2020年2月29日土曜日

主張 サンダースを大統領にしてはならない

米民主党でサンダース上院議員が大統領候補に近づきつつあり、警戒心を感じています。貧富の格差をとりあげ、大学学費を無料にするなど若者へ焦点を当てた公約を掲げていますが、衆愚政治で選ばれてしまうとしたら悲劇です。このような人物を大統領にしてはいけません。ただし、今回の記事にあるように根本は政治屋であり、言ってることとやってることが違う典型例のようなので少し安心です。選挙区という地盤を持つ政治家がそれ以上の地位を追い求めていいのか、悩ましいところです。その点トランプのような人物は誠に稀有ですね。全国区という制度も地元を意識しなくても良い政治家を生む点では効果があるのではないでしょうか。
結局は雇用と資金の流れ
普段はハト派のサンダース議員だが出身州のヴァーモントにF-35が雇用と資金をもたらすことを熟知しており、連邦政府予算が同州に途切れずに流れるよう行動している。▶2019年4月7日、ヴァーモント州軍パイロットがF-16ファイティング・ファルコンの退役に際し、最後の展示飛行を行った。▶同州軍の第158戦闘航空団はF-16C、D型を1986年からバーリントン国際空港から運用してきた。2001年9月11日のテロ攻撃でニューヨーク市上空の防衛にあたった。▶F-16の後継機としてF-35Aの18機及び予備2機が到着した。『ヴァイパー』より機動性は劣るものの、F-35は戦闘シナリオの大部分を生き延びられるのはステルス性と長距離センサー能力に頼るところが大きい。▶ただし地元民に懸念の声もある。搭載するプラット&ホイットニーF135ターボファンエンジンはF-16より騒音レベルが高い。空軍調査では65デシベル超の騒音レベルが数千世帯にわたるという。「不適」な水準だ。▶ここからF-35反対派が生まれているが、同州選出の左傾上院議員、無党派のバーニー・サンダース、民主党パトリック・リーヒともにF-35配備を支持している。▶反対派は「空を救え」運動として退役空軍大佐ロザンヌ・グレコ(核交渉に参加)、ピエール・スプレー(兵器専門家でF-35批判者)、ベン・コーヘン(ベン&ジェリーアイスクリーム)を陣営に加えた。▶バーリントン空港付近の住民はF-16の騒音でさえ不快に感じていた。空港当局は住宅200棟を買い上げ、騒音に悩む人口を減らした。F-35配備反対派は高騒音の空港近くで育つ児童に健康面のみならず学業成績でも悪影響があるとの統計を使っている。▶2013年発表の州軍がによる環境インパクト調査では騒音水準の増加はごくわずかとしている。しかし住民から評価モデルそのものに疑問の声が出ている。▶さらに調査で対象4箇所のうちバーリントンが最低だったことがわかった。バーリントンを強く推したのがリーヒ上院議員だった。さらにメールがリークされ、州軍が騒音モデルを新たに作り、騒音評価を都合よく操作したことがわかった。▶さらに調査で使ったモデルはF-35がアフターバーナーを使う時間を5%に止めていることがわかった。アフターバーナーは28千ポンドのエンジン最高推力を44千ポンドに引き上げ、それだけ騒音も強くなる。ただしその後判明した文書ではF-35のアフターバーナー使用想定はミッション時間の半分であり、5%ではなかった。とくに同空港の滑走路が短いため、戦闘装備の機体は離陸時に推力が余分に必要であることがわかった。▶さらに空軍内部のメモが流出し、空軍でもバーリントン国際空港への機材配備に反対する声があることがわかった。人口密度の低い地点の基地の方が望ましいとある。

ヴァーモントに核兵器が持ち込まれる?
ヴァーモント州民にはライトニングが今後B61核爆弾運用能力を獲得することも反対の根拠としている。同核爆弾は前線で使う想定で出力は0.3から50キロトンの間だ。広島型原爆は15キロトンだった。▶「ヴァーモントへ核爆撃機配備に反対する会」の様な集団は戦術核兵器そのものに反対しており、同州が配備を受け入れればロシアや中国と戦争の際に攻撃対象になるとする。▶バーリントン市議会は2019年に核兵器運用可能機材の同地導入に反対する決議を全会一致で成立させている。ただしF-35配備については反対していない。▶ただし、ここでふたつ注意すべきことがある。F-16もB61爆弾搭載の構造となっていたし、F-35がB61運用可能となるのはブロック4にアップグレードされてからとなる。▶サンダース、リーヒ両上院議員は核兵器運用能力について聞いていれば同機導入への賛成を取り下げるとしている。▶だがまずF-35全機に核運用能力がつくわけではない。一方で核運用可能機材、訓練ずみ部隊、実際に核兵器を搭載している機材を示すことはしないとの方針だ。▶実務面を見れば、ペンタゴンがバーリントン国際空港内に核兵器貯蔵施設を建設することに乗り気なはずがない。反対派からすれば核兵器があろうがなかろうがF-35そのものが標的になると主張している。

政治経済とF-35
反対派はF-35の悪評高い予算超過と遅延を見れば、サンダース議員が同機配備を支持するのは本人が大統領当選の暁には軍事支出の統制不可能状態を是正するとの本人主張と矛盾するとする。▶リーヒ上院議員が導入を支持するのは上院内で州軍関連で本人が強い立場にあるためだ。サンダースはF-35導入支持の理由として州への経済効果をまずあげ、国家安全保障上は二の次としている。▶2014年の地元集会でサンダースは「現実の世界で、機体が製造され、ヴァーモント州がその場所に選ばれれそうなときにサウスカロライナやフロリダも候補なら、米国上院議員としてどう選択すべきでしょうか。サウスカロライナに流れて我慢できますか。現実面で言えば、やはりサウスカロライナではなくヴァーモントに持ってきてもらいたい。ヴァーモント州軍も同じ意見でしょう。何百という雇用がこの町に生まれます。それがねらいです」▶ヴァーモントではF-35の兵装庫、GAU-22「イーコライザー」5銃身ガトリング砲のメーカーがあり、CNBCはその規模を雇用1,600名分、金額で2.22億ドルとしている。▶ペンタゴンはF-35を2,400機調達する予定で、今後同機が配備される地方都市も増えそうだ。すでにアイダホ州やアリゾナ州でも同機の騒音に反対する声が生まれている。▶F-35配備が政治面での意見対立のシンボルとなり、米軍の役割や適正規模についても議論を巻き起こしそうだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

It's All Politics: The 1 Reason Bernie Sanders Loves the F-35 Stealth Fighter


February 24, 2020  Topic: Politics  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: Bernie SandersF-35 MilitaryU.S. Air Force Stealth Fighters





P-8AにPRC駆逐艦がレーザー照射、フィリピン海上空

今回の事件の背景に法律、規範、約束を守る姿勢が希薄な中国人の思考形式がある気がします。幸いにもことは大事に至りませんでしたが、もっと深刻な事故が早々に発生しそうな気がします
国駆逐艦が米海軍P-8A哨戒機にレーザー照射する事件が発生した。グアム西方380マイルの国際空域を同機は飛行していたと米太平洋艦隊が声明文を発表。
レーザーは視認できなかったが搭載センサーが探知した。太平洋艦隊は「危険かつ無分別」と表現し、発生したのは2月17日だったという。
駆逐艦は052D旅游III型のフフホトHohhot(艦体番号161)で昨年就役したばかりだ。
Type 052D Destroyer Hohot (161). Photo via Naval News
太平洋艦隊の発表ではレーザー照射は米海軍と人民解放軍海軍PLANの合意事項に反し、2014年版の合意内容にはレーザー使用は人員や機器に危害を生むと明記してある。
以下太平洋艦隊の発表文を掲載する。
ハワイ・パールハーバー 米海軍P-8Aポセイドン海洋哨戒機が中華人民共和国PRC海軍駆逐艦161から2月17日レーザー照射を受けた。同機はグアム西方約380マイルの公海上空を飛行中だった。
同機は国際空域で国際法に乗っ取り行動中だったが、PRC海軍駆逐艦の行為は危険かつ無分別なものだった。さらにこうした行為は海上突発遭遇時の行動規範CUESに違反するものであり、2014年に西太平洋海軍シンポジウムで合意されたその内容では海上での偶発事故の減少をめざしたものである。CUESではレーザー光線の使用は人員に危害を与えたり機器に損傷を与える可能性がると具体的に述べている。今回の駆逐艦の行動は米国防総省とPRC国防部間で取り交わした覚書MOUに違反しており、空中海上での遭遇時に採るべき行動と反する。
レーザーは裸眼では視認できなかったがP-8A搭載センサーが探知した。兵器級レーザーは航空機乗員に深刻な危害を及ぼす恐れがある他、艦艇や機体にも損害を与える可能性がある。
同機はVP-48所属でフロリダ州ジャクソンビルに本拠を置き、前方配備で沖縄嘉手納基地に展開していた。同飛行隊は海上哨戒行動、偵察飛行を定期的に米第7艦隊所轄区域で展開している。
米海軍所属機はフィリピン海を定期的に飛行してきた。米海軍機、艦艇は今後も国際法の枠内で飛行航行を続ける。
米7艦隊は世界最大規模の艦艇数を誇り、その他35カ国の海洋国家との同盟協力関係を維持している。米海軍はインド太平洋で一世紀にわたり活動し、平和の維持、紛争の予防に効果的な軍事力を実現している。■
この記事は以下から構成しました。

Chinese Destroyer Lases U.S. Navy P-8A Plane Operating Near Guam

February 27, 2020 6:16 PM • Updated: February 27, 2020 6:56 PM

2020年2月27日木曜日

戦艦のカムバックで中国に対抗せよ


21世紀の現在に戦艦? いえいえ、ここで言う戦艦とは攻撃力と防御力を兼ね備えた一定程度の大きさを持った艦艇のようです。ズムワルト級ぐらいの大きさでしょうか。大は小を兼ねるといいますが、果たして海軍当局が採用するかどうか。ところで時々CNNなどの同時通訳を聞いていてびっくりすることがあるのですが、どうもwarshipを戦艦と誤って訳しているんですね。軍艦ということばは死語になっているのでしょうか。

アトミックゴルフ


性能な装甲を備えた現代の戦艦があれば、危険な状況からも十分帰還できる艦艇が生まれる。
第二次大戦で日本海軍が投入した超大型戦艦、大和と武蔵は18.1インチ砲という史上最大の主砲を搭載しながら、1隻も米艦船を沈めていない。航空戦力が優勢となり、両艦は鋼鉄の恐竜と化した。
だが鋼鉄の恐竜を倒すのは容易ではなかった。大和は魚雷11本、爆弾6発の命中で沈んだ。武蔵には魚雷命中19本、爆弾17発が必要だった。戦略面で両艦は無益な存在だったが、撃破は極めて困難だった。
海軍艦艇の建造には数十年におよぶ計画が必要で、直近の戦闘事例に対応させてしまうリスクがついてまわる。第二次大戦終結後の米海軍は航空母艦中心に整備してきた。だが大規模戦闘は皆無に近く、別の任務が逆に増えた。中国の台頭に対抗すべく最も頻繁になっているのが航行の自由作戦(FONOPs)で、戦闘はまったく想定していない。
ここ数年の中国は根拠のない主張を南シナ海で強硬に繰り返している。対応して米国も定期的にFONOPsを実行し、中国の人工島沖合12カイリを米駆逐艦に航行させ、中国の領海主張を拒絶している。今の所中国は米作戦に真っ向から対抗する無分別さは示していない。
だが駆逐艦の艦体は脆弱だ。USSフィッツジェラルドがコンテナ船に衝突し乗員7名が死亡した事故があった。その後、USSジョン・S・マケインが石油タンカーと衝突し沈没寸前となった。この際は乗員10名が死亡した。タンカーには負傷者はなかった。二回の衝突事例から現在の海軍艦艇の根本的欠陥が見える。残存性が低い。海軍艦艇といえば石油タンカーを恐れさせる存在だったが、今や逆になっている。
米海軍には空母打撃群の攻撃力とならび誘導ミサイル駆逐艦も必要な戦力だ。だが攻撃を受けても航行を続けられる艦艇も必要ではないか。中国が精密攻撃能力を整備する中、そこまでの強靭さが重要になる。南シナ海で非装甲艦艇の航行が危険になる事態が生まれてもおかしくない。
攻撃を免れる手段にステルスがあり、米海軍はステルス駆逐艦の開発で先を進んでいる。だがステルスではFONOPsの目的を達しない。視認させないと意味がないのだ。古式ふるめかしい戦艦はまさしく姿を見せるのが目的でしかも威容を誇る。だが21世紀に昔同様の戦艦を建造する必要はない。まったく新しい形の戦艦を作れば良い。
現在の戦艦は高性能装甲素材と自動損傷復旧を組み合わせ、事実上の不沈艦とすればよい。攻撃手段は任務にあわせ選択すればよいが、鍵となるのは残存性だ。危険な状況に突入しても、帰還する可能性が高い艦となる。
この「未来型戦艦」があれば中国の接近阻止領域拒否(A2/AD) 戦略を否定し、米国は西太平洋での航行を維持できる。中国は沿岸部、沿海部、宇宙空間にセンサー網を整備中で、中国本土と日本、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線間を移動する全てを監視する体制が生まれるのは時間の問題だ。また精密攻撃手段の進歩により探知したすべてを攻撃する能力を中国は入手できる。
これに対する米国の戦術対抗案はエアシーバトル、JAM-GC、第3相殺とめまぐるしく変更された。各案で共通するのは最良の防衛策は最良の攻撃である、という点だ。中国のA2/AD攻撃からの防御ではなく、米国が先に指揮命令系統を破壊し、中国センサーによる精密攻撃を不可能にする。問題はこの場合は全面戦にただちにエスカレートすることだ。
そこで未来型戦艦が活用できる。限定紛争シナリオで防御という選択肢が米国に生まれる。たとえば未来型戦艦が中国の挑発に反応して中国の海中センサーを破壊したり、中国の海底ケーブルを切断したとする。同艦なら敵艦船が衝突を試みても残存できる。中国や北朝鮮箱の衝突戦術を多用する。また両陣営がミサイルを打ち合う事態になっても、同艦は危険地点で運用可能でその間に事態の変化を待てば良い。
米海軍が大艦巨砲主義に復帰することはないが、海軍艦艇における装甲の意義を再検討すべき時だ。将来型戦艦により米海軍に敵の完全敗北以外の選択肢が生まれる。FONOPsによりこの選択肢の必要性が痛感されている。A2/ADから、さらに危険なミッションが生まれるだろうが、頑丈な未来型戦艦は安全な艦艇として機能するはずだ。■
ベルリッツ

この記事は以下を再構成したものです。

Why The Battleship Could Make a Comeback (Thanks to China)

These aren't your grandpa's battleships.
February 23, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: BattleshipChinaA2/adNavyMilitaryTechnologyU.S. Navy
Salvatore Babones is an associate professor of Sociology and Social Policy at the University of Sydney. (This first appeared last year.)

2020年2月26日水曜日

中国経済はどこまで水増し発表されているのか



今年はいろいろな面で中国が実態を隠しきれなくなる年、
共産党の支配構造がほころぶ年と見ています。経済については最初から
中国の数字には疑問がついてきましたが、嘘に嘘を塗り固めた都合のよい
報告が繰り返され、何が実態なのかわからなくなっているのでしょう。
今回の武漢ウィルスでいったん時代を戻し、中国に依存しない体制
(とうぜん価格が上がっても喜んで支払いたいものです)を考え直すべき
時期に来たと思いますが、皆さんはどうお思いでしょうか。

国は十数年にわたり、毎年の経済成長を水増しし、実際のGDPよりおよそ2割多く報告している。なぜ中国は統計数字を公明正大に発表できないのか。
中国経済の専門家四名(Wei Chen, Xilu Chen and Michael Song of the Chinese University of Hong Kong, along with Chang-Tai Hsieh of the University of Chicago)が2008年以来の公表経済データを精査したところ、年平均1.7パーセントも過大報告されてきたことがわかった。▶毎年の過大報告の累計効果を除くと中国のGDPは実際より2割過大報告されている。▶四名は中国経済の実態解明のため、税収、衛星から見た夜間照明、発電量、鉄道貨物、商品輸出など操作しにくいデータに頼り、2008年の世界金融危機以来の実質成長率を探った。その結果は中国国家統計局発表の数字より一貫して低い。▶中国の2018年GDPは公式発表で93.15兆元で13.4兆米ドルに相当する。米経済の65%大になったわけだが、人口では中国は米国の4倍強で一人あたりGDPは中国が9,800ドル、米国が63千ドルになる。
四名の経済専門家による数字がブルッキングス研究所から発表され、捏造であると判明し、GDP規模とGDP成長率双方がこれまでの公表数字より低かったことがわかる。中国が2008年から一貫して正しい数字を発表していれば2018年時点では11.1兆ドルになっていたはずで、米経済の54パーセントに相当する。▶一人あたりわずか8千ドル付近になり、メキシコの9,600ドルに足りず、米国の8分の1程度になる。ただし、これも2008年の数字そのものが水増しされていなかったとの前提だ。2007年に李克強(当時は地方の党書紀、現首相)が数字を「人為的」と述べ注目を集めた。2008年の実績が実はもっと低いものだったら今日の水準も低くなっていたはずだ。▶中国の2018年成長率が公表の6.5パーセントから1.7ポイント下がり4.8パーセントだと、ヴィエトナムやインド(ともに7.3パーセント)をも下回っていたことになる。同時に現行の成長率でも中国は米国に簡単に追いつけない。中国の成長率を4.8パーセント、米国を平均実績の2.1パーセントとすると、中国経済が米国を追い抜かすのは2036年、一人あたりGDPで米国を上回るのは2076年となる。あくまでも予測であるが。
東アジア新興国のこれまでのデータを見ると、簡単にそうは行かないことがわかる。韓国、台湾の急成長は2000年代早々に終焉している。当時は両国の国民一人当たりGDPで米国の三分の一未満という規模だった。▶両国は20年も懸命に努力して米国の国民一人当たりGDPのやっと半分に到達した。それでも両国とも米国内で最貧のミシシッピ州の水準にも達していない。日本は下から二番目のアラバマ州と肩を並べる程度だ。▶中国で繁栄を謳歌する北京、上海、広州深センは東アジア新興国の水準に近づいているが、地方の大部分は貧困のままだ。▶中国が経済で米国に挑戦するという構図は非現実的だ。経済成長の実態を見る限り、裸の王様である。四名の経済専門家により、証明に必要な証拠が手に入ったといえる。■

この記事は以下をもとに再構成しています。

Surprise: China's Economy Is Smaller Than You Think

Why does China overvalue its GDP?
February 26, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaEconomyTradeFinanceNational Security


2020年2月25日火曜日

2020年米国防力の現況 ②陸軍

米陸軍の現状:「大変革」を2020年に実現したいが、中東の緊張のため超大国間競合への対応準備が遅れそう。
 ず、郎報から。米陸軍の状況は一年前から好転している。まず、隊員採用で定員割れがなくなった。また部隊は十分な装備で柔軟運用をめざしており、まさしくマーク・ミリー統合参謀本部議長が陸軍参謀長在任中に思い描いた姿だ。だが、実現まで長い道のりとなり、「超大国間交戦」を太平洋地区で想定する国家国防戦略構想へ準備が整うのはまだ先の話だ。
その理由として陸軍が特殊旅団「保安部隊補助旅団」SFABsの整備を続けていることがある。SFABは世界各地の危険地帯展開を目的とし、六個部隊整備が目標だ。中央軍、南方軍、欧州軍、インド太平洋軍、アフリカ軍へ各一個配備する。これまで三個旅団が整備され、アフガニスタンへ派遣中だが、損耗が厳しい。だがこれも変わる。第一SFABの任務をアフリカ軍が引き継ぐと陸軍が発表している。
次は中国の裏庭への配備だ。国家安全保障戦略の「超大国」想定立案に歩調をあわせ、陸軍長官ライアン・マッカーシーは太平洋地区のSFABが早ければ今年10月に発足し、ワシントン州フォートルイスの第5SFABから顧問団がインド太平洋軍に加わり、その後フル装備の旅団が移動すると1月に発表している。まだ不明な点が多いが、戦闘部隊であることに変わりない。アフリカ、欧州、南アメリカ向けSFABが完全稼働を開始する日程について言及はない。
いずれにせよ、「SFABがアフリカや欧州想定の配備でもそのままアフガニスタンに展開するわけではない」とマッカーシー長官は述べ、「一部地域で戦力増強すれば別地域の部隊をもってこざるをえず、対象部隊の指揮官に不満が生まれるが、必要な場所に必要な部隊を投入せざるを得ない」
有事の場面に投入されるのはSFABだけではない。101空挺師団の第3旅団戦闘チームがケニアに派遣されたのは1月5日のアル・シャバブによる米軍基地襲撃のためだ。同部隊はアフリカ軍に編入され危機対応にあたった。別のグローバル即応部隊がクウェートにあり、3,500名の第82空挺師団隊員が中央軍区域に1月3日のイランのカセム・ソレイマニ将軍殺害のあとに進駐している。
最近の配備では隊員は私物のラップトップコンピュータや携帯電話の持参を許されていない。陸軍はマルチドメイン作戦として作戦立案・実施を宇宙、サイバー、空、海さらに陸軍の本来の活躍場所陸上を横断して実施している。すべてミリー大将が2018年に著した「ロシア、中国が戦略面競合により軍事指導教義や作戦面の分析で新技術を導入している...そのため米国の戦闘方式も進化が必要」との背後にある2028年までに戦闘のあり方を一変させる主張があり、野心的な目標だが、ミリーは「教義上の進化で最初の一歩となる」としていた。
新参謀長ジェイムズ・マッコンヴィル大将によれば今後待ち構える変革はダイヤル電話がiPhoneに変わるのと同様だという。マッコンヴィルは陸軍協会主催の講演でこのたとえを紹介し、2028年までにサイバー軍という名称を情報戦軍に変えると述べた。「武力衝突と別の次元で対抗するため」だという。
陸軍が2019年に掲げていた優先目標に有効射程の拡大、防空能力の向上があったが、一年経っても題目の域を脱していない。だがマッコンヴィル大将は「まもなく500キロ先から敵へ攻撃できる能力が確立できると確信している」と述べ、実現は早くて2023年とし、極超音速ミサイルの導入も示唆した。
「画期的な変革で今後の課題を克服し、自信を持って対応できる」「これで競合できる。抑止力にもなる。必要ならこれで将来の戦場で勝利できる」(マッコンヴィル)
太平洋地区での米陸軍運用を根本的に変えるため巨額予算を投じる。これが原因で陸軍長官、海軍長官で意見対立につながった。中国の玄関口で抑止効果を生み、戦闘の主導権を握るのはどちらかが論点だった。
「陸軍は前世紀に世界各地で陸上戦3例に携わった」「最大の抑止力は世界各地で同盟国と肩を並べ地上に配備した部隊であり、その効果はヨーロッパで実証ずみだ。また同じ効果を東アジアで今年拡大する」とマッカーシー長官は述べている。
一方で陸軍の課題は以下の諸点だ。
  • 武力衝突やミサイル攻撃を想定したイラン付近米防空部隊をいつまで配備するのか
  • イラク国会はソレイマニ殺害を受けて決議した米部隊の国外退去は現実になるのか。
  • ホワイトハウスはアフガニスタンのタリバンと協定を成立させるのか。
  • 2020年にアフリカでの米プレゼンスは減らされるの
  • 米韓交渉が決裂しても在韓米軍約17千名は来年にかけ現地にとどまれるのか
  • メキシコ国境地帯に展開中の数千名規模隊員はいつ原隊復帰できるのか

この記事は以下を再構成したものです。
The State of Defense----Army

By Ben Watson

ヴァージニア級新型艦へ極超音速ミサイル搭載が決まる

攻撃型潜水艦にさらに攻撃力が加わるわけですが、世界いかなる場所も一時間で攻撃可能というのはカタログスペックでしょう。とはいえ、米国がこの機能を実現すれば、中露もいずれ獲得し、潜水艦の攻撃手段としての地位が高まるとともに、ASWが一層重要になるのでは。
Rendering of Block V Virginia-class submarine with Virginia Payload Module. General Dynamics Electric Boat Image
海軍は通常弾頭付き極超音速兵器をヴァージニア級攻撃型潜水艦に搭載する。オハイオ級誘導ミサイル潜水艦(SSGN)への搭載案も検討されていた。
2021年度予算案で海軍は研究開発を5%増額し、215億ドルで「コロンビア級建造、F-35、海上型トマホーク、通常型迅速攻撃手段(極超音速兵器)、無人装備、レーザー各種、デジタル戦、人工知能、海兵隊遠征運用能力装備」の開発を進める。
このうち、通常型迅速攻撃手段Conventional Prompt Strike(CPS)の研究開発に10億ドルを投じる。
「CPSのねらいは精密かつ迅速な攻撃能力を水上艦、潜水艦に与えること」と予算書にある。「CPSは共通極超音速滑空体Common Hypersonic Glide Body (C-HGB) および34.5インチ二段式ブースターをもとに構成する。2028年度に初期作戦能力獲得をめざし、ヴァージニア級潜水艦のペイロードモジュールに導入する」
通常型迅速汎地球攻撃能力が実現すれば世界いかなる場所を1時間未満で精密攻撃できる。迅速攻撃能力手段は水上艦艇、潜水艦、地上から発射可能となる。
2017年秋に海軍、国防総省は共同で「初の通常型迅速攻撃ミサイル」をテストしたと、テリー・ベネディクト中将(退役)は述べる。「画期的成果となった」
誘導ミサイル潜水艦SSGNに改装ずみのオハイオ級SSBNのうち4隻、またはヴァージニア級攻撃型潜水艦でヴァージニア・ペイロードモジュール導入ずみの艦への搭載を想定していたと海軍はUSNI Newsに伝えていた。
ヴァージニア・ペイロードモジュールとはヴァージニア級の艦体中央に追加されたミサイル発射管28本を指し、40発のミサイル運用が可能。ブロックV建造艦から採用される。
その一年後、2018年秋にベネディクトの後任ジョニー・ウルフ中将が各軍共通の弾頭形状の極超音速誘導手段が開発中だと明かし、海軍仕様は水上艦、潜水艦に搭載すると述べていた。
「海軍の視点で極超音速滑空体用のブースターを開発中で、今回は水中発射という厳しい条件だが、実現すれば妨害をまったく受けない画期的な攻撃手段になる」とウルフ中将は述べていた。
予算書では2021年度研究開発の対象に「同兵器装備の継続開発ならびに飛翔用サブシステム、装備品統合、今後の能力拡充に向けた弾頭部分の開発、通信機能の拡充、航法別手段、最終段階センサー技術の高度研究がある」を列挙している。■
この記事は以下を再構成しました。

Navy Confirms Global Strike Hypersonic Weapon Will First Deploy on Virginia Attack Subs

February 18, 2020 4:55 PM


2020年2月24日月曜日

朝鮮戦争参戦のソ連パイロット最後の一人が語る真相



朝鮮戦争へのソ連パイロットの参戦は今でこそ公然と語られていますが、戦争中は絶対にソ連も認めない事実で、撃墜し降下する赤毛のパイロットを捕虜にしようと待ち構える米軍の目の前で僚機が件のパイロットを射殺したとも伝えられています。共産主義プロパガンダの前に犠牲となったわけですね。今回の述懐は呪縛がなくなったためか信憑性が高いと思います。MiGは23ミリ、37ミリ機関砲でB-29を最初から排除する設計思想だったのでソ連パイロットが操縦すれば恐ろしい相手だったでしょう。

鮮戦争へのソ連空軍の介入は長年に渡り国家機密とされてきた。米側には創立から日が浅い中国や北朝鮮の空軍部隊が強力な米空軍の機体をやすやすと撃墜できるのはなぜだろうとの疑問が生まれていた。
ロシアで国際戦士の日がおごそかに祝われた。冷戦中に世界各地で犠牲となったソ連兵士に捧げる祝日で、第二次大戦でソ連空軍のエース、セルゲイ・クラマレンコ少将(退役)(97歳)が朝鮮戦争のエースともなった最後の生存者としてジャーナリストに回想した。
年齢に反し、本人の意識ははっきりしており、まず第二次大戦中に得た経験を朝鮮で応用したという。1942年から1945年にかけ、LaGG-3、La-5戦闘機でドイツ空軍の3機を撃墜し、その他13機に損傷を与えた。
「大戦末期には戦闘戦術や操縦技術でドイツを上回っていた。朝鮮動乱に応用し、米軍を安安と撃破できた」
Sergei Kramarenko during WWII.
© PHOTO : SERGEI KRAMARENKO'S PERSONAL ARCHIVE.
第二次大戦中のセルゲイ・クラマレンコ


「米軍パイロットはドイツのエース級より御しやすかった。ドイツはもっと戦闘意欲があったが、米軍は戦闘を避ける傾向があった。朝鮮ではこちらの訓練、技量が劣っていない事が証明され、こちらの機体が優勢であることもわかった」
クラマレンコによれば新型MiG-15戦闘機への機種転換は驚くほど容易で、機体の応答性や高速、高高度性能に気づいたという。とくに高高度性能で米F-86を上回り、ソ連軍パイロットはこれを活用し、米機を上空から攻撃した。
1950年11月に中国が参戦すると、クラマレンコはじめ第176防空戦闘航空連隊31名のパイロットがこっそりと移動し、人民解放軍空軍パイロットの訓練に従事した。ことの性質上、仕事の内容は一切明かすことが許されず、故国への郵便でも同様だった。ソ連パイロットはF-86セイバーの断片的な情報をつなぎあわせ、MiG-15より操縦性が優れているが、運用高度限界でMiGが優っていると判断した。
Sergei Kramarenko in the cockpit of his MiG.
© PHOTO : SERGEI KRAMARENKO'S PERSONAL ARCHIVE.
MiG操縦席に座るセルゲイ・クラマネンコ.


銃火の洗礼を受ける
ソ連空軍が朝鮮戦線に直接介入したのは1951年春のことで、クラマレンコは4月1日に初出撃したと認めている。
「戦闘機援護がついた偵察機一機が侵入してきたので緊急発進した」「上昇し、鴨緑江ぞいに移動した。高度7千メートルで敵機が正面に現れた。前方に双発偵察機、後方に戦闘機8機がついていた。こちらは4機のMiGだった。攻撃を指示した。ウィングマンのイワン・ラズチンが偵察機に下方から接近し攻撃した。すると突然セイバーの一隊がその背後に回った。『右へロールしろ』と叫んだ。ラズチンが急旋回すると敵機がその後を追った。こちらは編隊をはぐれた一機に照準をあわせ背後から射撃した。この機体は海面に墜落した。残る敵機は慌てて上昇した。別のウィングマン、セルゲイ・ロディノフへ別のセイバー編隊が攻撃をしかけてきた。そこで右へ方向転換を命じ、こちらはもう一機を攻撃した。その後、セイバー編隊と偵察機はその場から逃げ去った」


「暗黒の木曜日」

クラマレンコは1951年4月12日、米空軍パイロットが「暗黒の木曜日」と呼んだ空戦に参加していた。MiG-15の30機がB-29爆撃機編隊を遅い、援護するF-80、F-84およそ100機と交戦し、B-29数機を撃墜しながら、ソ連側には一機も損失がなかった。米軍司令部はこの事態に動揺し、朝鮮半島空爆を三ヶ月停止し、昼間爆撃はこれが最後となった。
「空戦ではB-29の48機中25機を撃墜したよ。爆撃は鴨緑江にかかる橋を狙っていた」「いまでも光景をありありと思い出すよ。戦闘態勢で飛ぶ編隊はパレードのようで美しかった。突如、こちらが攻撃をしかけ、爆撃機の一機を狙い射撃を開始した。すぐに白煙が出てきたのは燃料タンクに命中したからだ。すぐに僚機が加わり、実に簡単に米軍機を狩った。こちらの戦闘機は全機帰還した。USAFは一週間にわたり服喪しその地区へは爆撃機を再度送り込む勇気を失っていたね」


米軍エースとの交戦

クラマレンコは米空軍334飛行隊司令で第二次大戦のベテラン、グレン・イーグルソンとの遭遇を回想している。
「イーグルソンは3機編隊で飛んできた。2機がイーグルソンを援護し、本人は上空から攻撃を仕掛けてきた。命中せず、そのまま下方へ降下していった。こちらは左へ急旋回し、ロール、ダイブをした。ダイブがおわるとイーグルソンがこちらへ射撃してきた。ともに「ダンス」しながらしばらくそのまま続けた。ついにこちらが相手の上になったので再び射撃した。セイバーから破片が飛び散り、再び降下し始めた。すると敵のウィングマンが背後に回った。もう一度ロールして急降下し、北朝鮮の対空砲陣地に向かった。後ろを見ると800メートルほどの距離で二機がこちらを追っており、急に対空火砲の弾片が前方に飛び散り始めた。味方の射撃で死ぬほうがマシと思った。そのまま飛んだが幸運にも一発も命中しなかった。セイバー編隊も追跡をあきらめ帰投した。イーグルソンは米軍基地に着陸させた。負傷し、本国へ戻ったきり戦闘には復帰しなかった。


危うく干し草フォークで刺されかける

1952年1月17日にクラマレンコの幸運も尽きたようだった。セイバー2機を相手と思ったら、実は別の米軍機が上空から降下し発砲してきた。MiGに甚大な損傷が生じ、制御を失い、クラマレンコは脱出しパラシュートで命からがら生き延びた。
「パラシュートにつかまっていると米戦闘機がこちらに発砲してきた。なんども射撃をし、こちらの下を飛んでいたので思わず脚を引き上げたほどだ。400から500メートルで旋回し、再度こちらに向かってきた。だが幸運がまだ残っており、雲の中に入ったので、米機はこちらを見失った。更に降下すると森林が見えた。右から雲が晴れてきた。ハーネスを引っ張り、方向を変え樹木の中に降下した。見渡したが出血していない。首を触ると大きく腫れていた。どこかにぶつけたようだ。パラシュートを集め、道路へ出ると西に向かった。台車が目に入った。朝鮮人が薪を集めていた。こちらに気づくと朝鮮人は米軍人だと思い干し草フォークをこちらへ向け敵意を示した。そこで「金日成ホー、スターリン・ホー」と伝えた。ホーは朝鮮語で良いを意味する。そこでやっとわかった現地人は私を台車に載せ、村落へ連れて行ってくれた。食事をもらい、床の上で休んだ。朝になると車両がやってきて飛行場へ連れ戻した。これがソ連帰国前で最後の戦闘体験となった」
クラマレンコによればパラシュートを狙う米空軍パイロットは異例のことではなく、同僚一名が実際に死亡しており、もう一名が降下中に負傷したという。
176防空戦闘連隊から8名のパイロットと12機の喪失が生まれた。同時に爆撃機50機を撃破しており、これ以外に戦闘機の撃墜もあった。クラマレンコは21機を撃墜したが、公認撃墜は13機で残りは海上に墜落したという。ソ連パイロットが技能を発揮したので第三次大戦が回避できたと本人は信じている。
「米軍は原爆300発をソ連に投下する計画だった」とし、「だが朝鮮でB-29では我が国への侵攻は不可能とわかった。交戦一回で48機編隊の25機が損傷を受け、米軍はソ連への原爆投下戦略を放棄せざるをえなくなった」という。
クラマレンコはソ連空軍を1981年退役し、最後は戦闘機連隊や師団の司令を務めたほか、友邦国空軍部隊の顧問もした。1979年2月に第23空軍の副参謀長になった。
最後の操縦は1982年だった。「もう操縦はしない。若い連中が上空を飛ぶのを見ると羨ましく感じる。最新鋭機材は高性能で重武装だ。そんな機体で雲の中へ突入する夢を見ている」
Soviet WWII and Korean War ace Sergei Kramarenko.
© RIA NOVOSTI . SERGEI PYATAKOV
ソ連時代の第二次大戦、朝鮮戦争のエース、セルゲイ・クラマネンコ


70年近くたっても、朝鮮上空の空戦議論で決着がつかない

朝鮮戦争中のMiG対セイバーの戦いは今日でも議論に決着がついていない。米歴史家の試算ではセイバー喪失224機に対し、MiG-15は566機が撃墜されたとしている。(被撃墜機は大半が中国人、朝鮮人パイロットの操縦)だが、ロシアでは逆に1,106機を撃破し、MiGの被撃墜は335機としている。
朝鮮戦争は航空力重視の第二次大戦後の米軍事思想の黎明期となった。戦争中に連合軍のじゅうたん爆撃で北朝鮮の人口集中地点の四分の三が破壊されたとの試算がある。米軍は635千トンを投下し、うち32千トンはナパーム弾だった。この投下量は第二次大戦時の日本への爆弾投下量を上回る。■
この記事は以下を再構成したものです。


Last Surviving Soviet Ace of Korean War Opens Up on Clandestine Ops Against US Air Force
18:54 GMT 16.02.2020(updated 19:24 GMT 16.02.2020)Get short URL

2020年米国防力の現況 ①総論

今年は大統領選挙の年です。Defense Oneが伝える米国の軍事力の現況をシリーズでお伝えしてまいりましょう。第一回目は総論です。連載が不定期になるかもしれません。予めご了承ください。宇宙軍が加わり、以後、陸軍・海軍・空軍・海兵隊が続きます。

弾劾裁判、イランと開戦一歩前の状況がともに落ち着いた今、就任四年目のドナルド・トランプ大統領が国防総省の大幅変革を迫ってくるのは確実で、中国、ロシアとの戦闘を睨んだ準備へ焦点が移る。
その結果はいずれわかるが、ひとつ確実なのはトランプが大統領でいる限り確実なものはないということだ。
海外への軍事介入に辟易した有権者の票もあり当選したトランプ大統領は米軍を「帰郷させる」方策の実現の大部分で失敗している。ペンタゴン関係者は米軍はシリア撤退は「ISISの敗北が継続する」状況が明らかになってからと言っており、大統領が撤兵ずみと公言しているのは誤りである。だが多方面の対テロ作戦で米軍は世界各地で活動している。トランプ政権が大国間競合に中心を移す中で、対テロミッションは2020年に縮小となるのか。その場合ペンタゴンにどんな影響が出るのか。.
1月現在ではトランプはアフガニスタン撤退を再度実施したいようだ。ペンタゴン関係者は3千ないし4千名の撤退計画を繰り返している。2月半ばに米国とタリバンで合意形成したとのマーク・エスパー国防長官発表があり、タリバンが7日間停戦を守れば、条件付きで米軍の規模縮小につながり、タリバンとアフガニスタン政府の和平交渉が実現するとある。そのとおりならトランプにアフガン戦争終結に貢献したとの功績が生まれ、アフガニスタンからの完全撤退も実現する。逆に失敗すれば、米軍は同地に残るが、すくなくとも試行しようとしたとの実績は残る。
イランと米国は2019年に対決一歩手前まで進んだが、2020年も年初数週間は同じ状況だった。トランプの「最大限の圧力」構想を押しのけ、イランは米無人機を撃墜し、サウジの石油施設を攻撃し、英船籍タンカーを捕獲したのが昨年夏のことだ。トランプは一度イランへの空爆・サイバー攻撃を命じたが取り消している。だがその後、イランの治安責任者トップ、カセム・ソレイマニ将軍殺害を命じた。イランは弾道ミサイル発射で報復し、米軍兵士100名以上が脳障害を訴えている。緊張は低下しているようだが、イランは相変わらず核兵器開発を抑制する姿勢を示しておらず、2015年核合意を履行していない。トランプ政権が制裁重視を堅持する中、緊張緩和は続くだろうか。
11月の大統領選挙でトランプは民主党候補と直接対決する。国家安全保障が論点となり、世界での米国の指導力のあるべき姿もその一つだ。民主党はまだひとつにまとまっていない。ジョー・バイデン前副大統領は外交問題で実績を誇り、中道の立場だ。バーニー・サンダース上院議員(ヴァーモント)は海外介入に反対し、米国は国内問題に専念すべきとの主張だ。遅れて出馬したマイケル・ブルームバーグは元ニューヨーク市長で富豪メディア王であらゆる予測を覆しかねない。予備選挙で有力となる候補者の視点が11月の本選挙で重要となる。銃規制、気候変動、同盟関係など争点は幅広く、国防予算をどこまで認めるのか、非軍事分野の国務省やUSAID予算を対テロ目的にどう関連付けて米国の影響力を構築するかも論点だ。
一点議論となるのが新設の宇宙軍だ。現時点で組織人員はジェイ・レイモンド大将一名のみである。宇宙軍の存在自体が認知されていない。名称、制服、スター・トレックを思わせる部隊章も同様だ。宇宙軍は本当に必要なのか。議会は認知しており、司令官、予算、ミッションが定まった。今年末までに空軍から6千名が転籍する。ただし、民主党候補者の中に宇宙軍創設に反対していたものがあり、組織廃止を訴えるだろうか。現時点で宇宙軍は失笑の対象でしかない。
空軍に大変化がやってくる年になる。最高位の三名が任期を終える。デイヴィッド・ゴールドフェイン参謀長はすべてをネットワーク化する事業を一貫して進めてきた。今は中国との戦闘が優先事項となっている。次の空軍指導部もコンピュータを優先する空軍力整備に向かうのだろうか。これは賭けで、空軍は今年も旧型機用途廃止の長いリスト(A-10含む)を提示し、節約できる予算をゴールドフェインの提唱するネットワークに活用するとしている。予算さえあればロボット装備の時代になる。この点は別途マーカス・ウェイスガーバーが解説する。 
陸軍にとって大規模戦役に備えることは迅速対応を旨とする治安部隊支援連隊SFABsの即応体制の整備につながる。だが現実は異なる。また予想以上の規模とスピードで部隊が展開している。情報戦の時代にひとつ課題となるのは携帯電話やラップトップコンピュータを持参できないことだ。ベン・ワトソンが陸軍の課題について解説する。
「温故知新」をモットーに海軍観測筋は艦艇の隻数に注目している。多ければ良い、というわけにいかないようだ。海軍上層部から文民上司に艦艇数が不足しているとの訴えが絶えない。355隻整備が目標であることに変わりないが、それだけの予算がないのでペンタゴンは打開策として無人艦艇も含めて良いとしている。2020年の課題として政治の世界で隻数の勘定はやめて他国海軍部隊を上回る規模の整備に注目させることがある。大国間競合が戦闘に即つながるわけではないが、海上交通路や領海など守るべき対象はある。海兵隊は規模に固執していないものの新任の総監は予算確保のため部隊規模縮小を提案しており、大国間競合の時代にそれでいいのか。だが関心を呼ぶのは中央統制から小規模部隊への権限移譲であり、規模の変更であり、組織再編と装備更新で海兵隊を大国間競合の時代にまっさきに現場に駆けつける即応力ある組織に変えようとしていることだ。
各軍での変化への挑戦はすべて大胆なものだ。すべては大国間の競合が近未来、中間、さらに遠い未来のパラダイムとなるとの予測がもとになっている。ただし、全てを実現する前提がひとつある。トランプの11月再選だ。■
この記事は以下から再構成しています。


State of Defense
Introduction by Kevin Baron and Katie Bo Williams