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2024年10月29日火曜日

イスラエル:空爆でイランのS-300防空システムすべてを破壊か:当局(The War Zone)―イランは防御力低下を露呈し、強弁と裏腹に恐怖に怯えているはず

A Russian-made, S-300 missile system drives in front of the officials' stand during a military parade marking the annual Iranian National Army Day in Tehran, on April 18, 2019. - Iran's President Hassan Rouhani called on Middle East states on April 18 to "drive back Zionism", in an Army Day tirade against the Islamic republic's archfoe Israel. Speaking flanked by top general as troops paraded in a show of might, Rouhani also sought to reassure the region that the weaponry on display was for defensive purposes and not a threat.  

AFP via Getty Images


S-300システム3基が破壊されたことは、イスラエルの空爆拡大へ道を開くことになる

ランは、土曜日にイスラエルが実施した空爆の被害総額をまだ集計中のようだ。米国・イスラエル当局者によると、イスラエルが攻撃目標とした中には、ロシア製S-300防空システムも含まれていた。イランのS-300を無力化すれば、イスラエルによるさらなる攻撃、より大規模な直接攻撃の可能性も残される。これはイスラエル国防軍にとって偶発的な好機となり、またイランからの反撃を抑止する役割も果たす。

土曜日に破壊されたイラン軍の重要インフラの中には、現存するS-300長距離地対空ミサイルシステム3基も含まれていた。これは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に応じた匿名の米・イスラエル政府高官の評価だ。イランのS-300システムは、今年初めにすでにイスラエルによって攻撃されていた。

An Iranian military truck carries parts of the S-300 air defence missile system during the annual military parade marking the anniversary of the outbreak of the 1980-1988 war with Saddam Hussein's Iraq, in Tehran on September 21, 2024. (Photo by ATTA KENARE / AFP) (Photo by ATTA KENARE/AFP via Getty Images)

2024年9月21日、テヘランで、イラン・イラク戦争(1980年~1988年)勃発30周年を祝う軍事パレードで展示されたイランのS-300防空システム。写真:ATTA KENARE / AFP ATTA KENARE

同じ当局者は、土曜日の「悔恨の日々」作戦と名付けられた空爆で、イスラエルの戦闘機100機あまりから発射したミサイルのうち、イランが撃墜できたのは「数発」に過ぎなかったと明らかにした。

当局者による発表は、米国のシンクタンク「戦争研究研究所(ISW)」の評価とも一致しており、その中には、イスラエルが「イランの統合防空網に深刻な損害を与えた」という記述も含まれている。

「イスラエル国防軍は、テヘラン近郊のイマーム・ホメイニー国際空港のS-300サイトを含む3~4箇所のS-300サイトを攻撃した」とISWは付け加えている。「これらの施設周辺の防空能力を低下させることで、将来の攻撃に対してより脆弱になる可能性がある」とISWは主張している。

同シンクタンクは、標的となった防空施設の少なくとも一部はイラン西部および南西部の重要なエナジーインフラを保護していたと述べ、アバダン製油所、ホメイニ師バンダル・イマーム・エネルギー複合施設および港、タンゲ・ビジャール・ガス田が攻撃された場所であると特定している。

S-300とは

S-300は、1970年代後半にソビエト連邦が導入して以来、着実に更新されてきたが、現在では老朽化したシステムで、ウクライナで脆弱性が証明されている。しかし、特に多層防空システムの一部として使用される場合、依然大きな脅威であり、これらの地対空ミサイルシステムは、イランが入手可能な同種のシステムの中で最も高性能なものだ。

テヘランは、S-300の最新型S-300PMU-2 Favorit(NATOではSA-20B Gargoyleとして知られている)を受け取った。これは1997年に導入されたもので、弾道ミサイル迎撃能力が向上している。長年にわたり、イスラエル空軍は、複数の多国間航空演習において、ギリシャが運用するS-300PMU-1システムや米国のS-300を活用し、S-300の具体的な脅威を想定した訓練を実施し、その過程で戦術を磨いてきた。

2013年12月13日、クレタ島ハニア近郊でのギリシャ軍事演習中のS-300PMU-1。Costas Metaxakis/AFP via Getty Images 2013年、クレタ島ハニア近郊でのギリシャ軍事演習中のS-300PMU-1。Costas Metaxakis/AFP via Getty Images

少なくとも短期的には、イランにとってS-300の代替は容易ではない。ロシアは現在、ウクライナ戦争のため、生産可能な限りの防空装備を必要としているため、自国の在庫からテヘランへのシステムの移転は現実的ではないと思われる。また、より高性能なS-400のような同クラスのロシア製防空システムの新規生産品が納入されるまでには、長い時間がかかる可能性が高い。選択肢の一つとして、シリアで以前に行われたように、ロシア製バッテリーを1基または2基配備することが考えられるが、これは象徴的な意味合いが強く、ロシア自身の防空能力への負担を考慮すると、可能性は低い。

しかし、S-300の損失により、イスラエルがイランの軍事インフラへの攻撃拡大を決定した場合、あるいは標的リストを政権施設や核施設に拡大した場合、イランははるかに無防備な状態となる。また、イランの他の防空システムやネットワーク構造がどのような状態にあるのかも不明で、特にサイバー戦術を使用した非運動性攻撃を受ける可能性もある。

イスラエルからは、何らかの追加作戦がすでに準備されている可能性があるとの未確認の報告があり、次回は政府機関やインフラが標的になるという主張もあるが、イランの核施設は今のところ攻撃対象から外れているようだ。土曜日の空爆ではイランの防空体制を大幅に弱体化させることが含まれていたことを考えると、イランがさらなる攻撃で応戦した場合に備えて、イスラエルがすでにいくつかの追加オプションを計画していることはほぼ確実である。

報道によると、土曜日のイスラエルの空爆は、イラン全土の20の軍事基地や施設を標的とし、ミサイルや無人機製造施設、S-300防空システムも含まれていた。この攻撃により、少なくとも4人の兵士が死亡した。

イスラエルの攻撃は、S-300システムを含む防空施設を標的としただけでなく、イランのミサイルおよび無人機生産を混乱させることを目的としていた。これは、ヒズボラやフーシ派といったテヘランの代理勢力、さらにはロシアにも波及効果をもたらすはずであった。

ミサイル生産施設の1つは、セムナン州にあるシャハラード工場であると思われ、シャハラードは、イスラム革命防衛隊(IRGC)の宇宙開発計画で知られているが、短距離および中距離弾道ミサイルの大規模生産で重要拠点であるとも評価されています。

本誌はすでに、市販の衛星画像によって明らかになったパルチンミサイル生産複合施設における被害の証拠を調査したが、今回のイスラエルの空爆は、イランの新型弾道ミサイルの推進力となる固体燃料の生産施設の一部を標的にしたようだ。

ISWは、イランがパルチンでの損失を補うために必要な設備を入手するには「数ヶ月、あるいは1年以上かかる可能性が高い」と予測している。

空爆を受けてイランの別の施設、具体的には主要な無人機生産施設があると考えられているアラク近郊のシャムス・アバドで、明らかな破壊を示す新たな映像が公開されている。

イスラエルの空爆には空中発射弾道ミサイル(ALBM)が使用されたようで、少なくともそのうちの1つの残骸がイラクで発見されている。同じ種類の兵器が、今年春に別のS-300システムが標的となった際に使用された。

2024年4月にイスラエルがイランのS-300基地を攻撃した際の、合成開口レーダー画像:

イスラエル空軍は、Rocks(ロックス)Air LORA(エア・ローラ)などの兵器を使用することで、遠距離からイランの奥深くを攻撃することができ、乗組員が極度の危険にさらされることはない。イスラエル空軍の航空機がイラン領空を飛行したかどうかは依然として不明だが、遠隔操作の兵器のみを使用した場合でも、イラン東部の標的を攻撃するには、遠くまで侵入する必要はないものの、こうした手段が必要であった可能性がある。同時に、これらの兵器は高い精度と強力な破壊力を兼ね備えており、迎撃は大きな課題となる。

イスラエル空軍が発射した兵器の数については、依然としてさまざまな報告がある。イラン軍南西部司令部の副司令官モハマド・モフタリファルは本日、イスラエル機が600発以上のミサイルを発射したと主張した。イスラエル軍機が100機ほど関与したことを示す複数の報告を考慮すると、この数字は大幅に誇張されているように思われる。一方で、イスラエルがサイバー攻撃の可能性も含め、イランの防空能力を低下させるために他の手段も用いた可能性は依然残っている。

一方、イラクはイスラエルがイランを攻撃するために自国領空を使用したことについて、国連に苦情を申し立てた。

国連事務総長アントニオ・グテーレスと国連安全保障理事会に送られた抗議文書の中で、イラクは「10月26日にイラク領空を使用してイラン・イスラム共和国への攻撃を行った、シオニスト国家によるイラク領空と主権に対する明白な侵害」を非難した。

また、空爆に関与したイスラエル空軍の航空機や部隊についても、詳しいことが分かってきた。

エルサレム・ポスト紙の記事では、各部隊のパイロットのコメントが引用されており、その中には、長距離攻撃が専門のF-16Iスーファを操縦する第119飛行隊と第201飛行隊も含まれている。

「暗い砂漠上空を飛行するのは名誉なことでした。空中にいる一瞬一瞬がイスラエルの新たな夜明けへの一歩であることを感じていました」と、119飛行隊の指揮官「Y」中佐は語った。


イランは強弁を続けているが

イラン側からは、報復の脅威が続いている。イラン革命防衛隊のホセイン・サラミ(Hossein Salami)少将は、現地報道によると、土曜日のイスラエルの攻撃後、イスラエルは「厳しい結果」に直面するだろうと警告した。

サラミは、イスラエルは「不吉な目標を達成できなかった」と述べたと今日報道された。また、空爆は「誤算と無力さ」の象徴だと述べた。

しかし同時に、イランでは、テヘランがどのような対応策を講じるべきかについて議論が交わされている。

イランは、何の対応もしないか、少なくとも10月1日のような直接攻撃を行うか、あるいは、多くの人が予想していたよりも限定的だったイスラエルの空爆に見合った何らかの報復を行うか、いずれかの対応を迫られている。

イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、テヘランは戦争を望んではいないが、イスラエルの攻撃には「適切」に対応するだろうと述べ、ある程度の慎重さを示唆した。同大統領は昨日、閣議で「我々は戦争を望んでいないが、我々の国家と国の権利を守るつもりだ。我々はシオニスト政権の侵略に対して適切な対応をするつもりだ」と述べた。

イラン外務省報道官のエスマイール・バゲイは、イスラエルの攻撃に対してテヘランは「あらゆる手段を講じる」と述べたが、イスラエルに「明確かつ効果的な対応」をどのように行うかについては、これ以上の詳細を明らかにしなかった。

最後に、イランの最高指導者アリ・ハメネイは昨日、この攻撃を「誇張したり軽視したりすべきではない」としながらも、即座の報復を誓わなかった。ハメネイが重病であるという報道もあり、後継者探しが権力闘争につながり、イスラエルとの紛争に影響を及ぼす可能性もある。

週末に議論したように、イスラエルの空爆は、イランの攻撃力と防御力を弱体化させるよう慎重に計画されたものであり、同時にイスラエルへのリスクを最小限に抑え、抑止力を提供した。抑止効果を強化するため、イスラエル政府高官は追加空爆の可能性で脅しを強めている。

イスラエルの計算が功を奏するかは、時が教えてくれるだろう。■

Israeli Strikes Knocked Out All Of Iran’s S-300 Air Defense Systems: Officials

The apparent destruction of the last three Iranian S-300s would pave the way for expanded Israeli airstrikes.

Thomas Newdick

Posted on Oct 28, 2024 3:02 PM EDT


https://www.twz.com/news-features/israeli-strikes-knocked-out-all-of-irans-s-300-air-defense-systems-officials


2022年7月10日日曜日

ウクライナ戦でS-300防空ミサイルで対地攻撃をするロシアはミサイル在庫の減少に苦しんでいるのか

S300 ground targets ukraine

Russian MOD

 

ロシアの地対空ミサイルシステム「S-300」には、あまり知られていないが陸上目標への攻撃能力がついている。

 

シアが長距離地対空ミサイル「S-300」でウクライナの陸上目標を攻撃しているとウクライナが主張している。ウクライナ南部ミコライフ州知事の発言は、ロシアの陸上攻撃用スタンドオフ兵器が想像以上に不足していると示唆している。あまり知られていないが、S-300には対地対地攻撃能力があるようだ。

 

 

ミコライフ州のヴィタリー・キム知事Vitaly Kimは、インスタントメッセージサービス「テレグラム」で、S-300のバージョンを特定せず、この主張を紹介した。ロシアは、8x8車輪付きのS-300Pシリーズと、無限軌道を使用し、対弾道ミサイル能力を向上させたS-300Vの両方を運用している。S-300PとS-300Vの両シリーズは、ウクライナ戦争でロシア(およびウクライナ)が使用したことがある。各システムは、様々なミサイルを発射できる。

キム知事は、S-300がミコライフ州を狙い12発発射されたが、GPS誘導を後付けしたにもかかわらず、不正確なままとも述べている。

 

S-300の地上攻撃能力を欧米の資料ではほとんど報告していないが、ベラルーシのニュースサイト「Naviny」で2011年に発表した記事に詳細が記されている。

 

記事によると、ベラルーシ軍は同年の演習で、S-300防空システムを「敵領土内の重要な地上目標」に対してテストしたという。ベラルーシ当局は、これが同国初の実験であり、「S-300は、数十キロ離れた地上目標を破壊可能」と主張した。

 

 

ロシアとベラルーシの合同軍事演習「West-2009」で使用されたS-300Pシリーズ地対空ミサイルシステムとベラルーシ兵。VIKTOR DRACHEV/AFP via Getty Images

 

しかし、記事が指摘するように、「静止地上目標の攻撃は、開発者が1979年に採用したS-300防空システム、さらにその後のすべての修正版の機能に最初から取り入れていた 」。

 

当時、ベラルーシは、1980年代半ばに導入されたS-300PS(NATOコードネームSA-10 Grumble)を使用しているのが知られており、空中目標に対して最大交戦距離56マイルの5V55Rミサイルを搭載していた。前述Naviny記事によると、ベラルーシのS-300の地上目標にへの最大射程は75マイルで、誘導システムで制限されるとある。

 

 

ロシア極東のティクシに駐留する第3防空師団第414衛兵対空ミサイルブレスト赤旗連隊のS-300PS部隊。Russian Ministry of Defense

 

 

S-300Pシリーズで使用しているミサイルは、無線リンクで更新される慣性誘導システムで、終末期にはセミアクティブ・レーダー・ホーミングが使用される。しかし、慣性誘導と無線更新により、大きな面積の標的を攻撃するのに十分な精度が得られると思われる。これは前代未聞のことではない。米海軍の地対空ミサイル「タロス」も、二次的に陸上・地表攻撃能力を持っていたが、その用途には核弾頭を使用していた。

 

ロシアのS-300P防空隊員が空中目標へ発射練習をする。

さらに、このミサイルは高速で準弾道ミサイルの攻撃方法をとるため、防御は難しいだろう。

 

興味深いのは、Navinyの記事によると、かつてソ連時代も含め、S-300ミサイルは1発あたりのコストが高いため、地上目標への使用練習は法外に高価であったという。当時は、戦術的な地対地ミサイルがもっとたくさんあった。しかし、S-300PSは、高性能なS-400に置き換えられ、陸上攻撃用のミサイルとしてテストできるようになり、現在では実戦使用も報告されている。

 

なぜ今、ロシアがS-300でウクライナの地上目標を攻撃するのか、理由は不明だ。一方で、精密誘導式スタンドオフミサイルなど、適切な兵器の不足を指摘しているようにも思える。実際、ロシア軍が近年、陸上攻撃にS-300を使うようになった理由の1つとして、冷戦時代に比べて、戦術地対地ミサイルが不足していることがある。

 

一方、ウクライナ戦争の初期から、ロシアはスタンドオフミサイル、特に爆撃機や水上艦、潜水艦、地上発射機から発射する最新の対地巡航ミサイルが不足しつつあるのではないかという報告が、ペンタゴンを含めてなされている。

 

一方で、この種のミサイルの交換は難しくなっている。調達コストが高いだけでなく、対モスクワ制裁の影響で重要部品の入手が困難になっているのは間違いない。

 

また、冷戦時代のKh-22(現代のKh-32含む)空中発射型スタンドオフミサイルを陸上目標攻撃用に使用することにしたのも、こうした配慮からかもしれない。

 

S-300が陸上目標に使用されるようになったのは、少なくとも部分的には実用的な理由がある可能性がある。通常の砲兵隊の射程外でも、S-300の防空砲台がある場合、高価な巡航ミサイルによる攻撃を行うよりも、こうした手段で攻撃する方が理にかなっていると考えられる。陸上攻撃用の巡航ミサイルは、標的を攻撃するために遠くまで移動するだけでなく、飛翔速度が低いまま攻撃することになり、そもそも行動に移すまでに相当の時間がかかる。ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンダルM」も供給が減少している可能性が高く、最低限の備蓄を維持することが戦略的課題であり、重要度の高い兵器である。最も重要なのは、S-300も使用期間が長いため、老朽化した本体が余っている可能性が高く、静的な地上目標に使用した方が良いと思われているのではないか。

 

ロシアがGPS誘導搭載の兵器を改良したのであれば、準弾道ミサイルとして使用するため、さらに精巧で長期的な構想を示していることになる。そうであれば、精度はかなり向上するだろうが、専用システムほど確実な精度にはならないかもしれない。また、爆砕弾頭は、陸上目標攻撃ではなく、航空機の撃墜に最適化されている。

 

ロシアがS-300で陸上攻撃していると現段階で断定できないものの、可能性はあり、兵器の在庫が枯渇しているのを考慮すれば、理にかなった方法と思われる。■


Russia Now Firing S-300 Surface-To-Air Missiles At Land Targets In Ukraine: Official

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BYTHOMAS NEWDICKJUL 8, 2022 8:36 PM

THE WAR ZONE


 

2016年10月10日月曜日

★★ロシアがF-22撃墜は可能と公言、ステルス機はどこまで有効なのか



シリア情勢が混沌としてきましたが、無慈悲な空爆を続けるシリア政権=ロシア側に西側勢力がこのまま黙っているとは思えません。そうなると好むと好まざるを問わず、米ステルス機が有効性を実証する(あるいは限界を露呈する)機会が早晩発生するのではと思えます。現状のロシア製ハードウェアではまだ米ステルス機に有効な対策は打てないと思えるものの、どうなりますやら。

War Is BoringWe go to war so you don’t have to
The F-22 Raptor. Airwolfhound photo via Flickr

Could Russia Shoot Down an F-22 Stealth Fighter Over Syria?

The Kremlin deploys advanced anti-aircraft missiles

by DAVE MAJUMDAR
  1. 米ロ間で緊張が高まる中、ロシア軍にシリアでステルス機に標的を合わせる能力があると米国へ警告してきた。アルマースアンチェイ製S-400に加えS-300V4対空ミサイルの追加配備が完了している。
  2. 西側防衛専門家にもF-22とF-35はロシア製装備に対抗できる設計になっていないと見る向きがある。
  3. 「ロシアのS-300、S-400防空ミサイルがシリアのフメイミム、タルトゥス両基地に配備されており、飛行目標をどこでも捕捉できる有効射程がある」とロシア国防省報道官イゴール・コナシェンコフ少将がロシア国営報道機関スプートニクで話している。
  4. 「ロシア製防空装備の運用要員には空爆を実施中の機体の所属を確認する時間余裕はなく、直ちに対応する。『見えない』などど妄想があるようだが現実は落胆を生むだけだ」
  5. S-400およびS-300V4がステルスに対抗できるとロシアが堂々と語る一方、ロシア製低周波探査照準レーダーが戦術戦闘機の大きさでも探知できても、火器管制レーダーはC、X、Kuの各帯域で運用すればF-22やF-35は極めて近距離でないと探知できないはずだ。
  6. ステルスとは全く見えなくなるわけではなく、探知が大幅に遅れたままで戦闘機ないし爆撃機が目標に到達し、敵の対応の前に現場を立ち去るのが基本だ。
B-2 Spirit bombers at Andersen Air Force Base, Guam. U.S. Air Force photo
  1. 戦術戦闘機の機体サイズはC、X、Kuの高周波帯域に対抗できるように最適化している。単純な物理法則だ。ただし低周波では対応できず特定の閾値で共鳴現象が発生する。
  2. 共鳴現象が発生するのは機体の一部が特定の周波数波長の8倍の大きさを下回るときだ。
  3. 戦闘機サイズの戦術航空機には機体表面のレーダー吸収剤の厚みを2フィート以上にする余裕がないので、特定周波数に最適化する妥協策が施されている。
  4. つまり低周波レーダーのSやLバンドを運用すればステルス機でも探知追跡できるということだ。
  5. 突き止めれば低周波レーダー対抗策には大型のフライングウィング型機材のノースロップ・グラマンB-2や今後登場するB-21レイダーが必要だ。共鳴現象を引き起こす要因がないためだ。
  6. だがUHF、VHF帯域の波長では設計者がいくら頑張っても機体を隠すことができない。反対に技術陣はレーダー断面積を低周波レーダーのノイズにまぎれこませようとする。
  7. 低周波レーダーで火器管制レーダーに「合図」を送ることは可能だ。米国の敵対勢力は低周波照準レーダー開発に乗り出している。だが低周波火器管制レーダーはまだ理論でしか存在せず配備は相当先だろう。
  8. 「ステルスとは探知を遅らせる効果があるが遅延は縮まってきている。レーダー周波数が低周波帯に移っており米ステルス機の有効性が減ってくる」とマーク・ギャモン(ボーイング、F/A-18E/F ・EA-18G主管)が語ってくれた。「早期警戒レーダーはVHF帯域でステルス性能が低下する。このレーダーをSAMレーダーとネットワーク接続すればSAMレーダーが照準を得ようとする」
  9. しかし、低周波レーダーでは「実戦レベル」の追尾はできず、ミサイル誘導が不可能だ。そこで低周波レーダーをこの用途に使う案が出ているが、今のところ実用化のめどはない。
  10. 米空軍大佐マイケル・ピエトルチャがこの解決策を記者がAviation Week & Space Technologyで数年前に執筆した記事で述べていた。だが空軍関係者は同技術に無関心だ。
  11. 「技術的に可能といって戦術的に投入可能とは言えない」とステルス機の経験豊かな空軍関係者が説明している。
  12. 一方で現役のラプターのパイロットから記者は「SAM対抗戦術の詳細は極秘情報」と聞いているが、F-22は現行のロシア製地対空ミサイル装備には十分対抗できる。
  13. シリア上空の実戦でラプターが効果を証明する機会が生まれないよう望むばかりだ。紛争が急速に手におえないほど拡大するのは歴史が証明ずみだ。■


2013年6月4日火曜日

ロシア製高性能ミサイルS-300がシリアに引き渡されたらどうなるか

 なかなか見えてこないシリア情勢ですが、関係各国の動きのなかでもロシアには要注意です。今回取り上げる高性能対空ミサイルは単体では機能せず、システムで考えるべきものですが、意外に大きな影響を同地域に与えそうです。その中でも現実を厳しく見つめるイスラエルの考え方には日本ももう少し注意して追いかけていく必要があるのではないでしょうか。


Potential S-300 Sale To Syria Catches Israel’s Attention

By David Eshel, Jen DiMascio
Source: Aviation Week & Space Technology

June 03, 2013
Credit: ITAR-TASS/Landov File Photo
David Eshel Tel Aviv and Jen DiMascio Washington

国際社会がシリア内戦に介入すべきかを議論する中、イスラエルはシリアがロシア製S-300ミサイルを導入し防空網を強化していることに懸念を増大させている。
  1. イスラエルにとって.シリアの防空能力増強は潜在敵国と突如開戦になった場合に危険度が上がる意味があるとイスラエル空軍アミル・エシェル少将Maj. Gen. Amir Eshelは解説する。
  2. 「アサド政権は多額の予算で防空体制を整備しています」としSA-17、SA-22、SA-24の購入に加え、以前のイスラエル空爆の教訓から状況認識能力の向上を図っているという。
  3. 先 週になりロシアの外務副大臣セルゲイ・リャブコフ Sergei Ryabkovがモスクワの記者団にロシアはS-300引渡しを決定し、外国によるシリア干渉への対抗を支援すると発言している。この声明は欧州連合が武 器禁輸を緩和し、英仏両国が武装抵抗勢力への武器供与を検討中とする中で出てきたもの。もし、S-300が導入されれば地域紛争の危険性が増大するとエ シェル少将は見ている。
  4. そもそもS-300は100 km 超の範囲で弾道ミサイルや航空機の迎撃を想定し、S-300PMU2 ファヴォリFavorit だと6発同時発射で高高度と低高度の双方で同時に目標12個と交戦が可能。このS-300PMU2には対抗できる戦闘機は存在しない。
  5. 「ロ シアがS-300をシリアに販売すると勢力図が塗り替えられるでしょうね」と見るのは戦略国際研究所Center for Strategic and International Studiesのアンソニー・コーズマンAnthony Cordesmanだ。「引渡しが実現すれば米ロ交渉は無意味になし、同じような取引がイラン向けに起こることへの警戒感を呼び、イスラエルはシリア内戦 に引きずり込まれ、米国および同盟国の航空優勢能力を下げることになるでしょう」
  6. 一見するとS-300はS-200から大きく変化ないように見えるとコーズマンは語るが、実際はS-300は低空能力を大幅に改善し、ジャミングに強く探知が困難という。
  7. ただしS-300をシステムでみると未知数が多いという。レーダーとの組み合わせはどうなのか、発信所の機能水準でも不明な点があり、シリアの防空体制全般の向上にどこまで貢献するか見えてこないという。.
  8. ま たS-300がシリア防空網に統合化するには時間がかかるのではとの見方もイスラエルにある。ロシアが現地で技術支援しないと実用化できないとする見方 だ。統合化にはシステムを熟知し使いこなすための長期間の投資として、運用のみならず整備のための施設作り、運用部隊の訓練が必要だ。シリア軍の現状から 見てそれだけの人員と予算をこのために確保できるか疑問だというのだ。さらに国内武装反乱勢力から機材を守れるかも疑わしい。
  9. 低い確率とはいえ、バシャル・アル・アサド大統領Bashar al Assad が同システムをレバノンのヒズボラ勢力に引き渡す可能性もあり、イスラエルの視点ではこれが実現したら極度に深刻な事態となり報復攻撃は必至だという。
  10. 地 政学の観点でイスラエルに直接影響が出てくる。シリアが「もし明日崩壊したら、大量の兵器が分散し、各方向から自分たちに銃口が向けられる」とエシェル少 将は見ている。「奇襲攻撃の方法は多様化しています。ひとつの事件がエスカレートして数時間で対応を準備せざるを得ない対応が想定されます。つまり、イス ラエル空軍のもつ力を総動員することになります」
  11. シリアがロケットやミサイル数千発のをイスラエルに発射する事態をイスラエルは想定している、という。
  12. 高性能兵器がヒズボラのような敵性勢力に引き渡される、あるいは化学兵器の移転はわが国にとってまったく受入れられません」
  13. シ リア軍がヒズボラと共同でシリア北西の都市アルカサイルAl-Qusayrを強襲したとの報道をイスラエル空軍は注視している。同市はシリアからレバノン への交通の要所で占拠はシリア・レバノン間の移動路を確保する戦略的勝利。高性能の防空体制があれば兵器移送の阻止攻撃は高リスクになる。
  14. イ スラエル国防軍司令官ベニー・ガンツ中将Lt. Gen. Benny Gantz は「多方面で同時に戦闘状態が発生する可能性はかなりあります」と記者会見で発言しており、「地域不安定度を考慮すれば、わが軍は多方面対応の可能性に直 面しており、国防作戦の様相を書き直すような新しい現実の中におかれています」と発言している。■