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2025年1月18日土曜日

トランプ政権が火曜日にクアッド外相会議を招集(POLITICO)―石破政権は米国以外にも軸足を置く姿勢を隠しておらず、北京を先に訪問してしまった外相はDCでつらい立場になるかもしれません

 Donald Trump speaks at a campaign rally.

There’s been a growing nervousness in Washington in recent months that Quad partners’ concerns about the incoming Trump administration’s foreign policy settings have prompted them to try to reduce tensions with Beijing. | Anna Moneymaker/Getty Images



インド、日本、オーストラリアの外相が早期に集まることで、孤立主義的な「アメリカ第一主義」の外交政策への懸念が和らぐ可能性がある


ここ数カ月、ワシントンでは、トランプ次期政権の外交政策設定に対するクアッドパートナーが、北京との緊張を緩和しようとするよう促しているとの神経質な見方が強まっている。

 計画に詳しい4人の関係者によると、トランプ政権の最初の外交政策として、火曜日にクアッド同盟(日本、インド、オーストラリア)の外相との会談が開かれる。

 会談は、バイデンとトランプの世界観が大きく異なるにもかかわらず、インド太平洋で影響力を強める中国に対抗するため、ジョー・バイデン前大統領が提唱した地域パートナーシップの強化に早くから重点を置いていることを示している。

 4人の人物(1人は米政府関係者)によれば、会談開催が決定し、予定されたという。外交問題について公に話す権限がないため、全員が匿名を許可された。

 国務長官に指名されたマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)が予想通り月曜日に承認されれば、会談の指揮を執る見込みだ。もしルビオが火曜日までに承認されなければ、誰がクアッド会議を取り仕切るかは不明だ。

 バイデンが中国へのカウンターバランスとしてインド太平洋における米国の同盟国やパートナーの必要性を強調しているのに対し、トランプは関税の脅威をめぐって一部同盟国と敵対し、米国との経済的不均衡を叱責することに重点を置いている。

 オーストラリアのペニー・ウォン外相、インドのスブラマニャム・ジャイシャンカール外相、日本の岩屋毅外相が就任式に出席し、翌日のトランプ政権高官との会談に臨む。

 この会談は、「インド太平洋に対するアメリカのコミットメントは新政権でも変わらない」ということを示すためのものだと、関係者は語った。

 会談で、安全保障と経済協力に関する新たな協定が結ばれる可能性がある、と同関係者は付け加えた。トランプ大統領の "アメリカ・ファースト"のアジェンダが、ワシントンがインド太平洋で築いてきた伝統的な同盟やパートナーシップの構造を脇に追いやってしまうのではないかという懸念の中で、安心感が生まれれば歓迎されるだろう。

 このような同盟関係には、イギリス、オーストラリアとの原子力潜水艦および技術協定であるAUKUSや、日本と韓国、日本とフィリピンとの2つの三国同盟も含まれる。

 トランプ大統領は、中国の侵略から台湾を守る意思に懐疑的な見方を示し、グリーンランドやパナマ運河の取得を口にして米国同盟国を動揺させるなど、外交政策の方向性でる懸念を高めている。

 ルビオと次期国家安全保障顧問のマイク・ウォルツ下院議員(フロリダ州選出)はともに著名な中国タカ派で、退任したバイデン政権が北京に対抗するため十分なことをしていないと非難している。そして両氏は、バイデン前政権が開始したパートナーシップと同盟のネットワークを強化することへは支持を表明している。■


Trump administration to convene Quad foreign ministers on Tuesday

The early gathering of foreign ministers from India, Japan and Australia could ease fears of an isolationist “America First” foreign policy.

By Phelim Kine, Robbie Gramer and Daniel Lippman

01/17/2025 12:03 PM EST


https://www.politico.com/news/2025/01/17/trump-quad-foreign-ministers-00198977


2024年9月21日土曜日

クアッドで米国と同盟国が中国に対抗するため考慮すべき4つの課題(The Daily Signal)―この提言の通りの首脳会議成果が出てくるか注目

 



週末、オーストラリア、インド、日本、米国の首脳がデラウェア州ウィルミントンに集結し、4回目の「クアッド首脳会談」が開催される。南シナ海や中印国境での緊張が高まり続ける中、クアッドで優先すべき4つの項目は以下の通りである。

海洋安全保障

南シナ海における中国の行動は、インド太平洋地域の安定にとって最も危険な脅威のひとつである。8月だけでも、中国の船舶はフィリピンの排他的経済水域内のサビナ礁付近で、4隻の異なるフィリピン軍の艦船に衝突した。また、中国の航空機はフィリピン空軍の航空機近くで危険な飛行操作を行った。

中国が誤算したり、無理し過ぎた場合、フィリピンが米国の条約同盟国であることを踏まえれば、米国(そして潜在的には日本)の関与を招くような紛争のリスクがある。クワッドは、緊張を高めたり、一方的に現状を変更しようとする中国を抑止することについて、強い関心を共有している。

海洋領域認識は、クアッドにとって協力の拡大が期待される分野であり、今後さらに強化されるべきだ。インド太平洋全域における中国船による違法、無報告、無規制の漁業に対抗するためには、さらなる取り組みが必要である。

主権

南シナ海における中国の行動に加え、同国は領土問題をめぐり、クアッドのパートナー諸国と小競り合いを続け、その主権と領土保全を侵害している。近年、中国は、係争中の尖閣諸島をめぐり日本と、また、係争中の実効支配線沿いのインドと、時には文字通りの戦いを繰り広げている。

中国が日本の沖縄に対する主権に異議を唱えている。これは、沖縄が琉球王国として知られていた時代を指す「琉球研究センター」を設立する計画を大連海事大学が発表したことによる。これにより、中国が米軍基地や軍人が駐留する沖縄に関連する歴史的請求や記録を強要するのではないかという懸念が生じている。

クアッドのパートナー諸国は共同声明において、インド太平洋地域の国家主権と権利を侵害する中国の試みに反対する機会を得ている。共同声明にこのような文言を含めることで、クアッドは、複数の方面で継続する中国の侵略行為に対して団結していることを示すことができる。

防衛協力

より広範な戦略的観点から見ると、自由で開かれたインド太平洋の維持というクアッドの主要な関心事を推進する上で、防衛協力の強化が極めて重要であることが証明されるだろう。中国の通常戦力および戦略戦力の増強、特に記録的なペースでの核兵器生産は、クアッド参加国の安全と繁栄に直接的な脅威をもたらしている。

バイデン政権による米中関係の安定化を目指す試みは、中国の意思決定の計算を十分に変えるだけの目に見える成果を挙げていない。

クアッドは、より強固な防衛協力が可能な分野を引き続き検討すべきである。オーストラリア、英国、米国の3か国間の防衛協定であるAUKUSが示しているように、同盟国やパートナー国の産業基盤に投資することで、集団的な抑止力を高めることが可能である。AUKUSには課題もあるが、情報共有や新技術協力といった同様の条項を、軍事力と経済発展の両方を高めるクアッドのパートナー間で検討することも可能である。

サプライチェーンの回復力

中国は、クアッドの各パートナー国のサプライチェーンを軍事利用しており、その顕著な例としては、オーストラリアに対する14の苦情や、日本に対する重要鉱物のボトルネック化などが挙げられる。各国が中国サプライチェーンへの過剰依存から脱却し、多様化を図る中で、クアッドは、リショアリングの受け入れ先となるだけでなく、その促進役も果たすことができる。

インドの人口増加と製造業成長に対する拡大する需要は、リスクを軽減しながら労働市場に参入しようとする企業にとって魅力的な選択肢となる。クアッド参加国は、回帰政策をインドに求めることもできる。このクアッドサミットは、4か国の回復力と共通の利益を支えるサプライチェーンの協力に関し、各種取り組みから恩恵を受けるだろう。■


4 Issues to Consider as the US and Its Indo-Pacific Allies Meet to Counter China

Jeff Smith | Andrew J. Harding | September 20, 2024

Jeff Smith

Jeff M. Smith is a research fellow in The Heritage Foundation's Asian Studies Center, focusing on South Asia.

Andrew J. Harding

Andrew J. Harding is a research assistant in the Asian Studies Center at The Heritage Foundation.

https://www.dailysignal.com/2024/09/20/4-issues-to-consider-as-the-us-and-its-indo-pacific-allies-meet-to-counter-china/





2022年5月29日日曜日

クアッドの課題はインドとの相互運用能力だ。中国のグレーゾーン戦略に対抗すべく、海洋領域でのISR能力整備がカギとなる。

 

 

 

極安全保障対話(Quad)の各国首脳が東京に先週集結した。その後、ホワイトハウスは、日本、オーストラリア、インド、米国の4カ国が、インド洋太平洋を合わせた広大な地域で「海洋領域の認識」を強化する協力の意向と発表した。ホワイトハウスによれば、インド太平洋パートナーシップは、「太平洋諸島、東南アジア、インド洋地域のパートナーが自国の沿岸海域を完全監視する能力を変革し、ひいては自由で開かれたインド太平洋を維持する」ものとある。

 海洋領域認識とは、海に関する偵察、監視、諜報を意味する不格好な言葉だ。2005年、ジョージ・W・ブッシュ政権下の国土安全保障省は、「米国の安全保障、安全、経済、環境に影響を与える可能性のある、グローバルな海洋領域に関連するあらゆるものを効果的に理解すること」と定義した。これは「積極的かつ深層的な海上防衛の重要要素」であり、「実用的な情報とあわせ情報を収集、融合、分析、表示し、作戦指揮官に伝達する能力を向上させる」ことで強化される。

 クアッド構想は、情報機関が目前の問題を解決するため収集すべき情報を計画し、技術的・人的資源から生データを集め、データを処理・分析し有用な洞察を引き出し、結果を正しい利用者に伝え、戦略や作戦の立案・実行を支援する「情報サイクル」の海洋多国間版だ。そして、利用者は計画プロセスにフィードバックを提供し、次の段階を形成する。インテリジェンス・サイクルに終わりはない。

 海外パートナーを情報サイクルに活用することには意味がある。現在は緊迫した平和の時代であり、中国やロシアのような悪党が、武器を使わずに地政学的な利益をねらう時代だ。特に中国は「グレーゾーン作戦」が得意で、劣勢な周辺国をいじめ、不法行為を容認させる。南シナ海は中国のグレーゾーン戦略が最も顕著な場所になっており、沿岸国の排他的経済水域を含む海域の大部分を中国の領海としようとしている。中国共産党の大物が言うところの「青い国土」だ。しかし、中国共産党は陸上でも同じアプローチを展開し、クアッドパートナーのインドに被害を与えている。例えば、ここ数カ月、インド国境沿いの係争地に軍事・民生インフラを建設し、インド指導部に戦争の危険を冒して中国兵をその地から追い出す姿勢を迫った。現地で事実を作り上げ、他国を挑発する。中国のライバルが武力衝突の可能性にひるめば、中国の勝ちとなる。

 これは対抗が難しい戦略だ。しかし、クワッドの情報作戦は、侵略者による不法行為の抑止に役立ちそうだ。行為を探知し、国際的な非難を浴びせることで、北京やモスクワなど犯罪国家では得ることのない影響力を増幅させることができよう。また、海洋領域の認識により、クアッドは海上での不正行為に対してより強力に対応できる。結局のところ、現場がどこで、何が起きているのかがわからなければ、資産を現場に直行させられない。海軍の戦術家である故ウェイン・ヒューズ大佐Captain Wayne Hughesが、指揮統制や兵器の射程距離と並び、戦術的有効性を決定する3大要素の1つとして「スカウティング」(実質的には偵察と監視)を挙げているのも不思議ではない。目標を探知し、追跡し、把握する能力は極めて重要だ。

 ヒューズ大佐は有事の海戦について書いているが、同じ論理が平時の戦略的競争にも適用される。強気の海上外交は、平和的外交で事態を解決できない場合に、潜在的な軍事的オプションを各方面に認識させ、重要地点で優れた戦闘力を発揮する能力次第で効果が変わる。ヒューズの偵察・指揮統制の機能に情報サイクルを加えれば、インド太平洋の海空の抑止や強制機能に、クアッド加盟国が海軍や軍事力という大きな棒を振り回したり、クアッド非加盟のインド太平洋諸国へ自国の権利のため立ち上がれと鼓舞したりでき、質感も増す。そしてもちろん、海域領域認識の論理は、戦時作戦にも当てはまる。平時から有事まで、海洋領域で行うすべての基礎となる。

 だが、リソースと労力をプールするのは大変だ。海上でのクワッド情報作戦での最大の課題は相互運用で、それぞれ異なる軍隊や情報機関が調和して協力する能力を意味する。東京、キャンベラ、デリー、そしてワシントンの意思決定者がまず注目するのは、間違いなくハードウェアだろう。そして、互換性あるセンサーと指揮統制技術の重要性には疑う余地がない。米国、日本、オーストラリアは長年の同盟国で、共同運用に慣れているため、装備の相違を回避できる。しかし、インドの情報機関、軍、法執行機関は、国内外の異なるサプライヤーからハードウェアを調達してきたため、インドとの協力は難易度が高くなりそうだ。インド自体の国家安全保障機関間でも相互運用性に課題があり、ましてや海外との連携は難しい。この格差を克服できれば、大きな成果を生むだろうが、その過程で問題が生じるのは間違いない。

 また、海洋領域認識での共同作業では、共通の利益のため各パートナーの制度的慣行を調整することが求められる。つまり、技術面だけでなく、人間的な側面もある。クワッドのパートナーはそれぞれ異なる社会であり、異なる遺産と文化的特質を持つだけでなく、情報機関や軍部には独自の官僚的文化や世界観がある。そのため、もう一つ複雑な要素となる。海洋領域の認識、ひいては侵略に対する共通の政策と戦略という目標に向かって、各国を連携させることは、関係者の頭痛の種となるだろう。要は、海洋領域の認識には小道具より重要なことがある。それは、協力し合うことを日々の習慣にすることだ。これが官僚の頭痛の種を和らげる最良の方法となる。

 これが海洋外交の複雑な背景事情だ。しっかり対応していこう。■

 

How the Quad Can Take on China in the 'Gray-Zone' - 19FortyFive

ByJames Holmes

 

A 1945 Contributing Editor, Dr. James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.” The views voiced here are his alone. Holmes also blogs at the Naval Diplomat

In this article:China, featured, India, Japan, Quad, Quadrilateral Security Dialogue

WRITTEN BYJames Holmes

 


2022年5月23日月曜日

クアッド首脳会談 四カ国がめざす目標とは、安全保障は重要分野だがクアッドは安全保障同盟ではない

 

 

クアッドに必要なのは、よりハードなエッジだ

クアッドは安全保障の課題を優先すべき段階に来た

 

2017年、オーストラリア、インド、日本、米国の4カ国が「クアッド」と呼ばれる非公式対話を再開したとき、多くが懐疑的だった。結局のところ、オーストラリアが2008年に対中関係を守るため撤退を決めたことがきっかけでクアッドは休止しており、各国がまとまるとは到底思えなかったのである。5年近くが経ち、クアッドは明らかな進展を遂げた。日米の指導者の交代や、ロシア・ウクライナ戦争などで内部対立を乗り越えてきた。さらに、クアッドは知名度を上げ、重要な新技術、COVID-19ワクチン、人道支援など、活動範囲を広げてきた。ホワイトハウスは、クアッドを「インド太平洋における重要問題を扱う第一の地域グループ」と表現している。

 

 とはいえ、4カ国の首脳が5月24日に日本で2回目の首脳会談を行うにあたり、同グループにはもっと多くの課題がある。技術、健康、サイバーセキュリティ、気候変動などの問題でクアッドは大きく進展したが、安全保障の中核的目標を達成するため、さらに多くの課題がある。これまでのところ、クアッドは、安全保障に関連よりも、技術や公衆衛生など、安全保障以外の重要な機能や安全保障に隣接する機能を優先してきた。しかし、その効果を持続させるためには、クアッドは、地域的な軍事紛争や自然災害など動きの速い危機に対応を可能とし、その成果に対する期待を管理する必要がある。

 また、インド太平洋地域における安全保障上の共通懸念について、さらに協力の必要がある。クアッドは有意義な進展を遂げてきたが、中国の主張が強まっているため、一層の緊急行動が求められている。ロシアによるウクライナへのいわれのない攻撃は、クアッドの重要性をさらに高め、アジアにおいても短中期的に同様の侵略の可能性と、その抑止または対応の必要性を強く印象づけるものであった。中国が台湾やインド、東シナ海や南シナ海で企てる可能性に懸念が強まり、地域の平和と安定を確保するというグループの使命はさらに重要になっている。今こそ、クアッドがポテンシャルを発揮する時なのだ。5月の首脳会議では、インド太平洋経済枠組みなどの多国間経済プロジェクトやスリランカの不安定な情勢、中国のソロモン諸島との合意など、議題があるが、安全保障での協力を加速させる重要な機会にもなる。

 

勢いをつける

2017年の復活以来、クアッドは大きく前進を遂げした。ジョー・バイデン米大統領が就任して16カ月間で、組織的なアイデンティティを獲得した。以前は、比較的若い官僚レベルの会合と、単発の海軍演習を行っただけだった。今では、首脳、閣僚、高官、専門家などさまざまな立場の人が集まり、共通の立場を示す共同声明も定期的に発表している。5年前にはこれは考えられなかった。2021年3月に4カ国首脳が初めて仮想会談し、2021年9月にはCOVID-19が流行する中、世界でも珍しい対面の首脳会談を開催したことで、グループの強化が加速した。2022年3月、ロシア・ウクライナ戦争が勃発すると、再び仮想首脳会議を開催し、世界の大局を協議する前例となった。

 また、4カ国政府は、様々な問題に対する正式な協力体制を確立し、グループの範囲を拡大した。当初は、4カ国の関連機関の実務担当者が集まるワーキンググループを設置し、重要技術や新興国技術、COVID-19ワクチン、気候変動などに取り組んだ。政府内・政府間で協議、調整の必要性を認識し、非公式な定期会議と正式な官僚インフラの中間に位置するものとなった。しかし、その後、クアッド はさらに多くのワーキンググループを追加し、現在ではサプライチェーンの回復力、地域インフラ、STEM研究とイノベーション、人道支援と災害救援、クリーンエナジー、海上安全保障、サイバーセキュリティ、テロ対策、宇宙とさまざまな問題を網羅している。

 クアッドの各国政府はまた、インド太平洋地域のさまざまな政策課題に対する解決策を提供するために、このグループを利用しようとしてきた。例えば、野心的な公衆衛生イニシアチブでは、米国の技術、日本の資金、インドの生産能力、オーストラリアの物流を組み合わせ、COVID-19ワクチンをインド太平洋地域に提供し、カンボジアやタイなどの国々にワクチンを提供している。クアッドは最近、科学技術の協力と能力構築を目的としたSTEMフェローシップを発表した。また、地域政府が緊急事態に迅速かつ効果的に対応できるよう、災害救援・人道支援メカニズムも設立した。これ以外に、地域のインフラマップやグリーン・シッピングなど、有望な取り組みが初期段階にある。

 長い道のりではあるが、クアッドは安全保障の課題でも一定の成果を上げている。中国がもたらす戦略的リスクについて最高レベルの協議を行い、広義のインド太平洋における海洋安全保障から、アフガニスタンの不安定、ミャンマーの軍事クーデター、北朝鮮の核開発願望に至るまで、様々な問題について議論してきた。2021年9月には4カ国の情報機関トップが4カ国の戦略的情報フォーラムに参加し、2022年初めには4カ国のサイバーセキュリティーのシニアコーディネーターがオーストラリアで会議を開いた。マラバール海戦演習は、インドと米国の海軍部隊の相互運用性を高めるために始まった二国間演習で、現在は4カ国の海軍が定期的に参加している。対潜戦演習には、カナダや韓国など他のパートナー国も参加することが多い。また、クアッドは、軍事協力のため追加的な能力を構築するために、フランスや英国とも臨時の軍事演習を実施している。

 厳密にはクアッドの活動ではないが、過去2年間、加盟国間の関係は、新協定を通じ強化されてきた。例えば、日本とオーストラリアは、互いの国土に軍隊を駐留させることを可能にする相互アクセス協定を締結した。インドとオーストラリアは暫定的な自由貿易協定に調印した。ニューデリーは近年、貿易協定に抵抗し、特に中国を含む15カ国の貿易協定の地域包括的経済連携から2019年に離脱していた。最も劇的なのは、オーストラリア、英国、米国が、潜水艦の原子力推進技術の交換やその他重要な先端技術の共有を促進するため、AUKUSと呼ばれる安全保障パートナーシップを締結したことだ。AUKUS の軍事的、地政学的意味は極めて大きい。この協定は、豪州の軍事作戦の潜在的範囲を広げるだけでなく、米豪の防衛技術関係を今後数十年にわたり緊密にするものとなる。

 二国間の安全保障関係も強固になった。現在、4カ国は互いに、2国間の安全保障上の条約や取り決めを結んでいる。その中には、毎年の首脳会談、外務大臣と国防大臣によるいわゆる2+2対話、軍事スタッフ会談、陸・空・海兵隊による軍事演習、兵站共有協定、リエゾン、情報共有、海上安全保障、サイバーセキュリティ、テロ対策、防衛技術に関する対話が含まれる。しかし、東南アジア諸国など地域的な軍事競争を懸念する国々との緊張を避けたいこともあり、全体としてクアッドの安全保障協力の進展は速くはない。

 

クアッドのポテンシャルを生かす

4カ国協議は、安全保障分野で逆風にさらされている。例えば、ウクライナ紛争は、グループ内の相違を浮き彫りにした。日本とオーストラリアは、米国とNATO同盟国に近い立場でロシアの侵略を非難し、モスクワに制裁を加えている。しかし、インドは、ロシアの軍備装備品に依存し続けていること、インドにとって重要な問題でロシアを中国側に押しやる懸念があること、ウクライナからインド人数万人を避難させる必要があるため、より慎重で両義的なアプローチを取っている。しかし、ウクライナ紛争により、クアッドメンバー間の緊張を高めるどころか、四カ国首脳の違いを議論するプラットフォームが生まれた。2022年3月のクアッドバーチャル・サミットでは、四カ国の首脳が危機とインド太平洋への影響について見解を共有した。 

 このグループはまた、豪州、インド、日本だけでなく、域内の資源と能力の制約という課題に4カ国共同で立ち向かうプラットフォームを提供した。米国は、国家防衛戦略やインド太平洋戦略などの重要な戦略文書で積極的な地域課題を示しているが、米国の国防予算の増加は限定されており、インド太平洋における造船能力や軍事資源で懸念を生じている。また、低所得国に投資する米国の国際開発金融公社など、中国に対抗する米国の能力を高める取り組みも、当初想定より小規模なものにとどまっている。米国の対外軍事援助は、中東と中南米へのレガシー・コミットメントと新たに生まれたウクライナの優先事項が資源の大部分を占め、アジア太平洋地域向けは控えめなものである。こうした制約から、ワシントン、キャンベラ、東京、ニューデリーでより多くの負担を分担する必要性が高まっている。

 クアッドでこうした制約を克服できるかは、公約を実行できる頑丈さがグループにあるかにかかっている。クアッドは、加盟国に対して有用性を示し、地域社会に対しては地域問題の解決能力があるのを示すために、効果的な組織であると証明しなければならない。そうでないと、中国が増長し、地域は中国に従わざるを得なくなる。北クアッドやAUKUSを含む米国のインド太平洋戦略は、欧州におけるNATOの設立と拡張に強い類似性を持っており、これを阻止しなければならないと北京は主張している。しかし、クアッドは、インド太平洋の安全と安定に対して、より緩やかな連合と協調に基づく、負担分担のアプローチを具現化している。そして、この地域の国々を自らの意思に従わせるのではなく、選択肢を提供しようとしている。

 

これからの道筋

今後数ヶ月で、クアッドは既存のイニシアティブを強化し、実現するとともに、他の有志パートナーや組織と関わりを多様化することに焦点を当てる必要がある。その代わりに、他の国々をそのニーズと快適さのレベルに基づいて既存のクアッド活動に参加させたり、地域の安全保障と回復力を強化するイニシアチブに参加させたりすることが可能だ。

 また、クアッド四カ国は柔軟に対応し、メンバー間のシームレスな協力で動きの速い世界情勢に備えなければならない。例えば、感染力の強いCOVID-19の亜種が出現し、規制のハードルが高くなったことで、世界的なワクチン構想の焦点を特定の国やワクチンオプションに絞る必要が出てきた。クアッドはまた、危機がグループの優先順位を変化させる可能性を考慮する必要がある。たとえば、中国のゼロCOVID政策や、ロシア・ウクライナ戦争によるエナジー、肥料、穀物の供給制限で引き起こされたサプライチェーンの制約は、過度の依存から生じる経済的脆弱性に関する既存の懸念を強めています。これらの重なり合う激動は、クアッドにとってのグローバルサプライチェーンの重要性を浮き彫りにし、それを補強するための努力は、加盟国の経済的・戦略的関係に長期的な影響を与える可能性がある。

 また、クアッドは安全保障面での関与の深化に焦点を当てるべきだ。インド太平洋地域のその他国は、クアッドの安全保障協力に懸念を抱いているかもしれない。すなわち、連合内の協力関係が緊密化すれば、緊張を悪化させる可能性がある。しかし、この面で進展がないと、加盟国は、抑止力、航行の自由、能力構築、安全保障支援、自然災害や違法漁業などの課題への取り組みへの協力など、地域全体への便宜提供の効果が低くなる。さらに、特に中国に関して、直面する課題の緊急性に鑑み、クアッド自身でも準備の必要がある。中国がソロモン諸島と安全保障協定を締結したことで、豪州や米国の領土に近い場所に海軍基地の設置に道が開かれ、中国の勢力範囲が拡大する可能性がある。インド太平洋地域における中国の軍事的野心の高まりを示す最新事例だが、クアッドの復活より以前から存在していた。

 クアッドは、海洋安全保障など、現在二国間で進んでいる協力を加速させるべきだ。この分野での進展は複雑で、人工衛星、偵察機、無人機、潜水艦のセンサーを通じて海洋領域の認識を高め、情報・情報ネットワークを確立する必要があるが、クアッドが大きく前進し、海洋危機に足元をすくわれない体勢を整えることは十分可能だ。地域の安全保障を向上させるには、4カ国すべてが海上での相互補給、補給、補充を行い、船舶修理の手配をし、哨戒機やヘリコプターなど共通装備を利用することで、作戦範囲を拡大する必要もある。また、不法漁業、海賊、麻薬密輸、拡散などの非伝統的な安全保障上の脅威に対し、情報共有、連携作戦、沿岸警備隊協力の強化を通じて、共同で取り組むことも必要となる。

 しかし、クアッドの安全保障協力は、海洋分野にとどまらないはず。クアッドは、外務省、国家安全保障会議、軍隊を含む重要な公式対話を行っているが、信頼と協力の習慣を強化するために、防衛部門の文民職員間のコンタクト構築が求められる。また、クアッドでは地域内の潜在的な危機を議論し、メンバー相互の期待を前もって示すことが重要である。危機管理のメカニズムや迅速対応部隊を整備し、緊急時対応計画を立て、戦争ゲームに参加することである。そして、地域における強制や敵対的な活動への効果的な対応について戦略を練るのが肝要である。また、クアッドは、インド太平洋の小国向けに軍事支援を強化し、地域の弾力性と安全保障、独立した能力を強化することで、小国の負担を軽減する必要がある。最後に、フランスや英国などの欧州のパートナーや、カナダ、インドネシア、ニュージーランド、フィリピン、韓国、シンガポール、ベトナムなどのパートナーとの連携を強化し、より広範な国際協力の基礎を築くべきである。

 クアッドは安全保障同盟ではないし、そうなることもない。NATOと異なり、相互の安全保障や資源の共有と定義されるブロックでもない。しかし、世界規模の危機の高まりに直面し、クアッドが協力と協調を模索し、中国がインド太平洋地域で軍事的存在感と自己主張を強めるなか、クアッドが今後数年間にわたり組織と地域を維持しようとすれば、安全保障の課題をより堅固に策定していく必要がある。■

 

The Quad Needs a Harder Edge | Foreign Affairs

It’s Time for the Group to Prioritize Its Security Agenda

By Dhruva Jaishankar and Tanvi Madan

May 19, 2022


2021年12月10日金曜日

クアッドは軍事同盟のみの存在ではない。中国の技術覇権に対抗すべく、今や単独では中国の後塵を拝する米国が各国と組んで技術戦略を展開するしくみづくりへ。

 

 

 

 

iStock illustration

 

 

戦布告なき技術戦争が米国と中国の間で始まっており、米国の懸念事項は多い。重要分野で米国側の手詰まり状態がある。

 

 

米国に挑戦する中国は産業諜報活動に長け、数十億ドル相当の知的財産を盗み出している。中国は統制経済と長期展望での技術開発を目指している。予算の遅れや意見の相違に煩わされることはない。また限界がないほどの資金を新技術につぎ込み、軍用化を目指しており、強い経済で優位に立っている。

 

ただし、中国にないものが米国に豊富にある。同盟国、友邦国の多さだ。米軍首脳部はよく米国単独で戦争開始することはないと発言している。

 

今回は軍事研究開発部門でも同じ方法論を採用すべきとの論調で記事をまとめた。同盟各国との共同作業で先端技術を開発委s中国が目標とするインド太平洋での覇権確保を阻止するのである。

 

防衛問題を扱うのが本誌の趣旨だが、中国への対抗を軍事技術のみで捉えるのは近視眼的だ。中国は民生技術、軍民両用技術の数々を開発し、戦場と商業の双方を制するのが目的と明言しており、世界各国の指導層、民間産業が米国を見限り、どの同盟国とたもとを分かつことを狙っている。

 

これまで米中競合関係は分野別に見てきた。海洋技術、人工知能、極超音速技術、戦略鉱物資源などだ。今回は「クアッド」加盟国が軍事研究開発アライアンスに発展する可能性に着眼し、中国の豊かな人的資源に対抗できるか検証する。

 

日米豪印戦略対話の四か国は共通の権益つまり「自由で開かれたインド太平洋という共通ビジョン」のもと結集している。四か国は「クアッドプラス」と呼ぶヴェトナム、ニュージーランド、南朝鮮も加え、9月にワシントンDCで会談した。

 

共同声明で四か国の目指す技術協力の行動予定が示された。クアッドが目指す第一の分野としてCOVID-19ワクチン生産の新規製造拠点をインドに

設ける。次に四各国はクリーンエナジーの実現で協力する。また、半導体含む重要技術や原材料のサプライチェーンを確立する。また重要技術向けで復元力にあふれ、安全なサプライチェーンを確保し、政府による支援策、政策の重要性にかんがみ、透明性と市場重視を貫く、と声明文にある。

 

その他の技術協力の分野として宇宙空間の持続的利用や衛星を介したリモートセンシングを気候変動の監視に応用することがある。

 

また、中国を意識したクアッドは5G通信技術の応用推進を前面に押し出し、中国企業の独占状態を打破する。また四か国はサイバーセキュリティ分野での協力を確認した。

 

クアッドでは「人材確保の戦い」への関与を目指し、理学、工学、数学の理系学卒者100名に研究職を与える。

 

また、さらなる技術協力の枠組みも作った。クアッド原則を技術、設計、開発、ガバナンス、利用に関し制定し、対象各国のみならず世界規模での応用を通じ、責任ある、開かれた、高度のイノベーションを実現すると声明文にある。

 

一方で2021年に中国の研究開発支出が米国を上回る予想がある。中国は2021年に6215億ドルを研究開発に投じ、次世代の経済社会の実現を目指しているが米国は5987億ドルで二位となると調査会社Statistaは見ている。

 

ただし、クアッド加盟国をここに加えると、合計額は中国を上回る。

 

その他インド太平洋諸国の台湾、南朝鮮、カナダ等が中国との競合を強く意識しているため、中国には不利な状況に見える。ただしこの構図は実際には単純でなく、各国とも中国と交易関係があり、中国は各国に投資活動を展開している。米国も例外ではない。

 

また落とし穴になりそうな側面もある。クアッド四か国それぞれに官僚組織や政策があり、国際協力に抵抗する場面が想定される。特に機微情報の共有への反対が出よう。例えば米国は武器国際取引規制を厳しく適用しているため、多国間あるいは合同による事業の支障になりそうだ。

 

四か国はすべて自国経済の構築と自国民の雇用機会創出を目指している。例としてオーストラリアは国内防衛産業を整備することで米国等外国との提携への依存を減らそうとしている。

 

日本は民生技術イノベーションで世界のリーダーの座を1980年代は守っていたが、今は二十年間に及ぶ不況を脱しようと懸命だ。昨今の政策方針の変更で日本は世界的な兵器市場に参入することが可能となった。

 

インドは国境線をめぐり実際に中国と対立する唯一の存在で、軍事技術の向上を目指すものの、冷戦時のロシア製装備の全廃に踏み切っておらず、米国との間でリスク要因になっている。

 

中国にも同盟関係はある。一帯一路政策で開発途上国を巻き込み、重要な天然資源もあわせ自国の影響下に置こうとしている。さらに独占供給状態を作り、他国を中国サプライチェーンに依存させようとしている。

 

クアッド加盟国が知恵を合わせ結果を出せればいい。新型ジェットエンジンが例となる。だが中国が世界のコバルト供給を独占すれば思惑通りに進めなくなる。

 

今回の特別記事の論点はクアッド加盟国でどんな協力分野があるのか、また乗り越えるべき障壁は何かにハイライトをあてる。また米国防産業から残る三国に何が提供できるかも探る。

 

技術戦争の勝者が戦場のみならずこれからの経済も支配することになるだけに大きなリスクが潜んでいるのである。■

 

Part 2: U.S., Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

Part 3 - India Manages Diverse Arms Sources for Military Modernization

Part 4: to come

Topics: Global Defense Market

 

The Quad: Creating a Defense Tech Alliance to Stand Against China

By Stew Magnuson

12/7/2021



2021年12月6日月曜日

主張 日豪印の三か国に加え、米英両国も加わりインド太平洋の戦略環境を三角形構造で考えると今後どうなるか。

 

 

ーストラリア、インド、日本の三か国がここ数年にわたり連携を静かに深めてきた。米国・英国もアジア太平洋での関係強化を進めている。

 

ヘンリー・キッシンジャーは三角形で考え、米、ソ連、中国の関係を構想した。今日の戦略三角形はインド太平洋にある。頂点にキャンベラがあり、そこから北西にニューデリーがあり、もう一方は南北に走り東京とキャンベラを結ぶ。さらに重要な線が二本あり、それぞれワシントンDCとロンドンをつないでいる。

 

2007年に中国の主張の強まりを受けてこの関係がゆっくりと進化を開始した。ある意味でバラク・オバマ大統領のシリアでの「レッドライン」撤回、ドナルド・トランプ大統領の同盟関係への取引感覚導入から米政策の動きが予測不能となったのを反映したものといえる。同時に日本、オーストラリア、インドが安全保障面での役割強化をそれぞれ認識してきたことの反映でもある。

 

インド太平洋の安全保障構造の進化は冷戦時の「ハブ&スポーク」モデルがネットワーク型の総合構造へ変わったものであり、オーストラリア、インド、日本の安全保障上の関係強化をもたらした。新たな構造では戦略提携関係がインドネシア、シンガポール、ヴィエトナムにも広がっている。他方で、オーストラリア、インド、日本の各国は二国間同盟関係を米国と保持しつつ、域外の勢力とも安全保障上のつながりを強化している。そのあらわれがAUKUSの潜水艦調達事業として実現した。

 

インド太平洋の三角形

 

三角形協力に向かう動きではオーストラリア=インド艦の戦略取り決めがめだつ。オーストラリアの2017年版外交白書ではインドを中核的安全保障の相手国としてとらえており、域内秩序を支えるとしている。AUSINDEX演習が2015年に始まり、直近は2021年9月にダーウィンで開催されている。

 

2020年のリモート型式によるサミットでスコット・モリソン、ナレンドラ・モディ両首相は2009年の戦略パートナーシップを総合的戦略パートナーシップに格上げし、「開かれた自由で法の支配下のインド太平洋のビジョン」を共有し、海洋部での協力強化を謳った。両首相は相互補給支援でも合意し、両国軍事基地の相互利用を決めた。サミット後にインドはオーストラリアを印米日の共同海軍演習マラバールに招待し、クアッド各国が初めて一堂に会する演習となった。2021年9月10日から12日にかけ初の2+2大臣級会合で総合的戦略パートナーシップ協議がニューデリーで開かれ、インド、オーストラリア両国は外相、国防相を参加させた。

 

インドと日本の関係は6世紀の仏教伝来までさかのぼるが、21世紀に特別な戦略グローバルパートナーシップに深化した。モディ、安部晋三両首相が中心になり両国関係が変化した。安部は自由で開かれたインド太平洋構想の原型を2007年のインド国会演説で初めて公表した。「両大洋の合流」と海洋国家の両国に触れ、インドと日本には「シーレーンの確保で死活的国益がある」と述べた。安部は両国の外交防衛担当部門に対し将来の安全保障上の協力を「共同検討」するよう求めた。

 

日本はマラバール演習に2015年から常任演習実施国として参加している。日印間のJIMEXは2016年にベンガル湾で始まり、毎年開催されている。2020年9月、両国は安全保障の関係強化を狙い物品役務相互提供協定を締結した。2021年6月、両国は合同演習をインド洋で展開し自由で開かれたインド太平洋の実現の一助とした。2+2大臣級会談が毎年開かれ、両国間の意思疎通を図っている。

 

21世紀の日本=オーストラリア間の協力の原型となったのが2007年の安全保障協力の共同宣言で、「アジア太平洋さらに域外で共通の戦略権益を協議する」とし、防衛関係者の交流、共同演習、2+2メカニズムの創設を目指した。2013年に両国は物品役務相互提供協定を結び防衛協力をさらに進めた。キャンベラ、東京はともに二国間関係を特別な戦略パートナーシップに格上げしている。

 

オーストラリアの2017年版外交白書では日本の防衛改革努力並びに防衛力整備を歓迎しつつ日本が「一層積極的な役割を域内安全保障で演じるよう支援する」とした。日本は米豪間のタリスマンセイバー演習に2019年初めて参加し、ヘリコプター空母いせと自衛官500名を派遣した。両国間の防衛関係強化を受けて、2020年に両国政府は相互アクセス協定を結び、菅義偉首相は両国間の「意思と能力を共有し、域内の平和安定に資する」と評価し、モリソン首相も「画期的な防衛条約」として日豪の「特別の戦略パートナーシップ」を強化すると称賛した。2021年6月の2+2会合に先立ち、茂木敏充外相が両国の安全保障関係を「次のレベル」に引き上げたいと発言したとロイターが伝えた。

 

自由で開かれたインド太平洋

 

三角形はここ十年で深化し、日本、オーストラリア、インドは米国とのつながりをさらに強め、強硬な態度を強める中国という課題に対応し、力を合わせ自由で開かれたインド太平洋の維持を図っている。

 

2019年の日米安全保障協議会の共同声明文は両国の安全保障政策の方向性を一致させることに触れ、「力による国際法規範や仕組みの変更は自由で開かれたアジア太平洋で共有する価値観、同盟関係への挑戦である」とし、同盟関係国が東南アジア諸国連合、インド、日本、大韓民国と一緒に「ネットワーク構造の同盟関係、協力関係を強化することで安全、繁栄、包括的かつ法の支配が働く広域圏を維持する」ことに全力を尽くすとした。

 

2020年にトランプ大統領はインドを訪問し、包括的グローバル戦略パートナーシップで合意した。同年10月に米印2+2会合で両国政府は物品役務相互提供協定、通信互換性保安合意、軍事情報包括保護協定でそれぞれ合意を形成した。同時に自由で開かれたインド太平洋の維持を再確認した。

 

そこにインド太平洋三角形のもう一つの線が出てきた。ロンドンからである。HMSクイーン・エリザベス空母打撃群をインド太平洋に展開させ、哨戒艇二隻を同地区に常駐させる決定、さらにAUKUS枠組みでの原子力潜水艦建造がロンドンのめざす意図を物語っている。英国防相ペニー・モーダントが2019年のシャングリラ対話で使った表現では域内プレゼンスを「粘り強く」維持するとあった。

 

現時点のオーストラリア-インド-日本の三角形に米国がクアッドで加わり自由で開かれたインド太平洋の価値観を各国が共有する形が生まれた。各国は法規則に基づく秩序、紛争の平和的解決、力による既成事実の変更の拒絶で共通する。では各国間に対中国姿勢で違いは存在しないのだろうか。実はある。各国とも地理や経済の違いのため国益は一様ではない。だが、インド太平洋に関する限り、各国は相互に補強しあう。さらにこの先を見るとワシントン、東京、キャンベラ、ニューニューデリーの政治トップの次の課題は各国の相違点を縮める努力にあわせ、共通のビジョンの方向に国内政治を収束させていく仕事だ。■

 

Can the Australia-India-Japan Strategic Triangle Counter China?

by James Przystup

October 21, 2021  Topic: Quadrilateral Security Dialogue  Region: Indo-Pacific  Tags: Quadrilateral Security DialogueIndiaJapanAustraliaAUKUSAlliancesChina

 

James Przystup is a Senior Fellow at the Institute for National Strategic Studies. Previously, he has served as Deputy Director of the Presidential Commission on U.S.-Japan Relations 1993-1995, the Senior Member for Asia on the State Department’s Policy Planning Staff 1987-1991, Director of Regional Security Strategies in the Office of the Secretary of Defense 1991-1993 and Director of The Asian Studies Center at The Heritage Foundation 1993-98. The views expressed are the authors’ own and do not reflect those of the National Defense University or the Department of Defense.

Image: Reuters.