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2023年7月27日木曜日

本当に真剣なのか。第二次大戦前に生まれたカタリナ飛行艇を米軍向けに再生産しようという企業が現れた。滑走路非依存型機種が必要というものの....

 


米国が太平洋で滑走路に依存しない航空機を求める中、カタリナ・エアクラフト社は、同社の改良型飛行艇がその役割を果たせると主張している




ロリダ州にあるカタリナ・エアクラフトは、第二次世界大戦を象徴する水上飛行機を、米軍が必要とする空中水陸両用作戦用の航空機に変えようとしている。

 次世代水陸両用機(NGAA)カタリナII双発ターボプロップ水陸両用飛行艇と名付けた同機は、海上パトロール、軽輸送、捜索救助などの任務を提供した歴史的なPBY 5カタリナをベースにしている。

 カタリナ・エアクラフトのローレンス・リース社長は、「NGAAカタリナIIは、先進的エンジンとエイビオニクスを搭載した近代的な飛行艇で、今日の他の飛行艇では提供できない能力を提供します」と語った。同社のローレンス・リース社長は、「カタリナ・エアクラフトは、フロリダ州ロングボートキーにある会社で、PBY-5の米国とカナダの型式証明を保有しています」と語った。

 同社の発表は、米国が中国のような敵対国との将来的な紛争において、大規模な空軍基地や滑走路が初期の標的となる可能性が高い環境で運用できる滑走路に依存しない航空機を求めていることによる。

 米空軍特殊作戦司令部は現在、MC-130J水陸両用能力(MAC)構想をテストしている。これはMC-130J特殊作戦タンカー/輸送機をフロートプレーンに改造したものだ。しかし、5月にお伝えしたように、米特殊作戦軍(SOCOM)の固定翼担当プログラム・エグゼクティブ・オフィサー(PEO-FW)ケン・キューブラー米空軍大佐によれば、同構想の初期デモンストレーションは、少なくとも2〜3年先だという。

 タンパで開催されたSOFウィークで、キューブラー大佐は「水力試験、サブスケール試験を行っている」。彼はまた、このプロジェクトが「航空機の開発以上のもの」を含んでいると強調した。さらにさまざまな海上状況がこのような航空機にどのような影響を与えるか、またメンテナンスやロジスティクスについても現在研究が進められていると述べた。

 大型飛行艇にも限界がある。巨大フロートで飛行するペナルティも、飛行艇では実現できない。それでも、現代版のカタリナはMACを補完することができ、またその逆も可能だろう。

 MACにとどまらず、米軍は過酷な場所からの作戦を実現可能にするべくさまざまな斬新な航空能力に関心を寄せている。

 カタリナ・エアクラフトは、火曜日に発表したメディアリリースで、NGAAカタリナIIの2つのバリエーション(1つは民間顧客向け、もう1つは軍用)を追求していると述べた。

 同社が "NGAA Catalina II Special Use Variant "と呼ぶ軍用バージョンは、「最大離陸重量(MTOW)40,000ポンドの非加圧、ツインターボプロップ、シーステイト3対応、水陸両用飛行艇で、軍の作戦概念(CONOPs)を支援する新規生産」であると同社はメディアリリースで主張している。

 シー・ステイト3とは、ビューフォート・スケールで、最大10ノットの「そよ風」と最大波高3フィートを意味する。

 同社によると、NGAAカタリナIIは「滑走路、芝生、土、砂、湖、川、湾、ブルーウォーターから運航可能な大型輸送カテゴリーの水陸両用飛行艇」だ。

 最大2,710ガロンの燃料容量があり、「19時間以上の任務が可能」。顧客の要望に応じて、他のグリーン・エネルギー・パワー・オプションも検討可能だという。

 同社はまた、より強力なエンジンと超低失速(VLS)翼設計を装備した特殊用途型は、「最大200ノットの高速巡航と62ノットの低速エントリーを提供できる」と述べている。

その揚力と拡大された前部と後部のキャビンにより、同社の航空機は、完全装備の兵員30名、内部貨物および装備品最大16,000ポンド、情報、監視、目標捕捉、偵察スイートおよび/または武器化、2,500ポンドの外部翼格納庫2つを含む構成をサポートができるとしている。


カタリナ・エアクラフトのNGAAカタリナIIを軍がどのように使用するかについてのコンセプト。(カタリナ・エアクラフト図)


 カタリナ・エアクラフト社はまた、AFSOCのMAC計画を明らかに中傷している。

 フロートを改造した陸上機と異なり、NGAAカタリナIIは、刻々と変化する海上での作戦のために設計されている。

 米国や他の軍隊が追求している能力を明らかに見て、同社はNGAAカタリナIIが「既存の機種を置き換えることができる単一の資産ソリューションとなり、その結果、取得、運用、維持コストを全体で削減する」と主張している。

 しかし同社は、機体コストを発表していない。

 2029年までに納入予定とする同機について、同社が米軍やその他の軍とどのような深い話し合いを行ったのか、行ったとしても、このリリースからは不明である。

 我々は、同社がいつNGAAカタリナIIを製造し、デモンストレーションを行う予定なのかなど、さらなる詳細について同社に問い合わせている。また、AFSOCにも連絡を取り、この機体について知っていることがあれば教えてもらうとともに、もし司令部がこの機体の優先調達に関心があるのかについても聞いてみた。

 AFSOCはC-130をフロート機に改造することを検討しているが、5月のクーブラーは、他の選択肢も模索していると指摘していた。

 「我々はまた、他の水陸両用能力を探している。「水陸両用戦力については、本当に世界中を見ている。日本とは、どのように訓練するか、どのように(新明和の)US-2を使うか、CONOPS(作戦概念)を開発するかなどについて話し合ってきた」。

 以前に述べたように、米特殊作戦司令部(SOCOM)は、遅延にもかかわらず、MACプログラムに財政的にコミットし続けている。

 同司令部は、2024会計年度予算要求で、MACの作業継続に1500万ドルを要求している。

 カタリナ・エアクラフトが価格を明らかにしていないことを考えると、NGAAカタリナIIがSOCOMの既存の取り組みラインに対してどんな評価を下されるかはわからない。さらに米国は、徹底的に近代化され、高い能力を有するUS-2の調達に真剣な関心をまだ示していない。そのため、カタリナ再起動に関心があるとすれば、それがどんなに近代化されたものであっても、どのなるかは不明である。

 しかしまた、SOCOMの外でも変化している可能性がある。航空機動司令部のチーフは、より安価で、より低速だが、太平洋の極寒の地でも運用可能な長距離機の調達を議論している。無人機や有人機のオプションも検討している。これら航空機は、小規模な貨物オペレーションやその他の任務に使用される可能性がある。

 とはいえ、空飛ぶボートに多大な関心が寄せられており、滑走路非依存型航空機の重要性が高まる今だからこそ、その将来を注意深く見守る必要がある。■


Reviving The PBY Catalina For Modern Warfare Is This Company's Goal

BYHOWARD ALTMAN|PUBLISHED JUL 25, 2023 2:32 PM EDT

THE WAR ZONE


2021年4月18日日曜日

南シナ海での運用をにらんで水上機飛行艇のリバイバルがやってくる(?) 米海軍が中国新型大型飛行艇AG600を意識。しかし、技術は日本が握っている。

 Coast Guard HU-16E amphibious aircraft

沿岸警備隊のHU-16Eアルバトロス水陸両用機がマサチューセッツ・オーティス空軍基地に配備されていた US Navy


年の3月で米軍から水上機が姿を消し38年になった。沿岸警備隊のHU-16Eアルバトロスが最後の水上機だった。


第二次大戦で水上機は海軍の勝利に大きな役割を演じた。冷戦時初期にも投入構想があったが、優位性は消えていた。ところが中国が大型水上機を開発していることで水上機の有用性に注目が改めて集まっている。


2020年7月に中国はAG600水上機クンロンの海上運用テスト開始を発表した。


AG600は世界最大の水上機で山東省の空港を離陸し、青島沖合に着水し、4分間水上移動した後、離水し無事帰還した。


米軍では水上機を過去の遺物とみなしていたが、同機の登場で一気に関心が集まった。


かつては必須装備だった

Consolidated PBY-5A Catalina flying boat

コンソリデーテッドPBY-5Aカタリナ US Navy



水上機はかつては米海軍で必須装備だった。空母が支配の座に就くより前に、水上機母艦が長距離航空作戦に必要な艦種とされた。水上機母艦は大型クレーンで水上機を吊り上げ、機体の補給整備を行った。米海軍初の空母USSラングレーは元は給炭艦で水上機母艦に改装されてから1920年代末に空母になった。


その後、水上機は艦艇が発進させるようになり、長距離型は対潜戦、捜索救難、海上制圧や偵察任務のような重要な役目に投入された。本艦隊から数百マイル先で敵部隊を探知できる能力が特に重宝された。


その中で最も米国で記憶に残る機体がPBYカタリナ飛行艇だ。コンソリデーテッド航空機が製造し、海軍が1936年に制式採用した同機はミッドウェイで日本艦隊の位置をつきとめ、海上を漂う搭乗員や水平数千名を救助したほか、枢軸国潜水艦20隻以上を沈めた。


英国に供与されたカタリナに米人パイロットが登場し、ドイツ戦艦ビスマルクを発見したのは1941年5月で、米国の参戦7カ月前のことだった。


冷戦時の運用構想

Navy seaplane tender Salisbury Sound Martin P5M-1 Marlin

水上機補給艦USSサリズベリーサウンドがマーティンP5M-1をクレーンで釣り上げている。1957年サンディエゴ。US Navy


水上機の役割は第二次大戦終結を契機に弱体化した。枢軸側潜水艦が姿を消し脅威は減り、太平洋で獲得した各地の基地から米海軍は長距離地上運用機材を飛ばした。しかし、海軍は水上機を直ちに放棄しなかった。冷戦初期には水上機打撃部隊の創設を狙っていた。


コンヴェアR3Yトレイドウィンドは輸送飛行艇で1956年に採用が決まり、航続距離は2千マイルを超え、100名あるいは貨物24トンを運べた。空中給油型ではグラマンF9Fクーガー4機へ同時給油できた。だが、同機にはエンジンで問題があり、1958年には11機全機が退役している。


Convair R3Y-2 Tradewind refueling Grumman F9F-8 Cougar

コンヴェアR3Y-2トレイドウィンドがグラマンF9F-8クーガー四機に同時に給油している。1956年9月. US Navy


同じコンヴェアによるF2Yシーダートは野心的なねらいのデルタ翼水上戦闘機だった。超音速飛行可能で20mm機関砲4門あるいはロケット弾を搭載するシーダートは1953年に初飛行したが、死亡事故の発生で1957年に開発中止となった。


より鮮明な印象を与えたのがマーティンP6Mシーマスターだ。核兵器運用を当初構想された同機は大型ジェット飛行艇で亜音速飛行で1,000マイルを超える航続距離を有していた。


だがポラリス潜水艦発射式弾道ミサイルの開発によりシーマスターには機雷敷設が新たな任務となった。


結局、弾道ミサイル潜水艦と大型空母の登場で水上機打撃部隊構想は意味を失い、シーマスターは1959年に開発中止となった。


AG600の登場

AVIC AG600 Kunlong floatplane

AVIC AG600飛行艇. Xinhua/Li Ziheng/Getty


米国で水上機はすべて姿を消したが、一方で今でも運用している国がある。


ロシアはターボプロップのベリエフBe-12にかわり、ジェット推進式のBe-200ESの導入を進めている。


日本には長期にわたる輝かしい水上機運用の伝統があり、最高峰の性能を有する新明和US-2を供用しており、AG600の登場までは世界最大の飛行艇だった。


AG600は中国航空工業(AVIC)が製造している。中国人民解放軍空軍のステルス機等のメーカーだ。


AVIC AG600 Kunlong floatplane

AVIC AG600飛行艇. Xinhua/Li Ziheng/Getty


AG600開発は2009年に始まり、機体製造は2014年スタートした。存在が公表されたのは2016年で、初飛行は2017年だった。機体開発は2022年までに終了し軍に引き渡すとしている。


同機は全長120フィート翼幅127フィートで、50名を乗せ、最高速度310マイルで航続距離は2,800マイルである。


AG600は多用途機となり、捜索救難、輸送、森林消火に投入を想定する。AG600は南シナ海で特に有益な機体となり、中国が造成した各地の人工島をつなぐ機能が期待される。


水上機のリバイバルが来る?

Japan amphibious aircraft seaplane Iwakuni

海上自衛隊の水陸両用機US-1Aが岩国基地へ着水の準備に入った。2013年1月。US Marine Corps/Cpl. Vanessa Jimenez


中国がAG600開発を進める中、米国もインド太平洋を重視し、多数の島しょがあることから水上機のメリットに再度注目している。


水上機なら陸上基地や滑走路が破壊されても何ら心配ないからだ。


飛行艇は大量の兵員さらに一定の軽車両なら直接沿岸に送ることができる。これは島しょ部への展開や増派の際に効果を発揮する。


空中給油機に転用すれば、水上機により空母艦載機の運用範囲がひろがり、空母搭載の給油機を廃し、その分多くの攻撃機材を搭載できる。水上機自体も艦艇や潜水艦から給油を受ければ、運用範囲を拡大できる。


ただし、よい話ばかりではない。水上機はどうしても陸上機や艦載機の飛行性能には追い付かない。また水上機の供用期間は陸上機より短くなる。さらに水上機の性能をフルに活用するには水上機母艦が必要となるが、現時点で海軍にはこの用途の艦艇は皆無だ。


インド太平洋での作戦運用という課題に関心が集まる中、中国が改めて飛行艇を重視する姿勢を示していることで、水上機運用の戦術面での意義の検討が重要になってきたといえよう。■


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