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2017年10月30日月曜日

防衛体制の今後、甘い期待の日本が米国に梯子を外される日



あくまでも現状の延長線を予期する日本側に対して米国はもっと先の選択肢を想定しているようです。都合よく考える日本側の論理(例 なぜ国境から遠く離れた地点の事態に日本が巻き込まれる必要があるのかとの一部野党主張)はどんどん現実からかい離していくとわかります。世界の(特に米中の)考え方を日本が正確に把握したうえで重大な決定をしていく必要があります。なかでも憲法改正特に第九条改正が待ったなしに思えるのです。日本のこれからの方向性は過去の延長線ではなく、あらたに設計する未来の設計図にあると思います。


Time to Let Japan Be a Regular Military Power

日本に軍事力整備を許す時が来た
American officials have forgotten the purpose of alliances: defense, not welfare. 米側は同盟関係の根本目的を忘れている。防衛であり、安泰ではない。
A Japanese Ground Self-Defense Force soldier takes part in an annual training session at Higashifuji training field in Gotemba, west of Tokyo, Japan August 24, 2017. REUTERS/Issei Kato
October 29, 2017


  1. 日本国民は安倍晋三首相を支持していない。首相には別の人物に務めてほしいと考えている。だが連立政権は衆議院選挙で三分の二議席を確保した。安倍首相はこの勝利をてこに防衛面での対米依存を終わらせることが可能だ。
  2. 第二次大戦終結後70余年たつが日本には先の戦争の負担がまだ残り世界における役割に制約が残っている。だが中国や北朝鮮の脅威が日本に向かい日本は積極的な外交防衛政策の採用を迫られている。しかるに米国が残した「平和憲法」がいまだに日本の手を縛っている。第九条が軍事力保有を禁じているのだ。
  3. 米国は大戦中のソ連との同盟関係の解消と中華人民共和国(PRC)の出現で態度を逆転し、日本の再武装化に理解を示すした。日本の政策決定層は憲法解釈により「自衛隊」(SDF)を創設した。現在も日本政府は憲法を変更せず戦争への強い嫌悪を示す国民とともに軍事支出に上限を課し、SDFの役割も変更していない。日本には都合いいことに米国が防衛してくれた。
  4. 日本の隣国は戦時中の日本軍の残虐な占領の記憶が残り、ワシントンが日本の完全軍備化を妨げたことを歓迎した。アメリカが「瓶のふた」の役目をしているといみじくも言ったのは海兵隊のヘンリー・スタックポール大将Marine Corps Gen. Henry Stackpoleである。日本に友邦国がないわけではく台湾がその例だが、韓国、フィリピン、中国、オーストラリアはおしなべて日本の安全保障面での役割拡大に警戒的だった。さらに二十年間の日本経済の不振でSDF予算の大幅増は困難だった。
  5. それでも日本は相当の実力のある軍事組織を整備している。予算支出は昨年は500億ドル近くになった。陸軍部隊は小規模ながら海軍空軍部隊は相当の能力があり近代装備を保有している。だが外部脅威は日本の支出規模を凌駕している。
  6. PRCは日本の四倍の軍事予算を使う。さらに核兵器も保有している。過去二回の対日戦では無力だったが、現在の軍事力は着実に伸びており、日本との差は開くばかりだ。東京のテンプル大学のジェフ・キングストンJeff Kingstonは「軍事競争では一方的に中国が有利だ」と解説している。チャイナデイリーUSA版は「好戦的な阿部」が軍事支出を増やしているが「日本にここまでの軍事装備は安全保障上不要だ」と述べている。
  7. 北朝鮮は別の課題だ。平壌の通常軍事力は朝鮮半島外に展開する能力は皆無に近いが、核兵器を整備中であり、化学生物兵器もある。ミサイルで日本を容易に標的にし米国同盟国も狙われる。
  8. 安全保障環境の悪化が日本に圧力となっている。安倍首相は2012年就任後から日本に強い役割を模索している。防衛予算増、新型兵器の導入、SDFの一層広い役割を提言し、自衛隊はイージスアショアミサイル防衛装備、トマホーク巡航ミサイル、F-35戦闘機を主な関心対象とする。
  9. 2014年には第九条の解釈変更で限定的ながら「集団的安全保障」に道を開き、攻撃を受けた米軍への防御が可能となった。日米防衛協力ガイドラインも翌年に変更している。
  10. こうした変更は論議を呼んだが内容は中途半端である。集団的安全保障は合憲と解釈されるようになったが、極めて狭い範囲での実施しか想定していない。道下徳成政策研究院大学院大学教授は新措置では日本自体の安全が危険にならないと米艦船の防御はできないと見ている。さらに日本政府は第九条改正を実現していない。このため軍事行動の選択肢は狭まったままだ。インディアナ大のアダム・P・リフAdam P. Liffは「憲法改正がないままだと一層大規模に第九条の解釈を変更しようとるか、日本の軍事力の海外展開は国内政治再編でもない限り実現不能のままだろう」と述べる。
  11. 安倍首相は北朝鮮への対抗を名目に変更を推し進めようとし、有権者の恐怖を利用した。選挙公約を念頭に安全保障関連で政策推進を一層強く加速するかもしれない。リフは「憲法第九条の解釈の変遷は戦略環境や国内政治の動静が大きく推進してきた」と述べている。小野寺五典防衛相は防衛装備品取得のガイドラインに手をつけ、巡航ミサイル等の新兵器導入を検討し敵基地攻撃能力の整備を検討するとの発言があった。政府は再び憲法改正の政治課題を俎上に載せそうだ。国内エリート層には核兵器取得の検討も見られる。
  12. ただしこうした変更に対する抵抗も熾烈だ。連立政権の相手公明党は安倍の動きに加わることに及び腰だ。財務省は巨額政府債務を軍事支出増の反対理由に挙げる。憲法改正に向けた首相の努力は支持率低下につながったが金正恩の無謀な動きで助けられた格好だ。国民も揺れ動いているがまだ時は熟していない。「日本国民はまだ決心していない」とMIT国際研究センターのリチャード・サムエルスRichard Samuelsは述べている。
  13. さらに憲法の制約を緩和する努力が不十分だ。政府が部隊構成や外交政策を変更すれば支出増とともにリスク増大も覚悟する必要がある。だが劇的な変化は可能性が低い。安倍政権は米国の安全保障の約束がこのまま続くのか確信を持てないようだ。だからといって日本が防衛責務を全部負担するつもりはない。一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの船橋洋一からは「米国の日本防衛への取り組みが弱体化する」可能性を上げてこの動きにくぎをさす。
  14. 対照的に安倍政権は従来以上のコミットメントを米国に求めている。匿名条件で外務省関係者は「戦略的環境は従来より厳しく、一緒にどう対応するのかを検討せざるを得ない」と述べている。つまりワシントンと一緒にいうのだ。「米国には防衛姿勢を再確認してもらいたい。核抑止力も含まれる」と小野寺防衛相は日米閣僚級会合で発言している。「北朝鮮の脅威を念頭に揺らぐことのない米国のコミットメントを抑止力強化に向けることを確認した」
  15. ワシントンも対応している。8月の日米安全保障協議委員会(いわゆる2+2)の共同声明では両国が「日米同盟のさらなる強化に向けた具体策とアクションの展開の意向を共有した」と述べ、「在日米軍の安定したプレゼンスの維持」を含むとした。同席したティラーソン国務長官からは両国が「日本防衛のため米国の大幅な抑止力が大きな意味を果たし、アジア太平洋地区での平和安定にも役立っている点を強調した」と解説していた。
  16. 米国の関与を深めようと日本は北朝鮮への国際社会の一層の対応を後押しした。河野太郎外相は北朝鮮が「非核化への姿勢を明白に示した」ことへの対応とし「対話はない」と発言。安倍首相は「北朝鮮に前例のない高いレベルの圧力をかけ同国の政策を変更させる」と主張し、各国は協調して北朝鮮への「物資、資金、人員、技術の流れを止めて核ミサイル開発を阻止する」べきと主張。さらに必要なのは「対話でなく、圧力」と、ワシントンが主張する「すべての選択肢」がテーブルにある、つまり戦争についても支持を表明した。
  17. このように強硬な政策を示す日本として国力相応の軍事力整備が適当になろう。しかし道下教授は「防衛とはリスクヘッジであり、完全な防衛体制を整備しようとすればとんでもなく大きな予算が必要となる」と懸念を示す。日本政府の視点からすれば米国に任せればいいのになぜ自分で支払う必要があるのかとなるだろう。
  18. 日本政府の戦略は日本には良いが米国にはそうはいかない。米政府関係者は米国民に負担をさせながら覇権をもて遊ぶ立場だがドナルド・トランプ大統領は違う見方をしている。二年前のトランプは中国の脅威について聞かれてこう答えている「もしこちらが一歩引けば、米国の同盟国は自国防衛を充実させるのではないか」「どうしてこちらが各国を守る必要があるのか」ただしそれ以降本人は前任者の路線に方向転換しており、本人が忌み嫌うバラク・オバマも例外でない。
  19. もちろん、米国が東アジアに駐留するのは米国自体の安全保障のためと説明する向きがあろう。ただしそれは第二次大戦終結時の話だ。冷戦は終了した。ロシアが旧ソ連に代わり、日本は経済復興を遂げた。日本には自国防衛能力は十分整備できるし、隣接国と協調すれば地域大の安全保障態勢が生まれる。
  20. 一部にはさらなる日本の役割を期待する向きがある。ディヴィッド・フェイスDavid Feith はウォールストリートジャーナルで在日米軍5万人は「ワシントンで一番価値のある地域内紛争抑止効果」と述べている。そのほかにも同様の主張をする向きがあるが支持は得られていない。米軍が予防するという戦争はどんなものなのか。
  21. 中国と日本は尖閣諸島をめぐり対立中だが今すぐ開戦する状況ではない。だが武力衝突が発生したらどうなうか。豊かな日本が発生抑止に動かないはずがない。沖縄駐留の海兵隊遠征軍は日中戦というより朝鮮半島対応を想定しており、韓国が補助する想定だ。さらに中国台湾間の衝突をワシントンは回避する必要がある。台北は良き友人だが核装備している大国との戦いに巻き込まれる価値はない。台湾防衛に携わるより台湾を武装させる方がよい。
  22. これ以外の可能性は米国が完全に距離を置くべき小規模武力衝突となる。ミャンマー、タイ、カンボジア、ヴィエトナム、インドネシア、マレーシア他で戦争・衝突・崩壊の組み合わせで事態が発生するかもしれない。各事案で犠牲者が発生し不安定化が生まれるだろうが、米国の根源的な利益が危険になる事態ではなく、軍事介入の正当化はできない。アメリカがすべての問題解決にかかわる必要はない。
  23. 日本は自国防衛を全面的に進めるべきだ。だが日本の通常防衛力のみに責任を期待するのでは不十分だ。米国は核の傘を再考すべきだ。日本防衛で米国は東京防衛のためロサンジェルスを犠牲にするリスクを負っている。北朝鮮が米本土を直撃する能力を整備しても米国は無謀な動きに対抗して行動するのみだ。
  24. 明らかに米国は報復力で攻撃を抑止しようとしている。もし歴史上に見られるように抑止力にほころびが出ると戦闘は米本土に及ぶだろう。日本の軍事力整備力を考えればこのリスクを取るのは健全でない。日本国民は核戦力整備には抵抗があろうが、わずかな危険の可能性で防衛支出は米国が自国民に費用負担させる間は最小限に抑えられる。存亡のため今以上の努力が必要と理解できれば、日本は今と違う路線を選択するだろう。
  25. 残念ながら米関係者は同盟関係の意義を忘れてしまっている。安泰ではなく防衛だ。ワシントンは米国防衛のために条約を結ぶべきであり、他国防衛が目的ではない。第二次大戦後の米国は友邦国を専制勢力から適度に防御してきた。この戦略自体は成功してきたが、もう過去の話だ。ワシントンは外交政策で調整を必要としており、軍事力も呼応させるべきだ。今や強力で成功している米国の同盟国が十分に機能できる。米国は各国と利害が一致する範囲で協力を続け、各国では対応できない脅威に目を光らせばよい。各国で可能な内容を米国が自分で実行する必要はない。
  26. 米関係者は日本政府にいちいち指示するのはやめるべきだ。日本国民は自国の権益を考えて国防外交政策を決定すべきであり、アメリカの要望を満足させるのが目的ではない。ワシントンは意向を伝えるだけでよいのでありもっと大事なのは望まないことを伝えるべきだ。つまり安全の保証ではなく、部隊配備せず、日本のために戦闘に入る約束も不要だ。
  27. 米国は70年余も世界の警官の役目をはたしてきた。世界はその間に大きく変化している。そのため米国の政策も日本関係含め変更すべきだ。安倍首相は日本防衛で対米依存を一層強化する姿勢のようだ。ワシントンは逆に安全保障で自立化を日本に諭すべきなのだ。■
Doug Bandow is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is the author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World (Cato Institute) and The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea (co-author, Palgrave/MacMillan).
Image: A Japanese Ground Self-Defense Force soldier takes part in an annual training session at Higashifuji training field in Gotemba, west of Tokyo, Japan August 24, 2017. REUTERS/Issei Kato​


2015年12月25日金曜日

28年度防衛予算のあらましを米海軍協会が速報しています


新聞発表では5兆541億円と初めて5兆円台になったことが記録更新ということでしょう。米海軍協会が早速紹介しています。ドル表示にすると421億ドルとなり、ちょっとインパクトが減りますが、相当の規模だと行っていいでしょう。中身が問題で政策に呼応しつつやっとUAVの導入も決まり、ISRを重視する本来の方向に向かいつつあると評価します。

Cabinet Approves Record $42.1 Billion 2016 Japanese Defense Budget

December 24, 2015 3:01 PM

Mitsubishi F-15J. Photo by Toshi Aoki via WikipediaMitsubishi F-15J. Photo by Toshi Aoki via Wikipedia

安倍内閣は平成28年度防衛省予算に記録を更新する421億ドルを計上した。これは中国の軍事力整備、とくに人民解放軍海軍(PLAN)を念頭においた措置と見られる。

  1. 今回の予算措置で日本は兵力投射の手段を整備し、新装備導入で前方配備米軍部隊との共同作戦体制を更に進めることになる。

  1. 「今回の予算では日米安保協力をとくにISR(情報収集監視偵察)分野で進める」と防衛省関係者がAP通信に語っている。

  1. 次年度予算の調達装備は空ではロッキード・マーティンF-35AライトニングII共用打撃戦闘機(6機)、ベル・ボーイングV-22オスプレイティルトローター機(4機)、三菱重工SH-60Kヘリコプター(17機)に加え、ノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホーク無人機(3機)とボーイングKC-46Aペガサス空中給油機の複数年度調達も始まる。

  1. 海では新型イージス誘導ミサイル駆逐艦1隻とそうりゅう級ディーゼル電気推進攻撃潜水艦(SSK)12号艦を調達する。

  1. その他艦船航空機の性能改修、弾薬類の調達、普天間海兵隊航空基地の移転関連、沖縄からグアムへの米海兵隊移動関連が含まれる。

  1. 新規調達装備の多くが東シナ海の尖閣諸島防衛と関連し、遠隔地島しょ部分の防衛が予算支出上で大きな比重を占める。今年9月に政府が防衛政策の変換をして今回がはじめての予算となる。

  1. 「政治面では安倍政権の安全保障政策は日本を世界の中に組み込むことがねらいで、米国と一緒に行動できる能力の整備が念頭にある」とUSNI Newsに寄稿するカイル・ミゾカミが解説している。「自衛隊は日本防衛で米軍と同等の能力を有する。安倍政権で自衛隊の相互運用能力の整備が焦点になっている」

  1. 日本が導入を目指す装備の大部分で高度の情報共有、目標データの共有が前線配備され他米軍部隊と実施可能となり、整備が進むNIFC-CA(ニフカ海軍統合火器管制防空構想)に組み込まれる。

  1. 中国は日本の防衛力整備を日本帝国時の軍事行動と意図的になぞらえる発言を繰り返している。「日本の軍事安全保障面での動きは歴史的経緯からアジア各国ならびに国際社会が注視している」と中国外務省報道官洪磊が24日述べ日本を牽制している。「日本が歴史を直視し、平和的発展の途を外れることなく域内の平和安定に建設的役割を果すよう希望する」■


2014年8月31日日曜日

H27概算要求に見る日本の防衛力整備のポイント



世界の中で例外的に冷戦構造の残るこの地域内で日本が十分な防衛力を有し、安定を守ることは「軍国主義」でもなんでもありません。国民として防衛力の整備、それで何を目指すのかを見守る義務があるでしょう。本ブログではISRの意義、装備についてご紹介していますが、やっと日本でもISRが前面に出てくるようになってきましたね。うれしいことです。






Japanese Defense Ministry Requests 2.4% Budget Hike

Aug. 28, 2014 - 03:45AM   |  
By PAUL KALLENDER-UMEZU   |   Comments
More Muscle: A Japanese Atago-class guided missile destroyer sails in formation with US Navy and Japan Maritime Self Defense Force ships. Japan initially wants to add two of the destroyers.
あたご級誘導ミサイル駆逐艦が米海軍と併航している。日本はあたご級2隻を追加建造する (MC2 Adam Thomas/ / US Navy)
TOKYO — 日本は防衛力を整備し、近隣諸国が危険ににさらされれば援助の手を差し伸べるとの公約を着実に実現している。防衛予算規模を90年代のピーク時程度にもどそうとしている。
  1. 防衛省の2015年度概算要求は2.4%増の4.9兆円(472.5億ドル)で2000年代の減少傾向を反転させるもの。東アジアで不安定さが増していることを理由に防衛省は喫緊の課題は情報収集・監視・偵察能力(ISR)の向上、海上監視と弾道ミサイルへの対応を強調しつつ、南方島嶼部への侵攻を未然に防ぐこともとりあげている。

  1. 支出で最大規模は川崎P-1哨戒機20機を2018年度開始2021年までに調達(3,781億円)すること。二番目があたご級イージス駆逐艦2隻の追加で2020年度末までにイージス艦を8隻体制にする。

  1. 三番目が1,315億円でF-35A6機を航空自衛隊に調達する予算だ。なお、同機は今年度予算で4機分の調達予算を計上している。

  1. この4.9兆円は正面装備だけの金額で、次期政府専用機導入や事務経費、米軍再配備関連を含めると5.05兆円になる。

  1. 防衛を巡る思考の変化も反映しており、㍻26年度防衛白書では「高圧的な行動」と「力による現状変更の試み」を批判し、中国が昨年11月に一方的に東シナ海上空に防空識別圏を設定したことで警戒を高めている。

  1. 白書では北朝鮮を「域内のみならず国際社会にも大きな不安定要因」として、KN-08移動式大陸間弾道の名称をはじめて明記した。

  1. そこで防衛省は航空宇宙研究開発機構(JAXA)と連携して宇宙配備弾道ミサイル早期発見能力を整備するとし、今後打ち上げられるJAXAの光学偵察衛星に赤外線センサーの実験モデルを搭載する。

  1. 離島防衛と域内軍事活動の偵察でISR能力整備が最優先事項となり、防衛省はグローバルホークUAV3機を導入し空からの監視探知能力を拡充する他、中国海軍を監視する衛星群の整備提言を宇宙開発戦略本部から受けている。
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  1. 陸上兵力では小規模ながら揚陸戦能力の整備がはじまっており、空では83空を解体し、沖縄に9空を編成する。また303沿岸監視部隊を前方配備する。

  1. 航空自衛隊では主力戦闘機F-15の近代化、F-2の空戦能力向上努力を続けるが、F-35に過剰な期待をするあまり将来の戦闘機部隊整備が不足するのではないかとの指摘もある。日本戦略研究フォーラムの研究員は匿名を条件に、「日本はF-35に期待をしすぎており、F-35さえあれば航空自衛隊が制空権を確保できると考えている。たしかに制空権は軍事活動を成功裏に行なうための条件だが、現状の日本には戦闘機ギャップがあり、F-35が来るまでは日本周辺で航空優勢を維持するのは難しい」と語っている。

  1. ISRや宇宙配備ミサイル監視、さらにヘリコプター搭載用の新型対潜ソナーなど新規研究開発に着手しているが、日本の防衛予算は2003年の4.6兆円が2012年に4.6兆円となった一方で中国は4倍増としており、遅きに失したと指摘する向きもある。

  1. 太田文雄は海上自衛隊の退役海将で情報本部長も務めたが、予算増でも員不足のままと指摘し、中国が弾道ミサイル潜水艦を増備し抑止力を整備する琴への対応策を今から考えておく必要があると語っている。■



2009年7月31日金曜日

日本の防衛力整備の方向性を考える



New Missions for Japan

aviationweek.com 7月26日

日本政府の危惧材料は北朝鮮の弾道ミサイル、中国の高性能戦闘機・巡航ミサイル、領土問題と国土防衛用の基地と新型機の確保だ。予算の増額は考えにくいため、防衛力の大幅増強は不可能となっていることがこれに加わる。このプレッシャーにより政府は相反する政策上の優先順位を検討している。

l 防衛対象は何か

l 装備近代化の選択肢はなにか

l 海外派遣部隊の展開が軍事脅威と周辺国に写らないためにはどうすべきか

【未整備の防衛装備は多い】 また、国内防衛産業が非常に高価な装備(例 F-2やAH-64アパッチ攻撃ヘリ)を生産してきたが、国内生産抜きに装備を調達しようとしている。整備導入で実施済みの案件にはイージス護衛艦、ペイトリオットPAC-3、KC-767空中給油機、E-767AWACSがある。しかし、自衛隊には超音速巡航が可能な戦闘機がなく、巡航ミサイルの追尾ができないし、長距離の航続飛行が可能な無人機がないため本土防衛とシーレーン監視ができない。また高精度の誘導兵器があれば、遠隔地の領土を侵攻する他国の野望を防ぐことが出来るはずだし、長距離輸送機があれば国際活動としてインド洋の海賊対策とか災害救援活動も広く展開できる。

【F-22は断念するのか】 一方で、米国の政治上・予算上の問題と日本の政権基盤が不安定になっていることから、F-22調達は先が見えない状態となっている。米空軍向け生産が終了すると同機の日本向け価格は非常に高価になるので、日本の防衛省は他の選択肢としてユーロファイター・タイフーン他を検討している。さらに、F-22購入が国会で承認されるかは不確実だ。麻生首相は8月30日の総選挙を決断したが、麻生政権ならびに自民党への国民の信望が低い状態では防衛装備調達にも影響が出よう。
【本当はF-22がほしい日本】 「日本がほしいのはF-22です。しかし、日本が求めるのは実は性能であり、機体そのものではありません。日本が求める性能を発揮できるのはF-22だけということなのです。他国の脅威が解消となる見込みはありません。他国の軍事能力が増強されれば、日本は対抗して長距離で捕捉撃墜する能力がほしくなるでしょう。」(チップ・アターバック中将 第13空軍司令官 在ハワイ・ヒッカム空軍基地)「Su-30MKI(中国のSu-30MKKのインド版)を操縦する機会があり、何度も制御限界を超える操作をしましたが、全部失敗しました。非常に安定度が高く、反応性もよい機体です。MiG-29よりもはるかに信頼度が高く高性能です」(同中将)

総論的には日本がほしいのはラプターの超音速巡航飛行性能(マッハ1.6)と運用高度(6万5千フィート)ならびに大型レーダーと電子監視能力だ。その他にアクティブ電子スキャンアレイレーダーで130マイルを探知できることがあり、この距離はたまたま航空自衛隊南西航空群の責任範囲から中国東沿岸までの距離と一致する。ラプターはレーダー探知サイズが極小で探知されることなく目標機に接近できるのだ。「F-22によって米国は敵の防空網の中に侵入することができ、これまでは実施できなかった攻撃他の任務が実施できます。日本は別の見方をしています。日本は本土防空能力の向上をめざしています。F-22ならスタンドオフで防空能力が実現できますが、F-35では無理です。第五世代戦闘機の少数配備は本土防空にはきわめて道理にかなった選択となります。」(アターバック中将)

【防衛論議に予算制約の壁】 日本国内では遠距離作戦運用能力を獲得すべきか専守防衛に徹すべきかの議論が常にある。問題は両方を実現する予算があるかどうかだ。「予算使途の目標を正しく設定できれば簡単です。長距離空輸、作戦持続、ISRなのか、C4のシステムなのか、同時に違う目標を実現することも出来ます。日本政府は双方の目標を追求しているようだ。それは困難でしょう。まず、空中給油(KC-767)と長距離空輸(C-X)、ひゅうが級ヘリ護衛艦を着手しました。全部の完成を目指すと予算問題に触れざるを得なくなります。」(東京在住の合衆国政府関係者)

【国内生産の呪縛から解かれる日本】 「国内生産は引き続き防衛装備調達の決定に大きな要因ですが、かつてのような最重要項目ではなくなっています。20年前に航空自衛隊には米軍と共同で脅威に対抗する重要な作戦上の役割は持っていませんでしたので、国内生産を最優先に考える余裕がありましたが、いまや作戦効果や運用能力が一番の関心事になっています。」(米国政府関係者)
この新しい方程式の例が弾道ミサイル防衛への日本の努力増強だ。また、同国政府は輸出管理を緩和し、日米民間産業が共同してスタンダードミサイルのブロック2を開発できるようにした。その目的は日本側に米国パートナーとの共同開発を通じ、新技術へのアクセスを可能とし、市場も拡大することにあった。「日本には健全な防衛産業の基盤を整備してもらいたい。事実、われわれも利用をしたいのは日本が多くの分野で優秀だからであり、実際に依存している分野も多い。米国のミサイル防衛予算は削減されたが、ゲイツ国防長官はSM-3開発の継続のための予算確保を明確に言明している。これには日本側のノウハウと投資が組みこまれている。また、日本はペイトリオットミサイル用の部品を製造する唯一の外国である。いまや日本は製造面と研究開発の両面でより多くの達成が可能。それは両国の産業基盤にとって望ましいことであり、性能要求の観点から最適の決断が可能となっている」(上記米国関係者)

この変化の象徴が日本政府がAH-64アパッチ開発計画を大幅に制限することを決定したことだ。完成品を輸入するよりも国内生産をした場合が大幅に高価となるため。

「この新しい方針を巡ってはかなりの軋轢があったはず。これをきっかけに直接購入に勢いがつくのかが関心のまとですね。」(上記関係者)

その調達型式のリトマス試験紙となるのがF-XおよびF-XXだ。F-Xの構想は高性能超音速巡航可能戦闘機40から50機を購入するもので、F-22あるいはタイフーン類似機となろう。その後のF-XXの要求水準はF-35JSFの内容と類似している。

F-22輸出が最終的に承認されれば、日本側で同機を製造する余地はごくわずかとなる。防衛関係者は日本には高速、高高度対応可能戦闘機で広範囲の島嶼国家として中国国内150マイルまでの範囲で作戦可能な機体が必要と主張している。「日本は数ヶ月前に沖縄にF-4の交代としてF-15を移動させている。これは航空自衛隊が運用域を意識していることのあらわれだ。これまで日本はF-22を切望してきたが、ゲイツ長官が2010年度国防予算案を発表した際を境に米空軍がF-35を今後の中心にすることが明らかになった。

【日米相互運用は高まっている】 相互運用、基地共有、訓練・運用の共同化は既成方針だ。日本側の基地施設を米国他の航空機分散配置に利用する計画も進展している。2006年に合意された米軍基地の再配備では航空訓練施設の再配備も含まれている。戦闘機部隊を一時的にこれまで米軍がアクセスしていなかった基地に配備し、航空自衛隊との共同訓練を展開するもの。日米両国はこの構想を拡大したいと希望しているのは、緊急即応性の向上に定期的な機材配備が有益と判断されたため。

【海外での運用体制拡充が今後の方向か】 海賊対策の運用が安全保障に関する政策判断と政治的な判断のもうひとつの局面となる。日本の関与は空中給油機、海上監視機、長距離輸送機の導入の理由付けとなる。日本の防衛予算編成は国際的な関心の対象でもある。例を挙げれば、同国の長距離輸送能力はまだ初期段階だ。これがはるかかなたの場所に駐留する部隊を運用することになれば、通信、補給、運用維持の問題が浮上してくる。さらに、人道援助や災害復旧の目的に海外派遣を実施する能力の必要性はすでに認識されている。