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2022年1月23日日曜日

チリがE-3セントリーを英国から購入。ルックダウン機能で麻薬取締の効果を期待か。他方、RAFはE-7へ機種変更。

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CROWN COPYRIGHT

 

 

英国の中古機材を導入し、運用中の老朽警戒機の代わりにすればチリの警戒探知能力は飛躍的に伸びる。

 

リ政府が英空軍が供用していたE-3Dセントリー空中警戒統制機材(AWACS)3機を購入したとの報道が出ている。チリ空軍で供用中のボーイング707原型の早期警戒機に交代させる。

 

複数の報道機関がRAFのE-3D3機のチリ売却を今週に入り伝えているが、英国チリ両政府は売却を公式に確認していない。チリ空軍は2機を運用し、三機目は部品取りに使う意向とJanesが伝えている。売却の総額は不明だ。

 

RAFはセントリー運用を1991年に開始し、最盛期には7機運用していたが、維持に困難を感じ始めた。2020年12月に飛行可能な機体は3機にまで減り、翌年全機の運用を終了した。RAFはボーイング737原型のE-7ウェッジテイル空中早期警戒指揮統制機を後継機として導入し、初号機は2023年に運用開始する。

 

米海軍も同型機1を購入の上改修してE-6Bマーキュリー乗員の専用訓練機にしている。E-6は「終末の日」機とも呼ばれ、米国の核抑止力部隊へ空中から命令を伝える任務をこなす。E-3D、E-6Bともに原型はボーイング707だ。

 

チリが中古セントリーを購入したと聞き驚く向きもあるかもしれない。だが、上記の通り、同国は707改装の空中早期警戒機1をコンドルの名称で運用している。

 

コンドルはイスラエル製 Elta EL/M-2075 ファルコンLバンドのフェイズドアレイレーダーを搭載し高性能機材といえる。機体にはアンテナアレイ6基を搭載し、機首が特徴的な球根上になっており、機体側部左右、尾部に搭載している。空中、海上の対象を追尾し、ある程度の電子情報収集能力もあるといわれる。また指揮統制機能も優れている。

HIPPOCAMELUS VIA WIKIMEDIA

チリ空軍のコンドル空中早期警戒指揮統制機

 

コンドルは1994年から供用されているが、原型機は製造が1965年でボーイングで試験機として使われたのちにチリのフラッグキャリアLAN-Chileエアラインに売却されたのが1969年だった。同社はその後LATAM Chileに社名変更している。

 

コンドルのエンジンは1950年代のプラット&ホイットニーJT3D低バイパスターボファンエンジンで維持運用が著しく高くつくようになってきた。また、ファルコンレーダーも複雑な機構で運用が困難だ。3機しか搭載しておらず、残り2機はイスラエル軍にある。

 

RAFのE-3Dも707改修だが、装備はより近代的で燃料消費効率が高いCFM56エンジンを搭載する。AN/APY-2パッシブ電子スキャンアレイレーダーをレドームに収容し、機体後部上に搭載し、空中、水上の標的を追尾しつつ、強力な通信装備で指揮統制機能をこなす。

 

米空軍他の機材と異なり、RAFはE-3Dの性能改修を行っておらず、チリ空軍は供用開始前に改修作業する可能性がある。

 

それでもE-3D導入でチリ空軍は大幅な機能向上を期待できる。コンドルは単機だが、E-3Dが2機あれば、複数地区を監視対象にしたり、長時間運用が可能となる。予備機も含めた早期警戒指揮統制機の実現が今回の取得で実現する。

 

チリ空軍の戦闘機部隊はF-16ヴァイパーが46機程度、F-5E/F改修型12機あり、このうちF-16の10機はブロック50仕様のC/D型で残りは旧型ブロック20だ。

 

チリは山地が多く、南北に極めて長い地形なのでAWACSの恩恵は大きい。とくに「ルックダウン」機能で小型かつ低高度を飛行中の標的への対応力は山岳地帯で有効だ。E-3は小型機に加え、小舟艇の探知能力が優れることでも知られ、麻薬密輸の取締まりで関係部局と連携した運用をチリが期待しているのだろう。

 

チリ空軍が元RAFのE-3Dをいつ運用開始するかはまだ不明だ。チリの機材購入には米政府承認が必要となる。手続き上が難航する兆候は今のところないが、長時間を要するお役所仕事の手続きを経る必要がある。Janesによれば今年末までにチリ空軍での供用を開始できそうだという。

 

RAFで運用を終えたE-3D各機がラテンアメリカで新しい供用先を見つけることになる。■

 

Chile Has Bought A Trio Of Retired E-3D Sentry Radar Planes From Britain: Reports

 

BY JOSEPH TREVITHICK JANUARY 20, 2022

THE WAR ZONE

 

Contact the author: joe@thedrive.com



 

2014年12月8日月曜日

財政難でNATOのAWACS隊が規模縮小へ


ヨーロッパ各国も財政負担の捻出で大変ですが、ウクライナはじめ不穏なロシアの動きがある中で大丈夫なのでしょうか。また、一部抜け駆けをするのはいかにもヨーロッパらしい。通貨ユーロというのもインチキではないかと見ているのですが、偏見でしょうか。

NATO Faces AWACS Fleet Shrinkage

Funding shortfall is reducing key NATO surveillance fleet
Dec 1, 2014Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology

NATOが加盟各国に防衛支出増額を求めている中、空中早期警戒機では各国に要望が虚しく伝わるだけだ。
  1. NATOの空中早期警戒指揮統制機隊(AEW&C)のE-3Aコンポネントが1980年代創設以来はじめて縮小を迫られている。しかもロシアがウクライナで強硬策に出ている最中に。

  1. 部隊はドイツのガイレンキルヒェンGeilenkirchen基地で、ボーイングE-3A17機で構成され、空中監視の他NATOの空軍演習を支援する。9.11以降は米国の要請で米領空内をパトロールしたほか、アフガニスタンでの運用を最近終了したばかりで、2015年には合計4,300飛行時間をウクライナ近隣のNATO加盟国向けに実施する予定。

  1. 運用に年間250百万ユーロ(312百万ドル)が必要で16カ国が分担しているが財政負担になっており、三年前にカナダ政府が分担を中止する決定をし、経済不況で予算節約を図った。.

  1. ガイレンキルヒェン基地ではカナダは三番目の規模で分担をして、乗員4組を派遣していた。カナダは今年8月に同基地から撤退している。

  1. カナダはAWACS以外に共同地上監視 Alliance Ground Surveillance (AGS) 運用からも手を引いて90百万カナダドル(79百万ドル)を毎年節約しようとする。カナダの資金提供がないと部隊は17機の全機運用ができなくなる。地上待機となる一機は部品取りに使うことになろう。

  1. カナダ撤退でNATO AEW&C部隊は不安定な状態になると司令官はみており、NATOはAGS導入(グローバルホークを投入)による戦力構造の再編を検討中だ。

  1. 再編でE-3AとAGS運用に2,000名が従事する。E-3Aコンポネントは現在2,300名規模で、AGSでは600名を投入する予定だったので、1,400名を削減することになる。

  1. コックピット近代化と新規航空管制対応の機体改装は米空軍のドラゴン事業として実施中だ。だがNATOはカナダ撤退後の16機のうち14機のみに改装を実施する。非対象の2機の退役は発表されていないが同一機種で仕様が異なる機材の運用の可能性は低い。改装作業が完了した初号機は12月17日に飛行可能となり、NATOへ2016年1月に復帰する。また残る全機も2018年中に改装を終える。

  1. 問題を複雑にするのは加盟国の中に独自にAEW&C整備をする動きがあることだ。トルコにはボーイング737を原型にしたEW-7Tピースイーグルがあり、イタリアはが降るストリームG550をAEWに改造した機材をイスラエルから購入した。

  1. またE-3Aの削減で英空軍のE-3Dセントリーに大きな役割が期待される。英国はNATOのE-3運用予算を分担していないが、自国の6機をNATOミッションに編入している。

  1. 国防予算削減の動きで英空軍機材でも影響は避けられないが、NATO、フランス、米空軍が運用する改造型の性能は既存機を上回るものがある。そこで英軍も運用機材の改修を急がないといけないとの危機意識がある。

  1. NATOのE-3A各機の退役は2025年予定だが、2030年代にかけて運用延長は可能だ。今のところ代替候補がなく、現行機材を使い続けるために「必須の性能とあったらよい性能」の仕分けで近代化を行っていくのだという。 その必須性能のリストには新型暗号化機能や多機能情報分散型の共用戦術無線システム Joint Tactical Radio System がある。■