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2025年3月2日日曜日

これが機密扱いのAIM-260ミサイルだ、米空軍が確認(The War Zone)―AMRAAMに変わり今後主役の対空ミサイルとなる。射程はますます長距離化していく

 The U.S. Air Force has confirmed that a recently released rendering from the AIM-260A does indeed reflect the actual design of what is also known as the Joint Advanced Tactical Missile (JATM).  

USN




国防総省はAIM-260について口を閉ざしてきた。AIM-260はAIM-120と同じサイズながら、AIM-120よりはるかに長い射程距離を持つミサイルだ

空軍は、最近公開されたAIM-260Aのレンダリングが、Joint Advanced Tactical Missile(JATM)の実際の設計を反映していることを確認した。JATMの詳細は極秘だが最終的に AIM-120 Advanced Medium-Range Air-to-Air Missile (AMRAAM)に取って代わると予想されている。

新しいAIM-260Aのレンダリングは、米海軍が今月初めにオンラインに掲載した未公開の業界ブリーフィングに含まれていた。このブリーフィングは、海軍航空システム本部(NAVAIR)の無人航空・打撃兵器プログラムエグゼクティブオフィス(PEO U&W)の広範な傘下にあるプロジェクトの概要を説明するものである。JATM は、より具体的には PEO U&W の空対空ミサイル室(PMA-259)の管轄下にある。 昨年正式に発表されたばかりのスタンダード・ミサイル-6(SM-6)のAIM-174B空中発射バージョンや、AIM-120、AIM-9サイドワインダー、AIM-7/RIM-7スパロー・ミサイルもPMA-259のポートフォリオである。

AIM-260Aのレンダリングを含むPEO U&Wブリーフィングのスライド全文。 米海軍

名前からも明らかなように、JATMは空軍が直接関与する共同プログラムでもある。AIM-260Aのレンダリングについての詳細と、ミサイルの開発に関するより一般的な最新情報を求められたNAVAIRはTWZに空軍に照会するよう告げた。

「これはAIM-260Aのレンダリングです。 「より高解像度のレンダリングは公開されていない。プログラムの具体的なプログラムおよび技術的な詳細は機密」とNAVAIRは付け加えた。「JATMのマイルストーンと能力は機密扱い」。

2022年、マーク・ケリー空軍大将(当時、航空戦闘司令部(ACC)トップ)も下に見える新しいステルスセンサーポッドと降下タンクを備えたアップグレードされたF-22ラプターのアートワークを共有した。そのうちの一機は、現在はJATMだと確定している当時未知のミサイルを発射している。 少なくとももう一つの公式AIM-260Aレンダリングが以前に登場しており、これもPEO U&Wブリーフィングで見られたデザインと一致している。

マーク・ケリー米空軍大将提供

3点のAIM-260Aのレンダリングはすべて、尾翼に4つのフィンがあるだけの、高速かつ低ドラッグに最適化された同じコアミサイル設計を示している。 比較のため既存のAIM-120は、4つの尾翼とそのボディの真ん中に沿って別の4つを持つ。

現在公開中のAIM-260Aのレンダリングには、ミサイル本体の前端に沿ったコンフォーマルアンテナと思われるものの数や位置など、細かいディテールの違いがある。 PEO U&Wのブリーフィングに掲載されたJATMの最新の姿には、AMRAAMに搭載されているものより長いロケットモーターを示すマーキングもある。米軍標準の弾薬マーキングでは、茶色帯は固体燃料ロケットのような低次火薬の存在を示す。ミサイルの場合、一対の茶色のバンドは通常、ロケットモーターが本体内のどこで始まり、どこで終わるかを反映する。黄色帯は、弾頭に使用される高火薬の位置を示す。不活性ロケットモーターや弾頭を搭載した訓練用ミサイルには、代わりに青いバンドが付けられている。

AIM-260Aのレンダリング画像(上)と実物のAIM-120ミサイル(下)を並べて比較。 AIM-260Aの茶色の帯の間の距離は、AIM-120で見られるものと比較して、ミサイルの全長に占める割合が著しく大きい。 米海軍/米空軍

新型ミサイルAIM-260Aを大型化すせず、AIM-120を上回る大幅な航続距離と速度を与えるには、推進剤を高充填した先進的なロケットモーターが有効であると考えられてきた。JATMの主な要件として知られているのは、F-22やF-35統合打撃戦闘機のようなステルス戦闘機の内部ベイに収まるようにするため、AMRAAMと同じ一般的なフォームファクターを持つ必要があることだ。乗員付き航空機に加えて、AIM-260Aは、空軍の共同戦闘機(CCA)プログラムの下で開発中の将来のステルス無人機を武装させることが期待されている。

NAVAIRの海軍航空戦センター兵器部門(NAWCAD)による2023年の注目すべき成果を詳述したファクトシートによると、「次世代高負荷質量プロジェクトチームは、技術を成熟させ、短距離およびタイムクリティカルなミッションのための内側境界を維持しながら、武器の範囲を最大1.5倍まで増加させることができる将来のミッションモジュラー推進システムの開発の種をまいた」。

PMA-259は近年、AIM-9Xサイドワインダーの改良ブロックIIIバージョンに向けた作業の一環として、同様に高搭載質量ロケットモーターに注目している。昨年可決・署名された2025会計年度の年次国防政策法案、すなわち国防権限法(NDAA)では、議会は空軍と海軍に対し、AIM-9XとAIM-120の射程延長型または派生型が、将来の空対空ミサイルのニーズを満たすのに役立つか検討を要求している。

AIM-260Aのロケットモーターも、飛行範囲全体でエナジーを保持するデュアルパルス設計になる可能性が高く、射程をさらに伸ばし、終盤の機動性を飛躍的に向上させる。推力偏向機能もまた、追加の制御面がない場合にミサイルに敏捷性を十分に与えるために必要だろう。

AIM-260Aのレンダリングが完全に正確であることが証明されれば、このミサイルは、着弾の威力で目標を破壊することを目的としたヒット・トゥ・キル設計ではなく、高爆発弾頭を搭載することになる。同時に、AIM-260AのロケットモーターがAIM-120のものより長くても、2つのミサイルのサイズがほぼ同じなら、JATM内部の他のコンポーネントのためのスペースが減ることになる。その結果、JATMの弾頭は小型化されるが、より少ない質量で適切な破壊効果を生み出す設計の高度な弾頭となる可能性がある。 AGM-88G改良型対放射線誘導弾(AARGM-ER)でも、先行するAGM-88E AARGMと比較して、ほぼ同様の内部空間の再配置が確認されている。

以前公開されたAGM-88G AARGM-ERの内部構成を示すブリーフィングスライド。 USN

AIM-260Aの能力に関する詳細はまだ限られている。 アクティブ電子走査アレイレーダー(AESA)シーカーの可能性が高い。マルチモード・シーカー能力は、画像赤外線とパッシブ無線周波数(RF)誘導能力を持つ可能性があり、拡大し続ける対策エコシステムに直面して非常に貴重なものになる可能性がある。しかし、この機能が現在搭載されているかはわからない。高度なネットワーキング機能は、ミサイルがサードパーティのソースから追加のターゲット情報を取得できるようにする重要な機能である。これは、発射プラットフォーム自身のセンサー範囲外の目標に対処するために特に重要であり、ミサイルを発射する航空機、特にステルス性の高い航空機がレーダーをオンにする必要がなくなり、結果として探知に対する脆弱性が増すのを避けることができる。ネットワーク化された複数のJATMは、協力的に交戦することもできるかもしれない。

本誌は以前こう書いていた。「米軍は過去に、長距離化する中国の空対空ミサイルへの懸念が、AIM-260に取り組む重要な原動力になっていると明言している。JATMはAIM-120Dに比べ能力が大幅に向上する。より優れた終局エナジー状態とマルチモード・シーカーは、その比較能力をさらに高めるだろう。このように、JATMは長距離空対空兵器としてAIM-120の上位に位置する。これらすべての兵器のネットワーク機能は、サードパーティターゲティングや、その機能セットに付随するあらゆる狡猾な戦術を活用する能力も与えてくれる」。

最初のJATMがいつ米軍で実戦化されるかも不明だ。 2019年にこの計画が初めて公になったとき、目標は2022年にミサイルの実戦配備を開始することだった。しかし、実弾射撃を含むミサイルの積極的なテストや、就役を支援するその他の作業にもかかわらず、公にそれが行われたことを示す兆候はない。AIM-260Aの実物の画像は現在までに出てきていない。

現在確実に分かっているのは、最近発表された海軍のブリーフィングのレンダリングや、過去に統合されたものが、AIM-260A JATMのデザインを示しているということだけだ。■

This Is What The Classified AIM-260 Missile Actually Looks Like, Air Force Confirms

The Pentagon has been very tight-lipped about the AIM-260, a missile with far greater range than the AIM-120 while maintaining the same size.

Joseph Trevithick

https://www.twz.com/air/this-is-what-the-classified-aim-260-missile-actually-looks-like-air-force-confirms


2023年12月5日火曜日

中国の狙いは西側支援機材を空から排除することなのか。大型空対空ミサイルPL-17の写真をPLAAFがあえて公開した意図を理解する必要がある。


中国は戦略思考で色々悪いことを企んでいますが、そのひとつが脆弱な米軍の支援機材の給油機などを早期に排除することです。そのため超大型の空対空ミサイルを開発しています。The War Zoneがこのたび公表されたJ-16戦闘機が搭載した大型ミサイルについて考察していますのでご紹介します。


Chinese Flanker photographed with PL-17 very long-range air-to-air missile

PLAAF


中国J-16戦闘機に巨大なPL-17空対空ミサイルの搭載が目撃された


対空ミサイルを装備したJ-16フランカー派生機の写真を中国が公開した。J-16の4機が頭上でブレイクするパターンで最も印象的な装備は、巨大なPL-17(PL-XXまたはPL-20とも呼ばれる)長距離空対空ミサイルだ。

 画像は、各種の空対空ミサイルを搭載した4機のジェット機の編隊で、そのうち2機が特に印象的だ。問題の戦闘機はPL-10を4基、PL-12を1基、PL-15を4基、そして大型のPL-17を1基搭載している。この装備は短距離から超長距離の交戦範囲に及び、PL-17は前例のないリーチを提供する。


 下の写真のキャプションにはこうある: 「2023年11月25日、実戦訓練中に編隊を組んで飛行するPLA空軍航空旅団所属の戦闘機。(撮影:Zhao Yutong)"。


<em>PLAAF</em>PLAAF


 我々がPL-17と呼ばれるミサイルを初めて見たのは、非公式には7年前だった。それ以来、このミサイルに対する我々の分析は変わっていない。中国の空対空ミサイルに関する最新のガイドでは、PL-17について次のように述べている:

 PL-15はPL-12の後継として広く見られているが、現在開発中の別のAAMプログラムもある。

 通常、西側諸国ではPL-XXとして知られており、おそらくタンカーや空中早期警戒機のような高価値資産を主な標的とする超長距離AAMと考えられている。PL-17やPL-20という呼称もあるが、未確認のままである。

 このプロジェクトは、PL-12のラムジェットエンジン版、あるいは同じくラムジェットモーターを搭載したライバルのPL-21の計画に取って代わった可能性が高い。その代わりに選ばれた新兵器はデュアルパルスロケットモーターを採用した。

 こうして誕生したミサイルは、PL-15よりもかなり長く、幅も広く、全長はほぼ20フィート(約1.5メートル)。操縦には4つの小さな尾翼と推力方向制御の組み合わせで、航続距離186マイル以上を持ち、最高速度は少なくともマッハ4と報告されている。誘導は、双方向データリンクとAESAシーカーの組み合わせによって達成されると考えられており、電子的対抗措置に対し高い耐性を持つと言われる。このような長距離を伴うため、ほとんどの交戦では、味方の空中早期警戒機、目標に近い他の航空機、地上のレーダー、あるいは人工衛星などのスタンドオフ・アセットから提供される照準データが使用されると予想される。

 ミサイルの機首側面にある光学窓は、追加の赤外線シーカーの可能性がある。このような大型AAMのコンセプトに採用されても不思議ではない。

 PL-XXのサイズは、少なくとも今のところ、外部搭載に制限されていることを意味する。この武器はJ-16で初めて確認され、2016年11月には同型機から発射に成功している。AAMは他のフランカー・と互換性がある可能性があり、J-20に外部搭載される可能性もある。しかし、この兵器の現状はやや不透明で、2020年現在、テスト中のようだが、正式な就役は今のところ確認されていない。

 このミサイルは、他の中国の遠距離発射型空対空ミサイルの開発とともに、米軍に大きな懸念材料となっている。このような懸念から、米軍は他の長距離空対空ミサイルの構想の中でも、いまだ高度に機密化されているAIM-260統合高機能戦術ミサイルの迅速な実戦配備に取り組んでいる。

 大型ミサイルを搭載したJ-16が写った写真は、運用可能か、運用に近いことを示している。同時に、画像は中国軍が投稿したものであり、西側に見られることを意図している。そのため、情報戦の側面も否定できない。■



Massive PL-17 Air-To-Air Missile Seen On Chinese J-16 Fighters


BYTYLER ROGOWAY|PUBLISHED DEC 2, 2023 2:13 PM EST

THE WAR ZONE


 

2021年5月20日木曜日

F-15EXは「兵装大量搭載トラック」となり、新型超長距離AAMも搭載可能となる。中国、ロシアが開発中の長距離AAMへの対抗を急ぐ。

THE WAR ZONE

F-15EX LREW

U.S. AIR FORCE / U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE VIA FLIGHTGLOBAL.COM

 

空軍の新型長距離空対空ミサイル搭載にF-15EXイーグルII戦闘機が最有力候補になった。米軍の空対空ミサイルとして長距離交戦兵器Long Range Engagement Weapon, LREWが数年前に登場したものの(少なくとも一般の目から)姿を消して以来の新型だ。

新型ミサイルの詳細を初めて伝えたのはAir Force Magazineで、空軍から2022年度予算要求用の内部資料を入手した。空軍は400機もの旧型機を退役させ、300機近くの新型機を導入しようとしており、次世代制空機材(NGAD)のほか、F-16後継機の「完全新型」多用途戦闘機(MR-X)が登場する。

U.S. AIR FORCE

F-35A がAIM-120 AMRAAM をメキシコ湾上空で試射した。空軍はさらなる長距離ミサイルを話題にしている

 

興味深いことに同資料では無人の「大型...空対空兵器をF-15EXに搭載可能」とあり、イーグルIIを「大型兵装トラック」と評している。これまでF-15EXで運用する最大の空対空兵器としては標準型AIM-120高性能中距離空対空ミサイルAMRAAMがあった。空軍は同ミサイルの性能を引き上げてきたが、明らかに開発の余地がなくなりつつある。

F-15EXの兵装搭載量の大きさはかねてから知られているが、極超音速ミサイル含む空対地兵装の想定だった。AGM-183A空中発射迅速反応兵器ARRWがF-15EX搭載になるといわれている。

U.S. AIR FORCE

AGM-183A ARRW のテスト用がB-52H爆撃機にに搭載された。F-15EXでもこれを搭載する案がある。

 

そこで、F-15EXに新たな兵装が搭載され、地上のみならず空中の敵を撃破することになる。いずれの場合でもF-15EXが飛ぶ空域は制空権確保が困難ではない、あるいは敵の接近阻止領域拒否の圏外となるはずだ。

ここで興味を引くのは空軍が海軍と共同で新型AAM開発にすでに着手していることが判明しており、AIM-120AMRAAMを超える射程を実現するのがAIM-260はAMRAAMと同程度の寸法になるといわれてきた。F-22ラプターに最初に搭載する。AIM-260がAMRAAMと同程度の寸法ならF-35ライトニングIIの機内兵装庫にも収まるし、今後登場するステルス戦闘機でも同様だろう。AIM-260は現在開発中だが詳細情報は非公開だ。

AIM-260以外にこれまでAGM-88G高性能対レーダー誘導ミサイル射程延長版AARGM-ERがあり、これはレーダー施設を攻撃し対地攻撃も可能なミサイルだ。これは長距離対応AAMに改装するのに適している。

U.S. NAVY

F/A-18EがAGM-88G AARGM試作型を左主翼下に搭載した

 

さらに新型兵器を「大型」としていることから空軍は別の存在について触れているのではないかとAir Force Magazineは推察しており、中国のPL-15AAMに対抗しようというのだろう。

PL-15も謎の兵器だ。J-20ステルス戦闘機の主要兵装だということ、AIM-120DAMRAAMに匹敵することは判明している。ただし、これまで射程が長距離で、制御可能なラムジェット推進方式を採用していることはわかっている。PL-15がより一般的なデュアルパルスモーターを採用しているものの、全般的な性能と搭載するアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)方式のレーダーは米国および同盟国側に課題となる。

CHINESE INTERNET

J-20の機内にダミーのPL-15ミサイル4本が見える。

 

一方で中国は超長距離射程AAMを開発中で、J-16フランカー多用途戦闘機の主翼下に搭載した写真が浮上している。画像から全長約18フィートとされ、AMRAAMは12フィートだ。 The War Zoneでは同ミサイルは空中商機警戒機他の支援機材を攻撃する想定と推察してきた。

こうした中国製兵器は開発段階のまま数年が経過しており、ロシアも同様でAMRAAMの絶対的優位が脅かされつつある。昨年は超長距離射程のR-37M(AA-13アックスヘッド)をSu-35Sフランカーからの初の発射に成功し、R-77(AA-12アッダー)の射程拡大版にラムジェットが採用され、Su-57フェロンステルス戦闘機でテストが始まっている。

RUSSIAN MINISTRY OF DEFENSE SCREENCAP

ロシアの Su-35SがR-37M ミサイルを発射した

 

こうした中国とロシアの新型ミサイルの存在はかねてから知られており、R-37MはMiG-31フォックスハウンド迎撃機での運用を2011年に行っている。ここからこちら側はLREWを想起させられるが、米空軍も超長距離AAMで米海軍のAIM-54フィーニクスが2004年に廃止となって以来の性能上の穴を埋めようとしていた。

NASA/TOM TSCHIDA

NASA所属のF-15Bに不活性フィーニクスミサイルが搭載され、極超音速飛翔のデータ収集に使われた

2017年の国防認可法によりペンタゴン予算書類では翌年LREWに言及し、「今後登場する技術として開発を進める」とあった。

その時点で The War ZoneはLREWについて次のように伝えていた。

同事業はコンセプト、技術、キルチェーン構造、基本要求内容を詰めるべく始まっており、新型長距離空対空ミサイルあるいはミサイルのファミリー構造の実現を目指す。公式には同事業は「米国の航空優勢の維持」が目的だ

LREWのコンセプト図では二段ミサイルでF-22から発射するとある。二段式にしたのは極長距離ミサイルを迅速に実現するための選択だろう。ただラプターの機内兵装庫に収まるサイズなのかが疑問だ。

U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE VIA FLIGHTGLOBAL.COM

空軍公表の想像図で゙F-22が二段式LREWを発射している。

 

このコンセプトは多分に画像としての効果を狙ったものだろうが、直近の空軍の発言ではサイズが大きすぎることは明らかだ。LREWが実現してもF-22の機内兵装庫には入らないのではないか。そのため、新型ミサイルはLREWとは別の装備品となるのか、あるいはこの別装備品が別の型式の兵装に変身しているのか、いずれにせよ当初想定より大型化しているはずだ。

さらにLREWの存在が初めて判明した時点で、F-15を「兵装トラック」に使う構想があり、比較的安全な地点からステルス戦闘機部隊が発信する標的情報をデータリンクで得て長距離ミサイルを発射する構想が注目を浴びた。F-15から発射されるミサイルには標的情報の更新をステルス機から受ける。この構想ではミサイル発射をステルス機から行わなくてもよいことになる。

VIKING AERO IMAGES

米空軍向けF-15EX の一号機

 

空軍作成の予算関連資料からさらにわかることがある。新型ミサイルの用途だ。資料では「あらゆる面での残存性、高速度、高性能兵器、航続距離の延長」の語が見える。また作戦構想では「一時的な機会の窓」が「高度な敵脅威環境」で実現するとある。ここから想像できるのは超長射程AAMを遠方から発射し、ステルス機含む各種手段で飛翔を管制し、一見堅固なA2/AD体制に隙間を開ける狙いがある。たとえば台湾をめぐる交戦でこれが試されるはずだ。

F-15EX以外にはB-21レイダーステルス爆撃機でも新型ミサイルが運用できる。2019年にスコット・プレウス少将(当時太平洋空軍で航空cyber作戦部長)が「B-21では空対空戦能力も実現可能」とし、「各種システムを使い、自機を防御してステルス性を活かす」と発言していた。

とはいえ、F-15EXで進展が急速に進む中で、空軍がめざす次世代超長距離AAMのさらなる詳細が判明するのにさほど待たなくてもすむのではないか。新型ミサイルがどんな姿になろうと、中国やロシアのミサイル開発が続く中、空軍には喉から手が出るほど必要な攻撃手段の追加になるはずだ。■

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


F-15EX To Carry New Oversized Air-To-Air Missile

The disclosure of the mysterious weapon reflects U.S. plans to challenge China’s long-range missile developments.

BY THOMAS NEWDICK MAY 17, 2021

 


 

2016年2月21日日曜日

★★シンガポール航空ショーにて>戦闘機の新潮流に乗り遅れるな



これを見ると日米の第一線配備戦闘機は相当遅れている気がします。特に日本の場合は深刻では。攻撃、防御ともにバランスが必要ですが、中でもジャミングなど機体防御の能力が決定的に足りないのではないかと思います。相当先を行かれている感じがしますね。米空軍の場合は言ってみれば唯我独尊で世界の動向と無関係の世界に安住しかつF-35に相当の予算を取られたことが痛いのでしょう。なんといってもF-15/F-16コンビには今後20年近くがんばってもらわねばなりませんので改修へ相当のの投資が必要です。だったらヨーロッパの新型機材を導入したほうが安上がりという計算も成り立つでしょう。
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New World Ordnance At Singapore Airshow

Feb 17, 2016 Bill Sweetman | ShowNews

 
シンガポールのF-15SGは攻撃用兵装、レーダー、電子防御で先を行く機体だ。

これからのアジアでの空対空戦の姿をシンガポール航空ショーの航空展示・地上展示で垣間見ることができる。マレーシア空軍所属のSu-30MKMの姿は同機がSu-35S登場までは大きな存在であったことを思い出させてくれる。Su-35Sはまもなくアジアにも登場するだろう。ラファールが戻ってきた。地上ではシンガポール空軍のF-15SGとF-16はおなじみの機体だが、搭載性能は改めてよく観察する価値がある。
  1. ロッキード・マーティンのF-35共用打撃戦闘機は非ステルス機に対し6対1の航空優勢があるとの触れ込みだが、米空軍が額面通り信じているのなら供用開始後35年のF-15Cで性能改修に何十億ドルも投入しないはずだ。
  2. アジア太平洋でステルス機が大きな存在だが、スホイ各機を見れば戦闘機に二つの分野で整備が必要なのがわかる。電子戦と搭載兵器だ。
  3. 2012年10月にUSSジョージ・ワシントンがマレーシアに寄港し、スーパーホーネットとSu-30MKMが編隊飛行している。スホイの翼端の円筒形のポッドはロシア製KNIRTI SAP-518ジャミングシステムと判明した。SAP-518は高出力であり最新のデジタル無線周波数メモリー(DRFM)機能を利用している。おそらくAIM-120C高性能中距離空対空(AMRAAM)ミサイルを妨害できるはずだ。
  4. DRFM方式ジャミングが普及する中、ロシアはDRFMチップ各種を開発し米国はこれまで軽視してきたEW防御システムにあわてて注目している。スーパーホーネットが搭載するALQ-214を除くと戦闘機用の新型ジャマーは1980年代から開発されていない。
  5. イスラエル、シンガポールその他はこのギャップに以前から気付いており、だからこそシンガポール空軍所属の機体の表面には突出物が多数あり検分が必要だ。F-16Dにはエルビット子会社のエリスラElisraが開発した防御用装置が搭載されている。F-15SGにはデジタル電子戦装備があり、これもイスラエル製だといわれる。
  6. F-15SGにはジャミングに強いアクティブ電子スキャン方式アレイ(AESA)レーダーが搭載され、敵のEWが強力なら赤外線探知追跡 (IRST) を使えばよい。米空軍は今になってAESA、IRST、新型EW装置の予算をF-15用に確保しようとしている。ラファールの展示もダッソー、Saab、タイフーン提携企業がEW装備の重要性を最初から認識していることを思い起こさせる。
  7. スホイ戦闘機の機動性も課題だ。同機はAmrramでも簡単に捕捉撃破できない相手だ。Amraamの威力は距離が延びると劇的に低下するし、相手が機動性に富むと対応が困難だ。このためMBDAメテオミサイルが開発されている。
  8. ヨーロッパ製カナード翼付き戦闘機にはすべてメテオが搭載され、グリペンが先陣を切って実戦化される。AAM分野ではラファエルがI-Derby長距離ミサイルを開発中でAmraamに代わるDerbyミサイルの系列だ。またMBDAには高性能単距離AAMがある。新型Amraamでは地上発射、海上発射ミサイルと共通部品を採用してコストを下げるラファエルと同じ方法が採用されている。
  9. 米国のAAM開発は混乱をきたしているようだ。Amraamで制約になっているのはモーターの大きさでもとをたどるとF-16の主翼に搭載する設定のためだ。同様にAIM-9Xも旧型サイドワインダーのモーターを流用している。空軍はAmraam、海軍はAIM-9Xを推しており、国防高等研究プロジェクト庁も別案件を開発中だが、ばらばらで、一方でブラックの世界で別の進展があるようだ。
  10. その結果、長距離対応AIM-9XブロックIIIや統合両用モード航空優勢ミサイル事業などが現れては消えていったし、研究には最低限の予算しかついていない。レイセオンはこの一月に機体防御用ミサイル二種の開発契約を14百万ドルで取得している。だがAIM-120Dの先が見えない。ブラック世界のミサイルは同盟国には供与されず、米軍機に海外製ミサイルの搭載もない。2017年予算でMBDAのブリムストーンをスーパーホーネットで運用試験するため大変な議会対策が必要だった。
  11. F-16運用国は機体性能改修後もこういった制約を受け入れざるを得ないが、中期的にはEWや兵装の見地からヨーロッパ製機材が魅力的に映る可能性があり、センサー融合機能、IRST、機内搭載EW装備、広い兵装搭載の選択幅が訴求力を持つだろう。■