ラベル MQ-25、CBARS の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル MQ-25、CBARS の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年4月19日木曜日

ロッキード案のMQ-25登場、でもUCLASSを取りやめた海軍が構想した給油機は必要なのか

Lockheed Is Already Pushing A Stealthy Version Of Its MQ-25 Stingray Tanker Drone MQ-25スティングレイ無人給油機のロッキード案の概要が明らかに

The sad thing is, the whole idea originally was for the Navy to get a stealth drone, but it ended up getting a flying gas can. 残念なのはもともとは海軍が想定したステルス無人機が空飛ぶガソリンタンクになったこと

BY TYLER ROGOWAYAPRIL 11, 2018
LOCKHEED MARTIN VIDEO SCREENCAP


ロッキードがMQ-25空母運用給油機競作で自社案を発表したが全翼機形状無人機に低視認性で兵装運用能力を付け加える構想と判明した。
同社が制作した派手な映像がメリーランドで開催されたシーエアスペース展示会で公開された。動画で同機の活躍場面を示し、最後の部分でMQ-25には給油タンクではなく共用スタンドオフミサイル兵器(JSOWs)が搭載されている。タイトルには「これからのミッションでの柔軟性が残存性につながる」とある。
LOCKHEED MARTIN


映像でロッキード版MQ-25の特徴が分かる。例えば電子光学センサータレットが左主翼下に格納される様子がわかる。
VIDEO SCREENCAP


また実にクールなエアブレーキがついており、機体中央部の円錐状形状に溶け込んでいる。
VIDEO SCREENCAP


だが何と言っても興味を感じるのはMQ-25が飛行甲板上でどう運用されるかだ。機体の移動状況は地上管制装置でモニターできるようで広角ビデオカメラ数個がついている。機体自体も機首のLEDライトと前脚扉につけた表示で今どんな動きをしているかを周囲に示すとともにこれからの動作も表示するようだ。実に格好いいではないか。
MQ-25は半自律運航を目指し、従来のような人員による飛行制御は必要ない。ただ空母艦上で機体を位置につけるため手の動きを認識するソフトウェアが必要なのか、それとも管制官が位置を指示するインターフェイスやほかのコマンド方法で機体を動かす方式なのか不明だ。
VIDEO SCREENCAP
VIDEO SCREENCAP

ロッキードが低視認性版スティングレイを追加する可能性があるとしても驚くべきことではない。同社スカンクワークスには数々の全翼機製造の実績があるが、ロッキード本社の説明と食い違う点もある。
Aviation Weekのジェイムズ・ドリューがロッキードで無人給油機の設計を世界に伝える役を与えられた、MQ-25事業を統括するジョン・ヴィンソンにインタビューしている。
「ステルスは全面的に信頼できない。効率を追求して全翼機形状に落ち着いた。給油機では燃料を主翼で運び燃料重量と主翼揚力を分散させることが多いが、ペイロードが燃料のため当方は全翼機設計とした」
機体表面の追加塗装、アンテナ処理、その他小改良で低視認性が実現するのであれば、ステルスを念頭にMQ-25を設計したのだろう。実際にスカンクワークスはこの作業をしたようだ。ボーイングのMQ-25試作機が途中で挫折した無人空母運用偵察攻撃機(UCLASS) から生れたのであれば、UCLASSの低視認性要求から将来の改良でステルス機に発展する可能性がある。
ここで話題にしているのは高性能低視認性かつ深度侵攻機ではなく、高い残存性を敵の高度防空体制で発揮でき、場合によってはそのまま敵領空内に侵入可能な機体だ。
他方でジェネラルアトミックス案は低視認性機材に発展する可能性が低い。だが同機は他社よりも燃料搭載量が多くなりそうで、エンジンが強力なのでペイロードに対応できそうだ。
このことから三社がUCLASSの影響を引き継いでいることが分からう。ロッキードは「完全新型」設計というが同社のシーゴーストUCLASS構想との強い関連を示している。シーゴーストとはRQ-170センティネルを原型としていた。
LOCKHEED MARTIN
Sea Ghost concept based on the RQ-170 Sentinel.


MQ-25の要求性能にステルスはなく、これが原因でノースロップ・グラマンに有望視されていたX-47B実証機がありながら同社は競合から降りたといわれる。米海軍がそもそもUCLASS競合の時点で給油能力の優先度を高くしておけば各社がより競合した形で提案を出し、敵地深く侵入しながら低視認性の戦闘航空機材で必要に応じ給油能力も発揮できる機材が生まれていたのではないか。空母から500マイル地点で14千ポンドの給油用燃料を搭載する性能が実現できないのであればもう一機を発進させて任務を達成させればよい。
いいかえれば、UCLASSのまま給油能力を付与していれば、海軍は給油能力は限定されてもその他ミッション多数をこなせる機材を実現できていたはずだ。また海軍がスーパーホーネット多数の調達に動いており、コンフォーマル燃料タンクを各機が搭載することを考えるとスーパーホーネットが現在課せられている空中給油任務は今後大きく減ることが予想できる。
そうなると海軍がUCLASSの時点で四社あった入札業者のうち最良の無人戦闘航空機(UCAV)を調達していれば、現状の有人機の二倍三倍の航続距離を有する艦載戦術機材を入手していたのではないか。またそもそも給油機支援など不要だったはずである。そこでMQ-25給油機のかわりに108機保存中のS-3ヴァイキングを砂漠から呼び戻せば足りたのではないか。
また戦闘機パイロットが多数派の海軍と議会内の愚かな議員連の決定でステルスの空母運用UCAVが息の根を止められていなければ、無人機で半分以下の費用で三倍四倍の距離まで飛びパイロットの生命を危険にさらさず運用できるのにF-35Cが本当に必要なのかとの疑問がうまれていたはずだ。
だが将来の姿を見通して最適なUCAVを導入する代わりに海軍は予算を給油無人機に投入しながら本当に必要な機能は実現せず、制空権が不完全な空域では中途半端な機能しか果たせない機材を手に入れようとしている。海軍は今後の改良型の開発配備を必要と感じているのか。
結局のところ、UCLASSを葬り、無人艦載機を空飛ぶガソリンスタンドに変えたのはあまりにも近視眼的と笑うしかないし、いかにも腹黒い動きだ。無人機にパイロットがしたくない仕事をさせ、UCLASS開発取り消しのために生れた仕事をさせるのは有人戦闘機開発を温存させるための策略なのだろうか。
残念ながらすべて事実なのである。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

2018年4月17日火曜日

ボーイングMQ-25案に見られる不可解な設計内容の意味

Here's Our First Good Look At The Crazy Air Inlet Design On Boeing's MQ-25 Tanker Drone ボーイングのMQ-25無人給油機の特異な空気取り入れ口の詳細が初めて公表された

Boeing's MQ-25 has a classically problematic but low-observable flush-mounted intake, yet there are no low-observable requirements for the program.同機の空気取り入れ口は低探知性だが問題になりかねない形状。だが同機の要求性能に低探知性は入っていない

BY TYLER ROGOWAYAPRIL 9, 2018
VIDEO SCREENCAP

ーイング案のMQ-25スティングレイで新たな画像が公開されたが、ボート形状の艦載無人機が地上取り扱いテストを受ける場面で模擬カタパルトもある。また同機がブロックIII型スーパーホーネットに空中給油する様子のコンセプト映像も入手した。だがなんといっても同機の空気取入れ口の形状に目が行くのはそれが2017年12月末に存在を公表した同機の中で一番謎の部分だからだ。
ボーイングのMQ-25案には前身のステルス無人っ空母運用偵察攻撃機(UCLASS)構想の名残ともいえる特徴が残り、空気取り入れ口がそれにあたる。ボーイングのUCLASS試作機は2014年に完成しており、その後UCLASSは難易度を下げた給油機の空母搭載空中給油機(CBARS)事業に変わった。CBARSが現在はMQ-25スティングレイ事業になっているわけだ。同社が先に完成した試作機をどう改造して新しい仕様に対応させたのかは不明だ。
BOEING VIDEO SCREENCAP

ボーイングのMQ-25案に見られる空気取り入れ口は問題を起こしそうに見える。この形状では特に高迎え角飛行時に問題となることが知られ、空母着艦時もそのひとつだ。境界層の空流も問題になりどの場面でも安定して十分な量の空気をエンジンに供給できるかが大きな課題に見える。

ボーイングはMQ-25案ではロールスロイスAE3007Nを搭載すると先週発表している。このエンジンはノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホーク、MQ-4Cトライトンでも採用されている実績があるエンジンだ。だが高高度を飛行する両機ならエンジンへの空気供給は十分に確保できるが、ボーイング案ではそうはいかないのではないか。
NORTHROP GRUMMAN

トライトンとグローバルホークは空気を大量に取り入れる形になっている。空気はそのままエンジンに連続で入る
9千ポンド級の同エンジンはサイテーションXやエンブラエル145にも搭載されている。ジェネラルアトミックスのMQ-25案ではプラット&ホイットニーPW815ターボファンで16千ポンドの推力を得る構想を特筆すべきだ。ボーイングは43%も低い推力のエンジンで同じミッションを本当に実現できるのだろうか不明だが、ジェネラルアトミックスは余裕を持たせた設計にしたと発表している。それでもこれだけエンジン出力に差がある。ロッキードは全翼機形状の構想機に搭載するエンジンを発表していない。

BOEING
ボーイングのUCLASS想像図ではそこまで奇妙な形のステルス型取り入れ口になっていなかった。逆に想像図ではむしろ大型の機体上部取り入れ口とS字形状のダクトがみられる。

ボーイングとしては当然こうした問題の解決策を考慮したのだろう。このような形状で空母搭載機の運用に支障が生まれないのであれば革命的な解決策となる。同社がこの設計をどう説明するのか興味を惹かれるし、MQ-25給油機の仕様では低視認性やレーダー反射の低減はまったく想定されていないのにこの案で同社がどう売り込むつもりなのかも知りたいところだ。
ボーイングのスティングレイ案がどう運用されるかも映像で見ることができる。映像に登場する機体が同社のMQ-25試作機にほぼ同じかたちになっているのも興味深い。ボーイングのMQ-25最終設計案が一度完成させた試作機から異なる形になるとしたら驚くことになる。一部にはこれで要求水準にある相当の航空燃料を搭載できるのかいぶかる向きもある。要求性能では燃料を満載して空母から500マイル地点に進出し、14千ポンドを給油してから自分で空母に帰ることとある。ボーイングが試作二号機の完成を急いでおり、同機が最終案になるとの観測もある。ただ同社が公開したコンセプト案を見るとこうした報道は的外れに終わる可能性もある。

BOEING VIDEO SCREENCAP
MQ-25がブロックIIIのスーパーホーネットに給油を開始するところの図。機首下のセンサーボールと外部燃料タンクに注意。
.コバムの給油ポッドが外部燃料タンクの横に搭載できるのかを確認する必要もある。

BOEING SCREENCAP
ボーイングのMQ-25案の前面はこうなる。UHF衛星通信アンテナが空気取り入れ口の後方につくことに注意。

ボーイングMQ-25案ではKuバンドやマイクロ波衛星通信装備がどこに搭載されるのか不明だ。ジェネラルアトミックス、ロッキード・マーティン両社の構想ではその搭載が明確に示されているのだが、ボーイング案でははっきりしない。機体胴部の前方に大きな膨らみを付けると空流がさらに複雑となり空気取り入れ口問題がさらに複雑になる。
一部には同機主翼上の「こぶ」が衛星通信アンテナを格納する場所ではと見る向きがある。これは可能性が低い、と言うのはこのふくらみは主翼折り畳み機構用だからだ。おそらくボーイングは空気取入れ口後方にアンテナ用のふくらみを受注決定後に追加するのではないか。
BOEING VIDEO SCREENCAP
.これが未来の姿なのか。MQ-25がブロックIIIのF7A-18Fに給油中

ボーイングのスティングレイ設計案にはまだ不明点があるが、同社としては試作機を完成させたのは同社だけであり受注につなげたいとする。ボーイングファントムワークスのドン・キャディス Don Gaddis(MQ-25事業主査)はFlightglobal取材で以下述べている。
「当社が特別の存在になっているのは実際に期待を製造したためだ。性能の多くはすでに実施済みだ。飛行甲板上の取り回し、ソフトウェア、ミッションコンピュータ、ロールスロイスエンジン等で実証済みのものが多い。飛行を除けばすでにほぼすべてが実施済みだ」.
そのとおりなのだろうが、設計案に関する疑問を考えると、いかにもすぐにでも飛びそうな試作機が飛行していないのは何か問題があるのだろう。望むらくはボーイングが方針を変更して同社設計案が飛行可能だと実証してもらいたいものだ。
MQ-25契約獲得を巡る三社競争から多くの事実が今後あきらかになるだろうが、公式な発表はまだ一社も行っていない。ただMQ-25事業をめぐっては一番大きな疑問はそもそも海軍内部で同機事業はどこまで支持を確保しているのかであり、本当にもっと費用対効果の高い代替策がないのかも釈然としない。■

Contact the author: Tyler@thedrive.com