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2025年4月15日火曜日

無人艦デファイアントのDARPA洋上実証が近づく(The War Zone) ― USVの開発はここまで進んできた。中国に対抗する米海軍艦隊が無人艦艇で構成される日が来るかもしれません。

 


USX-1デファイアント。DARPA

無人艦デファイアントのDARPA洋上実証が近づく(The War Zone)

無人艦USX-1デファイアントDefiantは、乗員なしで航行し、大量生産を想定した設計で、長期巡航に先立ち試験をこなしている

USX-1デファイアント中型無人艦は、戦闘艦のような船体形状をしており、数ヶ月にわたる洋上巡航を控えドックサイドでの試験を実施中だ。デファイアントは、乗員なしで航行できるように、また効率的な大量生産ができる設計で、最終的には米海軍に引き渡され、艦隊にさらに高性能なUSVを追加するという同海軍の取り組みとして実戦的な任務を視野に入れた追加試験が行われる。無人艦が今年初めにワシントン州のピュージェット・サウンドで目撃された後、本誌が最初にその進水を確認していた。

 サーコSerco社の海洋エンジニアリングマネージャー、ライアン・マータは、今週初めに海軍連盟の「Sea Air Space 2025」展示会の会場で、本誌にデファイアントの最新情報を提供した。USX-1は、米国国防高等研究計画局(DARPA)の「無人船舶(NOMARS)」プログラムで開発されたもので、マータはこのプログラムで副責任者も務めている。

「現在、船の引き渡し前のドック試験中です。その後、DARPAの典型的な実証試験を行い、技術的に彼らの期待に応えることができたことを証明する予定です」とマータは語った。「計画通りに進めば、今夏には海上に出る予定です。すべてがうまくいけば、長時間の耐久試験を行う予定です」。

デファイアントは現在、シアトルの北にあるエベレット市のピュージェット・サウンドにある海軍施設、エベレット海軍基地に係留されている。同無人水上船(USV)は、サウンドの向こう岸にあるウィドビー島にあるNichols Brothers Boat Buildersで進水した。

 DARPAは、デファイアントの洋上実証は数ヶ月にわたって実施される予定であると発表している。この長期間にわたる巡航をサポートするため、DARPAは海軍と協力し、洋上給油を必要としない新たな洋上給油システムをUSX-1用に開発している。

「DARPAの実証後、SURFDEVRON(米海軍ベンチュラ郡基地)に引き渡され、PMS 406がスポンサーとなる予定です」(マータ)。

 SURFDEVRONは、2019年にテスト部隊として設立された海軍の第1水上開発隊を指す。昨年、SURFDEVRONは正式に、より大きな第1水上開発グループ(SURFDEVGRU)へと発展した。現在、同グループには2つの無人水上艦艇隊(USVRON)が配属されています。また、同グループは現在海軍で就役中のズムウォルト級ステルス駆逐艦2隻を監督しており、最終的には3隻目となる将来のUSSリンドン・B・ジョンソンを受け入れる。PMS 406は、海軍海上システム司令部(NAVSEA)傘下の無人海洋システム部。

 「SURFDEVRONに引き渡す際、期待しているのは、ミッションシステムを使用した一連の演習です。なぜなら、DARPAのデモンストレーションにはミッションシステムが含まれていないからです」と、サーコのマータは付け加えた。「ですから、このような大きな『R』要件の有用性を証明したいと考えています。 それによってどのような効果があるのか?どのようなものを搭載できるのか?ミッションシステムとプラットフォームの統合が私たちの期待するところです」。

 デファイアントでは当初から、安全マージンを確保し乗員が搭乗せずに運用できるように設計されています。これまで海軍が実験してきたUSVは大型のもので、有人艦艇を転用したものか、あるいはオプションとして乗員を乗せることを想定して設計されたものだった。米軍は、USX-1のような中型USVを、全長200フィート未満、排水量500トン未満と分類しているが、スピードボートやジェットスキーをベースにした設計よりも大型だ。大型USV(LUSV)は、全長300フィート、排水量2,000トンに達する。

2023年、米海軍のUSV「マリナー」が後方、「レンジャー」が前方に並んで航行している。いずれも洋上支援船を改造したもの。米海軍

 NOMARSとともに、DARPAの中心的な提案は「1年間完全な無人で、90%の稼働率で海上に出ることができ、高速でターンアラウンドが可能で、運用コストが安価である」というものだ。また、サーコ社のマータによると、「Sea State 3」の条件下で最大速度「20ノット」で航行でき、有用なペイロードを搭載できる能力も備えている。ビューフォート風力階級でいうと、シー・ステート3は風速10ノット、平均波高約2フィートで、最大3フィートまで上昇することもある。

 マータは、デファイアントの仕様や現在の能力についてこれ以上の詳細は提示することはできないとし、詳しい情報についてはDARPAに問い合わせるよう求めた。しかし、同氏は「システムおよび航行の自律性」の両方が高いと説明した。

 デファイアントの実用化の可能性を探ることは、DARPAの当面の計画には含まれていないものの、USVはミッション用ペイロードの統合を念頭に置いて設計されている。

「ミッションシステムを中心に構築しています。つまり、ポッド型またはコンテナ型のシステムです。海軍にはすでにかなりの数があります」とマータは説明した。

 またマータは、2021年に海軍のレンジャーUSVに搭載されたMk 41垂直発射システムをベースとするコンテナ型ランチャーから多目的スタンダードミサイル6(SM-6)を発射するテストを特に強調し、その一例としてペイロードを挙げている。また、サーコはBAEシステムズ社の適応甲板発射システム(ADL)も提示しており、これはMk 41で使用されているのと同じキャニスターからミサイルを発射できる可能性のあるオプションのひとつだ。

陸上テスト中のADL。BAEシステムズ

 ミサイルを搭載したデファイアントは、「駆逐艦の外付け弾草として使用できる」とマータは強調した。「現在、CG-47級(タィコンデローガ級巡洋艦)は退役中です。 128(VLS)セル搭載の艦船です。そのミサイルギャップを何らかの方法で埋めなければなりません。

 海軍はティコンデローガ級の退役を間近に控えているが、昨年、そのうち3隻の耐用年数を延長する計画を発表しました。

 「想像できると思いますが、他にも多くの(ペイロードの)オプションがあります。C2ISR(指揮統制、情報、監視、偵察)や、そのようなペイロードです」とマータは指摘した。「デファイアントや一般的にMUSVと呼ばれる艦艇は、戦術的に有用なペイロードを搭載できるほど十分な大きさがあり、戦術的に有用な距離で、開けた海域で活動できることが特徴です」。

また、サーコでは過去にも、デファイアントの任務として後方支援が考えられると提案していた。

 「発射(弾薬)の際には常に人間による介入が必要ですが、装備や運動性能の一部は無人プラットフォームに積み替えることができるかもしれません。小型で安価なプラットフォームは離陸や離水、水平線の先への移動も可能なので、分散型後方支援や分散型攻撃能力という観点では非常に理にかなっています」と、 とマータは付け加えた。「そして、人々がこのプラットフォームで戦争ゲームを始めたら、このサイズ、耐久性、航続距離を持つものに多くの価値と用途を見出すことになると思います」。

2025年のシーエアスペースで展示されたデファイアントの模型。船首にADLが取り付けられている。ハワード・アルトマン

 コンテナ化ミサイル発射機を含むモジュール式ペイロード、およびMUSVが提供する幅広い運用上の関連性について、特に小型設計と比較した上で語ったことは、海軍がUSV計画で目指している方向性と一致している。1月には、海軍はMUSVやLUSVの艦隊よりも、小型でシンプル、かつ互換性のある無人艦の取得に重点を移すことを発表していた。

 また、海軍は近年、乗組員を乗せた軍艦や潜水艦のプログラムにおいて、深刻な遅延やコスト増に苦しめられている。 特に、中国との太平洋における潜在的なハイエンド戦闘に備える中で艦隊の強化を支援する低コストでより容易に生産可能なオプションとして、USVに新たな重点が置かれる可能性もある。 サーコは一貫して、デファイアントがこの点で特に優れた利点を提供するように設計されていると強調してきた。

 「当社は、現在ではやや珍しい、妥当な期間と妥当なコストで船舶を納入しました。当社は船舶の設計者であり、主契約者でもあり、ほぼすべての資材を産業基盤から調達し、それらを統合することで、それを実現してきました」とマータは語る。「造船所主導の主契約というよりも、政府とシステムインテグレーターが協力して資材を調達し、困難に直面した際には中心となって船を引き渡すというやり方でした。これは、1980年代の造船であり、現在のやり方ではありません。」

進水の直前または直後のデファイアント。DARPA


 「14人で14か月かけて船体を溶接しました。船体は、船内に人が乗らないおかげで非常にシンプルです。つまり、トイレも調理場も通路もありませんし、隔壁に穴を開ける箇所もほとんどありません。つまり、非常にモジュール化された構造で、素早い手作業での建造が可能です」と「デファイアントを建造できるレベル3の造船所は、米国に35箇所以上あります。搭載している大型エンジンは、3社で何万個も生産されています。

 また、サーコでは数年前から、デファイアントの設計をベースにした大型USVの可能性を模索していきた。これには、最大4基のADLまたはその他のコンテナ型ミサイル発射機、その他ペイロードを搭載可能な「Dauntless」と呼ばれるものも含まれる。

Dauntlessコンセプトのモデル。ハワード・アルトマン

 デファイアント、またはその他の派生型や派生品が最終的に海軍やその他の軍隊で運用されるかどうかはまだわからない。それまでの間、サーコとDARPAは、無人艦が数週間、あるいは数か月間、広大な海上で高度な自律性を保ちながら運用できるという、無人艦で核となる能力の実証に向け、着々と準備を進めている。■


Defiant Drone Ship Gets Closer To Months-Long DARPA At Sea Demonstration

USX-1 Defiant, which will sail without humans onboard and is designed for mass production, is undergoing trials ahead of its long-endurance cruise.

Joseph Trevithick

Updated Apr 10, 2025 8:28 PM EDT

https://www.twz.com/sea/usx-1-defiant-drone-ship-gets-closer-to-months-long-darpa-at-sea-demonstration


2023年10月3日火曜日

ゴーストフリート:日米が連携し、無人艦艇を多用することで中国への抑止効果を狙う動きが出てきた

 

USNI News

ゴースト・フリートは、無人艦船作戦をめざす海軍で進行中のプロジェクトだ

用無人装備をめぐる話題は航空分野や地上技術に焦点が当てられる事が多いが、太平洋における最近の動きで、米海軍の無人艦船「ゴースト・フリート」に脚光が当たっている。アメリカと日本の海軍作戦、そしてアメリカの同盟国と中国の間の地域的な対立に大きな影響を与える可能性が出てきた。

ゴースト・フリートは、無人艦船が自律的・半自律的に多艦作戦を行える海軍で進行中のプロジェクトである。開発中の無人水上艦艇(USV)は、小型の太陽光発電偵察プラットフォームから、魚雷発射が可能な中型クラスまで幅広い。海軍はまた、大型無人水上艦船(LUSV)と呼ばれる、全長200フィートから300フィート、満載排水量1000トンから2000トンの大型艦船群の獲得を望んでいる。これは、コルベットとほぼ同じ大きさで、哨戒艇より大きいが、フリゲートよりは小さい。LUSVは、ミサイル発射管16~32基の垂直発射システム(VLS)を装備する。

無人水上艦第一部隊(USVDIV-1)が運用しているLUSVの2隻、マリナーとレンジャーが9月18日に横須賀に到着した。LUSVは、中型USV(MUSV)のシーハンター、シーホークとともに、航海ロードショーの一環として、初めて日本から出港し運用される。統合戦闘問題(IPB)23.3という演習は、有人・無人協力のテストに重点を置いている。海軍は、同盟国とのこの共同演習は、「インド太平洋における地域の安全保障と安定を確保する」新しい能力をテストし、構築すると主張している。このテストは力の誇示でもある。中国は無人艦船の開発も強化している。これは驚くべきことではない。中国は南シナ海での勢力圏を確保する際、新しい島の建設、浮遊バリアの設置、法執行機関や海上民兵によるグレーゾーン作戦など、すでに独創的な手段を講じている。

USVは中国、米国、そしてその同盟国に人員を最小限に抑えながら作戦を遂行する能力を提供する。米国のLUSVは、より正確には最小限の有人船またはオプション有人船と呼ばれ、通常6人の乗組員を乗せている。この船はほとんどの場合、自律行動するが、乗組員は必要なときに交代する能力を持つ。米国のLUSVと小型USVは、Silvis無線によって弾力性のあるメッシュ・ネットワークに接続されている。レジリエント・メッシュ・ネットワークは、まさにレジリエントだ。ネットワークの一部がダウンしても、システムは自己回復し運用を続ける。これは、人的なネットワーク・サポートが困難な海上アプリケーションでは非常に重要である。ドローンフリートには、有人・無人の両方の船舶から発進できるドローン航空機も組み込まれている。

太平洋における大国間の争いで無人水上艦船の出現が境界線を押し広げる。無人偵察船は、中国艦隊を追跡できるだけでなく、運動オプションも提供できる。海軍の無人偵察艦艇が近い将来、軍需物資を運用する兆候はないが、攻撃可能なLUSVが太平洋で活動している事実は、アメリカのライバルに明確なメッセージを送っている。■


US Navy & Japan Team Up With Drone Boats to Counter China in Pacific - Warrior Maven: Center for Military Modernization

SEP 25, 2023

By Alexandria Elias, PhD, Warrior Contributor 


2023年9月23日土曜日

ゴーストフリート実験艦が横須賀へ到着。無人艦の統合運用の実証が目的。米海軍は分散海上作戦DMOをめざす。




 


2023915日、統合戦闘問題(IBP23.2中に太平洋を通過する無人水上艦「レンジャー」。 US Navy Photo

 

ゴースト・フリート無人艦艇二隻が西太平洋に進出

 


  海軍のゴースト・フリート無人水上艦のプロトタイプ2隻が今週、USVの可能性を紹介する太平洋ロードショーの一環として横須賀に寄港したと、海軍当局者が木曜日に発表した。

ジェレマイア・デイリー中佐Cmdr. Jeremiah Daleyは、日本からの電話インタビューで、USVマリナー、USVレンジャー、無人水上舞台ディビジョンONEUSVDIV-1)の幕僚は先月カリフォーニアを出発し、海軍の将来のUSV艦隊のための広範なテストプログラムの一環でハワイに出航したと語った。

デイリー中佐は、無人艦艇が、有人艦艇の認識を拡大し、海軍の水上艦隊の将来での活動の鍵になると考えている、と語った。

「駆逐艦3隻とUSVで構成される水上作戦群を、345倍の空間をカバーする3つの水上作戦群に転換する能力は、ゲームチェンジャーとなる」。

マリナーとレンジャーは、海軍の大型USVの技術実証艦である。海軍は年内に最初のLUSVの要件を確定し、2028会計年度までに9隻の契約を結びたいとUSNI Newsは今年初めに報じた。

LUSVは、数週間にわたる展開や大洋横断が可能で、空母打撃群(CSG)、水陸両用即応集団(ARG)、水上行動集団(SAG)、個々の有人戦闘艦と統合運用される」と海軍の2024年度予算書にある。

より多くの武器とより多くのセンサーで有人艦を強化することは、艦船間の接続を拡大する新たな分散海上作戦 distributed maritime operationsDMO)コンセプトの重要な要素である。

米太平洋艦隊司令官サム・パパロ海軍大将Adm. Sam Paparoは先月、記者団に対し、「DMOは、拡大機動の原則の下で、大量の砲火を浴びせる能力を我々に与えてくれる」。

ゴースト艦隊の艦船と小型のシーホークとシーハンターUSVの配備は、より広範なコンセプトを現実の世界でどのように機能させるかをテストしている。

マリナーとレンジャーは先月の世界的な大規模演習2023に参加し、第1空母打撃群mp空母USSカール・ヴィンソン(CVN-70)と共に行動し、打撃群のセンサー範囲を拡大した。ハワイからは、2隻のUSVが駆逐艦第7戦隊と第15戦隊の艦船、第3海兵師団の海兵隊員とともに行動した、とデイリーは述べた。

USVDIVがペアを組んだ部隊は、マリナーとレンジャーに搭載されたモジュール式ペイロードのセンサーデータを活用できた。この2隻は、もともとはオフショアの石油・ガス支援船として設計されたもので、標準的な輸送コンテナ以外にさまざまなセンサーや武器を搭載できる。

「訓練や演習の観点からは、完全に運用可能なユニットです」とデイリー。「船舶の制御から、搭載されたペイロードの利用まで、完全に統合されている」。

艦船は外洋で完全に自律的な運用が可能で、陸上のオペレーション・センターから、あるいは近くの艦船から制御できる。

艦は自律航行するが、ブリッジに民間人航海士が常時見張りにつく。

「港の出入りをする以外は、実用的な限り自律モードで使用しています」と彼は言った。

 

2 Navy Ghost Fleet Unmanned Ships Now in the Western Pacific - USNI News

By: Sam LaGrone

September 21, 2023 9:50 PMUpdated: September 21, 2023 10:15 PM

About Sam LaGrone

Sam LaGrone is the editor of USNI News. He has covered legislation, acquisition and operations for the Sea Services since 2009 and spent time underway with the U.S. Navy, U.S. Marine Corps and the Canadian Navy.

Follow @samlagrone

 


2022年9月1日木曜日

イランが公海上で米海軍無人艇を拿捕しようとしたが、米海軍に阻止された事件が発生。無人装備の拿捕リスクが浮き彫りになった。

 

U.S. Navy photo

今回の事件は、無人装備の利用が急速に拡大する中で、盗難リスクという未解決問題を浮き彫りにした

 

ランのイスラム革命防衛隊海軍(IRGCN)は昨日、アラビア湾で米海軍第5艦隊の無人水上艇セイルドローンを拿捕しようとした。イラン側はその後、無人艇を解放した。今回の試みは、無人装備が拿捕の脅威に直面しているとの懸念を浮き彫りにした。

米海軍の公式発表によれば、事件は現地時間8月29日午後11時頃、第5艦隊が公海を通過中、IRGCN支援艦Shahid Baziarを確認した際に発生した。同艦が米国の無人探査機「セイルドローンエクスプローラー」(USV)を曳航しており、IRGCNが同艦を捕獲しようとしたと海軍は主張。

イラン・イスラム革命防衛隊海軍の支援艦Shahid Baziar(左)が、Saildrone Explorer無人探査機を不法に牽引している映像のスクリーンショット。. Credit: U.S. Navy

これを受けて、警備艦USSサンダーボルト(PC-12)が付近での作戦から方向転換し、ヘリコプタ海上戦闘飛行隊26がMH-60Sシーホークを非公開場所から発進させ、事態対応を支援した。第5艦隊と第26ヘリコプタ海上戦闘飛行隊はともにバーレーンに司令部を置き、アラビア湾を拠点に活動している。海軍の報告によれば、4時間後に、IRGCNはUSVの曳航線を外し、それ以上の混乱はなく、海域を離れたとされる。

米海軍中央司令部および第5艦隊(NAVCENT/5th Fleet )司令官のブラッド・クーパー中将Vice Adm. Brad Cooper,は、「IRGCN の行為は非道、不当で、プロの海上部隊の行動と矛盾している」と述べた。「米海軍は警戒を怠らず、国際法が許す限り飛行、航行、作戦を継続し、地域全体でルールに基づく国際秩序を推進する」。

「USSサンダーボルトの乗組員のプロ意識と能力により、イランの違法行動を阻止した。米中央軍(CENTCOM)司令官マイケル・クリラ大将Gen. Michael Kurillaも別の声明で「今回の事件は、イランが中東で不安定化、違法、非専門的な活動を続けていることを改めて示した」と付け加えた。

2014年の編隊訓練で、他のPCと並走する沿岸警備船USSサンダーボルト(PC12)。Credit: Mass Communication Specialist 2nd Class Taylor M. Smith/U.S. Navy

太陽電池で動くUSV「Saildrone Explorer」は、海軍第5艦隊が運用する無人システムの一つで、2021年に紅海北端のアカバ湾で最初のミッションに投入された。デジタルホライズンと名付けられた実証実験の一環として、同ミッションは、第5艦隊の任務部隊の1つタスクフォース59が監督した。同部隊は、センサーと無人技術を組み合わせ、より強固な情報収集能力を確立し、海上における領域認識の向上を支援する無人システム運用に重点を置いている。

Saildroneの状況把握の役割を知っていれば、海軍が胴装備の異常な動きを察知し、第5艦隊の対応を促したと考えるのが妥当だろう。しかし、海軍の声明には詳細が記載されておらず、それが事実かどうかは不明だ。また、何らかの理由で使用不能になった可能性もある。The War Zoneはこの件に関して、NAVCENT/第5艦隊に問い合わせたが、返事はまだ来ていない。

国際海上演習/Cutlass Express 2022でアカバ湾を航行するSaildrone Explorer無人水上艦。 Credit: Mass Communication Specialist 2nd Class Dawson Roth/U.S. Navy

また、海軍は発表で、セイルドローンはセンサー、レーダー、カメラなどを備えた米国政府所有物であるが、航行とデータ収集を市販技術で構成していることを指摘したことも重要な点だ。このため、セイルドローンは幸いにも、盗難未遂の時点で機密性の高い情報やシステムを保存していなかった。

イラン軍が他国の海洋装備を押収するのは、以前からある。最近では、IRGCNがホルムズ海峡で、7,200トンの「石油系化学物質」を積んだ韓国籍タンカーを押収した。IRGCN はその後、沿岸部のホルモズガン州検察庁が環境プロトコル違反で出した令状に基づき、同国の港湾・海事機関から押収の要請があったため、押収したと主張している。今週の事件後、IRGCNがSaildroneが国際協定に違反と主張するかどうかが興味深いところだ。

しかし、無人船に人間が乗っていないことは、IRGCNが今週行ったような敵対的行為へる障壁を著しく低くする。乗員がなければ、死亡事故や捕虜の奪取など、より不安定な国際紛争を引き起こす可能性のある行為も起こらない。

2021年1月4日、韓国籍のタンカー「Hankuk Chemi」に群がるIRGCのボート。 Credit: Tasnim News Agency

2019年にイランが海軍のグローバルホークを撃墜し、米国が人的被害や捕虜の獲得がなかった航空機への攻撃に対し適切な反応を決定するのに苦労した事例があったが、対応側にも同様の複雑さがある。この状況は、米国政府の資産が破壊されたことを考慮すると、セイルドローン事件と大きく異なるが、それでも対応を決定する上で同様の問題が浮き彫りになった。米国は懲罰的攻撃を検討したが、最終的に断念した。

この問題は、海軍が多層的な無人艦艇部隊を拡大するにつれて、複雑になっていくだろう。今年のリムパック中の(PHOTOEX)では、海軍の無人試験艦が各国の海軍と一緒に航行し、その姿を垣間見ることができた。

環太平洋戦略的経済連携協定(リムパック)2022で航行する艦船。USS Michael Monsoorを先頭に、左端に無人艦の列が見える。Credit: Mass Communication Specialist 3rd Class Dylan Lavin/U.S. Navy

 

USVDIV-1と呼称された同部隊は、Sea Hunter、Seahawk、NomadとRangerの名称のGhost Fleet Overlordオフショア支援船2隻で構成された。USVDIV-1は、ズムウォルト級駆逐艦3隻と無人水上艦が所属する実験部隊「Surface Development Squadron One(SURFDEVRON)」に所属している。SURFDEVRONは、2045年までに150隻の無人艦を開発する海軍の目標達成に向け、ハイエンド無人水上装備運用と技術の進化に磨きをかけるため、国防総省が今年初めに終了させたGhost Fleet Overlordを引き継ぐ。

人命を守ることが、無人システム普及を支持する顕著な論拠の1つであることは間違いない。また、無人システム、特に艦船には他にも多くの利点がある。しかし、船舶から生身の船乗りを排除することは、IRGCNのような違法行動が拡散する機会を招き、特定の状況下では、国防総省が対処をせまられそうだ。また、将来の無人水上艦は、より繊細な装備や武器を搭載するだろう。

今回の事件はほぼ問題なく解決したように見えるが、このような行為の将来はより不確実である。■

Iran's Attempted Theft Of U.S. Navy Drone Boat Is Likely A Sign Of What's To Come

BYEMMA HELFRICHAUG 30, 2022 8:38 PM

THE WAR ZONE


2020年9月20日日曜日

米海軍が進めたい大型無人水上艦の実現が一筋縄ではいかない---何が問題なのか

 

ゴーストフリート事業のオーヴァーロード試験艦が9月にフェイズIで最終段階を迎えた。オーヴァーロード事業で既成の民間高速補給艇は無人水上艦(USV)に改装され、海軍にUSVの基本情報を提供する役目を負う。 US Navy photo.

 

 

9月4日、米海軍は大型無人水上艦艇(LUSV)のあるべき姿を決める第一歩として合計六社に契約交付した。

 

契約規模は合計42百万ドルでオーストラルUSAハンティントン・インガルス工業フィンカンティエリ・マリネッタボリンジャー造船ロッキード・マーティンギブス&コックスの六社が7百万ドルずつで作業を開始する。

 海軍は各社作業は2021年8月完了を期待するが、2022年5月までの延長も可能とする。

 「各社向け契約を通じ大型無人水上艦の性能諸元を絞り込み信頼性研究を行い解決策を把握してからデジタルデザイン・建造契約(DD&C)の交付に向かいます」と海軍広報官ダニー・ヘルナンデス大佐がUSNI Newsに伝えてきた。「研究活動を通じ政府と産業界の間に強い協力関係が生まれ、艦艇性能諸元も洗練されます。また実現可能な技術性能をLUSVのDD&C競作で追及してきます」

 今回の契約交付発表はLUSV調達方法を海軍が変更したのを受けたことに対応している。未検証技術の実現が早期すぎると議会が懸念していることが背景にある。

 「LUSV検討は要求内容の完成を助け、導入可能で効果のある艦艇開発を円滑にし、性能要求内容の成熟化作業を継続させ、信頼性を向上させながら電気系統、機械系統で信頼性を引き上げ、コスト削減策の把握につながるので、導入を容易にしてくれるはずです」(ヘルナンデス大佐)

 もともと海軍はLUSVでも従来通りの調達方法で対応のつもりだった。構想設計を数社に任せ、海軍の要求性能を決定してから詳細設計・建造契約を一社に公布する方法がこれまで行われてきた。

 

開発計画の見直し


これに対し議会がLUSVで同じ方法をとらないよう要求してきたため、2021年度予算要求ではLUSV関連の調達方法を見直し、LUSV概念設計での契約交付は本年度最終四半期に先送りされた。この遅れにより、海軍は議会の求めに応じた形にLUSVの予算要求を変更できたという。議会は垂直発射装備(VLS))を含む設計をしないよう求めている。

 「新しい契約では概念設計(CD)で契約を数社に2020年度内に公布する。CDではLUSVの性能諸元を絞り込み、ここには垂直発射管(VLS)は含まれない」と2021年度予算要求文書に説明がある。

 2021年度予算所ではLUSV試作型二隻を調達するとあり、二隻は戦略性能整備室(SCO)が作成したゴーストフリートのオーヴァーロード事業がもとになっている。SCO仕様の試験艦二隻はすでに供用中で来年にも海軍に移管される予定で、海軍は独自に自律運用技術を試験し知見を深めることが可能となる。

 LUSVについて海軍は全長200から300フィート規模で一部あるいは全面的に自律運航可能な艦艇として想定している。

 

議会の反発

 

議会関係者と国防分析官が昨年に海軍があまりにも早く動きすぎていると無人艦艇整備で警告していた。その主張では海軍にはまだ関連技術で試験を完了していない分野があり、運航コンセプトも決まっていないとあった。これに対し海軍からは試験艦を導入してからテストを実施し、技術の理解を深めて将来の艦艇整備案に組み入れると反論があった。

 海軍作成の2020年度予算案で説明があったLUSV案は直ちに批判の的となった。2020年度要求にはLUSV試作艦二隻をSCOのオーヴァーロード事業をもとに調達するとあり、並行してLUSVの設計案を数社に求めるとあった。構想ではLUSV試作艦を2021年度から2024年度まで毎年二隻調達するとある。2020年度予算要求書類によると海軍は研究開発予算から調達予算への切り替え時期を決めかねていた。

 これに対し議会はこの方法論を批判し、調達リスクが高いと指摘した。

 「当委員会はLUSV設計、技術開発、統合の各段階を並行実施しながらLUSVの運用構想で理解が不足したまま追加LUSVの調達リスクを放置する2020年度要求内容には懸念を示さざるを得ない」と上院軍事委員会が2020年度国防政策法案補足で主張。「また当委員会はLUSV運用方針が不明瞭なままであることにも懸念する。各国の無人水上艦艇について調査が不十分であり、武装あるいは今後武装するLUSVの法的位置も明確になっていない」

 2020年度国防支出法案で海軍の試作艦2隻調達に道が開いたが、同時に概念設計ではVLSを含めないよう求められた。無人小型戦闘艦整備事業を統括するケイシー・モートン中将は海軍はVLS搭載のLUSV調達を2021年度から開始すると昨年11月発言している。

 


米海軍の無人水上艦整備のロードマップNAVSEA Image

 

 

今後の見通し

2021年度予算要求で判明した新戦略方針では海軍はLUSV初号艦を複数年度予算案件として購入するとある。

. 議会による2021年度国防政策法案の合議版が未公開のままだが、上下院ともにLUSV開発での監督強化をうたっている。下院軍事委員会は海軍が求めるオーヴァーロード事業の試作艦関連予算を削減したが、シーパワー兵力投射小委員会からは海軍から「技術成熟完了」の証明がない限りLUSV調達を海軍に認めないとの注文がついた。

 他方で上院の法案では海軍に具体的な技術達成証明を求めている。例として発電機容量ならびに最短30日間運航が可能なエンジンを取り上げ、LUSVがマイルストンBに移行する前に必要としている。

 海軍はくりかえし議会と対話を図り、無人装備の重要性への理解を求めている。

 海軍の調達業務を統括するジェイムズ・ギューツ次官補は議会の懸念を認め、海軍は新型装備の取得と無人技術のテストの必要性で「バランス」をとる必要があると7月に述べた。

 「無人装備の最大課題は技術ではない」とギューツは語っていた。

 「まさしく作戦構想であり、指揮統制であり、投入構想である。また試験艦の実地運用があって初めて海軍第一線部隊も活用方法を理解できるはずだ。バランス感覚も必要だ。実証済みの原則、事業推進方法でもバランスが取れた形にする必要がある」■

 

この記事は以下を再構成したものです。▲なぜ、米議会筋は無人艦艇をここまで警戒するのか理解に苦しみます。人間の統制に反抗する「フランケンシュタイン」を恐れているのでしょうか。

 

6 Companies Awarded Contracts to Start Work on Large Unmanned Surface Vehicle

By: Mallory Shelbourne

September 4, 2020 5:51 PM