2022年3月31日木曜日

スロバキアからS-300がウクライナへ移動する。米国がヨーロッパで動き、旧ソ連装備品のウクライナ移送を画策している。

  

 

 

ロイド・オースティン国防長官はスロバキア首相エデュアルド・ヘーゲルとスロバキア首都ブラスティラヴァで会見した。March 17, 2022. (Jaroslav Novák/TASR via AP)

 

防総省高官は、バイデン政権がNATO同盟国スロバキアからのS-300地対空ミサイルシステムの対ウクライナ供与の追加に動いていると3月30日に連邦議員に語った。

 

 

 スロバキアはウクライナへの旧ソ連装備品の提供に同意しており、セレステ・ウォランダーCeleste Wallander 国防次官補は下院軍事委員会公聴会で、米国はスロバキアへ何らかの埋め合わせをしている、と述べた。


 ただし、スロバキアのヤロスラフ・ナドJaroslav Nad国防相が、西側同盟国が「適切な代替品」を提供する条件でS-300を送るとの申し出をして2週間がたっており、マイク・ロジャースMike Rogers下院議員(共アラバマ)は、なぜ取引が成立しないのかと質問した。ウォランダーは、各国との調整の中で「進行中」と述べ、より詳細な回答は後の機密セッションでさせてほしいと述べた。


 「スロバキアと協力して、同国のニーズを満たす要件を特定している」と「一方で、S-300システム含むソ連の旧式装備を保有する国々、S-300のミサイル本体、各種部品の保有国に、ウクライナへの移送を働きかけてきた」(ウォランダー次官補)


 ウクライナのヴロディミル・ゼレンスキー大統領が、ロシア機とミサイルによる攻撃を受けながら、ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定、あるいは代わりにS-300など防空システムや戦闘機の供給を米議会に求めた演説から数週間たっている。


 ドイツでは、国防相がロイド・オースティ国防長官を水曜日に訪問し、ウクライナと東部で国境を接するスロバキアへペイトリオット防空装備を派遣すると約束した。ナドは、パトリオットはあくまでもS-300の補完で、交替装備ではないと述べている。


 これと別にウォランダー次官補はスイッチブレード100機が、ウクライナに届けられると明言した。エアロヴァイロメントAeroVironment製の同無人機は、今月送る8億ドルの援助の一部で、対人武器、火器、防護服、弾薬と合わせ送付すると以前報告されていた。ウクライナ軍はトルコ製バイラクターTB2武装無人機を使用中だ。


 スイッチブレード100機でロシア軍輸送隊の破壊に十分なのか、もっと必要なのか、と聞かれたNATO軍ヨーロッパ司令官トッド・ウォルターズTod Wolters大将は、「スイッチブレードを入手すれば、すぐにもっと欲しいという要求がウクライナから来るはず」と答えている。


 

 水曜日には別の会合で、下院軍事委員会委員長アダム・スミス議員Rep. Adam Smith(民ワシントン州)は、ウクライナの都市に破壊の雨を降らしているロシア砲を排除するために、可及的速やかにウクライナへの無人機多数の供給に賛成すると述べた。同議員は、ロシアの補給車列への攻撃が、首都キーウ奪取を狙ったロシア作戦を妨げたと評価している。


「無人偵察機には、現場で姿を隠す能力があり、生存性が高く、撃墜されることもなく、効果を出す。それが無人機の意義だ」とスミスは語った。

 公聴会では、議員からウクライナへの沿岸防衛巡航ミサイルの送付や、ポーランドからのソ連時代のMiG-29の送付申し出の実行について、また米国と同盟国がウクライナに送っているジャベリン対戦車ミサイルやスティンガー対戦車ミサイルの生産を米国の防衛産業基盤が増強していることについて質問が出た。


 ウォランダー次官補によると、国防総省の取得・維持局が産業能力以外に、国防総省が必要とする新たな権限や資金についても研究している。また、国防安全保障協力局、統合参謀本部、外交部門と協力し、ウクライナからの軍事援助要請への対応を主導している。


 ワシントンは最近、ロシア・ウクライナ危機に対処するため136億ドルのパッケージを承認したが、大部分は東欧に軍隊と武器を送る費用をまかなうためだ。バイデン政権は、米国装備品の直接移転を含め、ウクライナに総額20億ドルの安全保障支援を送っている。


 超党派の上院議員グループは火曜日、ロシアの侵攻以来、米国がウクライナに提供した防衛支援について、バイデン政権に具体的説明を求めた。ジョニ・アーンストJoni Ernst(共アイオワ)とカーステン・ギリブランドKirsten Gillibrand(民ニューヨーク)両上院議員は、国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバンに、提供ずみ殺傷力のある、あるいは非殺傷性装備品のリストと提供の状況を求めた。


 ロシアは、ウクライナへの最新型防空ミサイルの輸送に反対し、西側の武器供給を狙う可能性があると警告している。


 スミス委員長はウォルターズ大将に、米国と西側同盟国の支援強化に対し、ロシアがウクライナ国外へ戦争を拡大するリスクとのバランスを取る必要があるか、と尋ねた。


 ウォルターズ大将は「常にある」と述べ、「状況は1秒ごとに、1日ごとに、1週間ごとに変化している」とした。■

 

Will Slovakia send Ukraine S-300 air defenses? The Pentagon is working on it.

By Joe Gould

 Mar 31, 2022

 

About Joe Gould

Joe Gould is senior Pentagon reporter for Defense News, covering the intersection of national security policy, politics and the defense industry


2022年3月30日水曜日

ウクライナ戦は新型兵器のテストの場となっている。ロシア海軍がカリブル巡航ミサイルを実弾発射している。無神経なTASS通信記事のためご注意ください。

 Screenshot from Russian MoD video


クライナ武器貯蔵庫へ向けブヤンM級コルベットがカリブルKalibr巡航ミサイル8発を発射した。ロシア国防省公開の映像は、同ミサイルの攻撃で初の公表となった。


ご注意 この記事はロシア国営通信社TASSの原稿を翻訳したものです。


国防省報道官イーゴリ・コナシェンコフIgor Konashenkovは、海軍の精密ミサイルがロブノRovno市北西14キロのオルジェフOrzhev兵器庫を攻撃したと発表した。「西側諸国が供給した武器や軍用装備を保管するウクライナの主要兵器庫を破壊した」と述べた。

 カリブルミサイルは、黒海からプロジェクト21631ブヤンMBuyan-M級ミサイル艦が発射したとされる。映像には、8発のミサイルが次々と発射される様子が映し出されている。同艦はミサイル8発を搭載するため、全弾発射したことになる。



独立軍事評論誌のドミトリー・リトフキンDmitry Litovkin編集長は、今回の一斉射撃で、カリブルミサイル全弾を同時発射で威力を確認できたと述べている。


情報のやりとり

リトフキンは、カリブルミサイルが飛行中に情報を交換したと見ている。「人工知能は武器やハードウェアに導入され、あるミサイルが目標を見て、情報を他のミサイルと共有する。1発のミサイルが落ちれば、残りのミサイルはどこに飛べばいいのかがわかる。ネットセントリックが実現する」と述べた。

 「一斉射撃でカリブルミサイルがリアルタイムで情報交換を行っていることを示した。巡航ミサイルは実はロボットだ」(リトフキン)。


カリブル巡航ミサイルを発射するブヤン級コルベット



カリブルとは

カリブルS-14(NATO報告名称SS-N-27シズラーSizzler)は、エカテリンブルクのノバトール設計局Novator Design BureauがグラナートGranat S-10から開発し、93年に初めて一般公開された。

 グラナートは、米国のトマホークSLCMとGLCMに対抗して設計された。グラナート3M-10は、1983年に魚雷発射管発射用アルファAlpha3M-51巡航ミサイルに開発された。1993年、アブダビでの兵器ショーとMAKS-93でモックアップが展示された。

 1991年以降、設計者はクラブClubミサイルの輸出オプションに焦点を当てた。潜水艦(Club-S)および水上艦(Club-N)で発射可能とした。最初の3M-54はAlphaから開発され、3M-14はグラナートを原型に開発された。輸出用オプションの射程は275-300kmだった。

 ロシア海軍は3M-54と3M-15を水上艦のカリブル-NKコンプレックスと汎用3S14ランチャー、潜水艦のカリブル-PL魚雷ランチャーで使用する。最初のコンプレックスは、2012年にプロジェクト11661ダゲスタンDagestan小型ミサイル艦に納入された。射程は1400kmから2600kmといわれる。

 カリブルは、地上、空中、海上、水中仕様に開発され、輸出オプションも用意された。ロシア、インド、中国が運用しているとの情報がある。



3S14 UKSK万能ランチャー(タス通信)


ランチャー

万能ランチャー3S14は、ロシア海軍でのカリブルの使用を進めた。アルマース・アンテイ社Almaz-Antey Companyが設計した垂直発射台だ。


カリブル、オニクスOnyx、ブラーモスBrahMosの各ミサイルを発射でき、2022年に試験を完了する予定の極超音速ツィルコンTsirkonにも適合する。

 同ランチャーは、ロシアの新世代軍艦に搭載されており、フリゲート艦プロジェクト22350と11356、コルベットのプロジェクト20385と20386、ミサイル艦プロジェクト11661、小型ミサイル艇プロジェクト21631と22800など、各種艦艇に搭載されている。プロジェクト22160パトロール艦もランチャーを搭載できる。プロジェクト1144巡洋艦、プロジェクト956駆逐艦、プロジェクト1155大型対潜艦もカリブル発射が可能だ。

 同ミサイルは、プロジェクト636.3ヴァルシャヴィアンカ級Varshavyanka-classディーゼル電気潜水艦、プロジェクト885MヤーセンMYasen-M級SSGNでも発射できる。


Iran and Russia are planning to hold naval drills in the Caspian Sea, the commander of the Iranian navy said on Sunday, January 6, 2018.ロシア海軍カスピ海戦隊の海上訓練でカリブルNKミサイルを発射(写真:ロシア国防省)


交戦

同ミサイルの最初の実戦投入はシリアだった。国防省は99発で13回交戦したと報告している。

 最初の発射は、プロジェクト11661ダゲスタン級ミサイル艦、カスピ海戦隊のプロジェクト21631小型ミサイル艇3隻で行われた。カスピ海から 26発のカリブル-NKをシリアのテロ拠点11箇所に発射し、指揮所、武器庫、キャンプを破壊した。

 潜水艦からの最初の発射は、2015年12月8日だった。プロジェクト636.3ディーゼル電気潜水艦ロストフ・オン・ドンRostov-on-Don が、ラッカ州のテロ目標に向け潜航中にカリブル-PL4発を発射した。ロシア水中艦隊で初の実弾ミサイル攻撃となった。

 黒海艦隊のプロジェクト11356Rフリゲート艦アドミラル・グリゴローヴィチAdmiral Grigorovichが2016年11月15日、初めてカリブルミサイルを発射した。続いて、プロジェクト636.3アドミラル・エッセンAdmiral Essen級フリゲート艦クラスノダールKrasnodar、ヴェリキー・ノヴゴロドVeliky Novgorod、および潜水艦コルピノKolpinoが発射した。東地中海から攻撃を行い、デイル・エズ・ゾールDeir-ez-Zorの南東にあるテロリストの司令部、通信拠点、武器庫を破壊した。国防省によれば、ミサイル7発が水中から500〜670km先に発射されたという。

 2017年10月5日、黒海艦隊所属のヴェリキー・ノヴゴロドと潜水艦コルピノが10発のカリブルミサイルを発射し、アルマヤディンal-Mayadin付近のテロリストの指揮所、主要武器庫、装甲車両を破壊した。

 カリブルは非核戦略的抑止力として理想的である。核弾頭も搭載できる。ロシア艦隊はカリブル・ミサイルで武装し、長距離かつ柔軟な長距離攻撃が可能となっている。■


2022年3月29日火曜日

23年度予算案に見る米空軍の動向。23年は大量の機材を処分し、新型機導入の基礎を準備するとしてるが....F-22、AWACS, JSTARSも退役対象機に....

 




内情に詳しい情報筋2人によれば、フランク・ケンドール空軍長官は、F-15EXの調達中止の検討を空軍の予算班に命じていたという。逆に23年度概算要求ではプラスアルファの調達となる。


空軍は、F-15EXを優先しF-35調達は短期的ながら減速する計画で、JSTARSとAWACS双方の退役を求め、研究開発費の大幅増額を要求しているが、いずれも中国を意識してのことだ。



 本日発表された空軍省予算案には、空軍向け1,695億ドル、宇宙軍に245億ドル、空軍が省外の機密プロジェクトに支払う「ノンブルー」支出として402億ドルが含まれる。

 空軍の予算担当副次官補であるジェイムズ・ペチアJames ペチアは、この数字はFY22の空軍要求と比較すると、推定2.2%のインフレ率を含め約8%の実質成長であると述べています。

 中国の経済力と技術力に対抗できる空軍に変身させる必要があるということだ。フランク・ケンドール空軍長官は金曜日の記者会見で、数年前に国防総省の調達トップとして在任中に、記者から「あなたは変革型のリーダーか、進化型のリーダーか」と問われた時のことを思い出した。

「そのとき、私はどちらかといえば進化的なリーダーだと答えた。「今日は、その逆で、進化よりも、変革の方が今は重要だ。原動力は脅威だ」。

 空軍と宇宙軍にとって、研究・開発・試験・評価(RD&E)が勝者として浮上し、22年度予算要求の401億ドルから23年度は492億ドルに跳ね上がった。

 ここには、B-21爆撃機の購入予算17億ドルや、ロッキード・マーチンF-35の調達数を減らし、ボーイングからF-15EXを購入する決定が含まれている。

 F-35Aの調達は33機、45億ドルで、22年度から15機減る。一方、ボーイングF-15EX戦闘機は24機、14億ドルで購入する計画で、前年度の調達数の2倍になる。

 ボーイング機に関心を向けているように見えるが、空軍はもっと慎重である。この問題に詳しい情報筋2名によれば、ケンドール長官は空軍の予算班にF-15EX調達中止を検討するよう命じていた。しかし、空軍や国防総省のF-15EX推進派が反発した。

 その結果、空軍はF-15C/Dに代わるF-15EX調達を急増させ、高度なF-35ブロック4仕様が購入できる時が来るまでF-35調達を減らす選択をしたのである。

 F-35購入は、今後5年間で元に戻るとケンドール長官は述べた。

 「F-35にこだわるのか、と聞かれる。もちろん、我々はF-35にコミットしている」「F-35は当分の間、戦術空軍の基礎となることに疑問の余地はない。」(ケンドール長官)


ボーンヤード送り

 空軍は23年度に269機以上の航空機を処分する意向だ。昨年要求の200機程度をはるかに上回る。

 「これをしなければならない。明日の資源を確保するため、旧式機を処分しなければならない」とケンドール長官が語った。

 空軍の広報担当者がブレイキング・ディフェンスに語ったところによると、処分場に向かう航空機のリストには、以前に議会へ説明された119機が含まれるという。しかし、残りの150機には、これまで対象でなかった航空機が含まれており、議会や他の予算ウォッチャーが驚ろくことになりそうだ。

 空軍は、地上目標情報を提供するE-8C JSTARSを8機退役させる計画で、残るJSTARSはわずか4機となり、これも24年度に退役する。

 空中目標を感知、識別、追跡するE-3セントリー空中警戒管制機AWACSも15機を退役させたいとしている。現在、空軍は31機のAWACSを保有しているが、後継機導入に伴い退役させる。

 戦術機も大幅削減される。空軍は旧式ブロック20のF-22の33機を退役させる承認を得るとし、ケンドール長官は戦闘能力がないと述べている。ペチアによると、各機を処分できないと、今後8年間の維持費として18億ドルかかるという。

 また、昨年に引き続き、老朽化したF-15とF-16の退役を進め、合計F-15C/D26機とF-16C/D67機を処分したいとする。

 空軍は、C-17やKC-10などに移行する前に、訓練生の機動性飛行の教育に使用されるT-1ジェイホーク練習機50機を引退させると示唆した。空軍は声明で、T-6テキサン練習機の進歩により、パイロット養成に影響を与えずに、同機のみで訓練するシラバスへの移行が可能になると述べている。

 ボーイングKC-46の運用開始に伴い、旧式給油機の部分的退役を継続し、23年度にはKC-10を10機、KC-135を13機退役させる。

 アラバマ州のマックスウェル空軍基地のC-130H10機をモスボール保存するが、4機のC-130Jが稼働開始し不足分は部分的に緩和される予定。また、電子戦機EC-130Hコンパスコール1機と特殊作戦機EC-130Jコマンドーソロ3機の処分を進める。

 12機のHH-60Gペイブホークを退役させ、最新型HH-60Wに置き換える。

 そして最後に、空軍はA-10の一部を退役させる。インディアナ州空軍が運用する21機のA-10を廃棄し、その代替としてF-16を導入したいとする。アリゾナ州議会は歴史的に、現在281機残るA-10の退役に抵抗がある。

 厳密には退役ではないが、空軍は100機のブロック1仕様MQ-9リーパーを、ケンドール長官が名前を伏せた政府機関(おそらく中央情報局)に引き渡そうと考えている。この動きは、戦闘指揮官の要求に応えるために必要な能力を維持しながら、リーパーの運用とメンテナンス経費を空軍予算から外すのがねらいだ。


資金はどこに流れるのか

 23年度も空軍は、長期優先事項のため、調達と開発資金を交換する傾向を続ける。研究開発費に334億ドル(22年度288億ドル)、調達費に257億ドル(前回229億ドル)を要求している。(この合計額には、宇宙軍への支出は含まれない。)

 B-21レイダー計画は17億ドルの要求で調達段階に移行したが、秘密主義のプログラムにふさわしく、ペチアはその金額で何機のステルス爆撃機が購入されるのか明示を避けた。

 さらにボーイングKC-46タンカーを15機、28億ドルで購入する。また、ボーイングのMH-139グレイウルフの調達も再開する。

 「このヘリコプターには、合格すべき認証が2つある。「1つ目は完了した。2つ目はここ数ヶ月で完了するので、23年度には再びMH-139調達を開始できる」トペチアは述べた。

 その他回転翼機の調達では、空軍はHH-60WジョリーグリーンIIヘリコプター10機を8億7000万ドルで最終購入した後、戦闘救助ヘリコプター調達を早期に終了する。

 F-15EXとF-35の追加購入のための投資以外にも、空軍はF-22の先進的なセンサーに3億4400万ドルを投資する。

 RDT&E予算には、核近代化プログラムへ多額の資金が含まれており、ミニットマンIIIに代わる地上戦略抑止システムには36億ドル、B-21爆撃機の継続設計に33億ドル、核の長距離スタンドオフ兵器には9億2900万ドルと膨大な規模の予算が計上されている。

 ボーイングE-3セントリー空中早期警戒管制機をどのように置き換えるのが最善か、何年も水面下で検討された後、空軍は23年度にE-3後継機に227百万ドルを計上し、新型機を配備する可能性がある。ケンドールによると、ボーイングE-7ウェッジテイルWedgetailがAWACS後継機で有力候補だが、正式な調達決定の前に市場調査を済ませるという。

 ペチアによれば、空軍は次世代航空優勢(NGAD)に16億5000万ドルを要求し、約1億3300万ドルの増額で、ほとんどが第6世代戦闘機に関連する高度なセンサーと弾力性のある通信装備用だという。また、NGADとB-21を強化する「忠実なるウィングマンLoyal Wingman」スタイルの無人機では空軍の最新の専門用語である「高度連携型機材advanced collaborative platforms」用の113百万ドルも含まれている。

 先進エンジン開発プログラムに3億5400万ドルを投じ、適応エンジン技術プログラムの2億8600万ドルと次世代適応推進の6600万ドルを含む。

 先進戦闘管理システムプログラム向け予算は、23年度に約28百万ドル増加し、231百万ドルとなるとべチアは述べた。■


F-35 cuts, F-15 boost, and E-3 replacement: Air Force's $170B budget makes big moves in FY23


By   VALERIE INSINNA

on March 28, 2022 at 1:31 PM


2023年度国防予算原案で4%増7,730億ドルを提案したバイデン政権には、現実の脅威、インフレに加え、議会の反発が待ち受ける。23年度予算については今後もお伝えします。

  

 

 

ワイトハウスが3月28日発表した計画では、国防総省の2023年度支出は4%増となる。昨年政権が希望した額を大幅に上回るが、議会共和党はこれでも満足しないだろう。

 政府高官によれば、総額7,730億ドルにはロシアと戦うウクライナ支援資金、軍用機や核抑止システムで新たな投資、「北朝鮮、イラン、暴力的過激派組織を含む持続的脅威」に対抗する資金を含む。

 この支出計画は、2022年度レベルより300億ドル以上(4%)増加になる。

 昨年、ホワイトハウスは3%以下の増額を要求し、共和党および穏健派民主党との1年にわたる争いを引き起こした。最終的に国防総省予算は増額された。

 要求額が増えても、議論は繰り返される公算が強い。先週、上下両院の共和党議員40人が、インフレ進行と世界的な脅威の増加を受け、国防予算で少なくとも5%増額をホワイトハウスに要求した。ミシシッピ州選出のロジャー・ウィッカー上院議員Sen. Roger Wickerはホワイトハウス要求を「戦略的に不健全」とし、ロシアや中国など脅威を抑止するべく原案を変更すべきと主張した。

 「課題に対応するため、各軍トップは、より多くの要求をしている。艦船、飛行機、兵器、衛星、そして訓練の充実を求めている」(ウィッカー議員)。「バイデン大統領は、逆に、任務遂行に必要な資源を減らそうとしている。戦略的に不健全であり、将来の紛争や我が国への脅威のリスクを増大させる可能性がある」

 月曜日の声明でバイデン大統領は、予算提案について「国家安全保障への歴史上最大の投資の一つで、世界で準備、訓練、装備がもっとも整った軍であり続けるため必要な資金」と呼んだ。

 ホワイトハウス当局者は、予算案が承認されれば、2年間で国防費が9.8%増加することになり、「米国の抑止力を維持・強化し、重要な国益を推進するため必要な資源」を提供できると指摘した。

 研究、開発、試験、評価用予算の重視は続き、9.5%増1,301億ドルを「過去最大」と称している。内訳は極超音速兵器に47億ドル、マイクロエレクトロニクスと5Gネットワークに33億ドル、バイオテクノロジーに13億ドルを含む。

 議会は「旧式装備」の処分計画を昨年破棄したが、政権は再び同様の提案で27億ドル分の再優先化を求めている。空軍は150機を退役させ、MQ-9の100機をその他政府機関に移管し、海軍は24隻を退役させる(16隻は耐用年数前に退役させる)。

 予算案では、欧州抑止力構想に62億ドル、ロシア侵攻を食い止めるウクライナ向けに3億ドルを要求している。国防総省は、中国が依然「ペースメーカー」であることから、インド太平洋地域の抑止力構想に61億ドルを要求している。

 また、核3本柱の近代化予算では、核関連事業に344億ドルを計上する。内訳は、コロンビア級潜水艦に63億ドル、B-21爆撃機50億ドル、地上配備型戦略的抑止力と呼ばれる次世代大陸間弾道ミサイル36億ドル、核指揮統制システム48億ドルを投じる。

 国防総省は、マイクロエレクトロニクスに33億ドル、極超音速兵器と指向性エネルギー兵器のサプライヤー拡大に6億500万ドル、「重要材料」に2億5300万ドル、鋳鍛造に480億ドル、バッテリーとエナジー貯蔵に43百万ドルの投資を提案している。予算概要でホワイトハウスは国防産業基盤を技術革新の源泉としてアピールしている

 「DODは、イノベーションを進め、高価値技術を生み、戦略的競合相手への米国の優位性を確保し、連邦政府の研究開発全体で高賃金雇用を創出する重要な役割を果たしている」とホワイトハウスは総括している。

 「新予算は、イノベーション推進につながる画期的技術に投資し、防衛技術産業基盤を支援し、米国の技術的リーダーシップを確保し、次世代防衛能力の開発を支えるため、防衛研究、開発、試験、評価資金に優先順位をつける」と、述べている。

 国防当局は、予算提案に購買力低下の反映を認めている。国防総省は、燃料価格上昇で1月中旬に予算を使い切った。

 バイデン大統領は22年度の国防・国家安全保障全体に7,530億ドルを要求したが、議会は最終的に7820億ドルへ増額した。

 キャピタル・アルファ・パートナーズのバイロン・キャランByron Callanは、共和党の目標は国防・安全保障費全体で8,750億ドルと見ている。■

 

Biden requests $773 billion for Pentagon, a 4% boost

By Joe Gould and Leo Shane III

 Mar 29

 

Megan Eckstein and Stephen Losey contributed to this report.

About Joe Gould and Leo Shane III

Joe Gould is senior Pentagon reporter for Defense News, covering the intersection of national security policy, politics and the defense industry.

Leo covers Congress, Veterans Affairs and the White House for Military Times. He has covered Washington, D.C. since 2004, focusing on military personnel and veterans policies. His work has earned numerous honors, including a 2009 Polk award, a 2010 National Headliner Award, the IAVA Leadership in Journalism award and the VFW News Media award.


2022年3月28日月曜日

ロシア空軍が航空優勢を確保できない理由に、西側と全く異なる空軍用兵思想があった。今回の失敗から進化する可能性は?

 





シアのウクライナ侵攻開始から1カ月経過したが、ウクライナ防衛軍は不可能を可能にしたかのように、各地でロシア地上軍を阻止し、ロシアの圧倒的な数の優位にもめげず、空域を確保している。

 ロシア空軍は米国に次ぐ世界第2位の規模だが、運用は米空軍と全く異なる。ロシア軍は確かに苦しんでおり、ウクライナ上空の失敗は、ロシアの戦争へのアプローチそのものの問題だ。



米国の考える戦闘と航空戦力の意義

 米国では、戦闘作戦を6つの想定段階に分け、各段階で、中間目標に向け部隊間が協力し合う。指揮官と幕僚が大規模戦闘作戦を視覚化し、要件を考慮した作戦立案が基本となっている。2009年まで、米国のドクトリンは4段階だったが、対テロ戦争の教訓から劇的に変化した。

 6段階とは、形成、抑止、主導権の獲得、支配、安定化、文民権力の実現、形成への回帰だ。

 この段階的アプローチでは、指揮官は次の作戦段階の前に、各中間目標を完了するため十分な人員、資源、装備、時間を部隊へ確保する。IRIS Independent Research の社長レベッカ・グラント博士Dr. Rebecca Grantが 13 年前に Air Force Magazine で指摘していたが、米国の戦闘ドクトリンでは航空戦力はあらゆる局面で役割を果たし、かつ最重要局面で重要な役割を担う。

 情報、監視、偵察(ISR)、武装哨戒などの航空戦力は、抑止力として不可欠だ。また、米軍機は主導権を握り、空爆を行い、ISRを提供する上で極めて重要な役割を果たす。制圧段階では、米軍機が制空権を握り、敵機や防空網を排除・軽減した上で、地上軍に近接航空支援とISRを提供する。安定化と民政移管の段階では、偵察から武力支援まで、新政権を正統化するため再び航空戦力が頼りにされる。

 大規模で圧倒的な航空戦力が、アメリカの戦争ドクトリンでは主導権を握る段階と支配する段階の両方で不可欠である。航空機は、敵の空中脅威を迅速に無力化し、その後の空爆と地上部隊の支援を同盟国航空機の危険なしで実施可能とする手段だ。

 現実に、米国の戦争アプローチは航空戦力中心に構築されており、地上部隊は目標達成のため航空機や長距離兵器システムと組み合わせて使用される。地上部隊の重要性を軽視しているのではなく、米国式戦闘方法は航空優勢の確保を強調している。


ロシアの軍事ドクトリンでの空軍力の意義

 これに対し、ロシアの軍事ドクトリンでは、戦争へのアプローチが大きく異なり、紛争の前段階と初期段階(グレーゾーン作戦)ではロシアが新世代戦争(NGW)と呼ぶものを重視し、紛争では慎重かつ予算重視の武力行使を行うとある。ロシアでは、安価な手段が実行不可能な場合のみ、高価な資産を使用する。これは、圧倒的技術力を持つアメリカのアプローチと全く対照的である。

 ロシアの軍事ドクトリンが、航空戦力を背景とするアメリカと異なり、航空戦力を地上軍に従属させる存在として捉えていることが重要である。フォーブスのデビッド・アックスDavid Axeによれば、ロシア空軍は空の火砲として使用されている。これは、NATOの巨大な航空戦力と大規模衝突した場合に航空優勢を失う可能性があることをロシアが理解しているためと考えられる。ロシアのドクトリンは、負け戦に勝つことよりも、戦闘空域を支配できない可能性を甘受している。

 ロシア軍事ドクトリンには、敵制空権を迅速に完全制圧すること、敵防空網を迅速に排除するとはともに書かれていない。アメリカのワイルド・ウィーゼルF-16のような敵防空制圧任務(SEAD)の特化機材がロシアにはない。ただし、ロシア機は、防空システムを攻撃する対レーダーミサイルを使用することができるし、実際に使用している。

 その代わり、ロシアは長距離射撃を重視し、自軍上空を支配するために航空機に任務を与えるよりも、自国の統合防空システムの使用が優先されている。

 ロシアの戦争方式は、長距離攻撃で敵の防空・航空機の効果を下げ、大量の砲撃、ロケット、ミサイルで火力優勢を獲得し活用するものだ。航空機は、戦域支配の手段ではなく、地上軍を支援する。アメリカの軍事ドクトリンのバックボーンが航空戦力ならば、ロシアのは大型戦車部隊と大砲である。

 ロシアの戦争への考え方は、戦闘初期段階で敵を懲らしめ、ロシアに有利な形で紛争を迅速解決するというものだ。米国議会調査局が指摘するように、敵対国の領域アクセスを拒否することはロシアの目標ではない。

 ロシアの狙いは、司令部やインフラなど重要施設を狙い、機能を低下させて、有利な条件を相手に受け入れさせることにある。そのため、ロシアの戦略は、全国的な制空権の確保は前提としていない。ロシアが航空機と統合防空システムで空域を支配することはない、と主張しているのではない。ロシアはそうするだろうし、そうしているのは確かである。しかし、ロシアは、目的の達成に制空権の確立が不可欠とは考えていない。

 ロシア軍は、混沌とした戦場環境で敵機味方機の識別が難しいようで、ロシア軍上空でロシア航空機はリスクが高いように思われる。

そのため、ロシア軍機は砲兵隊同様の扱いで、地上軍支援の空爆に従事している。


ウクライナの現実からロシア航空戦力ドクトリンも変化するはず

 ロシアは火力優勢の補完手段で航空戦力を使用しているが、ウクライナでは、ロシアが長年主張してきた統合防空システムも効果がないことも証明されている。ウクライナ空軍は損失を被っているものの、開戦から1カ月以上経過した現在も連日出撃している。

 ウクライナ戦闘機は、主に夜間に出撃し、防衛部隊に航空支援を提供し続け、ウクライナのドローンは各地でロシアに大打撃を与えている。一方、ロシア軍機は1日に数百回の出撃を続け、ロシア領内からウクライナ国内目標に長距離攻撃を実施し、停滞している地上軍に長距離砲として機能している。

 ロシアがウクライナの空を支配できないのは、航空機を長距離砲やロケット弾の延長として使用しているためで、ロシアのドクトリンは明らかに机上の想定通り機能していない。

 ロシアがウクライナでの航空優勢確保に苦労している理由で、おそらく最も重要な理由は、ロシアの戦争へのアプローチが航空優勢の重要性を著しく過小評価していることだろう。ウクライナ戦争がどのような結末を迎えるにせよ、ロシアの航空戦力に関する考え方は、今後数年で大きく変化する可能性があるように思われる。■


How Russia's warfare doctrine is failing in Ukraine - Sandboxx

Alex Hollings | March 23, 2022

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.