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2013年10月20日日曜日

KF-X 韓国による採用をまだ断念しないボーイングのねらいはF-15使用国へ性能改修の売り込みにあるのか


Boeing Sees Possible Split Fighter Buy For Korea

By Amy Butler
Source: Aerospace Daily & Defense Report

aviationweek.com October 11, 2013

韓国により選定対象からいったんはずれたボーイングF-15サイレントイーグルで痛手を受けたボーイングだが再入札では期待値を下げ、一部採用が実現すれば上々と考えている。

  1. ボーイング防衛宇宙安全保障部門 Boeing Defense, Space and Security のデニス・ムレンバーグ社長 Dennis Muilenburg によると同社は今もサイレントイーグル開発に費用を支出しており、韓国のF-Xフェイズ3に再提案するという。当初案では60機導入し、F-4、F-5の代替機材とする内容だった。ボーイングは韓国とイスラエルを念頭にサイレントイーグルを開発したもののイスラエルは同機に目もくれずF-35を選定してしまった。
  2. 韓国政府は国防調達計画庁による勧告を無効としサイレントイーグル導入案を白紙に戻している。同国の求める予算規模(8.3兆ウォン、77億ドル)でサイレントイーグルが唯一の選択肢であった。ユーロファイターのタイフーンは資格外となり、ロッキード・マーティンのF-35は予算超過だった。
  3. ムレンバーグによれば韓国はサイレントイーグルと他機種を分割購入するのではないかという。他機種がF-35になるで能性が高い。「今回実行が遅れている調達は60機の同時導入ですが、予算制約があり、日程が厳しい一方で高度技術導入をめざすのであれば分割調達がいいのではないでしょうか」と Aviation Week主催の円卓会議(10月10日)で語っている。韓国の希望は新型戦闘機を2016年に就役させることで、F-35では最初からその日程では実現が危ぶまれていた。
  4. ムレンバーグはさらに同社提案は価格保証をしつつ韓国が求める性能がすばやく実現できるという。「第五世代戦闘機という用語はロッキード・マーティンに都合のよいことば」という。言及しているのはF-35のことであり、「全方位ステルス性能に議論が傾いていますが、ステルス性能重視のあまり性能が犠牲となっていない当社の機体について話をしたいですね」という。サイレントイーグルは全方位ステルス性能がないが、前面ステルス性を最適化しており、ペイロード、速度でF-35より優位だというのだ。
  5. 韓国内にF-35を推す声が強いのは明らかで、韓国空軍の元空将15名が連名でF-35採用を求める公開書簡を出していた。
  6. そこでボーイングの韓国戦略はオーストラリア事例と類似してくる。F-35を待つオーストラリアに同社はF/A-18追加購入させることに成功している。
  7. j時間逼迫を強調するのが同国向け営業戦略の一部で同社製品を導入すれば早ければ2015年12月には実戦運用能力が手に入ると主張する。
  8. 一方でムレンバーグはサイレントイーグルのパッケージにならったF-15の性能改修が同機運用中の各国から関心を集めていると発言。改修内容でデジタル式電子戦能力やレーダーの導入が可能となり、その場合はステルス性を意識した一体型兵装庫他は不要だという。■

2013年8月27日火曜日

韓国F-XでF-15SE採用濃厚、しかし空軍はF-35に未練

South Korean Fighter Order: AF Backs F-35

By Bradley Perrett, Bill Sweetman, Amy Butler
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek,com August 26, 2013
Credit: Boeing

ボーイングF-15SEサイレントイーグルが韓国F-Xフェーズ3で唯一の選択肢に残っており、60機導入が想定される中、韓国空軍はこの選択を快く思わず、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機導入を実現しようとロビー活動をくりひろげている。.
  1. 韓国が採用すればF-15生産ラインは2020年代も維持可能となり、競争力のある機体を立ち上げることができる。ただし、これは韓国の国防調達プログラム庁 Defense Acquisition Program Agency (DAPA) の決定待ちであり、同庁はF-35は高価すぎる、ユーロファイタータイフーンは入札参加で想定外の事態ありとしていた。EADSは同庁に異議が申し立中。
  2. 政府横断型の特別委員会を国防相が主催し、DAPAの決定内容を来月裁定する。同委員会には軍代表に加え、国会の国防部会委員、財務省、DAPAに加え、国防開発庁からも参加。同庁はKF-Xとしてステルス戦闘機の国産開発を求めているところ。
  3. 財務省は政的に無理がないのでDAPA決定支持に回ると見られるが、空軍はF-35支持を鮮明にしている。
  4. 「空軍の一部にF-Xフェイズ3が本来の目標から誤った方向に向かいつつあると批判する向きがある」と聯合通信社Yonhapが8月20日、DAPA決定を報道する際に伝えている。「本来の目標」とは明らかにF-35発注のことで、それを支持する空軍関係者の姿勢は他の二機種も一応参加させるがあくまでも競争入札のためだとするものだという。
  5. これはデリケートな問題で、F-Xフェイズ1ではF-15が2002年に採用となったが、ダッソーは最初から採用の可能性がないと見て参加は時間の無駄と早々と結論付けている。同社は韓国では事業が展開できないと判断し、将来の競合にも参加の意思なしとした。そのとおりにF-Xフェイズ2でもF-15が採択となり、同社は参加せず、今回のフェイズ3でも同様だった。
  6. DAPAによるとF-Xフェイズ3ではEADSが資格外とされた模様。その理由は同社が価格を下げるべく同意済みの条件を一方的に変更してきたためだという。単座型45機・複座型15機を単座型54機と複座型6機に変更してしまったとするもの。EADSによればそもそもそんな合意はなかったという。”
  7. ロッキード・マーティンも選にもれているが、提示額が予算の8.3兆ウォン(74億ドル)を超過したため。ただ同社はまだ断念していない。
  8. 仮に韓国政府がDAPA決定をひっくりかえすと、再入札となる可能性がある。ただし、F-Xフェイズ3で代替しようとする機種はF-4ファントムとF-5タイガーでありそれぞれ部品供給が厳しくなり、機体寿命も終わりに近づいている。
  9. F-15SEは韓国発注が実現しないと生産に入らない。サウジアラビア向けF-15SAとの違いはレーダー断面積の削減にとどまらず一体型兵装庫の実現が一番大きい。これはF-15のこれまでの一体型燃料タンク(CFT)に代わるものでAIM-120空対空ミサイル4発あるいはAIM-1202発と1,000ポンド爆弾2発を格納するもの。
  10. そもそもボーイング案は有利だった。韓国で供用中の機体であり、価格では一番有利で、これがかぎとなる。DAPAは韓国国会から予算水準を越えた提案の採択は禁じられている。
  11. ロッキード・マーティンはF-35が高価格であるだけでなく米政府の海外軍事装備品販売foreign military sales (FMS) を経由しないと同機を提示できないというハンデもある。FMSでは米軍向け価格を下回る販売は禁じている。ボーイングはF-15SEを直接販売の対象とし、武装および一部装備品をFMS経由とした。
  12. もうひとつの利点は韓国航空宇宙工業がすでにF-15の主要部品メーカーになっている点で、ボーイングにすればDAPAのローカルコンテント要求水準を楽に満たすことができる。
  13. 三機種の中ではF-15が兵装搭載量、飛行距離性能で一番であり、タイフーンには米国による安全保障を受ける韓国では政治的ハンディが強かった。
  14. あるいは韓国政府がDAPA決定をそのまま尊重した場合、荒唐無稽と見られていたボーイングの戦略が有効だったことになる。サイレントイーグル構想が発表になったのは2009年3月のことで、その時点でF-35Aは米空軍で2013年までに作戦運用可能になっているはずで機体単価70から75百万ドルの想定だった。そのとおりならF-35は手ごわい競争相手になっていたはずだった。
  15. 現時点でF-35Aの米空軍での実戦化予定は2016年末以降で、2020年引渡し機体価格は96百万ドル。これに対しボーイングでは2012年のサウジアラビア向けF-15SA受注で生産ラインが再稼動し、F-15SEにも採用の新機軸実現の資金も入ってきたので相対的競争力は増えた。すなわち全デジタル方式の飛行制御システム、BAEシステムのデジタル戦システムDigital Electronic Warfare System (DEWS)、および再設計のコックピットに薄型ディスプレイを搭載したが、これらすべてを実現し開発リスクも下げられたのだ。
  16. サウジ事例ではF-15Sを現地でSAに改装するのも商談の一部であったので、韓国の場合もF-15Kで同じようなアップグレードも想定される。ただし、これは韓国の評価基準には含まれていない。
  17. ボーイングの戦闘機販売戦略は2009年から進化をとげ、特にF-15とF/A-18E/Fの調整がきめ細かくなった。F-15SAおよびSEのコックピットディスプレイはほぼ同じガラス素材、処理装置、、ソフトウェアを共用している。またボーイングはF/A-18向けに開発した技術を利用できるようにしており、パッシブ式目標捕捉システムがその例だ。F-15Kでは米海軍のスーパーホーネット用に開発中の赤外線探知追跡システムを搭載済みだ。
  18. サウジ向けF-15SAでは新型フライバイワイヤシステム、DEWSを飛行テスト中。新型一体型兵倉庫の開発は予定通り進行中だ。その他サブシステムでも性能要求水準の検討が完了ずみで設計変更の作業中。レーダー断面積の削減策もテスト継続中だ。
  19. サウジアラビア向けの新造機の引渡しは2015年にならないと実現しないが、F-15SのSA仕様への改修70機分の作業ははじまっている。サウジ向けの需要を満足するためには月産1機ペースで十分であるが、韓国向けには4年で60機という規模のため、月産数を倍増する必要が生じよう。韓国向けF-15Kおよびシンガポール向けF-15SGの引渡しは2012年で完了している。
  20. F-15Kでは機械式スキャンレーダーだったが、F-15SGではレイセオン製のアクティブ電子スキャン式アレイ (AESA) のAPG-63(v)3レーダーになっている。基本同じタイプがF-15SEに搭載される。ボーイングによればDAPAに対してもうひとつの選択肢としてレイセオンAPG-82があることは連絡済だという。これは米空軍がF-15Eに採用済みで2014年から第一線配備になる。APG-63(v)3ではF/A-18E/FのAPG-79と同様のアレイを採用しているが、APG-79と同じ処理装置他を使っており、このようにボーイングがF-15とF/A-18で共通化を提言している。.
  21. F-15SE採用が正式決定となった場合もF-35への影響は多分に心理的なものになるだろう。すでにF-35は日本での受注に成功しており、シンガポールでも競合相手がない状態で商談が成立しそうだ。オーストラリア、カナダ、ヨーロッパでの受注が確定すれば同機の戦略的な重要性がさらに増すことになろう。■


2013年8月21日水曜日

韓国F-X3はF-15SE採用が濃厚に

   

South Korea Looks Ready To Order 60 Boeing F-15SEs

By Bradley Perrett perrett@aviationweek.com
aviationweek.com August 19, 2013
Credit: Boeing
韓国のF-Xフェイズ3選定でボーイングF-15SEサイレントイーグル60機を発注する見込みが濃厚で、実現すれば同機生産ラインが延命するとともにこれ以降の競合に弾みをつけそうだ。
  1. 韓国国防調達計画庁Defense Acquisition Program Agency によればEADS提案を却下したもよう。同社は提示価格を下げるべく、以前の合意内容を一方的に変更してきたのが理由だという。現地報道によれば同社はユーロファイター・タイフーン単座型を当初の45機を54機に複座型15機を6機にして提示したという。
  2. また現地報道によれば三番手のロッキード・マーティンF-35ライトニングも除外されたとし、提示価格が8.3兆ウォン(75億ドル)という予算を上回ったためだという。ただしロッキードはこの報道に反論している。「韓国政府から結果通知は未着であり、F-X選定は複数の段階をへて決定されるものであり、当社は米国政府と連携してF-35の採用を期待する」
  3. F-15SEはF-15の発展型でレーダー断面積の縮小が特徴だが、生産を実現するためには韓国の発注が必要だ。F-Xフェーズ3で受注できないと84 機受注したサウジアラビア向けF-15SAの最終号機が2019年で引渡しとなり生産ラインは閉鎖になる。これに対しF-Xフェーズ3で受注に成功すればラインは2021年まで延長となり、初飛行から実に49年間のライン稼動になる。
  4. ボーイング案には有利な点がある。同機は韓国で採用済みで、競合他社よりも安価であることが長所となり、これは国会による制約を受ける調達庁が予算額を超過する選択肢を検討する余地がない現状を鑑みると大きな強みだ。先回の選定では提案すべてを却下したのは各案が予算想定を超過していたため。そこで再提案を集めたわけだが、ロッキード・マーティンはF-35のそもそもの高価格があり、米国政府による海外軍事装備品販売制度を使わざるを得なかった。
  5. F-15でもうひとつ有利なのは同機の主要部材がすでに韓国航空宇宙工業 Korea Aerospace Industriesにより生産中であることがあげられる。したがって調達庁がめざす現地生産比率を引き上げても、競合案よりも価格引き上げ率が高くならないことになる。
  6. 現在供用中のF-15Kはシンガポール向けF-15SGと同じく2012年までに完了している。サウジアラビア向けF-15SAの引渡し開始は2015年以降の予定で、ボーイングはF-15S70 機をF-15SA仕様に改装する。韓国が導入したF-15K61機はF-Xフェイズ1および2の一環で、うち1機を墜落喪失している。
  7. F-15SEは傾斜つき尾翼が特徴で機体内部に爆弾あるいは空対空ミサイル4発を搭載する。これは一体型燃料タンクをオプションで機体側部に取り付けることにより実現した。BAE製の新型電子戦闘システムを採用したことで燃料搭載スペースが増え、機体表面にはレーダー波吸収材料が施される。F-15Kが以前のF-Xで採用された時点で機械式スキャンレーダーが搭載されていたが、その後レイセオンAPG-63(v3)アクティブ電子スキャン方式アンテナを採用したレーダーを搭載している。その搭載一号となったシンガポール向けに続き、韓国も同レーダーが利用可能になることになる
  8. ボーイング受注の可能性濃厚な理由として同社と韓国国内航空産業メーカー各社との産業協力の実態が大きく作用しているとの見方がある。受注成功すれば同社にとっては大きな成功となり、F-15の生き残り可能性も広がるとし、同機の航続距離、ペイロード搭載量はF-35を大きく上回るもの、とアナリストHoward Rubel は見ている。■