2018年12月31日月曜日

2018年の記事で一番読まれたのはこれ ベスト10の発表です。



今年も当方のつまらないブログにお付き合いいただきありがとうございました。今年の新規記事で読まれた数でベストテンを作ってみました。なお、アクセス数は12月24日現在のものです。

第一位 ★★航空自衛隊F-15新規改修の方向性が見えてきた#F-15, #航空自衛隊, #日本の安全保障
5792
2018/12/04

F-15は今年後半になり話題が次々に生まれましたね。ブログでは取り上げていませんがデジタル改装ができない旧仕様の機体の米国売却案も出てきました。米空軍では不要なので台灣あたりに売却することになると思いますが、来年には政治問題になりそうですね。北京も当然噛み付いてきますが、例によって中国の代弁を喜んでする政治家は日本に多くいますので容易に想像できます。この記事は12月のものなのですが堂々一位になりました。

第二位 ★★★F-3開発:急浮上したF-22生産再開提案は日本に費用負担大半を求める内容#USAF, #航空自衛隊, F-22生産再開, F-3, F-35
コメント数7
5135
2018/04/2

F-22に今でも期待する向きが多いのか、国産F-3構想が実現できなくなる可能性が注目を集めているのか、この記事も注目を集めました。


第三位 ★★わかりにくなってきたF-3開発への道:心神からF-3? それとも海外との共同開発?#F-3, ATD-X心神
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F-3の開発方向性ではやはり資金面がネックのようです。エンジン開発も話題になっていますが、機体のハードウェアはいいとしてもいかんせん日本に統合能力の知見がないのが弱点です。とはいえ、日本の工業力のレベルの高さから海外からも注目されがちですね。世界各地の新型機開発ガスローダウンしていますので、こうした画期的な新型機がいいのか、実績のある機体の改良型(F-15X、F-16V等)を整備したほうがいいのか悩ましい事態です。


第四位 ★★日本をファイブアイズに加盟させるべき、という主張をが主要シンクタンから発表されました#日本の安全保障, ファイブアイズ、
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2018/10/05

この記事もここに来て再び注目されているようです。情報の世界の「列強」になんとしても加わりたいと言うのが日本の心情ですが、機密保持など日本にはまだまだ改良すべき点があり、情報の安全保障という観点からも引き続き健全な方向に進めていく必要があります。


第五位 ★★ここまでわかったシリア攻撃の内容、ミサイル105発のスタンドオフ攻撃#4月14日シリア空爆作戦, JASS-ER, SCALP, ヴァージニア級攻撃型潜水艦, ストームシャドウ, トマホークTLAM
2698
2018/04/15

一体この攻撃はなんのためだったのでしょうか。データとして有効に今後活用できるのですが、あげくのはてはシリアからの撤兵と全然攻撃した意味がなくなった...と考えるのが普通でしょうが、実は南シナ海の中国基地に対するメッセージであったというのは考えすぎでしょうか。トマホークミサイルは日本も今年になり調達に乗り気になったのでこの攻撃もそれなりに意味があったのかもしれません。


第六位 今度はタイフーン戦闘機ほぼ全機が稼働できない状態。大丈夫か、ドイツの国防体制#ドイツ, A400M, トーネード, メルケル連立政権, ユーロファイター・タイフーン
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2018/05/08

ドイツでは潜水艦、戦闘機とまともに動かない装備の話題が連続して出てきました。EUの盟主のお膝元がこれでいいのか、というのがシュピーゲルなど地元メデイアの問題提起なのでしょうが、根っこには戦後ドイツが「ナチ清算」の反動でバランスを欠いた安全保障観を国民に許しているのではないでしょうか。日本にとっても目をつぶっていられる事態ではないですね。2019年は「健全な」価値観が日本国民の間でも広がるといいですね。今回の韓国海軍の不祥事からその気運が広がりそうです。

第七位 ★★★F-22/F-35ハイブリッド構想の実現可能性はないF-22/F-35ハイブリッド構想, ロッキード・マーティン, 米空軍PCA構想、次世代ステルス戦闘機
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2018/04/23

かなり早い段階でロッキード構想が日本で話題になっていたことがわかりますね。


第八位 ★★ロシア機迎撃に投入して露呈したF-22の弱点とは---F-22は迎撃機には不適なのか#F-22, #Su-35, #USAF, 制空任務, 領空侵犯対応
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2018/10/03
ロシア機がF-22の写真を撮ったとか末梢の話題が注目されましたが、インターセプトにステルス機を動員することに疑問あり、というのがこの投稿の趣旨でした。そこでF-35Aの追加調達を決めた日本ですが、直後にF-15Xの話題が出てきて困惑していないでしょうか。日本に必要なのは今後20年にわたり第一線で活躍してくれるF-15新型ではないでしょうか。購入の意志決定がどうなっているのか、「専門家」の意見はどこまで政治家に理解されているのか疑問に思える決定ではありましたね。

第九位 ★★F-22生産再開研究の米空軍検討内容が明らかになった#F-22再生産構想, #USAF, イスラエル, 日本、オーストラリア
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2145
2018/05/0

F-22が未だに話題になっていますが、これはロッキードがぶち上げた話題でさすがに実現性は薄いと言わざるを得ませんね。ましてや日本に負担させようというのでは虫が良すぎます。

第十位 ★ロッキードのCFR小型核融合炉が米特許を取得-----人類の生活を一変させる可能性と疑問ロッキード・マーティン, 小型核融合炉CFR
2125
2018/03/28

同じロッキードでもこちらは画期的核融合炉の話題です。その後、同社から全くこの話題が聞こえてこないのはやはり実現が難しいのか、あるいは水面下で着々と進展があり、将来のロッキードは画期的なエネルギー企業になるのか、お金に余裕がある人は同社の株式を購入されてはいかがでしょうか。(当方は責任を持ちませんよ)

こうしてみると皆さんはやはり戦闘機の話題に敏感ですね。一方で従来型の戦闘機の形態が大きく変わる予見もでていますので戦闘機ファンの皆さんも心の準備をしておいたほうが良いのかもしれません。(例ドッグファイト性能の放棄、全方位ステルス性能に備えた大型化、F-15Xに見られる重武装化など)

当方が一番関心があるISR機材では大きな話題がありませんでしたが、来年は2010年代最後の年、話題は2020年代を飛び越し2030年代も範囲に入っており、SR-72以外にブラックのプロジェクトがひょっとして露呈するかもしれません。こうした支援機材は何かと軽視されがちですが、重要なこうした機材を中国が撃ち落とそうとしている動きを忘れてはいけません。

ここに来て読者の皆さんのコメント投稿が増えています。これ自体は良い兆候ですが、マニアのみなさんからすればなにか言いたい気持ちなのでしょう。ただ他の方の非難中傷は困ります。おたがい知らないことは教えてもらい、楽しく有意義にフォーラムとして活用してもらえればと思います。

2019年も多難な年になるかもしれませんが、日本の中でも突出した安全保障関連の装備品等の知識を持った皆さんがバランスのとれた、しかし健全な観点で少しでも日本を良い方向に持っていく一助になっていただければ当ブログとしてもその意義を果たしたことになります。

では皆様、良いお年をお迎えください

2018年12月30日日曜日

2019年の予想(2)安全保障面ではどうか 中国、ロシアがやはり要注意


5 Big National Security Predictions for 2019 
2019年の国家安全保障問題で5つの予想
Trouble with Russia and China top the list.
ロシア、中国とのトラブルが上位に来る

by James Holmes
December 29, 2018  Topic: Security Blog Brand: The Buzz  Tags: Great Power CompetitionChinaRussiaCycle Of EscalationNaval Dominance


ィンストン・チャーチルがこう語っている。政治家の仕事は次に起こることを予見すること、起こらなかった理由を説明することと。ジョージ・オーウェルは一歩ふみこんで「不沈の軍事専門家」が軍事行動を大胆に予見しながら常に誤った予想をし、何回見方を誤っても「高給」を得ているとした。予測は控えめに徹するべきだろう。さもないと過去の戦役の亡霊に愚弄されるだけだ。


そんな気持ちで2019年の国家安全保障の5大トピックをお伝えする。


1. 中国の暴走は止まらない
中国の夢とは習近平が好んで言うセリフだ。正確には中国人民の支配が中国共産党の夢だ。党幹部はこの夢を追い求め、外交経済軍事面で支える。一帯一路(BRI)でインド太平洋地区に足場を維持する。現地国政府にはBRIでインフラ開発資金を供給し、合わせて海陸のシルクロードを再現する。東南アジアでは航行の自由原則をなし崩しとし、人工島を武装し、南シナ海全域に事実上のプレゼンスを確立した。さらに米海軍の航行の自由作戦に激しい反発姿勢を示している。夢の実現にむけたこうした行動を中国が自粛するとは到底考えられない。ただし国内が不安定化するとか地政学上の競争相手に手痛い仕打ちを受けた場合は別だ。

2.中国が限界に直面し始める
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一部の状況から中国の超大国化で減速の兆しが見える。経済不況を乗り切ろうと多大な債務に直面している。鄧小平時代の経済高成長はもはや期待できずめぼしい開発案件もない。また党は再教育施設や「社会信用」採点方式で党路線を少しでも外れる兆候を見せるものを罰する姿勢を明確にしている。ペロポネスの時代以降の政治家すべてが学んだように経済活力が国家戦略の土台だ。軍事力整備には資金が必要であり、戦場で軍の維持にも資金が不可欠だ。つまり中国の手持ち資金が減れば、中国政府も大胆な戦略を取れなくなる。一方で強圧的な社会統制を敷く必要があるのは党に自信がないあらわれである。一般市民が中国共産党の統制を受け入れなくなるのを恐れているのかもしれない。ただし国内の不安定な状況から中国が海外での軍事行動用の資源を国内に戻す可能性も出てくる。そうなることを期待したい。

3. 米国が真剣になる

トランプ政権による国防力整備の構図が米議会の勢力地図の変化で見えなくなってきた。それでもよい兆候が見られる。とくに兵器開発で。米空軍は新型長距離対艦ミサイルLRASMを来年にも爆撃機に導入する。これは空軍と陸軍が海洋戦に備える動きの現れだ。米海軍の艦載戦闘攻撃機もLRASMを搭載する。海軍は原子力潜水艦にハープーン対艦ミサイルの搭載を再開しており、魚雷のほぼ7倍の距離まで水上艦艇を攻撃する能力を実現した。ソフトウェア部門ではトマホーク巡航ミサイルを対艦ミサイルに転用する作業が続いており、これまでにない長距離打撃力の登場が期待される。その他もあり、オバマ政権で始まっていた事業がトランプ時代にも続き実現に近づいている。中国、ロシア、イランに対抗する装備品一式が実現するわけだ。これだけの強力な手段をワシントンにうまく使ってもらいたものだ。

4. 安全保障に本腰を入れるその他諸国
米国の同盟国や安全保障上の協力国も真剣だ。一例だがオーストラリア海軍がホバート級イージス艦の最終艦就役を準備中で同海軍は多様な戦闘への対応能力が増える。海上自衛隊では「ヘリコプター駆逐艦」でF-35ステルス戦闘機運用をしようとしており、F-35調達機数をほぼ三倍にする。インドは中国との国境地帯で攻撃に軸足をおいた抑止力の実現に向かい、中国のインフラ建設の大盤振る舞いでインドに対抗する地上攻勢が強まる危惧に対応する。その他の国でも超大国間の新たな競合地図に対応する動きがある。同盟国で自国防衛に力を入れれば米国との関係も平等に近づく。平等な同盟関係は冷戦時代の覇権上の関係よりも長持ちするはずだ。米国は同盟国の防衛に今後も信義を尽くすべきだが米国主導の同盟関係を対等の関係として捉え直すべきだろう。

5. ロシアは「青ベルト」海洋防衛を引き続き強化
ロシアでは長く陸地中心の海洋防衛体制をとってきた。また最新技術を防衛戦略に取り入れ敵艦隊や空軍力の侵入を阻んできた。その結果ソ連時代から「青ベルト防衛」と呼ぶ海上からの攻撃を阻む緩衝帯となった。青ベルトは海上装備、陸上装備の性能内で沖合へ展開できる。ケルチ海峡(ウクライナがアゾフ海へ展開するのを阻む要所)から黒海にまで「防衛体制」の整備もここに含まれる。ロシアは自国国境に隣接する地理空間の管理を常に希求してきた。海洋も例外ではない。西側諸国が優勢を維持するためにはこの青ベルト内で活動で有効な戦術や技術が必要だ。その反面、2019年はウクライナはじめとするロシアの隣国にとってアゾフ海沿岸を事実上ロシアが海上封鎖している状況から悩ましい事態が続く年になりそうだ。ユーラシアで古くからある海上、陸上での競合が新しい様相で復活する。
以上は筆者の気ままでばらばらの所見だ。軍事専門家が永遠に不沈の存在であれば良いと思う。■



James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College. His latest book, the second edition of Red Star over the Pacific , appeared this month. The views voiced here are his alone.

Image: Flickr.

2018年12月29日土曜日

2019年の展望 その1 米空軍の課題

4 big questions for the US Air Force in 20192019年の展望・米空軍の4つの課題


Valerie Insinna, Defense News 4m


フロリダ州エグリン空軍基地のフライトラインに向かう米空軍パイロット。 September 26, 2014. US Air Force photo
2019年の米空軍で組織、機材の大きな変化が訪れそうだ。
その答えは2月に公表予定の2020年度予算案に見られるはずだ。
次の予算は当初予定の7330億ドルから上方修正され7500億ドルになるといわれるが、今年の予算が増えるかで変わる

F-15X
F-15CイーグルがKC-135Rストラトタンカーからの空中給油に入る。ノルウェーへの移動途中。September 12, 2013. US Air Force Photo


ここ一年ほど噂にのぼっているのがF-15追加調達の話題だが、いよいよ空軍はボーイングからの調達に向かいそうだ。12月21日にブルームバーグがF-15X計12機を12億ドルで導入する要望を20年度予算案に計上すると報じた。
F-15Xは電子戦装備、レーダー、コックピットを更新しミサイル搭載量を増やした新型だ。ブルームバーグ記事では導入はペンタゴン上層部の決定とあり、州軍航空隊で運用中の旧型F-15の更新用とある。この表現に注意が必要で、空軍は第4世代機の導入に抵抗を示しているのだ。
9月時点でF-15X導入の検討を聞かれた空軍長官ヘザー・ウィルソンはF-35含む第5世代機の追加調達こそ必要と答えていた。
「現在は8割が第4世代機、2割が第5世代機の構成だ。想定する航空戦では第5世代機を増やして効果を上げたい。第4世代機導入は止めて5割5割にしたい。つまり第5世代機導入を増やす」
そのウィルソン長官と空軍参謀総長デイヴ・ゴールドフェイン大将がF-15新型機導入をどう正当化するか注目される。

またマティス国防長官が去ったあとで20年度の想定調達機数に変化が生まれるのか。空軍の五カ年計画はどうなるのか。こうした点から今回の動きが最終的にどんな規模になるかがわかるはずだ。


軽攻撃機
AT-6がホローマン空軍基地で離陸準備に入る。空軍は軽攻撃機実証事業(OA-X)として軽攻撃機の任務遂行能力を試している。US Air Force Photo by Ethan D. Wagner

空軍は軽攻撃機導入の最終要望を今年中に出すと見られていた。ただし最終決定は2019年に先送りされ、競合2社は放置される。
テキストロンのAT-6とエンブラエルシエラネヴァダのA-29スーパートゥカーノが競うが業界には空軍が導入の最終結論を出すのか不安視する向きがある。
また調達機数も大きな疑問点だ。
100機未満だと空軍特殊作戦軍団が低度戦闘に使用するのみとなると航空戦闘軍団計画立案本部長スコット・プレウス少将が述べている。
数百機規模の導入なら世界各地に配備されるはずだ。

宇宙軍
ボーイング製の広帯域グローバルSATCOM衛星を搭載したユナイテッド・ローンチアライアンスのデルタIV打ち上げロケットがケープ・カナベラル空軍基地から打ち上げられた。 March 18, 2017. US Air Force/United Launch Alliance

宇宙軍の指揮統制は空軍省に任せる提案がペンタゴンから出ており、空軍は宇宙空間での安全保障に権限を今後も維持しそうだ。
宇宙軍は同部隊の参謀総長と空軍次官(宇宙軍担当)の指揮に入り、空軍長官の指示に従う。このことから空軍トップは宇宙軍でも相当の権限をもちそうだ。

ただし、この案で議会が納得するのか。下院軍事委員会委員長に就任するアダム・スミス下院議員が宇宙軍として別組織にする構想に懐疑的な一方、宇宙軍は空軍と別組織にすべきと強硬主張する議員も出るだろう。

もう一つ不明なのは現行の空軍内宇宙関連組織との関連だ。空軍宇宙司令部、ミサイルシステムズセンターは宇宙軍に統合されるのか。海軍、陸軍それぞれの宇宙関連事業は維持するのか。そもそも宇宙軍担当空軍次官に誰が就任するか不明だ。

組織改編
アンドリュース共用基地でゴールドファイン空軍参謀総長(右二人目)やパイロットと話すドナルド・トランプ大統領。September 15, 2017. (US Air Force photo by Scott M. Ash)

今月始めに退任せまる国際関係担当空軍副長官ハイディ・グラントから空軍が現在グラントが統括する戦略立案機能を空軍参謀本部の立案要求内容検討部門(A5)に移管する案を検討中と述べていた。

グラントは空軍上層部が検討中の大規模組織改編の一部と述べた。
グラントによれば空軍は1月にも正式決定するという。ただし、上層部からは変更案の内容はほとんど聞こえてこない。

組織内での職掌内容を変更にとどまるのか、統合整理するのか、それとも全く新しい組織を創設するのか注目される。

Read the original article on Defense News. Copyright 2018. Follow Defense News on Twitter.

2018年12月27日木曜日

第六世代機は空軍調達予算を食いつぶす存在になるとのCBO分析が出ました



Stealth Swap: The Air Force Could Replace the F-22 with...the F-35 ステルス機の今後、F-22後継機がF-35って
And the reason is simple: money. その理由は簡単明瞭、予算


by David Axe Follow @daxe on TwitterL
December 18, 2018  Topic: Security Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-35MilitaryTechnologyWorld

議会予算局(CBO)はF-22ラプターの後継機は2030年代の米空軍予算を食いつぶすと分析。
1980年から2018年まで空軍は現在のドル価値で新型機導入に平均120億ドルを使ってきた。だが約180機あるF-22を2030年代に全機新型機に切り替え、F-35の新規調達を続けながら、輸送機、給油機も導入すれば年間230億ドルが必要となるとCBOが2018年12月発表の報告書でまとめた。
飛行隊数を現行の312個から386個体制に拡充する空軍の案を実行すれば新型機への年間支出はさらに増える。「この国が必要とする規模に対し現在の空軍規模は小さすぎる」とヘザー・ウィルソン長官が今年9月に述べていた。
拡大構想では戦闘機部隊を7個追加し62飛行隊体制とするとある。

CBO報告書から重要な点が見える。F-22後継機を模索するよりF-35の追加調達をしたほうが新型機開発より予算を節約できるとしている。
空軍の予算問題は今日にはじまったものではない。新型機調達予算のピークは1986年の290億ドルで当時は依然としてヨーロッパで対ソ連戦を想定していた。
1991年にソ連崩壊で冷戦が終結。米国防予算は急減少し、1995年には機材調達予算が年間50億ドルまで減った。その後予算は堅実ながら増加した。2010年から2017年の平均では年間90億ドルを機体調達に使っているとCBOは分析。

空軍機材5.500機中の約1,500機が機齢26から35年に達しており、F-15やF-16の大部分がここに入る。

80年代の機材が更改の必要がある。だがF-35は単価が1億ドル程度で、年間60機の調達が精一杯だ。このためF-35合計1,800機の調達は2040年までゆっくり実施する。

F-22後継機を2030年代に導入すると空軍はステルス機二形式の同時調達になり予想費用は年間140億ドルに達する。同時に輸送機、給油機、爆撃機も必要なので総額は230億ドルに達するとCBOは警鐘を鳴らす。
そのためF-22後継機に...F-35が浮上する。空軍がまとめた「航空優勢2030構想」では「侵攻制空任務」の能力を強調している。言い換えれば高度の生存性を備えた空対空戦闘機のことだ。

「PCAの性能開発では航続距離、ペイロード、生存性、威力、価格、支援体制のいずれをどこまで犠牲にするかが重要課題となる」と空軍構想は指摘する。だが新型機開発が必須と記していない。CBOはF-22老朽化対策にはF-35の継続調達で対応可能としている。
「高コストと不確実性のためPCA構想を見直せば空軍予算動向のCBO予想にも影響が出る。たとえばPCAの想定性能が予算上実現不可能と判断してもF-35Aの追加調達で対応することも可能なはずだ。
「F-35の推定平均調達価格は94百万ドルで、PCAが300百万ドルの予想で機体調達ピークの2033年にPCAを選択しなければ260億ドルのかわりに200億ドルですむ」

空軍が事業費を落とすため調達機数を減らせば総機数は現行の5,500機から減る。ただ空軍企画には飛行隊を増やすとあるので機体数は減らず、増やすことになる。■

David Axe edits  War Is Boring. He is the author of the new graphic novels MACHETE SQUAD and THE STAN.

うーん、これはどうなんでしょう。数字だけの世界ではそうなるのですが、PCAで想定する性能がF-35で可能とは思えないのですが。今後の世界にむしろ「戦闘機」が必要なのでしょうか。ステルスは切り込み隊やセンサー中継機の役割で依然必要としても強力な攻撃力をもたせた機体はもはや高Gが不要となり、むしろ攻撃力や機内発電容量を考えると相当大きな機材になるのでは。Battle Planeの考え方ですね。それにしてもF-35にこれから自由世界が数十年振り回される可能性ってどうしたもんでしょうか。

2018年12月26日水曜日

歴史に残る機体21 みにくいアヒルの子F-4はなぜ愛される機体になったのか

歴史に残る機体20 F-104の後継機として対照的な機体のファントムを導入した日本が最後まで同機を運用する国になったのはなんとも皮肉です。広く伸びる防空空域を有する日本にとってファントムは使い勝手がよかったのでしょうね。また改修を重ね当初の機体から相当変化したことも大きいですが、そういうところが盆栽に手を加えるような感じでいかにも日本的ではないでしょうか。

Why We Still Love the F-4 Phantom After 60 Years 
誕生60年たつF-4ファントムが未だに愛される理由とは


by Michael Peck
December 22, 2018  Topic: Security Region: Asia  Blog Brand: The Buzz Tags: F-4 PhantomU.S. Air ForceJapanese Air ForceSoviet AircraftMiG

F-4ファントムがなぜ世界中で愛されるのか。

美しい、優雅、美学といった表現と無縁だ。ファントムには「ライノ(サイ)」や「二重に醜い奴」とのあだ名がついた。航空力学原理の実証で稀有な存在とも言われる。「でっかいエンジンをつければレンガも空を飛べる」。


ファントムは高性能機で1958年の初飛行ですぐに世界記録を塗り替えた。だが当時は高性能米製戦闘機各種が空を飛んでいた。F-101、F-102、 F-104、 F-105、F-106やF-111といった具合だ。だが今や各機は書籍の写真でしか見られない。

ファントムは合計5,195機が12カ国の空軍部隊で供用された。とはいえ冷戦時の敵国の成功作の半分にもおよばない。MiG-21(NATOコードネーム、フィッシュベッド)とはヴィエトナム、中東の上空で対決した。

F-4の出自は米海軍向け艦載迎撃機で空母を狙うソ連爆撃機をレーダー誘導ミサイルで撃破する役割だった。F-35同様にF-4は空軍の主力戦闘機となり、海兵隊でも同様だった。米空軍の調達機数は海軍の三倍近い。
ただファントムの欠点を上げればキリがない。複座で機体重量15トンの「鉛製そり」は操縦性が悪かった。双発の大型J-79エンジンは黒煙を吐き、ファントムが飛ぶ場所はすぐわかった。構想時点で空対空ミサイルが優勢となり機関銃は時代遅れの認識があったため、F-4には機銃が搭載されず北ヴィエトナムの敏捷なMiG相手のドッグファイトで何度も悔しい思いをした。
欠点が多いことからファントムがワースト10機材のリストに入ることもあった。だが「空飛ぶレンガ」への愛着も深く、航空自衛隊の航空ショーでF-4の退役前飛行展示でそれがわかる。世界各地からファントムのファンが集結したのだ。
ファントムの魅力なんと言ってもその柔軟性だ。1970年代初頭に機関砲一門が搭載され、MiG相手の空戦技法をパイロットが習得していた。同機は真の多任務機になった。迎撃機、制空戦闘機、偵察機、ワイルド・ウィーゼル防空体制制圧機として。その一部は偶然によるものだ。操縦したパイロットは、アメリカ人、イスラエル人、イラン人ともに十分訓練を受けて柔軟に戦術を選択できたので、相手のアラブ人、ヴィエトナム人、たまにソ連のMiGパイロットよりすぐれていた。また西側機材の例に漏れずソ連製機体よりすぐれた電子装備を搭載していた。
とはいえ愛情に合理性は無縁であり、理屈つきならばそれは愛情ではない。ファントムが愛されてきた理由は成功した機材だったからではなく、もともと成功作をめざしていかったからだと思う。人類は数々の破壊手段を作ってきたがジェット戦闘機は中でも美的に一番洗練された手段と言える。F-16のこじんまりとした優雅さ、ミラージュ5の美しい対照的形状が一例だ。ファントムはあたかも象に翼をつけたごとくである。だがアンデルセンのみにくいアヒルの子ではないがファントムは自らの不評を逆転させたのだ。■



Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook .

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