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2016年5月25日水曜日

★F/A-18E/Fスーパーホーネットの機体寿命延長は避けられない課題



シリア空爆など長く続く作戦でスーパーホーネットの酷使が続くとそれだけ機材の消耗となるので、思い切った寿命延長が必要というのがボーイングの主張ですが、本音は新規受注も含め生産ラインの維持を図ることなのでしょう。

Aerospace Daily & Defense Report

Boeing Looks To SLAP Super Hornets Into Shape

May 23, 2016 Michael Fabey | Aerospace Daily & Defense Report

F-18: USN
ST. LOUIS—米海軍がF/A-18 E/Fスーパーホーネットを想定以上に作戦投入する中、ボーイングは機体を全面修理した場合の必要項目、戦闘時間の延長につながる供用期間延長をする場合に必要となる作業の初期検討を開始した。
  1. 同時に国内国外での拡販も念頭に必要な部品の調達も検討し、最終的に生産ラインを2020年代でも稼働させることを期待しているとボーイングでF/A-18とEA-18Gグラウラー事業を担当するダン・ジリアン副社長は述べている。
  2. スーパーホーネットを再活性化し、今後も作戦に投入するためボーイングは寿命評価プログラム(SLAP)と寿命延長プログラム(SLEP)を併用し、現在の機体寿命6,000時間を9,000時間まで延ばしたいとする。
  3. またスーパーホーネットで最も初期に導入され酷使されてきた2機をボーイングが検分し、機構上の問題を抽出するが旧型ホーネットの寿命延長作業の経験を応用できるとジリアンは述べた。
  4. スーパーホーネットでの方針は旧型ホーネットの重整備から生まれたとジリアンは説明してくれた。経年機が第一線を離れることが頻発し、米海軍はスーパーホーネットを想定より多く投入せざるを得なくなっている。
  5. 「この瞬間にもスーパーホーネットの寿命がどんどん減っています」とし、F-35就役の遅れも一層の圧力となっている。
  6. 「スーパーホーネットが空母航空隊の機材構成で当初予想以上に大きな存在になります。長期間で見ればスーパーホーネットは2040年まで空母航空隊の半分を構成することになります。現在は四分の三がスーパーホーネットですが、すでに不足気味です」とジリアンは言う。
  7. 作戦上の負担が機体に加わっており、ボーイングは2009年から解析と技術モデル作りに取り掛かっているとジリアンは述べた。
  8. 上限6千時間に到達する機体が来年にも現れる見込みで、同社技術陣はその際には機体状況を直接見ることができよう。「機体分解で状況を直接観察します」
  9. 初期調査の結果からスーパーホーネット改修は旧型ホーネットより早い段階で開始する可能性があるという。「スーパーホーネットの方が作業開始点では旧型より良好な状態にあるんですが、スーパーホーネットは依然として海軍で最新の機材です。ブロックIIの初期作戦能力獲得は2007年でした。その後製造技術も新しくなりスーパーホーネットにもチタンなど新素材が導入されました。旧型ホーネットの改修では機体を切断していましたが、スーパーホーネットではその必要はないでしょう」
  10. だが「解決が必要な重要箇所は数点あり、とくに操縦翼面は交換あるいは改修が必要でしょうね」とジリアンは認める。
  11. 作業規模も課題となる。ボーイングがSLEP対象とした旧型ホーネットは150機だったが、スーパーホーネットでは568機を想定している。
  12. 懸念されるのが腐食問題で、SLAP検討で使う機材で技術陣はこの問題の深刻度を把握することになる。「対象機材は戦闘に投入され続け、空母運用も長く腐食が進んでいておかしくない状況です」とジリアンはし、海軍機修理で腐食箇所が見つかるのはよくあることだが、機体ごとに状況は異なるという。
  13. 「腐食現象の基準をどこで設定するかが課題です。80%の解決で十分なのか。これが一番大きな課題です」■


2015年10月19日月曜日

★★米海軍>スーパーホーネットにあと10年頼らざるをえない苦しい事情



F-35開発配備の遅れが米海軍航空戦力にもしわ寄せを発生させています。F/A-XXが登場するのは早くて2020年代末と思われますので、当面米海軍はスーパーホーネットに頼らざるを得ないわけですね。前回のハドソン研究所の指摘のように任務特化した機材を本来整備するべきなのでしょうが、予算不足の中そうもいかず虎の子のスーパーホーネットを給油機に使うなど苦しいやりくりが当面続きそうです。

Boeing Offers New, Rebuilt, Upgraded Super Hornets To U.S. Navy

Oct 13, 2015 Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology

ボーイングは米海軍にF/A-18E/Fスーパーホーネットの生産を継続することで予想される戦闘爆撃機の機数不足を補う提案をしている。これは2030年代中頃以降となる新型機の配備までのつなぎ措置だ。
  1. スーパーホーネットの初期機体は2017年にも6千時間の設計寿命に達する。残る機材は年間40機ずつのペースで寿命に到達するが、海軍が導入するF-35Cは毎年20機程度想定でしかも実際の調達機数が予定より少なくなる可能性もある。
  2. このギャップを埋めるべく、ボーイングは供用年数が高いスーパーホーネットに寿命延長プログラム(SLEP)を実施し9,000時間まで上限を広げるべられないか機体点検をしている。だが海軍航空本部長マイク・シューメーカー中将は8月にSLEPだけで戦力を維持するのは「相当の難題」と発言している。新造のF/A-18がないと、再製済みホーネットが2030年までに戦闘爆撃機材の6割にまで上昇すると海軍の文書は解説している。業界筋によればSLEPでは十分ではないという。「確かに助けになるが、解決策ではない」
  3. そこで「全体的かつ統合された」解決策としてSLEP、新規生産、改修を組み合わせるボーイングでF/A-18E/F およびEA-18Gを統括するダン・ギリアン副社長はいう。
  4. ボーイングの構想はF-35Cの調達数が削減されない前提でスーパーホーネット生産を2020年代まで継続することだ。SLEPおよび新規生産で性能改修効果を空母部隊で発揮するチャンスが増える。一方で初期投資の見返り効果が増える。同社はもうAdvanced Super Hornetの名称こそ使っていないが、海軍に「ホーネット性能向上策」を提言しており、各種改修として機体一体型燃料タンク、エンジン改良やコックピットのワイドスクリーン化を提示している。
  5. 同社は生産ペースを減速中で月産2機になっているが現在の機体価格を維持できる。現在の受注分は2017年までラインを維持することが可能だが、議会は2016年度予算でスーパーホーネット12機分の追加予算を認めた。またスーパーホーネットの輸出商談も「順調に進んでいる」とギリアンは言う。別の業界筋によればクウェートと24から30機の商談があり、近くまとまる見込みだという。
  6. この受注でラインは2019年まで維持できるとギリアンは言う。ボーイングはデンマークでの採用を狙い、ベルギー、フィンランドでも入札の予定で、もしカナダが10月19日の国政選挙の結果次第では選定候補として同機に注目するのではと期待を示す。
  7. スーパーホーネットのSEPではボーイングは海軍とともに旧型のF/A-18A-D で遭遇した問題を回避できると期待する。海軍・海兵隊の旧型機の半分近くが「稼働不可能」状態にあり、海軍の機体整備施設(フロリダ州ジャクソンビルとサンディエゴ近郊のノースアイランド)にほぼ同数が保管されている。あるいはSLEPを待つ状態だ。
  8. 施設はSLEPで一時的に満員となるが、もともとSLEP実施は想定していない施設だとボーイングは指摘し、もう一つ大問題である腐食については機体ごとに状況がことなり、SLEPに持ち込んで初めて露呈することも多々あるという。その場合は施設から必要な部品を発注し、その間機体は部品到着を待つことになる。
  9. だがSLEP対象機数が多く、標準作業が1年間かかることを考えると機体寿命をのばすだけでは解決にならないことがわかる。海軍の整備構想では戦闘爆撃機を40飛行隊にし、10隻の空母に各4隊を配置する。だが戦闘機不足は現実の問題で、ボーイングによればこの問題が露呈していないのは空母が当面9隻になるからだ。新造USSジェラルド・R・フォードが次に就航するまではこの体制で、他の空母も通常より大修理保全期間を長く取っている。ただし空母部隊の規模が再び拡大傾向になれば、戦闘機不足は今より深刻になる。スーパーホーネットの追加調達により不足数を補ってきたが、根本的な解決策ではない。
  10. この問題が深刻になった原因がF-35共用打撃戦闘機開発が2010年に遅れ、海軍仕様のF-35Cでも遅延が表面化したためだ。2016年から20年にかけての調達数が16から20機減っている。また調達がピークになるのは2020年だが、12機しか導入しない。
  11. そこでF-35を増やして戦闘機ギャップを埋めるとF/A-18より調達費用が80%増え、運用コストも増加するとボーイングは説明しており、予算拡大ができない状況では政府が考える楽観的な数字は非現実的だとする。F-35Cの年間調達規模も12機が上限となる可能性があるが、想定では20機だ。シューメーカー中将も「予算により調達数が12から20機以内になる可能性がある」と認めている。
  12. 海軍航空戦力は他の海軍調達事業の犠牲になってきたと指摘する企業幹部がいる。海軍長官レイ・メイバスは建艦予算を確保しており、海兵隊もF-35Bおよびベル・ボーイングV-22調達を死守している。2016年度予算案では海兵隊以外の航空機は記録上最低の25機になっていた。議会がこの上乗せを認めている。
  13. これ以外の緩和策も提案されている。たとえば仮想体験含む訓練の多用、マジック・カーペット着艦誘導システムで着艦訓練を削減する等あるが、ボーイングの分析では問題の根本的解決策に直結しないという。■