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2024年5月3日金曜日

あれから3年。USSコネティカットの海中衝突事故の真相を推理する。貴重な同潜水艦の現場復帰は2026年以降。

 


3隻しかないシーウルフ級のUSSコネティカットが海中の『山』に激突した事故から3年になりますが、その真相は今も闇の中です。入手可能な情報から状況を推理したThe National Interest記事からのご紹介です。海南島が一つのキーワードのようです。





シーウルフ級潜水艦「コネティカット」はなぜ海底山に激突したのか?


3年前、コネティカットは海南島の中国海軍潜水艦基地のすぐ近くを航行しながら、深海を徘徊していた。そして悲劇は起こった。



USSコネティカットは、米海軍が運用するシーウルフ級潜水艦3隻の1隻で世界で最も先進的な潜水艦だ。1980年代に設計され、1990年代に配備されたシーウルフ級は、ロサンゼルス級攻撃型潜水艦の後継艦となった。シーウルフ級は最先端の監視技術を搭載し、攻撃型潜水艦の域をはるかに超えた存在となるべく建造された。

 唯一の問題は、シーウルフ級が非常に高価だということだった。冷戦が終結し、ソ連が崩壊したことで、アメリカ議会はシーウルフ計画に当初の目的通り資金を提供する必要性を見いだせなくなった。

 その結果、海軍がこの驚くべき潜水艦わずか3隻しか調達できなかった。シーウルフ級は20年以上前の潜水艦にもかかわらず、世界で最も先進的な潜水艦であり続けている。シーウルフ級が配備されるときはいつも、状況をアメリカに有利に傾けるのに役立っている。

 シーウルフは、北極圏のような遠隔の敵地での活動に特に優れており、ミッション成功率は驚異的である。これらのシステムが一定期間運用を離れるたびに、その損失が海軍に大きな能力格差をもたらす。

 だからこそ、2021年10月2日に比較的浅い南シナ海の海底に沿う海底山に衝突したとされるUSSコネティカットが行動不能になったことは、海軍にとって危機な状況となった。

 3年前、コネティカットは海南島の中国海軍潜水艦基地のすぐ近くを航行しながら、深海を徘徊していた。

 だがUSSコネティカットは何をしていたのか?

 海南島にある中国海軍施設は、世界で最も洗練された施設のひとつと考えられている。その秘密施設に接近しスパイ活動を行うことは、アメリカにとって監視の大当たりであり、コネティカットが行っていたことは、まさにそれだったのかもしれない。

 コネティカットの事件にはいくつかの論争があった。海軍の公式見解は、同艦は国際水域を航行し、中国施設の近くにいたにもかかわらず、疑わしいことは何もしていなかったというものだった。

 一方、中国側はコネティカットが「無責任」な行動に出たと主張し、証拠もなくコネティカットが放射性物質を南シナ海に漏らした可能性を示唆した。

 USSコネティカットは少なくとも2026年までは海に戻れない。

 しかし、何が起こったのだろうか?

 このような場合、仮に何か不都合なことが起きたとしても、少なくとも数十年間は、一般市民が知ることはないだろう。そこでこの記事では、海軍の公式発表が真実である可能性が最も高いと想定する。


USSコネティカットに 何が起きたのか 

とはいえ、アメリカの潜水艦艦隊がいかに重要か、そしてアメリカの造船所がいかにみすぼらしくなっているかを考え、選択肢を探ってみよう。念頭に置いておいてほしいのは、これらが起こったと言っているわけでも、何か証拠があるわけでもないということだ。

 中国軍は、南シナ海や東シナ海、台湾海峡など、北京が切望する世界各地への米海軍による戦力投射を阻止するために、強力な対アクセス/領域拒否(A2/AD)能力を整備した。つまり、アメリカは潜水艦艦隊により大きく依存しなければならなくなる。

 中国海軍はこのことを理解しており、北京は現在、米潜水艦が中国海軍にもたらす脅威を軽減する能力を考案しようとしている。中国は、アメリカの潜水艦を狩るために、実に洗練された技術とテクニックに目を向けている。


1. 6Gテラヘルツ・トラッキングと高度な水中ドローン

中国科学アカデミーの福建省物質構造研究所の研究者たちが、「相当の距離から高度な潜水艦のかすかな痕跡も検出できる高感度潜水艦探知システム」を開発したと昨年発表した。

 中国が6G通信技術に投資したおかげで、科学者たちは、マイクロ波と赤外線の中間であるテラヘルツ周波数を使う方法を発見したと主張している。中国はさらに、この技術の実用化を主張している。

 この探知方法に無人水中ビークルを組み合わせれば、アメリカの潜水艦の脅威を抑止する上で、中国は大きなアドバンテージを得ることになる。そして、中国海軍はすでに超大型(XL)UUVシステムを開発している。

 Asia TimesのGabriel Honrada記者によると、衛星画像から、中国のXLUUVのうち2機が海南島の三亜海軍基地にあることが確認されたという。

 三亜に停泊しているXLUUVプラットフォームの1つは、小型UUVを搭載し、海底機雷を展開できるHSU-001 UUVに接続されていると考えられている。Honradaの評価では、このXLUUVは"(中国の)有人水上艦艇や潜水艦を危険にさらすことなく"敵潜水艦を積極的に捜索・追跡することができる。

 これらのプラットフォームがすでに三亜で稼働していたとすれば、近くの国際水域から基地を偵察しようとしたコネティカットが探知され、このシステムに追い払われ、最終的に探知を避けようと急ぐあまり、誤って近くの海山に墜落した可能性がある。


2. レーザーによる米潜水艦の追跡

2021年、上海光学精密機械研究所は、水面下160メートル(525フィート)以上の物体を探知できるレーザーをテストしたと発表した。マイケル・ペックによれば、これは既存の装置の2倍の深さだという。同研究所は、グリーンビームとブルービームのレーザーを使い、このシステムが機能することを証明したと述べた。さらに中国チームは、潜水艦から水中の動きを検知するセンサーを構築したと主張した。

 さらに重要なことは、中国が何年も前から、米潜水艦を水中で追跡できるレーザー発光器を搭載した人工衛星を持っていると言っていることだ。彼らがそのような技術を持っていると信じるに足る根拠がある。 

コネティカットの問題は、このいずれかが原因なのだろうか?何とも言えないが...。


3. 合成開口レーダーと極超音速魚雷

中国はここ数年、電子偵察衛星「耀冠」数基を地球周回軌道に投入している。同衛星は、合成開口レーダーシステムを搭載し、中国の対潜水艦戦能力を大きく前進させる。

 地上からの電波を傍受し、その電波で海上の艦艇の位置を三角測量するために使われる。中国は「耀冠」衛星コンステレーションを重視しており、米国の対衛星兵器による攻撃から衛星を守るため、軌道上に「ボディーガード」衛星も配備している。

 2年前、長沙にある国立国防科技大学の李鵬飛は、彼の研究チームが空中に発射され、マッハ2.5で移動し、終末期には海に潜り、魚雷になる「クロスミディアム」超音速兵器を開発したと発表した。李はこの兵器について、「既存のいかなる艦船防御でも防ぐことはできない」と胸を張った。

 未検証のこの超中速超音速兵器が、前述の追跡システムのいずれかの次世代機能と組み合わされれば、狙われた米潜水艦に破滅をもたらすかもしれない。


脅威の克服

 米海軍は窮地に立たされる。幸い中国海軍は、アメリカの水上艦隊を阻止するA2/ADシステムと同程度で米潜水艦の脅威を後退させる能力の実現は進んでいないようだ。中国は明らかに、北京が支配を目指すインド太平洋地域への米海軍のアクセスを遮断することに専念している。

 国防総省は、潜水艦隊に対するこうした新たな脅威に対抗する準備をしなければならない。 コネティカットは少なくともあと2年間は復帰できない。海南島で活動する中国軍による敵対行為の結果であろうとなかろうと、これは平時の事故だ。

 中国が、米海軍が南シナ海や東シナ海、台湾海峡などの紛争地域に、潜水艦を阻止するために、どのような手段を取るか想像してみてほしい。海軍のプランナーと国防総省の調達部門は、中国の水中A2/AD脅威への対抗策を開発し、米潜水艦の殺傷力を維持する必要がある。■


Why Did Seawolf-Class Submarine USS Connecticut Slam Into an Underwater Mountain? | The National Interest

by Brandon J. Weichert

April 26, 2024  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: USS ConnecticutSeawolf-ClassSubmarineMilitaryDefenseU.S. NavyNavy


2022年5月26日木曜日

USSコネティカット座礁事故の報告書が公表され、艦長の資質が焦点の人的問題が取り上げられています。

 


シーウルフ級原子力攻撃型潜水艦USSコネティカット(SSN-22)がカリフォーニア州サンディエゴを出港した on Dec. 15, 2021. San Diego WebCam Photo

 

海軍で最も強力な潜水艦が、2年以上にわたる指導者の甘い監督により、最終的に昨年10月2日の南シナ海の未知の海山への衝突につながったとする事故調査結果が発表された。

 

 

 USSコネティカット(SSN-22)は、米インド太平洋軍の要請で西太平洋に配備され5カ月が過ぎたころ、海図が不十分な海域を高速走行中に海山に座礁したと、米太平洋艦隊海上本部長クリストファー・カバノー少将Rear Adm. Christopher Cavanaughが統括する2021年10月29日の司令部調査が明らかにした。調査結果は月曜日発表された。

 公表前に大幅に編集された報告書は、コネティカットの前艦長キャメロン・アルジラーニ中佐Cmdr. Cameron Aljilaniによる一貫しない監督と劣悪な指揮風土が、南シナ海の海山座礁につながったと述べている。

 「今回の事故は、単一の行動や不作為が原因ではなかったが、予防できた。事故は、航海計画、監視チームの遂行、リスク管理における過失の積み重ねから生じた」と報告書にある。

 「これら3分野の1つでも、慎重な意思決定と基準の遵守があれば、座礁を回避できたはずだ」。

 報告書では、アルジラーニ艦長の784日にわたる指揮の間、同艦が67%をワシントン州ブレマートン母港から離れた場所に展開していた高テンポ運用もわかる。

 座礁までの数時間、乗組員には事故を防ぐチャンスが何度かあったが、危険警告を無視した、と報告書は指摘している。

 

 

座礁事故の発生 

USSコネティカット(SSN-22) は、2021年7月31日に横須賀基地に寄港した。US Navy Photo

 

 

10月2日、コネティカットは緊急の乗組員上陸のため、南シナ海を沖縄に向け高速航行中に座礁した。速度や位置情報は報告書から削除されているが、脚注の参考文献には、24ノットでの機器の性能が機密解除で記載されている。

 報告書の未編集部分に詳細が書かれていないが、乗組員を下船させるHUMEVACは、家族の緊急事態など様々な理由で発生する。

 10月1日、アルジラーニ、副長パトリック・カシン中佐Lt. Cmdr. Patrick Cashin、先任兵曹長コーリー・ロジャースChief of the Boat Cory Rodgers、航海士補、武器担当、機関士、作戦担当などが、臨時航路を検討した。

「臨時航路は、承認されたNAVPLANに基づいて運航されている場合に、CO「艦長)の裁量で使用できる」と調査結果にある。

「COは航路を詳しく検討しなかった。任務遂行のため、海図化が完全でない地域を通るコースを計画し、航路の理解度で航海士官と指揮官が食い違った」。

 アルジラーニ艦長は、潜水艦乗組員に海底地形を超精密に把握できる機密航法ツールでルートがカバーできると誤解してていた、と報告にある。

「COを含む航行審査チームは、コネティカットの外洋環境での活動を誤って評価した」と報告書は述べている。

 「航行危険区域の近くを通過する計画航路に基づいて、艦制限水域にあると認識すべきだった」。

 航路の航行中、乗組員は船底の水深を測定する測深機で継続的に測定していた。測深は、海図上と実際の水深を比較するために使用される。

 座礁の1時間弱前、当直員は潜水艦の予定進路と水深を確認し始めた。当直員は甲板長に、海図上の航路との不整合を知らせた。OOD、操舵員ともにアルジラーニに測深計と海図の不一致を知らせなかった。

 時刻が近づくにつれて、甲板長は測深値が浅くなってきたとOODに知らせた。

 「OODは、予想以上に浅い測定値を懸念していたが、積極的な行動を取る必要性を感じなかったと述べている」(報告書)。「OODは速度を下げる指示は考えなかった」。

 衝突の数秒前に、「ソナー・スーパーバイザーは艦首付近に痕跡を確認した。痕跡は[動物]と分類された。ソナー・スーパーバイザーは、他に接触はなかったと述べた」と報告書にある。

 その後、コネティカットは海山に衝突した。乗組員11名が衝撃で軽傷を負い、同艦はグアムへの移動中にドームを失った。潜水艦が2月に乾ドックに入った後の海軍海上システム本部の評価では、「損傷は艦首と舵の下部」とされた。

 アルジラーニ、カシン副長、ロジャースCOBは、10月29日の調査終了後、解任され、譴責文書が出たと、USNI Newsは当時報じている。

 米第7艦隊のカール・トーマス中将Vice Adm. Karl Thomasは調査終了報告で、座礁時の航海士、航海士補、機関士、OODに対して追加の譴責文書を出し、艦内職務から解任したと書いている。また、同艦の電子技師長、航海士も叱責し解雇した。

 

 

衝突前から問題があった

ワシントン州キーポートで行われたシーウルフ級高速攻撃型潜水艦USSコネティカット(SSN-22)の指揮官交代式で、カリフォーニア州アナハイム出身のキャメロン・アルジラーニ中佐がスピーチした US Navy Photo

 

 

 調査によれば、アルジラーニは2019年8月に艦の指揮を執ってから座礁までの間、シーウルフ級原子力攻撃艇3隻を統括する潜水艦分隊指揮官から3度、指導力での問題点で助言されていたと判明している。

 アルジラーニは着任して1年足らずで、第5潜水艦開発飛行隊司令官リンカーン・ライフステック大佐Capt. Lincoln Reifsteckから業績報告書を通じてカウンセリングを受けた。「不適切な監督、効果的でない説明責任の遂行、表面的な自己評価」を取り上げていた。

 2月、ライフステック大佐はアルジラーニに指示書を出し、「司令部の全体的なパフォーマンス、改善の欠如、フィードバックを受け入れたがらないことに対処するよう指示した」。

 配備前訓練中の2021年4月14日、コネティカットはカリフォルニア州ポイントローマで桟橋に衝突し、別の司令部が調査し、航行安全停止を促した。

 調査官は、アルジラーニ、カシン、ロジャース、桟橋衝突時の甲板長、航海士と航海士補に対し、「職務怠慢による懲戒処分」を勧告した(調査結果より)。

 ライフステック大佐は勧告を覆した。理由は「この調査により、航行、計画、稚拙なシーマンシップ、効果的でない指揮統制における基準低下が明らかになったが、通常ではないパフォーマンスであり、組織的失敗ではない」。「2021年5月13日にUSSコネティカットのブリッジから安全に入港したの確認し、乗員の訓練の適切な反映が示された」と述べた。

 ライフステック大佐はその1週間後にDEVRON 5の指揮を引き継いだ。

 ハドソン研究所の主任研究員で元潜水艦乗組員のブライアン・クラークBryan Clarkは、座礁の調査を見直したが、キャリア終了の懲戒処分になっていてもおかしくないと述べた。

 「普通なら、この男はクビになるはずだ」とクラークは言う。「あれだけ明らかな問題があるにもかかわらず、艦長であり続けたことに、とても驚いてかされる」。

 2021年5月21日、太平洋潜水艦部隊司令官ジェフリー・ジャバロン少将Rear. Adm.Jeffery Jabalonはコネティカットの配備を推奨し、2021年5月24日、当時の米第3艦隊司令官スコット・コン中将 Vice Adm. Scott Connは配備の準備状況完了を認定した。

コネティカットは5月27日に出港した。

 

 

高需要のアセット

北極の氷の中を浮上する高速攻撃型潜水艦USSシーウルフ(SSN-21)。July 30, 2015. US Navy Photo


コネティカットは、冷戦終結時に外洋でソ連潜水艦を狩るため設計されたシーウルフ級潜水艦(SSN-21)3隻の1隻だ。

 シーウルフ級は、ロサンゼルス級やバージニア級の攻撃型潜水艦よりも速く、深く潜ることができ、魚雷数十本を格納できる武器庫を誇る。3隻は最も重武装の艦船の一つで、需要が高い。

 調査によると、アルジラーニがコネティカットの指揮を執っていた784日のうち、527日はコネティカットの母港であるワシントン州ブレマートンから離れた場所で過ごしており、この割合は一般的な潜水艦よりもはるかに高いとハドソン研究所のブライアン・クラークはUSNI Newsに語った。

 2年に1回、半年間の配備がある一般的な攻撃型潜水艦の2倍以上である、とクラークは言う。

 攻撃型潜水艦がより高い運用テンポを持つことができる理由の1つは、最初の10年間、コネティカットは同クラスの他の2隻、USSシーウルフ(SSN-21)と大幅に改造されたUSSジミー・カーター(SSN-23)の部品取り用となり、頻繁に展開しなかったからだとUSNI Newsは理解している。その結果、コネティカットは船体の耐用年数よりも長く存続する過剰な原子炉能力を持ち、急配備で良い候補となる。

 「最初の10年間は、あまり頻繁に配備されなかった」とクラーク氏は言う。

「今は、失われた時間を取り戻しつつあります。

だが衝突による損傷で、重要な潜水艦資産を取り除いてしまった」。

 海軍水上システムズ本部によると、コネティカットは、2月にピュージェットサウンド施設で修理を開始している。NAVSEAの声明では、「損傷の修理にかかる費用は現在計算中」とあり、工期の見積もりを出していない。■


Investigation: USS Connecticut South China Sea Grounding Result of Lax Oversight, Poor Planning - USNI News

By: Sam LaGrone

May 24, 2022 5:49 PM