2018年6月26日火曜日

KC-46Aの米空軍向け引き渡し開始時期がやっと決まった

難航してきたKC-46Aですがまず18機の納入でめどがつきました。残りの機材は別途契約ですが、全機そろうのに相当時間がかかりそうです。技術の向上でKC-135のようなはらばいのクルーによるブーム操作の職人芸は不要となり、コックピットから給油を操作できるのはすごいですね。気になる自衛隊向け機材ですが経費負担が想定外のボーイングはいったい日本向け価格をどうはじいてくるのでしょうか。高い買い物にならなければいいのですが.....

Aerospace Daily & Defense Report

USAF, Boeing Agree To KC-46A Tanker Delivery Schedule 米空軍、ボーイングがKC-46A給油機引渡し日程で合意形成

Jun 20, 2018Jen DiMascio | Aerospace Daily & Defense Report

KC-46A: Boeing

空軍とボーイングはKC-46A給油機の引渡し開始時期を2018年10月とすることで合意した。
この合意で次はアイゼンハワー時代のKC-135給油機に交代する機体が二十年を経て登場することになる。
ここまで来るまでこと自体が同機事業の特徴そのものだ。単純と思われたにもかかわらずもっと困難だと判明したのは民生用に大量生産生産された機体に給油能力を付与することだった。
米政府は2001年9月11日にペンタゴンや世界貿易センターへのテロ攻撃直後に新型給油機導入を表明。だが35億ドルで18機を生産する契約がボーイングに交付されたのは2011年のことだった。
「空軍はボーイングのKC-46Aチームと共同で作業し第一期分18機の納入予定で合意に至りました。運用型KC-46A一号機は2018年10月に納入され、残る17機は2019年4月までに納入を完了します」と空軍次官マシュー・ドノヴァン Matthew Donovan が発表。「KC-46Aのフライトテストはほぼ完了していますが重要な仕事が残っています。空軍はKC-46Aの納入開始に期待しつつボーイングと事業の加速化を図ります」
ボーイングも同じ感触だ。同社はKC-46約30機の生産に入っており、納入開始を待つ状態だ。
「当社も引き渡しに非常に興奮している」とボーイング・ディフェンススペースアンドセキュリティ社長リーアン・カレット Leanne Caret が述べている。
毎月三機の納入ペースは空軍想定とほぼ同じだ。
だがここまでの道は険しかった。ボーイングは税引き前30億ドルを自社負担をしている。固定価格制契約で政府に超過支出を発生させない仕組みのためだ。それでも日程遅れの発生は止められなかった。米会計検査院によれば当初の開発契約でボーイングはこの18機を2017年8月納期で引き渡すはずだった。
日程遅延に加えボーイングと空軍は技術をめぐり対立し、遠隔画像装備のセンサーで操縦席から給油を行うのだがこれも対立の種となった。空軍は給油ブームが一定の飛行条件で被給油機の機体表面に接触し削る現象に憂慮した。ボーイングは軍の要求水準に合致と主張。4月になりボーイングは初号機納入までにソフトウェア改良すると合意した。
作業は進行中でボーイングと空軍担当事務局は欠陥解消を目指している。「ボーイング開発の遠隔画像視認システムのソフトウェア改良作業は開始されたところでボーイングとKC-46A推進室は追加飛行テストで現在の設計内容が軍用用途に耐えるかを見極める」と空軍は述べている。「ボーイングの研究部門によるテストでは機体中央のドローグシステム改良も続けている。改良内容の飛行テストでの検証は2018年9月開始となる」
今回の教訓を尋ねられたカレットは「双方に明らかな教訓が生まれた」と述べ、ここまで複雑な内容のため関係者全員が同じ内容を理解する必要があると述べた。

「ここまで難易度の高い事業を進めると時間経過とともに関係者間の関係が気まずくなることがあります。とくに今回は長期にわたる事業となりました」とカレットは述べ、「ボーイングだけでなくほかの事業者にとってもこのような事態は異例ではありません。単純に困難な内容でした。双方がこの機体を戦闘部門が使う事態を想定し思いを共有しました。そして困難な要素を除去して行ってはじめて視野が広がったのです。そこまでが大変でしたがその後は解決はずっと楽になりました」■

2018年6月25日月曜日

イラン攻撃の準備に入ったイスラエル、変わる中東の勢力地図



Israel Spends With Eye On Iran Strikes In Shifting Mideast イラン攻撃を視野にイスラエルの装備増強は中東情勢の変化が背景



By ARIE EGOZIon June 21, 2018 at 2:47 PM


Israeli rampage missile


スラエル軍が新型装備調達に動いており、イラン攻撃の想定とみられる。イランが核兵器開発を再開した場合を想定しているようだ。
すでにイスラエルは20億ドル以上を投じてイラン攻撃準備に入っていると伝えられる。
イスラエルのショッピングリストには新型空中給油機のほか新型兵器にランページRampageミサイルがあり、イスラエル軍事工業企業体(IMI)とイスラエル航空宇宙工業(IAI)が発表したばかりの長距離強襲ミサイルで両社の共同開発だ。
ランページはイスラエル空軍F-35が発射する想定だが同空軍の他機種ほとんどでも運用可能だ。両社によればランページは指揮命令所、空軍基地、整備施設、インフラなど高性能対空装備の防御をうける重要施設攻撃に最適化されている。
IAI、IMI両社によればランページの自重は570キロで全長4.7メートル、射程は150キロという。
イスラエル国防相アヴィゴドール・リーバーマンAvigdor Liebermanからは米国のイラン核合意脱退直後にイランは合意に残るのではとの発言があった。
「イランは綱渡りをしており脅迫まがいの言動も出ているが、合意そのものを反故にすることはないのではないか。というのもイランには激しい攻撃を受けることが分かっておりその場合イラン経済そのものが立ち行かなくなるからだ」
ただしだからと言ってイスラエルがイランの脅威を黙ってみているつもりはないという。「イラン対策の選択肢を下げたことはない。すべての選択肢はテーブルの上にある」
イスラエルが新兵器導入を決めたのはトランプ大統領が核合意脱退を決めたのがきっかけだが、そもそもイスラエルが攻撃力増強をめざす背景には中東の戦略地図再編がある。
イラン、サウジアラビアがこれまで長期にわたりイラクからシリアにかけて覇権をめぐり秘密のうちに戦闘を繰り広げていることが知られ、範囲はレバノンからイエメンにもひろがっている。
トランプ大統領はサウジアラビア支援を公言しイランの影響力封じ込めを狙う。サウジはトランプのイラン核合意脱退を称賛している。サウジからすれば合意は意味のない紙きれにすぎない。イスラエルも同じ見解だ。
イスラエル国防省で軍事情報研究部門に勤めた経験のあるエイモス・ジリード Amos Gilead はBreaking Defenseにイランはトランプの脅かしに屈しないと語る。「核合意はイラン側に有利に働き、あと十年もすれば核兵器保有が現実になります」
米国のイラン核合意脱退でどんな影響がシリア情勢にでるのか。イランはシリアに戦闘要員多数を送り込んでいる。
「イスラエルはイランがシリアに足場を築くのを容認できません。ロシアもシリアへの過度の影響力をイランに持たせないのが得策とみています」(ジリード)
ではイスラエルとロシアが協調してイランのシリア国内での勢力増強を食い止められるのかとジリードに尋ねてみた。「イスラエルからロシアにシリア国内のイラン軍攻撃予定を事前に教えることはありません。ロシアは信用できません」
だがイスラエルはイランを核兵器の観点以外にイスラエル-シリア国境での軍事力増強も重視している。
IDF(イスラエル国防軍)はイランのシリア派遣部隊への攻撃を繰り返している。イラン輸送機が貨物を下した直後に攻撃することもある。
一方でイスラエル情報部は欧米各国がイランに騙されているとの主張を裏付ける情報を集めるのに躍起のようだ。
その中で未確認報道がクウェート日刊紙アル・ジャリダに掲載されイスラエルのF-35戦闘機がイラン領空に侵入したという。
イランは同報道を否定したが、数日後にアリ・ハメネイAli Khamenei 最高指導者はファルザド・エスマイリ准将Brig. Gen. Farzad Esmaili をイラン防空軍司令から更迭している。アリレザ・サバヒ・ファルド准将Brig. Gen. Alireza Sabahi Fardが新司令官に就任し、最高指導者はファルド司令官は同国中央部にあるファタム・アルアンビアKhatam al-Anbia防空基地で指揮をとると発表している。
米軍はイスラエル国内基地各地に軍事物資の集積を増やしている。米軍がイスラエルに軍事装備を搬入できるのは米対外援助法で戦闘予備集積を同盟国内に置くことを認める特別条項があるからだ。同条項によれば装備品は世界各地に展開する米軍部隊が使用する一方、緊急時には集積地の国も使えるとある。もともとこの条項は韓国が米軍装備で北朝鮮奇襲攻撃に対応することを想定していた。
エイモス・ジリードによれば米軍装備品のイスラエル国内集積の狙いは米軍部隊による使用のみという。「これ以外の使途はワシントンが都度決める必要がある」とのことだ。
イスラエルと米国はイランがイランがシリア国内で攻撃を受けていることの報復で地域内軍事同盟関係国や代理勢力を使うのではないかとの点で評価が一致している。
イラン最大の成果はレバノンのヒズボラ勢力で「同国内に別の国を作った」がシリア内線で大打撃を受けているのも事実だ。苦境に立ったシリアのバシャ・アサド大統領を助けることでヒズボラは戦闘員数百名を失っている。
エイモス・ジリードによればヒズボラはレバノンからイスラエルへ発射できるロケット弾120千発がありながら抑止されている状態だという。「シリア、レバノン国内のイスラエル情報部員はヒズボラがイラン製ロケットで長距離精密攻撃能力を得るのを防ごうとしている」のだという。
中東問題に詳しいイスラエル専門家モデチャイ・ケダーMordechai Kedarによれば仮にロシアが本当にシリアからイランを追い出せばイランには大きな敗北になるという。「イランはシリアにプレゼンスを築こうと大金を投じていますが、共和国防衛隊隊員数百名がすでに戦死するという代償を払っています」
ケダーによればアサド政権の維持でロシア、米国の目標は共通しているという。「ロシアはアサドがいなければシリアが混とんとなるばかりか手が付けられない状態になるとわかっているので苦い薬も飲まざるを得ないのです」
イランはトランプ大統領の強硬策を払いのけているが、本当に自国を取り巻く脅威に目をつむれるのか。
「無理ですね。トランプはオバマと違い真剣でありイランもそのことがわかっています」(ケダー)
イエメンも同時にイランの影響力の点で見逃すことが出来ない国だ。
イエメンでイランが支援するフーシ運動はサウジが支援する政府を2015年3月に転覆させ北部地方を支援している。さらにサウジアラビアに100発以上のミサイルを発射している。
ミサイルの標的はサウジ首都でありイエメン国境近くの主要石油製造施設だ。さらにサウジの石油タンカーも狙う。
米国とサウジ主導の多国籍軍がイエメン内戦への介入を2015年に開始し、イランのフーシ向けミサイル供与を非難しているが、イランはこれを否定。
サウジ主導の多国籍軍はイエメン国内に空襲数千回をこの三年で実施し、病院学校等が被害を受け民間人数百名の犠牲が生まれているもののサウジは軍事勝利に近づけない。
サウジ政府は軍人民間人で同国国民数百名がフーシの攻撃で生命を落としたと発表。フーシは迫撃砲のほか短距離ミサイルで攻撃している。
ケダーによればイランの狙いはサウジアラビアの粉砕にあり、オバマ政権はサウジの動向は全く配慮していなかったという。今やホワイトハウスの主は交代し物事は全く違う対処を受けている、という。■

2018年6月17日日曜日

米軍最悪の戦闘機5機種はこれだ

むりやり5機種にしていますが、ほかにも期待された役割ははたせなかった機がありそうですね。F-104は米空軍ではほとんど活躍しなかった機体ですが、ドイツなどでは「未亡人製造機」とまで呼ばれてしまいました。それに反し航空自衛隊でそこまでの悪評が立たなかったのは使いにくい同機を必死に稼働させた努力があったのでしょうね。


Flying Tin Cans: 5 Worst U.S. Fighter Jets of All Time 最悪の米戦闘機5機種



June 16, 2018


軍航空部隊は機材に恵まれてきた。一つには米国の国防産業基盤で数多くの企業から機体設計を競い低性能機を早期に排除してきたことが大きい。とはいえ、すべての機材がP-51マスタング、F6Fヘルキャット、F-15イーグル並みとはいかなかった。そこで今回は傑作機とはいいがたい戦闘機のリストをお目にかけよう。前世紀の米国で開発・生産された機体で一定の機数が生産されたもの(カッコ内に機数)に限ったため、「サンダースクリーチ」「ゴブリン」等試作だけに終わった機体は含まない。

バッファロー(509機)

ブリュースター・バッファローは技術サイクルの中で登場時期を誤った機体だった。1930年代末には比較的高性能だったが太平洋戦争勃発時に投入された高性能機材に太刀打ちできなかった。当初は艦載戦闘機として生まれたバッファローは開戦初期の日本軍戦闘機の前に大損害を喫した。エンジン出力、装甲ともに不足し低速で高高度性能が足りないバッファローは日本軍精鋭操縦手の敵ではなかった。開戦後数か月がたつと残存するバッファローは訓練機にされた。それでもフィンランドでは36名のエースを生み、ソ連との交戦に耐えた。

F7U カットラス (320機)

ヴォートF7Uカットラスは革新的な艦載戦闘機だったが失敗作に終わったのはあまりにも多くを一度に狙ったためだ。初飛行が1948年のカットラスはその他短命に終わった米海軍空母用戦闘機の一群のひとつだ。ジェット時代初期で技術がどんどん進展していく中で機体設計は複雑となり困難を極めた一方で当時の空母エセックス級ではジェット機運用は想定外だった。特異な尾翼形状のカットラスは操縦士に不評で機材の四分の一ほどが事故で喪失され、パイロット他が死亡していた。

F3H デーモン (519機) 

これもジェット時代初期の空母運用戦闘機のマクダネルF3Hはカットラスの比べれば常識的な設計内容だった。単発空母搭載戦闘機には信頼性高く強力なエンジンが必要だったがデーモンにはともに不足していた。さらに射出座席のでは射出メカニズムが作動しない問題が加わった。デーモンは亜音速迎撃機として可もなく不可もない機体だったがヴィエトナム戦の前に用途廃止された。
F-102デルタダガー(1000機)

ソ連長距離爆撃機の整備に対応して高速ジェット迎撃機数機種が生れた。そのひとうF-102デルタダガー(ジュースと呼ばれた)は当初超音速まで加速できず再設計を余儀なくされた。ジュースは高高度飛行でも性能が出来ず高高度を飛行してくるソ連爆撃機の迎撃に支障をきたしそうだった。再設計作業からF-106デルタダートが生まれこちらは性能が向上した。ヴィエトナム戦で空軍はF-102を低高度爆撃任務に投入したが成果にめぼしいものはなかった。ジュースは早々に州軍航空隊に移管され、機材は標的機に転用された。

F-104スターファイター (2578機)

ロッキードF-104スターファイターは高性能迎撃機として1958年以来各国の空軍に配備された。航続距離とペイロードが制限されたとはいえ、優秀な迎撃機となり航空優勢ミッションが重視されない時代だったがその任務をそれなりにこなした。ヴィエトナムでは対地攻撃に投入されたが微妙な成果しかあげられなかった。だが何と言ってもスターファイターの特徴は事故率である。米空軍ではその他センチュリーシリーズ戦闘機より高い事故件数を示したが、カナダやドイツではもっと高かった。事故原因は数々あったが、総じて単発戦闘機で主翼面積が小さいことが事故につながったといえる。

結語

歴史がF-35共用打撃戦闘機にどんな審判を下すかは不明だ。一部にこのリストに加えるべきとの声もあるが、まだ同機は製造中であり、供用期間もはじまったばかりだ。それはともかく上記の各機が最悪だとしても周辺技術の変化にもかかわらず有益な貢献をしてくれたのも事実だ。

Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and the Diplomat.

Image: Wikimedia Commons

2018年6月13日水曜日

F-35納入が300機を超えた(6月11日)

F-35 passes 300th delivery milestoneF-35納入が300機の大台に


Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
12 June 2018

通算300号機のF-35は米空軍向けのA型だった。ユタ州ヒル空軍基地に向かった。300機生産完了まで7年を要したが、製造工程の改良で次の300機は2年半で納入が完了する。Source: Lockheed Martin

算300号機の生産仕様型F-35ライトニングII共用打撃戦闘機(JSF)が6月11日にロッキード・マーティンおよび共用事業推進室(JPO)により納入された。

今回の達成はテキサス州フォートワース工場での出来事で生産仕様型の生産がはじまった2011年5月から7年かかったことになる。同機はフォートワース以外にイタリアと日本にある最終組み立て・点検(FACO)施設からも納入されている。

300号機は通常離着陸 (CTOL)方式のF-35Aで米空軍向けとなった。これまでF-35Aは197機、短距離離陸垂直着陸(STOVL)型のF-35Bが75機、空母運用型のF-35Cは28機が米国および各国向けに納入されている。

ロッキードによればF-35の修正作業はこの5年で75%削減された一方で製造に要する時間は2015年から約20%短縮されている。このため次の300機納入は2020年末に完了する。

年間納入66機を達成した2017年にロッキード・マーティンは2018年の目標は91機としていた。完全な量産体制になる2023年にはこれが160機になる。 Jane’s All the World’s Aircraft: Development & Productionが記しているようにF-35の総受注3,170機になっている。

ロッキード・マーティンとJPOはロット11で交渉中で低率初期生産 (LRIP) はこれで終了する。同社はロット11で141機を生産する予定。■

2018年6月12日火曜日

祝米朝首脳会談。北の考える非核化プロセス概念が西側と違いすぎる。切り札は日韓両国の核兵力保有だ。

 


America Should Loan South Korea and Japan Nuclear Weapons 

米国は韓国日本へ核兵器を貸与すべきだ



June 9, 2018



国が北朝鮮への交渉で結果を得るには韓国内に核兵器を配備し、北の核兵器と相殺する形しかない。米国が核兵器を1991年に韓国から撤去した大きな過ちを正す好機が来た。北朝鮮は核兵器開発中止で金銭以上の戦略取引を求めている。このため今回の首脳会談が実現した。北朝鮮の考える「非核化」とは米国が在韓米軍を撤兵し、韓国向けの核の傘も撤廃すれば北も核兵器を廃止するという定義だ。

だが米国がその通りに実行することはありえない。韓国を北朝鮮に譲り渡し日本さらに地域の安全を脅かすからだ。平和の名の下でここまで非現実的な提案が通れば世界平和そのものに不幸な事態となる。

この数週間であらわれた外交面での大きな動きは米国の交渉上の立場の弱さを如実に示した。米抑止力は余裕がなく妥協の代償になりうる戦略核の手ごまがないのだ。米国は取引材料となる戦略核の余裕を作る必要がある。このことに米国が気付くのが遅くなったが気づかないままよりましだ。米国がこの点で失敗すれば交渉は悲惨な結果に終わる。

米核兵器を韓国に配備すべきだ。同時に日本にも置くべきだ。これで北朝鮮も核兵器廃止の交渉に真剣にならざるをえない理由が生まれる。

米政府は以前同様に戦術核兵器を韓国に配備すればよい。米国は同時に同盟諸国にも半独立型の核抑止力として核兵器を貸与できるはずだ。

これで中国と北朝鮮の戦略上の計算をひっくり返す大きな効果が生まれる。両国は北朝鮮の核兵器でアメリカを脅迫して地域を支配する望みがもてなくなる。逆に北朝鮮と中国は不利な状況を悟るはずだ。

両国は韓国の核兵器運用能力で取引をすることが戦略上必要と感じるだろう。状況の変化で交渉も進むはずだ。

韓国と日本は限定的ながら事実上の核保有国になると、北朝鮮と中国は最大の悪夢を目にすることになる。交渉を進めないと韓国と日本が永久に核保有国の座につくことになる。

当然両国は注意するはずだ。米国には北朝鮮核兵器で大きな取引材料が実現することになる。北朝鮮-中国にとって状況は一気に深刻となり今までのような態度はとれなくなる。

この方法ならドナルド・トランプ大統領も気に入るだろう。大統領候補としてトランプは韓国、日本は核武装すべきと述べていた。

トランプの主張は当時のメディアから「受け入れがたい」として一蹴され、トランプ自身も構想は「受け入れられない」と判断して再提案しなかった。だが今や本人はホワイトハウスの主だ。

さらに韓国の世論調査では6割もの多数が核武装に賛成する結果が繰り返し出ている。米メディアもあたかも政府を超える存在として重要な政策選択肢を勝手に「受け入れがたい」とラベル張りするのはやめコモンセンスの尊重に切り替えるべきだ。韓国国民が自国の核武装を望むのは現実の外部脅威に目をつぶる余裕が許されないからだ。北朝鮮核兵器の射程が米本土まで伸びようとする中で米国民も同様に現実の脅威を無視できない。

言い換えればトランプは正しかったのであり、その主張は現実主義を反映していたのだ。現在は具体的に実施に向けた詰めをおこなうべきときであり、核兵器拡散の危険を克服すべきときだ。つまり、米国は韓国、日本へ核兵器を貸与し、米国が最終所有権を保持すればよい。

核兵器貸与は次の段階を経る。

1.核兵力は北朝鮮の規模を上回るものとる

日韓両国で残存性を考慮すると核ミサイル搭載潜水艦の形が望ましい。

これまで核兵力の規模と姿をTNIブログでは「戦略ミサイル潜水艦五隻で各16発の核ミサイルには100キロトン弾頭4つを搭載。常時哨戒中の潜水艦一隻で弾頭64個を運用する」としてきた。

さらにこの装備はあくまでも貸与するものであり、国産開発させないことで配備までの期間、非拡散、同盟国へ引き渡す間に発生する不安定さの排除を実現できる。

2. 各同盟国にミサイル発射の自主的権限を与える

従来の二重管理方式にすべきでない。抑止力運用を広げることで米国が核報復攻撃を受けるリスクが増え米国が本当に同盟国防衛のため核兵器投入に踏み切るのか不確実になる。米国にとって同盟国が独自に核抑止力運用できれば安全になる。また韓国、日本も安全になる。

米軍の核兵器は完全に別の形で保管し、本来の目的のために温存する。つまり米国への攻撃への抑止効果だ。

3. 自主運用権を認める代わりに米国は核兵器の最終所有権を維持しつつ各国のミサイル標的に制約を付ける

この点が核兵器貸与が核兵器拡散と一線を画す点で他国があわてて核武装に乗り出すことを防げる。

さらに核兵器の保有権を維持しながら兵器の乗っ取りを防ぐため、米国が維持管理を行い、重要な技術上の秘密を保持する。これにより核兵器の一方的な乗っ取りや撤去は不可能となるが事前合意ができた条件がある場合はこの限りではない。

4. 米国は事前に再処理ならびに兵力変更の条件を定めるべきで考えられる条件は以下の通り

米国は北朝鮮が核兵器・ミサイルを撤去すれば韓国に貸与した核兵器を回収する。逆に北朝鮮が核兵器を廃絶しない、あるいはテストを再開した場合は韓国へ貸与する核兵器を増強する。

米国は日本が中国やロシアと海洋、領土、核の核問題で外交解決に至れば貸与していた核兵器を回収する。

交渉が長引いて行き詰まれば米国は各同盟国に核兵器の恒久所有権移転のオプションを行使できるものとする。これにより米国は交渉に本気だ、貸付はブラフではないとのメッセージが伝わる。

北朝鮮からすれば韓国が永久核保有国になるのは耐えられないはずで、さらに韓国が強力になることも同様なので核兵器廃絶交渉に真剣になるはずだ。

中国も同様に核保有国としての日本との対決は望まないはずで北朝鮮に核開発計画の断念を求めてくるだろう。また日本とも戦略面でなんらかの妥結をはかるだろう。これで米国に望ましい状況が生まれる。韓国や日本が核開発に乗り出さない間に米国はこれまで中国と核兵器管理を期待してきたが、結局望む結果は得られていない。核兵器貸付によりバランスは即座に変化する。

米政府の交渉上の立場は強化され懇願することはなくなる。中国と北朝鮮が米国や同盟国に懇願することになる。すべての関係国が交渉に真剣になる。

これまで中国とロシアは北朝鮮の核脅威を維持するほうが得策と考えて米国の妥協を引き出そうとしてきた。両国は良い警官、悪い警官の役割を模索し、米国に対しては悪い警官に対決するのを助けるふりをしながら実際は逆の立場を演じてきた。これまではこれでうまく切り抜けてきた。

経済制裁では中国の目算を変えられなかった。中国は北朝鮮を米国に対決させる構図のままだ。最近はトランプ政権に譲歩して北朝鮮への経済的締め付けを強めているが、同盟国のロシアが北向け物資補給の役目を部分的に補っている。韓国が北朝鮮との首脳会談で合意した後に金正恩は中国を訪れ、中国は北朝鮮の強硬態度の保持を勇気づけ中途半端な反応を取らせた。したがって核兵器貸与のショックで中国の目算は狂い北朝鮮の核兵器保有を自国の戦略に利用してきた動きを逆転させられる。

日本と韓国が「臨時核保有国」になれば、貸与中の核兵力で中国の夢だった地域支配は否定される。日本と韓国に核兵力維持を断念させるため中国は戦略的な代償を支払う必要が生まれるだろう。

では最近話題に上っている経済懐柔策で同様の成果が期待できるだろうか。危険なほど非現実的だ。米国はいかにもこれが効果を上げると思い込まされているようだが実はこのような希望に賭けるのは危険だ。

北朝鮮のような相手には経済手段はあくまでも二次的な要素だ。中国や北朝鮮が大事にするのは軍事上の厳然たる事実だ。米国が同盟国に核兵器を貸し出す決定をすれば経済面のアメと鞭が効果を上げる可能性が増える。経済は軍事面の補強策になっても代替策にはなりえない。

だが核兵器貸与は実施可能なのか。実は各国と核のカギを共有する既存の仕組み同様に実施可能だ。米国に必要なのは緊急時対応策の立案を開始し、貸与の準備も始めることだ。政治的意思が必ずその後に生まれ、核兵器貸与の必要は強まる一方になるだろう。

日本国内に核兵器への忌避があり、韓国政府も反対姿勢を示すと政治上の支障になる。幸いにも日本には有能かつ現実的対応をとれる政権があり、韓国の国民、国軍も現在の脆弱な政権よりは現実的な態度をとれる。仮に米国が緊急対応策で核兵器貸与を立案すれば必要に応じた対応策が各種生まれるはずだ。北朝鮮との交渉は一筋縄ではいかず、結果が出る前に何度も暗礁に乗り上げるだろう。核兵器貸与の実施は突然現実になりかねず、交渉を成功させるための唯一の手段と認識されるはずだ。

米国を破壊できる能力が実現する一歩手前まで北朝鮮が来ているため、アメリカが交渉による非核化の実現の強化策を手に入れることは最高度に重要と言える。失敗すれは先制攻撃あるいは北朝鮮による米国破壊力の存在を受け入れることになる。

先制攻撃のリスクは大きい。だが完全核武装した北朝鮮の脅威は現実だ。そのため今回提案の選択肢各種を重視すべきだ。米国にとってリスクが一番低い選択肢は核兵器を同盟諸国に貸与して米国と韓国が交渉を成功に持ち込むことだ。■

Ira Straus is an independent foreign affairs analyst. He has taught international relations for three years in universities and has worked for three decades in organizations devoted to the Western alliances and their relations with Communist and post-Communist regimes. He contributed an article to the National Interest on nuclear counterproliferation in 2004.
Image: Wikimedia Commons

2018年6月11日月曜日

★日本がスタンドオフ巡航ミサイルを配備する日がやってくる

巡航ミサイル導入は関連装備の導入規模も大きく、米国として貿易赤字対策の切り札になるのでしょうね。その前に日本側は野党のセンティメント(政治首長ではありません)を封じ込める必要に迫られるでしょう。実戦化は早くて5年、あるいは10年かかるかも知れません



Japan Wants Cruise Missiles (And that Should Terrify China or North Korea) 巡航ミサイル導入を目指す日本に中国や北朝鮮は恐れをなすはず



June 9, 2018

朝鮮の核兵器開発で東アジアに不安定度がましているが、その影響は世界全体にまで及んでいる。その中で日本は核攻撃を受けた唯一の国として再び攻撃を受ける可能性に直面している。これに対して日本は第二次大戦終結後初めて攻撃兵器の導入を検討している。その狙いは核ミサイルが発射される前に発射台もろとも破壊することにある。


日本か国権の発揚として戦争を放棄し攻撃兵器の保有を自ら禁じてきた。空母、弾道ミサイル、爆撃機、上陸部隊はすべて攻撃兵器として保有していない。だが海兵部隊など以前は保有してこなかった装備の再評価が進み防衛的あるいは敵の攻撃前に先んじて投入することは可能とされるようになっている。


日本は弾道ミサイル防衛で優秀な体制を整備してきたが、攻撃回避で最良の方法は検討してこなかった。すなわち先制攻撃だ。一番よくみられるシナリオは日本の衛星が北朝鮮の液体燃料核ミサイルが発射台にあり燃料注入が進み攻撃準備に入る様子を探知することだ。発射が近づく中、他国なら絶好の機会としてミサイルや戦術機で攻撃を加え、ミサイルを発射台もろとも粉砕するだろう。だが日本にこの能力がなく、ただ見守りミサイル防衛体制が期待通り作動するのを祈るしかない。


北朝鮮が原爆さらに水爆兵器まで保有していることがわかり、ミサイル搭載を進める中で日本のリスクは高まっている。日本政府は巡航ミサイル二型式の導入に前向きな姿勢を明らかにした。米国製共用空対地スタンドオフミサイル射程拡大型 (JASSM-ER)およびノルウェー・米国共同開発の共用打撃ミサイル(JSM)である。ともに日本に北朝鮮ミサイル発射台あるいは指揮命令発令所の破壊能力を実現する手段となる。政治面でいえばこうしたミサイルは「防御攻撃」用として先制攻撃に投入できるがあくまでも明確な脅威となる標的が対象だ。


JASSM-ERはシリア化学兵器製造工場攻撃に投入されたJASSMミサイルの改良型で、B-1、F-16、F-15から発射され射程距離は575マイル(925キロ)だ。日本のF-15JやF-2で日本海から発射すれば北朝鮮全土の標的を攻撃できる。1,000ポンド(450キロ)弾頭の精度は3ヤード(2.7メートル)以内で地下施設への貫徹攻撃も可能だ。


もともと日本関係者からトマホーク対地攻撃ミサイル購入案が出ていたが、米当局者は核弾頭運用を想定する同ミサイル売却に及び腰だった。これに対してJASSM-ERは通常兵器専用のミサイルで現政権としても主要同盟国への同装備売却に異論はないだろう。


その次に日本が導入を検討中なのがJSMだ。これはコングスバーグ海軍打撃ミサイルの発展形で米海軍が水平緯線越えの対艦ミサイルとして沿海域戦闘艦に搭載することを決めたものだ。JSMはF-35の兵装庫内に収まる設計で日本もF-35を42機導入する。JSMはMk.41垂直発射管からの運用も可能で海上自衛隊の誘導ミサイル駆逐艦が発射できる。


ただし北朝鮮あるいは中国の巡航ミサイル・弾道ミサイルを相手にした複雑な海空作戦の実施能力を日本が確立するまでに時間がかかる。こうした作戦の実施には今以上の情報収集監視偵察装備が必要となり、無人機、空中給油機、早期警戒指揮統制機の拡充が求められる。さらに攻撃兵器導入は重大な政策上の変更となる。北朝鮮により日本が破壊される脅威により日本の軍事力が刷新されさらに増強されれば北朝鮮、中国ともに望まない結果になるだろう。
Kyle Mizokami is a writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch.

Image: F-15J at Chitose Air Base. Wikimedia Commons