国をもっと早く叩くべきであったのに小出しに航空兵力を投入して貴重な時間を空費したこと。米地上軍の投入をためらい、イラク他の地元兵力武装勢力を主役に立てた分、訓練や整備に時間がかかっています。砂漠や高地で酷使された各種機材の更新が今後たくさん必要になりますがF-35やLRSB等の大型案件に予算が吸い込まれ、結果として米空軍は戦力減少に向かうでしょう。イスラム国ははやく消滅させたほうがいいのは自明の理なのでせっかく勢いのついてきた作戦を今後も継続してもらいたいですね。日本も貢献できることがあるはずですね。

 Airstrikes Up In Iraq & Syria, Afghanistan Eats ISR: CENTCOM

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 20, 2016 at 4:00 AM


月別兵器投下量(緑シリア-イラク、赤アフガニスタン)
Sydney J. Freedberg Jr. graphicUS CENTCOM data
  1. アメリカは全く違う戦争を2つ同時に実施している。国防総省発表の最新データからイスラム国向け航空作戦はほぼ四ヶ月の小康状態からふたたび激しくなっていることがわかる。一方でアフガニスタンでの空爆はイラク、シリアと比べればごく小規模であるが、アフガニスタンの荒れた広い国土に驚くべき量の偵察活動が展開されている。
  2. 米中央軍CENTCOMの最新データを分析し、双方の戦闘状況を把握した。CENTCOMが昨日公表した報告書で月ごとに爆弾が何発投下されミサイルの発射本数もわかる。6月が極めて活発で記録に並ぶ量が投下されている。
  3. 圧倒的多数の97.1%がダーイシュ(自称イスラム国のアラブ語頭文字による蔑称)向けで、6月に米軍はイラク、シリアで合計3,167発を投下しているのに対しアフガニスタンでは62発だった。

近接航空支援ソーティー数
Sydney J. Freedberg Jr. graphicUS CENTCOM data

  1. アフガニスタンでの交戦規則が厳格になったことに注意が必要だ。国境なき医師団の病院への誤爆で42名死亡した事件が引き金になったが現在は緩和されており、タリバンへの空爆は増える傾向にある。だが基本構造には変化はない。米軍はイラク-シリアを重視し、ダーイシュを叩き、イラク軍の前進を助けているが、アフガニスタンでは基本的に軍事顧問団の役割に徹している。
  2. 空爆の代わりに米軍はアフガン政府軍に情報収集監視偵察(ISR)能力を大量に提供している。データを見るとアフガニスタンでのISRフライト回数はイラク、シリアの二倍程度になっている。言い換えれば、イラク、シリアでは近接航空支援任務2回につき一回のISRフライトがある。ISRを実施理由では空爆目標に関する情報が一番多い。アフガニスタンではおそらく同国地上部隊の要望が中心なのだろう。
  3. 数字から一つわかることがある。空爆回数が減ってもISRの要請は減っていない。偵察は絶えず必要であり、無人機部隊がぎりぎりまで酷使されている。
ISRソーティー回数、月別
Sydney J. Freedberg Jr. graphicUS CENTCOM data
  1. 輸送機も酷使されている。二方面の航空作戦で今年前半だけで空輸フライトが4,500回を数え、各種補給品を米軍、連合軍向けに運んでいる。
  2. 次に空中給油がある。給油機は高経年化が目立ち後継機種の確保に空軍は躍起だ。基地が近くに確保できず米軍戦闘機は航続距離が短いため空中給油一回か2回がないと目標まで到達できない。
  3. 空中給油機にアフガニスタンが悪評なのは国土が広く拡散しているためだ。インド洋上の空母から発艦する攻撃戦闘機は一回のソーティーで何度も空中給油する必要がある。だがアフガニスタンでの空中給油機のソーティーは平均一日あたり13回とイラク、シリアの34回と比べ半分以下だ。それだけシリア、イラク上空にはお腹をすかした戦闘機が多く飛んでいるのだ。
  4. 大まか数字ではこれ以外の詳細が見えてこない。たとえばAWACS空中指揮命令機は少数だが重要な機材だ。またデータは最終的には戦略の兆候を示し、グラフの折れ線は状況を知るためのものでありそれ自体が目的ではない。そこでアメリカの空軍力権威に意見を求めてみた。
一日あたりのソーティー数
Sydney J. Freedberg Jr. graphicData courtesy David Deptula, Mitchell Institute
  1. 「CENTCOMがイスラム国を標的に作戦レベルをあげているのはよいことだ」とデイヴィッド・デプチュラ退役空軍中将、元F-15パイロットは語る。「(だが)シリアとイラクで層別すると、シリア内のイスラム国向け空爆は活発さを欠いている」という。
  2. デプチュラの数えたところダーイシュ相手の空爆は平均一日15ソーティーで72発を投下しており、うちイラクが9ソーティ、シリアはわずか6ソーティーだ。砂漠の嵐作戦の空爆でデプチュラも立案に加わったが、一日で1,241ソーティーで5,294発を投下している。2003年のイラク侵攻では633ソーティーで973発だったのはスマート爆弾が広く投入されたのが大きい。セルビアの1999年連合軍作戦でさえ298ソーティーで359発投下していた。

一日あたり投下数
Sydney J. Freedberg Jr. graphic
Data courtesy David Deptula, Mitchell Institute
  1. その一日あたり15ソーティーでデプチュラが指摘するのはイラク9に対してシリア6というバランスの悪さだ。イスラム国の中枢はシリアだ。ビル・ミッチェルやジウリオ・ドゥウエが説いた空軍力理論ではまず敵の力の源泉を叩くべきで、戦線付近を空爆で苦しめるのはその後でよい。
  2. 「最新の数字から現在の陸軍主導の(地上戦中心)戦略ではイラクの主権回復をまず達成してからシリアのイスラム国対応にとりかかろうとしているが、これではあべこべだ」とデプチュラは指摘する。デプチュラはワシントンDCでミッチェル空軍力研究所所長を務めている。「この地方での米安全保障の中核的利益はイスラム国に聖域を認めないことでテロ輸出を止めることのはず。イラク軍の代理を務めることではない」
  3. 進展がゆっくりとしかも小出しの投入によりイスラム国に時間の余裕を与えてしまい西欧への影響力拡大を許したため「オーランド、パリ、ブリュッセル、ニース、それからこれからもっと多くの場所でテロ襲撃が起こる」とデプチュラは述べた。
  4. 「二年前に米主導の連合軍は総合的な戦略で迅速かつ効果的にイスラム国の実行能力を解体する方向でまとめておくえきだった」とデプチュラはいうが、今からでも方向転換はできるはずだ。「シリアのイスラム国相手の空爆は一日六回という小規模から適度な規模に引き上げるべきで、イスラム国の構成要素をそのまま粉砕する作戦を迅速に行う戦略に焦点を合わすべきだ」■