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2014年9月12日金曜日

即時全世界攻撃構想に対しロシアは核戦力増強に走るのか


日増しに米ロの対立緊張が高まっていく観がありますが、米軍の即時全世界攻撃構想にロシアは防御を固める構えです。これは80年代のスターウォーズ計画で当時のソ連が破たんしたのとはスケールが違いますが、どこか似た構図になっています。まずロシアの言い分を聞いてみましょう。


Russia Announces Plans To Upgrade Nuclear, Air Defense Forces

Sep. 10, 2014 - 02:38PM   |  
By AGENCE FRANCE-PRESSE   |   Comments

MOSCOW 任意の目標を一時間以内に攻撃できるとする合衆国の「即時全世界攻撃」構想に対抗し、ロシアは核部隊、防衛戦力を高性能化すると副首相が9月10日に発表している。
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  1. 「即時全世界攻撃戦略には戦略核部隊や海軍部隊の能力向上で対抗する。同時に作成済みの計画に従って防空、宇宙防衛を進める」と副首相ドミトリ・ロゴジン(国防担当)Deputy Prime Minister Dmitry Rogozin が語ったとインターファックス通信が伝えている。

  1. 発言はウラジミール・プーチン大統領がロシア国防支出会議の席上で西側各国がウクライナ危機を契機にロシアに対する挑発に出ており、「NATOが復権しようとしている」と批判したのを受けた形。

  1. 冷戦時代と同じ話し方ででプーチン大統領は「新たな脅威があらわれつつある」とし、NATO軍が東欧で増強されていること、ヨーロッパとアラスカでの米軍のミサイル防衛体制、そして「即時全世界攻撃」を例に挙げた。「いわゆる全世界武装解除攻撃の理論が現実のものなろうとしている」とプーチン大統領は発言。

  1. 即時全世界攻撃構想は通常兵器により世界中どの目標も一時間以内に攻撃するものだ。

  1. 国防副大臣ユーリ・ボリソフDeputy Defence Minister Yury Borisov からは同じ10日にロシアも新兵器に対抗する技術開発を迫られるが防衛的な性質である旨強調する発言があったとRIAノヴォスティ通信が伝えている。■

ではその即時全世界攻撃構想とは何で、どこまで進んでいるのかを米議会調査局の報告書から見てみましょう。

Conventional Prompt Global Strike and Long-Range ballistic Missiles: Background and Issues

Congressional Research Service

通常型即時全世界攻撃手段と長距離弾道ミサイルに関する議会調査局報告書(2014年8月)

要約

通常弾頭即時全世界攻撃兵器 conventional prompt global strike (CPGS) により合衆国は地球上いかなる地点も一時間以内に攻撃する能力を手に入れる。紛争が発生しても初期段階から高価値の目標や急速移動中の目標を攻撃する能力を有すれば敵に対する抑止力・破壊力につながる。議会は即時全世界攻撃をおおむね支援してきたが、予算に制約を課し、CPGSが核兵器の代替ではなく合衆国保有の通常兵器能力の補完とするとことを条件に予算変更を加えてきた。CPGSは「すきま」能力であるが、ごく少数の同兵器を選択した重要目標にあてることができる。


ただし敵国が通常弾頭ミサイル発射を誤解し、核兵器搭載とみる可能性を指摘する専門家がいる。国防総省では長距離攻撃能力を実現するシステム数種を検討中である。空軍と海軍はともにそれぞれが運用中の長距離弾道ミサイルに通常弾頭を搭載する案を検討中である。

海軍はトライデントII潜水艦発射弾道ミサイルに通常弾頭を搭載しようとしてきた。2008年度に議会はこの予算を却下したが、海軍はその後も中距離弾道弾で即時攻撃の検討を続けている。

空軍は国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)とともに国超音速滑空搬送機の開発中で、同機は改造したピースキーパー陸上配備弾道ミサイルに搭載する通常型打撃ミサイルconventional strike missile (CSM)と呼ばれる。議会は2008年度にCPGSミッションの研究開発支援予算を創設しており、2014年度の計上額は65.4百万ドルである。オバマ政権は2015年度分として70.7百万ドルを要求している。


CPGS予算要求の審議では国防総省に対して同事業の意義を再度尋ね、合衆国が紛争開始直後あるいは途中で目標を即座に攻撃する必要があるのかを問いただす可能性がある。また前線配備陸上あるいは海上兵力があるのにさらに配備の必要があるのかも問われよう。議会ではこの兵器が実現した場合に核兵器への依存度が下がるのか、合衆国の攻撃が誤解され核の使用につながらないかも併せて検討されるだろう。後者では合衆国のPGS兵器発射を探知した国が弾頭が核非核の区別ができないことがリスクになるといわれる。

議会からはこの問題の可能性をすでに提起しており、空軍により極超音速搬送システムを改造した弾道ミサイルに搭載する開発の進展を期待する専門家がいる。これは通常型攻撃ミサイルconventional strike missile (CSM) として知られる構想で、HTV-2と呼称される極超音速飛翔体だが、テストはまだ成功していない。

それに代わる滑空機はAHWとして知られ、海上配備ミサイルに搭載されるだろう。議会はその他のCPGSを実現する手段も検討する予定で、爆撃機、巡航ミサイル、スクラムジェットあるいはその他高度技術を取り上げるだろう。打ち上げ後滑空するシステムで搭載する弾頭は2010年の新START条約では制限されない。それは新規の攻撃手段となるため。ただし既存型式で大気圏再突入する飛翔体を既存型式の弾道ミサイルに搭載すれば同条約に違反することになる。




2014年8月26日火曜日

米陸軍の極超音速飛行試験機、打ち上げに失敗、空中破壊される


これもブラックプロジェクトなのでしょうが、実験に失敗したためあらためてその存在が表面に出てきました。極超音速飛行は課題が多いのですが、着実に開発が進んでいるようです。それにしてもなぜ陸軍が開発に絡むのでしょうか、空軍がやる気がないからでは。あるいは陸軍と言うのもフロントなのかもしれませんが。通常弾頭とはいえ、着弾すれば相当の運動エネルギーで目標を破壊するはずです。核の応酬を招かずに相手国の核施設を攻撃するというコンセプトなのでしょうね。

Army Hypersonic Test Vehicle Destroyed Following Failed Launch Test

By: Dave Majumdar
Published: August 25, 2014 5:41 PM
Updated: August 25, 2014 5:44 PM
Artist's concept of a hypersonic vehicle. DARPA Photo
極超音速飛翔体の想像図(2011). DARPA Photo


米陸軍の宇宙ミサイル防衛本部が通常型全世界即時攻撃兵器Conventional Prompt Global Strike (CPGS) のテストを本日実施したが、結果は予定通り運ばず、弾頭は空中爆破された。

国防総省は「陸軍が高性能極超音速兵器体系の試射をアラスカ州コーディアック打ち上げ施設から実施したが、異常事態によりテストは打ち上げ直後に打ち切られた。このことによる人的被害は一切発生していない」と声明文を発表した。


ペンタゴンによれば関係者が原因を調査中である。CPGSは通常兵器により地球上どの地点も一時間以内に攻撃する手段として開発中。

これまでは通常弾頭を搭載した大陸間弾道弾の開発が中心だったが、発射した場合核兵器攻撃と受け止められかねないことからペンタゴンは代替手段を模索していた。

「今回のテストは前回までの分と合わせ極超音速打ち上げ滑空技術のテータを収集し、長距離大気圏内飛行の性能を見極めるのが目的」と国防長官官房の報道官は伝えている。

「テストで得られたデータは国防総省により地上テストに活用され、モデル作成およびシミュレーションで極超音速飛行を実施したうえ、実施可能な通常型全世界即時攻撃兵器のコンセプトに応用する」

当初案ではトライデントII D5潜水艦発射型弾道ミサイルに通常弾頭を装着する予定だった。■